説明

漏電検知機能付き電気コネクタ

【課題】絶縁被覆されたヒータや電線から液体が浸入しても、主管機器や制御機器側への手前で液体の浸入を簡単な構造で確実に検知できる漏電検知機能付き電気コネクタを提供すること。
【解決手段】液体中に漬けられた絶縁被覆されているヒータ線や電線を具えて成る端末機器の電線端末と、主管機器又は制御機器の電線端末との間に取り付けられる雄雌コネクタであって、前記雄雌コネクタで構成される空間内には、端末機器の電線端末に電気的接続状態となっている第1電極及び第2電極と、前記端末機器の電線端末から浸入してきた液体に接することで第1電極又は第2電極に短絡して通電状態となる浸水検知用ピンとを具えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体中に、絶縁被覆したヒータや電線等を直接又は間接的に浸漬する使用を目的とした機器(例えば自動車用尿素水配管等)に用いられる漏電検知機能付き電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の機器としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この機器は配管中にコードヒータを挿入して、当該配管中の液体の温度を昇温又は維持させるためのものであるが、コードヒータの被覆絶縁部材に孔や亀裂が生じた場合、漏電し、場合によっては主管機器や制御機器を破損したり又は人体への感電が起こり得るという問題があった。
【0003】
例えば、液体がコードヒータにできた孔や亀裂から浸入した場合、逃げ道が無いが故に電線内を通って主管機器や制御機器側へ浸入していき、その結果、当該機器を破損させるという重大な問題にまでに至る。
【0004】
したがって、上記の如き問題が起こらないように、漏電が起きたときには主管機器や制御機器に到達するまでに、確実に漏電検知できる手段を模索しているが、極めて簡単に(これまでの手段では電圧比較回路や電流変動検知回路等の増設が必要となる)液体流入を検知する手段は存在していない。
【特許文献1】特開平2005−351333号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明では、絶縁被覆されたヒータや電線から液体が浸入しても、主管機器や制御機器側への手前で液体の浸入を簡単な構造で確実に検知できる漏電検知機能付き電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1記載の発明)
この発明の漏電検知機能付き電気コネクタは、液体中に漬けられた絶縁被覆されているヒータ線や電線を具えて成る端末機器の電線端末と、主管機器又は制御機器の電線端末との間に取り付けられる雄雌コネクタであって、前記雄雌コネクタで構成される空間内には、端末機器の電線端末に電気的接続状態となっている第1電極及び第2電極と、前記端末機器の電線端末から浸入してきた液体に接することで第1電極又は第2電極に短絡して通電状態となる浸水検知用ピンとを具えている。
(請求項2記載の発明)
この発明は、上記請求項1記載の発明に関し、雄雌コネクタの接続状態では、第1電極及び第2電極の一端側は端末機器側の電線端末と、第1電極及び第2電極の他端側は主管機器又は制御機器側の電線端末と、それぞれ電気的接続状態になると共に、浸水検知用ピンは主管機器又は制御機器とは別の浸水検知用電線に電気的接続状態となっている。
(請求項3記載の発明)
この発明は、上記請求項1又は2に記載の発明に関し、第1電極、第2電極及び浸水検知用ピンは、雄雌コネクタのうちいずれか一方側に設けており、浸入してきた液体が一つの吸液材により吸液されることにより、前記第1電極、第2電極及び浸水検知用ピンが相互に電気的接続状態となるようにしている。
(請求項4記載の発明)
この発明は、上記請求項1乃至3のいずれかの発明に関し、雄雌コネクタは接続状態において、防水性を有するものとしてある。
【発明の効果】
【0007】
この発明の漏電検知機能付き電気コネクタによると、絶縁被覆されたヒータや電線から液体が浸入しても、主管機器や制御機器側への手前で液体の浸入を簡単な構造で確実に検知できる。これにより、機器の重大な破損、人体への感電が起こり得なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、この発明の漏電検知機能付き電気コネクタを実施するための最良の形態として実施例について詳しく説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は加熱・保温チューブ装置TS(端末機器T)の全体の断面図、図2は前記加熱・保温チューブ装置TSの流体入口付近の拡大断面図、図3は接続前の雄雌コネクタ3、4の断面図、図4は第1電極30a、第2電極32a、浸水検知用ピン31a及び吸液材5の組付け状態を示す斜視図、図5は接続状態にある雄雌コネクタ3、4の断面図、図6は第1電極30a又は/及び第2電極32aと、浸水検知用ピン31aとが電気的接続状態となることを示す概念図である。
【0010】
この実施例は、図1に示すように、チューブ1内にコードヒータ10を挿入させてなる加熱・保温チューブ装置TSを、端末機器(T)としたものであり、加熱・保温される液体がコードヒータ10の絶縁被覆層にできた孔や亀裂から浸入した場合であっても、図3〜図5に示す漏電検知機能付き電気コネクタ2の存在により液体が主管機器(S1)の手前において液体の浸入が阻止されるような対策を採っている。
(加熱・保温チューブ装置TS構成について)
この加熱・保温チューブ装置TSは、図1や図2に示すように、チューブ1にコードヒータ10を挿通させて当該チューブ1内を流れる液体を直接加熱・保温させるようにしてある。また、この加熱・保温チューブ装置TSでは、図1や図2に示すように、チューブ1の一端を、竹の子状継手部12に外圧入すると共に竹の子状部12の孔部分にコードヒータ10の折り曲げ部を挿入してある。
【0011】
ここで、上記コードヒータ10は、図1や図2に示すように、封止部材14、14によって液密状態で引き出されており、更にその先において、封止部材15、15により形成された液密性を有する室内の中でリード線11と接続(接続部を符号13で示す)されている。
(端末機器Tと主管機器S1との間に設置される漏電検知機能付き電気コネクタ2の構成について)
この漏電検知機能付き電気コネクタ2は、図3や図5に示すように、雄コネクタ3と雌コネクタ4から構成されており、端末機器Tと主管機器S1相互間に介在させることにより浸水による漏電検知(浸水検知)ができるようにしている。このため、雄雌コネクタ3、4の接続状態では、図5に示すように、第1電極30a及び第2電極32aの一端側は端末機器T側の電線端末と、第1電極30a及び第2電極32aの他端側は主管機器S1の電線端末と、それぞれ電気的接続状態になると共に、浸水検知用ピン31aは主管機器S1とは別の浸水検知用電線6に電気的接続状態となっている。
【0012】
雄コネクタ3は、図3や図4に示すように、その内部に3本の雄ターミナル30、31、32を、雌コネクタ4側へ延びるように設けてあり、雄ターミナル30の先端部側を第1電極30aと、雄ターミナル31の先端部側を浸水検知用ピン31aと、雄ターミナル32の先端部側を第2電極32aとしている。なお、符号33、34、35で示すものは、雄ワイヤシールであり、これら雄ワイヤシール33、34、35と上記した雄ターミナル30、31、32が外れないように係止させてある。
【0013】
また、上記雄ターミナル30、31、32は、図3や図4に示すように、一つの吸液材5を介して相互に繋がれており、前記吸液材5の一部に液体が接触した場合でも中央部の浸水検知用ピン31aに液体が至るようにしてある。
【0014】
更に、雄コネクタ3の外周部には、図3や図5に示すように、雄係止部36を突設させてある。
【0015】
続いて、雌コネクタ4は、図3や図4に示すように、その内部に3本の雌ターミナル40、41、42を、接続する雄コネクタ3側へ延びるように設けてあり、その先端部に上記した第1電極30aと、浸水検知用ピン31aと、第2電極32aが、挿通される開口40a、41b、42cを設けてある。なお、前記第1電極30aと第2電極32aは開口40a、42cを通って主管機器S1の電線端末に繋がれ、浸水検知用ピン31aは主管機器S1とは別の浸水検知用電線6に繋がれる。
【0016】
なお、符号43、44、45で示すものは、雌ワイヤシールであり、これら雌ワイヤシール43、44、45と上記した雄ターミナル30、31、32を抜け止め状態に係止させてある。
【0017】
また、雌コネクタ4には、図3や図5に示すように、雄係止部36と係止状態にできる雌係止部47を備えている。
【0018】
さらに、雌コネクタ4の雌係止部47と上記雄コネクタ3の雄係止部36とが接続状態となったときには、防水性を発揮するコネクタシール48を備えている。
(端末機器Tと主管機器S1との間に設置される漏電検知機能付き電気コネクタ2の機能について)
加熱・保温される液体がコードヒータ10の被覆部材にできた孔や亀裂から浸入することとなった場合、液体はコードヒータ10内を流れ、その液体はついには主管機器Tに至ることになる。このような事態が生じると、機器全体の重大な損害や人体への感電が起こり得る。
【0019】
しかしながら、液体中に漬けられた絶縁被覆層を有するコードヒータ10を具えて成る端末機器Tの電線端末と、主管機器S1の電線端末との間にこの漏電検知機能付き電気コネクタ2を取り付けた場合、以下のような働きにより、上記不具合を回避することができる。
【0020】
この実施例のものでは、ヒータ内を流れる液体は、雄ワイヤシール33、34、35内→雄ターミナル30、31、32内→雌コネクタ4側に至る又至ろうとするが、その途中で、吸液材5により前記液体が吸液される。すなわち、図6に示す如き、第1電極30a又は/及び第2電極32aと、浸水検知用ピン31aとは電気的接続状態となっている。
【0021】
例えば、第1電極30aに繋がっている電線から浸水があった場合、浸水検知用ピン31aと第1電極30a又は/及び第2電極32a相互間に吸液材5を介して電気が流れる(通電する)こととなり、これにより浸水検知が可能となる。これを利用して、機器の漏電検知を有する電源ブレーカに接続すれば、機器ごとに緊急停止ができる。
【0022】
また、専用の回路を設けると、一部の機能を停止したり低減することが可能になる。
【0023】
要するに、絶縁被覆されたヒータや電線から液体が浸入しても、主管機器S1や制御機器S2側への手前で液体の浸入を防ぐことができる。しかも電圧比較回路や電流変動検知回路等の増設は不要である。
(その他)
図7は、液体が、浸水検知用ピン31aに接して、浸水検知用電線6が通電状態になった場合において、漏電ブレーカが落ちて電源線からの電気が端末機器T側に供給されなくなる例である。
【0024】
その他、浸水検知用電線6が通電状態になると、その他の機器への電源の切断及び異常を知らせる手段(パトライトや音発生装置)が働くようにすることもできる。
【0025】
上記実施例1は、液体中に漬けられた絶縁被覆したヒータで形成されたものを端末機器Tとしているが、これに限らず、液体中に漬けられた絶縁被覆した電線で形成されたものを端末機器Tとしてもよい。
【0026】
上記実施例における主管機器S1を、制御機器S2に置き換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】加熱・保温チューブを有する装置(端末機器)の全体の断面図。
【図2】前記加熱・保温チューブを有する装置の流体入口付近の拡大断面図。
【図3】接続前の雄雌コネクタの断面図。
【図4】第1電極及び第2電極、浸水検知用ピン及び吸液材の組付け状態を示す斜視図。
【図5】接続状態にある雄雌コネクタの断面図。
【図6】第1電極又は/及び第2電極と、浸水検知用ピンとが電気的接続状態となることを示す概念図。
【図7】浸水検知用電線が通電状態になった場合、漏電ブレーカが落ちて電源線からの電気が端末機器側に供給されなくなる例を示す概念図。
【符号の説明】
【0028】
T 端末機器
S1 主管機器
2 漏電検知機能付き電気コネクタ
3 雄コネクタ
4 雌コネクタ
30、31、32 雄ターミナル
33、34、35 雄ワイヤシール
30a 第1電極
31a 浸水検知用ピン
32a 第2電極
36 雄係止部
40、41、42 雌ターミナル
40a、40b、40c 開口
43、44、45 雌ワイヤーシール
47 雌係止部
48 コネクタシール


































【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に漬けられた絶縁被覆されているヒータ線や電線を具えて成る端末機器の電線端末と、主管機器又は制御機器の電線端末との間に取り付けられる雄雌コネクタであって、前記雄雌コネクタで構成される空間内には、端末機器の電線端末に電気的接続状態となっている第1電極及び第2電極と、前記端末機器の電線端末から浸入してきた液体に接することで第1電極又は第2電極に短絡して通電状態となる浸水検知用ピンとを具えていることを特徴とする漏電検知機能付き電気コネクタ。
【請求項2】
雄雌コネクタの接続状態では、第1電極及び第2電極の一端側は端末機器側の電線端末と、第1電極及び第2電極の他端側は主管機器又は制御機器側の電線端末と、それぞれ電気的接続状態になると共に、浸水検知用ピンは主管機器又は制御機器とは別の浸水検知用電線に電気的接続状態となっていることを特徴とする請求項1記載の漏電検知機能付き電気コネクタ。
【請求項3】
第1電極、第2電極及び浸水検知用ピンは、雄雌コネクタのうちいずれか一方側に設けており、浸入してきた液体が一つの吸液材により吸液されることにより、前記第1電極、第2電極及び浸水検知用ピンが相互に電気的接続状態となるようにしていることを特徴とする請求項1又は2記載の漏電検知機能付き電気コネクタ。
【請求項4】
雄雌コネクタは接続状態において、防水性を有するものとしてあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の漏電検知機能付き電気コネクタ。
















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−73405(P2010−73405A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237768(P2008−237768)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000247258)ニッタ・ムアー株式会社 (61)
【Fターム(参考)】