説明

演奏教習装置および演奏教習プログラム

【課題】 講師と生徒とが並んで演奏をする状態で、講師が生徒の演奏に注意しながら、アドバイスを与える。
【解決手段】 CPU21は、第2の鍵域11bに属する鍵が操作されたときに、第2の鍵域11bに属する鍵と音高的に一定の対応関係にある第1の鍵域11aに属する鍵が押鍵されたかを判断し、押鍵されていない場合に、第2の鍵域に属する鍵の操作に基づく演奏データのレコードをRAM23に格納する。また、一定の対応関係にある第1の鍵域11aに属する鍵が押鍵されていない回数を示す非操作回数をカウントする。カウントされた非操作回数が所定数より大きくなったときに、CPU21は、RAM23に格納された演奏データのレコードに基づき、第1の鍵域に属する鍵に対応するLEDを点灯させる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏の教習に用いることができる演奏教習装置および演奏教習プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動演奏される曲に合わせて、鍵盤の鍵などの演奏操作子の内部、或いは、演奏操作子の上部に配置されたLEDを点灯して、操作すべき演奏操作子を指示するような演奏教習装置が知られている。上述した自動教習装置を利用した自動教習装置よりも、実際に、講師から直接教わる方が、演奏練習を行なう者(生徒)の技量に応じてその演奏形態を柔軟に変更できるうえ、適切なアドバイスを与えられ得るため、より緻密な教習が実現できる。
【0003】
しかしながら、講師から直接教わるには、講師用の演奏装置と生徒用の演奏装置とをそれぞれ用意する必要があり、音楽教室など特定の場所でしか教習を実現することができず、一般家庭で上述したような教習を実現することは困難であった。
【0004】
そこで、特許文献1には、一つの演奏装置に設けられた演奏操作子群を2つに分割して、2つの連続する演奏操作子の領域を設けることが提案されている。特許文献1に提案された演奏教習装置において、分割された一方の演奏操作子群の何れかの演奏操作子を操作すれば、他方の演奏操作子群のうち、当該操作された演奏操作子と所定の音高関係のある演奏操作子を指示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3586754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、講師が傍らに居るからといって、生徒が、講師の演奏に合わせた演奏を行なうことは実質的に不可能である。したがって、講師は、生徒を指導する際には、生徒の演奏に注意しつつアドバイスを与えることを、生徒がある程度演奏ができるようになるまで繰り返す必要があった。
【0007】
本発明は、講師と生徒とが並んで演奏をする状態で、講師が生徒の演奏に注意しながら、アドバイスを与えることが可能な演奏教習装置および演奏教習プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、音高順に配置された複数の演奏操作子であって、第1の領域と、第2の領域とを有する複数の演奏操作子と、
少なくとも前記第1の領域の各演奏操作子に対応し、当該対応する演奏操作子を指定する複数の操作子指定手段と、
前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に基づく演奏データを格納する演奏データ記憶手段と、
前記演奏操作子の操作に基づいて、当該演奏操作子に対応する音高の楽音データの生成を前記楽音データ生成手段に指示する制御手段と、を備え、
前記制御手段が、前記第2の領域に属する演奏操作子の何れかが操作されたときに、前記演奏操作子と音高的に一定の対応関係にある、前記第1の領域に属する演奏操作子に対応する音高の楽音データを生成するように楽音データ生成手段に指示するとともに、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させ、かつ、
前記制御手段が、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて、前記第1の領域に属する演奏操作子であって、前記第2の領域に属する演奏操作子と、前記一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されたかを判断し、当該一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されなかった場合に、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に基づく演奏データを、前記演奏データ記憶手段に格納し、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて前記一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されなかった非操作回数が、所定数より大きいときに、当該演奏データ記憶手段に格納された演奏データに基づき、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させることを特徴とする演奏教習装置により達成される。
【0009】
好ましい実施態様においては、前記制御手段が、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて操作された、第1の領域の演奏操作子が、前記第2の領域に属する演奏操作子と前記一定の対応関係に無かった場合、或いは、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて、第1の領域の操作子が操作されなかった場合に、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に基づく演奏データを、前記演奏データ記憶手段に格納する。
【0010】
別の好ましい実施態様においては、前記制御手段が、前記第1の領域の演奏操作子、および、第2の領域の演奏操作子が操作されなくなってから所定時間経過したときに、前記非操作回数が、所定数より大きいかを判断し、当該判断にしたがって、前記演奏データ記憶手段に格納された演奏データに基づき、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させる。
【0011】
また、好ましい実施態様においては、前記制御手段が、前記演奏データを演奏データ記憶手段に格納しているときに、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて、前記対応関係にある第1の演奏操作子が操作された場合に、前記演奏データおよび前記非操作回数を初期化する。
【0012】
別の好ましい実施態様においては、前記演奏データが、前記演奏操作子がオンされたことを示すノートオンイベント、演奏操作子がオフされたことを示すノートオフイベント、イベント間の時間間隔を示すタイムピリオドのレコードを含み、
前記制御手段が、前記演奏データ記憶手段に格納された演奏データのレコードのうち、まだ読み取られていない先頭のノートオンイベントを読み出して、当該ノートオンイベントが示す第1の領域に属する演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させ、また、タイムピリオドが示す時間の経過後、次のレコードを読み出し、前記動作中の操作子指定手段に対応する演奏操作子に関するノートオフイベントを読み出すと、前記動作中の操作子指定手段の動作を停止させる。
【0013】
さらに別の好ましい実施態様においては、前記制御手段が、前記演奏データ記憶手段に格納された演奏データに基づき、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させるとともに、前記演奏データに基づく音高の楽音データを生成するように前記楽音データ生成手段に指示する。
【0014】
好ましい実施態様においては、前記操作子指定手段は、発光素子である。
【0015】
また、本発明の目的は、音高順に配置された複数の演奏操作子であって、第1の領域と、第2の領域とを有する複数の演奏操作子と、少なくとも前記第1の領域の演奏操作子に対応し、当該演奏操作子を指定する複数の操作子指定手段と、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に基づく演奏データを格納する演奏データ記憶手段とを備えたコンピュータに、
前記演奏操作子の操作に基づいて、当該演奏操作子に対応する音高の楽音データの生成を楽音データ生成手段に指示する制御ステップを実行させ、
前記制御ステップが、前記第2の領域に属する演奏操作子の何れかが操作されたときに、前記演奏操作子と音高的に一定の対応関係にある、前記第1の領域に属する演奏操作子に対応する音高の楽音データを生成するように楽音データ生成手段に指示するとともに、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させるステップと、
前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて、前記第1の領域に属する演奏操作子であって、前記第2の領域に属する演奏操作子と、前記一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されたかを判断し、当該一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されなかった場合に、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に基づく演奏データを、前記演奏データ記憶手段に格納し、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて前記一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されなかった非操作回数が、所定数より大きいときに、当該演奏データ記憶手段に格納された演奏データに基づき、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させるステップと、を有することを特徴とする演奏教習プログラムにより達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、講師と生徒とが並んで演奏をする状態で、講師が生徒の演奏に注意しながら、アドバイスを与えることが可能な演奏教習装置および演奏教習プログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる演奏教習装置の概略を示す図である。
【図2】図2は、本実施の形態にかかる演奏教習装置の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図3】図3は、本実施の形態にかかる演奏教習装置のメインフローの概略を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本実施の形態にかかるスイッチ処理の例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本実施の形態にかかる鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施の形態にかかる鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本実施の形態にかかる鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本実施の形態にかかる鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本実施の形態にかかる鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本実施の形態にかかる鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本実施の形態において生成された演奏データのデータ構成例を示す図である。
【図12】図12は、本実施の形態にかかるナビゲート処理の例を示すフローチャートである
【図13】図13は、本実施の形態にかかるナビゲート処理の例を示すフローチャートである
【図14】図14(a)は、本実施の形態にかかる第1のタイマインタラプト処理、図14(b)は、本実施の形態にかかる第2のタイマインタラプト処理の例を示すフローチャートである。
【図15】図15(a)〜(e)は、教習モードにおける押鍵、離鍵およびその後のLEDの点灯、消灯を説明する図である。
【図16】6図16(a)〜(g)は、教習モードにおける押鍵、離鍵およびその後のLEDの点灯、消灯を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる演奏教習装置の概略を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる演奏教習装置10は、電子鍵盤楽器の形態をとり、鍵盤11を有する。鍵盤11は、キーナンバー「0」の鍵からキーナンバー「SP」までの鍵を含む第1の鍵域11aと、キーナンバー「SP+1」からキーナンバー「N−1」までの鍵を含む第2の鍵域11bとを備える。たとえば、本実施の形態において、第1の鍵域11aは2オクターブの音域を有する。キーナンバー「SP」がスプリットポイントを示す。後述するように、本実施の形態においては、後述する教習モードにおいて、第1の鍵域11aの鍵を押鍵すれば、キーナンバー「n」に対応する音高の楽音が発音される。その一方、教習モードにおいて第2の鍵域11bの鍵(キーナンバー「m」)を押鍵すると、キーナンバー「m−24」に対応する音高の楽音、つまり、キーナンバー「m」より2オクターブ低い音高の楽音が発音される。
【0019】
また、本実施の形態にかかる演奏教習装置10において、少なくとも第1の鍵域11aの鍵のそれぞれに対応したLEDが配置されたナビゲータ表示領域16が設けられる。本実施の形態においては、ナビゲータ表示領域16は、第1の鍵域11aの上部に設けられているがこれに限定されるものではなく、少なくとも第1の鍵域11aの各鍵の内部にLEDが設けられても良い。本実施の形態においては、ナビゲータ表示領域16が設けられた第1の鍵域11aが生徒用の鍵域であり、第2の鍵域11bが講師用の鍵域となる。
【0020】
図1には示していないが、演奏教習装置10は、発音すべき楽音の音色を指定する音色指定スイッチ、当該演奏教習装置10における動作モードを指定するモードスイッチを含む入力部12を備える。また、図1には示していないが、演奏教習装置10には液晶表示装置14が設けられ、音色など種々の情報を含む画像を表示することができる。本実施の形態にかかる演奏教習装置10においてはモードスイッチの操作により、通常モードおよび教習モードの何れかの演奏モードの下で動作する。
【0021】
通常モードにおいては、鍵盤11を単一の鍵域として用いて、押鍵された鍵のキーナンバーに対応する音高の楽音が発生される。教習モードにおいては、第1の鍵域の鍵については押鍵された鍵のキーナンバーに対応する音高の楽音が発生され、その一方、第2の鍵域の鍵については押鍵された鍵のキーナンバーより2オクターブ低い音高の楽音が発音され、かつ、第2の鍵域の押鍵に応答して、第1の鍵域における一定の関係を有する鍵に対応するLEDが点灯する。
【0022】
また、教習モードにおいては、第1の鍵域11aにおける鍵の押鍵と、第2の鍵域11bにおける鍵の押鍵と間で音高或いは押鍵時刻のずれが生じたときを、非操作回数を示すパラメータMISSとしてカウントし、双方の鍵域での新規の押鍵、離鍵がなくなってから所定時間が経過したときに、パラメータMISSが所定値を超えていた場合に、記録された演奏データについて、第1の鍵域11aにおいてLEDの点灯、消灯することにより、講師の押鍵操作に沿った演奏をガイドする。
【0023】
図2は、本実施の形態にかかる演奏教習装置の構成を示すブロックダイヤグラムである。図2に示すように、本実施の形態にかかる演奏教習装置10は、CPU21、ROM22、RAM23、サウンドシステム24、鍵盤11、入力部12および表示部13を備える。
【0024】
入力部12は、音色指定スイッチやモードスイッチを有する。表示部13は、液晶表示装置14およびLED群15を有する。LED群15を構成するLEDは、演奏教習装置の第1の鍵域11aの上部位置するナビゲータ表示領域16において、第1の鍵域11aの鍵に対応付けられて配置されている。
【0025】
CPU21は、演奏教習装置10全体の制御、鍵盤11の鍵の押鍵や入力部12を構成するスイッチ(モードスイッチ)の操作の検出、鍵やスイッチの操作にしたがったサウンドシステム24の制御、LEDの点灯など種々の処理を実行する。
【0026】
ROM22は、CPU21に実行させる種々の処理、鍵盤11の鍵の押鍵や入力部12を構成するスイッチ(モードスイッチ)の操作の検出、鍵やスイッチの操作にしたがったサウンドシステム24の制御、LEDの点灯など種々の処理プログラムを格納する。また、ROM22は、ピアノ、ギター、バスドラム、スネアドラム、シンバルなどの楽音を生成するための波形データを格納した波形データエリアを有する。
【0027】
RAM23は、ROM22から読み出されたプログラムや、処理の過程で生成されたパラメータやデータを記憶する。また、本実施の形態においては、教習モードにおいて、第2の鍵域11bにおいて押鍵された鍵に基づくイベントおよびタイムピリオドのレコードが生成され、イベントおよびタイムピリオドのレコードから構成される演奏データがRAM23に格納される。
【0028】
サウンドシステム24は、音源部26、オーディオ回路27およびスピーカ28を有する。音源部26は、たとえば、ノートオンイベントをCPU21から受信すると、ROM22の波形データエリアから所定の波形データを読み出して、所定の音高の楽音データを生成して出力する。オーディオ回路27は、楽音データをD/A変換して増幅する。これによりスピーカ28から音響信号が出力される。
【0029】
図3は、本実施の形態にかかる演奏教習装置のメインフローの概略を示すフローチャートである。電源の投入とともに、メインフローは起動し、イニシャライズ処理(ステップ301)の後、ステップ302以降の処理が繰り返し実行される。図3に示すように、CPU21は、演奏教習装置10の電源が投入されると、RAM23中のデータのクリア、液晶表示装置14の画像のクリアおよびLED群15のクリアを含むイニシャライズ処理を実行する(ステップ301)。イニシャライズ処理(ステップ301)が終了すると、CPU21は、入力部12を構成するスイッチのそれぞれの操作を検出し、検出された操作にしたがった処理を実行するスイッチ処理を実行する(ステップ302)。図4は、本実施の形態にかかるスイッチ処理の例を示すフローチャートである。
【0030】
図4に示すように、スイッチ処理において、CPU21は、入力部12のいずれかのスイッチの操作があったかを判断する(ステップ401)。ステップ401でNoと判断された場合には、スイッチ処理を終了する。ステップ401でYesと判断された場合には、CPU21は、操作されたスイッチが、モードスイッチであるかを判断する(ステップ402)。ステップ402でNoと判断された場合には、CPU21は、操作されたスイッチ(たとえば、音色指定スイッチ)にしたがった処理(その他のスイッチ処理)を実行する(ステップ403)。
【0031】
ステップ402でYesと判断された場合には、CPU21は、モードスイッチにより教習モードが指定されたかを判断する(ステップ404)。ステップ404でNoと判断された場合には、CPU21は、RAM23中のモード指定フラグNFに「0」をセットする(ステップ405)。次いで、CPU21は、第1のタイマインタラプトを停止する(ステップ406)。
【0032】
ステップ402でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM23中のモード指定フラグNFに「1」をセットする(ステップ407)。その後、CPU21は、第1のタイマ値Tに初期値「0」を格納する(ステップ408)とともに、各種フラグおよびRAM23中のレジスタ等を初期化する(ステップ409)。また、CPU21は、第1のタイマインタラプトを解除する。なお、本明細書において、タイマインタラプトの解除とは、タイマインタラプトの動作制限をやめて、動作可能とすること、つまり、タイマインタラプト処理が実行され得る状態となることを意味している。
【0033】
スイッチ処理(ステップ302)が終了すると、CPU21は、鍵盤処理を実行する(ステップ303)。図5ないし図10は、本実施の形態にかかる鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【0034】
本実施の形態にかかる鍵盤処理においては、キーナンバーの小さい鍵(キーナンバー「0」)から順に、鍵の状態が判定され、必要な処理が実行される。図5に示すように、CPU21は、まず、モード指定フラグNFが「0」であるかを判断する(ステップ501)。ステップ501でYes、つまり、演奏教習装置10が通常モードの下で動作している場合に、CPU21は、キーナンバーを特定するパラメータKNを「0」に初期化して(ステップ502)、パラメータKNが示す鍵の状態を判断する(ステップ503)。ステップ502においては、パラメータKNが示す件が新規に「オン」状態となったこと、新規に「オフ」状態となったこと、或いは、鍵の状態が「変化なし」であること、の何れかが判断される。
【0035】
ステップ503で鍵が「オン」状態と判断された場合には、CPU21は、KNに対応する鍵、つまり、キーナンバーKNの鍵のノートオンイベントを生成して、音源部26に送出する(ステップ504)。音源部26は、ノートオンイベントにしたがって、指定された音色の波形データを、指定された音高に基づいて読み出して、かつ、読み出された波形データに、エンベロープに基づく乗算値を乗算して楽音データを生成し、オーディオ回路27に出力する。次いで、CPU21は、パラメータKNをインクリメントして(ステップ506)、パラメータKNが、最大数(本実施の形態では「N−1」)以下であれば(ステップ507でNo)、ステップ503に戻る。
【0036】
ステップ503で鍵が「オフ」状態と判断された場合には、CPU21は、KNに対応する鍵、つまり、キーナンバーKNの鍵のノートオフイベントを生成して、音源部26に送出する(ステップ505)。音源部26は、ノートオフイベントにしたがって、読み出された波形データに、リリースエンベロープに基づく乗算値を乗算して、徐々に減衰する楽音データを生成し、オーディオ回路27に出力する。その後、ステップ506に進む。ステップ503において、鍵状態が「変化なし」と判断された場合にもステップ506に進む。
【0037】
次に、ステップ501でNoと判断された場合、つまり、演奏教習装置10が「教習モード」の下で動作している場合について説明する。ステップ501でNoと判断された場合にも、CPU21は、キーナンバーを特定するパラメータKNを「0」に初期化して(ステップ601)。パラメータKNが示す鍵の状態を判断する(ステップ602)。ステップ602で鍵が「オン」状態と判断された場合には、CPU21は、パラメータKNが、スプリットポイントSPより大きいかを判断する(ステップ603)。
【0038】
ステップ603でNoと判断された場合には、CPU21は、RAM23中の下側鍵ナンバーを示すパラメータDKNに、キーナンバーKNをセットする(ステップ604)とともに、下側押鍵フラグDFを「1」にセットする(ステップ605)。その後、CPU21は、KNに対応する鍵、つまり、キーナンバーKNの鍵のノートオンイベントを生成して、音源部26に送出する(ステップ606)。音源部26は、ノートオンイベントにしたがって、指定された音色の波形データを、指定された音高に基づいて読み出して、かつ、読み出された波形データに、エンベロープに基づく乗算値を乗算して楽音データを生成し、オーディオ回路27に出力する。
【0039】
ステップ603でYesと判断されることは、教習モードにおいて、第2の鍵域11bの鍵が押鍵されたことを意味している。ステップ603でYesと判断された場合には、CPU21は、講師の演奏に基づくキーナンバーTKNとして、「KN−24」をセットする(ステップ607)。本実施の形態において、キーナンバーTKNは、キーナンバーKNより2オクターブ低い音高を示している。また、CPU21は、上側鍵ナンバーを示すパラメータUKNとして、講師の演奏に基づくキーナンバーTKNをセットする(ステップ608)とともに、LED点灯フラグTFを「1」にセットする(ステップ609)。さらに、CPU21は、上側押鍵フラグUFを「1」にセットする(ステップ610)。キーナンバーTKN、パラメータUKN、フラグTFおよびフラグUFは、それぞれRAM23中に格納される。
【0040】
次いで、CPU21は、TKNに対応する鍵、つまり、キーナンバーTKN(=KN−24)の鍵のノートオンイベントを生成して、音源部26に送出する(ステップ611)。音源部26は、ノートオンイベントにしたがって、指定された音色の波形データを、指定された音高に基づいて読み出して、かつ、読み出された波形データに、エンベロープに基づく乗算値を乗算して楽音データを生成し、オーディオ回路27に出力する。
【0041】
ステップ606或いはステップ611が終了した後、CPU21は、パラメータKNをインクリメントして(ステップ612)、パラメータKNが、最大数(本実施の形態では「N−1」)以下であれば(ステップ613でNo)、ステップ602に戻る。
【0042】
ステップ613でYesと判断された場合には、CPU21は、下側押鍵フラグDF=1かつ上側押鍵フラグUF=1であるかを判断する(ステップ701)。ステップ701でYesであることは、キーナンバー「0」から「N−1」のそれぞれの鍵の状態を調べた結果、第1の鍵域11aの鍵および第2の鍵域11bの鍵の双方の鍵が、「オン」状態となったことを示している。ステップ701でNoと判断された場合には、CPU21は、下側押鍵フラグDF=0で、かつ、上側押鍵フラグUF=1であるかを判断する(ステップ702)。
【0043】
ステップ701でYesと判断された場合には、CPU21は、下側鍵ナンバーDKNと上側鍵ナンバーUKNとが一致するかを判断する(ステップ703)。ステップ703でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM23内の演奏データをクリアする(ステップ704)とともに、非操作回数、つまり、生徒による押鍵が無かった場合或いは演奏ミスの数を示すパラメータMISSを「0」にクリアする(ステップ705)。また、CPU21は、下側押鍵フラグDFおよび上側押鍵フラグUFの双方を「0」にリセットし(ステップ706)、また、下側鍵ナンバーDKNおよび上側鍵ナンバーUKNをクリアする(ステップ707)。さらに、CPU21は、第1のタイマ値Tを「0」にリセットする(ステップ708)。
【0044】
次に、ステップ602で鍵が「オフ」状態と判断された場合について説明する。この場合には、CPU21は、パラメータKNが、スプリットポイントSPより大きいかを判断する(ステップ801)。ステップ801でYesと判断された場合には、CPU21は、「TKN+24=KN」であるかを判断する(ステップ802)。ステップ802では、新たに「オフ状態」となった鍵のキーナンバーに対応するパラメータKNが、講師の演奏に基づくキーナンバーTKNの2オクターブ上の音高に対応するかを判断している。ステップ802でYesと判断された場合には、LED点灯フラグTFを「0」にリセットする(ステップ803)。次いで、CPU21は、TKNに対応する鍵のノートオフイベントを生成して、音源部26に送出する(ステップ804)。音源部26は、ノートオフイベントにしたがって、読み出された波形データに、リリースエンベロープに基づく乗算値を乗算して、徐々に減衰する楽音データを生成し、オーディオ回路27に出力する。
【0045】
次いで、CPU21は、教師の演奏であることを示すフラグHFが「1」であるかを判断する(ステップ805)。ステップ805でYesと判断された場合には、ステップ805でYesと判断された場合には、CPU21は、第1のタイマのタイマ値Tを、演奏データのレコードとしてRAM23に格納する(ステップ806)。また、CPU21は、TKNに対応する鍵のノートオフイベントを生成して、演奏データのレコードとしてRAM23に格納する(ステップ807)。その後、CPU21は、第1のタイマをリセットしてタイマ値Tを「0」にする(ステップ808)とともに、フラグHFを「0」にリセットする(ステップ809)。
【0046】
以下、本発明にかかる演奏データについて説明する。図11は、生成された演奏データのデータ構成例を示す図である。図11に示すように、演奏データ1100においては、たとえば、ノートオンイベント、タイムピリオド、ノートオフイベント、タイムピリオドという順にレコードが格納されている(たとえば、符号1101参照)。ノートオンイベント#00(符号1111参照)には、押鍵された鍵のキーナンバーが含まれる。また、引き続くタイムピリオド#00(符号1112参照)は、ノートオンイベント#00と、次のイベント(ノートオフイベント#0)までのタイマ値が格納される。
【0047】
ステップ801でNoと判断された場合には、CPU21は、KNに対応する鍵のノートオフイベントを生成して、音源部26に送出する(ステップ810)。ステップ809或いはステップ810が終了すると、ステップ612に進む。
【0048】
次に、ステップ702でNoと判断された場合について説明する。ステップ702でNoと判断された場合に、CPU21は、下側押鍵フラグDF=0で、かつ、上側押鍵フラグUF=0であるかを判断する(ステップ901)。ステップ901では、第1の鍵域11aおよび第2の鍵域11bの何れにおいても新規の押鍵がされていないことが判断される。ステップ901でYesと判断された場合には、CPU21は、第1のタイマ値Tが所定時間より大きいかを判断する(ステップ902)。ステップ902でYesと判断された場合には、さらに、CPU21は、非操作回数を示すパラメータMISSが所定値より大きいかを判断する(ステップ903)。ステップ901〜903の何れかでNoと判断された場合には、鍵盤処理は終了する。
【0049】
ステップ903でYesと判断された場合には、CPU21は、ガイドフラグGFを「1」にセットする(ステップ904)。ガイドフラグGFもRAM23に格納される。次いで、CPU21は、RAM23中に演奏データのレコードが存在しているかを判断する(ステップ905)。ステップ905でNoと判断された場合には、CPU21は、ガイドフラグGFを「0」にリセットして(ステップ906)、鍵盤処理を終了する。
【0050】
ステップ905でYesと判断された場合には、CPU21は、演奏データにおいてまだ読み出されていないレコードのうち、先頭に位置するレコードを読み出し(ステップ907)、レコードの種別を判断する(ステップ908)。レコード種別がタイムピリオドである場合には、CPU21は、第2のタイマ値tに、読み出されたレコードに含まれる値をセットする(ステップ909)。次いで、CPU21は、第2のタイマインタラプトを解除して(ステップ910)、鍵盤処理を終了する。
【0051】
レコード種別がイベントである場合には、CPU21は、イベント種別を判断する(ステップ911)。イベントがノートオンイベントである場合には、CPU21は、ノートオンイベントが示す音高に対応するLEDを点灯する(ステップ912)。その一方、イベントがノートオフイベントである場合には、CPU21は、ノートオフイベントが示す音高に対応するLEDを消灯する(ステップ913)。その後、CPU21は、演奏データの次のレコードを読み出して(ステップ914)、ステップ908に戻る。
【0052】
次に、ステップ702でYesと判断された場合、或いは、ステップ703でNoと判断された場合について説明する。ステップ702でYesと判断されることは、第2の鍵域11bにおいて新規に押鍵があったにもかかわらず、第1の鍵域11aにおいては新規の押鍵がなかったことを示す。或いは、ステップ703でNoと判断されることは、第2の鍵域11bにおいて新規に押鍵があり、かつ、第1の鍵域11aにおいては新規の押鍵があったにもかかわらず、それらのキーナンバー(DKN、UKN)が一致しなかったことを示す。
【0053】
この場合には、CPU21は、非操作回数を示すパラメータMISSをインクリメントし(ステップ1001)、また、CPU21は、第1のタイマのタイマ値Tを、演奏データのレコードとしてRAM23に格納する(ステップ1002)。また、CPU21は、TKNに対応する鍵のノートオンイベントを生成して、演奏データのレコードとしてRAM23に格納する(ステップ1003)。CPU21は、第1のタイマ値Tを「0」にリセットする(ステップ1004)。また、CPU21は、下側押鍵フラグDFおよび上側押鍵フラグUFの双方を「0」にリセットし(ステップ1005)、下側鍵ナンバーDKNおよび上側鍵ナンバーUKNをクリアする(ステップ1006)。その後、CPU21は、教師の演奏であることを示すフラグHFを「1」にセットして(ステップ1007)、鍵盤処理を終了する。
【0054】
鍵盤処理(ステップ303)の後、CPU21は、ナビゲート処理を実行する(ステップ304)。図12および図13は、本実施の形態にかかるナビゲート処理の例を示すフローチャートである。図12に示すように、CPU21は、モード指定フラグNFが「1」であるかを判断する(ステップ1201)。ステップ1201でYesと判断された場合には、CPU21は、ガイドフラグGFが「0」であるかを判断する(ステップ1202)。ステップ1202でYesと判断された場合には、LED点灯フラグTFが「1」であるかを判断する(ステップ1203)。ステップ1203でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM23に格納されたTKNを参照して、TKNが示す音高に対応するLEDを点灯する(ステップ1204)。その一方、LED点灯フラグTFが「0」である場合には、TKNが示す音高に対応するLEDを消灯する(ステップ1205)。
【0055】
ステップ1202でNoと判断された場合には、CPU21は、第2のタイマ値tが「0」以下であるかを判断する(ステップ1206)。ステップ1201またはステップ1206でNoと判断された場合、或いは、ステップ1205または1204が終了したときには、ナビゲート処理処理を終了する。
【0056】
ステップ1206でYesと判断された場合には、CPU21は、演奏データから、読み出されていないレコードのうち、先頭のレコード、つまり、先の処理で読み出されたレコードの次のレコードを読み出す(ステップ1301)。読み出すレコードが存在した場合には(ステップ1302でNo)、CPU21は、レコードの種別を判断する(ステップ1303)。レコード種別がタイムピリオドである場合には、第2のタイマ値tに、読み出されたレコードに含まれる値をセットして(ステップ1304)、ナビゲート処理を終了する。
【0057】
その一方、レコード種別がイベントである場合には、CPU21は、イベント種別を判断する(ステップ1305)。イベントがノートオンイベントである場合には、CPU21は、ノートオンイベントが示す音高に対応するLEDを点灯する(ステップ1306)。その一方、イベントがノートオフイベントである場合には、CPU21は、ノートオフイベントが示す音高に対応するLEDを消灯する(ステップ1307)。ステップ1306、1307の後、ステップ1301に戻る。
【0058】
ステップ1302においてNoと判断された場合、つまり、演奏データのレコードが末尾まで読み出された場合には、CPU21は、ガイドフラグGFを「0」にリセットする(ステップ1308)とともに、非操作回数を示すパラメータMISSを「0」にクリアする(ステップ1309)。また、CPU21は、第2インタラプトを停止する(ステップ1310)とともに、RAM23中の演奏データエリアをクリアする(ステップ1311)。
【0059】
ナビゲート処理(ステップ304)が終了すると、CPU21は、その他の処理、たとえば、液晶表示装置14の画像の生成および表示などを実行する(ステップ305)。
【0060】
なお、第1のタイマインタラプト、および、第2のタイマインタラプトが解除されると、第1のタイマインタラプト処理および第2のタイマインタラプト処理が、図14(a)、(b)に示すようにそれぞれ実行される。第1のインタラプト処理、および、第2のインタラプト処理は、所定の単位時間ごとに実行される。図14(a)に示すように、第1のタイマインタラプト処理においては、第1のタイマ値Tがインクリメントされる(ステップ1401)。その一方、図14(b)に示すように、第2のタイマインタラプト処理においては、第2のタイマ値がデクリメントされる(ステップ1402)。
【0061】
次に、教習モードにおけるLEDの点灯、消灯について、より具体的に説明する図15(a)〜(e)、および、図16(a)〜(g)は、教習モードにおける押鍵、離鍵およびその後のLEDの点灯、消灯を説明する図である。図15(a)では、第1の鍵域11aにおいて生徒により、キーナンバーKNS1の鍵が押鍵され、また、第2の鍵域11bにおいて講師により、キーナンバーKNT1の鍵が押鍵された場合を示す。ここで、DKN≠UKN、つまり、発音すべき音高のキーナンバーが不一致の場合には、ステップ703でNoと判断され、ステップ1001において、非操作回数を示すパラメータMISSがインクリメントされるとともに、ステップ1002〜1003において、演奏データのレコード(タイムピリオドおよびノートオンイベント:符号1502参照)が生成される。
【0062】
その後、図15(b)に示すように、講師側のキーナンバーKNT1の鍵が離鍵されると、ステップ806〜807において、演奏データのレコード(タイムピリオドおよびノートオフイベント:符号1502参照)が生成される。
【0063】
また、図15(c)は、第2の鍵域11bにおいて講師よりキーナンバーKNT2の鍵が押鍵されたが、第1の鍵域11aにおいては生徒による押鍵がなかったことを示している。この場合には、ステップ701でNo、ステップ702でYesと判断され、ステップ1001において、パラメータMISSがインクリメントされるとともに、ステップ1002〜1003において、演奏データのレコード(タイムピリオドおよびノートオンイベント:符号1503参照)が生成される。その後、図15(d)に示すように、講師側のキーナンバーKNT2の鍵が離鍵されると、ステップ806〜807において、演奏データのレコード(タイムピリオドおよびノートオフイベント:符号1504参照)が生成される。
【0064】
第1の鍵域11aにおいて押鍵された鍵、および、第2の鍵域11bにおいて押鍵された鍵について、発音すべき音高のキーナンバーが不一致したこと、或いは、押鍵された鍵のタイミングが異なることが繰り返されることにより、パラメータMISSがインクリメントされるとともに演奏データのレコードが生成される。図15(e)の符号1505は、その結果、ノートナンバーKNT1〜KNTnの押鍵に基づく演奏データのレコード(ノートオンイベント、ノートオフイベントおよびタイムピリオド)の例を示す。
【0065】
図16(a)に示す演奏データのレコード1600(図15(e)に示すものと同様である)がRAM23に格納された状態で、第1の鍵域11aおよび第2の鍵域11bの双方において、所定値より長い時間だけ、新たな鍵の押鍵或いは離鍵が無かったとする。図16(b)に示すように、第1のタイマ値Tが所定時間より大きく、かつ、パラメータMISSが所定値より大きい場合には、ステップ902、903にいてYesと判断され、ステップ907において、ノートオンイベントKOnTKNT1のレコードが読み出されて、ステップ912において、キーナンバーTKNT1が示す音高のLEDが点灯される。また、ステップ909、910において、第2のタイマ値tとして演奏レコード中のタイムピリオドT2がセットされるとともに、第2のタイマインタラプトが解除される。
【0066】
図16(c)に示すように、第2のタイマインタラプトが解除されたことにより、第2のタイマ値tが「0」以下になると、ステップ1206、ステップ1301、1302、1303などを経て、演奏データの次のレコード(ノートオフイベントKOffTKNT1)が読み出され、ステップ1307において、キーナンバーTKNT1が示す音高のLEDが消灯される。また、ステップ1304において、第2のタイマ値tとして演奏データ中のタイムピリオドT3がセットされる。
【0067】
図16(d)に示すように、再度、タイマ値tが「0」以下になると、ステップ1206、ステップ1301、1302、1303などを経て、演奏データの次のレコード(ノートオンイベントKOnTKNT2)が読み出され、ステップ1306において、キーナンバーTKNT2が示す音高のLEDが点灯される。また、ステップ1304において、第2のタイマ値tとして演奏データ中のタイムピリオドT4がセットされる。
【0068】
図16(e)に示すように、第2のタイマ値tが「0」以下になると、ステップ1206、ステップ1301、1302、1303などを経て、演奏データの次のレコード(ノートオフイベントKOffTKNT2)が読み出され、ステップ1307において、キーナンバーTKNT2が示す音高のLEDが消灯される。また、ステップ1304において、第2のタイマ値tとして演奏データ中のタイムピリオドT5がセットされる。
【0069】
タイマ値tに示す時間の間隔で、LEDの点灯、消灯が繰り返され、図16(f)に示すように、再度、タイマ値tが「0」以下になると、ステップ1206、ステップ1301、1302、1303などを経て、演奏データの次のレコード(ノートオンイベントKOnTKNTn)が読み出され、ステップ1306において、キーナンバーTKNTnが示す音高のLEDが点灯される。また、ステップ1304において、第2のタイマ値tとして演奏データ中のタイムピリオドT2nがセットされる。
【0070】
さらに、図16(g)に示すように、第2のタイマ値tが「0」以下になると、ステップ1206、ステップ1301、1302、1303などを経て、演奏データの次のレコード(ノートオフイベントKOffTKNTn)が読み出され、ステップ1307において、キーナンバーTKNT2が示す音高のLEDが消灯される。また、レコードの末尾であるため、その後に実行されるステップ1302でYesと判断される。したがって、ステップ1308〜1311において、フラグGFが「0」にリセットされ、パラメータMISSがクリアされ、第2のタイマインタラプトが停止され、かつ、RAM23中の演奏データがクリアされる。
【0071】
本実施の形態においては、CPU21は、第2の鍵域11bに属する鍵の何れかが操作されたときに、当該第2の鍵域11bに属する鍵と音高的に一定の対応関係にある、第1の鍵域11aに属する鍵に対応する音高の楽音楽音データを生成するように音源部26に指示を与えるとともに、第1の鍵域に属する鍵に対応するLEDを点灯させる。また、CPU21は、第2の鍵域11bに属する鍵が押鍵されたときに、一定の対応関係にある第1の鍵域11aに属する鍵が押鍵されたかを判断し、押鍵されていない場合に、第2の鍵域に属する鍵の操作に基づく演奏データのレコードをRAM23に格納する。また、一定の対応関係にある第1の鍵域11aに属する鍵が押鍵されていない回数を示す非操作回数をカウントする。カウントされた非操作回数が所定数より大きくなったときに、CPU21は、RAM23に格納された演奏データのレコードに基づき、第1の鍵域に属する鍵に対応するLEDを点灯させる。
【0072】
本実施の形態によれば、第2の鍵域における講師の押鍵と、第1の鍵域における生徒の押鍵との不一致を示す非操作回数が所定数より大きくなると、講師が第2の鍵域において操作した鍵による一連の演奏にしたがって、第1の鍵域の鍵に対応付けられたLEDが順次点灯する。したがって、生徒は、第1の鍵域の一連の鍵のそれぞれに対応付けられたLEDの点灯を参照して、一連の鍵の操作に基づくフレーズを練習することができる。特に、生徒が講師の演奏と同じような演奏ができなくなった状態で、LEDが点灯するため、生徒は、自分が見失ったフレーズをLEDの点灯により確認することができる。また、講師も、その際に、LEDの点灯に基づく生徒による、当該一連の鍵と同等の鍵の操作に注意をしてアドバイスを与えることができる。
【0073】
また、CPU21は、第2の鍵域に属する鍵の押鍵に応じて押鍵された、第1の鍵域に属する鍵が、当該第2の鍵域に属する鍵と対応関係に無かった場合、或いは、第2の鍵域に属する鍵の押鍵に応じて、第1の鍵域に属する鍵が押鍵されなかった場合に、第2の鍵域の押鍵操作に基づく演奏データのレコードを生成して、RAM23に格納する。すなわち、第1の鍵域において押鍵はされたものの、第2の鍵域における押鍵された鍵と一定の対応関係に無い場合(キーナンバーの不一致の場合)や、そもそも第1の鍵域に属する鍵が押鍵されなかった場合に、生徒が演奏すべきフレーズを見失ったと判断して、講師の演奏(第2の鍵域における鍵の操作)に基づく演奏データを生成している。
【0074】
また、本実施の形態において、CPU21は、第1の鍵域の鍵、および、第2の鍵域の鍵が操作されなくなってから所定時間経過したときに、非操作回数が、所定数より大きいかを判断し、当該判断にしたがって、RAM23に格納された演奏データに基づき、第1の鍵域に属する鍵に対応するLEDを点灯させる。したがって、講師および生徒の双方の演奏が中断して所定時間が経過すると、講師の操作による一連の鍵のそれぞれと一定の対応関係にある第1の鍵域の、一連の鍵のそれぞれに対応付けられたLEDが順次点灯する。したがって、講師は、生徒の演奏が中断したときに自分の演奏も中断させることにより、所定時間後にLEDの点灯によるガイドを開始させることができる。
【0075】
さらに、本実施の形態において、CPU21は、RAM23に演奏データを格納しているときに、第2の鍵域に属する押鍵された鍵と、第1の鍵域に属する押鍵された鍵が一定の関係となったときには、演奏データをクリアするとともに、カウントされている非操作回数も初期化する。これは、生徒がその時点で講師の演奏しているフレーズを再度見出したことを意味しているため、演奏を継続させる趣旨である。
【0076】
また、本実施の形態において、演奏データは、鍵がオンされたことを示すノートオンイベント、鍵がオフされたことを示すノートオフイベント、イベント間の時間間隔を示すタイムピリオドのレコードを含む。CPU21は、演奏データのレコードのうち、まだ読み取られていない先頭のノートオンイベントを読み出して、当該ノートオンイベントが示す第1の鍵域に属する鍵に対応するLEDを点灯させ、また、タイムピリオドが示す時間の経過後、次のレコードを読み出し、また、点灯中のLEDに対応する鍵に関するノートオフイベントを読み出すと、当該点灯中のLEDを消灯させる。したがって、LEDの点滅は、講師が鍵の押鍵および離鍵のタイミングに合致させることができる。
【0077】
本実施の形態においては、演奏操作子である鍵のそれぞれを指定する操作子指定手段としてLEDが用いられている。LEDは、鍵のそれぞれに隣接して配置されていても良いし、鍵のそれぞれの内部に配置されていても良い。LEDを点灯させることにより、生徒は、押鍵すべき鍵を即座に知ることが可能となる。
【0078】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0079】
前記実施の形態において、演奏操作子である鍵を指定する操作子指定手段としてLEDが持ちられているがこれに限定されるものではない。たとえば、液晶表示装置の画面上に第1の鍵域に相当する画像を生成して、当該画像中、所定の鍵を指定する印を含ませることにより、操作すべき鍵を指定しても良い。
【0080】
また、前記実施の形態において、低音域側の第1の鍵域11aを生徒用として使用し、第1の鍵域11aの上部にナビゲータ表示領域16を設け、ナビゲータ表示領域中に、第1の鍵域11aの鍵に対応付けてLEDを配置している。しかしながら、鍵域の位置関係は上述したものに限定されず、低音域側を講師用の第2の鍵域、高音域側を生徒用の第1の鍵域として、第1の鍵域の上部にナビゲータ表示領域を設けても良い。
【0081】
また、本実施の形態においては、CPU21は、第1の鍵域の鍵、および、第2の鍵域の鍵が操作されなくなってから所定時間経過したときに、非操作回数MISSが所定数より大きければ、RAM23に格納された演奏データに基づき、第1の鍵域に属する鍵に対応するLEDを点灯させる。しかしながら、LEDの点灯だけではなく、第1の鍵域に属する鍵の音高の楽音を発音させても良い。
【0082】
以下、教習モード(モード指定フラグNF=1)のときに、LEDの点灯および楽音の発音をさせるような処理について説明する。モード指定フラグNFが「1」のときに、演奏データからノートオンイベントが読み出され、ノートオンイベントが示す音高のLEDを点灯する処理が実行される(図9のステップ912、図13のステップ1306)。このときに、つまり、ステップ912、ステップ1306において、CPU21は、ノートオンイベントを音源部26に送出して、楽音データの生成を指示する。また、図9のステップ913、図13のステップ1307においては、演奏データからノートオフイベントが読み出され、ノートオフイベントが示す音高のLEDが消灯されている。このとき、つまり、ステップ913、ステップ1307において、CPU21は、ノートオフイベントを音源部26に送出して、発音中の楽音の消音を指示する。
【0083】
上述したように教習モードにおいて、LEDの点灯および楽音の発音をする構成としても良いし、教習モードは、前記実施の形態と同様にLEDの点灯のみを行い、さらに他の教習モードとして第2の教習モードを設け、演奏教習装置10が、第2の教習モード(モード指定フラグNF=2)のときに、上述したように、ノートオンイベントが示す音高のLEDを点灯する処理が実行される際に、CPU21がノートオンイベントを音源部26に送出し、かつ、ノートオフイベントが示す音高のLEDが消灯される際に、CPU21がノートオフイベントを音源部26に送出しても良い。
【0084】
このような構成を採用すると、講師の一連の鍵の操作に基づくフレーズを構成する鍵を、LEDの点灯により示すことができるとともに、楽音を発音することで、生徒に聴かせることも可能となる。すなわち、LEDの点灯により目によりフレーズを覚えさせ、同時に、楽音を聴かせることにより耳でフレーズを覚えさせることが可能となる。
【符号の説明】
【0085】
10 演奏教習装置
11 鍵盤
11a 第1の鍵域
11b 第2の鍵域
12 入力部
13 表示部
14 液晶表示装置
15 LED群
16 ナビゲータ表示領域
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 サウンドシステム
26 音源部
27 オーディオ回路
28 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音高順に配置された複数の演奏操作子であって、第1の領域と、第2の領域とを有する複数の演奏操作子と、
少なくとも前記第1の領域の各演奏操作子に対応し、当該対応する演奏操作子を指定する複数の操作子指定手段と、
前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に基づく演奏データを格納する演奏データ記憶手段と、
前記演奏操作子の操作に基づいて、当該演奏操作子に対応する音高の楽音データの生成を前記楽音データ生成手段に指示する制御手段と、を備え、
前記制御手段が、前記第2の領域に属する演奏操作子の何れかが操作されたときに、前記演奏操作子と音高的に一定の対応関係にある、前記第1の領域に属する演奏操作子に対応する音高の楽音データを生成するように楽音データ生成手段に指示するとともに、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させ、かつ、
前記制御手段が、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて、前記第1の領域に属する演奏操作子であって、前記第2の領域に属する演奏操作子と、前記一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されたかを判断し、当該一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されなかった場合に、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に基づく演奏データを、前記演奏データ記憶手段に格納し、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて前記一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されなかった非操作回数が、所定数より大きいときに、当該演奏データ記憶手段に格納された演奏データに基づき、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させることを特徴とする演奏教習装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて操作された、第1の領域の演奏操作子が、前記第2の領域に属する演奏操作子と前記一定の対応関係に無かった場合、或いは、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて、第1の領域の操作子が操作されなかった場合に、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に基づく演奏データを、前記演奏データ記憶手段に格納することを特徴とする請求項1に記載の演奏教習装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記第1の領域の演奏操作子、および、第2の領域の演奏操作子が操作されなくなってから所定時間経過したときに、前記非操作回数が、所定数より大きいかを判断し、当該判断にしたがって、前記演奏データ記憶手段に格納された演奏データに基づき、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させることを特徴とする請求項1または2に記載の演奏教習装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記演奏データを演奏データ記憶手段に格納しているときに、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて、前記対応関係にある第1の演奏操作子が操作された場合に、前記演奏データおよび前記非操作回数を初期化することを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の演奏教習装置。
【請求項5】
前記演奏データが、前記演奏操作子がオンされたことを示すノートオンイベント、演奏操作子がオフされたことを示すノートオフイベント、イベント間の時間間隔を示すタイムピリオドのレコードを含み、
前記制御手段が、前記演奏データ記憶手段に格納された演奏データのレコードのうち、まだ読み取られていない先頭のノートオンイベントを読み出して、当該ノートオンイベントが示す第1の領域に属する演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させ、また、タイムピリオドが示す時間の経過後、次のレコードを読み出し、前記動作中の操作子指定手段に対応する演奏操作子に関するノートオフイベントを読み出すと、前記動作中の操作子指定手段の動作を停止させることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の演奏教習装置。
【請求項6】
前記制御手段が、前記演奏データ記憶手段に格納された演奏データに基づき、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させるとともに、前記演奏データに基づく音高の楽音データを生成するように前記楽音データ生成手段に指示することを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の演奏教習装置。
【請求項7】
前記操作子指定手段が、発光素子であることを特徴とする請求項1ないし6の何れか一項に記載の演奏教習装置。
【請求項8】
音高順に配置された複数の演奏操作子であって、第1の領域と、第2の領域とを有する複数の演奏操作子と、少なくとも前記第1の領域の演奏操作子に対応し、当該演奏操作子を指定する複数の操作子指定手段と、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に基づく演奏データを格納する演奏データ記憶手段とを備えたコンピュータに、
前記演奏操作子の操作に基づいて、当該演奏操作子に対応する音高の楽音データの生成を楽音データ生成手段に指示する制御ステップを実行させ、
前記制御ステップが、前記第2の領域に属する演奏操作子の何れかが操作されたときに、前記演奏操作子と音高的に一定の対応関係にある、前記第1の領域に属する演奏操作子に対応する音高の楽音データを生成するように楽音データ生成手段に指示するとともに、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させるステップと、
前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて、前記第1の領域に属する演奏操作子であって、前記第2の領域に属する演奏操作子と、前記一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されたかを判断し、当該一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されなかった場合に、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に基づく演奏データを、前記演奏データ記憶手段に格納し、前記第2の領域に属する演奏操作子の操作に応じて前記一定の対応関係にある第1の領域の演奏操作子が操作されなかった非操作回数が、所定数より大きいときに、当該演奏データ記憶手段に格納された演奏データに基づき、前記第1の領域に属する前記演奏操作子に対応する操作子指定手段を動作させるステップと、を有することを特徴とする演奏教習プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−39223(P2011−39223A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185535(P2009−185535)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】