説明

潤滑剤の添加剤系

本発明は潤滑剤及び他の機能液のための添加剤系として適当な組成物に関し、この組成物は硫黄含有超高圧(EP)成分、燐含有の対摩耗添加剤及びトリアゾール含有種を含む。本発明は、また本発明の添加剤パッケージを含む潤滑剤及び他の機能液を対象とし、及びその様な組成物、系、潤滑剤及び他の機能液を生成する方法を対象とするものである。その様に調剤された潤滑剤は工業用ギアオイル(IGO)として特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑剤及び他の機能液のための添加剤系として適当な組成物に関し、この組成物は硫黄含有超高圧(EP)成分、燐含有の対摩耗添加剤及びトリアゾール含有種を含む。本発明は、また本発明の添加剤パッケージを含む潤滑剤及び他の機能液を対象とし、及びその様な組成物、系、潤滑剤及び他の機能液を生成する方法を対象とするものである。その様に調剤された潤滑剤は工業用ギアオイル(IGO)として特に有用である。
【背景技術】
【0002】
軸受けの磨耗及び小孔食の領域における最近の工業用ギア潤滑剤に対する要求条件にあった新しい潤滑剤組成物が求められている。これらの新しい要求に答えるために,種々の基本原料(basestock)とブレンドするのに適した新しい添加剤パッケージが必要となる。耐酸化及び熱安定性、負荷/対摩耗性能、腐食防止、シール適合性、抗乳化度(demulsibility)等の点において現在の潤滑剤組成物のプラスの特性を損なうことなくこれらの新しい要求に答えることが望ましい。
【0003】
典型的には、添加剤パッケージは工業用ギアオイル(IGO)又は自動車の駆動系流体の様な特定の最終用途を目的とするものがある。一つの特定の最終用途に対する要求は、通常他の最終用途のものとは異なる。例えば、多くの工業用ギアは、製鉄所、又は鉱山又は採石場の様な、一方で高負荷、速度及び操業温度に耐えつつ、高度に汚染された環境で見られる様に大量の水が存在するところで機能することのできる潤滑剤を必要とする。これに対して、手動変速機用オイルの様なある種の自動車の駆動系流体は、通常水のないところで作動する。他の例では工業用ギアは直径が10mにもなることもあり、平歯車、かさ歯車、はすば歯車、及びまがりばかさ歯車の技術を無数の組合わせで用いることができるが、駆動系ギアは桁違いに小型であり、より重量負荷がかかることもある。
【0004】
004
多くの異なる用途に使用される添加剤系として適している組成物を特定することは有利であるが、市場の要求が急速に変化する状況の中である最終用途のための潤滑剤を調剤することは非常に難しい。
【0005】
例えば、オイル販売者が彼らの工業用ギア流体の商標ラベルに付して有利と考える工業用ギアオイルの認定規準には種々のものがある。欧州では、主要規準にDIN 51517-3がある。この特定の工業用仕様は、最近ドイツ工業規格協会(Deutsches Institut fur Normung (DIN))によりFE-8試験として知られる軸受け摩耗試験を含む様に改定された。この試験は, ドイツのベアリング製造者であるFAGにより提唱されたものであり、DIN 51819-3の方法に記載されている。
【0006】
更に、過去10年の間に、小孔食現象として知られる摩耗現象が次第に関心事項となって来た。ドイツのギア製造者であるFlenderは彼らの流体認定計画の一部として、FVA-54 小孔食試験(Micropitting Test)を採用した。小孔食(micropitting)は疲労現象であり、表面硬化ギア上で起こる。この現象は極めて小さい穴であることが特徴であり、それぞれの深さは約10ミクロンである。小孔食のある金属はつや消し状、又は灰色の外観をしている。三段階のFVA-54 小孔食試験(Micropitting Test)で流体がどの様に機能するかによるが、オイルは「高度」、「中程度」又は「低度」の小孔食に対する保護レベルを持つ分類される。現在、多くのオイル販売者は、工業用ギア添加剤パッケージ供給者が、彼らの提供する製品が高度の小孔食保護レベルのものである十分な証拠を示すことを要求している。
【0007】
これらの新しい要求に答えることに加え、工業用ギアオイル(IGO)は、最近AGMA 9005-E02, Cincinnati Milacron等によりとって代わられたUSS 224, AGMA 9005-D94の様な周知の工業用ギア認定規準の一部である典型的なベンチテストにおいて、特定水準の性能を保持していなければならない。ベンチテストには、例えば、四球摩耗(ASTM D2266)、四球EP (ASTM D2783)、FZGスカッフィング(Scuffing) (DIN 51354-2)、Timken (ASTM D2782)、銅腐食保護(ASTM D130, ISO 2160)、酸化制御(ASTM D2893, S-200)、さび止め (ASTM D665, ISO 7120)、固定シール互換性(DIN 53538-3)、抗乳化度(Demulsibility)(ASTM D2711, ISO 6614, ASTM D1401)、泡制御(Foam Control) (ASTM D892, ISO 6247)等を含む。
【0008】
潤滑剤添加剤系の無数の含有成分を考慮すると、他の領域での従来の標準的機能を保持しつつ、IGOでの数多くの新規な要求に答えることのできる適切な組合せを探し出すことは大変な仕事である。
【0009】
米国特許第4,511,481号は、リン酸アミンのトリアゾール付加化合物で安定化され、対酸化安定性、対摩耗性及びさび止め効果を持つ工業用潤滑剤を開示する。
【0010】
米国特許第4,900,460号は、潤滑油組成物の超高圧及び対摩耗用添加剤としてのジヒドロカルビルリン酸塩、又はジヒドロカルビル亜リン酸塩と反応させた硫化イソブチレンを開示する。
【0011】
米国特許第5,225,093号は、ギアオイル添加剤組成物に関するものであり、同組成物は(i)少なくとも一つの油溶スクシンイミド、及び(ii) 少なくとも一つのコハク酸アクリレート剤を、アミン及び/又はアルコールより成る群から選択される反応剤と反応させて生成される少なくとも一つのカルボン酸誘導体組成物を含み、コハク酸アクリレート剤は約500から約100,000の数平均分子量を持つポリアルキレンに由来する置換基を持つ。これらの組成物は重量ベースで、10−80重量%の成分(i)、及び10−80重量%の(ii)を含み、(i) (ii)の合計は20−90重量%である。この特許はまた添加剤組成物を含む主要量を占めるギアオイル基本原料に関するものであり、その組成物は、硫黄添加剤、リン添加剤及び窒素添加剤の割合が、組成物において硫黄のリンに対する重量比が約5:1から約40:1、及び窒素のリンに対する重量比が約0.05:1から約2:1の範囲である。また米国特許第5,176,840号を参照願いたい。
【0012】
米国特許第5,328,619号は、(i) オイルに可溶なジヒロドカルビルモノチオリン酸のアミン塩、(ii)少なくとも一つのオイルに可溶な活性硫黄含有対磨耗/超高圧剤、及び (iii) 一以上のオイルに可溶な酸性有機添加剤であり、少なくともこれらの一つは、ヒロドカルビルリン酸又はカルボン酸である組合せから形成される濃縮添加剤を開示する。この濃縮物は一以上のオイルに可溶な第一級アミンを、そのpHが約6.0から7.0となる範囲の量含む。またEP 519 760 Blを参照願いたい。
【0013】
米国特許第5,358,650号は、ジカルボン酸のジアルキルエステル、及び基油と添加剤成分のためのPAOの組合せを含むギアオイルに関するものであり、後者は有機硫黄含有対磨耗及び/又は超高圧剤、有機リン酸含有対磨耗及び/又は超高圧剤銅防食剤、錆防止剤、泡抑制剤及び無灰分散剤を含む。このギアオイルはホウ素含有量が約0.0025から約0.07重量%、及びS:Pの重量比が8:1からの35:1である。また米国特許第5,571,445号及びWO 1994/22990を参照願いたい。
【0014】
米国特許第5,500,140号は、O,O-ジヒドロカルビル リンジチオ酸をエポキシドと反応させ、製品を形成することにより形成される限定的な滑り特性を持つ油溶性リン及び窒素含有組成物を教示する。同製品はさらに五酸化リンと反応させてリン酸塩中間体を生成し、リン酸塩中間体はその後アミンによって中和される。特許権者は、同添加剤は潤滑油において限定的な軸の滑り又は差動騒音を抑制するのに有用であると考えている。(a) 油溶性硫黄含有対磨耗/超高圧剤、及び(b) リン及び窒素含有組成物を含む組成物は、成分(a)としての硫黄の、成分(b)としてのリンの成分に対する重量比は約1:1から約20:1の範囲である。また、米国特許第5,573,696号を参照願いたい。
【0015】
米国特許第5,547,596号は、車の限定された滑り差動のカタカタ音を減少させるといわれる潤滑剤組成物に関するものであり、前期組成物は、リン酸アミン塩及びホウ素酸塩無灰拡散剤を、少なくとも一つの鉱油及び合成油を含む基油(base oil)に加えることによって得られ、前期組成物は窒素:リンの比率が0.5:1.0、及び窒素:ホウ素の比率が4:10であり、リンの含有量が0.15から0.40 重量%, 窒素の含有量が0.08から0.30重量%、及びホウ素の含有量が0.01から0.04重量%の範囲である。
【0016】
米国特許第5,691,283号は、以下のものを含む基油SAE 75 W- 90 からSAE 85W- 140水準の粘度グレードを持つ同期伝動装置又は差動軸のための潤滑剤を教示する。すなわち、基油は少なくとも(i)マニッヒ塩基無灰分散剤 ; (ii) 無金属、硫黄含有対磨耗及び/又は超高圧剤; (iii) 無金属、リン含有及び窒素含有対磨耗及び/又は超高圧剤; 及び、(iv) 過塩基アルカリ又はアルカリ性土類金属カルボン酸、スルホン酸又は硫化フェノラートを含む。
【0017】
米国特許第5,756,429号は、基油及び硫黄、リン、及び窒素添加物を含み、100N/(S+P)の比率は重量で4から10の範囲の潤滑油組成物を開示する。
【0018】
米国特許第6,046,144号は、亜鉛を含まない対磨耗油圧油、及びチオリン酸対磨耗剤、腐食及び錆防止剤を含むギア潤滑油、及びアルキルリン酸アミン塩、及びエチレンジアミン、アンモニウム又はアルキル化スルホン酸のアミン塩を含む抗酸化剤組成物を開示する。
【0019】
米国特許第6,048,825号は、100℃で5.0から10.0 cStの粘度を持つ合成基本原料、芳香族アミン及びヒンダード フェノール類から選択される抗酸化剤、少なくとも一つの中性リン酸塩、少なくとも一つのジカルボン酸、少なくとも一つの直鎖及び/又は分枝鎖モノカルボン酸、及び少なくとも一つのチアゾール誘導体を含む潤滑油組成物に関する。またWO 1995/29214を参照願いたい。
【0020】
米国特許第6,180,575号は、対摩耗及び対防錆特性をバランスさせるために、置換トリチアゾールにリン酸アミンを付加した化合物を含む添加剤を含む潤滑油を開示する。またWO 2000/08119を参照願いたい。
【0021】
米国特許第6,605,572号は、ホウ素含有化合物を含む潤滑油を対象とする。この組成物はさらに硫黄及びリンを含み、S対B対Pの比率は式:S+5B+3P>0.35で表され、S1は組成物中の硫黄の重量%、B1は組成物中のホウ素の重量%、Pは組成物中のリンの重量%である。さらにこの組成物は “比較的低水準” の硫黄(0.01−0.25%)、“比較的低水準”のリン(0.08重量%まで)を含む。またWO 02/06930 A2 及び米国特許出願第2002/0147116 Al号を参照願いたい。
【0022】
米国特許出願第2003/0176299 Al号は(a)少なくとも一つのC10−C20の直鎖アルキル又はアルケニルラジカルのリンエステル、又はその様なエステルの塩、及び(b)一般式R-Sy-Rの多硫化物を含む多機能潤滑剤を教示し、yは2 から8及びR はC4-C18のtert―アルキルラジカルであり、a:bの比率は0.01:1から1:1の範囲である。また、WO 200166677を参照願いたい。
【0023】
WO 03/104620 A2 は、有用なエンジン潤滑油を提供しつつ、同時にリン含有化合物の使用による触媒の汚染を減少させる問題を対象とし、ここでリンの濃度は重量で約0.12%までであり、エンジンオイル中で超高圧及び対摩耗添加剤として作用する。その組成物は窒素のリンに対する比率が0.3:1から4:1である点に特徴がある。
【0024】
EP 1422287 Alは0.01-0.06重量%のリン、基油に由来する0-0.1重量の硫黄、及び硫黄含有添加剤に由来する0.01−0.15重量%の硫黄を含む潤滑油組成物に関するものであり、P:Sの比率がl:(0.2 - 20)であることに特徴がある。またWO 03/020858 Alを参照願いたい。
【0025】
EP 391 653 Blは、弱酸及びアミンを硫黄含有ギアオイルに添加することを教示する。潤滑組成物は、潤滑剤、1.7 から20 重量%の硫黄含有超高圧(EP)又は対磨耗剤、0.1 から10重量%の弱酸、及び0.05から10重量%のアミンを含む。弱酸はアミンの当量あたり0.2から2当量で存在し、EP/対磨耗剤中の硫黄の、前期アミン中の窒素に対するモル比は40:1から5:1である。
【0026】
EP 0 531 000 Blは、米国石油協会(American Petroleum Institute (API))のある基準を満たす様に調剤された潤滑油及び機能液に関するものである。その組成物は、(b)硫黄を少なくとも20質量%の水準で含む成分、(a)リンを含む成分を含み、(b)中の硫黄の(a)中のリンに対する質量比が8:1から30:1であり、さらに最終製品の潤滑油が、少なくとも0.5重量%の成分(b)としての硫黄を含むという特徴がある。
【0027】
EP 0 450 208 Blは、(i) 一以上の高活性の硫黄含有超高圧又は対磨耗剤、(ii) 一以上のアミン、(iii) 一以上の弱酸を含む潤滑剤を教示し、ここで(i)の硫黄の(ii) のアミン窒素に対するモル比率は100:1から5:1であり、及び更に (ii) の当量あたりのアミン窒素に対する酸の当量が0.2から2であることに特徴がある。
【0028】
EP 0 531 585 Blは、(a) ホウ素化されたマニッヒ塩基無灰分散剤、(b) 無金属硫黄含有対磨耗及び/又は超高圧剤、(c) 無金属リン含有対磨耗及び/又は超高圧剤、及び(d)カルボン酸の油溶性アミン塩を含む、油溶性添加濃縮物を開示し、ここで(a) 中のNの(b) 中のSに対する重量比率が0.00005:1から0.5:1であり、及び/又は (a) 中のNの(c)中のPにのする比率が0.005:1から5:1である。
【0029】
EP 186473は、同じ分子中にモノ及びポリカルボン酸よりなるアミン結合を含む潤滑剤及び燃料のための添加物化合物について記載し、前期化合物は脂肪性カルボン酸及び少なくとも一つのアルケニル又はアルキルコハク酸及び無水物を少なくとも一つのポリアミンと反応させて生成される。
【0030】
JP 7278142 (出願番号JP19940087388) は、オレフィンのポリマー鎖を持ち、ジカルボン酸無水物を高脂肪酸及びポリアルキレン ポリアミンと反応させて得られる添加剤を開示する。
【0031】
JP 9235581 (出願番号JP 19960302422)は、合成潤滑基油中にポリフェニレン チオエーテル、酸性リン酸エステルアミン塩及び、リン酸エステルを含む熱抵抗、抗酸化性及び摩擦抵抗に優れている組成物を開示する。
【0032】
JP 10316987は、基油、及び炭化水素の硫化物、テルペン硫化物及び/又は硫化油脂から選択される0.05-8重量%の硫黄化合物、及びより高級なアルカノール酸リン酸塩及び/又はそれらのアルキルアミン塩から選択される0.1−6重量%のリン化合物を含むギアオイルを開示する。
【0033】
ルーマニア特許118447は、スクシンイミド及び硫化イソブテンのようなジアルキルリン酸を含む重負荷用の添加物について開示する。
【0034】
他の関心の対象となる参考文献には、米国特許第5,451,332号及びEP 0
074 724を含む。
【0035】
驚くべきことには、本願の発明者は、IGO及び車輌の動力伝達装置用流体の様な、種々の異なる用途のための添加剤系として適当な組成物を発見した。好ましい実施の態様においては、この添加剤系は、現在使用可能な商業用製品のプラスの属性を損なうことなく、IGOの最新の工業上の要求を満たす潤滑油を提供するために好適な基本原料(basestock)と組み合わせることができる。
【発明の概要】
【0036】
本発明の組成物は、少なくとも一つの硫黄含有超高圧(EP)成分;及び、リン含有化合物から選択される少なくとも一つの対摩耗剤、少なくとも一つのトリアゾール含有種、及び任意選択的に少なくとも一つの他の窒素含有化合物の組み合わせを含み、前期組成物は、さらに硫黄のリンに対する質量比が10:1以下、より好ましくは8:1以下、さらに好ましくは7:1以下であり、リンの窒素に対する比率が2:1以上、より好ましくは2.5:1以上であり、硫黄のトリアゾールに対する質量比が150:1以下であることに特徴がある。
【0037】
本発明はまた、本発明による組成物を含む添加剤系に関するものであり、適当な処理率で好適な基本原料とブレンドされた時に、その添加剤は工業上及び自動車用ギアの両方で適用され、改良された性能を持つ潤滑油組成物を提供する。
【0038】
本発明はまた、好ましい実施の態様においては、API第Iグループから第5グループの基本原料から選択された少なくとも一つの基本原料及び本発明の組成物を含む添加剤系を含む、十分に調剤された工業用ギアオイル(IGO)に関する。
【0039】
本発明はさらに、添加剤系を製造する方法、及びまた十分に調剤された潤滑剤を製造する方法に関する。
【0040】
本発明は、軸受け対磨耗及び小孔食分野での潤滑剤を改良することを目的とする。
【0041】
さらに、本発明は、特に工業用のギアオイル(IGO)として好適な潤滑剤組成物を得るために、適当な処理率で適当な基本原料をブレンドさせるための好適な添加剤系を提供することを目的とする。
【0042】
これらの、及び他の実施の態様、目的、特徴及び優位な点は、以下の詳細な説明、好ましい実施の態様、実施例及び特許請求の範囲を参照することにより明らかとなろう。
【発明の詳細な説明】
【0043】
本発明の組成物は、硫黄を含む超高圧添加剤から選択される少なくとも一つの超高圧成分、リン含有化合物から選択される少なくとも一つの対磨耗成分、トリアゾール小部分を含む種、例えばトリアゾール又はトリアゾール誘導体、及び好ましい実施の態様においては、少なくとも一つの他の窒素含有化合物を含む組み合わせを含むものである。「少なくとも一つの他の窒素含有化合物」はトリアゾール小部分を含む化合物以外の化合物である。前記組成物は更に、硫黄のリンに対する重量比が10:1未満、窒素のリンに対する質量比が2:1未満、硫黄のトリアゾール誘導体に対する質量比が150:1以下であるという特徴がある。他の実施の態様については以下に説明する。
【0044】
好ましい実施の態様においては、成分は以下の材料から選択される。
【0045】
超高圧剤
本発明の組成物において有用な超高圧剤(EP)には、既知の硫黄含有及びホウ素含有EP剤を含む。硫黄含有EP剤が好ましい。
【0046】
硫化オレフィンは、工業用及び自動車用ギアオイルにおいて、それ自体、高圧下で金属と金属の接触に対して保護機能を提供することで有用であることは知られている。
【0047】
しかし、この目的を果たすために硫化オレフィンが存在することは、密封性に対する障害、金属の黄色腐食化、及び軸受け磨耗、及び小孔食の発生を含む欠点と均衡させる必要がある。
【0048】
本発明の添加剤パッケージで用いることのできる硫黄含有超高圧剤については特に制限はない。この点において有用な硫黄含有成分には、硫化オレフィン、ジアルキル 多硫化物、ジアリール多硫化物、硫化油脂、硫化脂肪酸エステル、トリチオン、C2-C8モノオレフィンの硫化オリゴマー、チオホスホン酸化合物、硫化テルペン、チオカルバメート化合物、チオカルボネート化合物、スルホキシド、及びチオールスルフィン酸塩を含む。硫黄含有EP成分の混合物を用いてもよい。
【0049】
好ましい硫黄含有EP成分は、C2-C8モノオレフィンの硫化オリゴマー、硫化オレフィン及びジアルキル及びジアリール多硫化物から選択される。
【0050】
超高圧剤としての使用に適した非常に多くの硫化オレフィンが、先行技術中に詳説されている。例えば、米国特許第6,844,300号及びそこで引用された文献を参照願いたい。
【0051】
より好ましい超高圧剤はオリゴマーオレフィン硫化物及びジアルキル多硫化物である。オリゴマーオレフィン硫化物はモノ塩化スルフリルをオレフィン、例えば、イソブチレンと反応させてオリゴマーオレフィン硫化化合物を生成させることにより得られる。これらの材料の幾つかを使用することによる欠点の一つは、幾つかのプロセスにおいて塩素が残留することであるが、これは色々な処理をすることで低減させることができる。数多くの特許が本発明の使用に適したオレフィン硫化物について記載しており、例えば、米国特許第2,249,312号; 第2,708,199号; 第3,471,404号; 第4,204,969号; 第4,563,302号; 第4,954,274号; 及び第4,966,720号及び欧州特許第737,674A2号 及び英国特許第1,308,894号がある。
【0052】
ジアルキル 多硫化物は、米国特許第4,119,550号、第4,119,549号、第4,344,854号、第5,135,670号及び第5,338,468号に記載の様に、高圧下で硫化することにより得られる。これらは、例えば、硫黄、オレフィン及び硫化水素を反応させることにより得ることができ、これらの材料はその場において提供し、又は外部ソースより追加することもできる。
【0053】
本発明の添加剤パッケージで用いられる超高圧剤を得る好ましい方法は、その場で硫化水素を生成することを含む。より好ましい実施の態様においては、硫化水素は、反応器中で硫化水素ナトリウムから生成され、そして反応器内で消費される。
【0054】
より好ましい実施の態様においては、高圧下でのオレフィン硫化物は、オレフィン、好ましくはイソブテンを高圧条件で、硫化水素ナトリウム水溶液の存在下で事前に決められた量の溶融硫黄と反応させることにより生成される。市場で入手可能な高圧イソブテン硫化物(high pressure sulfurized isobutylene (HPSIB))は、ExxonMobil Chemical Companyから調達可能なMobilad(登録商標)C-170 及びMobilad(登録商標)C-175を含む。これらの好ましいHPSIBの合成については、例えば、米国特許第5,135,670号、WO 92/03524及びその他文献において先行技術として記載されている。典型的にはHPSIB中の硫黄のパーセントが高いほど、EPに関してこれらの剤はより活性があるが、また腐食の問題に関しても、及び幾つかのケースでは密封性の問題においてもより活性が高いことがある。否定的な影響は、添加物、例えば、多くの及び/又は異なる銅不動態化物を加えることによって緩和することができる。
【0055】
本発明の特徴において最重要ではないが、好ましい実施の態様においては、本発明の添加剤パッケージにおけるどの形式のものでも硫黄の重量パーセントは約5-50 重量%, より好ましくは10-30 重量%であるのが良い。最も重要なのは、本明細書の他の箇所で述べた様に、本発明の組成物中の硫黄のリンに対する重量比である。
【0056】
ホウ素含有EP剤は、またそれ自体技術分野で知られている。しかし、ホウ素含有EP剤は、加水分解に対する安定性が十分でないため、もしギアボックスが水に曝される場合、IGOの状況においては、この事態はありうることであるが、ホウ素含有EP剤は加水分解し、そのEP成分としての効果を失うことがありうる。しかし、ある使用状態では、水が存在しない様な場合には、ホウ素含有EP剤は十分用途を達成する。
【0057】
ホウ素含有EP剤を単独で使用し、又は硫黄含有EP剤と共に使用することは、本発明が想定している一つの特徴である。しかし、ある実施の形態においては、本発明の組成物はホウ素を含む超高圧成分を使用しない。
【0058】
リン含有対磨耗剤
使用されるリン含有対磨耗剤の種類について特に制約はない。工業ギアオイルで典型的に用いられる油溶性の対磨耗及び/又は超高圧剤は、その殆どの部分が、部分的に又はその全てがリンのエステル化された酸である。これらのすべてのものは本発明の添加剤系として適している。好ましい対磨耗剤には以下のものを含む:過リン酸塩(acid phosphates), 亜リン酸水素(hydrogen phosphites), 亜リン酸塩(phosphites), リン酸塩(phosphates), ホスホン酸塩(phosphonates), ホスフィン酸塩(phosphinates), 及びリンアミド(phosphoroamidates)である。上記の各種の硫黄のアナログも、本明細書の他の箇所に記載した、本発明で重要な種々の主要な元素比について留意するならば、使用することができる。
【0059】
好ましい対磨耗剤には、モノ、ジ、及びトリヒドロカルビル 亜リン酸塩;モノ、ジ、及びトリヒドロカルビル リン酸塩;モノ、ジ、トリヒドロカルビル モノ、ジ、トリ、テトラチオリン酸塩;モノ、ジ、トリヒドロカルビル モノ、ジ、及びトリ、テトラチオ亜リン酸塩;種々のヒドロカルビル ホスホン酸塩及びチオホスホン酸塩;種々のヒドロカルビルホスホナイト(phosphonite)及びチオホスホナイト等を含む。特別な例には、リン酸トリクレジル、トリブチル亜リン酸塩、トリフェニル 亜リン酸塩、2−エチルヘキシル リン酸塩、ジイソブチル水素 亜リン酸塩、ジイソプロピル ジチオリン酸塩、ジフェニル リン酸塩等を含む。これらの材料によって生成され得るすべてのアミン塩も含まれ、また使用可能な種類のアミンは後に記載する。好ましい実施の態様では、ジアルキル及びジアリールリン酸塩及びそれらのアミン塩が用いられる。また、Cibaより市場で購入可能なIrgalube(登録商標)349の様なアリールリン酸塩も好ましい。特に好ましいアルキル過リン酸塩(alkyl acid phosphates)には、ジ及び/又はモノー2−エチルヘキシル リン酸を含む。
【0060】
本発明の特徴として最重要なものではないが、好ましい実施の態様において、本発明の組成物中のリンの水準は約1-5 重量%、より好ましくは2-4 重量%である。再度繰り返しとなるが、重要なのは硫黄のリンに対する質量比であり、それ以外の他の質量比についても同様であるが、これについては以下に詳細に述べる。
【0061】
トリアゾール含有種
本発明の組成物中の主要成分及び窒素の供給源は、トリアゾール種又はその誘導体である。その厳密な使用量は最重要な要素ではない(しかし、再び、本明細書の他の箇所に記載のS, P, N及びトリアゾールの適当な比率が維持されているという条件で)が、効果的な量を使用する必要がある。本願発明の開示を受けた当業者であればこの量を決定することができるであろう。
【0062】
トリアゾール、例えば、1,2,4-トリアゾール, 1,2,3-トリアゾール及びそれらの誘導体は、工業油の使用での軸受け磨耗を減少させ、及びマニュアル変速機オイルの腐食を防ぐのに重要であることが発見された。トリアゾール自体はオイル又は添加剤ミックス中で容易に溶解しないため、誘導体を造るのに有利である。その誘導体は腐食及び磨耗低減特性を維持しつつ、オイル中でトリアゾール基をより容易に溶解可能にする手段を提供する。誘導体の幾つかの特別な例には、ベンゾトリアゾール(benzotriazole),トリルトリアゾール(tolyltriazole)、オクチルトリアゾール(octyltriazole), デシルトリアゾール(decyltriazole), ドデシルトリアゾール(dodecyltriazole)、2-メルカプトベンゾトリアゾール(2-mercaptobenzotriazole)を含む。トリアゾールのアルキル及びアリール誘導体が好ましい。最も好ましいのはトリルトリアゾール、例えば、Cobratec(登録商標)TT100、及びベンゾトリアゾール、例えば、Cobratec(登録商標)99である。これらのトリアゾールの何れも、カルボン酸塩、例えば、オレイン酸又はポリブテニルコハク酸塩の様な脂肪酸塩として存在することもある。アミド誘導体もまた検討される。さらに、トリアゾールはまた、上で述べたあるリン酸種の塩の形で存在しても良い。本発明の特に好ましい実施の態様においては、トリアゾール誘導体とアルキル又はアリール過リン酸(aryl acid phosphate)の複合物である。
【0063】
窒素含有化合物
本発明における添加剤系では、他の窒素含有種を用いる必要はないことは、少なくとも理論的にはありうるが、最も好ましい実施の態様においては、少なくとも一つの他の窒素含有成分、典型的には錆防止剤、分散剤、金属不動態化剤(passivator) (例えば、銅不動態化剤)、抗酸化剤等から選択されるものを含む。窒素含有添加剤であれば、どのようなものでも本発明において最重要な要素であるP:N質量比に貢献し、これについては以下により詳細に説明する。本明細書で用いる「少なくとも一つの他の窒素を含有する」は、トリアゾール含有種とは異なるものを指す。都合の良いことには、少なくとも一つの他の窒素含有成分は以下のもの(及び、これらの混合物を含む)から選択される。
【0064】
錆防止剤
錆防止剤は、本発明の好ましい窒素のソースであるが、油溶性の塩基性アミンのいづれでも良く、又はこれらのアミンの組み合わせでも良い。アミンは第一級、第二級、第三級、非環式、又は環式、モノ又はポリアミンであっても良い。これらは複素環式であっても良い。アミン含有成分はまた、他の置換基、例えば、エーテル結合、又は水酸基部分を含んでいても良い。好ましいアミンは通常脂肪族の性質を持つ。幾つかの特徴的な例には、オクチルアミン(octylamine)、デシルアミン(decylamine)、C10、C12、C14 及び C16 第三級アルキル第一級アミン(tertiary alkyl primary amine)又はそれらの組み合わせ、ラウレルアミン(laurylamine)、ヘキサデシルアミン(hexadecylamine)、ヘプタデシルアミン (heptadecylamine)、 オクタデシルアミン(octadecylamine)、デセニルアミン (decenylamine)、ドデセニルアミン (dodecenylamine)、パルミトイルアミン (palmitoylamine)、オレイルアミン(oleylamine)、 リノレイルアミン(linoleylamine)、ジイソアミルアミン(di-isoamylamine)、ジオクチルアミン (di-octylamine)、 ジー(2−エチルヘキシル)アミン(di-(2-ethylhexyl)amine)、 ジラウリルアミン(dilaurylamine)、シクロヘキシルアミン(cyclohexylamine)、 1、 2-プロピレン アミン(1、2-propylene amine)、1,3-プロピレン ジアミン (1,3-propylenediamine)、 ジエチレン トリアミン(diethylene triamine)、 トリエチレン テトラアミン(triethylene tetraamine)、 エタノールアミン(ethanolamine)、 トリエタノールアミン(triethanolamine)、 トリオクチルアミン(trioctylamine)、 ピリジン(pyridine)、 モルホリン(morpholine)、 2−メチルピペラジン(2-methylpiperazine)、 l,2-bis(N−ピペラジニル−エタン (l,2-bis(N-piperazinyl- ethane))、1,2-ジアミン(1,2-diamine)、 テトラアミノオクタデセン(tetraaminooctadecene)、 トリアミノアミノオクタデセン(triaminooctadecene)、N-ヘキシルアニリン(N-hexylaniline)等を含む。
【0065】
本発明の組成物中の必要な成分としては、明細書の他の箇所に記載のトリアゾール、又はトリアゾール誘導体であっても良い。
【0066】
本発明の錆防止剤として機能する最も好ましいアミンは、脂肪族基が第三級アルキル基である油溶性脂肪族アミンである。Primene(登録商標)81R 及び Primene(登録商標)JMTアミンは、この種に属し、市場で(Rohmaxから)購入可能なアミンである。これらは、上で説明した様に本発明の最重要な要件である、トリアゾール及び/又はトリアゾール誘導体、例えば、トリルトリアゾールに加えて追加として使用しても良い。
【0067】
本発明の添加剤系において、アミンは通常過リン酸塩と結合して塩を形成(化学量論並びに他の要因により制御される範囲において)し、それらはさび止め剤及び対磨耗剤として効果的である。本発明の開示を受けた当業者に理解される様に、本発明の組成物は調合法として記載されたものであり、実際の「リン酸塩」(phosphate)、「アミン」(amine)等と程度の差のあるものも、化学量論、温度、及びその種が添加剤パッケージ自体として、又は最終の調剤される基本原料等として存在するか否かによって、別個独立のものとして認識されるであろう。
【0068】
したがって、例えば、リン酸塩及びアミンは、添加剤パッケージに加える前に形成され、又はこれらはリン酸及びアミンがパッケージに加えられた後にその場で形成されることもある。
【0069】
アミド、イミド及びイミダゾリン(imidazoline), オキサゾリドン(oxazolidone)及び他の関連する窒素含有種もまた、本発明の添加剤系の任意選択的な窒素のソースとして含まれる。これらの種は、しばしば錆防止剤、摩擦調整剤等として機能する。これらの例の幾つかには、ドデセニル 無水コハク酸 (dodecenylsuccinic anhydride (DDSA)) 及びテトラエチレン ペンタミン(tetraethylene pentamine)の反応製品、オレイン酸 及びテトラエチレン ペンタミン(tetraethylene pentamine)の反応製品、ジエチレン トリアミン(diethylene triamine)及びDDSAの反応製品、トリエタノールアミン(triethanolamine) 及びノナン酸(nonanoic acid)の反応製品等を含む。
【0070】
分散剤
好ましいが、任意選択的である窒素のソースとしては、少なくとも一つの分散剤及び/又は清浄剤がある。分散剤は、中でも、スラッジがギアの表面に付着するの防ぎ、及び粒子をギアの表面から消滅させる様に作用する。その様な多くの物質が、それ自体技術分野で知られている。使用すべき種類に特に制限はない。それらは単独で、又は組み合わせて使用することができる。窒素含有分散剤の典型的な例には、アルキルスクシンイミド、アルケニルスクシンイミド、ホウ素含有アルキルスクシンイミド、ホウ素含有アルケニルスクシンイミド、ベンジルアミン化合物(マニッヒ塩基)、ポリブテニルアミン、コハク酸エステル化合物等を含む。
【0071】
好ましい実施の態様においては、窒素含有分散剤は、アルキルスクシンイミド、アルケニルスクシンイミド、及びこれらの両者のホウ素含有アナログから選択される。本発明の使用に特に好ましい無灰分散剤は、ポリエチレン ポリアミン、例えば、トリエチレン テトラアミン ペンタアミンを、好ましくは分子量が約700-1400 及び特に800 -1200であるポリオレフィン(これら数値が数平均又は重量平均分子量であるかは特に重要ではない)を炭化水素置換無水物、すなわち、例えば、無水マレイン酸の様な不飽和ポリカルボン酸又は無水物と反応させて得た炭化水素置換無水物と反応させた製品である。無灰分散剤は、適当なホウ素含有化合物、例えば、ホウ素酸、酸化ホウ素、ホウ素のエステル及びホウ素酸のアミン又はアンモニウム塩を用いてホウ素化し、無灰ホウ素含有分散剤を形成しても良い。
【0072】
他の窒素含有添加剤
抗酸化剤含有芳香族窒素を用いることもでき、これは窒素の含有レベルに寄与する。抗酸化剤は組成物を保護し、酸素による分解、特に高温での分解を低減させる。窒素を含む典型的な抗酸化剤には第二級芳香族アミン抗酸化剤を含む。典型的な例には、ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、フェニルーアルファーナフチルアミン及びそれらの誘導体を含む。これらの種中の窒素はリンの窒素に対する質量比に寄与すると理解される。
【0073】
窒素を含む他の好ましい、任意選択的な成分には、金属不動態化剤(passivator)、例えば、銅不動態化剤として知られる添加剤の種類がある。これらはチアゾール、既に検討したトリアゾール、及びチアジアゾール(thiadiazoles)を含む化合物の種類を含む。
【0074】
チアゾール及びチアジアゾールの典型的例には、2―メルカプトー1,3,4-チアジアゾール(2-mercapto-l,3,4-thiadiazole), 2―メルカプト−5−ヒドロカルビルチオ−1,3,4-チアジアゾール(2-mercapto-5-hydrocarbylthio- 1,3,4-thiadiazoles), 2―メルカプト−5−ヒドロカルビルジチオ−1,3,4-チアジアゾール(2-mercapto-5-hydrocarbyldithio- 1 ,3 ,4-thiadiazoles), 2,5−(bis−(ヒドロカルビルチオ)−1,3,4-チアジアゾール(2,5-bis- (hydrocarbylthio)-l,3,4 -thiadiazoles), 及び2,5−(bis−(ヒドロカルビルジチオ)−1,3,4-チアジアゾール(2,5-bis-(hydrocarbyldithio)- 1 ,3,4- thiadiazoles)を含む。好ましい化合物には、1,3,4-チアジアゾール(l,3,4-thiadiazoles)、特に、2―ヒドロカルビルジチオ−5−メルカプト−1,3,4-ジチアジアゾール(2-mercapto-5-hydrocarbyldithio- 1,3,4-dithiadiazoles)及び2,5−(bis−(ヒドロカルビルジチオ)ー1,3,4-チアジアゾール(2,5-bis-(hydrocarbyldithio)- 1 ,3,4- thiadiazoles)である。これらの幾つかは、例えば、Afton Hitec(登録商標)4313 及びMobilad(登録商標)C-610の様に市場で調達が可能である。他の適当な銅腐食抑制剤には、上に記したイミダゾリンを含む。
【0075】
本発明の添加剤系に有用な他の多くの窒素含有添加剤、例えば、摩擦緩和剤、発色団、乳化破壊剤、消泡剤、粘着付与剤、消臭剤、封止膨張剤(seal swell agent)などは、本発明の開示を受けた当業者に明らかであろう。これらの種類のものは、もし存在する場合は、当然本明細書に記載の最重要のP:N比率にも寄与する(そしてその決定に際して考慮されるべき)であろう。同様に、最終的添加剤系における他の全ての種は、S-, P-, 又は N-含有物であろうとも、本明細書に記載の比率に最重要な要素として寄与するであろう。しかし、基本原料により提供される、最重要な比率への寄与は、これらの比率においては考慮されていない。典型的に、基本原料中のP 又はN含有種に対する寄与は、添加剤系による寄与に比べれば無視されうる程度のものである。しかし、基本原料中のS含有不純物は、おそらく本発明の添加剤系による寄与に比較しうる水準であるが、同様に、再び、本明細書に記載の比率では考慮されるべきではない。
【0076】
S, P, N及びトリアゾール含有種の質量比
本願発明者は、硫黄のリン、リンの窒素及び硫黄のトリアゾール含有種に対する質量比が本発明の極めて重要な特徴であることを見出した。本発明の添加剤系は、硫黄のリンとの質量比が10:1未満、リンの窒素との質量比が2:1より大きく、及び硫黄のトリアゾール誘導体との質量比が少なくとも150:1であるという特徴を持つ。
【0077】
より好ましい実施の態様においては、硫黄のリンに対する質量比は8:1以下、更に好ましい実施の態様においては、7:1以下である。本発明においては、少なくとも一つの効果的な量の硫黄含有EP剤、及び少なくとも一つの効果的な量のリン含有対磨耗剤を含んでいるという条件で、その下限を規定することは最重要なことではないが、ある実施の態様においては、S:P の質量比の下限は約1:1.である。
【0078】
リンの窒素に対する質量比については、より好ましい実施の態様においては、その比は2.5:1以上であり、より好ましい実施の態様においては、その質量比は3:1以上である。
【0079】
効果的な量のリン含有対磨耗剤、効果的な量の少なくとも一つの窒素含有化合物、及び効果的な量のチアゾール含有成分を含み、それらの成分の何れもが本発明の目的達成を困難にするほどに多量に含まれていないという条件で、本発明においてはその上限を規定することは最重要なことではないが、ある実施の態様においては、上限は5:1を超えないものとすることができる。
【0080】
硫黄のトリアゾール誘導体との質量比は150:1以下であり、好ましい実施の態様においては、110:1以下であり、他の好ましい実施の態様においては、75:1以下である。本発明に記載の必要な材料の効果的な量が存在していることを条件に、最重要なものではないが、硫黄のトリアゾール誘導体との比率の下限は、典型的には、約10:1である。
【0081】
本発明者は、本発明の組成物中の前記比率の組み合わせにより、効果的な量の組成物に加え、一以上の基本原料を含む十分調剤されたオイルで提供されるならば、最近の工業用ギアについての要求を満たすギア用潤滑剤を提供することが出来ると信じる。
【0082】
理論に拘泥するわけではないが、硫黄のリンに対する比率(現在市場で調達可能な添加剤パッケージと比べて)を低減させ、一方P:N比率(現在市場で調達可能な添加剤パッケージと比べて)を増大させ、そしてトリアゾール又はその誘導体の一つを存在させることにより、本発明の少なくとも一以上の目的との関係において、IGOの他の主要な効果を損なうことなく、軸受け摩耗、及び小孔食に対する所望される保護水準が提供されるであろう。
【0083】
消泡剤、乳化破壊剤、摩擦緩和剤、封止膨張剤、流動点降下剤、希釈剤、増粘剤、発色団、粘着付与剤等の様な他の成分は、S:P, P:N, 及びSのトリアゾール含有種への質量比が満たされると言う条件で、必要なオイルの属性を得るために含むこともできる。
【0084】
典型的には、消泡剤はシリコン、及びアクリレートポリマーの様な有機ポリマーを含む。種々の消泡剤がH.T. KernerのFoam Control Agents (Noyes Data Corporation, 1976)に記載されている。乳化破壊剤は、典型的には、BASFの Pluronic(登録商標)シリーズの様なエチレン酸化物 プロピレン酸化物コポリマーであるが、これらはまた、エステル及び無水物及び他の化学品小部分であっても良い。摩擦緩和剤はその化学的性質において種々異なる。通常のものは、脂肪族アミド及び酸を含むが、それ以外にも多くのものがある。これらの任意選択的な成分は、本発明の組成物を含む添加剤パッケージの一部であっても良く、又は最終的に十分調剤された潤滑剤又は他の機能液、又はこれらの組み合わせ中の基本原料に別々に加えても良い。再び、これらの任意選択的な成分の効果的な量については、本発明の開示を受けた当業者は決定することができるであろう。これらの添加剤の幾つかは、オイル中のS, P及びNの水準に寄与し、したがって、その主要比率を変えることは予想される。
【0085】
本発明の組成物は、必要な成分及び任意選択的な成分を含み、上に詳細に規定されているが、所望の成分の幾つか、又は全ては、通常オイル調剤者により基本原料又は他の流体、例えば、担体、油圧液、溶媒等に加える添加剤パッケージにブレンドされることは当業者が理解することである。
【0086】
添加剤パッケージに対し、通常希釈剤もまた使用しても良い。典型的な希釈剤は、基本原料又は基油と同じ材料から選択されるが、異なっていても良い。この様に、好ましい実施の態様においては、希釈剤は、以下に更に述べる一以上の基本原料から選択される。
【0087】
添加剤は、その全体、又はその一部を添加剤パッケージに混合しても良く、又は別途最終潤滑剤組成物、又は他の機能液に加えても良い。これらの場合のブレンド操作は何れにおいても複雑にする必要はない。これらの操作では全ての適当な成分を適当な比率で単に混合すれば良い。当業者であれば、濃縮添加剤及び潤滑剤組成物を調剤し、及びブレンドするための好適な手順に精通しているであろう。一般的に、発熱をコントロールするために、その順序を変えることが必要となる場合以外は、添加の順序は最重要事項ではなく、その手順も当業者であれば通常の実験以外のことをすることなく決定することができる。過度に衒学的と成ることは好まないが、機械的攪拌による攪拌が通常ブレンドを容易にするために望ましい。実務家の中にはブレンド中に加熱することを好む人もいる。通常、ブレンドを40℃ から100℃の間で加熱すれば十分である。もちろん、温度は、望まない化学反応又は熱分解を起さないように選択すべきである。不活性雰囲気中でブレンドするのが有利である。最終潤滑剤をブレンドすることは同様に簡潔である。
【0088】
しかし、既に触れた様に、本発明の添加剤「系」は調合法の意味で記載したものであり、記載された特定の成分が存在し、または存在しないことは、就中、添加の順序による。したがって、本発明の添加剤系は又、硫黄含有EP成分、リン含有対摩耗添加剤、トリアゾール含有腐食抑制剤、そして好ましい実施の態様においては、少なくとも一つの追加の窒素含有成分を一緒に添加することにより「得られる」組成物であるということが言え、又は添加剤系は、上記の成分を一緒に加えることにより「生成される」組成物であるとも言え、又は上記の成分の「接触製品」であると言えるかも知れない。
【0089】
基油
本発明の添加剤パッケージは、典型的には一以上の基油に添加される。本発明の添加剤系及び基油を含む組成物はまた、本発明において考察されるべき実施の態様である。潤滑剤及び機能液の基油としての規準を満たす流体は種々異なる。これらは、良く知られた米国石油協会(American Petroleum Institute (API))のグループIからVのカテゴリーの何れかに属することもある。APIはグループIの原料(stock)を溶媒精製鉱油と呼ぶ。グループIの原料は最も多くの不飽和化合物及び硫黄を含み、最も低い粘度指数を持つ。グループIは潤滑剤機能として底層の機能のものと規定される。グループII及びIIIの原料は、各々高い粘度指数、及び非常に高い粘度指数の基本原料である。グループIIIのオイルは、グループIIのオイルより不飽和化合物及び硫黄含有量が少ない。ある特性については、グループII及びグループIIIは共にグループI のオイルよりも良い特性を示し、特に熱及び対酸化安定性において優れている。
【0090】
米国特許第4,956,122号及びその中で引用されている特許に記載されている様に、エチレン及びプロピレンの様な低位オレフィンのオリゴマー、エチレン/ブテンー1及びイソブチレン/ブテンー1のオリゴマー、及びエチレンとより高位のオレフィンのオリゴマーもまた使用できるが、グループIVの原料は、ポリアルファオレフィンより成り、ポリアルファオレフィンは、直鎖アルファオレフィン(linear alphaolefin (LAO))、特に、C5-C14アルファオレフィン、好ましくは1-ヘキセン (1-hexene ) から1−テトラデセン(1-tetradecene)、より好ましくは1−オクテン(1-octene)から1−ドデセン(1-dodecene)及びこれらの混合物から選択された直鎖アルファオレフィンの触媒によるオリゴマー化により生成されるが、1−デセンが好ましい材料である。
【0091】
PAOは、グループI, II, 及びIIIのこれらの基油に特徴的な、優れた揮発性、熱安定性及び流動点(pour point)特性を示す。
【0092】
グループVは、グループIからIVに含まれない他の全ての基本原料を含む。グループVの基本原料はエステルをベースとする、又はそれから誘導される重要な潤滑剤のグループを含む。それは又、アルキル化芳香族、ポリインターナルオレフィン(polyinternal olefins (PIO))、ポリアルキレン グリコール(polyalkylene glycols (PAG))等を含む。
【0093】
本発明の非常に有利な点の一つは、上記の5つの分類、API グループI からVの何れにも当てはまる基油に適用されることであり、以下に述べる他の材料に適用されることはもちろんである。本明細書で用いる「グループ」(Group)(その後にローマ数字I からVが続く)の用語が用いられる場合、上で述べたAPI分類体系を指す。
【0094】
市場で調達可能な炭化水素流体は、また通常少量のヘテロ原子含有種(例えば、酸素、硫黄、窒素等)を、通常1重量%未満、好ましくは100ppm未満のオーダーで含む。潤滑剤及び他の機能液に使用される基油の硫黄、リン、窒素の寄与は、上に記載の様にS, P, 及びNの比率の計算では考慮されていない。
【0095】
基油中の処理レート
基油中の添加剤パッケージの処理レートは、本発明の開示を受けた当業者が、その最終用途を考慮することにより決定することができる。本発明の特徴としては、特定の処理レートは最重要なものではないが、工業用ギアオイルにおいて、好ましい処理レートは約0.1から約3.0重量%である。これは、本発明の添加剤パッケージが寄与しない基油に加えられる全ての任意選択的な添加剤を含む全組成物の重量に基づくものである
上で検討の様に添加剤パッケージにおいて考慮されていない、その様な追加の、しかし任意選択的な成分であって、最終の潤滑剤又は機能液組成物中で有益な成分には、流動点降下剤、粘度指数調節剤、増粘剤、及び粘着付与剤を含む。
【0096】
以下の例は、本発明をより詳細に説明するためのものであり、他の方法及びそれらの方法により製造された製品との比較を提供するものである。多くの修飾及び改変が可能であり、特許請求の範囲において、本発明は特に本明細書に記載された以外のやり方によっても実施されうることは理解されるべきである。
【0097】
工業用ギアオイル(IGOs)
表1に示す潤滑油の組成物A-Eは、API グループ I基油に添加剤の組み合わせを加え、ISO VG 320オイルを生成したものである。添加剤は、まず、既に本明細書中に記載した添加剤「パッケージ」に混合することができ、その後パッケージは適当な粘度の基油に加えることができ、又は代案として、これらは基油に一つずつ加えることもできる。主要添加剤の重量%は、これらの5つの実施例について示されており、S, P, N及びトリアゾール誘導体の重量%は、主要比率と共にこれらのオイルについて記載されている。硫黄含有EP剤は、HPSIB又はSIBであった。HPSIBは、既に述べた高圧方法の何れによっても製造することが出来る。これらの実施例に用いたものは、Mobilad C- 170であり、これは、通常硫黄の含有が45-50%である。より硫黄の含有量が高いHPSIBもまた用いることができるが、これらは黄色金属及びエラストマーに対してより攻撃的であり、上で検討した様にギア表面の腐食を起すこともあり、これらの効果を打ち消すための添加剤が必要となろう。これらの実施例で使用されるSIBはMobilad(登録商標)C-100であり、先に引用した特許に記載されているモノ塩化スルフリルプロセスを用いて製造することが出来る。Anglamol(登録商標)33 及びHitec(登録商標)312の様な他のSIBも用いることで出来る。これらのSIBの硫黄の含有量は典型的には43-50%である。リン含有対磨耗剤には、Mobilad(登録商標)C-421及びIrgalube(登録商標)349が使用された。窒素含有第一級、第三級アミン、Primene(登録商標)81R錆防止剤が、Mobilad(登録商標)C-603錆防止剤と共に使用された。スクシンイミド分散剤がある調剤に加えられたが、他の調剤には加えられなかった(表に記載)この一連の実験に使用されたトリアゾール誘導体はCobratec(登録商標)TT100、トリルトリアゾールであり、PMC Specialties Groupから市場で購入された。
【0098】
比較のために、表2のオイル組成物F-Iが評価された。オイルF 及びGは同じAPIグループI基本原料により製造された。市販されたオイルはAPIグループI基本原料により製造されたものである。
【0099】
全ての9個のオイルは、改定DIN仕様であるDIN 51517- 3に最近取り入れられたFE-8軸受け試験により評価された。また、これらのオイルの幾つかは更に3相FVA-54小孔食試験により評価された。幾つかのオイルは更に、主要ベンチテストで評価され、これらは工業ギア仕様で良く知られたものの一部である。

【表1】

【表2】

【0100】

表1及び2の結果から明らかな様に、最良のFE-8及び小孔食試験の結果の組み合わせ持つ組成物は、表1に示すものであり、これらは硫黄のリンに対する重量比が10:1以下、リンの窒素に対する比率が2:1以上、及び硫黄のチアゾール誘導体に対する重量比が150:1以下である。これらの3つの全ての条件が満たされたときに、FE-8の,軸受けは磨耗は <30 mgであり、DIN 51517-3仕様を満たす。実施例Eは、30 mgの限界を僅かに超える。実施例D及びEを比べた場合には、主要な相違は硫黄含有EP剤の種類である。実施例Eの実績が僅かに劣るのは、EP化合物の幾つかの種類、通常、より攻撃的な性質のものについては、本発明の好ましい実施の態様では、硫黄のチアゾールに対する質量比が<150:lよりも、<100:lであるためであろう。本発明によって示される5つの実施例中の3つについては、またFVA 小孔食試験(micropitting test)が行われた。全ての試験の結果は、フェイルロードステージ(fail load stage)(FLS) 10による小孔食試験で望ましい「高度」(high)の保護を得ることができるレベルのものであった。
【0101】
比較例には、本発明の範囲外のものが選択された。実施例Gは本発明の範囲に殆んど入っている場合であるが、S:P比率が僅かに高く、そのためFE-8の結果が劣る。これらのオイルの4つの内の3つが3桁の摩耗値を示しFE-8 軸受け試験(Bearing Test)に不合格であった。市販されている実施例Iのオイルは、優れた軸受け試験(Bearing Test)結果であったが、FVA-54 小孔食試験(Micropitting Test)では不十分な保護結果しか出なかった。他の比較例もまた、不合格であった。
【0102】
実施例A-Eで示されるオイルの幾つかについても、多くの標準的IGOベンチテストが行われ、硫黄含有(EP)剤のリン含有対摩耗添加剤に対するレベルが低減されているにも拘わらず、及びリン含有対摩耗添加剤の窒素含有成分に対するレベルが増大しているにも拘わらず(従来製品と比べて)結果は満足すべきものであった。
【0103】
比較例は、チムケンテスト(Timken Test)及び四球超高圧試験(Four Ball Extreme Pressure (EP) Test)等の標準ベンチテストの全てに合格するものではなかった。
【0104】
上に示した様に、本発明は多くの実施の態様、及び特定の例について詳細に記載した。本明細書の記載を考慮すれば、当業者であればその多くの変形に思い至るであろう。その様な明らかな変形の全ては、本願の意図した発明の範囲に属するものである。好ましい実施の態様には以下のものを含む:調剤された潤滑剤中の添加剤系としての使用に適した組成物であり、前記組成物は少なくとも一つの硫黄含有超圧剤、少なくとも一つのリン含有対摩耗剤、及び少なくとも一つのチアゾール含有種を含み、前記組成物は更に、硫黄のリンに対する質量比が10:1未満、リンの窒素に対する質量比が2:1より大きく、及び硫黄のチアゾール含有腐食防止剤の質量比が150:1を超えない特徴を持ち;また、より好ましい実施の態様は、以下のものから選択される(これらは、本発明の開示を受けた当業者に明らかな様に多くの方法により組み合わせが可能である):前記組成物は、更に少なくとも一つの他の窒素含有化合物、特に他の窒素含有化合物が、錆防止剤、分散剤、銅不動態化剤、金属不動態化剤、及び抗酸化剤から選択される少なくとも一つの窒素含有化合物を含み;
前記組成物は、消泡剤、乳化破壊剤、摩擦緩和剤、封止膨張剤、流動点降下剤、希釈剤、増粘剤、発色団、粘着付与剤から選択される更に少なくとも一つの他の窒素含有化合物を含み、又は錆防止剤、分散剤、洗浄剤、泡止め剤、金属腐食防止剤、乳化破壊剤、増粘剤、流動点降下剤、VI向上剤、発色団、摩擦緩和剤、防臭剤、封止膨張剤、及び希釈剤から選択される更に少なくとも一つの他の成分を含み;及び/又は(a) S:P < 8:1, (b) P:N > 2.5:1, 及び (c) S:トリアゾール含有量 < 110:1から選択される少なくとも1つの特性により表され、又は(a),(b) 及び(c)から選択される少なくとも2つの特性により表わされ、又はこれら (a),(b)及び(c)の3つのすべての特性により表わされ;更により好ましい実施の態様においては、組成物は更に、: (a) S:P < 7:1, (b) P:N > 3:1, 及び(c) S: トリアゾール含有腐食防止剤 < 75:1から選択される少なくとも1つの特性により表わされ、又はさらにこれらの(a),(b)及び(c)から選択される少なくとも2つの特性により表わされ; 又はこれらの(a),(b)及び(c)の3つのすべての特性により表わされ;及び/又は前記組成物は、HPSIB超圧剤から選択される少なくとも一つの硫黄含有超圧剤を含み、及び/又はモノ及びジアリールリン酸塩から選択される少なくとも一つのリン含有対磨耗剤を含み、及び/又は、トリルトリアゾール及びその誘導体から選択される少なくとも一つのトリアゾール含有種を含み;及び、好ましい実施の態様はまた、以下を含む:基本原料と組み合わされた上に記載の何れか一つの実施の態様の組成物を含む工業用ギアオイルであり、特に前記基本原料は、API グループI-V及びこれらの混合物から選択され;基本原料と組み合わされた上に記載の何れかの一つの組成物を含む自動車用動力伝達装置用液であり、特に前記基本原料は、API グループI-V及びこれらの混合物から選択され;さらに好ましくは、本発明の添加剤系及び基本原料を含む、上に記載の組成物を含むマニュアル変速機用オイルであり、特に少なくとも一つのAPI グループI-V基本原料から選択される基本原料が良く;及びさらに以下の改良点について示す、さらに好ましい実施の態様には:硫黄含有超圧剤、リン含有対摩耗成分及び窒素含有成分を含む、潤滑油又は機能液中の添加剤系としての使用に適した組成物であり、その改良点には、組成物中に少なくとも一つのトリアゾール含有種の存在を含み、前記組成物は硫黄のリンに対する質量比が10:1未満、リンの窒素に対する質量比が2:1より大きく、硫黄のトリアゾール含有腐食抑制剤の質量比が150:1を超えないことを含み;また、潤滑油中の添加剤系としての使用に適している組成物であり、前記組成物は以下を含むプロセスにより生成される、すなわち、少なくとも一つの硫黄含有超圧剤、リン含有対摩耗成分、及び少なくとも一つのトリアゾール含有種を一緒に加えることを含み、前記組成物は硫黄のリンに対する質量比は10:1が未満、リンの窒素に対する質量比は2:1より大きく、硫黄のトリアゾール含有腐食抑制剤に対する質量比は150:1を超えず、特に前記プロセスは更にAPI グループI-Vから選択された少なくとも一つの基本原料を加えることを含み;また、調剤された潤滑油中の添加剤系としての使用に適した組成物であり、前記組成物は、少なくとも一つの硫黄含有超圧剤、リン含有対摩耗成分、及び少なくとも一つのトリアゾール含有種を一緒に加えることを含むプロセスにより得られ、前記組成物は、硫黄のリンに対する質量比が10:1未満、リンの窒素に対する質量比が2:1より大きく、硫黄のトリアゾール含有腐食抑制剤に対する質量比が150:1を超えず、特に前記プロセスは更に、API グループI-Vから選択された少なくとも一つの基本原料を加えることを含み;また、少なくとも一つの硫黄含有超圧剤、少なくとも一つのリン含有対摩耗剤、少なくとも一つのトリアゾール含有種を含む接触製品(contact product)であり、前記製品は更に、硫黄のリンに対する質量比が10:1未満、リンの窒素に対する質量比が2:1より大きく、硫黄のトリアゾール含有腐食抑制剤の質量比が150:1を超えず(又は、製品はリストに示された成分を接触させることを含む)及びまた、前記接触製品は更に(接触される成分として)API グループI-Vから選択された少なくとも一つの基本原料を含み;及びまた、少なくとも一つの硫黄含有超圧剤、少なくとも一つのリン含有対摩耗剤、少なくとも一つのトリアゾール含有種を含む接触成分を含む方法であり、前記方法は、硫黄のリンに対する質量比が10:1未満、リンの窒素に対する質量比が2:1より大きく、硫黄のトリアゾール含有腐食抑制剤との質量比が150:1を超えない特徴を持つ組成物を形成し、特に前記成分は更に、API グループI-Vから選択された少なくとも一つの基本原料を含み; また、工業用ギアオイルで用いる本明細書に記載の添加剤系の使用、及び工業用ギア又は機能液としてのその他の全ての使用(油圧液、担体液等)を含む、本発明の添加剤系を含む工業用ギアオイルの使用、を含むものである。
【0105】
本明細書で用いた商標名は、TM(登録商標)又は(丸記号中のR)の記号により示しており、これらの名称は商標権により保護されていることもある。例えば、各国等の管轄権により登録されている商標であることもある。
【0106】
全ての特許、特許出願、テストの手順(ASTMによる方法、ULによる方法等)及び本明細書に引用された他の書類は、その開示が本発明と矛盾しない限りにおいて、及びその様な組み入れが許される全ての法体制下において、参照により本明細書に組み入れられる。
【0107】
数値の下限及び数値の上限が記載されている場合は、その全ての数値の下限から全ての数値の上限までの範囲が考慮の対象となっている。
【0108】
本発明の実施例における説明では、特別な例について記載されているが、当業者にとっては、種々の他の修飾が可能であることは明らかであり、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく修飾することが可能であることを理解すべきである。したがって、本出願に添付された特許請求の範囲に記載の発明の範囲は本明細書の実施例及び記載に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の記載は、本発明が属する技術分野の専門家により同等であると取扱われる全ての特徴を含み、本発明に含まれている特許可能な全ての新規な特徴を含むものと解されるベきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調剤された潤滑剤中の添加剤系としての使用に適した組成物であって、前記組成物は少なくとも一つの硫黄含有超圧剤、少なくとも一つのリン含有対摩耗剤、及び少なくとも一つのチアゾール含有種を含み、前記組成物は更に、硫黄のリンに対する質量比が10:1未満、リンの窒素に対する質量比が2:1より大きく、及び硫黄のチアゾール含有腐食防止剤に対する質量比が150:1を超えない特徴を持つ、前記組成物。
【請求項2】
更に、少なくとも一つの他の窒素含有化合物を含む請求項1の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも一つの他の窒素含有化合物が、錆防止剤、分散剤、銅不動態化剤、金属不動態化剤、及び抗酸化剤から選択される請求項2の組成物。
【請求項4】
更に前記組成物が、消泡剤、乳化破壊剤、摩擦緩和剤、封止膨張剤(seal swell agent)、流動点降下剤、希釈剤、増粘剤、発色団、粘着付与剤から選択される更に少なくとも一つの他の窒素含有化合物を含む、請求項1乃至3のいずれか1項の組成物。
【請求項5】
更に前記組成物が、錆防止剤、分散剤、洗浄剤、泡止め剤、金属腐食防止剤、乳化破壊剤、増粘剤、流動点降下剤、VI向上剤、発色団、摩擦緩和剤、防臭剤、封止膨張剤、及び希釈剤から選択される少なくとも一つの他の成分を含む、請求項1乃至4のいずれか1項の組成物。
【請求項6】
更に前記組成物が、(a) S:P < 8:1, (b) P:N > 2.5:1, 及び (c) S:トリアゾール含有量 < 110:1から選択される少なくとも一つの特性により表される特徴を持つ、請求項1乃至5のいずれか1項の組成物。
【請求項7】
更に前記組成物が、(a),(b) 及び(c)から選択される少なくとも2つの特性により表わされる特徴を持つ、請求項6の組成物。
【請求項8】
更に前記組成物が、(a),(b)及び(c)の3つのすべての特性により表わされる特徴を持つ、請求項6の組成物。
【請求項9】
更に前記組成物が、(a) S:P < 7:1, (b) P:N > 3:1, 及び(c) S: トリアゾール含有腐食防止剤 < 75:1から選択される少なくとも一つの特性により表わされる特徴を持つ、請求項1乃至8のいずれか1項の組成物。
【請求項10】
更に前記組成物が、(a),(b)及び(c)から選択される少なくとも2つの特性により表わされる特徴を持つ、請求項9の組成物。
【請求項11】
更に前記組成物が、(a),(b)及び(c)の3つのすべての特性により表わされる、請求項9の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、HPSIB超圧剤から選択される少なくとも一つの硫黄含有超圧剤を含む、請求項1乃至11のいずれか1項の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、モノ及びジアリールリン酸塩から選択される少なくとも一つのリン含有対磨耗剤を含む、請求項1乃至12のいずれか1項の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、トリルトリアゾール及びその誘導体から選択される少なくとも一つのトリアゾール含有種を含む、請求項1乃至13のいずれか1項の組成物。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項の組成物、及び基本原料(basestock)を含む工業用ギアオイル。
【請求項16】
前記基本原料がAPI グループI-V及びこれらの混合物から選択される、請求項15の工業用ギアオイル。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項の組成物、及び基本原料を含む自動車用動力伝達装置用液。
【請求項18】
前記基本原料が、API グループI-V及びこれらの混合物から選択される、請求項17の自動車用動力伝達装置用液。
【請求項19】
請求項17の組成物を含むマニュアル変速機用オイル。
【請求項20】
硫黄含有超圧剤、リン含有対摩耗成分及び窒素含有成分を含む、潤滑油又は機能液中の添加剤系としての使用に適した組成物であり、その組成物の改良点には、組成物中に少なくとも一つのトリアゾール含有種の存在を含み、前記組成物は硫黄のリンに対する質量比が10:1未満、リンの窒素に対する質量比が2:1より大きく、硫黄のトリアゾール含有腐食抑制剤に対する質量比が150:1を超えないことを含む、前記組成物。

【公表番号】特表2008−535970(P2008−535970A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505301(P2008−505301)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/006013
【国際公開番号】WO2006/110220
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】