説明

潤滑剤組成物

【課題】高硫黄燃料及び低硫黄燃料の両方の使用に適する、総塩基数が30以上、好ましくは35以上(ASTM D 2896-01)の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物を提供すること。
【解決手段】総塩基数が30以上である船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。組成物は、40質量%以上の潤滑粘度の油、2種以上の界面活性剤、好ましくはフェネート及びスルホネート界面活性剤から調製された1種以上の清浄剤、100ppm以上のホウ素を提供する1種以上の含ホウ素分散剤、及び230ppm以上、好ましくは250ppm以上の亜鉛を提供する1種以上の含亜鉛抗摩耗添加剤、好ましくはジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤組成物、特に船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤(MDCL)組成物に関する。船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物は全損潤滑剤であり、その目的は、シリンダ・ライナー及びピストン・リング間に強い油膜を提供し、燃料中の硫黄化合物の燃焼により形成される酸を中和することである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンに使用される燃料は、一般的には硫黄含量が高く(例えば、3.5%以上の硫黄)、その結果ディーゼルエンジンからの排気ガスは多量の硫黄酸化物(SOx)を含む。硫黄酸化物は、これもまた排気ガス中に存在する水分と反応してエンジンを腐蝕させる硫酸を形成する。したがって、船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物は硫酸を中和するための過剰塩基性金属清浄剤を含む。市販の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物は、一般的には70以上の(ASTM D2896を用いて測定した値)総塩基数(“TBN”)を有する。
環境問題により沿岸地域のような多くの地域は、低硫黄含量の燃料、すなわち1.00質量%未満の硫黄を含む燃料の使用を要求している。この場合には、総塩基数がもっと低い、例えば40のような船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物の使用を許容する。したがって、船舶は2種類の潤滑剤用のタンクを携行する必要が生じる。
US 4,842,755号には、塩基数が60以上の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤が開示されている。組成物は、ホウ酸塩化無灰分散剤、1種以上の過剰塩基性金属化合物及び0.02〜0.023質量%(200〜230ppm)の亜鉛を提供するジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む(請求項1を参照されたい)。特定の実施例には、亜鉛の量が230ppmを超えると、リング及びライナーの摩耗における性能の利点が失われることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、高硫黄燃料及び低硫黄燃料の両方の使用に適する、総塩基数が30以上、好ましくは35以上(ASTM D 2896-01)の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物を提供することである。
本発明の更なる目的は、高硫黄燃料を用いた場合の腐食性摩耗に対して必要とされる程度の保護を提供しつつ、高硫黄燃料及び低硫黄燃料の両方の使用に適する、総塩基数が30以上、好ましくは35以上(ASTM D 2896-01)の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、ASTM D2896にしたがって測定された総塩基数が30以上、好ましくは35以上で、
船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物の総質量に対して40質量%以上の潤滑粘度の油、
2種以上の界面活性剤、好ましくはフェネート及びスルホネート界面活性剤から調製された1種以上の清浄剤、
100ppm以上のホウ素を提供する1種以上の含ホウ素分散剤、及び
230ppm以上、好ましくは250ppm以上の亜鉛を提供する1種以上の含亜鉛抗摩耗添加剤、好ましくはジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛、
を含む船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物が提供される。
驚くべきことに、本発明者らは、US 4,842,755号の教示を検討して、2種以上の界面活性剤から調製された清浄剤を含む船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物においては、230ppm以上の亜鉛を使用すると摩耗に対する保護が増大することを見いだした。
本発明はまた、前述のように定義された船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物が、高硫黄燃料とともに使用された場合に、例えば40のような低い総塩基数でも良好な程度の摩耗保護を提供することも見いだした。
本発明によれば、エンジンの潤滑に前述のように定義された船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物を使用する工程を含む船舶用ディーゼルエンジンの操作方法も提供される。
本発明によれば、船舶用ディーゼルエンジンにおける摩耗を減少させるのに前述のように定義された船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物を使用することも提供される。
【0005】
潤滑粘度の油
潤滑粘度の油(潤滑油とも呼ばれる)は、船舶用エンジンの潤滑に適するオイルであればいずれでもよい。潤滑油は、動物油でも植物油でも鉱油でもよい。潤滑油は、ナフテン系基油、パラフィン系基油または混合基油のような石油から誘導された潤滑油が適する。あるいは、潤滑油は合成潤滑油でもよい。適する合成潤滑油には、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート及びトリデシルアジペートのようなジエステルを含む合成エステル潤滑油、または例えば液体ポリイソブテン及びポリα-オレフィンのような高分子炭化水素潤滑油が含まれる。通常、鉱油が使用される。潤滑油は、一般的には組成物の60質量%以上、典型的には70質量%以上を構成し、典型的には100℃における動粘度が2〜40mm2/秒、例えば3〜15mm2/秒で、粘度指数が80〜100,例えば90〜95である。
別の種類の潤滑油は、精製プロセスが、高温及び中程度の圧力において水素の存在下で中程度及び重質フラクションを更に分解する水素添加分解油である。水素添加分解油は、典型的には100℃における動粘度が2〜40mm2/秒、例えば3〜15mm2/秒で、粘度指数が典型的には100〜110の範囲で、例えば105〜108である。
油には、一般的には100℃における動粘度が28〜36mm2/秒である真空残油から溶媒抽出され、アスファルトが除去された基油であって、典型的には組成物の質量に対して40質量%未満、好ましくは30質量%未満、更に好ましくは20質量%未満が使用されうる基油を言及する“ブライトストック”が含まれうる。
船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物は、好ましくは船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物の総質量に対して50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、一層好ましくは70質量%以上の潤滑粘度の油を含む。
【0006】
2種以上の界面活性剤を含む清浄剤
清浄剤は、エンジン内におけるピストン沈着物、例えば高温ワニス及びラッカー沈着物の形成を減少させる添加剤であり、酸を中和させる性質を有し、懸濁液中に微粉状の固体を保持しうる。それは、界面活性剤とも呼ばれる酸性の有機化合物の金属塩である金属“石鹸”に基づく。
清浄剤は、長い疎水性の尾部を有する極性頭部を含む。過剰量の、酸化物または水酸化物のような金属化合物を二酸化炭素のような酸性ガスと反応させて、金属塩基(例えば、カーボネート)ミセルの外部層として中和された清浄剤を含む過剰塩基性清浄剤を形成することにより多量の金属塩基が含まれる。
清浄剤は、2種以上の界面活性剤、好ましくは少なくともフェネート及びスルホネートを含む。清浄剤は複合/ハイブリッド清浄剤とも呼ばれる。複合清浄剤は、好ましくは清浄剤の総質量に対して5質量%以上のフェネート、更に好ましくは10質量%以上のフェネートを含む。複合清浄剤は、好ましくは清浄剤の総質量に対して5質量%以上のスルホネート、更に好ましくは8質量%以上のスルホネートを含む。清浄剤は、好ましくはサリチレート界面活性剤も含む。清浄剤は、好ましくは清浄剤の総質量に対して5質量%以上のサリチレート、更に好ましくは10質量%以上のサリチレートを含む。複合清浄剤中の界面活性剤の量は、当業者には公知であるクロマトグラフィー、分光法及び/または滴定のような技術により決定されうる。清浄剤はまた、例えばチオリン酸塩、ナフテネート、または油溶性カルボキシレートのようなその他の界面活性剤も含みうる。界面活性剤群は、過剰塩基化工程中に混合される。金属は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びマグネシウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。カルシウムが好ましい。
【0007】
複合清浄剤の例は、WO 97/46643号、WO 97/46644号、WO 97/46645号、WO 97/46646号及びWO 97/46647号に記載されている。
好ましくは、清浄剤は250〜500、更に好ましくは280〜480、更に一層好ましくは300〜450のTBNを有する。
船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物は、好ましくは船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物の総質量に対して2質量%以上、好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上の清浄剤を含む。
船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤はまた、カルシウムフェネート清浄剤、硫酸カルシウム清浄剤またはサリチル酸カルシウム清浄剤のような更なる清浄剤を含みうる。更なる清浄剤は、50未満の低いTBN、50〜150の中程度のTBN、または150以上の高いTBNを有しうる。船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物は、好ましくは船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物の総質量に対して4質量%以上、好ましくは6質量%以上の更なる清浄剤を含む。
【0008】
分散剤
船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物は、100ppm以上のホウ素を提供する1種以上の分散剤を含む。分散剤は、シリンダ潤滑剤における主要な機能が清浄剤系による酸の中和を促進することである潤滑剤組成物の添加剤である。
注目すべき種類の分散剤は、金属を含むために灰形成物質と呼ばれる物質に対し、燃焼時に実質的に灰を形成しない非金属有機物質を意味する“無灰”である。無灰分散剤は極性頭部を有する長鎖炭化水素を含み、極性は、例えばO、PまたはN原子の包含から誘導される。炭化水素は、例えば40〜500個の炭素原子を有する、油溶性を提供する親油性基である。したがって、無灰分散剤は、分散される粒子と結合しうる官能基を有する油溶性高分子炭化水素主鎖を含む。
無灰分散剤の例は、ホウ酸塩化ポリイソブテン琥珀酸無水物のようなホウ酸塩化スクシニミド、及びホウ酸塩化されているポリアミン縮合生成物である。
船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物は、好ましくは船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物の総質量に対して150ppm以上、更に好ましくは200ppm以上のホウ素を含む。
【0009】
抗摩耗添加剤
抗摩耗添加剤は、船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物の総質量に対して230ppm以上、好ましくは250ppm以上の亜鉛を提供する。抗摩耗添加剤は、好ましくは275ppm以上、更に好ましくは300ppm以上、更に一層好ましくは325ppm以上、更に一層好ましくは350ppm以上、更に一層好ましくは375ppm以上、もっとも好ましくは385ppm以上の亜鉛を提供する。
抗摩耗添加剤は、通常1種以上のアルコールまたはフェノールをP2S5と反応させることによりまずジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、次いで形成されたDDPAを亜鉛化合物で中和することにより公知の技術に従って調製しうる。例えば、ジチオリン酸は第一及び第二アルコールの混合物を反応させることにより製造しうる。あるいは、全てが第二であるヒドロカルビル基と、全てが第一であるカルビル基の両方を含む複数のジチオリン酸も形成されうる。亜鉛塩を形成するためには、酸化物ではないいずれかの塩基性または中性亜鉛化合物が使用され、水酸化物及び炭酸塩が最も一般的に使用される。市販の添加剤は、中和反応において過剰の塩基性亜鉛化合物を使用するためにしばしば過剰の亜鉛を含む。
好ましいジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛はジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、下式により表しうる。
[(RO)(R1O)P(S)S]2Zn
(式中、R及びR1は、同種または異種の1〜18個、好ましくは2〜12個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリール及び環状脂肪族基のような基が含まれる。)。特に好ましいR及びR1は、2〜8個の炭素原子のアルキル基である。したがって、基は、例えば、エチル、n-プロピル、1-プロピル、n-ブチル、1-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、1-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルである。油溶性であるためには、ジチオリン酸における(すなわち、R及びR1における)総炭素原子数は一般的には5以上であろう。したがって、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛はジアルキルジチオリン酸亜鉛を含みうる。
【0010】
酸化防止剤
船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物は1種以上の酸化防止剤を含みうる。酸化防止剤はアミン系でもフェノール系でもよい。アミンの例としては、ジアリールアミンのような第二芳香族アミン、例えば4〜9個の炭素原子を有するアルキル基で各フェニル基がアルキル置換されたジフェニルアミンが言及されうる。酸化防止剤の例としては、モノフェノール及びビスフェノールを含むヒンダードフェノールが言及されうる。
好ましくは、存在するとすれば酸化防止剤は、船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤の総質量に対して3質量%以下の量まで組成物に供給される。
流動点降下剤、消泡剤、及び/または乳化破壊剤のようなその他の添加剤は必要に応じて供給されうる。
本明細書において使用されている“油溶性”または“油分散性”という用語は、必ずしも、化合物または添加剤が全ての割合で油中に溶解、混和または懸濁しうることを示すわけではない。しかしながら、これらの用語は、油が使用される環境で意図する効果を示すのに十分な程度にそれらが油中で例えば溶解または安定して分散しうることを意味する。更に、その他の添加剤の追加の混合も、所望に応じてより多量の特定の添加剤の混合も許容されうる。
本発明の潤滑剤組成物は、混合の前後で化学的に同一であってもなくても定義された個別の(すなわち、個々の)成分を含む。
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物を、40または70のTBNを有するように調製した。潤滑剤組成物は、フェネート及びスルホネート界面活性剤を含む過剰塩基性複合カルシウム清浄剤、塩基数250のカルシウムフェネート、ホウ酸塩化分散剤、及び抗摩耗剤を含んでいる。
潤滑剤組成物について、約3.5%の硫黄を含む燃料の作業で、Bolnesクロスヘッドエンジン(単気筒2ストロークエンジン、Bolnes 3DNL)を用いたBolnes Testを実施し、目盛を付けて安定化させた。Bolnesエンジン速度は、1.00g/kwhの潤滑剤供給速度で500回/分であった。各潤滑剤組成物について96時間試験した。試験条件は、この時間でシリンダ・ライナーに腐食性摩耗を生ずるように設定した。シリンダ・ライナー上の特定の目盛付きの場所で摩耗をμの単位で測定した。摩耗の平均値を以下に報告する。結果が低ければ低いほど、シリンダ・ライナーの摩耗は少ない。
【0012】
表1

【0013】
前記の表は、清浄剤を2種以上の界面活性剤から調製する場合には385ppm以上の亜鉛を含む船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤を用いても摩耗が少ないことを明らかに示す。TBNが40である実施例5が、TBNが70である比較例1より硫黄含量の高い燃料でも摩耗が少ないことは、特に驚くべきことである。
以下に本発明の態様を示す。
1.ASTM D2896にしたがって測定された総塩基数が30以上である船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物であって、
40質量%以上の潤滑粘度の油、
2種以上の界面活性剤、好ましくはフェネート及びスルホネート界面活性剤から調製された1種以上の清浄剤、
100ppm以上のホウ素を提供する1種以上の含ホウ素分散剤、及び
230ppm以上、好ましくは250ppm以上の亜鉛を提供する1種以上の含亜鉛抗摩耗添加剤、好ましくはジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛、
を含む船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
2.前記清浄剤が、清浄剤の総質量に対して5質量%以上のフェネート及び5質量%以上のスルホネートを含む上記1記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
3.前記清浄剤が更にサリチレート界面活性剤を含み、好ましくは清浄剤の総質量に対して5質量%以上のサリチレートを含む上記1または2記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
4.前記潤滑剤が35以上、好ましくは40以上又は60以上の塩基数を有する上記1乃至3のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
5.前記分散剤が、船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物の総質量に対して150ppm以上、好ましくは200ppm以上のホウ素を提供する上記1乃至4のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
6.前記抗摩耗添加剤が、275ppm以上、好ましくは300ppm以上、更に一層好ましくは325ppm以上、更に一層好ましくは350ppm以上、更に一層好ましくは375ppm以上、もっとも好ましくは385ppm以上の亜鉛を提供する上記1乃至5のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
7.前記抗摩耗添加剤が、下式により表されるジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩である上記1乃至6のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
[(RO)(R1O)P(S)S]2Zn
(式中、R及びR1は、同種または異種の1〜18個、好ましくは2〜12個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリール及び環状脂肪族基のような基が含まれる。)
8.アミン系またはフェノール系酸化防止剤を更に含む上記1乃至7のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
9.好ましくは、硫黄含量が3.0%以上、好ましくは3.5%以上の燃料を用いて船舶用ディーゼルエンジンを操作する方法であって、エンジンを滑らかにするために上記1乃至8のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物を使用する工程を含む方法。
10.船舶用ディーゼルエンジンにおいて摩耗を減少させるための、好ましくは、硫黄含量が3.0%以上、好ましくは3.5%以上の燃料と一緒の上記1乃至8のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物の使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D2896にしたがって測定された総塩基数が30以上である船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物であって、
40質量%以上の潤滑粘度の油、
2種以上の界面活性剤から調製された1種以上の複合清浄剤、
100ppm以上のホウ素を提供する1種以上の含ホウ素分散剤
30ppm以上の亜鉛を提供する1種以上の含亜鉛抗摩耗添加剤、及び
6質量%以上のカルシウムフェネート清浄剤、
を含む船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記清浄剤が、清浄剤の総質量に対して5質量%以上のフェネート及び5質量%以上のスルホネートを含む請求項1記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
【請求項3】
前記清浄剤が更にサリチレート界面活性剤を含む請求項1または2記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
【請求項4】
前記潤滑剤が35以上の塩基数を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記分散剤が、船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物の総質量に対して150ppm以上のホウ素を提供する請求項1乃至4のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
【請求項6】
前記抗摩耗添加剤が、275ppm以上の亜鉛を提供する請求項1乃至5のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
【請求項7】
前記抗摩耗添加剤が、下式により表されるジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩である請求項1乃至6のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
[(RO)(R1O)P(S)S]2Zn
(式中、R及びR1は、同種または異種の1〜18個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である。)
【請求項8】
アミン系またはフェノール系酸化防止剤を更に含む請求項1乃至7のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物。
【請求項9】
舶用ディーゼルエンジンを操作する方法であって、エンジンを潤滑するために請求項1乃至8のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物を使用する工程を含む方法。
【請求項10】
船舶用ディーゼルエンジンにおいて摩耗を減少させるための請求項1乃至8のいずれかに記載の船舶用ディーゼル・シリンダ潤滑剤組成物の使用。

【公開番号】特開2012−144747(P2012−144747A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107307(P2012−107307)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【分割の表示】特願2004−296246(P2004−296246)の分割
【原出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】