説明

潤滑油供給装置

【課題】潤滑油の供給不足を抑制して潤滑性能の向上を可能とする。
【解決手段】ケース12内にカウンタドライブギア13、カウンタドリブンギア14、ドライブピニオンギア15、MG2リダクションギア16、デフリングギア17を順次噛み合わせて収容すると共に、オイル貯留部18と通路部材19とを収容し、通路部材19により、デフリングギア17により掻き上げた潤滑油を導く第1案内通路31と、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17の噛み合い部から押し出され潤滑油を導く第2案内通路32と、各案内通路31,32の下流部が合流すると共に鉛直方向における上方に潤滑油を導く合流部34とを設け、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が予め設定された所定圧力未満であるときに合流部34における第1案内通路31の下流部を閉止可能な開閉部材35を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーシングに貯留された潤滑油を回転部材により鉛直方向における上方へ掻き上げて所定の位置へ供給する技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載されたオイル供給装置は、ケーシングに収容されたオイルを掻き上げるリングギヤと、このリングギヤによって掻き上げられたオイルを受けて2つのタンクに貯留するオイル受け部と、リングギヤによって掻き上げられたオイルをオイル受け部へ案内する第1案内通路及び第2案内通路と、リングギヤの回転速度の上昇に応じてサブキャッチタンクへのオイルの流入を抑制する蓋部材とを設けたのである。従って、リングギヤの回転速度が低いときには、ねじりコイルばねにより蓋部材がサブキャッチタンクを開放することができ、リングギヤの回転速度が高いときには、潤滑油により蓋部材が押されてサブキャッチタンクを閉止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−242783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来のオイル供給装置にて、第1案内通路と第2案内通路がほぼ鉛直方向に沿って設けられ、その上端部が合流した合流部の上方にオイル受け部が設けられて構成されることがある。この場合、リングギヤの回転速度が低いと、オイル供給速度が高い第2案内通路からオイル供給速度の低い第1案内通路へオイルが流れ込んでしまうおそれがある。すると、オイル受け部は、十分な量のオイルを受け入れることが困難となり、オイル不足が生じてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、潤滑油の供給不足を抑制して潤滑性能の向上を可能とする潤滑油供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の潤滑油供給装置は、潤滑油を供給する第1潤滑油供給手段と、前記第1潤滑油供給手段により供給される潤滑油を導く第1案内通路と、潤滑油を供給する第2潤滑油供給手段と、前記第2潤滑油供給手段により供給されて前記第1案内通路により導かれる潤滑油の圧力よりも高い圧力の潤滑油を導く第2案内通路と、前記第1案内通路の下流部と前記第2案内通路の下流部とが合流すると共に鉛直方向における上方に潤滑油を導く合流部と、前記第1案内通路を流れる潤滑油の圧力が予め設定された所定圧力未満であるときに前記合流部における前記第1案内通路の下流部を閉止可能な開閉部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記潤滑油供給装置にて、前記開閉部材は、前記第1案内通路を流れる潤滑油の圧力が所定圧力以上のときに前記合流部における第1案内通路の下流部及び第2案内通路の下流部を開放し、前記第1案内通路を流れる潤滑油の圧力が所定圧力未満であるときに前記合流部における第1案内通路の下流部を閉止する一方、前記第2案内通路の下流部を開放することが好ましい。
【0009】
上記潤滑油供給装置にて、前記開閉部材は、前記合流部に回動自在に支持され、前記第1案内通路を流れる潤滑油の圧力が所定圧力以上のときに前記合流部における中立位置に移動し、前記第1案内通路を流れる潤滑油の圧力が所定圧力未満であるときに前記合流部における第1案内通路の閉止位置に移動することが好ましい。
【0010】
上記潤滑油供給装置にて、前記第1潤滑油供給手段により供給される潤滑油を前記第2潤滑油供給手段に導く第3案内通路が設けられ、前記第1潤滑油供給手段は、貯留部に貯留された潤滑油を掻き上げ、前記第1案内通路が前記合流部を通して上方の潤滑油供給部に導くと共に、前記第3案内通路が前記第2潤滑油供給手段に導き、前記第2潤滑油供給手段は、前記第3案内通路から供給された潤滑油を押し出し、前記第2案内通路が前記合流部を通して上方の前記潤滑油供給部に導くことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る潤滑油供給装置は、潤滑油を導く第1案内通路と、第1案内通路における潤滑油の圧力よりも高い圧力の潤滑油を導く第2案内通路と、各案内通路の下流部が合流して鉛直方向における上方に潤滑油を導く合流部と、第1案内通路の潤滑油の圧力が予め設定された所定圧力未満であるときに第1案内通路の下流部を閉止可能な開閉部材とを設けるので、第1案内通路の潤滑油の圧力が低くなっても、開閉部材が第1案内通路を閉止するため、第2案内通路から第1案内通路への潤滑油の流れ込みが防止され、潤滑油の供給不足を抑制して潤滑性能を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る潤滑油供給装置を表す概略図である。
【図2】図2は、実施形態1の潤滑油供給装置の断面を表す図1のII−II断面図である。
【図3】図3は、実施形態1の潤滑油供給装置における合流部を表す概略図である。
【図4】図4は、実施形態1の潤滑油供給装置における開閉部材の作用を表す概略図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態2に係る潤滑油供給装置における合流部を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る潤滑油供給装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0014】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係る潤滑油供給装置を表す概略図、図2は、実施形態1の潤滑油供給装置の断面を表す図1のII−II断面図、図3は、実施形態1の潤滑油供給装置における合流部を表す概略図、図4は、実施形態1の潤滑油供給装置における開閉部材の作用を表す概略図である。
【0015】
実施形態1の潤滑油供給装置は、図1及び図2に示すように、例えば、ハイブリッド車両の動力伝達装置11に適用されたものであり、この動力伝達装置11は、ケース12と、カウンタドライブギア13、カウンタドリブンギア14、ドライブピニオンギア15、MG2リダクションギア16、デフリングギア17、オイル貯留部18、通路部材19とから構成されている。
【0016】
ケース12は、中空形状をなし、内部に上述したカウンタドライブギア13、カウンタドリブンギア14、ドライブピニオンギア15、MG2リダクションギア16、デフリングギア17、オイル貯留部18、通路部材19が収容されている。この場合、カウンタドライブギア13は、カウンタドリブンギア14よりも車両前後方向の前側に配置され、MG2リダクションギア16及びデフリングギア17は、カウンタドリブンギア14よりも車両前後方向の後側に配置されている。また、MG2リダクションギア16は、カウンタドリブンギア14及びドライブピニオンギア15よりも鉛直方向上方に配置され、このカウンタドリブンギア14及びドライブピニオンギア15は、デフリングギア17よりも鉛直方向上方に配置されている。
【0017】
カウンタドライブギア13は、図示しないエンジンの出力軸及び第1のモータジェネレータ(MG1)の回転軸と遊星歯車機構を介して接続されており、エンジンの出力が、カウンタドライブギア13及びMG1に分割して入力可能となっている。カウンタドリブンギア14及びドライブピニオンギア15は、同軸上に配置され、且つ、一体に回転可能となっている。このカウンタドリブンギア14は、カウンタドライブギア13と噛合っている。MG2リダクションギア16は、第2のモータジェネレータ(MG2)20における回転軸21に連結されており、この回転軸21と一体に回転可能となっている。このMG2リダクションギア16は、カウンタドリブンギア14と噛合っている。また、MG2リダクションギア16は、カウンタドリブンギア14よりも小径であり、第2のモータジェネレータ20の出力がMG2リダクションギア16からカウンタドリブンギア14に増幅して伝達可能となっている。
【0018】
ドライブピニオンギア15は、デフリングギア17と噛合っており、カウンタドリブンギア14に入力されたエンジンの出力トルク及び第2のモータジェネレータ20の出力トルクが、ドライブピニオンギア15を介してデフリングギア17に伝達可能となっている。このデフリングギア17は、差動機構22を介して図示しない駆動輪と接続されており、駆動輪の回転と連動して回転可能である。なお、カウンタドライブギア13、カウンタドリブンギア14、ドライブピニオンギア15、MG2リダクションギア16、デフリングギア17は、図1に表す矢印方向に回転可能となっている。
【0019】
ケース12は、その内部にて、鉛直方向の下部に潤滑油(例えば、ATF)を貯留するオイル貯留部18が形成されている。デフリングギア17は、ケース12内の下部に配置されており、オイル貯留部18に潤滑油が貯留されているとき、その貯留された潤滑油にその一部が浸漬可能となっている。
【0020】
また、ケース12は、その内部にて、鉛直方向の上部に潤滑油を供給するオイル受け部25が設けられている。このオイル受け部25は、カウンタドライブギア13、カウンタドリブンギア14、ドライブピニオンギア15の上方に設けられたリブ26により構成され、MG2リダクションギア16により掻き上げられた潤滑油をリブ26の上方に貯留可能となっている。そして、ケース12は、オイル受け部25に連通するオイル供給孔27が形成され、オイル受け部25に貯留された潤滑油が動力伝達装置11の潤滑油供給部(図示略)に供給し、潤滑及び冷却可能となっている。
【0021】
通路部材19は、デフリングギア17によって掻き上げられて送られる潤滑油を鉛直方向上方へ導き、この潤滑油を必要箇所に供給するものである。即ち、この通路部材19は、オイル貯留部18からデフリングギア17により掻き上げられた潤滑油を上方に導き、カウンタドリブンギア14やドライブピニオンギア15、MG2リダクションギア16に供給すると共に、デフリングギア17とドライブピニオンギア15との噛み合い部から押し出された潤滑油を上方に導き、MG2リダクションギア16に供給するものである。
【0022】
ここで、デフリングギア17が本発明の第1潤滑油供給手段として機能し、デフリングギア17及びドライブピニオンギア15が本発明の第2潤滑油供給手段として機能する。そして、実施形態1の潤滑油供給装置は、ドライブピニオンギア15、MG2リダクションギア16、デフリングギア17、通路部材19により構成される。
【0023】
この通路部材19は、デフリングギア17によりオイル貯留部18から掻き上げられて供給された潤滑油を導く第1案内通路31と、デフリングギア17とドライブピニオンギア15との噛み合い部から押し出されて供給された潤滑油を導く第2案内通路32とを有し、この第2案内通路32は、第1案内通路31により導かれる潤滑油の圧力よりも高い圧力の潤滑油を導くことができる。この場合、通路部材19は、デフリングギア17によりオイル貯留部18から掻き上げられて供給された潤滑油をデフリングギア17とドライブピニオンギア15との噛み合い部に導く第3案内通路33を有している。そのため、デフリングギア17によりオイル貯留部18から掻き上げられた潤滑油は、第1案内通路31により上方に導かれると共に、第3案内通路33によりデフリングギア17とドライブピニオンギア15との噛み合い部に導かれ、この噛み合い部から押し出された潤滑油は、第2案内通路32により上方に導かれる。
【0024】
また、通路部材19は、第1案内通路31の下流部と第2案内通路32の下流部とが合流すると共に鉛直方向における上方に潤滑油を導く合流部34を有している。そして、通路部材19は、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が予め設定された所定圧力未満であるときに合流部34における第1案内通路31の下流部を閉止可能な開閉部材35を有している。
【0025】
この開閉部材35は、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が所定圧力以上のときに合流部34における第1案内通路31の下流部及び第2案内通路32の下流部を開放し、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が所定圧力未満であるときに合流部34における第1案内通路31の下流部を閉止する一方、第2案内通路32の下流部を開放する。
【0026】
具体的に、この開閉部材35は、合流部34に回動自在に支持され、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が所定圧力以上のときに合流部34における中立位置に移動し、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が所定圧力未満であるときに合流部34における第1案内通路31の閉止位置に移動する。
【0027】
即ち、通路部材19は、デフリングギア17の周方向に沿ってこのデフリングギア17と対向して設けられ、デフリングギア17との間にデフリングギア17によって送られる潤滑油が流入する掻き上げ通路41を形成している。この掻き上げ通路41は、デフリングギア17を軸方向に挟んで互いに対向する一対の側壁部41aと、デフリングギア17の外周面と径方向に対向して形成された曲面部41bとから構成されている。曲面部41bは、デフリングギア17と同心上に配置されており、デフリングギア17の外周面と所定の隙間が確保されており、この隙間の大きさは、周方向において略一様となっている。2つの側壁部41aは、外側端部が曲面部41bによって接続されている。そのため、掻き上げ通路41は、デフリングギア17の両側面及び外周面と、側壁部41a及び曲面部41bとが対向する領域に確保されていることとなる。
【0028】
この掻き上げ通路41は、デフリングギア17のほぼ半周にわたって設けられ、且つ、このデフリングギア17の回転方向における前方の歯面が鉛直方向の上側を向くような位置に設けられており、流入口41cがオイル貯留部18の潤滑油に浸漬した位置に設けられている。そのため、デフリングギア17が回転することで、オイル貯留部18の潤滑油を掻き上げ通路41に掻き上げ、このデフリングギア17の外周部に沿って上方に供給することができる。
【0029】
また、通路部材19は、掻き上げ通路41から分岐した第1案内通路31と第3案内通路33を形成している。第1案内通路31は、掻き上げ通路41から上方に分岐して所定の傾斜角度で延在している。この第1案内通路31は、第1筒状部31aにより形成され、掻き上げ通路41に対してその外側から接続している。第3案内通路33は、掻き上げ通路41から同形状をなして連続するように、デフリングギア17の外周部に沿って水平方向に延在している。この第3案内通路33は、デフリングギア17とドライブピニオンギア15との噛み合い部まで設けられている。
【0030】
通路部材19は、ドライブピニオンギア15の周方向に沿ってこのドライブピニオンギア15と対向して設けられ、ドライブピニオンギア15との間にドライブピニオンギア15によって送られる潤滑油が流入する押し出し通路42を形成している。この押し出し通路42は、ドライブピニオンギア15を軸方向に挟んで互いに対向する一対の側壁部42aと、ドライブピニオンギア15の外周面と径方向に対向して形成された曲面部42bとから構成されている。曲面部42bは、ドライブピニオンギア15と同心上に配置されており、ドライブピニオンギア15の外周面と所定の隙間が確保されており、この隙間の大きさは、周方向において略一様となっている。2つの側壁部42aは、外側端部が曲面部42bによって接続されている。そのため、押し出し通路42は、ドライブピニオンギア15の両側面及び外周面と、側壁部42a及び曲面部42bとが対向する領域に確保されていることとなる。
【0031】
この押し出し通路42は、ドライブピニオンギア15のほぼ半周にわたって設けられ、且つ、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17とが噛み合う位置(噛み合い部)から上側を向くように設けられている。そのため、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17とが回転することで、第3案内通路33を流れる潤滑油の一部がドライブピニオンギア15とデフリングギア17との噛み合い部から上方に押し出され、ドライブピニオンギア15の外周部に沿って上方に供給することができる。
【0032】
また、通路部材19は、押し出し通路42から分岐した第2案内通路32を形成している。第2案内通路32は、押し出し通路42から上方に分岐して所定の傾斜角度で延在している。この第2案内通路32は、第2筒状部32aにより形成され、押し出し通路42に対してその外側から接続している。
【0033】
そして、通路部材19は、第1案内通路31の下流部(図1にて、上部)と第2案内通路32の下流部(図1にて、上部)とが合流する合流部34を形成している。この合流部34は、第3筒状部34aにより形成され、鉛直方向に沿って配置されており、上端部に吐出部34bが形成されている。この吐出部34bは、MG2リダクションギア16の下方に接近して位置しており、第1案内通路31及び第2案内通路32を流れて合流部34で合流する潤滑油をMG2リダクションギア16の歯面に向けて供給することができる。また、合流部34は、吐出部34bからMG2リダクションギア16の回転方向における下流側に湾曲するように延在するガイド部34cが形成されている。
【0034】
従って、デフリングギア17が回転すると、オイル貯留部18の潤滑油は、デフリングギア17に送られて流入口41cから掻き上げ通路41に流入する。デフリングギア17により掻き上げ通路41に継続的に潤滑油が送り込まれることで、掻き上げ通路41の油圧が上昇する。掻き上げ通路41の油圧が上昇すると、この掻き上げ通路41内の潤滑油は、第1案内通路31及び第3案内通路33へ供給される。そして、第1案内通路31に供給された潤滑油は、合流部34に送られる。一方、第2案内通路32に供給された潤滑油は、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17との噛み合い部に送られ、この噛み合い部から押し出されて押し出し通路42に送り出され、第2案内通路32へ供給される。第2案内通路32に供給された潤滑油は、合流部34に送られる。
【0035】
その後、第1、第2案内通路31,32から合流部34に送られた潤滑油は、吐出口34bからMG2リダクションギア16に供給され、ガイド部34cに一次貯留される。そして、MG2リダクションギア16が回転することで、この潤滑油を掻き上げてオイル受け部25に供給し、オイル受け部25に貯留された潤滑油は、各オイル供給孔27を通して動力伝達装置11の潤滑油供給部に供給される。
【0036】
そして、本実施形態の潤滑油供給装置は、図3に示すように、合流部34に第1案内通路31及び第2案内通路32を開閉可能な開閉部材35が設けられている。この開閉部材は、基端部(下端部)が第1案内通路31と第2案内通路32とを区画する区画壁51に支持軸52により回動自在に支持されている。この開閉部材35は、先端部が吐出口34b側に延出し、合流部34における第1案内通路31側に傾斜面35aが形成されている。そして、この開閉部材35は、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力と第2案内通路32を流れる潤滑油の圧力に応じて、図3に示す中立位置と、図4に示す閉止位置とに移動可能となっている。この場合、開閉部材35は、第1案内通路31を閉止する閉止位置に移動したとき、傾斜面35aが第1案内通路31の内壁面に適正に密着して閉止することができる。
【0037】
即ち、図1及び図2に示すように、デフリングギア17は、差動機構22を介して駆動輪と接続されていることから、デフリングギア17の回転速度と駆動輪の回転速度とはほぼ同速となっている。そのため、車両が中速から高速で走行しているとき、デフリングギア17は、中速から高速で回転することとなり、オイル貯留部18の潤滑油は、この回転するデフリングギア17により掻き上げ通路41に継続的に潤滑油が送り込まれることで油圧が上昇し、この掻き上げ通路41内で高圧となった潤滑油は、第1案内通路31及び第3案内通路33へ供給される。そして、高圧の潤滑油は、第3案内通路33からドライブピニオンギア15とデフリングギア17との噛み合い部に送られ、この噛み合い部から押し出され、押し出し通路42から第2案内通路32へ供給される。
【0038】
そのため、図3に示すように、合流部34に対して、第1案内通路31から高圧の潤滑油が供給されると共に、第2案内通路32から高圧の潤滑油が供給されることとなり、この合流部34に設けられた開閉部材35は、各案内通路31,32からほぼ同圧の潤滑油の圧力を受け、中立位置に移動して維持される。即ち、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が所定圧力以上のとき、開閉部材35は、合流部34における中立位置に移動することとなり、合流部34における第1案内通路31の下流部及び第2案内通路32の下流部を開放する。すると、第1、第2案内通路31,32から合流部34に送られた潤滑油は、吐出口34bからMG2リダクションギア16に供給される。
【0039】
一方、車両が低速で走行しているとき、デフリングギア17は、低速で回転することとなり、オイル貯留部18の潤滑油は、この回転するデフリングギア17により掻き上げ通路41に継続的に潤滑油が送り込まれることで油圧が上昇し、第1案内通路31及び第3案内通路33へ供給される。そして、この潤滑油は、第3案内通路33からドライブピニオンギア15とデフリングギア17との噛み合い部に送られ、この噛み合い部から押し出され、押し出し通路42から第2案内通路32へ供給される。
【0040】
このとき、図4に示すように、車両が低速であることから、デフリングギア17も低速回転となり、オイル貯留部18の潤滑油は、低圧状態で第1案内通路31及び第3案内通路33へ供給される。すると、第1案内通路31は、鉛直方向における上方側に延在していることから、低圧の潤滑油を合流部34に送り出すことができず、潤滑油の油面が第1案内通路31に位置することとなる。一方、第3案内通路33は、水平方向に延在していることから、低圧の潤滑油をドライブピニオンギア15とデフリングギア17との噛み合い部に送り出すことができ、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17との噛み合い部で押し出された潤滑油が第2案内通路32に送り出され、この第2案内通路32は、この潤滑油を合流部34に送り出すことができる。そのため、この合流部34に設けられた開閉部材35は、第2案内通路32からのみ潤滑油の圧力を受け、第1案内通路31の閉止位置に移動して維持される。
【0041】
即ち、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が所定圧力未満であるとき、開閉部材35は、合流部34における第1案内通路31の閉止位置に移動し、合流部34における第1案内通路31の下流部を閉止する一方、第2案内通路32の下流部を開放する。すると、第2案内通路32から合流部34に送られた潤滑油は、吐出口34bからMG2リダクションギア16に供給される。また、開閉部材35が第1案内通路31の下流部を閉止していることから、第2案内通路32から合流部34に送られた潤滑油が第1案内通路31に流れ込むことはない。
【0042】
このように実施形態1の潤滑油供給装置にあっては、ケース12内にカウンタドライブギア13、カウンタドリブンギア14、ドライブピニオンギア15、MG2リダクションギア16、デフリングギア17を順次噛み合わせて収容すると共に、オイル貯留部18と通路部材19とを収容し、通路部材19により、デフリングギア17により掻き上げた潤滑油を導く第1案内通路31と、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17の噛み合い部から押し出され潤滑油を導く第2案内通路32と、各案内通路31,32の下流部が合流すると共に鉛直方向における上方に潤滑油を導く合流部34とを設け、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が予め設定された所定圧力未満であるときに合流部34における第1案内通路31の下流部を閉止可能な開閉部材35を設けている。
【0043】
従って、デフリングギア17が低速で回転するとき、潤滑油は高圧とならず、第1案内通路31は上方の合流部34に潤滑油を送ることができない。一方、第2案内通路32は、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17の噛み合い部から押し出され潤滑油を合流部34に送ることができる。すると、合流部34の開閉部材35は、第2案内通路32から供給される潤滑油の圧力を受け、第1案内通路31を閉止し、合流部34の潤滑油は、MG2リダクションギア16に供給される。その結果、第1案内通路31の潤滑油の圧力が低くなっても、開閉部材35が第1案内通路31を閉止するため、潤滑油を第2案内通路32から合流部34を通してMG2リダクションギア16に供給することができると共に、第2案内通路32から第1案内通路31への潤滑油の流れ込みを防止することができ、潤滑油の供給不足を抑制して潤滑性能を向上することができる。
【0044】
また、実施形態1の潤滑油供給装置では、開閉部材35は、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が所定圧力以上のときに、合流部34における第1案内通路31の下流部及び第2案内通路32の下流部を開放し、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が所定圧力未満であるときに、合流部34における第1案内通路31の下流部を閉止する一方、第2案内通路32の下流部を開放する。従って、デフリングギア17の回転数、つまり、第1案内通路31潤滑油の圧力に拘わらず、潤滑油を合流部34からMG2リダクションギア16に供給することができ、また、第2案内通路32から第1案内通路31への潤滑油の流れ込みを防止することができる。
【0045】
また、実施形態1の潤滑油供給装置では、開閉部材35を合流部34に回動自在に支持し、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が所定圧力以上のときに、合流部34における中立位置に移動し、第1案内通路31を流れる潤滑油の圧力が所定圧力未満であるときに、合流部34における第1案内通路31の閉止位置に移動する。従って、各案内通路31,32を流れる潤滑油の圧力により開閉部材35を自動的に適正位置に移動することができ、構造の簡素化、低コスト化を可能とすることができる。
【0046】
また、実施形態1の潤滑油供給装置では、デフリングギア17により掻き上げた潤滑油の一部をドライブピニオンギア15とデフリングギア17の噛み合い部に導く第3案内通路33を設け、デフリングギア17により掻き上げた潤滑油を第1案内通路31から合流部34を通してMG2リダクションギア16に導くと共に、第3案内通路33からドライブピニオンギア15とデフリングギア17の噛み合い部に導き、第2案内通路32から合流部34を通して上方のMG2リダクションギア16に導くようにしている。従って、デフリングギア17の遠心力を利用した潤滑油の掻き上げ供給方式と、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17の噛み合い部を利用した潤滑油の押し出し供給方式との共用化を可能とし、潤滑性能を向上することができる。
【0047】
〔実施形態2〕
図5は、本発明の実施形態2に係る潤滑油供給装置における合流部を表す概略図である。なお、本実施形態の潤滑油供給装置の基本的な構成は、上述した実施形態1とほぼ同様の構成であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
実施形態2の潤滑油供給装置は、図1及び図2に示すように、例えば、ハイブリッド車両の動力伝達装置11に適用されたものであり、この動力伝達装置11は、ケース12内に、カウンタドライブギア13、カウンタドリブンギア14、ドライブピニオンギア15、MG2リダクションギア16、デフリングギア17、オイル貯留部18、通路部材19が収容されて構成されている。
【0049】
この通路部材19は、デフリングギア17によりオイル貯留部18から掻き上げられた潤滑油をMG2リダクションギア16に導く第1案内通路31と、デフリングギア17によりオイル貯留部18から掻き上げられた潤滑油をドライブピニオンギア15とデフリングギア17の噛み合い部に導く第3案内通路33と、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17の噛み合い部から押し出された潤滑油をMG2リダクションギア16に導く第2案内通路32とを形成している。また、通路部材19は、第1案内通路31の下流部と第2案内通路32の下流部とが合流すると共に鉛直方向における上方に潤滑油を導く合流部34を形成している。
【0050】
そして、図5に詳細に示すように、第2案内通路32は、流入部61側の通路幅(通路面積)W1が広く、流出部62側の通路幅(通路面積)W2(W1>W2)が狭くなっており、この第2案内通路32を流れる潤滑油は、油圧が上昇すると共に流速が高くなる。
【0051】
従って、デフリングギア17が回転すると、オイル貯留部18の潤滑油は、デフリングギア17に送られて流入口41cから掻き上げ通路41に流入する。デフリングギア17により掻き上げ通路41に継続的に潤滑油が送り込まれることで、掻き上げ通路41の油圧が上昇する。掻き上げ通路41の油圧が上昇すると、この掻き上げ通路41内の潤滑油は、第1案内通路31及び第3案内通路33へ供給される。そして、第1案内通路31に供給された潤滑油は、合流部34に送られる。一方、第2案内通路32に供給された潤滑油は、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17との噛み合い部に送られ、この噛み合い部から押し出されて押し出し通路42に送り出され、第2案内通路32へ供給される。そして、第2案内通路32に供給された潤滑油は、合流部34に送られる。第1、第2案内通路31,32から合流部34に送られた潤滑油は、吐出口34bからMG2リダクションギア16に供給される。
【0052】
その後、第1、第2案内通路31,32から合流部34に送られた潤滑油は、吐出口34bからMG2リダクションギア16に供給され、ガイド部34cに一次貯留される。そして、MG2リダクションギア16が回転することで、この潤滑油を掻き上げてオイル受け部25に供給し、オイル受け部25に貯留された潤滑油は、各オイル供給孔27を通して動力伝達装置11の潤滑油供給部に供給される。
【0053】
ところで、車両が低速で走行していると、デフリングギア17は、低速で回転することとなり、オイル貯留部18の潤滑油は、この回転するデフリングギア17により掻き上げ通路41に継続的に潤滑油が送り込まれることで油圧が上昇し、第1案内通路31及び第3案内通路33へ供給される。そして、この潤滑油は、第3案内通路33からドライブピニオンギア15とデフリングギア17との噛み合い部に送られ、この噛み合い部から押し出され、押し出し通路42から第2案内通路32へ供給される。
【0054】
このとき、車両が低速であることから、デフリングギア17も低速回転となり、オイル貯留部18の潤滑油は、低圧状態で第1案内通路31及び第3案内通路33へ供給される。すると、第1案内通路31は、鉛直方向における上方側に延在していることから、低圧の潤滑油を合流部34に送り出すことができず、潤滑油の油面が第1案内通路31に位置することとなる。一方、第3案内通路33は、水平方向に延在していることから、低圧の潤滑油をドライブピニオンギア15とデフリングギア17との噛み合い部に送り出すことができ、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17との噛み合い部で押し出された潤滑油が第2案内通路32に送り出され、この第2案内通路32は、この潤滑油を合流部34に送り出すことができる。
【0055】
即ち、第2案内通路32は、流入部61側の通路幅(通路面積)W1が広く、流出部62側の通路幅(通路面積)W2(W1>W2)が狭くなっており、この第2案内通路32に供給された潤滑油は、油圧が上昇すると共に流速が高くなる。そのため、第2案内通路32で油圧が上昇すると共に流速が高くなった潤滑油は、合流部34を通して吐出口34bからMG2リダクションギア16に供給される。また、潤滑油は高速で合流部34を通過することから、第2案内通路32から合流部34に送られた潤滑油が第1案内通路31に流れ込むことはない。
【0056】
このように実施形態2の潤滑油供給装置にあっては、ケース12内にカウンタドライブギア13、カウンタドリブンギア14、ドライブピニオンギア15、MG2リダクションギア16、デフリングギア17を順次噛み合わせて収容すると共に、オイル貯留部18と通路部材19とを収容し、通路部材19により、デフリングギア17により掻き上げた潤滑油を導く第1案内通路31と、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17の噛み合い部から押し出され潤滑油を導く第2案内通路32と、各案内通路31,32の下流部が合流すると共に鉛直方向における上方に潤滑油を導く合流部34とを設け、第2案内通路32の流入部61側の通路幅(通路面積)W1に対して、流出部62側の通路幅(通路面積)W2を狭く形成している。
【0057】
従って、デフリングギア17が低速で回転するとき、潤滑油は高圧とならず、第1案内通路31は上方の合流部34に潤滑油を送ることができない。一方、第2案内通路32は、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17の噛み合い部から押し出され潤滑油を高速で合流部34に送ることができ、合流部34の潤滑油がMG2リダクションギア16に供給される。その結果、第1案内通路31の潤滑油の圧力が低くなっても、潤滑油は第2案内通路32で高速となるため、潤滑油を第2案内通路32から合流部34を通してMG2リダクションギア16に供給することができると共に、第2案内通路32から第1案内通路31への潤滑油の流れ込みを防止することができ、潤滑油の供給不足を抑制して潤滑性能を向上することができる。
【0058】
なお、上述した各実施形態では、本発明の第1潤滑油供給手段を、デフリングギア17の遠心力を利用した潤滑油の掻き上げ供給方式とし、本発明の第2潤滑油供給手段を、ドライブピニオンギア15とデフリングギア17の噛み合い部を利用した潤滑油の押し出し供給方式としたが、この方式に限るものではない。例えば、本発明の第1潤滑油供給手段を押し出し供給方式とし、本発明の第2潤滑油供給手段を掻き上げ供給方式としてたりしてもよく、また、両者を掻き上げ供給方式としたり、押し出し供給方式としてもよい。
【0059】
また、上述した各実施形態では、本発明の潤滑油供給装置を、ハイブリッド車両の動力伝達装置に適用して説明したが、これに限定されるものではない。本発明の潤滑油供給装置を、例えば、自動変速機や、手動変速機などの動力伝達装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
11 動力伝達装置
12 ケース
13 カウンタドライブギア
14 カウンタドリブンギア
15 ドライブピニオンギア(第2潤滑油供給手段)
16 MG2リダクションギア
17 デフリングギア(第1潤滑油供給手段、第2潤滑油供給手段)
18 オイル貯留部
19 通路部材
25 オイル受け部
31 第1案内通路
32 第2案内通路
33 第3案内通路
34 合流部
35 開閉部材
41 掻き上げ通路
42 押し出し通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油を供給する第1潤滑油供給手段と、
前記第1潤滑油供給手段により供給される潤滑油を導く第1案内通路と、
潤滑油を供給する第2潤滑油供給手段と、
前記第2潤滑油供給手段により供給されて前記第1案内通路により導かれる潤滑油の圧力よりも高い圧力の潤滑油を導く第2案内通路と、
前記第1案内通路の下流部と前記第2案内通路の下流部とが合流すると共に鉛直方向における上方に潤滑油を導く合流部と、
前記第1案内通路を流れる潤滑油の圧力が予め設定された所定圧力未満であるときに前記合流部における前記第1案内通路の下流部を閉止可能な開閉部材と、
を備えることを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項2】
前記開閉部材は、前記第1案内通路を流れる潤滑油の圧力が所定圧力以上のときに前記合流部における第1案内通路の下流部及び第2案内通路の下流部を開放し、前記第1案内通路を流れる潤滑油の圧力が所定圧力未満であるときに前記合流部における第1案内通路の下流部を閉止する一方、前記第2案内通路の下流部を開放することを特徴とする請求項1に記載の潤滑油供給装置。
【請求項3】
前記開閉部材は、前記合流部に回動自在に支持され、前記第1案内通路を流れる潤滑油の圧力が所定圧力以上のときに前記合流部における中立位置に移動し、前記第1案内通路を流れる潤滑油の圧力が所定圧力未満であるときに前記合流部における第1案内通路の閉止位置に移動することを特徴とする請求項2に記載の潤滑油供給装置。
【請求項4】
前記第1潤滑油供給手段により供給される潤滑油を前記第2潤滑油供給手段に導く第3案内通路が設けられ、前記第1潤滑油供給手段は、貯留部に貯留された潤滑油を掻き上げ、前記第1案内通路が前記合流部を通して上方の潤滑油供給部に導くと共に、前記第3案内通路が前記第2潤滑油供給手段に導き、前記第2潤滑油供給手段は、前記第3案内通路から供給された潤滑油を押し出し、前記第2案内通路が前記合流部を通して上方の前記潤滑油供給部に導くことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の潤滑油供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−237335(P2012−237335A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105275(P2011−105275)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】