説明

潤滑油噴射部材及びエンジン

【課題】潤滑油を予め設定された所定方向に噴射することが可能な潤滑油噴射部材及びエンジンを提供する。
【解決手段】クランクケース上側半体12の潤滑油路17からピストン4のピストンピン16側に潤滑油を噴射する場合に、内部に潤滑油貯留部23が形成された基部20と、潤滑油貯留部23内の潤滑油を気筒の径方向内側に供給するノズル部21とが一体に形成され、ノズル部21に潤滑油をピストン4のピストンピン16側に噴射する噴射穴22が設けられているため、基部20を気筒1のクランクシャフト側でクランクケース上側半体12に取付けるだけで予め設定された所定方向に潤滑油を噴射することができる。また、基部20の長手方向両端部にノズル部21を設けたことにより、ピストン4のピストンピン16側の複数箇所に潤滑油を噴射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油噴射部材及びエンジンに関し、特にピストンのピストンピン側に潤滑油を噴射するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
このような潤滑油噴射部材としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この潤滑油噴射部材は、気筒のクランクシャフト側でクランクケースに取付けて使用されるものであり、クランクケースの潤滑油路内の潤滑油をピストンのピストンピン側に噴射するものである。この潤滑油噴射部材は、クランクケースに取付けられる比較的小径な円筒状のボデーと、このボデーに接続されたパイプ状のノズルとを備え、ボデー内に収容されたボールはスプリングによってクランクケース側に付勢されており、このボールがクランクケースの潤滑油路内の潤滑油の油圧によってスプリング側に押されると潤滑油がボデーからノズルに供給されるように構成されている。潤滑油の噴射方向はノズルを湾曲させるなどの加工によって設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−163936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載される潤滑油噴射部材は、ボデーとノズルを接続する際、両者の位置決めが不安定であり、ボデーに対してノズルを所定の向きに取付けできない場合には潤滑油を所定の方向に噴射できないという問題がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、潤滑油を予め設定された所定方向に噴射することが可能な潤滑油噴射部材及びエンジンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、発明の実施態様は、クランクケースの潤滑油路から供給される潤滑油をピストンのピストンピン側に噴射する潤滑油噴射部材において、気筒のクランクシャフト側でクランクケースに取付けられ且つ内部に潤滑油貯留部が形成された基部と、前記基部と一体に形成され且つ前記潤滑油貯留部内の潤滑油を気筒の径方向内側に供給するノズル部と、前記ノズル部に設けられ当該ノズル部によって気筒の径方向内側に供給された潤滑油をピストンのピストンピン側に噴射する噴射穴とを備えたことを特徴とする潤滑油噴射部材である。
【0006】
ここでは、シリンダ(シリンダケース)に形成され且つ内部で混合気の吸気・圧縮・爆発・排気が行われる1つの円穴を気筒とする。また、クランクケースは、シリンダ(シリンダケース)が一体に形成されているもの(一般にシリンダブロックなどと呼ばれる)も含む。
また、別の実施態様は、前記潤滑油貯留部は前記基部に形成された凹部からなり、当該凹部は前記基部のクランクケース取付側面に開口していることを特徴とするものである。
【0007】
また、別の実施態様は、前記基部のクランクケース取付側面の前記凹部周縁にシール部材を差し込むシール溝を一連に形成したことを特徴とするものである。
また、別の実施態様は、前記ノズル部の気筒径方向内側先端部から前記潤滑油貯留部まで穴を形成し、その穴の気筒径方向内側先端部を閉塞してノズル部内にノズル油路を形成したことを特徴とするものである。
【0008】
また、別の実施態様は、前記基部及び潤滑油貯留部を気筒周方向に長手とし、前記基部の長手方向両端部の夫々にノズル部及び噴射穴を設けたことを特徴とするものである。
また、別の実施態様は、前記基部の長手方向両端部に設けられたノズル部のうち、何れか一方を他方より長くしたことを特徴とするものである。
また、別の実施態様は、クランクケースのうち、気筒のクランクシャフト側に潤滑油噴射部材取付面を形成し、前記潤滑油噴射部材を前記潤滑油噴射部材取付面に取付けたことを特徴とするエンジンである。
【発明の効果】
【0009】
而して、発明の実施態様によれば、クランクケースの潤滑油路から供給される潤滑油をピストンのピストンピン側に噴射する場合に、内部に潤滑油貯留部が形成された基部と、潤滑油貯留部内の潤滑油を気筒の径方向内側に供給するノズル部とが一体に形成され、ノズル部には潤滑油をピストンのピストンピン側に噴射する噴射穴が設けられているため、基部を気筒のクランクシャフト側でクランクケースに取付けるだけで予め設定された所定方向に潤滑油を噴射することができる。
【0010】
また、基部に凹部を形成して潤滑油貯留部とし、その凹部が基部のクランクケース取付側面に開口しているため、基部をクランクケースに取付けるだけでクランクケースの潤滑油路から潤滑油貯留部に潤滑油を流入させることができる。
また、基部のクランクケース取付側面の凹部周縁にシール部材を差し込むシール溝を一連に形成したことにより、シール溝内にシール部材を差し込み、基部をクランクケースに取付ければ、クランクケースの潤滑油路から潤滑油貯留部に流入する潤滑油の漏れを防止することができる。
【0011】
また、ノズル部の気筒径方向内側先端部から潤滑油貯留部まで穴を形成し、その穴の気筒径方向内側先端部を閉塞してノズル部内にノズル油路を形成したことにより、ノズル油路を容易に形成することができる。
また、基部及び潤滑油貯留部を気筒周方向に長手とし、基部の長手方向両端部の夫々にノズル部及び噴射穴を設けたことにより、ピストンのピストンピン側の複数箇所に潤滑油を噴射することができ、特にピストンのピストンピン側のクランクシャフト軸線方向両端部に潤滑油を噴射することができる。
【0012】
また、基部の長手方向両端部に設けられたノズル部のうち、何れか一方を他方より長くしたことにより、1つの気筒に対して2つの同じ形状の潤滑油噴射部材を逆向きにクランクケースに取付けることで、ピストンのピストンピン側に対して気筒の周方向全周に潤滑油を噴射することができる。
また、クランクケースのうち、気筒のクランクシャフト側に潤滑油噴射部材取付面を形成し、潤滑油噴射部材を潤滑油噴射部材取付面に取付けたことにより、潤滑油噴射部材の取付精度が向上し、潤滑油を予め設定された所定方向に正確に噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の潤滑油噴射部材及びエンジンの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のエンジンの潤滑油噴射部材部分の詳細図である。
【図3】図1のクランクケースに形成された潤滑油噴射部材取付部の説明図である。
【図4】図2の潤滑油噴射部材の斜視図である。
【図5】図4の潤滑油噴射部材の平面図である。
【図6】図4の潤滑油噴射部材の縦断面図である。
【図7】図2のエンジンの潤滑油噴射部材部分の底面図である。
【図8】本発明の潤滑油噴射部材及びエンジンの第2実施形態を示す縦断面図である。
【図9】図8のエンジンの潤滑油噴射部材部分の詳細図である。
【図10】図9の潤滑油噴射部材の斜視図である。
【図11】図10の潤滑油噴射部材の平面図である。
【図12】図1のエンジンの潤滑油噴射部材部分の底面図である。
【図13】図10の潤滑油噴射部材の作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の潤滑油噴射部材及びエンジンの実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の潤滑油噴射部材及びエンジンの第1実施形態を示す縦断面図を示す。本実施形態のエンジンは、気筒1を4つ備えた4気筒直列エンジンであり、例えば自動二輪車に搭載される。図中の符号2は気筒1に混合気又は空気を供給する吸気ポート、符号3は気筒1内の排気ガスを排気する排気ポート、符号4は各気筒1内に配設されたピストン、符号5はピストン4にピストンピン16で連結されたコネクティングロッド(コンロッド)、符号6はコネクティングロッド5の大端穴にクランクピンで連結されたクランクシャフト、符号7はクランクシャフト6に取付けられたクラッチ用のプライマリドライブギヤ、符号8はプライマリドライブギヤ7と噛み合うプライマリドリブンギヤ、符号9はプライマリドリブンギヤ8に取付けられたクラッチ、符号10はクラッチ9に取付けられ且つ変速機に駆動力を入力するカウンタシャフトである。
【0015】
また、符号11は気筒1が形成されたシリンダ(シリンダケース)、符号12はシリンダ11の下方に取付けられてクランクシャフト6を収容するクランクケース上側半体、符号13はクランクケース上側半体12の下方に取付けられて同じくクランクシャフト6を収容するクランクケース下側半体、符号14はシリンダ11の上方に取付けられて図示しない吸排気バルブやカムシャフトを収容するシリンダヘッド、符号15はシリンダヘッド14の上方に取付けられたシリンダヘッドカバーである。
【0016】
図2は、図1の気筒1の詳細図である。本実施形態では、シリンダ11の下部はクランクケース上側半体12に差し込まれている。このシリンダ11が差し込まれている部分の外側のクランクケース上側半体12には、気筒1(クランクシャフト6)を挟んだ両側に潤滑油路17が形成されている。この潤滑油路17はクランクケース上側半体12の内面にも開口している。図3には、この潤滑油路17がクランクケース上側半体12の内面に開口している部分を示す(シリンダ11は差し込まれていないクランクケース上側半体12の単体図)。本実施形態では、潤滑油路17が開口しているクランクケース上側半体12の内面の一部を平面に機械加工して潤滑油噴射部材取付面18を形成している。この潤滑油噴射部材取付面18は気筒1の周方向に長手で、その長手方向両端部にはネジ穴29が形成されている。
【0017】
そして、各気筒1の潤滑油噴射部材取付面18には潤滑油噴射部材19が取付けられている。図4には、本実施形態の潤滑油噴射部材19の斜視図を、図5には、本実施形態の潤滑油噴射部材19の平面図を、夫々示す。この潤滑油噴射部材19は、例えばアルミニウムを鋳造して形成されている。この潤滑油噴射部材19は、前記潤滑油噴射部材取付面18に取付けられるように、気筒1の周方向に長手な基部20と、基部20と一体に形成されて気筒1の径方向内側に突出するノズル部21と、ノズル部21に設けられた噴射穴22とを備えて構成される。
【0018】
例えば、図4に示す基部20の上面が潤滑油噴射部材取付面18に取付けられるクランクケース側面に相当する。この基部20のクランクケース側面には、当該クランクケース側面に開口する凹部が形成され、その凹部が潤滑油貯留部23を構成する。この潤滑油貯留部23は、基部20の形状に合わせて、気筒1の周方向に長手に形成されている。また、潤滑油貯留部23を構成する凹部の周縁には、例えばゴムリングなどで構成されるシール部材を収納するシール溝24が一連に形成されている。また、基部20には、ボルトなどの固定具で基部20を潤滑油噴射部材取付面18、即ちクランクケース上側半体12に取付けるための取付穴25が設けられている。
【0019】
前記ノズル部21では、例えば図6に示すように、当該ノズル部21の気筒径方向内側先端部から潤滑油貯留部23までドリル穴を形成し、そのドリル穴の気筒径方向内側先端部にプラグ(盲栓)27を埋め込んで当該ドリル穴の気筒径方向内側先端部を閉塞する。これにより、ノズル部21内にノズル油路26が形成される。ここで、潤滑油貯留部23は、縦断面図における対角線長さLが、ノズル油路26の内径寸法Sより長くなる程度に大きく形成される。また、噴射穴22も、ドリルなどの機械加工によって形成する。なお、図6の中の符号28は、シール溝24に収納されたシール部材である。
【0020】
このように構成された本実施形態の潤滑油噴射装置19では、図2、図7に矢印で示すように潤滑油をピストン4のピストンピン16側に噴射することができる。このとき、クランクケース上側半体12に取付けられる潤滑油噴射装置19の基部20とノズル部21が一体であり、ノズル部21に設けられる噴射穴22も機械加工によって正確に形成されているため、潤滑油噴射装置19をクランクケース上側半体12の潤滑油噴射装置取付面18に取付けるだけで、潤滑油を予め設定された所定方向に正確に噴射することができる。
【0021】
また、基部20に凹部を形成して潤滑油貯留部23とし、その凹部が基部20のクランクケース取付側面に開口しているため、基部20をクランクケース上側半体12に取付けるだけでクランクケース上側半体12の潤滑油路17から潤滑油貯留部23に潤滑油を流入させることができる。
また、ノズル油路26をドリル加工によって形成する際、ドリルの先端部分(即ち潤滑油貯留部23付近)で加工誤差が生じ、ノズル油路26が潤滑油貯留部23に到達しないという製造上の問題が生じるが、上記の如く、潤滑油貯留部23の対角線長さLが、ノズル油路26の内径寸法Sより長くなる程度に潤滑油貯留部23が形成されるため、加工誤差を気にすることなくノズル油路26を形成することができる。
【0022】
また、基部20のクランクケース取付側面の凹部周縁にシール部材28を差し込むシール溝24を一連に形成したことにより、シール溝24内にシール部材28を差し込み、基部20をクランクケース上側半体12に取付ければ、クランクケース上側半体12の潤滑油路17から潤滑油貯留部23に流入する潤滑油の漏れを防止することができる。
また、ノズル部21の気筒径方向内側先端部から潤滑油貯留部23までドリル穴を形成し、そのドリル穴の気筒径方向内側先端部をプラグ27で閉塞してノズル部21内にノズル油路26を形成したことにより、ノズル油路26を容易に形成することができる。
また、クランクケース上側半体12のうち、気筒1のクランクシャフト6側に潤滑油噴射部材取付面18を形成し、潤滑油噴射部材19を潤滑油噴射部材取付面18に取付けたことにより、潤滑油噴射部材19の取付精度が向上し、潤滑油を予め設定された所定方向に正確に噴射することができる。
【0023】
図8、図9は、本発明の潤滑油噴射部材及びエンジンの第2実施形態を示すものであり、前記図1、図2に示す第1実施形態に類似している。そこで、同等の構成部材には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、前記クランクケース上側半体12の潤滑油噴射部材取付面18に取付けられている潤滑油噴射部材19の構造が異なる。
【0024】
図10には、本実施形態の潤滑油噴射部材19の斜視図を、図11には、本実施形態の潤滑油噴射部材19の平面図を、夫々示す。この潤滑油噴射部材19は、例えばアルミニウムを鋳造して形成されている。この潤滑油噴射部材19も、前記第1実施形態と同様に、前記潤滑油噴射部材取付面18に取付けられるように、気筒1の周方向に長手な基部20と、基部20と一体に形成されて気筒1の径方向内側に突出するノズル部21と、ノズル部21に設けられた噴射穴22とを備えて構成されるが、本実施形態では、1つの基部20から3箇所ノズル部21が形成されている。
【0025】
例えば、図11では、気筒1の周方向に長手な基部20の長手方向中央部から、前記第1実施形態と同様にノズル部21が突出して設けられ、当該基部20の長手方向両端部からもノズル部21が互いに斜め外向きになるように突出して設けられている。この基部20の長手方向両端部に突出して設けられているノズル部21のうち、図11の左方のノズル部21は右方のノズル部21より長い。そして、図11の右方のノズル部21は、その気筒径方向内側端部にのみ噴射穴22が設けられているのに対し、図11の左方のノズル部21は、ノズル部21の長手方向中間部と気筒径方向内側端部の2カ所に噴射穴22が設けられている。なお、夫々のノズル部21内には、前記第1実施形態と同様に、気筒径方向内側端部から潤滑油貯留部23までドリル穴を形成し、その気筒径方向内側端部をプラグ27で閉塞してノズル油路26が形成されている。従って、全てのノズル部21の計4つの噴射穴22から潤滑油貯留部23内の潤滑油が供給される。
【0026】
この潤滑油噴射部材19をクランクケース上側半体12に取付ける場合には、例えば図12に示すように、1つの気筒1あたり、2つの同じ形状の潤滑油噴射部材19を逆向きに向かい合わせに取付ける。そのとき、基部20の長手方向両端部から突出されたノズル部21は、2つの潤滑油噴射部材19同士の間で、長い方のノズル部21と短い方のノズル部21が向かい合わせになる。短い方のノズル部21は気筒径方向内側先端部のみに噴射穴22が設けられているが、長い方のノズル部21は長手方向中間部と気筒径方向内側先端部の2カ所に噴射穴22が設けられている。これらの噴射穴22と、基部20の長手方向中央部のノズル部21の噴射穴22と合わせて、2つの潤滑油噴射部材19で気筒1の周方向に計8個の噴射穴22が設けられていることになる。
【0027】
図13は、1つの気筒1あたりの潤滑油噴射部材19とピストン4の関係を示すものであり、図13aは正面図、図13bは底面図である。本実施形態では、1つの気筒1に対し、2つの潤滑油噴射部材19で計8個の噴射穴22を有するため、ピストン4のピストンピン16側に対し、気筒1の周方向全周にまんべんなく潤滑油を噴射することができる。また、特に、基部20の長手方向両端部から突設されたノズル部21のうち、長い方のノズル部21の気筒径方向内側先端部の噴射穴22からは、潤滑油が及びにくいピストン4のピストンピン16側のクランクシャフト軸線方向両端部に潤滑油を噴射することができる。
【0028】
このように、本実施形態の潤滑油噴射部材及びエンジンでは、前記第1実施形態の効果に加えて、基部20及び潤滑油貯留部23を気筒周方向に長手とし、基部20の長手方向両端部の夫々にノズル部21及び噴射穴22を設けたことにより、ピストン4のピストンピン16側の複数箇所に潤滑油を噴射することができ、特にピストン4のピストンピン16側のクランクシャフト軸線方向両端部に潤滑油を噴射することができる。
【0029】
また、基部20の長手方向両端部に設けられたノズル部21のうち、何れか一方を他方より長くしたことにより、1つの気筒1に対して2つの同じ形状の潤滑油噴射部材19を逆向きにクランクケース上側半体12に取付けることで、ピストン4のピストンピン16側に対して気筒1の周方向全周に潤滑油を噴射することができる。
なお、前記第1実施形態ではノズル部21が1つ、第2実施形態ではノズル部21が3つ形成されたものについてのみ詳述したが、ノズル部の数はこれに限定されるものではなく、2つでも、4つ以上であってもよい。
【0030】
また、前記各実施形態では、シリンダ(シリンダケース)11とクランクケース上側半体12が別体の場合について詳述したが、クランクケース上側半体とシリンダが一体に形成されている場合も同様に適用可能である。
また、前記各実施形態では、4気筒エンジン及びそれに用いられる潤滑油噴射部材についてのみ詳述したが、本発明の潤滑油噴射部材及びエンジンは、他の多気筒エンジンや単気筒エンジンにも同様に適用可能である。また、多気筒エンジンの場合のエンジンの形式も、V型エンジンなど種々のエンジン形式に同様に適用可能である。
また、エンジンの搭載車両も、自動二輪車に限らず、四輪乗用車や貨物車両など、種々の車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1は気筒
2は吸気ポート
3は排気ポート
4はピストン
5はコネクティングロッド
6はクランクシャフト
7はプライマリドライブギヤ
8はプライマリドリブンギヤ
9はクラッチ
10はカウンタシャフト
11はシリンダ
12はクランクケース上部半体
13はクランクケース下部半体
14はシリンダヘッド
15はシリンダヘッドカバー
16はピストンピン
17は潤滑油路
18は潤滑油噴射部材取付面
19は潤滑油噴射部材
20は基部
21はノズル部
22は噴射穴
23は潤滑油貯留部
24はシール溝
25は取付穴
26はノズル油路
27はプラグ(盲栓)
28はシール部材
29はネジ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケースの潤滑油路から供給される潤滑油をピストンのピストンピン側に噴射する潤滑油噴射部材において、気筒のクランクシャフト側でクランクケースに取付けられ且つ内部に潤滑油貯留部が形成された基部と、前記基部と一体に形成され且つ前記潤滑油貯留部内の潤滑油を気筒の径方向内側に供給するノズル部と、前記ノズル部に設けられ当該ノズル部によって気筒の径方向内側に供給された潤滑油をピストンのピストンピン側に噴射する噴射穴とを備えたことを特徴とする潤滑油噴射部材。
【請求項2】
前記潤滑油貯留部は前記基部に形成された凹部からなり、当該凹部は前記基部のクランクケース取付側面に開口していることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油噴射部材。
【請求項3】
前記基部のクランクケース取付側面の前記凹部周縁にシール部材を差し込むシール溝を一連に形成したことを特徴とする請求項2に記載の潤滑油噴射部材。
【請求項4】
前記ノズル部の気筒径方向内側先端部から前記潤滑油貯留部まで穴を形成し、その穴の気筒径方向内側先端部を閉塞してノズル部内にノズル油路を形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の潤滑油噴射部材。
【請求項5】
前記基部及び潤滑油貯留部を気筒周方向に長手とし、前記基部の長手方向両端部の夫々にノズル部及び噴射穴を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の潤滑油噴射部材。
【請求項6】
前記基部の長手方向両端部に設けられたノズル部のうち、何れか一方を他方より長くしたことを特徴とする請求項5に記載の潤滑油噴射部材。
【請求項7】
クランクケースのうち、気筒のクランクシャフト側に潤滑油噴射部材取付面を形成し、前記請求項1乃至6の何れか一項に記載の潤滑油噴射部材を前記潤滑油噴射部材取付面に取付けたことを特徴とするエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−188995(P2012−188995A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53020(P2011−53020)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】