説明

潤滑油基油を製造するための水素転化方法

【課題】少なくとも90重量%の飽和物含量及び少なくとも105の粘度指数を有する潤滑油基油の製造方法を提供すること。
【解決手段】溶剤抽出域からのラフィネートを、2段階の水素転化域とそれに続く水素化仕上げ域で選択的に水素転化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、飽和物の含量(saturates content)が多く、粘度指数が高く、蒸発量が少ない潤滑油基油を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油基油を溶剤精製により製造することは、良く知られている。従来の方法では、原油は常圧蒸留され常圧残さが製造され、これは更に減圧下に蒸留される。選択された蒸留成分は、その後必要により脱アスファルト及び溶剤抽出されて、パラフィンに富むラフィネートと芳香族に富む抽出物が製造される。このラフィネートは、その後脱ロウされて、脱ロウ油とされ、通常脱ロウ油は、安定性を改良し着色体を除去するため、水素化仕上げされる。
【0003】
溶剤精製は、潤滑油基油として好ましい特性を持つ成分を、原油から選択的に単離する方法である。そのため溶剤精製に使用される原油は、より低い粘度指数(VI)を有する傾向のある芳香族系の存在する高パラフィン系なものに制限され、そのため潤滑油基油には、好ましくない。またある種の芳香族化合物は、好ましからざる毒性を招きかねない。溶剤精製は、約95のVIを持つ潤滑油基油を良い収率で製造することができる。
【0004】
今日では、自動車エンジンの運転条件は、より苛酷になって、より低い蒸発量(低粘度を保ちつつ)で、かつ低流動点である基油を要求している。これらの改良は、更にイソパラフィン系の特性、即ちVIが105又はそれ以上である基油に到達することによってのみ可能である。溶剤精製のみでは、典型的な原油からVIが105の基油を経済的に製造することは出来ない。また、溶剤精製のみでは、典型的に高い飽和物含量の基油を製造することも出来ない。高品質の潤滑油基油を製造するために、他に採るべき2つの手段が開発されている。(1)ワックスの異性化及び(2)水素化分解である。いずれの方法も高額な投資が必要である。ある地域では、原材料である粗ロウが高価である時に、ワックス異性化の経済性は、不利に押しやられる。また典型的には、水素化分解で用いられる低品質の原料では、望ましい粘度と蒸発特性を達成するべく、厳しい条件を採用することとなり、これは望ましくない(毒性の)成分を形成してしまう結果となる。これらの成分は高濃度で形成され、非毒性の原材料を得るために、抽出などの更なる処理工程が必要とされる。
【0005】
非特許文献1には、溶剤精製の抽出装置を水素化処理装置によって置き換える方法が記載されている。
【0006】
特許文献1には、ナロウカットの潤滑油原料を水素化処理して中程度のVI及び高いVI油を製造する方法が記載されている。その水素化処理工程は、単一の水素化処理域からなるものである。特許文献2には、溶剤抽出工程からの抽出物又はラフィネートを水素化仕上げすることが開示されている。水素化仕上げ工程への原料は、ナフテン系蒸留物のような高芳香族源から誘導される。特許文献3は、水素化分解されたブライトストックから誘導された潤滑油ベースストックのバルク酸化安定性及び貯蔵安定性を改良する方法に関する。この方法は、水素化分解されたブライトストックの水素化脱窒素と水素化仕上げを含んでいる。
【特許文献1】米国特許第3、691、067号
【特許文献2】米国特許第3、732、154号
【特許文献3】米国特許第4、627、908号
【非特許文献1】S.BullとA.Marminの論文“厳格な水素処理による潤滑油製造”、第10回石油会議の議事録、第4巻、潤滑の発展(Developmentsin Lubrication)、PD 19(2)、221〜228頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
優れた無毒性、酸化及び熱安定性、燃費特性及び低温始動性を有する高いVI、低い蒸発性の油を重大な収率の減少を被ることなく製造するためには、従来の溶剤精製方法を付加することが望まれる。このプロセスは、水素化分解などの競合する技術よりも、かなり少ない投資費用しか要しない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも90重量%の飽和物含量と、少なくとも105の粘度指数に適合する潤滑油基油を、潤滑油原料の溶剤精製によって得たラフィネートを選択的に水素転化することにより製造する方法に関し、
(a)潤滑油原料を溶剤抽出域に導入して、芳香族に富む抽出物とパラフィンに富むラフィネートに分離し、
(b)その溶剤のラフィネートをストリッピングして、粘度指数が約85〜約105で最終沸点が約650℃を超えない脱ロウ油を含有するラフィネート原料を製造し、
(c)ラフィネート原料を第一の水素転化域に通し、そのラフィネート原料を非酸性触媒の存在下、340℃〜420℃の温度で、水素分圧が1000〜2500psig、空間速度が0.2〜3.0LHSV及び水素と原料との比が500〜5000Scf/Bの条件で処理し、第一の水素転化されたラフィネートを得て、
(d)第一の水素転化域からの水素転化されたラフィネートを第二の水素転化域へ通し、その水素転化されたラフィネートを非酸性触媒の存在下、340℃〜400℃で第一の水素転化域よりも高くない温度で、水素分圧が1000〜2500psig、空間速度が0.2〜3.0LHSV及び水素と原料との比が500〜5000Scf/Bの条件で処理し、第二の水素転化されたラフィネートを得て、
(e)第二の水素転化域からの水素転化されたラフィネートを水素化仕上げ反応域へ通し、その第二の水素転化されたラフィネートを水素化仕上げ触媒の存在下、260℃〜360℃で第一の水素転化域よりも高くない温度で、水素分圧が1000〜2500psig、空間速度が0.2〜5LHSV及び水素と原料との比が500〜5000Scf/Bの条件で低温水素化仕上げ処理し、水素化仕上げされたラフィネートを得て、
(f)その水素化仕上げされたラフィネートを分離域へ通し、沸点約250℃以下の生成物を除去し、
(g)分離域からの水素化仕上げされたラフィネートを、脱ロウ基油製造のために脱ロウ域へ通し、ラフィネート原料よりも少なくとも10以上粘度指数が高く、100℃での粘度が3.5〜6.5cStの範囲内で、同じ粘度におけるラフィネート原料のNOACK蒸発量向上が少なくとも約3重量%以上であり、飽和物含量が少なくとも90重量%で、粘度指数が少なくとも105である脱ロウされた基油を製造する、
以上の工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の基油は、低毒性(IP346又はFDA(c)試験に合格)である。
【0009】
他の態様として、本発明は、潤滑油原料の溶剤精製によって得たラフィネートを選択的に水素転化する方法に関し、
(a)潤滑油原料を溶剤抽出域に導入して,芳香族に富む抽出物とパラフィンに富むラフィネートに分離し、
(b)その溶剤のラフィネートをストリッピングして、粘度指数が約85〜約105で最終沸点が約650℃を越えない脱ロウ油を含有するラフィネート原料を製造し、
(c)そのラフィネート原料を第一の水素転化域に通し、ラフィネート原料を非酸性触媒の存在下、340℃〜420℃の温度で、水素分圧が1000〜2500psig、空間速度が0.2〜3.0LHSV及び水素と原料との比が500〜5000Scf/Bの条件で処理し、第一の水素転化されたラフィネートを得て、
(d)第一の水素転化域からの水素転化されたラフィネートを第二の水素転化域へ通し、その水素転化されたラフィネートを非酸性触媒の存在下、340℃〜400℃で第一の水素転化域よりも高くない温度で、水素分圧が1000〜2500psig、空間速度が0.2〜3.0LHSV及び水素と原料との比が500〜5000Scf/Bの条件で処理し、第二の水素転化されたラフィネートを得て、
(e)第二の水素転化域からの水素転化されたラフィネートを水素化仕上げ反応域へ通し、その第二の水素転化されたラフィネートを水素化仕上げ触媒の存在下、260℃〜360℃で第一の水素転化域よりも高くない温度で、水素分圧が1000〜2500psig、空間速度が0.2〜5LHSV及び水素と原料との比が500〜5000Scf/Bの条件で低温水素化仕上げ処理し、水素化仕上げされたラフィネートを得る、
以上の工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記した如く、(a)〜(g)又は(a)〜(e)の工程を含む、潤滑油基油を製造するための水素転化方法に係わるものであるが、その好ましい実施の態様として、次のものを包含する。
(1)第一の水素転化域、第二水素転化域及び水素化仕上げ反応域の間は、離脱されていないことを特徴とする上記の前者又は後者に記載の方法。
(2)基油は、少なくとも95重量%の飽和物が含有されていることを特徴とする上記の前者に記載の方法。
(3)ラフィネートは、不充分に抽出された(under−extracted)ものであることを特徴とする上記の前者又は後者に記載の方法。
(4)非酸性触媒が、アルミナを担体とするコバルト/モリブデン、ニッケル/モリブデン又はニッケル/タングステンであることを特徴とする上記の前者又は後者に記載の方法。
(5)第一の水素転化域、第二水素転化域又は水素化仕上げ反応域における水素分圧が、1000〜2000psig(7.0〜12.5mPa)であることを特徴とする上記の前者又は後者に記載の方法。
(6)水素化仕上げ域の温度が、290〜350℃であることを特徴とする上記の前者又は後者に記載の方法。
(7)非酸性触媒が、少なくともシリカ、アルミナ又はチタニア金属酸化物の1以上であることを特徴とする上記の前者又は後者に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、良好な収率で、VIと蒸発性が将来の産業エンジン油規格に適合し、酸化安定性、低温始動性、燃費、及び熱安定性の良い基油が製造される。更に、毒性試験は、この基油がFDA(c)試験等によって測定される優れた毒性学的特性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
潤滑油基油を製造するために選択した原油の溶剤精製には、典型的には常圧蒸留、減圧蒸留、抽出、脱ロウ及び水素化仕上げが含まれる。高いイソパラフィン含量を有する基油は、良好な粘度指数(VI)及び適切な低温特性によって特徴付けられることから、溶剤精製法に使用される原油は、典型的にはパラフィン系原油である。潤滑油基油の分類法の一つは、米国石油協会(API)により使用されているものである。APIグループII基油は、飽和物が90重量%又はそれ以上、硫黄含有量が0.03重量%以下、粘度指数(VI)が80を越え120を越えない。APIグループIII基油は、VIが120か、それ以上である以外はグループIIと同じである。
【0013】
一般に、常圧蒸留からの高沸点石油留分は、減圧蒸留装置に送られ、この装置からの留分は、溶剤抽出される。脱アスファルトされる減圧蒸留残さは、他のプロセスに送られる。
【0014】
溶剤抽出法は、抽出相へ選択的に芳香族成分を溶解し、ラフィネート相へより多くのパラフィン成分を追いやる。ナフテンは、抽出相及びラフィネート相の間に分配される。溶剤抽出用の典型的な溶剤には、フェノール、フルフラール及びN−メチルピロリドンが含まれる。抽出物とラフィネート相の分離の度合は、溶剤と油の比、抽出温度及び溶剤で抽出される蒸留物の接触法を制御することにより制御できる。
【0015】
近年、数箇所の製油所では、溶剤抽出が高VI基油の製造手段である水素化分解に置き換えられている。水素化分解法には、減圧蒸留装置からの原料蒸留物や減圧軽油及びコーカー軽油など、他の製油所流出物のような低品質の原料が使用される。水素化分解で使用される触媒は、典型的には弗素等の酸性助触媒を含有するシリカアルミナ又はアルミナのような酸性担体に担持されたNi,Mo,Co及びWの硫化物である。水素化分解触媒には、高酸性のゼオライトも含まれる。水素化分解法には、ヘテロ原子の除去、芳香族環の飽和、芳香族環の脱アルキル化、開環、直鎖及び側鎖の分解、及び操作条件によってはワックスの異性化を含む。これら反応の見地からは、水素化分解が芳香族含量を極めて低い水準に低下させるので、溶剤抽出で生ずる芳香族に富む相の分離は不要な工程である。
【0016】
これとは対照的に、本発明の方法は、溶剤抽出装置からのラフィネートを三段階で水素転化し、抽出装置は水素化分解及びワックス異性化せずワックス成分が通過するのを最少化する条件で操作する。脱ロウ油(DWO)及び価値の低いフーツ油の流れは、ラフィネート原料に添加することができ、このプロセスからの非転化のワックス分子は価値ある副生物として回収される。更には水素化分解と違って、本発明の方法は、離脱即ち気液生成物を分離する工程を介在させない。この三段階法の生成物は、飽和物が90重量%以上、好ましくは95重量%以上である。生成物の品質は、水素化分解生成物と同様で、非常に高額の投資が必要となる水素化分解の高温高圧に依らないで得ることができる。
【0017】
溶剤抽出からのラフィネートは、好ましくは不充分に抽出され、即ち抽出は、ラフィネート収率が最大となり、それでも原料から最も低い品質の分子の大半が除去されるような条件で実施される。ラフィネート収率は、例えば溶剤と油の処理比を低下させること及び/又は抽出温度を下げることで、抽出条件を制御することにより最大化できる。溶剤抽出装置からのラフィネートは、溶剤をストリッピングし、水素転化触媒を有する第一の水素転化装置に送られる。このラフィネート原料は、粘度指数が約85〜約105で、ASTM2887で決定される沸点は、約650℃を越えず、好ましくは600℃以下で、粘度は100℃で3〜15cStである。
【0018】
水素転化触媒は、第VIB金属(Fisher Scientificが発行する周期律表による)及び第VIII卑金属即ち鉄、コバルト、ニッケル及びこれらの混合物を含有する。これらの金属或は金属混合物は、耐火物金属酸化物の担体に酸化物又は硫化物として存在する。
【0019】
金属酸化物担体は、分解を制御するため非酸性であることが重要である。触媒の酸性度の有用な尺度は、KramerとMcVickerが記載した、J.Catalysis,92,355(1985)による2−メチル−2−ペンテンの異性化に基づく。この酸性度の尺度において、2−メチル−2−ペンテンは、固定された温度、典型的には200℃で評価するために触媒ヘ供給される。触媒部位の存在で、2−メチル−2−ペンテンはカルベニウム イオンを形成する。カルベニウム イオンの異性化経路は、触媒の活性化部位の酸性度の指標となる。弱い酸性部位は、4−メチル−2−ペンテンを形成し、強い酸性部位は、2,3−ジメチル−2−ブテンを形成する非常に強い酸性部位とともに、3−メチル−2−ペンテンヘ骨格再配置する。3−メチル−2−ペンテンと4−メチル−2−ペンテンのモル比は、酸性尺度に関連付けられる。この酸性度の尺度は、0.0から4.0の範囲である。非常に弱い酸性部位は、0.0に近い値であるが、非常に強い酸性部位では4.0に接近する。本発明の方法に有用な触媒は、酸性度の値が約0.5以下、好ましくは0.3以下である。金属酸化物担体の酸性度は、助触媒及び又はドーパントの添加、又は金属酸化物担体の性質の制御、例えばシリカーアルミナ担体のシリカ量を制御することにより調整される。助触媒及び又はドーパントの例としては、ハロゲン特に弗素、リン、ホウ素、イットリウム、稀土類酸化物及びマグネシアが含まれる。ハロゲン等の助触媒は一般に金属酸化物担体の酸性度を増加し、弱塩基性のイットリウムやマグネシア等のドーパントは担体の酸性を減少する傾向がある。
【0020】
好適な金属酸化物担体は、シリカ、アルミナ又はチタニアのような弱酸性酸化物を含み、より好ましくはアルミナである。好ましいアルミナは、平均細孔径が50〜200Å、好ましくは75〜150Å、表面積が100〜300m/g、好ましくは150〜250m/g及び細孔容積が0.25〜1.0cm/g、好ましくは0.35〜0.8cm/gの、ガンマ又はイータ等の多孔質アルミナである。この担体は、酸性度が通常0.5以上に上昇するので、弗素等のハロゲンで促進されないほうがよい。
【0021】
好ましい金属触媒は、コバルト/モリブデン(1〜5%Co酸化物、10〜25%Mo酸化物)、ニッケル/モリブデン(1〜5%Ni酸化物、10〜25%Mo酸化物)又はニッケル/タングステン(1〜5%Ni酸化物,10〜30%W酸化物)をアルミナに担持したものである。特に好ましくは、KF−840のようなニッケル/モリブデンである。
【0022】
第一の水素転化装置における水素転化条件は、温度が340〜420℃、好ましくは350〜400℃、水素分圧が1000〜2500psig(7.0〜17.3mPa)、好ましくは1000〜2000psig(7.0〜13.9mPa)、空間速度が0.2〜3.0LHSV、好ましくは0.3〜1.0LHSV及び水素と原料との比が500〜5000Scf/B(89〜890m/m)、好ましくは2000〜4000Scf/B(356〜712m/m)である。
【0023】
第一水素転化装置からの水素転化されたラフィネートは、第二水素転化装置へ供給される。水素転化されたラフィネートは、好ましくは第一及び第二水素転化装置の間に設置された熱交換器を通り、所望であれば第二水素転化装置は、冷却器温度で運転可能とされる。第二水素転化装置の温度は、第一水素転化装置の温度を越えるべきではない。第二水素転化装置における水素転化条件は、温度が340〜400℃、好ましくは350〜385℃、水素分圧が1000〜2500psig(7.0〜17.3mPa)、好ましくは1000〜2000psig(7.0〜13.9mPa)、空間速度が0.2〜3.0LHSV、好ましくは0.3〜1.5LHSV及び水素と原料との比が500〜5000Scf/B(89〜890m/m)、好ましくは2000〜4000Scf/B(356〜712m/m)である。第二水素転化装置の触媒は、第一水素転化装置と同じで良いが、異なる水素転化触媒を用いても良い。
【0024】
第二水素転化装置からのラフィネートは、その後低温水素化仕上げ装置へ供給される。熱交換器は好ましくは、これら装置の間に配置される。水素化仕上げ装置の反応条件は、穏やかであり、温度が260〜360℃、好ましくは290〜350℃、水素分圧が1000〜2500psig(7.0〜17.3mPa)、好ましくは1000〜2000psig(7.0〜13.9mPa)、空間速度が0.2〜5.0LHSV、好ましくは0.7〜3.0LHSV、及び水素と原料との比が500〜5000Scf/B(89〜890m/m)、好ましくは2000〜4000Scf/B(356〜712m/m)である。低温水素化仕上げ装置の触媒は、第一水素転化装置と同じで良い。しかしながら、より酸性の触媒担体、例えばシリカ−アルミナ、ジルコニア等を低温水素仕上げ装置で使用することができる。
【0025】
仕上げられた基油を調製するために、水素化仕上げ装置からの水素転化されたラフィネートは、低沸点生成物を分離するために、例えば減圧ストリッパー(又は分留器)ヘ供給される。その様な生成物には、第一の2反応器で形成される硫化水素やアンモニアが含まれる。所望であれば、第二水素転化装置と水素化仕上げ装置の間にストリッパーを設置しても良いが、本発明の基油を製造するには必須ではない。
【0026】
分離器で分離された水素転化ラフィネートは、その後脱ロウ装置へ供給される。脱ロウは、接触方法か、溶剤を用いる方法で水素化仕上げされたラフィネートを希釈し冷却することでワックス分子を結晶化し分離すれば良い。典型的な溶剤には、プロパンやケトンが含まれる。好ましいケトンには、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びそれらの混合物が含まれる。
【0027】
溶剤/水素転化ラフィネート混合物は、表面剥離チラーを持つ冷凍装置で冷却される。チラーで分離されたワックスは、油からワックスを分離するために回転式ろ過器のような分離装置へ送られる。脱ロウされた油は、潤滑油の基油として好適である。所望により、脱ロウ油は、更に流動点を下げるために接触異性化/脱ロウされる。分離されたワックスは、ワックス被覆剤、蝋燭などとして用いられるか、異性化装置へ送られる。
【0028】
本発明の方法により製造された潤滑油基油は、次のような特性で特徴付けられる。少なくとも105の粘度指数、好ましくは少なくとも107で、飽和物含量が少なくとも90重量%、好ましくは95重量%以上であり、100℃での粘度が3.5〜6.5cStの範囲内で、同じ粘度におけるラフィネート原料のNOACK蒸発量向上(DIN51581により測定)が少なくとも約3重量%以上、好ましくは約5重量%以上であり、流動点が−15℃又はそれ以下、更にIP346又はFDA(c)のフェーズ1で測定されるところの低毒性でもある。IP346は、多環芳香族化合物の測定方法である。これら化合物の多くは、発ガン性物質であるか発ガン性物質と疑われ、特に湾岸地域でそう呼ばれているものである[更に詳細は、Chem.Res.17,332(1984)の説明を参照]。本発明の方法は、これら多環芳香族化合物を発ガン性試験に合格するレベルへ減少する。FDA(c)試験は、21CFR178.3620にあり、300〜359nm範囲の紫外線吸収量に基づく。
【0029】
図1に見られるように、NOACK蒸発量は、与えられた基油のVIに関連する。図1に示される関連性は、軽質基油(約100N)のものである。100N油で22重量%NOACK蒸発量に適合することを目標とすれば、典型的カット巾、例えば60℃のガスクロ蒸留により5〜50%オフの生成物で、VIが約110とすべきである。蒸発量の向上は、カット巾を減少させて、より低いVI生成物とすることで達成される。ゼロ−カット巾による限界では、VIが約100で22%NOACK蒸発量に適合する。しかしながら、この方法では蒸留のみ用いるので、重大な収率損失を被ることになる。
【0030】
水素化分解は、高いVIそれゆえ低いNOACK蒸発量の基油を製造できるが、本発明の方法よりも低選択性(低収率)である。更に水素化分解及びワックス異性化のような方法は、溶剤精製油の溶解特性に対応する分子種の大半を破壊してしまう。後者は、また原料としてワックスを用いるが、一方、本発明の方法では、生成物としてワックスの保存を設計しており、ワックス転化があったとしてもほとんどない。
【0031】
本発明の方法を更に図2により説明する。減圧蒸留装置10への原料8は、通常、常圧蒸留装置(図に示されていない)からの常圧蒸留残さである。12(軽質)、14(中質)及び16(重質)で示される各種留出油留分は、流路18を介して溶剤抽出装置30へ送られる。これらの留出油留分は、約200℃〜約650℃の範囲にある。減圧蒸留装置10の塔底物は、流路22を通ってコーカー、ビスブレーカー又は脱アスファルト抽出装置20ヘ送られ、そこで塔底物は、プロパン、ブタン又はペンタン等の脱アスファルト溶剤と接触する。脱アスファルトされた油は、流路26を通り減圧蒸留装置10からの留出油と合流し、沸点範囲が約650℃以上の、脱アスファルトされた油として提供されるか、好ましくは流路24を通り、更なるプロセスへ送られる。脱アスファルト装置20からの塔底物は、ビスブレーカーヘ送られるか、アスファルト製造に使用される。他の製油所での流れも、流路28を通して抽出装置への原料に添加でき、これらはラフィネート原料として先に記載した原料基準に合致する。
【0032】
抽出装置30では、留出油留分がn−メチルピロリドンで溶剤抽出され、その抽出装置は、好ましくは向流で運転される。抽出度、即ちパラフィン富化ラフィネートと芳香族富化抽出物の分離の度合は、溶剤対油比、抽出温度及び溶剤中の水のパーセントを用い制御される。本発明の方法は、抽出装置を“不充分な抽出(under extraction)”モード、即ちパラフィン富化ラフィネート相の芳香族がより多くなるように運転する。芳香族富化抽出相は、流路32から更なるプロセスへ送られる。ラフィネート相は、流路34から溶剤ストリッピング装置36へ供給される。ストリップされた溶剤は、循環するため流路38へ送られ、ストリップされたラフィネートは、流路40を通って第一水素転化装置42へ供給される。
【0033】
第一水素転化装置42には、ニッケル/モリブデンをアルミナに担持したものでAkzo Nobel社から販売されている、KF−840触媒が充填されている。水素は、装置又は反応器42へ流路44から流入される。水素転化されたラフィネートのガスクロマトグラフ比較は、ほとんど何のワックス異性化が起こっていないことを示している。一方、この段階で起こるVI上昇の正確なメカニズムは、はっきりとは知られてはいないので、何か特別の理論にこだわるつもりはないが、ヘテロ原子が除去され、芳香族環が飽和され、ナフテン環特に多環ナフテンが選択的に減少することが解った。
【0034】
水素転化装置42からの水素転化されたラフィネートは、流路46から熱交換器48ヘ供給され、水素転化されたラフィネート流は所望により冷却される。冷却されたラフィネート流は、流路50から第二水素転化装置52へ供給される。必要であれば、追加の水素が流路54から添加される。この第二水素転化装置は、第一の水素転化装置42より低い温度(生成物の品質を調整することが必要な時)で運転される。何か特別の理論にこだわるつもりはないが、第二の装置52をより低い温度で運転する能力は、飽和成分と他の不飽和成分の間の平衡転化を、飽和濃度が増加する方向に移行させると考えられている。この様にして、第二水素転化装置52の温度と空間速度との組み合わせを適切に制御することにより、飽和物濃度を90重量%以上に保持することができる。
【0035】
装置52からの水素転化されたラフィネートは、流路54から第二の熱交換器56へ供給される。追加の熱を熱交換器56で除去してから、冷却された水素転化ラフィネートが流路58から低温水素化仕上げ装置60へ供給される。水素化仕上げ装置60の温度は、水素転化装置42及び52よりも更に穏やかである。低温水素化仕上げ装置60の温度と空間速度が制御され、毒性を低レベル、即ち標準毒性試験に合格するように充分に低いレベルに減少する。これは、多核芳香族の濃度を非常に低レベルに減少することにより達成される。
【0036】
水素化仕上げされたラフィネートは、その後流路64から分離器68へ供給される。軽質液体生成物と気体が分離されて、流路72から除去される。残った水素化仕上げされたラフィネートは、流路70から脱ロウ装置74へ供給される。流路78から導入される溶剤により冷却されるか、接触脱ロウ又はそれらの組み合わせにより、脱ロウが起こる。接触脱ロウは、水素化分解又は低流動点の潤滑基油を生成する手段である水素異性化を含む。任意の冷却と溶剤脱ロウが、水素転化された潤滑基油からワックス分子を分離し、流動点を下げる。市場ではワックスは価値があるので、水素転化されたラフィネートは、好ましくはメチルイソブチルケトンと接触され、Exxonが開発したDILCHILL脱ロウ法により処理される。この方法は当業界で良く知られている。仕上げ処理された潤滑基油は流路76から、ワックス生成物は流路80から除去される。
【0037】
何か特別の理論にこだわるつもりはないが、飽和物、VI、及び毒性に影響を与える因子は、次のように議論される。“飽和物”という用語は、全ての飽和された環、パラフィン及びイソパラフィンの総和と考えられる。本発明のラフィネート水素転化法では、イソパラフィン、n−パラフィン、ナフテン及び1〜6の環を含む芳香族からなる不充分に抽出された(例えば92VI)軽質及び中質ラフィネートが、非酸性触媒で処理され、主に(a)芳香族環をナフテンに転換し、そして(b)環化合物を転換し、脱アルキル化又はナフテンの開環によって潤滑油沸点範囲のイソパラフィンが残されるように操作される。この触媒は、異性化触媒ではなく、それゆえ原料中のパラフィン成分に強く作用せず、それを除去しない。高融点パラフィンとイソパラフィンが、続く脱ロウ工程で除去される。残さのワックスと違って、脱ロウ油生成物の飽和分は、環のイソパラフィンへの非反転転化(the irreversible conversion)と、芳香族成分からナフテンの反転形成(the reversible formation)の働きをする。
【0038】
基油粘度指数の目標、例えば110VIを達成するために、一定の触媒量と原料速度において、水素転化反応器温度は第一の駆動体となる。温度は、圧力に関係なく、VI上昇とほぼ直線的に相関する転化率(ここでは独断的に370℃以下で転化率を測定した)を決定する。これは図3に、VI上昇(VIHOP)と転化率の関係で示されている。一定の圧力では、生成物の飽和物含量は、転化率、即ち達成されたVI及び転化に必要な温度に依存する。典型的な原料を通油し始めた時は、目標VIの達成に必要な温度はたった350℃であり、脱ロウ油の相当飽和物が通常90重量%を越えるには、水素圧力が1000psig(7.0mPa)又はそれ以上で運転される。しかしながら、時間とともに触媒が劣化するので、同じ転化率(及び同じVI)を達成するために必要な温度は、上昇させねばならない。2年間では、温度は触媒、原料及び操作圧力によって、25〜50℃上昇させる。典型的な不活性化プロフィールを図4に示すが、これは、一定の圧力での通油日数と温度の関係を示している。プロセス速度が約1.0v/v/hr又はそれ以下で、温度が350℃を越える、ほとんどの環境では、生成物中に残された環成分に連合した飽和物は、反応器温度、即ちナフテン数が平衡値に達する温度によってのみ決定される。
【0039】
反応器温度が約350℃から上昇すると、飽和物は、一定のVIの生成物が描いた滑らかな曲線に沿って傾斜する。図5には、一定の転化率で操作された92VI原料から誘導された、112VIの一定の生成物について、3本の典型的な曲線が示されている。飽和物は、単純な平衡考察と一致して、高圧プロセスでより高い。夫々の曲線は、350℃以上に上昇する温度で、飽和物が着実に低下することを示している。水素圧力が600psig(4.24mPa)では、この方法は、VI目標と要求される飽和物(90重量%以上)を同時に適えることができない。600psig(4.24mPa)で、90重量%以上の飽和物を達成するに必要な予測温度は、充分下方で、無理のない供給速度/触媒量であれば、本発明にとってより好ましい触媒を用いて無理なく達成することができる。しかしながら、水素圧力が1000psig及びこれ以上であれば、この触媒は90重量%飽和物と目標VIを同時に達成できる。
【0040】
本発明の重要な観点は、水素の圧力が1000psig(7.0mPa)又はそれ以上で、サワーガスの離脱がなく、典型的な水素化分解スキームで適用される、どっしりした(massive)ニッケルのような極性官能性水素化触媒を使うことのないプロセスで、温度段階戦略が90重量%以上の飽和物を維持するために適用できることである。本発明は、また従来の水素化分解方法の高い温度と圧力を避けている。これは、ストリッピング、再圧縮及び水素化工程という高価な工程を挿入することなく、VI、飽和物及び低毒性を達成するために、3反応器の段階的に落ちる(cascading)温度プロフィールを用いて、機能を分離することにより実現される。APIグループIIとIIIの基油(API発行1509)は、単一段階で、温度制御された方法で製造できる。
【0041】
基油の毒性は、低温水素化仕上げ工程で調整される。与えられた目標VIのために、毒性は温度と圧力を制御することで調整できる。これは、図6に説明されており、より高い圧力が毒性を修正するのに、より高い温度範囲でも許容することが示されている。
【実施例】
【0042】
本発明を、更に次の非限定的な実施例で説明する。
[実施例1]
この実施例は、各反応器A,B及びCの機能を要約するものである。反応器Aを制御するが、反応器AとBがVIに影響する。夫々の反応器は、飽和物に寄与するが、反応器BとCが飽和物の制御に使用される。毒性は、主として反応器Cで制御される。
【0043】
【表1】

【0044】
[実施例2]
この実施例は、本発明による方法で得られる油の生成物の品質を説明するものである。運転の開始(SOR)と運転の最後(EOR)での、反応条件と生成物の品質データを表2と表3に要約した。
【0045】
250Nを原料とした表2のデータから解るように、所望の粘度指数を達成するため、反応器AとBを充分な条件で操作し、それから反応器Cの温度を調整し、毒性を妥協することなく全運転期間で飽和物約90重量%を維持することができる(DMSOスクリーナーの結果に示されたとおり;実施例6を参照)。反応器C(まさに反応器AとBでの運転条件の最後)での、より高い温度及びより低い空間速度の組み合わせは、より高い飽和物96.2重量%が製造された。100N原料では、反応器Cを290℃、2.5v/v/hほど低く操作することで、飽和物が90%より高い運転終了後の生成物を得られよう(表3)。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
[実施例3]
一定VIでの飽和物(脱ロウ油)濃度への温度と圧力の影響は、不充分に抽出された250Nラフィネートを製造する、この実施例で示される。脱ロウされた生成物の飽和物平衡プロット(図5)を、水素圧力が600、1200及び1800psig(4.24、8.38、12.5mPa)において得た。プロセス条件は、0.7LHSV(反応器A+B)及び1200〜2400SCF/B(214〜427m/m)とした。反応器A及びBとも同じ温度(350〜415℃の範囲)で操作した。
【0049】
図から解るように、水素分圧が600psig(4.14mPa)で、90重量%の飽和物を達成するのは不可能である。理論的には目標90重量%に達するよう温度を低下させられたが、空間速度は、実用的でなく低くされる。無理のない空間速度で90重量%を達成するための最低圧力は、約1000psig(7.0mPa)である。圧力を上昇させて、最初の2反応器(反応器AとB)で用いる温度範囲を上昇させてもよかろう。圧力への実際的限界は、典型的な水素化分解装置に用いられる高価格の金属によって決まるが、それを本発明の方法は避けることができる。
【0050】
[実施例4]
この実施例では、生成物の品質を維持するのに必要とされる温度がもたらす、触媒の不活性化プロフィールを示す。図4は、通油時間に対し18ポイントのVIを維持するために必要な、等温的温度(反応器Aであり、Bではない)の典型的なプロットである。KF840触媒を反応器AとCで使用した。2年を過ぎて、反応器Aの温度は約50℃まで上昇できた。これは生成物の飽和物含量に影響するであろう。反応器A温度が上昇するように、生成物中の飽和物の傾斜を相殺する戦略を以下に示す。
【0051】
[実施例5]
この実施例では、93VIラフィネート原料を用いた水素圧力が1400psig(9.75mPa)のプロセスで、所望の飽和物含量を達成するための、第一(反応器A)及び第二(反応器B)水素転化装置間の温度段階化の影響を示す。
【0052】
【表4】

【0053】
ベースケースと温度段階化ケースの比較は、反応器Bをより低い温度及び空間速度で操作することの利点を示している。生成物のバルク飽和物含量は、反応器Bの温度での熱力学的平衡に回復した。
【0054】
[実施例6]
この実施例では、低温水素化仕上げ装置(反応器C)での、毒性への温度と圧力の影響を示す。毒性は、FDA(c)試験の代替として開発されたスクリーナー試験に基づき、ジメチルスルホキサイド(DMSO)を用いて評価される。スクリーナー及びFDA(c)試験は、共にDMSO抽出物の紫外線吸収に基づいている。スクリーナー試験での345+/−5nmの最大吸光度は、図8に示すように、FDA(C)試験で300〜359nm間の最大吸光度で相関付けられる。スクリーナー試験を用いて許容される毒性の上限は、0.16吸光度ユニットである。図6に示すように、水素分圧が1800psig(12.7Mpa)対1200psig(8.38Mpa)での操作は、非毒性生成物を達成する低温水素化仕上げ装置での、非常に広い温度範囲の使用を許容する[例えば水素分圧が1200psig(8.35Mpa)での操作では、最大約315℃なのに対し、290〜360℃である]。次の実施例では、反応器Cをより高い温度で操作する時に、より高い飽和物、非毒性生成物が製造できることを示す。
【0055】
[実施例7]
この実施例は、油生成物の飽和物含量を最適化するための低温水素化仕上げ(反応器C)の使用を教示するものである。反応器AとBは、水素分圧が1800psig(12.7mPa)、処理ガス速度が2400Scf/B(427m/m)、空間速度が夫々0.7と1.2LHSV、かつ92VIの250Nラフィネート原料での運転終了に近い(EOR)温度400℃に於いて操作した。表5は、生成物をより高い飽和物含量かつ非毒性にするのに必要な、反応器Cで使用される条件を示している。350℃では、空間速度が2.5v/v/hrで飽和物90%以上を達成できる。より低いLHSVでは、95%を超過する飽和物が達成される。
【0056】
【表5】

【0057】
図7は、更に反応器Cの柔軟性ある使用を示している。図7に示すように、温度と空間速度の制御により反応器Cを最適化することが、グループII基油を与えることになる。
【0058】
[実施例8]
この実施例では、ラフィネートと脱ロウ油に添加する原料が、更に高い品質の基油に向上されることを示す。低価値のフーツ油の向上を、この実施例で示す。フーツ油は、油含量の低い仕上げワックスの製造からのワックス性副生物である。この物質は直接用いるか、不充分に抽出したラフィネート又は脱ロウ油への調合原料として用いられる。下方(表6)の実施例では、この発明の文脈で、その価値を示すためフーツ油原料を、水素圧力が650psig(4.58mPa)で向上させた。反応器Cは、この方法では含まれていない。2つの品質のフーツ油、500Nと150Nを原料として用いた。
【0059】
【表6】

【0060】
表6は、重要な高VIで飽和物が所望の基油と、価値あるワックス生成物とが、共にフーツ油から回収しうることを示している。概して、この方法ではワックス分子は消費されないか形成されないので、原料調合材としてのフーツ油流の包含は、基油生成物の品質を改良する一方、価値あるワックスを回収する手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】100N基油のNOACK蒸発性と粘度の関係を示す図である。
【図2】水素転化プロセスの概略的流れ図である。
【図3】異なる圧力でのVIHOPと転化率の関係を示すグラフである。
【図4】固定した圧力での、通油日数に対する第一水素転化域での温度を示すグラフである。
【図5】固定されたVI生成物のための、反応器温度に対する飽和物濃度を示すグラフである。
【図6】低温水素化仕上げ工程での温度と圧力に対する毒性を示すグラフである。
【図7】低温水素化仕上げ工程の条件を変えることによる、飽和物濃度の制御を示すグラフである。
【図8】DMSOスクリーナー試験とFDA(c)試験との相関を示すグラフである。本発明による方法の概略図である。
【符号の説明】
【0062】
8、12、14、16、18、22、24、26、28、32、34、38、40、44、46、50、54、58、64、70、72、76、78、80 流路
10 減圧蒸留装置
20 脱アスファルト抽出装置
30 溶剤抽出装置
36 溶剤ストリッピング装置
42 第一水素転化装置
48、56 熱交換器
52 第二水素転化装置
60 低温水素化仕上げ装置
68 分離器
74 脱ロウ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも90重量%の飽和物含量と少なくとも105の粘度指数を有する潤滑油基油を、潤滑油原料の溶剤精製によって得たラフィネートを選択的に水素転化することにより製造する方法であって、
(a)潤滑油原料を溶剤抽出域に導入して、芳香族に富む抽出物とパラフィンに富むラフィネートに分離し、
(b)溶剤のラフィネートをストリッピングして、粘度指数が85〜105で、最終沸点が650℃を超えない脱ロウ油を含有するラフィネート原料を製造し、
(c)ラフィネート原料を第一の水素転化域に通し、そのラフィネート原料を非酸性触媒の存在下、340℃〜420℃の温度で、水素分圧が1000〜2500psig(7.0〜17.3mPa)、空間速度が0.2〜3.0LHSV及び水素と原料との比が500〜5000Scf/B(89〜890m/m)の条件で処理して、第一の水素転化されたラフィネートを得て、
(d)第一の水素転化域で水素転化されたラフィネートを第二の水素転化域へ通し、その水素転化されたラフィネートを非酸性触媒の存在下、340℃〜400℃でかつ第一の水素転化域よりも高くない温度で、水素分圧が1000〜2500psig(7.0〜17.3mPa)、空間速度が0.2〜3.0LHSV及び水素と原料との比が500〜5000Scf/B(89〜890m/m)の条件で処理し、第二の水素転化されたラフィネートを得て、
(e)第二の水素転化域で水素転化されたラフィネートを水素化仕上げ反応域へ通し、その第二の水素転化されたラフィネートを水素化仕上げ触媒の存在下、260℃〜360℃でかつ第一の水素転化域よりも高くない温度で、水素分圧が1000〜2500psig(7.0〜17.3mPa)、空間速度が0.2〜5LHSV及び水素と原料との比が500〜5000Scf/B(89〜890m/m)の条件で低温水素化仕上げ処理し、水素化仕上げされたラフィネートを得て、
(f)その水素化仕上げされたラフィネートを分離域へ通し、沸点が250℃以下の生成物を除去し、
(g)その水素化仕上げされたラフィネートを分離域から脱ロウ域へ通し、ラフィネート原料よりも少なくとも10以上粘度指数が高く、100℃での粘度が3.5〜6.5cStの範囲内で、同じ粘度におけるラフィネート原料のNOACK蒸発量向上が少なくとも3重量%以上で、飽和物含量が少なくとも90重量%で、IP346又はFDA(c)試験に合格する低毒性を有し、粘度指数が少なくとも105である脱ロウされた基油を製造する、
以上の工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
第一の水素転化域、第二の水素転化域及び水素化仕上げ反応域の間は、離脱されていないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基油は、少なくとも95重量%の飽和物が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ラフィネートは、不充分に抽出されたものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
非酸性触媒は、アルミナを担体とするコバルト/モリブデン、ニッケル/モリブデン又はニッケル/タングステンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第一の水素転化域、第二の水素転化域又は水素化仕上げ反応域における水素分圧は、1000〜2000psig(7.0〜12.5mPa)であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水素化仕上げ域の温度は、290〜350℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
非酸性触媒は、少なくともシリカ、アルミナ又はチタニア金属酸化物の1以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−13423(P2009−13423A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229324(P2008−229324)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【分割の表示】特願平9−364086の分割
【原出願日】平成9年12月17日(1997.12.17)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】