説明

潤滑油組成物用改良型粘度調節剤

【課題】 改良された潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】 改良された潤滑油組成物は、潤滑粘性の基油と、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した、剪断安定性オレフィン共重合体を備える添加剤、約5〜30重量%とを含有する。剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数を有し、多分散性が約1.5以下で、濃化効率が約1.8を上回り、潤滑油組成物の粘度指数を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
潤滑油、潤滑油組成物および潤滑油添加剤、潤滑させた部品およびエンジン、ならびに可動部を潤滑させる方法について、以下に開示する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンおよびディーゼルエンジンのクランク室に使用する潤滑油には、天然および/または合成ベースストックと、潤滑油に求められる特性を与えるために1つまたは複数の添加剤とが含まれる。一般に、そのような添加剤として、無灰性分散剤、金属清浄剤、抗酸化剤、および磨耗防止剤があげられ、これらを混合しパッケージ型添加剤とすることができる。そのような添加剤は、DIパッケージ(detergent inhibitor package:清浄剤・抑制剤パッケージ)と呼ばれることがある。
【0003】
マルチグレードオイルは、通常、比較的長鎖のポリマーである1つまたは複数の摩擦調節剤をさらに含有する。そのようなポリマーは、その他の特徴をもたせるために多機能化することができ、多機能性摩擦調節剤として知られているが、主として所望の作用温度の範囲にわたり、粘度特性を向上させる作用がある。粘度調節剤は、低温で粘度を過度に増加させることなく、高温で粘度を増加させ、高速におけるエンジンをさらに保護する作用がある。低温での粘度増加は、冷えたエンジンの始動を困難にする。高温での性能は、通常、100℃における動粘度(kV:kinematic viscosity)(ASTM D445)を用いて測定し、低温での性能は、コールドクランキングシュミレーター(CCS:colod cranking siumlator)粘度(ASTM D2602が改訂されたASTM D5293)、ミニロータリー粘度計(MRV:mini−rotary viscometer;ASTM D4684)、または走査型ブルックフィールドもしくはゲル指数(ASTM D5133)を用いて測定する。
【0004】
粘度分類は、前述の温度別測定結果に基づいて、SAE(Society of Automotive Engineers:米国自動車技術者協会)の分類方法(SAE J300)によって、定義されている。マルチグレードオイルは、低温および高温での両性能要件を満たし、対応する両方の分類が表示される。
【0005】
剪断安定性とは、オイルが大きな剪断作用を受けた際の永久的粘度低下に対する抵抗性の尺度である――オイルの剪断安定性が優れているほど、剪断作用を受けた場合の粘度低下が少ない。ポリマー性粘度調節剤は、100℃におけるkVを著しく向上させるが、必ずしも剪断安定性に優れているとは限らない。そのようなポリマー性粘度調節剤は、剪断安定度指数(SSI:shear stability index)によって、特徴づけられる。
【0006】
比較的優れた剪断安定性を示すオイルまたは添加剤は、比較的低いSSIを有する。一般的に、潤滑油に使用される高分子量ポリマーは、剪断安定性が低い(すなわちSSIが高い)。しかし、比較的低いSSIを有する粘度調節剤は、比較的分子量が低いために高い処理濃度が要求され、そのため総配合コストの増加につながる。マルチグレードオイルは、低SSIを有する高価な粘度調節剤を使用しない限り、剪断安定性が低いことが多い。剪断安定性が低い場合、複数のオイルを混ぜ合わせ、100℃におけるkVを向上させる必要があるが、オイルの混合により燃費が低下する恐れがある。したがって、潤滑油組成物中に使用する剪断安定性が比較的優れ、かつより安価な粘度調節剤を得るために粘度調節剤を改良する必要がある。
【実施形態の概要】
【0007】
本明細書の1つの実施形態において、潤滑表面を提示する。潤滑表面は、潤滑粘性の基油と、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した、剪断安定性オレフィン共重合体を備える添加剤、約5〜30重量%とを含有する潤滑油組成物の薄膜による被覆を含む。剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数を有し、多分散性が約1.5以下で、濃化効率が約1.8を上回る。
【0008】
別の実施形態では、可動部を有し、可動部を潤滑させるための潤滑油を含有する輸送手
段を提示する。潤滑油は、潤滑粘性の油と、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した、剪断安定性オレフィン共重合体を備える添加剤、約5〜30重量%とを含有する。剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数を有し、多分散性が約1.5以下で、濃化効率が約1.8を上回る。
【0009】
さらに別の実施形態では、可動部を潤滑させる方法を提示する。この方法は、可動部を、潤滑油添加剤を含有する潤滑油組成物に接触させるステップを含む。潤滑油添加剤は、希釈用または担体としてのオイルと、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した、剪断安定性オレフィン共重合体、約5〜95重量%とを含む。剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数を有し、多分散性が約1.5以下で、濃化効率が約1.8を上回る。潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全体量に関して約5〜30重量%の添加剤を含有する。
【0010】
その上さらに別の実施形態では、潤滑油組成物の粘度指数を改善する方法を開示する。この方法は、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した、剪断安定性オレフィン共重合体を備える添加剤、約5〜30重量%を、潤滑油組成物と混合するステップを含む。剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数を有し、多分散性が約1.5以下で、濃化効率が約1.8を上回る。
【0011】
本明細書に記載するように、剪断安定性共重合体は、添加量が少ない場合でも濃化効率が向上するという点で優れている。剪断安定性共重合体は、例えば約40〜55重量%の範囲でエチレンを含有する共重合体などの非結晶性エチレン含有低級共重合体を用いて作ることができるという点でも優れている。剪断安定性オレフィン共重合体に加え、本発明は、スチレン‐イソプレン構造の剪断安定性星型ポリマーに応用することもできる。
【0012】
実施形態のさらなる特徴および利点は、良好な実施形態に関する詳細な説明を、以下の図面とあわせて参照することによって明らかになるであろう。図面中、使用する参照番号は複数の図面間で共通である。
【良好な実施形態に関する詳細な説明】
【0013】
本明細書中、「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、一般に使われる意味で用いられ、当業者には周知である。具体的には、分子の残りの部分に直接付加する炭素原子を有し、圧倒的に炭化水素的な性質を示す基を指す。ヒドロカルビル基の例として、下記のようなものがあげられる:
(1)炭化水素置換基、すなわち脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族置換、脂肪族置換および脂環式置換の芳香族置換基。さらに、環が分子の別の部分で閉じている環式置換基(例えば2つの置換基が結合して脂環式ラジカルを形成する);
(2)置換炭化水素置換基、すなわち炭化水素以外の基を含有する置換基であって、本明細書では、圧倒的に炭化水素的な性質を示す基の性質を変えない置換基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ);
(3)へテロ置換基、すなわち本明細書では、圧倒的に炭化水素的な性質を示す一方で、炭素原子からなる環または鎖の中に炭素以外の原子を含有する置換基。ヘテロ原子として、イオウ、酸素、窒素、ならびにピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルなどの環状の置換基があげられる。一般に、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個あたり、炭化水素以外の置換基は2個以下、好ましくは1個以下の割合で存在し、典型的には、ヒドロカルビル基中には炭化水素以外の置換基は存在しない。
【0014】
本発明の実施形態はいずれも、特定の潤滑油成分、すなわち添加剤を提供する。この添加剤は、一般に、多機能性粘度指数調節剤と呼ばれる。具体的には、この潤滑油添加剤は、約15,000から約500,000以上の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した、剪断安定性オレフィン共重合体を含む。剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数を有し、多分散性が約1.5以下であることができる。本明
細書に記載するように、この剪断安定性オレフィン共重合体を、Solvent Neutral 150のような適当な溶剤に溶解させ、添加剤成分を得る。
【0015】
多様な共重合体および3元重合体を、本発明の剪断安定性共重合体を形成するための出発物質として使うことができる。本発明の共重合体は、通常、オレフィン共重合体を指すが、開示の実施形態は、スチレン‐イソプレンから誘導した共重合体にも応用することができる。本発明の共重合体は、一般に、約15,000〜500,000、好ましくは約20,000〜300,000、より好ましくは約100,000〜200,000の数平均分子量を有する。本発明の剪断安定性共重合体は、通常、狭い範囲の分子量を有し、これは数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(以下、多分散性と呼ぶ)として求められる。適切なオレフィン共重合体の多分散性は10を下回り、好ましくは7を下回り、より好ましくは、4以下である。共重合体のMnおよびMw/Mnは、周知の方法である蒸気圧浸透圧法(VPO:vapor phase osmometry)、膜浸透圧法、およびゲル浸透クロマトグラフィーによって測定する。オレフィン共重合体から誘導した本発明の剪断安定性共重合体は、約1.5以下の多分散性を有することができる。
【0016】
通常、狭い範囲の分子量を有する剪断安定性共重合体は、比較的低温で、機械的に剪断することによって得ることができる。従来からの共重合体剪断法は、約100°C(212°F)を上回る温度において押出し剪断を施す。それに対して、本発明の共重合体剪断法は、ホモゲナイザー中で、約100°C(212°F)を下回る温度、通常、約35°C(95°F)〜85°C(135°F)でおこなわれる。したがって、「比較的低温」という表現は、共重合体を剪断するための押出し剪断方法(従来法)に用いられる温度より低い温度を意味する。
【0017】
本法に用いるホモゲナイザーは、500ポンド/平方インチ(35 kg/cm)を超える圧力を発生させることが可能であれば、ホモゲナイザーの種類は問わない。このようなホモゲナイザー内で、前記圧力が開放されるときに強力な剪断作用が生成物に及ぶことになる。使用することができる典型的なホモゲナイザーは、乳製品の均質化や、研磨剤、化粧品、医薬品および液体洗剤として使われるエマルションの調製に使用する従来からあるホモゲナイザーである。共重合体をホモゲナイザーで複数回(例えば約2〜10回)処理して、共重合体の剪断をおこなうことができる。
【0018】
ホモゲナイザー内で剪断されるオレフィン共重合体は、エチレン、ならびに3〜28個の炭素原子(例えば2〜18個の炭素原子)を含有する環式、脂環式および非環式化合物をはじめとするエチレン系不飽和炭化水素から調製することができる。エチレン共重合体は、エチレンを約15〜90重量%、好ましくは約30〜80重量%、最も好ましく約70重量%より少ない量で含有することができる。さらに共重合体は、約10〜85重量%、好ましくは20〜70重量%の量で、1つまたは複数のC〜C28、好ましくはC〜C18、より好ましくはC〜C10の不飽和炭化水素、好ましくはα‐オレフィンを含有することができる。
【0019】
エチレンとプロピレンとからなる共重合体が最も好ましい。しかしその他に、プロピレンに代わり共重合体を形成することができるα−オレフィン、またはエチレンおよびプロピレンと組み合わせて用い3元重合体、4元重合体などを形成することができるα−オレフィンがある。例として、これらに限定されるわけではないが、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなど、さらに、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチルペンテン−1,4,4−ジメチル−1−ペンテン、6−メチルヘプテン−1などの分枝鎖状α‐オレフィン、およびこれらの混合物があげられる。
【0020】
本明細書中、「共重合体」という用語は、別途明示しない限り、エチレン、およびC3〜28α−オレフィン、および/または非共役ジオレフィンもしくは使用可能なそれらのジオレフィンの混合物からなる3元重合体、4元重合体、共重合体などを含む。このような材料は、本発明のオレフィン共重合体の基本的特徴を物理的に変えない限り、若干量のその他のオレフィン系モノマーを含有することができる。非共役ジオレフィンの量は、一
般に、存在するエチレンおよびα‐オレフィンの総量に関し約0.5〜20モル%、好ましくは約1〜7モル%の範囲である。
【0021】
3元重合体に含むことができる非共役ジエンの代表例として、以下のようなものがあげられる:1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−オクタジエンなどの直鎖非環式ジエン;5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンなどの分枝鎖状非環式ジエン;ジヒドロミルセンおよびジヒドロシメンの異性体混合物;1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,5−シクロドデカジエン、4−ビニルシクロヘキセン、1−アリル−4−イソプロピリデンシクロへキサン、3−アリルシクロペンテン、4−アリルシクロヘキセン、1−イソプロペニル−4−(4−ブテニル)シクロヘキサンなどの単環脂環式ジエン;4,4−ジシクロペンテニルジエンおよび4,4−ジシクロヘキセニルジエンなどの複単環脂環式ジエン;テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンなどの複環脂環式融合および橋かけ環ジエン;エチルノルボルネン、5−メチレン−6−メチル−2−ノルボルネン、5−メチレン−6,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−(3−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエンなどのアルキル、アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニルおよびシクロアルキリデンノルボルネン。
【0022】
具体的には、剪断安定性オレフィン共重合体は、エチレン‐プロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエン、スチレン‐ネオプレン、スチレン‐イソプレンなどの複数単量体の重合反応物から誘導することができる。
【0023】
エチレン‐プロピレン、またはこれより炭素数の多いα‐オレフィン共重合体は、約15〜80重量%のエチレンと、約85〜20重量%のC〜C23α‐オレフィンとから構成される。これらの割合は、好ましくはエチレンが約35〜75重量%、C〜C23α‐オレフィンが約65〜25重量%、より好ましくはエチレンが約50〜70重量%、C〜C23α‐オレフィンが約50〜30重量%、最も好ましくはエチレンが約55〜65重量%、C〜C23α‐オレフィンが約45〜35重量%である。
【0024】
さらに、本明細書に記載の剪断安定性オレフィン共重合体を作るためのオレフィン共重合体には、フリーラジカルグラフト反応またはグラフト重合によって官能基を付与されたオレフィン共重合体も含まれる。そのようなグラフト共重合体自体は、当業者には周知である。
【0025】
オレフィン共重合体に官能基を付与するためのグラフト単量体は、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、またはそれらのエステルなどのオレフィン系不飽和カルボキシル基含有モノマーの誘導体である。これらもまた当業者に周知である。一般に、アクリル酸およびメタクリル酸誘導体は、4〜16個の炭素原子を含有する。特に好ましいアクリルまたはメタクリル系グラフト単量体として、メタクリル酸グリシジル、メタクル酸塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸アミノプロピル、およびアクリルアミドがあげられる。
【0026】
炭素原子2〜25個を含有するビニルアミン(好ましくは複素環ビニルアミン)は、オレフィン共重合体に官能基を付与するために使用することができる別の種類のグラフト単量体である。そのようなアミン自体は、官能基付与グラフト単量体として知られており、アリルアミン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルラクタム、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、およびビニルチアゾールが含まれ、具体例として、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、1−ビニルイミダゾール、アリルアミン、4−メチル−5−ビニルチアゾール、および9−ビニルカルバゾールがあげられる。そのようなグラフト単量体は、米国特許第4,340,689号に詳細に記載されており、これは本明細書に参照文献として組み込まれている。
【0027】
オレフィン共重合体に官能基を付与するのに適すると先行技術文献に記載されているその他のビニル単量体も、同様に、本発明を実施するにあたって使用できることが、当業者には理解されるであろう。そのようなさらに別のビニル化合物は、ビニルシランおよびビ
ニルベンジルハロゲン化物などであり、具体例として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジエチルクロロシラン、ビニルベンジルクロリドなどがあげられる。適切なシラングラフト単量体は、米国特許第4,340,689号にさらに詳細に記載されており、これは本明細書に参照文献として組み込まれている。
【0028】
本明細書に記載の剪断安定性オレフィン共重合体は、好都合に潤滑油組成物に組み入れられる。剪断安定性オレフィン共重合体は、潤滑油組成物に直接添加することできる。しかし、ある実施形態では、鉱油、合成油(例えばジカルボン酸のエステル)、ナフサ、アルキル化(例えばC10〜C13アルキル)ベンゼン、トルエン、またはキシレンなどの実質的に不活性で、通常は液体の有機希釈液を用い、この共重合体を希釈し、添加剤濃縮物を形成する。剪断安定性オレフィン共重合体濃縮物は、通常、約0〜99重量%の希釈油を含有する。
【0029】
潤滑油配合物の調製において、添加剤を、鉱油系潤滑油やその他の適切な溶剤などの炭化水素油中に1〜99重量%の有効成分を有する濃縮物の形態で導入するのが、通常の方法である。通常、パッケージ型添加剤(additive package)1重量部に対し潤滑油0.05〜10重量部を、これらの濃縮物に加え、クランク室モーターオイルなどの潤滑油の完成品を得る。当然のことながら、最終混合物中への溶解または分散を容易にし、かつ種々の材料の取り扱いにまつわる煩雑さを減らす目的で、濃縮物とする。
【0030】
上記の剪断安定性オレフィン共重合体を用いて調整した潤滑油組成物は、非常に広範な適用例で使用される。圧縮点火エンジンおよびスパーク点火エンジンに対しては、潤滑油組成物が公表されているGF−4またはAPI−CI−4基準を満たすか上回るのが好ましい。上記のGF−4またはAPI−CI−4基準に基づく潤滑油組成物は、潤滑油の完成品を提供するための基油および潤滑油用パッケージ型添加剤を含んでいる。ここに開示する潤滑油の基油は、天然潤滑油、合成潤滑油、およびそれらの混合物から選ばれた潤滑粘性の油である。そのような基油には、自動車用およびトラック用エンジン、ならびに船舶用および鉄道用ディーゼルエンジンなどのようなスパーク点火および圧縮点火内燃機関のためのクランク室潤滑油として従来から使われている基油が含まれる。
【0031】
天然油には、動物油および植物油(例えばヒマシ油、ラード油)、液体石油およびパラフィン系、ナフテン系、および混合パラフィン‐ナフテン系の水素添加精製、溶剤処理、または酸処理鉱油系潤滑油が含まれる。さらに石炭または頁岩から得られる潤滑粘性の油も有用な基油である。本発明に使われる合成潤滑油には、一般に使用される多くの合成炭化水素油のいずれかを含み、例として、これらに限定されるわけではないが、ポリ−α−オレフィン、アルキル化芳香族、アルキレンオキシド重合体、インターポリマー、共重合体、エステル化およびエーテル化などにより末端水酸基が修飾されているこれらの誘導体、ジカルボン酸のエステル、ならびにケイ素からなる油があげられる。
【0032】
潤滑油の完成品は、従来どおり、本明細書では分散剤/抑制剤パッケージ(dispsersant/inhibitor package)またはDIパッケージと呼ぶ、パッケージ型添加剤を含有し、これによって配合剤に求められる特性が与えられる。適切なDIパッケージが、例えば米国特許第5,204,012号および第6,034,040号などに記載されている。パッケージ型添加剤に含まれる添加剤として、清浄剤、分散剤、摩擦調節剤、シール膨張剤(seal swell agent)、抗酸化剤、消泡剤、潤滑剤、防錆剤、腐食防止剤、解乳化剤、および粘度指数向上剤などがある。これらの成分のいくつかは、当業者の間では周知であり、本明細書に記載の添加剤および組成物とともに通常の量で用いるのが望ましい。
【0033】
例えば、無灰性分散剤は、分散させようとする粒子と結合可能な官能基を有する油溶性ポリマー性炭化水素骨格を含む。通常、このような分散剤は、しばしば橋かけ結合できる基を介してポリマー骨格に結合するアミン、アルコール、アミドまたはエステルの極性を有する部分を備えている。無灰性分散剤は、例えば、長鎖炭化水素置換モノおよびジカルボン酸、またはその無水物の油溶性塩、エステル、アミノエステル、アミド、イミドおよびオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボン酸塩誘導体;ポリアミンが直接結合している長鎖脂肪族炭化水素;ならびに長鎖置換フェノールをホルムアルデヒドおよびポリアル
キレンポリアミンと縮合させることによって形成するマンニッヒ縮合生成物から選ぶことができる。
【0034】
酸化防止剤または抗酸化剤は、ベースストックの使用中の劣化を抑える。その劣化は、スラッジおよび金属表面のワニス様沈殿物などの酸化生成物、ならびに粘度の上昇として認められる。そのような酸化防止剤として、立体障害性基を有するフェノール、好ましくはC〜C12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、無灰性油溶性フェネートおよび硫化フェネート、リンとイオウ、またはイオウが結合した炭化水素、リン酸エステル、チオカルバミン酸の金属塩、ならびに米国特許第4,867,890号に記載の油溶性銅化合物があげられる。
【0035】
非イオン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、ならびにアニオン性アルキルスルホン酸からなるグループから選択される防錆剤を使うことができる。
【0036】
少量の解乳化剤を使用することができる。好ましい解乳化成分は欧州特許第EP330,522号に記載されている。これは、ビス‐エポキシドを反応させて得た付加生成物を有するアルキレンオキシドを多価アルコールと反応させて得られる。解乳化剤は、有効成分が0.1質量%を越えない濃度で使用されなければならない。有効成分0.001〜0.05質量%の処理濃度が便利である。
【0037】
流動点降下剤は、潤滑油流動性向上剤としても知られるが、流動体が流れる、すなわち流動体を注ぐことができる最低温度を下げる作用がある。そのような添加剤はよく知られている。流動体の低温流動性を向上させる添加剤の代表例として、C〜C18ジアルキルフマラート/酢酸ビニル共重合体、およびポリアルキルメタクリレートなどがある。
【0038】
シリコーン油またはポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン系の泡止め剤をはじめとする多くの化合物によって、泡を抑制することができる。
【0039】
さらに、例えば米国特許第3,794,081号および第4,029,587号に記載のシール膨張剤(seal swell agent)を使うことができる。
【0040】
上記の添加剤はそれぞれ、使用にあたっては、機能を発揮する量で用い、潤滑油に所望の特性を与える。したがって、例えば、添加剤が腐食防止剤である場合、この腐食防止剤の機能を発揮する量とは、潤滑油に所望の腐食防止特性を与えるのに十分な量である。一般に、これらの添加剤のそれぞれの濃度は、使用にあたっては、潤滑油組成物の重量に関し上限約20重量%である。潤滑油組成物の重量に関し、ある実施形態では約0.001〜20重量%、および別の実施形態では約0.01〜10重量%である。
【実施例】
【0041】
潤滑油組成物の完成品4種を調製し、これら組成物の粘度および剪断強度を比較した。各潤滑油組成物はそれぞれ、潤滑油組成物に対し11重量%の従来のDIパッケージを含有した。DIパッケージは、清浄剤、分散剤、耐磨耗性添加剤、摩擦調節剤、消泡剤、および抗酸化剤を従来量で含有した。さらに、これらの配合物は、約0.1重量%流動点降下剤、約58〜64重量% 150溶剤系中性オイル、約12〜18重量% 600溶剤系中性オイルを含有した。サンプル1〜3からは、摩擦調節剤として市販されているオレフィン共重合体の特性が得られる。サンプル4からは、本発明により作られた剪断安定性オレフィン共重合体の特性が得られる。
表中、以下の略語を使用する。

VII・・・・・粘度指数改善剤(viscosity index improver)
KV・・・・・動粘度(kinematic viscosity)
CCS・・・・・コールドクランキングシュミレーター(cold cranking simulator)
MRV・・・・・ミニロータリー粘度計(mini rotary viscometer)――ASTM D4684に従い試験を実施
HTHS・・・・・高温高剪断(high temperature high shear)――ASTM D−4683、D−4781、およびD−5481に従い試験を実施
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
上記の表1および表2に示すように、サンプル4は、非常に優れた粘度調節剤である。サンプル1〜3に比べ、サンプル4は潤滑油組成物中のポリマー添加量が最も少ない(サンプル1〜3では1.38〜1.69であるのに対し、1.32)。さらに、サンプル4は、剪断安定度指数(SSI)が最も高く、MRV試験およびCCS試験に合格した。一方、サンプル3は、MRV試験および粘度低下試験に不合格であった。全体的に、サンプル4には、市販のエチレン系オレフィン共重合体製品を上回る粘度および剪断強度が認められた。
【0045】
本発明に基づく剪断安定性オレフィン共重合体を作るために、気相クロマトグラフィー(GPC:gas phase chromatography)により測定した数平均分子量179,192および重量平均分子量332,930を有するエチレン‐プロピレン共重合体10重量部と、作業油90重量部とを混合した。この油と共重合体の混合物を、GAULINホモゲナイザーで1〜10回処理し、多分散性が1.5より小さい剪断安定性オレフィン共重合体を得た。
【0046】
ホモゲナイザーによる処理0〜10回後のオレフィン共重合体の特徴を、以下の表および図1〜3に示す。図4および図5は、濃化効率および動粘度について、処理0〜10回後のオレフィン共重合体と、HiTEC(R) 5748およびLUBRIZOL 7077(LZ 7077)(それぞれサンプル6およびサンプル7)とを比較したグラフである。比較は、表に示す粘度を有する対照油中で1%オレフィン共重合体を用いて実施した。サンプルの100℃における動粘度は、約5cStの対照油に各サンプルを1重量%溶解し、熱重量分析(TGA:thermogravimetric analysis)法により評価した(図4)。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
上記の表および図1〜5に示すように、共重合体をホモゲナイザーで10回以上処理して調製した剪断安定性共重合体は、剪断安定度指数の基準値(約23)を満たす粘度調節剤(サンプル5)とすることができ、かつ従来のオレフィン共重合体粘度調節剤(サンプル6および7)に比べ、明らかに高い濃化効率を示した(サンプル5)。機械的に剪断することによって、さらに、多分散性が1.5より低い剪断安定性オレフィン共重合体(図3中のサンプル5)を得ることができるという利点もある。
【0050】
本明細書の様々な箇所で、いくつかの米国特許を参照した。これらの参照文献は全て、その全体が本明細書に組み込まれていることを明記しておく。
【0051】
上記の実施形態は、実際の場面において、かなりの変更を加えることが可能である。したがって、実施形態は、本明細書中の上記の特定の実施例に限定されるものではない。上記の実施形態は、特許法の下における均等物を含む本発明の精神および範囲の内に入るものである。
【0052】
特許出願人は、いずれの実施形態も、一般に提供するために開示したわけではなく、開示内容の変更例や改変例が特許請求の範囲に文字どおりおさまらない場合であっても、それらは、均等論の下、特許請求の範囲の一部であるとみなされる。
【0053】
本発明の主な態様及び特徴を挙げれば以下のとおりである。
1.潤滑粘性の基油と、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン共重合体を備える添加剤、約5〜30重量%とを含有する潤滑油組成物の薄膜による被覆を備える潤滑表面であって、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油組成物中の添加剤の量は、潤滑油組成物の全量に関する量である)潤滑表面。
2.潤滑表面が、エンジンの動力伝達路を備える、上記1に記載の潤滑表面。
3.潤滑表面が、内燃機関の内部表面または構成要素を備える、上記1に記載の潤滑表面。
4.潤滑表面が、圧縮点火エンジンの内部表面または構成要素を備える、上記1に記載の
潤滑表面。
5.剪断安定性共重合体が、エチレン‐プロピレンの単量体の組合せ、エチレン‐プロピレン‐ジエンの単量体の組合せ、スチレン‐イソプレンの単量体の組合せ、およびスチレン‐ネオプレンの単量体の組合せからなるグループからから誘導される、上記1に記載の潤滑表面。
6.剪断安定性共重合体が、比較的低温においてホモゲナイズされた共重合体から誘導される、上記1に記載の潤滑表面。
7.剪断安定性共重合体の各単量体単位がそれぞれ、約2〜10個の炭素原子を含有する、上記1に記載の潤滑表面。
8.剪断安定性共重合体が、非結晶性エチレンを備え、エチレン含有量が共重合体の重量の約70%を下回る共重合体を含有する、上記1に記載の潤滑表面。
9.上記1に記載の潤滑表面を備える自動車。
10.可動部を有し、かつ可動部を潤滑させるための潤滑油を含有する輸送手段であって、潤滑油が、潤滑粘性の基油と、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン共重合体を備える添加剤、約5〜30重量%とを備え、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油中の添加剤の量は、潤滑油の全量に関する量である)輸送手段。
11.剪断安定性共重合体が、エチレン‐プロピレンの単量体の組合せ、エチレン‐プロピレン‐ジエンの単量体の組合せ、スチレン‐イソプレンの単量体の組合せ、およびスチレン‐ネオプレンの単量体の組合せからなるグループからから誘導される、上記10に記載の輸送手段。
12.剪断安定性共重合体が、ホモゲナイザー中で機械的に剪断されたオレフィン共重合体を備える、上記10に記載の輸送手段。
13.可動部が、排気ガス再循環装置と、エンジンを潤滑させるシステムとを含むヘビー・デューティ・ディーゼル・エンジンを備える、上記10に記載の輸送手段。
14.剪断安定性共重合体の各単量体単位がそれぞれ、約2〜10個の炭素原子を含有する、上記10に記載の輸送手段。
15.剪断安定性共重合体が、非結晶性エチレンを備え、エチレン含有量が共重合体の重量の約70%を下回る共重合体を含有する、上記10に記載の輸送手段。
16.潤滑粘性の基油成分と、約5〜30重量%の添加剤とを備える潤滑油組成物の完成品であって、添加剤が、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン共重合体を備え、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油組成物中の添加剤の量は、潤滑油組成物の全量に関する量である)潤滑油組成物の完成品。
17.剪断安定性共重合体が、エチレン‐プロピレンの単量体の組合せ、エチレン‐プロピレン‐ジエンの単量体の組合せ、スチレン‐イソプレンの単量体の組合せ、およびスチレン‐ネオプレンの単量体の組合せからなるグループからから誘導される、上記16に記載の潤滑油組成物。
18.剪断安定性共重合体が、ホモゲナイザー中で機械的に剪断されたオレフィン共重合体を備える、上記16に記載の潤滑油組成物。
19.剪断安定性共重合体の各単量体単位がそれぞれ、約2〜10個の炭素原子を含有する、上記16に記載の潤滑油組成物。
20.剪断安定性共重合体が、非結晶性エチレンを備え、エチレン含有量が約70重量%を下回る共重合体を含有する、上記16に記載の潤滑油組成物。
21.潤滑油組成物を約5〜30重量%の添加剤と混合するステップを備える潤滑油組成物の粘度指数を改善する方法であって、添加剤が、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン共重合体を備え、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多
分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油組成物中の添加剤の量は、潤滑油組成物の全量に関する量である)方法。
22.潤滑油組成物が、多粘性(multi−viscosity)潤滑油を備える、上記21に記載の方法。
23.剪断安定性共重合体が、エチレン‐プロピレンの単量体の組合せ、エチレン‐プロピレン‐ジエンの単量体の組合せ、スチレン‐イソプレンの単量体の組合せ、およびスチレン‐ネオプレンの単量体の組合せからなるグループからから誘導される、上記21に記載の方法。
24.剪断安定性共重合体が、ホモゲナイザー中で機械的に剪断されたオレフィン共重合体を備える、上記21に記載の方法。
25.剪断安定性共重合体の各単量体単位がそれぞれ、約2〜10個の炭素原子を含有する、上記21に記載の方法。
26.剪断安定性共重合体が、非結晶性エチレンを備え、エチレン含有量が約70重量%を下回る共重合体を含有する、上記21に記載の方法。
27.希釈用または担体オイルと、約5〜90重量%の添加剤とを備える潤滑油添加剤濃縮物であって、添加剤が、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン共重合体を備え、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし添加剤濃縮物中の添加剤の量は、添加剤濃縮物の全量に関する量である)潤滑油添加剤濃縮物。
28.剪断安定性共重合体が、エチレン‐プロピレンの単量体の組合せ、エチレン‐プロピレン‐ジエンの単量体の組合せ、スチレン‐イソプレンの単量体の組合せ、およびスチレン‐ネオプレンの単量体の組合せからなるグループからから誘導される、上記27に記載の添加剤濃縮物。
29.剪断安定性共重合体が、ホモゲナイザー中で機械的に剪断されたオレフィン共重合体を備える、上記27に記載の添加剤濃縮物。
30.剪断安定性共重合体の各単量体単位がそれぞれ、約2〜10個の炭素原子を含有する、上記27に記載の添加剤濃縮物。
31.剪断安定性共重合体が、非結晶性エチレンを備え、エチレン含有量が約70重量%を下回る共重合体を含有する、上記27に記載の添加剤濃縮物。
32.基油と、上記27に記載の添加剤濃縮物とを備える潤滑油組成物。
33.輸送手段の可動部を潤滑させる方法であって、方法が、輸送手段の1つまたは複数の可動部のための潤滑油として、基油と潤滑油添加剤とを含有する潤滑油組成物を使用するステップを備え、潤滑油添加剤が、希釈・担体オイルと、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した、所定量の剪断安定性オレフィン共重合体とを備え、潤滑油組成物中に約5〜30重量%の剪断安定性オレフィン共重合体を供給することができ、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油組成物中の添加剤の量は、潤滑油組成物の全量に関する量である)輸送手段の可動部を潤滑させる方法。
34.剪断安定性共重合体が、エチレン‐プロピレンの単量体の組合せ、エチレン‐プロピレン‐ジエンの単量体の組合せ、スチレン‐イソプレンの単量体の組合せ、およびスチレン‐ネオプレンの単量体の組合せからなるグループからから誘導される、上記33に記載の方法。
35.剪断安定性共重合体が、ホモゲナイザー中で機械的に剪断されたオレフィン共重合体を備える、上記33に記載の方法。
36.剪断安定性共重合体の各単量体単位がそれぞれ、約2〜10個の炭素原子を含有する、上記33に記載の方法。
37.剪断安定性共重合体が、非結晶性エチレンを備え、エチレン含有量が約70重量%を下回る共重合体を含有する、上記33に記載の方法。
38.輸送手段がディーゼルエンジンを含み、かつ可動部がエンジンの可動部を含む、上記33に記載の方法。
39.輸送手段がエンジンを有する航海用輸送手段を含み、かつ可動部がエンジンの可動部を含む、上記33に記載の方法。
40.輸送手段がスパーク点火エンジンを含み、かつ可動部がエンジンの可動部を含む、上記33に記載の方法。
41.輸送手段が動力伝達路を含み、かつ可動部が動力伝達路の可動部を含む、上記33に記載の方法。
42.輸送手段が、クランク室を有する内燃機関を含み、かつ潤滑油組成物が、輸送手段のクランク室内に存在するクランク室油を備える、上記33に記載の方法。
43.潤滑油組成物が、輸送手段の自動動力伝達路内に存在する動力伝達路潤滑油を備える、上記33に記載の方法。
44.可動部を、潤滑油添加剤を含有する潤滑油組成物に接触させるステップを備える可動部を潤滑させる方法であって、潤滑油添加剤が、希釈・担体オイルと、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン共重合体、約5〜95重量%とを備え、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全量に関し約5〜30重量%の添加剤を含有する)可動部を潤滑させる方法。
45.可動部が、輸送手段の可動部を備える、上記44に記載の方法。
46.輸送手段がエンジンを有する航海用輸送手段を含み、かつ可動部がエンジンの可動部を含む、上記44に記載の方法。
47.輸送手段が、クランク室を有する内燃機関を含み、かつ潤滑油組成物が、輸送手段のクランク室内に存在するクランク室油を備える、上記44に記載の方法。
48.潤滑油組成物が、輸送手段の自動動力伝達路内に存在する動力伝達路潤滑油を備える、上記44に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のオレフィン共重合体を機械的に剪断した場合の剪断安定度指数の変化を示す。
【図2】本発明のオレフィン共重合体を機械的に剪断した場合の多分散性の変化を示す。
【図3】本発明のオレフィン共重合体を機械的に剪断した場合の粘度の変化を示すグラフである。
【図4】本発明のオレフィン共重合体を作業オイル中で機械的剪断した場合の粘度変化を、従来のオレフィン共重合体に押出し機により高温で剪断・直接仕上げをおこなった場合の粘度変化と比較したグラフである。
【図5】本発明のオレフィン共重合体を機械的に剪断した場合の濃化効率の変化を、従来のオレフィン共重合体に押出し機により高温で剪断・直接仕上げをおこなった場合の濃化効率の変化と比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑粘性の基油と、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン共重合体を備える添加剤、約5〜30重量%とを含有する潤滑油組成物の薄膜による被覆を備える潤滑表面であって、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油組成物中の添加剤の量は、潤滑油組成物の全量に関する量である)潤滑表面。
【請求項2】
可動部を有し、かつ可動部を潤滑させるための潤滑油を含有する輸送手段であって、潤滑油が、潤滑粘性の基油と、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン共重合体を備える添加剤、約5〜30重量%とを備え、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油中の添加剤の量は、潤滑油の全量に関する量である)輸送手段。
【請求項3】
潤滑粘性の基油成分と、約5〜30重量%の添加剤とを備える潤滑油組成物の完成品であって、添加剤が、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン共重合体を備え、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油組成物中の添加剤の量は、潤滑油組成物の全量に関する量である)潤滑油組成物の完成品。
【請求項4】
潤滑油組成物を約5〜30重量%の添加剤と混合するステップを備える潤滑油組成物の粘度指数を改善する方法であって、添加剤が、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン共重合体を備え、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油組成物中の添加剤の量は、潤滑油組成物の全量に関する量である)方法。
【請求項5】
希釈用または担体オイルと、約5〜90重量%の添加剤とを備える潤滑油添加剤濃縮物であって、添加剤が、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン共重合体を備え、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし添加剤濃縮物中の添加剤の量は、添加剤濃縮物の全量に関する量である)潤滑油添加剤濃縮物。
【請求項6】
輸送手段の可動部を潤滑させる方法であって、方法が、輸送手段の1つまたは複数の可動部のための潤滑油として、基油と潤滑油添加剤とを含有する潤滑油組成物を使用するステップを備え、潤滑油添加剤が、希釈・担体オイルと、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した、所定量の剪断安定性オレフィン共重合体とを備え、潤滑油組成物中に約5〜30重量%の剪断安定性オレフィン共重合体を供給することができ、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油組成物中の添加剤の量は、潤滑油組成物の全量に関する量である)輸送手段の可動部を潤滑させる方法。
【請求項7】
可動部を、潤滑油添加剤を含有する潤滑油組成物に接触させるステップを備える可動部を潤滑させる方法であって、潤滑油添加剤が、希釈・担体オイルと、約50,000〜250,000の範囲の数平均分子量を有する共重合体から誘導した剪断安定性オレフィン
共重合体、約5〜95重量%とを備え、剪断安定性オレフィン共重合体は、約40を下回る剪断安定度指数と、約1.5以下の多分散性と、約1.8を上回る濃化効率とを有する(ただし潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全量に関し約5〜30重量%の添加剤を含有する)可動部を潤滑させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−83382(P2006−83382A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242400(P2005−242400)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】