説明

潤滑油組成物

【課題】 フィルター目開きが50μm以下であり、−30℃以下のような低温においても油圧ポンプの流量低下を抑制しうる、油圧ポンプとフィルターを備えた油圧装置に好適な潤滑油組成物、さらに詳しくは該油圧装置を備えたトラクタ、変速機等の共通潤滑油として好適な低温フィルタビリティに優れる潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】 (A)100℃における動粘度が1.5〜6mm/s、流動点が−35℃〜−10℃の基油から選ばれる1種又は2種以上の潤滑油基油と、(B)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤と、(C)低温流動性向上剤と含有することを特徴とする潤滑油組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関し、詳しくは油圧ポンプとフィルターを備えた油圧装置に好適な潤滑油組成物に関し、さらに詳しく該油圧装置を備えたトラクタ、変速機等の共通潤滑油として好適な潤滑油組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温で使用されうる潤滑油には、その低温特性を改善するために一般に流動点降下剤や粘度指数向上剤が配合されており、例えばエンジン油においてはCCS粘度(ASTM D 5293)による低温クランキング限界の評価やMRV粘度(ASTM D 4684)による低温ポンピング限界の評価等が、ギヤ油や変速機油においてはBF粘度(ASTM D 2983)による低温流動性の評価等が行われている。
【0003】
一方、トラクタ用潤滑油は、同一の潤滑油で、変速機、ギヤ、ベアリング、油圧装置、パワーステアリング、湿式ブレーキなどの潤滑を担うだけでなく、耐水性やフィルタビリティ等の独特の性能が要求されるが、従来のトラクタ潤滑油としてはギヤに対する極圧性や湿式クラッチ/湿式ブレーキの摩擦特性の改善が主に検討されている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【0004】
また、寒冷地で使用されうるトラクタ用の潤滑油には、上記性能に加え、低温時においても油圧ポンプ始動低温流動性が特に要求され、−40℃におけるBF粘度が2万mPa・s以下としたトラクタ用等の機能性流体が知られている(例えば上記特許文献5)。
【特許文献1】特開平6−200269号公報
【特許文献2】特開平6−240283号公報
【特許文献3】特開平7−109477号公報
【特許文献4】特開平9−165590号公報
【特許文献5】特開平9−165592号公報
【特許文献6】特開2001−311090号公報
【特許文献7】特開2004−059930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、最近の油圧機器は精密制御のため精密なバルブが装着されるようになり、作動油流路に異物の混入を防ぐために設けられたフィルターの細孔径がより小さくなる傾向にあるため、上記のような十分な低温粘度を有しているにもかかわらず、フィルターの閉塞による各潤滑部の潤滑不良や作動不良、あるいは正常に作動するまでに長時間を要するなどの可能性が懸念されるようになってきた。
【0006】
本発明らは、以上のような事情について検討した結果、−40℃におけるBF粘度が20,000mPa・s以下の優れた低温特性を有している潤滑油組成物を適用しても、−30℃以下のような低温において油圧ポンプの流量低下を起こすことがあり、特に、目開き50μm以下のフィルターを備えた油圧装置においてこの現象が顕著に現れることが判明した。すなわち本発明の課題は、−30℃以下の低温での油圧ポンプの流量低下を改善し、油圧装置を正常に作動できる、油圧ポンプとフィルターを備えた油圧装置に好適な潤滑油組成物、特に、該油圧装置を備えたトラクタ、変速機等及びそれらの共通潤滑油として好適な潤滑油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の潤滑油基油と特定の低温流動性向上剤とを含有する潤滑油組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)100℃における動粘度が1.5〜6mm/s、流動点が−35℃〜−10℃の基油から選ばれる1種又は2種以上の潤滑油基油と、(B)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤と、(C)低温流動性向上剤と含有することを特徴とする潤滑油組成物にある。
【0009】
また、前記(C)成分が不飽和エステルを含むモノマーの(共)重合体を含むことが好ましく、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体を含むことが最も好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の潤滑油組成物は、−30℃以下の低温においても油圧ポンプの流量低下を改善し、油圧装置を正常に作動できる、油圧ポンプと目開き50μm以下のフィルターを備えた油圧装置に好適な潤滑油組成物であり、特に、該油圧装置を備えたトラクタ、変速機等及びそれらの共通潤滑油として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳述する。本発明の潤滑油組成物は、(A)100℃における動粘度が1.5〜6mm2/s、流動点が−35℃〜−10℃の基油から選ばれる1種又は2種以上の潤滑油基油と、(B)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤と、(C)低温流動性向上剤と含有することを特徴とする。以下、(A)、(B)、(C)の各成分に項分けして詳述する。
【0012】
<A:潤滑油基油>
本発明の潤滑油組成物は、(A)100℃における動粘度が1.5〜6mm/s、流動点が−35℃〜−10℃の基油から選ばれる1種又は2種以上の潤滑油基油を含有する。前記(A)成分としては、上記規定を満たす限り特に制限はないが、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、水素化精製、溶剤脱ろう、接触脱ろう、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を単独又は二つ以上適宜組み合わせて精製されたパラフィン系、ナフテン系等の鉱油系潤滑油基油や、ノルマルパラフィン系基油、イソパラフィン系基油等が挙げられる。
【0013】
前記(A)成分としては以下の基油を好ましい例として挙げることができる。
(1) パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留による留出油;
(2) パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留出油(WVGO);
(3) 潤滑油脱ろう工程により得られるワックス及び/又はGTLプロセス等により製造されるフィッシャートロプシュワックス;
(4) (1)〜(3)の中から選ばれる1種又は2種以上の混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(5) (1)〜(4)の中から選ばれる2種以上の油の混合油;
(6) (1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の脱れき油(DAO);
(7) (6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(8) (1)〜(7)の中から選ばれる2種以上の油の混合油などを原料油とし、この原料油及び/又はこの原料油から回収された潤滑油留分を、通常の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる潤滑油
【0014】
ここでいう通常の精製方法とは特に制限されるものではなく、潤滑油基油製造の際に用いられる精製方法を任意に採用することができる。通常の精製方法としては、例えば、
(ア)水素化分解、水素化仕上げなどの水素化精製、
(イ)フルフラール溶剤抽出などの溶剤精製、
(ウ)溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう、
(エ)酸性白土や活性白土などによる白土精製、
(オ)硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄などの薬品(酸またはアルカリ)精製
などが挙げられる。本発明ではこれらの1つ又は2つ以上を任意の組み合わせ及び任意の順序で採用することができる。
【0015】
本発明で用いる(A)成分としては、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をさらに以下の処理を行って得られる基油が特に好ましい。すなわち、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をそのまま、又はこの基油から回収された潤滑油留分を、水素化分解あるいはワックス異性化し、当該生成物をそのまま、若しくはこれから潤滑油留分を回収し、次に溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、その後、溶剤精製処理するか、又は、溶剤精製処理した後、溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行って製造される(A1)水素化分解鉱油及び/又はワックス異性化イソパラフィン系基油が好ましく用いられる。
【0016】
また、本発明の(A)成分は、流動点が−35℃〜−10℃であり、溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理されたものが好ましい。(A)成分の流動点は、(B)成分及び(C)成分の添加効果及び製造コストの点で、好ましくは−30〜−15℃、より好ましくは−25℃〜−15℃となるように脱ろう処理された基油であることが望ましい。流動点が−35℃未満の場合、(C)成分の添加効果が小さくなり、流動点が−10℃を超える場合、−30℃以下の低温における低温特性を改善しにくくなる。
【0017】
また、(A)成分の脱ろう方法は、溶剤脱ろうあるいは接触脱ろうのいずれであっても良いが、本発明においては、(B)成分及び(C)成分の添加効果がより高い点でMEKなどの溶剤による溶剤脱ろうであることが好ましい。
【0018】
また、本発明の(A)成分は、100℃における動粘度が1.5〜6mm/sの基油から選ばれる1種又は2種以上の潤滑油基油であるが、潤滑性や低温特性に優れる点で、好ましくは2〜5mm/sであり、3〜5mm/sである基油を必須として含有させることが望ましい。
【0019】
また、(A)成分の炭化水素組成としては、%Cが0〜10、%Cが40〜100、%Cが0〜50であることが好ましい。これらの中でも、(B)成分及び(C)成分の添加効果の点から、%Cが好ましくは0〜3、より好ましくは0.5〜2、%Cが好ましくは70〜97、より好ましくは75〜95、さらに好ましくは75〜85である基油を必須として含有させることが望ましい。なお、本発明において%C、%C及び%Cとは、それぞれASTM D 3238−85に準拠した方法により求められる、芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率、及びナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率を示す。ただし、分析結果が上記方法の適用範囲外となることもありうるが、本発明における%C、%C及び%Cは、上記試験法により算出された数値を意味するものとする。
【0020】
また、(A)成分は、(C)成分の添加効果をより高めることができる点で、アニリン点が95℃以上の基油から選ばれることが好ましい。これらの中でも、アニリン点が100℃以上、より好ましくは110℃以上の基油を必須として含有させることが望ましい。なお、本発明においてアニリン点とは、JIS K 2256−1985に準拠して測定されたアニリン点を意味する。
【0021】
また、(A)成分は、粘度指数が80以上の基油から選ばれることが好ましい。粘度指数を80以上とすることによって、低温から高温にわたり良好な粘度特性を示す潤滑油組成物を得ることができる。これらの中でも、粘度指数が100以上、より好ましくは110以上、特に好ましくは120以上の基油を必須として含有させることが望ましい。
【0022】
また、(A)成分中の硫黄分(S)は、組成物の安定性をより高めることができる点で好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.005質量%以下である。
【0023】
本発明の潤滑油組成物は、(A)成分を含有するものであり、(A)成分として規定する基油から選ばれる1種又は2種以上を合計量で100質量%潤滑油基油として用いても良いが、本発明の効果を著しく阻害しない限り、又は本発明の効果をより優れたものにするために、(A)成分以外の潤滑油基油を含有させることができる。その場合、(A)成分の含有量は、(A)成分と(A)成分以外の潤滑油基油との混合基油全量対し、50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。特に、(A)成分である前記水素化分解鉱油及び/又はワックス異性化イソパラフィン系基油の含有量を、混合基油全量に対し、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上使用することが望ましい。
【0024】
(A)成分以外の潤滑油基油としては、流動点が−35℃未満の潤滑油基油、流動点が−10℃を超える潤滑油基油、100℃における動粘度が1.5mm/s未満の潤滑油基油、100℃における動粘度が6mm/sを超える潤滑油基油が挙げられる。また、(A)成分以外の合成系潤滑油基油や天然油脂なども好ましい例として挙げられる。(A)成分以外の潤滑油基油を配合する場合、これらの中では、流動点が−35℃未満の潤滑油基油や(A)成分以外の合成系潤滑油基油を配合することが好ましい。
【0025】
合成系潤滑油基油を例示すれば、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。
【0026】
好ましい合成系潤滑油基油としてはポリα−オレフィンが挙げられる。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びその水素化物が挙げられる。
【0027】
ポリα−オレフィンの製法については特に制限はないが、例えば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素と水、アルコール(例えば、エタノール、プロパノール又はブタノール)、カルボン酸、又はエステル(例えば、酢酸エチル又はプロピオン酸エチル)との錯体を含むフリーデル・クラフツ触媒のような重合触媒の存在下でのα−オレフィンの重合等が挙げられる。
【0028】
<B:ポリ(メタ)アクリレート系添加剤>
本発明の潤滑油組成物における(B)成分はポリ(メタ)アクリレート系添加剤である。(B)成分は、通常、重量平均分子量が1万〜100万のものが使用でき、粘度温度特性、特に低温粘度特性を改善しやすい点で、好ましくは5万〜50万、より好ましくは5万〜30万である。なお、ここでいう重量平均分子量は、ウォーターズ社製150−C ALC/GPC装置に東ソー社製のGMHHR−M(7.8mmID×30cm)のカラムを2本直列に使用し、溶媒としてはテトラヒドロフラン、温度23℃、流速1mL/分、試料濃度1質量%、試料注入量75μL、検出器示差屈折率計(RI)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。ただし、同様の結果が得られるのであれば、同様の装置を用いた類似の測定方法を用いても良い。
【0029】
本発明における(B)成分としては、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレート系添加剤であることが好ましい。
【0030】
【化1】

【0031】
一般式(1)において、Rは水素又はメチル基、好ましくはメチル基、Rは炭素数1〜30の炭化水素基又は−(R)a−Eで表される基を示し、ここでRは炭素数1〜30のアルキレン基、Eは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示し、aは0又は1の整数を示す。
【0032】
で示す炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基、オクタコシル基等(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい。)等が例示できる。
【0033】
Rで示す炭素数1〜30のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等(これらアルキレン基は直鎖状でも分枝状でもよい。)等が例示できる。
【0034】
また、Eがアミン残基である場合、その具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられ、複素環残基である場合には、その具体例として、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、ピラジノ基等が挙げられる。
【0035】
一般式(1)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(2)で示されるモノマーの1種又は2種以上を重合又は共重合させて得られるポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
【化2】

(一般式(2)中におけるR及びRは、一般式(1)のR及びRと同じである。) 一般式(2)で示されるモノマーの例としては、具体的には、下記(B1)〜(B5)に示されるモノマーが挙げられる。
【0037】
(B1)炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリレート:
(B1)成分としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−又はi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、i−又はsec−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
(B2)炭素数5〜15のアルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリレート:
(B2)成分としては、具体的には、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート(これらは直鎖でも分枝状であってもよい。);オクテニル(メタ)アクリレート、ノネニル(メタ)アクリレート、デセニル(メタ)アクリレート、ウンデセニル(メタ)アクリレート、ドデセニル(メタ)アクリレート、トリデセニル(メタ)アクリレート、テトラデセニル(メタ)アクリレート、ペンタデセニル(メタ)アクリレート(これらは直鎖でも分枝状であってもよい。)等が挙げられ、炭素数12〜15の直鎖アルキル基を主成分として有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0039】
(B3)炭素数16〜30の直鎖アルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリレート:
(B3)成分としては、好ましくは炭素数16〜20の直鎖アルキル基、より好ましくは炭素数16又は18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、具体的には、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−イコシル(メタ)アクリレート、n−ドコシル(メタ)アクリレート、n−テトラコシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサコシル(メタ)アクリレート、n−オクタコシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特に、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0040】
(B4)炭素数16〜30の分枝アルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリレート:
(B4)成分としては、好ましくは炭素数20〜28の分枝アルキル基、より好ましくは炭素数22〜26分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、具体的には、分枝ヘキサデシル(メタ)アクリレート、分枝オクタデシル(メタ)アクリレート、分枝イコシル(メタ)アクリレート、分枝ドコシル(メタ)アクリレート、分枝テトラコシル(メタ)アクリレート、分枝ヘキサコシル(メタ)アクリレート、分枝オクタコシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましくは−C−C(R)Rで表されるような、炭素数16〜30、好ましくは炭素数20〜28、より好ましくは炭素数22〜26の分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。ここで、R及びRは、Rの炭素数が16〜30となる限りにおいて何ら制限はないが、Rとしては、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは炭素数10〜12の直鎖アルキル基、Rとしては、好ましくは炭素数10〜16、より好ましくは炭素数14〜16の直鎖アルキル基である。(B4)成分としては、より具体的には、2−デシル−テトラデシル(メタ)アクリレート、2−ドデシル−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−デシル−テトラデシルオキシエチル(メタ)アクリレート等の炭素数20〜30の分枝状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
(B5)極性基含有モノマー:
(B5)成分としては、アミド基含有ビニルモノマー、ニトロ基含有モノマー、1〜3級アミノ基含有ビニルモノマー、含窒素複素環含有ビニルモノマー及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、燐酸塩、低級アルキル(炭素数1〜8)モノカルボン酸塩、第4級アンモニウム塩基含有ビニルモノマー、酸素及び窒素を含有する両性ビニルモノマー、ニトリル基含有モノマー、脂肪族炭化水素系ビニルモノマー、脂環式炭化水素系ビニルモノマー、芳香族炭化水素系ビニルモノマー、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類、エポキシ基含有ビニルモノマー、ハロゲン元素含有ビニルモノマー、不飽和ポリカルボン酸のエステル、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー、ポリオキシアルキレン鎖含有ビニルモノマー、アニオン性基、燐酸基、スルホン酸基、又は硫酸エステル基含有イオン性基含有ビニルモノマー含有ビニルモノマー及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アミン塩若しくはアンモニウム塩等が挙げられる。(B5)成分としては、具体的には、これらのうち、4−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、2−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、2−ビニル−5−メチルピリジン、N−ビニルピロリドン等の窒素含有モノマーが好ましい例として挙げられる。
【0042】
本発明における(B)成分としては、上記(B1)〜(B5)から選ばれるモノマーの1種又は2種以上を重合又は共重合させて得られるポリ(メタ)アクリレート系化合物、あるいは該ポリ(メタ)アクリレート系化合物から選ばれる1種又は2種以上の混合物であり、より好ましい具体例としては、
1)(B1)及び(B2)の共重合体である非分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
2)(B2)及び(B3)の共重合体である非分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
3)(B1)、(B2)及び(B3)の共重合体である非分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
4)(B1)、(B2)、(B3)及び(B4)の共重合体である非分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
5)(B1)、(B2)及び(B5)の共重合体である分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
6)(B1)、(B2)、(B3)及び(B5)の共重合体である分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
7)(B1)、(B2)、(B3)、(B4)及び(B5)の共重合体である分散型ポリ(メタ)アクリレート又はその水素化物、
が挙げられ、上記1)〜4)の非分散型ポリ(メタ)アクリレート系化合物であることがより好ましく、上記2)〜4)の非分散型ポリ(メタ)アクリレート系化合物であることがさらに好ましく、上記3)の非分散型ポリ(メタ)アクリレート系化合物であることが特に好ましい。
【0043】
本発明の潤滑油組成物における(B)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤は、通常、作業上の取り扱いや潤滑油基油への溶解性を考慮し、希釈剤により10〜90質量%程度に希釈された状態で供されるため、その含有量は、組成物全量基準で、希釈剤込みの含有量として、0.1〜15質量%、好ましくは2〜12質量%、特に好ましくは3〜8質量%である。(B)成分の含有量が上記範囲を超える場合、配合量に見合う低温粘度特性の改善が期待できないだけでなく、せん断安定性に劣るため好ましくない。
【0044】
なお、(B)成分のうち一般に粘度指数向上剤として市販されているポリ(メタ)アクリレート系添加剤を使用する場合、その含有量は、組成物全量基準で、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは2〜12質量%、特に好ましくは3〜8質量%であり、特に低温から高温における粘度温度特性を改善するために有効である。これらの中では(B1)を構成単位として含むポリ(メタ)アクリレート系添加剤が好ましい。
【0045】
また、(B)成分のうち一般に流動点降下剤として市販されているポリ(メタ)アクリレート系添加剤を使用する場合、その含有量は、組成物全量基準で、好ましくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.2〜1質量%であり、流動点やBF粘度などの低温粘度特性を改善するとともに本発明の効果を高めるために有効である。これらの中では、(B1)を構成単位として含んでいても、含んでいなくても良いが、(B1)を構成単位として含むものがより好ましい。
【0046】
<C:低温流動性向上剤>
本発明における(C)低温流動性向上剤としては、10℃以下で析出するn−パラフィンを主とするワックスの結晶構造を改質する性質を有する公知の低温流動性向上剤が挙げられ、例えば、軽油やA重油等のいわゆる中間留分燃料の低温流動性を改善するために使用される公知の低温流動性向上剤が例示できる。本発明における(C)低温流動性向上剤としては、その種類は特に限定されるものではないが、例えば、以下のものが例示できる。
(C1)不飽和エステルを含むモノマーの(共)重合体
(C2)ポリアルキレングリコールのカルボン酸エステル
(C3)ヒドロカルビルアミン、該アミンとカルボン酸との反応生成物
(C4)フェノール樹脂
【0047】
上記(C1)における不飽和エステルとしては、具体的には、例えば、酢酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の炭素数1〜30のカルボン酸のビニルエステル;アクリル酸アルキルエステル、メタアクリル酸アルキルエステル等の炭素数3〜30の不飽和一塩基酸のアルキルエステル;フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等の炭素数4〜30の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル等が挙げられる。ここでエステルを構成するアルキル基としては、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜30のアルキル基、好ましくは炭素数4〜18のアルキル基(直鎖でも分枝状でも良い。)が挙げられ、直鎖アルキル基であることが特に好ましい。
【0048】
上記(C1)成分としては、不飽和エステルから選ばれる1種又は2種以上の(共)重合体の他に、不飽和エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーと、不飽和エステル以外のモノマーから選ばれる1種又は2種以上を共重合体させたものも含まれる。不飽和エステル以外のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン等のαオレフィン及びこれらの(共)重合体からなる炭素数2〜30のαオレフィン等が挙げられる。
【0049】
不飽和エステルから選ばれる1種又は2種以上の(共)重合体としては、酢酸ビニル重合体、(メタ)アクリレート(共)重合体、ジn−ドデシル及び/又はジn−テトラデシルフマレート(共)重合体、ジn−ドデシル及び/又はジn−テトラデシルフマレートと酢酸ビニルとの共重合体等が挙げられる。また、不飽和エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーと不飽和エステル以外のモノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーとの共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体のマレイン酸ジ(2−エチルヘキシル)付加物、エチレン−酢酸ビニル−ジn−ドデシル及び/又はジn−テトラデシルフマレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、炭素数2〜24のαオレフィン−マレイン酸ジブチル共重合体等が挙げられる。
【0050】
本発明の(C1)成分のその数平均分子量に格別な限定はないが、一般的には、数平均分子量が500〜30000、好ましくは1000〜7000、より好ましくは1500〜5500、最も好ましくは2500〜5500の共重合体が使用される。ここでいう数平均分子量の値は、ベーパーフェーズオスモメトリー(蒸気圧浸透圧法)により求められた値である。なお、(C1)成分は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても差し支えない。
【0051】
本発明における(C1)成分としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体系低温流動性向上剤であることが好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる低温流動性向上剤の他、上記に挙げたように、必要に応じてエチレンと酢酸ビニルと、その他のモノマーを共重合させたり、エチレン−酢酸ビニル共重合体にその他のモノマーを付加させたりしたものであっても良く、また、上記に挙げた(C1)成分から選ばれる1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0052】
上記(C2)成分は、ポリアルキレングリコールとカルボン酸とのエステルである。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の炭素数2〜4のポリアルキレングリコールを例示することができる。その数平均分子量は、特に制限はないが、例えば100〜10000、好ましくは200〜1000である。また、カルボン酸としては、例えば炭素数4〜30、好ましくは炭素数12〜24のカルボン酸が挙げられ、例えば、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、デセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オレイン酸、エイコセン酸等が挙げられる。本発明においてはポリエチレングリコールのベヘン酸エステル等のポリエチレングリコールと炭素数12〜24のカルボン酸とのエステルが特に好ましい。
【0053】
上記(C3)成分は、ヒドロカルビルアミン、及び該アミンとカルボン酸又はその無水物との反応生成物である。ヒドロカルビルアミンとしては、例えば、炭素数1〜30の脂肪族又は芳香族アミン化合物が挙げられ、好ましくは炭素数6〜30の脂肪族又は芳香族モノアミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等のポリアミン等が挙げられる。脂肪族アミンとしては、1級、2級及び3級アミンが挙げられるが、2級アミンであることが好ましい。
【0054】
また、カルボン酸又はその無水物としては、炭素数1〜30の脂肪族又は芳香族モノ−、ジ−、トリ−又はテトラカルボン酸又はそれらの無水物等が挙げられ、コハク酸、マレイン酸、フタル酸又はそれらの無水物、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸のようなポリカルボン酸類が好ましい。
【0055】
ヒドロカルビルアミンとカルボン酸又はその無水物との反応生成物としては、アミン塩、アンモニウム塩、アミド等の、イオン性基又は極性基を有する油溶性の極性窒素化合物ということができ、具体的には、例えば、アルキル又はアルケニルコハク酸アミド;脂肪族アミンとアルキル又はアルケニルスピロビスラクトンとの反応生成物;脂肪族アミンと(無水)フタル酸との反応生成物;脂肪族アミンとエチレンジアミン四酢酸との反応生成物等が挙げられる。ここで、脂肪族アミンは、2級アミンが好ましい。
【0056】
アルキル又はアルケニルコハク酸アミドとしては、炭素数4〜30のアルキル基又はアルケニル基を2個有する2級アミンと炭素数4〜30アルキル又はアルケニル基を有するコハク酸との反応で一般に製造されるモノアミド又はジアミドであることが好ましく、その中でも下記の一般式(3)で表されるモノアミドが好ましい。
【0057】
【化3】

【0058】
ただし、Rは炭素数4〜30のアルキル基又はアルケニル基を示し、R及びRは個別に炭素数4〜30のアルキル基又はアルケニル基を示す。上記式(3)において、アルキル基又はアルケニル基Rは直鎖状のものでも、分岐鎖状のものでもよい。この中でも、炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数12〜18のアルキル基又はアルケニル基がより好ましく、アルケニル基であることが特に好ましい。上記式(3)において、アルキル基又はアルケニル基R及びRは、直鎖状のものでも分岐鎖状のものでもよく、それらのなかでも、R及びRは炭素数14〜20のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。
【0059】
なお、ここでいう極性窒素化合物としては、上記に挙げたものあるいは、その他のものとして例えば特開2002−167586号公報や、欧州特許公開第0798364号公報、WO95/33805号公報等に中間留分燃料用の潤滑性向上剤として記載されており、同様に使用することができる。
【0060】
上記(C4)成分はフェノール樹脂である。フェノール樹脂としては、特に制限はないが、フェノール化合物とアルデヒドとの共重合体が挙げられ、より具体的には、ノニルフェノール等の炭素数1〜30のアルキル基を有するアルキルフェノールとホルムアルデヒドの共重合体が例示できる。
【0061】
本発明における(C)成分としては、汎用性や低温特性改善効果の点から、(C1)不飽和エステルを含むモノマーの(共)重合体、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体系低温流動性向上剤を好ましく使用することができ、(C1)に加え(C2)〜(C4)成分から選ばれる1種又は2種以上を併用することがさらに好ましい。(C)低温流動性向上剤を添加する場合の添加量は、組成物全量基準で、好ましくは0.005〜0.5質量%であり、より好ましくは0.01〜0.2質量%、特に好ましくは0.02〜0.15質量%である。なお、低温流動性向上剤と称して市販されている商品は、作業時の取り扱い性や油溶性向上のために、低温流動性に寄与する有効成分が適当な溶剤で希釈されていることがあるが、こうした市販品を本発明の潤滑油組成物に添加する場合にあたっては、上記の添加量は、希釈剤を含む添加量を意味する。
【0062】
本発明は上述したように、(A)特定の潤滑油基油と、(B)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤と、(C)低温流動性向上剤とを含む潤滑油組成物であるが、その性能をさらに向上させる目的で、又は潤滑油組成物、特にトラクタ、変速機の共通潤滑油として要求される各種性能を付与するために、必要に応じて、(B)成分以外の粘度指数向上剤、極圧剤、分散剤、金属系清浄剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、消泡剤、着色剤等の各種添加剤を単独で又は数種類組み合わせて配合しても良い。
【0063】
粘度指数向上剤としては、具体的には、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物に粘度指数向上剤を配合する場合、その配合量は、通常、組成物全量基準で0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0064】
極圧剤としては、硫化油脂類、硫化オレフィン類、ジヒドロカルビルポリスルフィド類、ジチオカーバメート類、チアジアゾール類、及びベンゾチアゾール類等の硫黄系極圧剤、(亜)リン酸、(亜)リン酸エステル、これらの誘導体、これらのアミン塩及びこれらの金属塩等のリン系極圧剤、チオ(亜)リン酸、チオ(亜)リン酸エステル、これらの誘導体、これらのアミン塩及びこれらの金属塩(ジチオリン酸亜鉛等)等のリン−硫黄系極圧剤等が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物に極圧剤を配合する場合、その配合量は、通常、組成物全量基準で0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0065】
分散剤としては、潤滑油用の分散剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、炭素数40〜400の炭化水素基を有する、コハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン、及び/又はその誘導体(ホウ素化合物誘導体等)等の無灰分散剤を例示することができる。
本発明の潤滑油組成物に分散剤を配合する場合、その配合量は、通常、組成物全量基準で0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0066】
金属系清浄剤としては、潤滑油用の金属系清浄剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、塩基価が0〜500mgKOH/gのアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート等の金属系清浄剤が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物に金属系清浄剤を配合する場合、その配合量は、通常、組成物全量基準で0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0067】
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有するアミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等が好ましく用いられる。
本発明においては、上記摩擦調整剤の中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、組成物全量基準で0.01〜5質量%、好ましくは0.03〜3質量%である。
【0068】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビスフェノール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛等のジアルキルジチオリン酸亜鉛類、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)あるいは(3−メチル−5−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)と1価又は多価アルコール、例えばメタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等とのエステル等が挙げられる。
これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%であるのが望ましい。
【0069】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0070】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0071】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0072】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0073】
消泡剤としては、潤滑油用の消泡剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で配合することができる。
【0074】
シール膨潤剤としては、潤滑油用のシール膨潤剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、エステル系、硫黄系、芳香族系等のシール膨潤剤が挙げられる。
【0075】
着色剤としては、通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、また任意の量を配合することができるが、通常その配合量は、組成物全量基準で0.001〜1.0質量%である。
【0076】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜2質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%、シール膨潤剤では0.01〜5質量%、の範囲で通常選ばれる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0078】
(比較例1、実施例1〜4)
表1に示す組成の、(C)成分を配合しない従来の潤滑油組成物(比較例1)及び、本発明の規定を満たす潤滑油組成物(実施例1〜4)をそれぞれ調製した。得られた組成物について、下記に示す条件によって低温フィルタビリティ試験を実施し、その結果を表1に併記した。
【0079】
[低温フィルタビリティ試験]
試験装置:JIS K 2888「軽油の目詰まり点試験法」で規定される装置及びろ過器、直径12.5mm、目開き20〜30μmのオイルフィルターを用い、200mlの試料を当該装置にセットした。試料温度を25℃で30分保持後、5℃/hの冷却速度で−30℃まで冷却し、10時間静置後、吸引圧750mmHgで吸引ろ過を開始した。供試油の吸引量が20mlとなるまでの時間(秒)をろ過時間とした。
【0080】
【表1】

【0081】
表1から明らかな通り、比較例1の組成物は、−40℃におけるブルックフィールド粘度が20000mPa・s以下と優れているにもかかわらず、低温フィルタビリティが悪い。それに対し、(C)成分を含有し、本発明の規定を満たす組成物(実施例1〜4)は、低温フィルタビリティが格段に向上することがわかる。特に、低粘度かつ流動点が−32.5℃であり、低温特性に優れているはずの基油3を配合せずに、基油1(流動点が−22.5℃)を主成分として用いた場合(実施例3)、−40℃におけるブルックフィールド粘度が20000mPa・s近くまで悪化するものの、低温フィルタビリティは格段に優れることがわかる。
【0082】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う潤滑油組成物もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)100℃における動粘度が1.5〜6mm/s、流動点が−35℃〜−10℃の基油から選ばれる1種又は2種以上の潤滑油基油と、(B)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤と、(C)低温流動性向上剤と含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
前記(C)成分が不飽和エステルを含むモノマーの(共)共重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2006−274209(P2006−274209A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100042(P2005−100042)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】