説明

潤滑油組成物

【課題】高温の過酷な環境下で運転されるガスタービン発電及びコンバインドサイクル発電のタービン軸受などに使用した場合であっても、十分に長い酸化寿命を有する潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】鉱油及び/または合成油の基油に、下記の式1で示されるフェノール系酸化防止剤と、アミン系酸化防止剤を含有させることにより、高い酸化安定性を有し、粘度の上昇も少なく省エネルギー性にも優れた優良な潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の発電設備では、発電効率を高めエネルギーの有効活用のため、液化天然ガス(LNG)等高温の燃焼ガスを用いるガスタービンや、ガスタービンと蒸気タービンとを組み合わせたコンバインドサイクル発電設備などが多くなってきている。この発電設備の場合、燃焼ガスの高温化に伴い使用するタービン油への熱負荷が大幅に増加している。
タービン油は出来るだけ長期間に亘って交換することなく使用され、また高温の過酷な条件下で使用されるところから、優れた耐熱・酸化安定性が求められている。
【0003】
こうしたことから、従来も、鉱油又は合成油に2,6−ジターシャリーブチル−4−エチルフェノール(DBPC)を配合したガスタービン油(特許文献1)、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、フォスファイト、アルキルコハク酸誘導体及びベンゾトリアゾールかその誘導体を配合したガスタービン油(特許文献2)などが提案されているが、こうしたものでも、未だ満足な効果を得られないでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−42468号公報
【特許文献2】特開平7−258677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高温の過酷な環境下で運転されるガスタービン発電、コンバインドサイクル発電のタービン軸受などに使用した場合であっても、十分に長い酸化寿命を示す酸化安定性を有し、粘度の上昇も少なく省エネルギー性にも優れた優良な潤滑油組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、鉱油及び/または合成油の基油に、下記の式1で示されるフェノール系酸化防止剤と、アミン系酸化防止剤を含有させることによって、高い酸化安定性を有し、粘度の上昇も少なく省エネルギー性にも優れた優良な潤滑油組成物を提供するものである。
【化1】

上記式1中のR5及びR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基または炭素数3〜8の環状アルキル基を示し、R7は炭素数1〜8のアルキレン基を示している。
【0007】
上記式1のフェノール系酸化防止剤として、特に下記の式2で示されるものが好適に用いることができる。
【化2】

また、上記のアミン系酸化防止剤としては、ジフェニルアミン化合物、フェニルナフチルアミン化合物のいずれか又はこれを組み合わせて用いると好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の潤滑油組成物によれば、高温の過酷な環境下で運転されるガスタービン発電、コンバインドサイクル発電のタービン軸受などに使用した場合であっても、潤滑油として十分に長い酸化寿命を示し、粘度の上昇も少なく、省エネルギー性に優れている。従って、本発明の潤滑油組成物は、ガスタービン発電及びコンバインドサイクル発電等タービン軸受装置のメンテナンスインターバル延長の点でも非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、化合物又は官能基が直鎖状及び分岐状の構造の双方を取り得る場合、特に断らない限り当該化合物には直鎖状のものと分岐状のものとの双方が含まれる。
【0010】
本潤滑油組成物の基油には、高度精製基油と呼ばれる鉱油、合成油、これらの混合油を使用することができ、特に、API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ1、グループ2、グループ3、グループ4などに属する基油を、単独または混合物として使用することができる。ここで使用する基油は、硫黄元素分が700ppm未満、好ましくは500ppm未満が良い。また密度は0.8〜0.9が良い。アロマ分は5%以下、好ましくは3%以下が良い。
【0011】
グループ1基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、溶剤精製、水素化精製、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られるパラフィン系鉱油がある。粘度指数は80〜120、好ましくは95〜110が良い。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。また全硫黄分は700ppm未満、好ましくは500ppm未満が良い。全窒素分も50ppm未満、好ましくは25ppm未満が良い。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは90〜120℃のものを使用するのが良い。
【0012】
グループ2基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油がある。ガルフ社法などの水素化精製法により精製されたグループ2基油は、全イオウ分が10ppm未満、アロマ分が5%以下であり、本発明に好適である。これらの基油の粘度は特に制限されないが、粘度指数は80〜120、好ましくは100〜120が良い。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。また全硫黄分は300ppm未満、好ましくは200ppm未満、更に好ましくは10ppm未満が良い。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満が良い。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは100〜135℃のものを使用するのが良い。
【0013】
グループ3基油及びグループ2プラス基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油や、脱ろうプロセスにて生成されるワックスをイソパラフィンに変換・脱ろうするISODEWAXプロセスにより精製された基油や、モービルWAX異性化プロセスにより精製された基油も好適である。アメリカの広告審議を担当するNAD(National Advertising Division)の評決により「合成油」として表記が可能なものを含む。これらの基油の粘度は特に制限されないが、粘度指数は95〜145、好ましくは100〜140が良い。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。また全硫黄分は、0〜100ppm、好ましくは10ppm未満が良い。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満が良い。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは110〜135℃のものを使用するのが良い。
【0014】
天然ガスの液体燃料化技術のフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)は、原油から精製された鉱油基油と比較して、硫黄分や芳香族分が極めて低く、パラフィン構成比率が極めて高いため、酸化安定性に優れ、蒸発損失も非常に小さいため、本発明の基油として好適である。GTL基油の粘度性状は特に制限されないが、通例、粘度指数は130〜180、より好ましくは140〜175である。また40℃における動粘度は、2〜680mm/s、より好ましくは5〜120mm/sである。また通例全硫黄分は10ppm未満、全窒素分1ppm未満である。そのようなGTL基油商品の一例として、SHELL XHVI(登録商標)がある。
【0015】
また合成油としては、例えば、ポリオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、含フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等)、シリコーン油などが挙げられる。
【0016】
上記ポリオレフィンには、各種オレフィンの重合物又はこれらの水素化物が含まれる。オレフィンとしては任意のものが用いられるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン(1−ブテン、2−ブテン、イソブテン)、炭素数5以上のα−オレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンの製造にあたっては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。特にポリαオレフィン(PAO)と呼ばれているポリオレフィンが好適であり、これはグループ4基油である。これら合成基油の粘度は特に制限されないが、40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。
【0017】
本発明の潤滑油組成物における上記基油の含有量は特に制限されないが、潤滑油組成物の全量基準で60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
【0018】
上記基油の粘度は特に制限されないが、40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。
また、全硫黄分は、0〜100ppm、好ましくは0〜30ppmがよい。
全窒素分も0〜100ppm、好ましくは0〜30ppmがよい。
さらに、アニリン点は80〜150℃、好ましくは110〜135℃のものを使用するとよい。
【0019】
上記基油には、フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤を含有させて潤滑油組成物にする。このフェノール系酸化防止剤としては、下記の式1で示されるものを用いるとよい。
【化1】

【0020】
上記式1中のR5及びR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基または炭素数3〜8の環状アルキル基であり、R7は炭素数1〜8のアルキレン基である。
フェノール系酸化防止剤として上記式1で示されるものが使用されるが、こうしたものの中で、例えば、下記の式2に示される2,2’−メチレンビス(4−エチル,6−t−ブチルフェノール)が好ましいものとして使用することができる。
【化2】

【0021】
この潤滑油組成物においては、上記フェノール系酸化防止剤と共にアミン系酸化防止剤が使用される。こうしたアミン系酸化防止剤としては、ジフェニルアミン化合物やフェニルナフチルアミン化合物があり、これらを単独でまたは組み合わせて使用することができる。
上記ジフェニルアミン化合物としては、例えば、ジアルキルジフェニルアミン系化合物があり、フェニルナフチルアミン化合物としてはフェニル−α−ナフチルアミン系化合物が挙げられる。
【0022】
上記ジアルキルジフェニルアミン系化合物としては、下記式3で表されるジアルキルジフェニルアミンが好ましく用いられる。
【化3】

(式3中、R2及びR3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜16のアルキル基を示す。)
【0023】
このR2及びR3で表されるアルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。
これらの中でも、溶解性に優れる点から、R2及びR3としては、炭素数3〜16の分枝アルキル基が好ましく、炭素数3又は4のオレフィン又はそのオリゴマーから誘導される炭素数3〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレン等が挙げられるが、溶解性に優れる点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。
【0024】
また、R2又はR3としては、更に優れた溶解性が得られることから、それぞれプロピレンから誘導されるイソプロピル基、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらに好ましく、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基が最も好ましい。
【0025】
なお、R2又はR3の一方又は双方が水素原子である化合物を用いると、当該化合物自体の酸化によりスラッジが発生する恐れがある。また、アルキル基の炭素数が16を超える場合には、分子中に占める官能基の割合が小さくなり、高温での酸化防止性が低下する恐れがある。
【0026】
R2又はR3で示されるアルキル基は、それぞれフェニル基の任意の位置に結合可能であるが、アミノ基に対してp−位であることが好ましく、すなわち上記式3で表されるジアルキルジフェニルアミンはp,p’−ジアルキルジフェニルアミンであることが好ましい。
【0027】
上記の式3で表されるジアルキルジフェニルアミンは市販のものを用いても良く、また合成物を用いても良い。合成物は、フリーデル・クラフツ触媒を用い、ジフェニルアミンと炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物との反応、あるいはジフェニルアミンと炭素数2〜16のオレフィン又は炭素数2〜16のオレフィン又はこれらのオリゴマーとの反応を行うことにより容易に合成することができる。フリーデル・クラフツ触媒としては、フェニル−α−ナフチルアミン系化合物の説明において例示した金属ハロゲン化物や酸性触媒等が用いられる。
【0028】
上記フェニル−α−ナフチルアミン系化合物としては、下記式4で表されるフェニル−α−ナフチルアミンが好ましく用いられる。
【化4】

(上記式4中の、R1は水素原子又は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示す。)
【0029】
上記式4中のR1がアルキル基である場合、このアルキル基は炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状のものである。このようなアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、及びヘキサデシル等が挙げられる。なお、R1の炭素数が16を超える場合には、分子中に占める官能基の割合が小さくなり、酸化防止性能に悪影響を与える恐れがある。
【0030】
上記式4中のR1がアルキル基である場合、溶解性に優れる点から、R1は、炭素数8〜16の分枝アルキル基が好ましく、さらに炭素数3又は4のオレフィンのオリゴマーから誘導される炭素数8〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレンが挙げられるが、溶解性の点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。
更に優れた溶解性を得るためには、R1は、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらにより好ましく、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基が特に好ましい。
【0031】
また、R1がアルキル基である場合、フェニル基の任意の位置に結合可能であるがアミノ基に対してp−位であることが好ましい。更に、アミノ基はナフチル基の任意の位置に結合可能であるが、α位であることが好ましい。
【0032】
上記式4で表されるフェニル−α−ナフチルアミンとしては、市販のものを用いても良く、また合成物を用いても良い。合成物は、フリーデル・クラフツ触媒を用いて、フェニル−α−ナフチルアミンと炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物との反応、あるいはフェニル−α−ナフチルアミンと炭素数2〜16のオレフィン又は炭素数2〜16のオレフィンオリゴマーとの反応を行うことにより容易に合成することができる。フリーデル・クラフツ触媒としては、具体的には例えば、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化鉄等の金属ハロゲン化物;硫酸、リン酸、五酸化リン、フッ化ホウ素、酸性白土、活性白土等の酸性触媒等を用いることができる。
【0033】
上記式3、式4で表される芳香族アミン化合物は1種を単独で用いても良いし、構造の異なる2種以上の混合物を用いても良いが、高温での酸化防止性をより長期にわたって維持できることから、式1で表される2,2’−アルキレンビス(4−アルキル,6−t−ブチルフェノール)と式3で表されるジアルキルジフェニルアミンとを併用することが好ましい。
【0034】
また、本発明の潤滑油組成物中で、フェノール系酸化防止剤合計の含有量は特に制限されないが、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.005〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、更に好ましくは0.02〜1質量%である。また、アミン系酸化防止剤合計の含有量は特に制限されないが、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.005〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、更に好ましくは0.02〜1質量%である。
更に、フェノール系酸化防止剤:アミン系酸化防止剤の混合比は1:10〜10:1、好ましくは1:10〜1:1、より好ましくは1:8〜1:2である。合計の含有量が0.01質量%未満の場合には酸化安定性や熱安定性が不十分となる傾向にある。一方、10質量%を超える場合には、含有量に見合う酸化安定性の効果が得られず、更にはスラッジの増加の原因となることが多い。
【0035】
上記アミン系酸化防止剤としては、例えば、p,p’−ジオクチル−ジフェニルアミン(精工化学社製:ノンフレックスOD−3)、p,p’−ジ−α−メチルベンジル−ジフェニルアミン、N−p−ブチルフェニル−N−p’−オクチルフェニルアミンなどのジアルキル−ジフェニルアミン類、モノ−t−ブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン類、ジ(2,4−ジエチルフェニル)アミン、ジ(2−エチル−4−ノニルフェニル)アミンなどのビス(ジアルキルフェニル)アミン類、オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、N−t−ドデシルフェニル−1−ナフチルアミンなどのアルキルフェニル−1−ナフチルアミン類、1−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N−ヘキシルフェニル−2−ナフチルアミン、N−オクチルフェニル−2−ナフチルアミンなどのアリール−ナフチルアミン類、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン類、フェノチアジン(保土谷化学工業社製:Phenothiazine)、3,7−ジオクチルフェノチアジンなどのフェノチアジン類などが挙げられる。
【0036】
フェノール系酸化防止剤としては、上記式1で表示されるフェノール系酸化防止剤が用いられるが、これと共に他のフェノール系酸化防止剤を併用することができる。
こうしたフェノール系酸化防止剤には、例えば、2−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン(川口化学工業社製:アンテージDBH)、t−ブチルヒドロキノン(精工化学社製:TBH)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルキルフェノール類、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール(精工化学社製:メトキノン)、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エトキシフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルコキシフェノール類がある。
【0037】
また、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプト−オクチルアセテート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(エーピーアイコーポレーション社製:ヨシノックスSS)、n−ドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2’−エチルヘキシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシ−C7〜C9側鎖アルキルエステル(チバ・ジャパン社製:IrganoxL135)などのアルキル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート類、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾールなどがある。
さらに、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学工業社製:アンテージW−300)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)(シェル・ジャパン社製:Ionox220AH)、2,2’−メチレンビス(4−エチル,6−t−ブチルフェノール)(精工化学社製:ノンフレックスEBP)、2,2’−メチレンビス(4−メチル,6−t−ブチルフェノール)(精工化学社製:ノンフレックスMBP)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシルp−クレゾール)](精工化学社製:ノンフレックスCBP)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−(ジ−p−ヒドロキシフェニル)プロパン(シェル・ジャパン社製:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2,6−t−ブチルフェノール)、ヘキサメチレングリコールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ジャパン社製:IrganoxL109)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート](エーピーアイコーポレーション社製:トミノックス917)、2,2’−チオ−[ジエチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ジャパン社製:IrganoxL115)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(住友化学:スミライザーGA80)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学工業社製:アンテージRC)、2,2’−チオビス(4,6−ジ−t−ブチル−レゾルシン)などのビスフェノール類がある。
【0038】
そして、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・ジャパン社製:IrganoxL101)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(エーピーアイコーポレーション社製:ヨシノックス930)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(シェル・ジャパン社製:Ionox330)、ビス−[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(2”,4”−ジ−t−ブチル−3”−ヒドロキシフェニル)メチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノールなどのポリフェノール類、p−t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体、p−t−ブチルフェノールとアセトアルデヒドの縮合体などのフェノールアルデヒド縮合体などが挙げられる。
【0039】
本発明の潤滑油組成物には、更にリン化合物若しくは硫黄化合物を、またはこれらを併用して含有させることができる。こうしたリン化合物としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ジチオリン酸エステル、ジチオリン酸亜鉛、リン含有カルボン酸、リン含有カルボン酸エステル或いはそれらの誘導体などの少なくとも1種またはこれらの混合物が挙げられる。また、硫黄化合物としてはチオカーバメートなどが挙げられ、或いはその誘導体の少なくとも1種またはこれらの混合物が用いられる。
【0040】
リン酸エステルとしては、具体的には、例えば、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(iso−プロピルフェニル)ホスフェート、トリアリールホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及びキシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0041】
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリアルキルフェニルホスファイト、及びトリクレジルホスファイトなどが挙げられる。
【0042】
ジチオリン酸亜鉛としては、一般に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、アリールアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。
例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛のアルキル基は、炭素数3〜22の第1級又は第2級のアルキル基、炭素数3〜18のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛が使用される。
ジアルキルジチオリン酸亜鉛の具体例としては、ジプロピルジチオリン酸亜鉛、ジブチルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルジチオリン酸亜鉛、ジヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジイソペンチルジチオリン酸亜鉛、ジエチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジオクチルジチオリン酸亜鉛、ジノニルジチオリン酸亜鉛、ジデシルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルジチオリン酸亜鉛、ジプロピルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジプロピルメチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジノニルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルフェニルジチオリン酸亜鉛、等が挙げられる。
【0043】
ジチオリン酸エステル或いはその誘導体としては以下のものが挙げられる。
モノプロピルジチオホスフェート、モノブチルジチオホスフェート、モノペンチルジチオホスフェート、モノヘキシルジチオホスフェート、モノペプチルジチオホスフェート、モノオクチルジチオホスフェート、モノラウリルジチオホスフェート等のジチオリン酸
モノアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノフェニルジチオホスフェート、モノクレジルジチオホスフェート等のジチオリン酸モノ((アルキル)アリール)エステル;ジプロピルジチオホスフェート、ジブチルジチオホスフェート、ジペンチルジチオホスフェート、ジヘキシルジチオホスフェート、ジヘプチルジチオホスフェート、ジオクチルジチオホスフェート、ジラウリルジチオホスフェート等のジチオリン酸ジアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);ジフェニルジチオホスフェート、ジクレジルジチオホスフェート等のジチオリン酸ジ((アルキル)アリール)エステル;トリプロピルジチオホスフェート、トリブチルジチオホスフェート、トリペンチルジチオホスフェート、トリヘキシルジチオホスフェート、トリヘプチルジチオホスフェート、トリオクチルジチオホスフェート、トリラウリルジチオホスフェート等のジチオリン酸トリアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);トリフェニルジチオホスフェート、トリクレジルジチオホスフェート等のジチオリン酸トリ((アルキル)アリール)エステルなどが例示できる。
【0044】
リン含有カルボン酸、同エステル等のリン含有カルボン酸化合物としては、同一分子中にカルボキシル基とリン原子の双方を含んでいればよく、その構造は特に制限されないが、通常、極圧性及び熱・酸化安定性の点から、ホスホリル化カルボン酸若しくはホスホリル化カルボン酸エステルが好ましい。ホスホリル化カルボン酸及びホスホリル化カルボン酸エステルとしては、例えば下記の式5で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【化5】

【0046】
上記式5中、R4及びR5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R6は炭素数1〜20のアルキレン基を示し、R7は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、X1、X2、X3及びX4は同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を示す。
上記式5中の、R4及びR5における炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0047】
上記ホスホリル化カルボン酸の中でも有用なβ−ジチオホスホリル化プロピオン酸は、下記の式6の構造を有するものである。
【化6】

【0048】
このβ−ジチオホスホリル化プロピオン酸としては、具体的に、3−(ジ−イソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチル−プロピオン酸などが挙げられる。
【0049】
本潤滑油組成物におけるリン含有カルボン酸化合物の含有量は、特に制限されるものではないが、潤滑油組成物中に約0.001〜1質量%、好ましくは0.002〜0.5質量%である。リン含有カルボン酸化合物の含有量が前記下限値未満では十分な潤滑性が得られない傾向にある。一方、前記上限値を超えて加えても含有量に見合う潤滑性向上効果が得られない傾向にあり、更には熱・酸化安定性や加水分解安定性が低下するおそれがある。
【0050】
上記のリン化合物の中でも、よりスラッジ抑制性等の諸性能に優れることから、リン酸エステル、亜リン酸エステルがより好ましく、トリアルキルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、モノクレジルジフェニルホスファイト、ジクレジルモノフェニルホスファイト等のトリアリールホスファイトが更により好ましい。
【0051】
上記リン化合物の含有量は特に制限されないが、潤滑油組成物中に、0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜4.5質量%、より好ましくは0.1〜4質量%、更に好ましくは0.5〜3.5質量%、一層好ましくは1〜3質量%である。リン化合物の含有量が0.01質量%未満の場合はリン化合物の含有によるスラッジ抑制向上効果が不十分となるおそれがあり、一方、5質量%を超えると熱・酸化安定性及び泡立ち性が低下するおそれがある。
【0052】
上記した硫黄化合物として用いられるジチオカーバメートとして、金属原子を含有しない無灰ジチオカーバメート化合物、或いは金属を含有するジチオカーバメート化合物が挙げられ、金属原子を含有しない無灰ジチオカーバメート化合物として式7で表されるものがある。
【化7】

【0053】
上記式7において、R11〜R14は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R15は炭素数1〜10のアルキレン基を示す。炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜30のアルキル基(具体的には、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,n−アミル基,イソアミル基,n−ヘキシル基,1−メチルペンチル基,4−メチルペンチル基,1,3−ジメチルブチル基,n−オクチル基,2−エチルヘキシル基,2,2,4−トリメチルペンチル基,2−オクチル基,n−デシル基,イソデシル基,ラウリル基,トリデシル基,パルミリスチル基,パルミチル基,ステアリル基,イソステアリル基など)、炭素数6〜30のシクロアルキル基(具体的には、シクロヘキシル基など)、あるいはフェニル基や炭素数7〜30のアルキルアリール基(具体的には、p−アミルフェニル基,p−オクチルフェニル基,p−ノニルフェニル基,p−ドデシルフェニル基,p−ペンタデシルフェニル基など)が挙げられる。
【0054】
上記のR11〜R14は、好ましくはブチル基であり、R15は、好ましくはメチレン基である。また好ましい無灰ジチオカーバメート化合物としては、メチレンビスジエチルジチオカーバメート、メチレンビスジブチルジチオカーバメート、メチレンビスジアミルジチオカーバメート、メチレンビスジアリールジチオカーバメート、チオカーバメート誘導体等が挙げられ、特に好ましくはメチレンビスジブチルジチオカーバメートが挙げられる。
【0055】
また、上記した金属を含有するジチオカーバメート化合物としては、例えば、金属ジチオカーバメートが挙げられる。この金属ジチオカーバメートに使用する金属としては亜鉛若しくはモリブデンが有用である。
金属として亜鉛を用いた亜鉛ジチオカーバメートとしては、亜鉛ジアミルジチオカーバメート、亜鉛ジアリールジチオカーバメート、亜鉛オキシサルファイドジチオカーバメート、亜鉛サルファイドジチオカーバメート等が挙げられる。特に、亜鉛ジアミルジチオカーバメートが好適である。
【0056】
金属としてモリブデンを用いたモリブデンジチオカーバメートとしては、モリブデンジアミルジチオカーバメート、モリブデンジアリールジチオカーバメート、モリブデンオキシサルファイドジチオカーバメート、モリブデンサルファイドジチオカーバメート等が挙げられる。特に、モリブデンジアミルジチオカーバメートが好適である。
【0057】
これらのジチオカーバメートは、1種単独で用いても良いし、2種以上を複合的に用いても良く、無灰ジチオカーバメートおよび金属ジチオカーバメートの少なくともいずれか一方が配合される。このいずれか一方の配合量は、約0.01〜1.5質量%であり、好ましくは0.03〜1.0質量%、より好ましくは0.05〜0.7質量%である。
この場合、0.01質量%未満であると十分な抗酸化性能を得ることができないことが多く、1.5質量%を超えると他の性能に悪影響を及ぼすことがあり潤滑油組成物としての総合的性能において劣ることがある。
【0058】
本発明の潤滑油組成物には、更にその各種性能を高める目的で、公知の潤滑油添加剤の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。かかる添加剤としては、例えば、フェノール系、フェノチアジン系等の酸化防止剤;ポリアクリレート等のアクリレート系又はアルキルポリシロキサン等のシロキサン系などの消泡剤;ベンゾトリアゾール又はその誘導体等の金属不活性化剤;ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、オレフィンコポリマー、ポリスチレン等の流動点降下剤などが挙げられる。
これらの添加剤を用いる場合の含有量は任意であるが、組成物全量基準で、酸化防止剤の場合は0.1〜5質量%、消泡剤の場合は0.0005〜1質量%、金属不活性化剤の場合は0.005〜1質量%、その他の添加剤の場合はそれぞれ0.1〜15質量%が好ましい。
【0059】
本潤滑油組成物の粘度は特に制限されないが、40℃における動粘度の範囲は、好ましくは680mm/s以下、より好ましくは220mm/s以下であり、また、好ましくは2mm/s以上、より好ましくは8mm/s以上である。
100℃における動粘度の範囲は、好ましくは25mm/s以下、より好ましくは20mm/s以下、更に好ましくは15mm/s以下、特に好ましくは10mm/s以下であり、また、好ましくは1.0mm/s以上、より好ましくは1.5mm/s以上、更に好ましくは2mm/s以上、特に好ましくは2.5mm/s以上である。また、上記基油の粘度指数は特に制限されないが、好ましくは85以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは120以上である。
【0060】
本発明の潤滑油組成物の用途は特に制限されるものではないが、圧縮機及びガスタービン装置の潤滑油として特に好ましく使用される。タービン装置には、水力タービン、蒸気タービン、ガスタービン等があるが、本発明の潤滑油組成物は特にコンバインドサイクルタービン装置に用いた場合に優れた効果を発揮する。このようなタービン装置の出力数に特に制限はない。
【0061】
また、本発明の潤滑油組成物は、その優れた特性から、上記用途の他、油圧作動油、工業用ギヤ油、軸受油、圧縮機油、しゅう動面油、熱媒体油、真空ポンプ油等の用途においても好ましく使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0063】
[実施例1〜14、比較例1〜9]
実施例1〜14及び比較例1〜9の調製に当り、以下の基油及び添加剤を用意した。
基油:GrII
原油を常圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、水素化分解、溶剤脱ろうなど
の精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたグループ2のパラフィ
ン系鉱油(特性:100℃における動粘度;10.9mm/s、40℃における
動粘度;91.2mm/s、粘度指数;104、硫黄分含有量(硫黄元素換算
値);10ppm未満)
【0064】
添加剤A1: 4,4’−Methylene−bis(2,6−di−tert−
butylphenol)
添加剤A2: Di−tert−butyl−hydroxytoluene
添加剤A3: Octyl 3−(4−hydroxy−3,5−di−tert−
butylphenol)propionate
添加剤A4: Stearyl 3−(4−hydroxy−3,5−di−tert−butylphenyl)propionate
添加剤A5: 2,2’−Methylene−bis(4−ethyl−6−
tert−butylphenol)(式2の化合物)
添加剤B1: リン系添加剤のフォスファイトの一種で、Tris(2,4−di−
tert−butylphenyl)phosphite
添加剤B2: 硫黄系添加剤のジチオカーバメートの一種で、Methylene
bis(N,N−dibutyldithiocarbamate)
添加剤B3: リン含有カルボン酸系添加剤の一種で、3−(Diisobutoxy−thiophosphorylsulfanyl)−2−methyl−
propionic acid
添加剤C: アミン系酸化防止剤;Diphenylamineと2,4,4−
Trimethylpenteneの反応生成物
添加剤D: ベンゾトリアゾール系腐食防止剤;1−(N,N−Bis(2−ethylhexyl)aminomethyl)−ar−methyl benzotriazole
添加剤E: コハク酸誘導体;(Tetra−iso−propenyl)
succinic acidと1,3−Propanediolの反応生成物(JIS K2501法による酸価:160mgKOH/g)
【0065】
上記基油及び添加剤を用いて、表1〜5に示す組成を有する実施例1〜14、比較例1〜9の潤滑油組成物を調製した。
【0066】
(動粘度等の物性の測定)
上記実施例1〜14、比較例1〜9の各潤滑油組成物について、下記の物性を測定した。
1:色(ASTM色)(JIS K2580に基づく)
2:40℃の動粘度(JIS K2283に基づく)
3:100℃の動粘度(JIS K2283に基づく)
4:粘度指数(VI)(JIS K2283に基づく)
5:酸価(AN)(JIS K2501に基づく)
各測定結果を表1〜表5に示す。
【0067】
(試験)
実施例1〜14及び比較例1〜9の各潤滑油組成物を用いて、その性能を見るために以下の試験を行った。
【0068】
(修正RPVOT試験)
タービンメーカーGE社のガスタービン油規格GEK 107395aに規定された方法にて試験した。予めJIS K2514で標準化された方法にて測定した新油のRPVOT値で、下記試験条件で処理した油のRPVOT値を除し、RPVOT残存率とした。
・TOST試験ガラス容器に試験油を150g採取
・Nガス吹き込み:3L/hr
・試験温度:121℃
・試験時間:48hr
劣化油のRPVOT値が大きく、RPVOT残存率が100%に近いほど酸化防止剤の蒸発、消耗が少なく安定性が良好であることを意味する。
RPVOT残存率(%)=(処理油RPVOT値/新油RPVOT値)×100
評価基準:RPVOT残存率85%以上が合格
【0069】
(ISOT試験)
JIS K2514で標準化された試験方法に基づき、試験温度及び試験時間は以下の条件にて測定した。
・試験温度:175℃
・試験時間:72hr
評価基準:
1:40℃の動粘度における新油とISOT試験後の劣化油との変化率(%)・・・9%以下が良好
変化率(%)=〔(劣化油の動粘度−新油の動粘度)/(新油の動粘度)〕×100
2:酸価における新油からISOT試験後の劣化油への増加量・・・0.6mgKOH/g以下が良好
酸価増加量(mgKOH/g)=(劣化油の酸価)−(新油の酸価)
【0070】
(試験結果)
各試験結果を表1〜5に示す。
【0071】
(評価)
表1〜5に示した結果から明らかなように、実施例1〜14のものは、修正RPVOT残存率が88〜99%で良好であり、ISOT試験においても、40℃の動粘度における新油と試験後の劣化油との変化率(%)が1〜4%、酸価における新油から試験後の劣化油への増加量が0.2〜0.5mgKOH/gといずれも良好である。
比較例4では、ISOT試験で40℃の動粘度における新油と試験後の劣化油との変化率(%)が5%、酸価における新油から試験後の劣化油への増加量が0.4mgKOH/gと良好であるが、修正RPVOT残存率が61%であって不適格となっている。
比較例1〜3、5〜9のものは、修正RPVOT残存率91〜100%で実施例のものと差が見られないが、ISOT試験で40℃の動粘度における新油と試験後の劣化油との変化率(%)が10〜112%、酸価における新油から試験後の劣化油への増加量が1.2〜12.5mgKOH/gと劣っている。
上記の如く実施例のものは、いずれも高い修正RPVOT残存率及び十分に長い酸化寿命を有しており、ガスタービン油として好適なことが判る。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油及び/または合成油の基油に、下記の式1で示されるフェノール系酸化防止剤と、アミン系酸化防止剤を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【化1】

(式1中、R5及びR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基または炭素数3〜8の環状アルキル基を示し、R7は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。)
【請求項2】
上記フェノール系酸化防止剤が、下記の式2で示されるものである請求項1記載の潤滑油組成物。
【化2】

【請求項3】
上記アミン系酸化防止剤がジフェニルアミン化合物、フェニルナフチルアミン化合物のいずれか又はこれの組み合わせであることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
上記式1または式2に記載のフェノール系酸化防止剤と共に他のフェノール系酸化防止剤を併用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
更にリン化合物及び/または硫黄化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
上記リン化合物は、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ジチオリン酸エステル、ジチオリン酸亜鉛、リン含有カルボン酸、リン含有カルボン酸エステル或いはそれらの誘導体の少なくとも1つである請求項5に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
上記硫黄化合物は、ジチオカーバメートであって、金属原子を含有しない無灰ジチオカーバメート化合物及び/または金属を含有するジチオカーバメート化合物、又はそれらの誘導体である請求項5または6に記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2010−163611(P2010−163611A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284407(P2009−284407)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】