説明

潤滑油組成物

【課題】低粘度でありながら、十分な油膜厚さを維持できる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】潤滑油組成物は、基油に、ポリ(メタ)アクリレートを配合してなり、前記ポリ(メタ)アクリレートが、アミノ基およびアミド基のうち少なくともいずれか1種の極性基を有し、前記ポリ(メタ)アクリレートの質量平均分子量が9,000以上28,000以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模の二酸化炭素排出量問題と世界的なエネルギー需要の増大を背景とし、自動車の省燃費化に対する要求はますます高くなっている。その中で、自動車の部品である変速機にも従来に増して省燃費化への寄与が求められている。
例えば、エンジンや変速機の省燃費化手段の一つとして、潤滑油の低粘度化が挙げられる。すなわち、潤滑油をより低粘度化することにより、攪拌抵抗および摩擦抵抗が低減され、自動車の燃費の向上が可能となる。しかしながら、低粘度化された潤滑油は、油膜が薄くなり焼き付きの発生や、疲労寿命の低下等の問題を生じることがある。一方、油膜を厚くするには、基油粘度を高くすればよいが、基油粘度を高くしていくとエンジンや変速機の燃費が悪化してしまうので、基油粘度を高くするには限界がある。また、粘度指数向上剤の使用も考えられるが、粘度指数向上剤としてよく知られたポリメタクリレートなどを配合すると、EHL領域(弾性流体潤滑 EHL:Elastohydrodynamic Lubrication)において油膜厚さが薄くなるという問題もある。
そこで、低粘度の基油と高粘度の基油をブレンドすることにより疲労寿命を改善させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−113391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法でも、油膜厚さを維持することは容易ではなく、耐金属疲労性の改善効果も十分ではないため、さらなる改良が必要であった。
【0005】
本発明は、低粘度でありながら、十分な油膜厚さを維持できる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は以下のような潤滑油組成物を提供するものである。
(1)基油に、ポリ(メタ)アクリレートを配合してなる潤滑油組成物であって、前記ポリ(メタ)アクリレートが、アミノ基およびアミド基のうち少なくともいずれか1種の極性基を有し、前記ポリ(メタ)アクリレートの質量平均分子量が9,000以上28,000以下であることを特徴とする潤滑油組成物。
(2)上述の(1)に記載の潤滑油組成物において、前記ポリ(メタ)アクリレートの配合量が該組成物全量基準で3質量%以上10質量%以下であることを特徴とする潤滑油組成物。
(3)上述の(1)または(2)に記載の潤滑油組成物において、該組成物の100℃動粘度が5mm/s以上7.5mm/s以下であることを特徴とする潤滑油組成物。
(4)上述の(1)から(3)までのいずれか1つに記載の潤滑油組成物において、該組成物が変速機用であることを特徴とする潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の潤滑油組成物によれば、低粘度でありながら、十分な油膜厚さを維持できるので、例えば変速機用として優れている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の潤滑油組成物(以下、単に「本組成物」ともいう。)は、基油に、所定の極性基を有するポリ(メタ)アクリレートを配合してなるものである。以下、詳細に説明する。
【0009】
〔基油〕
本組成物に用いられる基油としては、特に制限はなく鉱油あるいは合成系基油のいずれでもよい。
鉱油としては、いわゆる高度精製鉱油が好ましく、例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油あるいはナフテン基系原油を常圧蒸留するか、常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油、あるいは精製後更に深脱ロウ処理することによって得られる深脱ろう油、更には水素化処理によって得られる水素化処理油などを挙げることができる。その際の精製法には特に制限はなく様々な方法が使用される。
合成系基油としては、例えば、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリ−α−オレフィン、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリカーボネート、およびポリオールエステルが挙げられる。
【0010】
〔ポリ(メタ)アクリレート〕
本組成物に用いられるポリ(メタ)アクリレートは、アミノ基およびアミド基のうち少なくともいずれか1種の極性基を有している。また、アミノ基やアミド基は1級、2級、および3級のいずれでもよい。
すなわち、本組成物に用いられるポリ(メタ)アクリレートは、上述の極性基を単独で有していてもよく、複数種類の官能基を有していてもよい。ただし、油膜厚さ向上の観点より、極性基としてはアミノ基が好ましい。
もちろん、本発明の効果を損なわない限り、このポリ(メタ)アクリレートが他の極性基や官能基を有していてもよい。
【0011】
また、上述のポリ(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、発明の効果の観点より9,000以上28,000以下であり、好ましくは、9,500以上15,000以下である。ポリ(メタ)アクリレートの質量平均分子量が9,000未満であると、潤滑油組成物として用いた場合に、油膜厚さが薄くなり摩耗量が増加したり疲労寿命が低下する可能性がある。一方、ポリ(メタ)アクリレートの質量平均分子量が28,000を超えても同様の問題が生ずるおそれがある。このようなポリ(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、通常のGPC法を用いてポリスチレン換算により求めることができる。
【0012】
ここで、極性基を有するポリ(メタ)アクリレートは、例えば、特開2004−124080号公報や特開2009−173921号公報に開示された方法で製造することができる。
具体的には、極性基としてアミノ基あるいはアミド基を含有する構成単位(a)とアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b)とを構成単位とする共重合体(A)を製造すればよい。
前記した構成単位(b)は、炭素数1から4までのアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b1)、炭素数8から18までのアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b2)、炭素数18から24までの直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b3)及び炭素数16から36までの分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b4)からなる群から選ばれる1種以上の構成単位であることが好ましい。
【0013】
ここで、アミノ基を含有する構成単位(a−1)を共重合体(A)に導入する方法としては、次の2つの方法が挙げられる。
(1)アミノ基含有単量体を共重合する方法。
(2)アミノ基に変換しうる官能基を有する前駆体共重合体中の該官能基をアミノ基に変換する方法。
【0014】
前記(1)の方法におけるアミノ基含有単量体としては、少なくとも1個の1級、2級または3級アミノ基を含有する以下の各単量体が挙げられる。
アミノ基含有脂肪族単量体としては、モノまたはジアルケニルアミンが挙げられる(例えば(ジ)(メタ)アリルアミンおよび(イソ)クロチルアミン等)。
アミノ基含有アクリル系単量体としては、アミノ基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、例えば、(モノ−C1−4アルキル)アミノC2−6アルキル(メタ)アクリレート(アミノエチル、アミノプロピル、メチルアミノエチル、エチルアミノエチル、ブチルアミノエチルまたはメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート)、ジ−C1−4アルキルアミノC2−6アルキル(メタ)アクリレート(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)が例示される。また、これらの(メタ)アクリレートに対応するアミノ基含有(メタ)アクリルアミド等も挙げられる。
アミノ基含有複素環式単量体としては、アミノ基含有複素環式アクリル系単量体が挙げられ、具体的には、モルホリノ−C2−4アルキル(メタ)アクリレート(モルホリノエチル(メタ)アクリレート等)が例示される。また、ビニル置換複素環式アミンとして、ビニルピリジン(4−または2−ビニルピリジン等)やN−ビニルピロール、N−ビニルピロリジン等が挙げられる。
アミノ基含有芳香族単量体としては、アミノスチレン類(アミノスチレン等)等が挙げられる。
【0015】
前記した(2)の方法は、アミノ基が1級アミノ基である場合に特に好ましく用いられる方法である。アミノ基が1級アミノ基である場合の具体例としては、官能基としてケチミン基を有する共重合体をアミノ基含有共重合体に変換する方法が挙げられる。
官能基としてケチミン基を有する共重合体は、通常はケチミン基含有単量体を共重合成分の1つとして共重合することにより得られる。ケチミン基含有単量体は、比較的疎水性があり、かつ、共重合工程でも安定性が高く、副反応が起こりにくいので好ましく用いられる。ケチミン含有単量体を使用した場合は、得られた共重合体をアルカリ性または中性で加水分解することにより、ケチミン基を1級アミノ基に変換することができる。
【0016】
アミド基を含有する構成単位(a−2)を共重合体(A)に導入する方法としては、例えば、単量体として各種の(メタ)アクリルアミド類を用いればよい。
非置換およびアルキル置換アクリルアミドとしては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−モノ−C1−4アルキルおよびN,N−ジ−C1−4アルキル−置換(メタ)アクリルアミド((ジ)メチル、(ジ)エチル、(ジ)i−プロピル、(ジ)n−ブチルおよび(ジ)i−ブチル(メタ)アクリルアミド等)が挙げられる。
ヒドロキシアルキル置換アクリルアミドとしては、例えばN−モノ−C1−4ヒドロキシアルキルおよびN,N−ジ−C1−4ヒドロキシアルキル置換(メタ)アクリルアミド(N−ヒドロキシメチル、N,N−ジヒドロキシメチル、N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル、N,N−ジ−4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等)が挙げられる。
N−ビニルカルボン酸アミドとしては、例えばアシル系N−ビニルカルボン酸アミド(N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルn−およびi−プロピオンアミド並びにN−ビニルヒドロキシアセトアミド等)やN−ビニルラクタム(N−ビニルピロリドン等)が挙げられる。
これらのうちで好ましいのは、非置換およびアルキル置換アクリルアミドであり、特に(メタ)アクリルアミド、とりわけメタクリルアミドである。
【0017】
上述した共重合体(A)(構成単位(a)、(b)を有するポリ(メタ)アクリレート)は、公知の製造方法によって得ることができる。例えば、上述の各単量体を溶剤中で重合触媒存在下にラジカル重合し、必要により前駆体共重合体中の官能基を所望の官能基に変換または誘導することにより得られる。
【0018】
〔潤滑油組成物〕
本発明の潤滑油組成物は、基油に対して上述した特定のポリ(メタ)アクリレートを配合してなるものである。
ここで、上述のポリ(メタ)アクリレートの配合量は、発明の効果の観点より、本組成物全量基準で3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、10質量%以上19質量%以下であることがより好ましい。ポリ(メタ)アクリレートの配合量が3質量%未満であると、油膜厚さの維持効果が十分発揮できなくなるおそれがある。一方、配合量が10質量%を超えても本発明の効果の向上はあまり望めない。
また、本組成物の100℃動粘度は、発明の効果の観点より5mm/s以上7.5mm/s以下であることが好ましく、5.5mm/s以上6.5mm/s以下であることがより好ましい。100℃動粘度が5mm/s未満であると、油膜厚さの維持効果が十分発揮できなくなるおそれがある。一方、100℃動粘度が7.5mm/sを超えても本発明の効果の向上はあまり望めない。
【0019】
本発明の潤滑油組成物は、所定の極性基を有し、所定の質量平均分子量を有する特定のポリ(メタ)アクリレートを基油に配合してなるので、十分な油膜厚さを維持できる。従って、省燃費性や耐摩耗性に優れるとともに、疲労寿命の長い潤滑油組成物を提供することができる。
それ故、本組成物は、変速機をはじめ、摺動部を有する各種の部材に適用可能である。さらに、所定の添加剤を配合することにより非常に多くの用途に適用することができる。添加剤としては、酸化防止剤、油性剤、極圧剤、清浄分散剤、防錆剤、金属不活性化剤および消泡剤などを挙げることができる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
酸化防止剤としては、従来の炭化水素系潤滑油に使用されているアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤,硫黄系酸化防止剤を使用することができる。これらの酸化防止剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系化合物、4,4 −ジブチルジフェニルアミン、4,4 −ジペンチルジフェニルアミン、4,4 −ジヘキシルジフェニルアミン、4,4 −ジヘプチルジフェニルアミン、4,4 −ジオクチルジフェニルアミン、4,4 −ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系化合物、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系化合物、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系化合物が挙げられる。
【0021】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどのモノフェノール系化合物、4,4 −メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2 −メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などのジフェノール系化合物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、五硫化リンとピネンとの反応物などのチオテルペン系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのジアルキルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては,トリフェニルフォスファイト,ジエチル[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネートなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤の配合量は、組成物全量基準で、通常0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.03質量%以上5質量%以下である。
【0022】
油性剤としては、脂肪族アルコール、脂肪酸や脂肪酸金属塩などの脂肪酸化合物、ポリオールエステル、ソルビタンエステル、グリセライドなどのエステル化合物、脂肪族アミンなどのアミン化合物などを挙げることができる。これらの油性剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.1質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0023】
極圧剤としては、硫黄系極圧剤、リン系極圧剤、硫黄および金属を含む極圧剤、リンおよび金属を含む極圧剤が挙げられる。これらの極圧剤は一種を単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。極圧剤としては、分子中に硫黄原子およびリン原子のうち少なくともいずれかを含み、耐荷重性や耐摩耗性を発揮しうるものであればよい。分子中に硫黄を含む極圧剤としては、例えば、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チアジアゾール化合物、アルキルチオカルバモイル化合物、トリアジン化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物などを挙げることができる。
硫黄、リンおよび金属を含む極圧剤としては、ジアルキルチオカルバミン酸亜鉛(Zn−DTC)、ジアルキルチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)、ジアルキルチオカルバミン酸鉛、ジアルキルチオカルバミン酸錫、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)、ジアルキルジチオリン酸モリブデン(Mo−DTP)、ナトリウムスルホネート、カルシウムスルホネートなどが挙げられる。分子中にリンを含む極圧剤として代表的なものは、トリクレジルフォスフェートなどのリン酸エステル類およびそのアミン塩である。これら極圧剤の配合量は、配合効果および経済性の点から、組成物全量基準で、通常0.01質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0024】
清浄分散剤としては、金属スルホネート、金属サリチレート、金属フィネート、コハク酸イミドなどが挙げられる。これら清浄分散剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.1質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステル、アルキルアミンおよびモノイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミンなどを挙げることができる。これら防錆剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以上5質量%以下である。
【0025】
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。これら金属不活性化剤の好ましい配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上1質量%以下である。
消泡剤としては、メチルシリコーン油、フルオロシリコーン油、ポリアクリレートなどを挙げることができる。これらの消泡剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.0005質量%以上0.01質量%以下である。
【実施例】
【0026】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの記載内容に何ら制限されるものではない。
〔実施例1、比較例1から5まで〕
各潤滑油組成物を、表1に示す配合で、同程度のいわゆる低粘度の範囲に調製し、試料油とした。
【0027】
【表1】

【0028】
※1 基油:
鉱油(100℃動粘度3.5mm/s)
※2 ポリメタクリレートA(アミノ基含有):
三洋化成工業社製 PAS−8041
※3 ポリメタクリレートB:
三洋化成工業社製 PAS−8040
※4 ポリメタクリレートC:
三洋化成工業社製 PAS−8042
※5 ポリメタクリレートD:
三洋化成工業社製 アクルーブA−1060
※6 ポリメタクリレートE(アミノ基含有):
三洋化成工業社製 PAS−8043
※7 ポリメタクリレートF(アミノ基含有):
三洋化成工業社製 PAS−8039
【0029】
〔評価方法〕
下記の方法により測定した各試料油の性状およびEHL油膜厚さを表1に示す。
(動粘度)
JIS K 2283に準拠して測定した。
(EHL油膜厚さ)
PCS社のEHL極薄膜計測システム(EHL Ultra Thin Film Measurement System)を用いて、各試料油のEHL油膜厚さ(単位:nm)を測定した。測定条件は、以下の通りである。
油温:100℃
速度:0.108m/s
荷重:20N
(平均ヘルツ圧:0.56GPa)
【0030】
〔評価結果〕
実施例1および比較例4、5で用いたポリメタクリレートはいずれもアミノ基を含有するタイプであり、比較例1から3までで用いたポリメタクリレートはアミノ基を含有しないタイプである。
表1の結果より、アミノ基を含有し、かつ、所定の質量平均分子量を有するポリメタクリレートを配合してなる実施例1の試料油は、EHL油膜厚さを十分に維持できていることがわかる。これに対して、比較例1から3までの結果からわかるように、アミノ基を含有しないポリメタクリレートを配合したのでは、その質量平均分子量の如何によらずEHL油膜厚さを十分に維持することができない。また、アミノ基を含有するポリメタクリレートを配合した比較例4、5の試料油であっても、その質量平均分子量が所定の範囲をはずれているので、EHL油膜厚さを十分に維持することができない。
それ故、本発明の潤滑油組成物によれば、低粘度であっても省燃費性や耐摩耗性に優れるとともに、疲労寿命の長い潤滑油組成物を提供できることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油に、ポリ(メタ)アクリレートを配合してなる潤滑油組成物であって、
前記ポリ(メタ)アクリレートが、アミノ基およびアミド基のうち少なくともいずれか1種の極性基を有し、
前記ポリ(メタ)アクリレートの質量平均分子量が9,000以上28,000以下である
ことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の潤滑油組成物において、
前記ポリ(メタ)アクリレートの配合量が該組成物全量基準で3質量%以上10質量%以下である
ことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の潤滑油組成物において、
該組成物の100℃動粘度が5mm/s以上7.5mm/s以下である
ことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の潤滑油組成物において、
該組成物が変速機用である
ことを特徴とする潤滑油組成物。

【公開番号】特開2012−107143(P2012−107143A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258158(P2010−258158)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】