説明

潤滑油組成物

【課題】十分な冷却性能および優れた潤滑性を兼ね備えた潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】潤滑油組成物は、基油にフッ素化合物を配合してなり、前記基油が合成油であり、前記フッ素化合物の沸点が100℃以下であり、前記合成油に対して前記フッ素化合物が25℃で溶解性を有する。本発明の潤滑油組成物によれば、各種の機器冷却用として好適に使用できる。特に、電気自動車やハイブリッド車等の電動モーター装着車用のモーター冷却用として好適であり、さらには、バッテリー、インバーター、エンジン、電池等の冷却にも好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関し、詳しくは、ハイブリッド自動車、電気自動車などの電動モーターを備える自動車用の潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点からCO削減が強く求められており、そのため自動車の分野では省燃費技術の開発に力が注がれている。省燃費化の主流にハイブリッド車や電気自動車があり、今後急速に普及すると予測されている。ハイブリッド車や電気自動車は電動モーターや発電機、インバータ、蓄電池などを有することが特徴であり、一部または全てが電動モーターで走行する。
このようなハイブリッド車や電気自動車における電動モーターや発電機の冷却には、主にATFやCVTFが使用されている。ATFやCVTFには、一般に基油として鉱物油またはポリアルファオレフィン等の合成油が使用される。一方、ハイブリッド車や電気自動車では歯車減速機を有する形式のものもあり、潤滑油には冷却性と潤滑性の双方を兼ね備えることが必要とされる。今後、ハイブリッド車や電気自動車において燃費や電費を改善させるには、さらに電動モーター、発電機等の冷却性に優れる潤滑油が望まれる。
【0003】
例えば、エステル系合成油を10質量%〜100質量%含有し、40℃における動粘度が15mm/s未満、粘度指数が120以上、15℃における密度が0.85g/cm以上である基油を用いて、熱伝達係数を780W/m・℃以上とした自動車変速機油組成物が提案されている(特許文献1参照)。また、鉱油等の基油に、(A)炭化水素基含有ジチオリン酸亜鉛、(B)トリアリールホスフェート、(C)トリアリールチオホスフェートからなる群から選択されたリン化合物を0.1〜15.0質量%含有させ、80℃における体積抵抗率を1×10以上とした自動車用変速機油組成物も提案されている。この組成物によれば、冷却性、絶縁性、および潤滑性に優れるとの記載がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−242547号公報
【特許文献2】WO2002/097017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載された潤滑油組成物によっても、十分な冷却性能と優れた潤滑性を兼ね備えているとはいえない。
本発明は、十分な冷却性能および優れた潤滑性を兼ね備えた潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究の結果、合成油の選択によって低沸点のフッ素化合物を溶解できること、さらに合成油にフッ素化合物を溶解させることで冷却性能と金属間摺動部に対する耐摩耗性とを高いレベルで達成できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のような潤滑油組成物を提供するものである。
(1)基油にフッ素化合物を配合してなる潤滑油組成物であって、前記基油が合成油であり、前記フッ素化合物の沸点が100℃以下であり、前記合成油に対して前記フッ素化合物が25℃で溶解性を有することを特徴とする潤滑油組成物。
(2)上述の(1)に記載の潤滑油組成物において、前記合成油が、ナフテン系化合物、ポリオレフィン系化合物およびエステル系化合物のうち少なくともいずれか1種であることを特徴とする潤滑油組成物。
(3)上述の(1)または(2)に記載の潤滑油組成物において、前記フッ素化合物がハイドロクロロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロカーボンのうち少なくともいずれか1種であることを特徴とする潤滑油組成物。
(4)上述の(1)から(3)までのいずれか1つに記載の潤滑油組成物において、前記フッ素化合物が組成物全量基準で30質量%以下であることを特徴とする潤滑油組成物。
(5)上述の(4)に記載の潤滑油組成物において、前記フッ素化合物が組成物全量基準で5質量%以上であることを特徴とする潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の潤滑油組成物によれば、合成油を基油として、これに溶解性を有する所定のフッ素化合物を配合してなるので、十分な冷却性能および優れた潤滑性を兼ね備えた潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の潤滑油組成物(以下、単に「本組成物」ともいう。)は、基油にフッ素化合物を配合してなるものであるが、前記基油が合成油であり、前記フッ素化合物の沸点が100℃以下であって、前記合成油に対して前記フッ素化合物が25℃で溶解性を有することを特徴とする。以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本組成物に用いられる基油は合成油である。合成油としては特に限定されないが、後述するフッ素化合物との溶解性の点で、ナフテン系化合物、ポリオレフィン系化合物およびエステル系化合物のうち少なくともいずれか1種が好ましい。
ナフテン系化合物としては、シクロヘキサン環、ビシクロヘプタン環およびビシクロオクタン環より選ばれる環を有する化合物が好ましく挙げられる。
ポリオレフィン系化合物としては、α-オレフィン単独重合体や共重合体(例えばエチレン-α-オレフィン共重合体など)およびその水素化物が好ましく挙げられる。
【0011】
エステル系化合物としては、構成するアルコール(単位)として、nヘキサノール、nヘプタノール、nオクタノール、nノナノール、nデカノール、nウンデカノール、nドデカノール、nトリデカノール、nテトラデカノール、オレイルアルコール、エチルヘキサノール、ブチルオクタノール、ペンチルノナノール、ヘキシルデカノール、ヘプチルウンデカノール、オクチルドデカノール、メチルヘプタデカノール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、2−フェネチルアルコール、2−フェノキシエタノール、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、フェノール、クレゾール、キシレノール、アルキルフェノールなどのモノオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびポリエチレングリコール(両末端水酸基)、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンのようなトリオール、ペンタエリスリトールのようなテトラオールなどが挙げられる。
【0012】
またエステルを構成するカルボン酸(単位)として、nブタン酸、nペンタン酸、nヘキサン酸、nヘプタン酸、nオクタン酸、nノナン酸、nデカン酸、nウンデカン酸、nドデカン酸、nトリデカン酸、nテトラデカン酸、エチルヘキサン酸、ブチルオクタン酸、ペンチルノナン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルウンデカン酸、オクチルドデカン酸、メチルヘプタデカン酸、オレイン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、およびフェノキシ酢酸などのモノカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸が挙げられる。これらの合成潤滑基油を単独または組み合わせて使用してもよい。
例えば、上述したアルコールとカルボン酸からなるエステルとしては、ポリエチレングリコールジベンゾエートやポリプロピレングリコールジベンゾエートなどのポリグリコール安息香酸エステル、ペンタエリスリトールのnオクタン酸テトラエステルやトリメチロールプロパンのnオクタン酸トリエステルなどの直鎖カルボン酸ヒンダードエステル、アゼライン酸ジnオクチルや1,10−デカメチレンジカルボン酸エチルヘキシルなどの長鎖ジエステル、16−メチルヘプタデカン酸ドデシルや2−ヘプチルウンデカン酸nドデシルなどの長鎖モノエステル、オレイン酸オレイルやオレイン酸16−メチルヘプタデシルなどの長鎖オレイルエステルが好適である。
【0013】
フッ素化合物としては、いわゆるフッ素系冷媒として知られる化合物が好適であり、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が挙げられる。ただし、その沸点は100℃以下であることが必要である。沸点が100℃を超えるフッ素化合物では、冷却性に劣るようになる。それ故、フッ素化合物の沸点は、90℃以下のものが好ましく、85℃以下のものがさらに好ましい。
【0014】
このようなHFCとしては、炭素数1〜5のアルカンのフッ化物が好ましく、例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、CFCHFCHFCFCF(沸点55℃)(三井・デュポンフロロケミカル(株)製 バートレルXF)、CFCHCFCH(沸点40℃)(ソルベイソレクシス社製 ソルカン 365mfc)、およびC(沸点82℃)(日本ゼオン(株)製 ゼオローラHTA)などが挙げられる。
【0015】
また、HCFCとしては、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンや1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンなどが挙げられる。例えば、旭硝子(株)製のアサヒクリンAK-225は、これらの混合物であり、沸点は54℃である。
【0016】
そして、本組成物としてもっとも重要なことは、上述したように合成油に対し所定のフッ素化合物が常温(25℃)において溶解性を有していることである。ここで、「溶解性を有している」とは、両者を所定の割合で混合してなる本組成物が、25℃において2相に分離しないことを意味する。
基油にフッ素化合物が溶解しない状態で使用した場合、フッ素化合物は密度が大きいために合成油の下部に滞留し、冷却部に供給されず十分な冷却性能を得ることができない。またフッ素化合物のみが歯車等の潤滑部に供給された場合には、潤滑性不足により十分な潤滑性(耐摩耗性)が得られない。したがって、本組成物における基油(合成油)は、フッ素化合物を少なくとも25℃において溶解しうるものでなければならない。
【0017】
このようなフッ素化合物としては、本組成物への溶解比率が大きいほど優れた冷却性能を示すが、その一方で溶解比率が大きすぎると金属間摺動時の耐摩耗性が低下する。耐摩耗性を市販ATFと同等レベルとするには、フッ素化合物の本組成物への溶解比率を30質量%以下で使用することが好ましい。ただし、十分な冷却性能を得るには、フッ素化合物の本組成物への溶解比率を5質量%以上とすることが好ましい。
【0018】
ハイブリッド自動車や電気自動車では電動モーターと歯車減速機を組み合わせて使用されるものもある。この場合、潤滑油としては、歯車の潤滑性も考慮しなければならない。本発明の潤滑油組成物に用いることのできる摩耗防止剤としては、極力電気絶縁性を損なわないように、中性リン系化合物、酸性亜リン酸エステルまたはそのアミン塩、および硫黄系化合物などを用いることが好ましい。
【0019】
中性リン系化合物としては、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルチオスフェート、トリフェニルチオホスフェートなどの芳香族中性リン酸エステル、トリブチルホスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシホスフェート、トリブチルチオホスフェートなどの脂肪族中性リン酸エステル、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルモノ-2-エチルヘキシルホスファイト、ジフェニルモノトリデシルホスファイト、トルクレジルチオホスファイト、トリフェニルチオホスファイトなどの芳香族中性亜リン酸エステル、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリスデシルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トルブチルチオホスファイト、トリオクチルチオホスファイトなどの脂肪族中性亜リン酸エステルを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
酸性亜リン酸エステルとしては、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェートアミン塩、ジラウリルアシッドホスフェートアミン塩、ジオレイルアシッドホスフェートアミン塩などの脂肪族酸性リン酸エステルアミン塩、ジ-2-エチルヘキシルハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイトなどの脂肪族酸性亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩、ジフェニルアシッドホスフェートアミン塩、ジクレジルアシッドホスフェートアミン塩などの芳香族酸性リン酸エステルアミン塩、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、ジクレジルハイドロゲンホスファイトなどの芳香族酸性亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩、S-オクチルチオエチルアシッドホスフェートアミン塩、S-ドデシルチオエチルアシッドホスフェートアミン塩などの硫黄含有酸性リン酸エステルアミン塩、S-オクチルチオエチルハイドロゲンホスファイト、S-ドデシルチオエチルハイドロゲンホスファイトなどの硫黄含有酸性亜リン酸エステルおよびこれらのアミン塩などを挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
硫黄系化合物としては、各種のものが使用可能であるが、具体的には、チアジアゾール系化合物、ポリサルファイド系化合物、ジチオカーバメイト系化合物、硫化油脂系化合物、および硫化オレフィン系化合物などが挙げられる。
【0022】
また、本組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、その他の添加剤、例えば、酸化防止剤、粘度指数向上剤、防錆剤、銅不活性化剤、消泡剤、清浄分散剤などを配合することができる。
酸化防止剤としては、例えば、アミン系の酸化防止剤(ジフェニルアミン類、ナフチルアミン類)、フェノール系の酸化防止剤、硫黄系の酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤の好ましい配合量は、0.05質量%以上、7質量%以下程度である。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体など)などが挙げられる。粘度指数向上剤の好ましい配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、0.5質量%以上、15質量%以下程度である。
【0023】
防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテルなどが挙げられる。防錆剤の好ましい配合量は、組成物全量基準で0.01質量%以上、3質量%以下程度である。
銅不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアゾール、トリアゾール誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体などが挙げられる。銅不活性化剤の好ましい配合量は、組成物全量基準で0.01質量%以上、5質量%以下程度である。
【0024】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、エステル系化合物などが挙げられる。消泡剤の好ましい配合量は、組成物全量基準で、0.01質量%以上、5質量%以下程度である。
無灰系分散剤としては、例えば、コハク酸イミド化合物、ホウ素系イミド化合物、酸アミド系化合物などが挙げられる。無灰系分散剤の好ましい配合量は、組成物全量基準で、0.1質量%以上、20質量%以下程度である。
【0025】
上述した本発明の潤滑油組成物は、各種の機器冷却用として好適に使用できる。特に、電気自動車やハイブリッド車等の電動モーター装着車用のモーター冷却用として好適であり、さらには、バッテリー、インバーター、エンジン、電池等の冷却にも好適に使用できる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。具体的には、表1に示すような各潤滑油組成物(試料油)を調製して、各種の評価を行った。
【0027】
【表1】

【0028】
1)鉱油系基油:40℃の動粘度 31mm/s、100℃の動粘度 5.3mm/s
2)モノエステル:オレイン酸2-エチルヘキシル
3)PAO::ポリアルファオレフィン(40℃の動粘度 30mm/s、100℃の動粘度 5.8mm/s)
4)ジエステル:ポリグリコール安息香酸エステル(40℃の動粘度 37mm/s、100℃の動粘度 5.5mm/s)
5)ハイドロクロロフルオロカーボン:旭硝子(株)製 アサヒクリンAK225
6)ハイドロフルオロカーボン :日本ゼオン(株)製 ゼオローラHTA
7)添加剤:酸化防止剤、防錆剤、銅不活性化剤、および消泡剤からなるパッケージ
8)市販ATF:日産ATFマチックフルードJ
【0029】
〔評価項目・評価方法〕
(1)冷却性能
JIS K2242に規定される「冷却性能試験方法:A法」に準拠して、200℃に加熱した銀棒を80℃に加熱した200mLの試料油に入れ、銀棒表面の温度変化の値から近似式にて200℃での冷却速度を求めた。
冷却速度は、市販ATFの2倍以上(15deg/sec以上)であることが好ましい。
【0030】
(2)耐摩耗性
ASTM D2783に規定される「シェル四球極圧試験」に準拠して、1800rpmの条件における荷重-摩耗指数(LWI)にて評価した。
市販ATFと同等以上(シェル四球極圧試験 LWI 290N以上)であることが好ましい。
【0031】
(3)溶解性
室温(25℃)にて、基油、フッ素化合物、その他添加剤を組成物全量で100gとなるように所定の割合で配合し、撹拌羽根で5分間撹拌させた後、撹拌を停止し5分間放置後の分離・溶解状態を目視にて判断した。
【0032】
〔評価結果〕
表1に示した結果から明らかなように、本発明の試料油(実施例1〜5)は、基油(合成油)に所定のフッ素化合物を溶解してなるため、冷却性能および潤滑性(耐摩耗性)に優れるものとなる。一方、比較例1の試料油は基油が鉱物油のためフッ素化合物を溶解することができず、冷却性に劣る。また、所定のフッ素化合物を配合していない比較例2、3の試料油も冷却性能を満足できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油にフッ素化合物を配合してなる潤滑油組成物であって、
前記基油が合成油であり、前記フッ素化合物の沸点が100℃以下であり、
前記合成油に対して前記フッ素化合物が25℃で溶解性を有する
ことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の潤滑油組成物において、
前記合成油が、ナフテン系化合物、ポリオレフィン系化合物およびエステル系化合物のうち少なくともいずれか1種である
ことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の潤滑油組成物において、
前記フッ素化合物がハイドロクロロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロカーボンのうち少なくともいずれか1種である
ことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の潤滑油組成物において、
前記フッ素化合物が組成物全量基準で30質量%以下である
ことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の潤滑油組成物において、
前記フッ素化合物が組成物全量基準で5質量%以上である
ことを特徴とする潤滑油組成物。

【公開番号】特開2012−184360(P2012−184360A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49333(P2011−49333)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】