説明

潰瘍治療用の甘草根抽出物口内パッチ

【課題】口内での薬物供給又は炎症箇所を被覆するためのパッチの提供。
【解決手段】凸形レンズ状の口内接着円板パッチであって、(a)周縁を有し、少なくとも一方を凸面に形成された二つの側部を有し、かつ、前記周縁近辺よりも中心のほうが厚い厚みを有する、凸形レンズ状の口内接着パッチと、(b)粘膜に付着し、かつ、ヒトの口内に保持されるときにゆっくりと唾液に溶解しもしくは侵食される一または複数の結合成分を含んでおり、(c)粘膜に付着する前記結合成分は、前記パッチが口内の粘膜に効果的に付着し、相当期間付着状態を保つように、他の成分に対して付着性が高い口内接着円板パッチ。該結合成分は、澱粉、こんにゃくガム、ローカストビーンゴム、およびキサンタンゴムから選択されることが好ましい。該パッチには、ベンゾカインおよびリドカインから選択される麻酔薬、潰瘍治癒を促進する甘草根抽出物が含まれることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潰瘍の治癒を促進する甘草根抽出物の口内パッチに関する。
【背景技術】
【0002】
口内あるいは喉内の炎症を時間をかけて治療するための口内薬投与用口内パッチが開発されている。典型的には口内パッチは、アンソニ他が発明し、米国特許5713852で紹介したもののごとき完全には溶解消滅することのないフレキシブルな層状で提供される。別例の口内パッチはノーベン製薬会社が販売するデンチパッチ(DentiPatch)であり、不溶性熱可塑層とヨードカインとを含んでいる。
【0003】
ここで使用する“パッチ”とは口内で1箇所に接着せずに動き回る、咳ドロップや喉ドロップ等を含まない。また、粉末、液体、ペースト、粘液ゲル、錠剤またはトローチ等も含まない。しかし、ソフトで粘着性があって、溶解性を有した口内パッチのごときゲル状水性コロイド形態物は含まれる。このようなものは本発明者の2002年11月5日出願の米国特許5713852で開示されている。
【0004】
ここで使用する口内パッチと他の薬剤形態物との大きな相違点は、口内パッチが30分程度の比較的に長時間をかけて薬剤を放出し、口内の1カ所に接着して薬剤濃度の低下を防止し、薬剤を他の正常部位に拡散させないことである。
【0005】
甘草(グリシリザ)根が胃潰瘍の治癒を促進する成分を含有していることは知られている。しかし甘草根のどの成分が効き目を提供しているかは解っていない。体内で加水分解されてグリシレチン酸を形成するグリシルジン酸は血圧上昇等の生理的効果を引き起こすことが知られている。米国特許第3046195号で解説されている方法等でそれら酸成分が還元されても、得られた脱グリシルジン甘草(DGL:de-glycyrrhizinated licorice)は胃の潰瘍の治療に有効である。近年、胃潰瘍の大部分はヘリコバクター・ピロリと呼ばれるバクテリアにより発症し、大部分の胃潰瘍は薬剤抗生物質で治療が可能であることが発見された。このこと甘草根抽出物活性成分に殺菌作用があり、ヘリコバクター・ピロリ菌あるいはバクテリアと胃組織との反応を阻害することを暗示している。
【0006】
胃の潰瘍治療のため、粉末DGLがゼラチンカプセル形態で摂取されることがある。しかし、DGLは唾液と共に摂取されるとさらに効果が上がることが実験で確認された。よって、噛み砕くことができるDGL錠剤とドロップが開発された。DGL粉末は噛み砕かれると粉末やペースト状に素早く変化するように錠剤やドロップの形態に加工される。噛み砕かれなくとも唾液と接触して素早く溶解する。全てのDGL錠剤とドロップは噛み砕かれ、得られたペーストが飲み込まれるようになっている。甘草根抽出物を口内パッチの形態で提供することは知られていない。
【0007】
インドの医者達は臨床実験により、水中のDGLが1日あたり数回口内に噴射されるとDGLが口内炎(アフタ性潰瘍)の治療効果を高めることを発見した。Das SK, Gulati AK, Singh VP; De-glycyrrhizinated Licorice in Aphthous Ulcers; J Assoc Physicians India, 1989; 367:647。また、周囲組織を痺れさせることなく口内炎の痛みを素早く和らげる。
【0008】
他の医者達(Weil)は殺菌作用を有すると考えられている蜂により提供されるプロポリスを使用して口内炎の治療効果を高めることに成功した。
【0009】
標準的な医学雑誌で報告されているように、テトラサイクリンやペニシリン等の薬剤抗生物質の局部適用は1日に数回液状で口内に噴霧すると口内炎の治癒速度を速める。あるいは、抗生物質は1日に数回、粉末、ペースト、粘液ゲルとして口内炎に適用できる。または、口内に錠剤またはトローチとして投与できる(米国特許第6248718号)。テトラサイクリンやペニシリンに加えて、アモキシシリン(amoxicillin)等の他の抗生物質も局所的に同様に適用されると効果を現わす。他の有効な物質は過酸化水素、過酸化カルバミド、グルコン酸クロールヘキシジン及び抗ヒスタミンジフェンヒドラミン等の殺菌薬である。
【0010】
コルチコステロイドのごとき抗炎症薬は口内炎を軽減させるが、治癒を促進しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
実験を通して、甘草抽出物を口内炎の治療に利用する際、口内パッチを使用して可能限り長時間、患部あるいはその周囲に薬剤を保持させておくことが効果的であることが発見されている。トローチ、ゲル、ペーストまたは液体を2日、1日あたり数回使用するかわりにパッチを利用して、2日にわたって1日に12時間程度口内炎に局所的に薬剤を保持させておくと効果が期待できる。よって、口内炎の治癒は治療せずに放置した場合の典型的には10から14日から、昼と夜の半日間甘草根抽出物をパッチに沁み込ませて使用した場合の典型的には2日間に短縮される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
口内の他の部位の同一病原菌を大きく阻害せずに潰瘍内の病原菌コロニーの比較的に弱い阻害でも潰瘍を治癒させるのに充分であろう。この阻害効果を高めるためには、長時間薬剤を放出するパッチを毎日、長時間にわたって保持することで提供される。
【0013】
甘草根の抽出物は口内炎に対して口内パッチで15分以上保持されると、口内炎の痛みは消失し、周囲の組織の麻痺をい発生させないことが発見されている。甘草根の脱グリシルジン酸抽出物(DGL)は痛みを和らげるのに有効であるために好ましい。痛みなく食事を完了させる間、無痛状態は継続する。
【0014】
本発明の別な特徴は口内で唾液と接触したときに30分以上薬剤を放出する口内パッチを利用して口内炎を治療する製品である。この際、患者はパッチを1日に少なくとも2時間、口内に保持するように指示される。その薬剤はDGLのごとき甘草根抽出物でよい。パッチは薬剤を保持して放出させる結合成分を含むことができる。結合成分は唾液内で溶解するキサンタンゴム、コニャックゴム、ゼラチン、ローカストビーン等のゴム類でよい。
【0015】
別な特徴によれば本発明は、口内で唾液と接触したときに口内炎を治療する薬剤を30分以上放出する口内パッチを利用し、周囲の組織を麻痺させずに口内炎の痛みを取り除く製品である。利用者はパッチを口内炎患部あるいはその周辺で使用するように指示される。薬剤はDGLのごとき甘草根の抽出物でよい。パッチは唾液と接触して溶解する結合成分を含有することができる。そのような結合成分は、キサンタンゴム、コニャックゴム、ゼラチンまたはローカストビーンゴム等のゴムでよい。
【0016】
別な特徴によれば本発明は、口内で複数の場所に拡散せず、甘草根の抽出物を放出する口内パッチを提供する。抽出物の放出は30分以上継続する。パッチは唾液内で溶解するアラビアゴム、キサンタンゴム、コニャックゴム、寒天、ゼラチンまたはローカストビーンのごときゴムの結合成分を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】図1aは完全溶解性の口内パッチの側面図である。
【図1b】図1bはその口内パッチの平面図である。
【図2】図2は口内炎をカバーする普及タイプの非溶解性口内パッチを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は完全溶解する口内パッチを示す。これはガムキャンディのような口当たりである。この口内パッチはゆっくりと溶解する水性コロイドで製造され、典型的には少なくとも1時間から6時間口内に留まる。パッチは錠剤またはドロップあるいはウェハ等の形態で提供できる。好適な形状は図1aで示すように凸レンズ状である。このパッチの詳細な説
明とその製造方法は2002年11月5日に出願した本発明者の米国特許願10/287843において記載されている。
【0019】
パッチを唾液内でゆっくりと溶解させるために唾液内でゆっくりと溶解する結合剤が使用される。有効な結合剤はカラゲニン(好適にはカッパ)、コニャックゴムと組み合わされたキサンタンゴム及び寒天である。他の利用できるゴムはアラビアゴムである。コニャックゴムに類似した特性を有するローカストビーンゴムのごとき他のゴムやグアゴムも利用できる。
【0020】
パッチを口内でゆっくりと溶解させるのに加えて、結合剤は長時間かけて存在する可能性がある刺激的な風味を分散放出させることができる。その結果、少量の甘味剤や他の風味剤の使用を好む利用者もいようが、甘味剤や刺激的な風味を抑える他の物質は不要となる。
【0021】
図1のパッチの好適な製造方法は、ゴムドロップ製造装置を使用してゲル溶解温度以上に加熱した水和混合物をノズルからコーンスターチ型内に噴出し、パッチを冷却してゲル化させ、その後にパッチを乾燥させて型内から取り出すステップを含んでいる。パッチは好適には水活性レベルが0.8以下となり、パッチにカビや他の有機物が成長しないよう
に乾燥させる。パッチは気密状態に保たれて空中からの水分の吸収が防止される。
【0022】
あるいは、コーンスターチ型内に水和混合物を吹付ける代わりに、混合物を高温プラスチックまたはコーティング紙上に加熱粘性液の滴下物として提供することもできる。この滴下液体は冷却され、液体が載せられたプラスチックシートまたはコーティング紙は水活性レベルが0.8以下となるまで乾燥室またはオーブン内で乾燥される。
【0023】
図2は浸透性スポンジ層1と非浸透性外層2とを含んだ普及タイプの非溶解性口内パッチを示す。口内パッチは人の頬4の口内炎症患部3をカバーする。スポンジ層1は繊維質で提供し、表面からは小繊維を飛び出させて頬内粘膜と係合させることもできる。この繊維は綿マットや親水性合成繊維等の合成繊維マットのごとき不織マットを含むことができる。外層2は好適には滑らかで、パッチの落下を最低限度に抑えるものであり、フレキシブルな熱可塑性樹脂で形成できる。薬剤はスポンジからゆっくりと染み出す高粘性液体薬を使用するか、ゼラチン等の前述のゴム剤の遅溶解性結合剤でスポンジ1と結合されてスポンジ1で保持される。水に溶解したゴムの加熱混合物はスポンジに揉み込まれ、冷却によってゲル化される。好適なパッチサイズは24mmx18mmであり、パッチの1層または両層に赤系顔料を含ませて口内の色彩に合わせることもできる。
【0024】
あるいは、従来の他の口内パッチも使用できよう。
【0025】
パッチに染み込ませる薬剤とは前述のものである。甘草根抽出物の使用は薬剤抗病原菌に勝る利点を有している。なぜなら現実的な摂取量の範囲では副作用がないからである。各パッチの好適なDGL量は1時間から6時間継続するもので、95mgである。DGL1gを摂取するには10枚以上のパッチを要する。それでも胃潰瘍の治療用としては少量である。いずれにしろDGLは口内炎症患部で濃縮されるので、治療は効果的である。
【0026】
以下はソフトで接着性があり、溶解する95mgのDGLを含んだ口内パッチのテスト結果である。
【0027】
痛みの緩和:DGLパッチを10分から15分間食事前に使用すると、炎症の痛みは緩和される。食事の開始時点まで使用されていれば食事中の痛みはない。周囲組織の麻痺はない。
【0028】
パッチ使用量:使用時間は長ければ長いほどよい。1日に2枚以下のDGLパッチ(それぞれ1時間から4時間の効き目継続)の場合は効果がないことがある。1日に4枚から9枚の場合に効果が高い。炎症当初では1枚から4枚のパッチで有効であろう。
【0029】
パッチ継続使用期間:DGLパッチを使用してひりひり感が消滅し、使用後4時間以上経過していれば使用が停止できよう。使用を停止すると炎症がぶり返す場合がある。炎症の痛みがなくなってから24時間使用を継続すると痛みはぶり返さなかった。
【0030】
早期治療:口内炎を早期に治療開始すれば治療期間は短い。炎症はしばしば小さな傷口から始る。1枚のDGLパッチを口内炎の痛みが開始する前に傷口に1時間から4時間使用すると、その傷口からの炎症の発症を抑えることができよう。他の場合、口内炎症は口内粘膜層が薄くなった感触後に痛み出す。1枚のDGLパッチをその炎症部位に適用すると口内炎症の発症を抑えることができるであろう。口内炎が非常に小さいときには24時間の治療で充分であろうが、トマトの種程度の大きさになると治癒開始前に48時間は必要となろう。
【0031】
舌の治療:舌の治療のためにはDGLを放出するDGLパッチを患部に最も近い歯に接着させる場合が多い。この方法は夜間に特に有効である。
【0032】
固定具着用者:固定具を着用した患者はパッチを口内炎に対面させて固定具に取り付け、パッチを患部と接触状態にて歯と固定具に接着させておく。パッチが軟化するに連れて固定具内に浸透する。パッチは3時間から9時間で完全に溶解する。その間、患部に甘草根抽出物を供給する。
【0033】
本発明の特定実施例を説明したが、本発明範囲内でのそれらの変更は可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸形レンズ状の口内接着円板パッチであって、
(a)周縁を有し、少なくとも一方を凸面に形成された二つの側部を有し、かつ、前記周縁近辺よりも中心のほうが厚い厚みを有する、凸形レンズ状の口内接着パッチと、
(b)粘膜に付着し、かつ、ヒトの口内に保持されるときにゆっくりと唾液に溶解しもしくは侵食される一または複数の結合成分を含んでおり、
(c)粘膜に付着する前記結合成分は、前記パッチが口内の粘膜に効果的に付着し、相当な期間付着した状態を保つように、他の成分に対して付着性が高いことを特徴とする口内接着円板パッチ。
【請求項2】
前記結合成分は、澱粉、こんにゃくガム、ローカストビーンゴム、およびキサンタンゴムからなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の口内接着円板パッチ。
【請求項3】
前記結合成分は、コーン由来の澱粉であることを特徴とする請求項2に記載の口内接着円板パッチ。
【請求項4】
ヒトの口内に配置されるとき、前記口内接着円板パッチは、一以上の断片に分解しないことを特徴とする請求項1に記載の口内接着円板パッチ。
【請求項5】
ヒトの口内に配置され、噛まれないのであれば、前記口内接着円板パッチは、完全に溶解または侵食されるまで一時間以上残存することを特徴とする請求項1に記載の口内接着円板パッチ。
【請求項6】
ベンゾカインおよびリドカインからなる群から選択される麻酔薬を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の口内接着円板パッチ。
【請求項7】
前記口内接着円板パッチは、その中心が最大厚となっており、周縁が最小厚となっており、これらの最大厚と最小厚との差が前記口内接着円板パッチの直径の約24%であることを特徴とする請求項1に記載の口内接着円板パッチ。
【請求項8】
前記口内接着円板パッチの少なくとも一側部は、この口内接着円板パッチの直径の約12%の陥凹を備える凸面を有することを特徴とする請求項1に記載の口内接着円板パッチ。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−163451(P2010−163451A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55534(P2010−55534)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【分割の表示】特願2003−541757(P2003−541757)の分割
【原出願日】平成14年11月5日(2002.11.5)
【出願人】(505333997)オラヘルス コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】