説明

濁度計

【課題】 測定水槽の測定光路よりも上部位置から測定水をゆっくり流し込むようにして、気泡を測定水槽内で拡散させないようにし、かつゆっくり流すことで上昇しやすい気泡との分離がしやすくなり測定水に溶け込んでいる気泡を測定光路を通過しないように迂回させて排出することができる濁度計を提供する。
【解決手段】 濁度計は、測定水を貯留する測定水槽と、前記測定水槽に測定光路を形成する投光器と、前記投光器で生成された測定光路の光線を受光する受光器とを備えた濁度計であって、前記測定水槽には、前記測定光路を形成する位置よりも上部位置から所定の入口通路を通じ緩衝手段を介して測定水を供給する測定水入口手段と、前記測定水槽に供給された測定水を前記測定光路よりも下部位置から出口通路を通じて排水する測定水出口手段とを備え、前記測定水入口手段は、前記入口通路の前記測定光路よりも下部位置に測定水を供給する入口小径口を備えたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濁度計に関し、詳しくは透過散乱形濁度計の測定水槽への測定水の供給を改良して気泡による測定光路の弊害を防止した濁度計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における透過散乱形濁度計は、図4に示すように、測定水槽111を設け、この測定水槽111に測定水を流入させる測定水入口112、測定水槽111の測定水を排出する測定水出口113、測定水槽111に対して光線を照射する透光器114、測定水槽111に貯留されている測定水に照射された光線の透過具合を測定する受光器115とを備えた構成になっており、測定水槽111は水平方向に対して3度の傾斜を持って測定水入口112側が下方向になるように支柱116に支持されている。
このような構成からなる濁度計において、測定水槽111の右下の測定水入口112から測定水が入り、左上の測定水出口113から抜けてゆく。
測定水槽111が3度傾いているので、測定水に含まれている大きな気泡は上昇し、測定水槽111の上部管壁に沿って流れ出て行く。小さな気泡は流れに乗りながら上方に分離したり、液の流れに従い移動する。
【0003】
【特許文献1】特開2003−57230号公報(第4頁 第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術で説明した、濁度計は、測定水に含んでいる気体が、配管途中の水温の変化や、圧力の低下で、気泡となり、この気泡が測定光路を横切る。又、測定水に含まれている大きな気泡は下の測定水入口から入るとそのまま上昇し、測定光路を横切る。
すると、信号異常となり、異常処理(前回の測定値より設定したある値より大きな場合は異常とみなし設定回数までは前回値を代わりに割り付ける)でデータを排除したり、スムージング(移動平均)処理で、濁度計の指示としての影響を極力少なくしている。
しかし、小さな気泡やゆっくりとした気泡の動きは、光の散乱や断面積の減少(特に付着した場合)などの影響で指示変化として現われ、誤差要因となるという問題がある。
【0005】
従って、測定水に光を照射してその透過率によって測定水の汚濁状態を検出する濁度計において、気泡を測定光路から出来るだけ排除し、誤差要因を少なくすることに解決しなければならない課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明の濁度計は、次に示す構成にしたことである。
【0007】
(1)濁度計は、測定水を貯留する測定水槽と、前記測定水槽に測定光路を形成する投光器と、前記投光器で生成された測定光路の光線を受光する受光器とを備えた濁度計であって、前記測定水槽には、前記測定光路を形成する位置よりも上部位置から所定の入口通路を通じ緩衝手段を介して測定水を供給する測定水入口手段と、前記測定水槽に供給された測定水を前記測定光路よりも下部位置から出口通路を通じて排水する測定水出口手段とを備え、前記測定水入口手段は、前記入口通路の前記測定光路よりも下部位置に測定水を供給する入口小径口を備えたことである。
(2)前記緩衝手段は、前記入口通路の上部に設けた測定水の流量流速により開閉するフロートで測定水の注ぎ具合を緩衝することである(1)に記載の濁度計。
(3)前記測定水出口手段は、前記測定水槽天井位置に気泡を通過させる出口小径口を備えたことを特徴とする(1)または(2)に記載の濁度計。
【発明の効果】
【0008】
本提案によれば、測定水を測定水槽の上部より注ぎ、且つゆっくり下向きに流すことで、気泡を測定水槽内で拡散させないようにし、かつゆっくり流すことで上昇しやすい気泡との分離がしやすくなり測定水に溶け込んでいる気泡を測定光路を通過しないように迂回させて排出することができる。更に、測定水を測定水槽の下部位置から小径口を介して流入させることにより、測定水の流量が少ない場合にも、測定水槽における測定水の入れ替わりを促進して、より応答性の良い濁度計を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本願発明に係る濁度計の実施形態について、図面を参照して以下説明する。
【実施例1】
【0010】
本願発明の濁度計は、図1乃至図3に示すように、測定水槽11に貯留されている測定水に対して光線を照射して測定光路12を形成する投光部13と、測定水を貯留すると共に測定光路12を形成する測定水槽11と、測定水槽11に形成された測定光路12の光線を受光する受光部14と、測定光路12を形成する位置よりも上部位置から所定の入口通路15を通じて測定水槽11に測定水を供給する測定水入口手段と、測定水槽11に供給された測定水を測定光路12よりも下部位置から出口通路16を通じて排水する測定水出口手段とを備えた構成になっている。
【0011】
投光部13は、光線を発光させる光源17と、光源17からの光線を平行光線にするレンズ18と、平行光線にした光線を絞る絞り19とからなり、光線を測定水槽11に送る測定光路12を形成する。
測定光路12には、投光部13からの光線を通過させる投光側窓ガラス21を備え、対向する反対方向に受光側窓ガラス22を備えた構成になっている。
【0012】
測定水入口手段は、図2に示すように、測定水槽11を形成する底壁23と内壁24との間に測定水入口25を備え、この測定水入口25には測定水入口継ぎ手26を備えた構成になっている。そして、この内壁24より所定の間隔を持って波切板27を設け、波切板27の下部端には測定水を測定水槽11に注ぎ込む入口小径口20を設けた構造となっている。
波切板27と内壁24で形成された空間が入口通路15になり、その上部端に緩衝手段である測定水の流量で開閉するフロート30を備えた構成になっている。この入口通路15に測定水が注入され、所定の流量流速のときにフロート30を持ち上げて、測定水が溢れて測定光路12の上部位置から測定水槽11に測定水を緩衝させて注ぎ込む。また、下部の入口小径口20を介して、少量の測定水が測定水槽11内に流入している。
【0013】
測定水出口手段は、図2に示すように、測定水槽11の測定水を一定量に維持させ、それ以上のときには排出する排水口28及びその排水口28に設けた排水口継ぎ手29、測定水槽11の測定水を外部に出すための入口を測定水槽11の下部位置に設けた測定水出口31を備えた出口通路16、出口通路16の上部位置であって測定水槽11天井位置に測定水槽11の上部位置に溜まった気泡を排出する出口小径口32と、出口通路16の先端に設けた測定水を外部に出すための測定水出口継ぎ手33を備えた構成になっている。
【0014】
受光部14は、図1に示すように、測定光路12からの光線を受光するもので、直進光を受光する直進光受光素子34と、この直進光受光素子34の周囲に複数個設けた散乱光を受光するための散乱光受光素子35とを備えた構成になっている。そして、図示しないこの直進光受光素子34と散乱光受光素子35で検出したデータに基づいて測定水の濁度状態を検出する。
【0015】
このような構成からなる測定光路12における測定水の流れ状態は、先ず、流量が多い場合、図2に示すように、測定水の流速で、入口通路15に設けてある緩衝手段であるフロート30は押し上げられ、測定水と一緒に入った気泡は、測定水槽11天井位置まで導かれ、出口通路16に設けてある測定水出口31上部の出口小径口32より排出される。
小さな気泡は、フロート30の表面の粗い突起点に付着し、成長し大きな気泡に成長し排出される。
フロート30に掛からなかった気泡も、測定水槽11の断面積が入口・出口の配管径に比べ十分大きいので、フロート30で流速が緩衝され弱まっているため測定水槽11上部に上昇して行き測定光路12にほとんど達しない。
【0016】
流量が少ない場合、図3に示すように、フロート30が閉まり、測定水は測定水入口25の下部位置に設けてある入口小径口20のみから測定水槽11に入り、出口通路16を通って上部から排出させる。測定水と一緒に入口通路15に入った気泡は、入口通路15の中でそのまま上昇し、フロート30の下に留まる。ある量留まると浮力によりフロート30を押し上げ、測定水槽11の上部を伝わって測定水出口31上部の出口小径口32から排出される。測定水槽11に入った気泡も流速が遅いので、測定光路12に達する前に上昇し、分離できる。
【0017】
以上のように、測定水槽11に供給する測定水の流速流量がある程度多いときには、フロート30を押し上げて緩衝された測定水が上部位置から測定光路12方向に供給され、測定水の流量流速が少ないときにはフロート30は閉まり、主に入口小径口20から測定光路12方向に供給される。即ち、測定水の流量流速に関係なく常に測定水はゆっくりと注ぎ込むことができるのであり、そのため気泡は常に測定光路12に到達することなく排除でき、測定水の流量流速に関係なく測定水の濁度状態を検出することができるのである。
また、入口小径口20からの測定水の流入は、測定水槽11における測定水の入れ替わりを促進して、応答性の向上に貢献する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
測定水槽の測定光路よりも上部位置から測定水をゆっくり流し込むようにして、気泡を測定水槽内で拡散させないようにし、かつゆっくり流すことで上昇しやすい気泡との分離がしやすくなり測定水に溶け込んでいる気泡を測定光路を通過しないように迂回させて排出することができる濁度計を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明に係る濁度計の測定水槽の測定光路を上部からみた平面図である。
【図2】同、フロートが開いたときの測定水と気泡の動きを示した断面図である。
【図3】同、フロートが閉まったときの測定水と気泡の動きを示した断面図である。
【図4】従来技術における濁度計の全体構成を示した正面図である。
【符号の説明】
【0020】
11 測定水槽
12 測定光路
13 投光部
14 受光部
15 入口通路
16 出口通路
17 光源
18 レンズ
19 絞り
20 入口小径口
21 投光側窓ガラス
22 受光側窓ガラス
23 底壁
24 内壁
25 測定水入口
26 測定水入口継ぎ手
27 波切板
28 排水口
29 排水口継ぎ手
30 フロート
31 測定水出口
32 出口小径口
33 測定水出口継ぎ手
34 直進光受光素子
35 散乱光受光素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定水を貯留する測定水槽と、前記測定水槽に測定光路を形成する投光器と、前記投光器で生成された測定光路の光線を受光する受光器とを備えた濁度計であって、
前記測定水槽には、前記測定光路を形成する位置よりも上部位置から所定の入口通路を通じ緩衝手段を介して測定水を供給する測定水入口手段と、前記測定水槽に供給された測定水を前記測定光路よりも下部位置から出口通路を通じて排水する測定水出口手段とを備え、
前記測定水入口手段は、前記入口通路の前記測定光路よりも下部位置に測定水を供給する入口小径口を備えたことを特徴とする濁度計。
【請求項2】
前記緩衝手段は、前記入口通路の上部に設けた測定水の流量流速により開閉するフロートで測定水の注ぎ具合を緩衝することである請求項1に記載の濁度計。
【請求項3】
前記測定水出口手段は、前記測定水槽天井位置に気泡を通過させる出口小径口を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の濁度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−208022(P2006−208022A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16676(P2005−16676)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】