説明

濃縮された過酸化水素系消毒液

難溶性の環状カルボン酸を含む、濃縮され、かつ、単相の洗浄消毒用溶液。当該溶液は、約0.05〜約2のpHを有し、かつ、約2%w/w〜約8%w/wの過酸化水素;約5%w/w〜約20%w/wの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸;約0.5%w/w〜約8%w/wの少なくとも1つの難溶性の(すなわち、純水中の、室温での溶解度が1%w/w未満である)環状カルボン酸(当該環状カルボン酸は、酸形態および塩形態で、少なくとも9:1(酸:塩)の比で存在する);約2%w/w〜約10%w/wの少なくとも1つのブロックコポリマー界面活性剤(例えば、PLURONIC L62);および約4%w/w〜約15%w/wの少なくとも1つの溶剤を含み、基本的にこれらからなり、またはこれらからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消毒剤に関し、特に、過酸化水素系消毒液の調製における使用に適した過酸化水素ベースの殺菌濃縮物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数年間において、環境に優しく、希釈された場合に微生物に対して有効であり、かつ、ヒトおよび動物に対して無毒性な消毒剤の開発のために、おびただしい努力がなされてきた。過酸化水素は、その分解産物(すなわち、酸素および水)が一般的に無害であるため、環境に優しい。少なくとも一部は、抗菌活性のその広い範囲により、様々な用途において、長年使用されてきた。この特性は、有害な生物が存在しているが、その性質が不明であるという状況において特に重要である。
【0003】
過酸化水素の主要な欠点のうちの1つは、その抗菌作用が低濃度では緩慢過ぎることである。例えば、公知の文献は、過酸化水素の0.1%w/wの水溶液は、黄色ブドウ球菌によって汚染された表面を消毒するために約60分間を必要とし、一方、同一の試験条件下では、過酸化水素の25.8%w/wの水溶液は、約20秒しか必要としないことを示す。後者の溶液は、実用的ではなく、または採算が合わない可能性がある。それは、危険物規制の対象となり、取扱いおよび使用のために特別な注意を必要とする可能性がある。第2の主要な欠点は、溶液中の過酸化水素を安定化するために典型的に使用される安定剤、すなわち、リンベースの安定剤が、河川および湖に蓄積および集積し、その富栄養化に寄与する可能性があることである。
【0004】
約8%w/w未満の過酸化水素を含む溶液が、その改善された安全特性のために好ましい。例えば、約8%w/w超の濃度の水溶液では、過酸化水素は、腐食性かつ強力な酸化剤であると考えられる。約3〜7%w/wの濃度の水溶液では、過酸化水素は、非腐食性であるが眼刺激性であると考えられる。約1〜3%w/wの濃度の水溶液では、過酸化水素は、非腐食性かつ非刺激性であると考えられる。
【0005】
過酸化水素水の消毒活性を増強するために試みがなされてきた。例えば、過酸化水素と組み合わせた過酸は、過酸化水素の消毒活性を顕著に増加させることができる。しかし、このような組成物の不都合な点は、その腐食性、乏しい安全特性、および刺激臭である。増加した活性はまた、過酸化水素を重金属と混合し、ヒドロキシラジカルを放出させることによっても達成できる。残念ながら、このような溶液は、乏しい安定性を示し、かつ、現場で調製しなければならない。
【0006】
ほとんど水に溶けない環状カルボン酸が、過酸化水素および特定の陰イオン性界面活性剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸)を含む溶液の消毒活性を増強することが示された。当該環状カルボン酸が低い濃度で存在する、これらの成分の組み合わせを有するすぐに使用できる製品を作製することが可能である。しかし、水溶液中の当該環状カルボン酸の溶解度は低いため、これらの溶液の濃縮されたバージョンの作製は難しい。より高い濃度で、このような酸は、溶液から沈殿する。このことは、濃縮溶液から、均一な特性であり、かつ一貫した性能を与える、希釈され、すぐに使用できる溶液を調製することを困難にしている。濃縮溶液は、輸送がより容易かつ安価であるため、濃縮された形態で難溶性の環状カルボン酸、過酸化水素および陰イオン性界面活性剤を含む溶液を作製することが望ましい。
【0007】
これを行う1つの方法は、溶液中の酸を可溶化するために、高量の溶剤または乳化剤を加えることである。しかし、これは下記の理由から望ましくない可能性がある。多くの溶剤は、環境的な観点から好ましくない揮発性有機化合物(VOC)であると考えられる。さらに、これらは、当該溶液の引火点を低下させ、かつ、その危険度を増加させる作用を有する可能性がある。高いレベルの乳化剤を使用することによって、乾燥後に表面またはデバイス上に線条および粘着性を生じさせる残留物を残す可能性がある。
【0008】
難溶性の環状カルボン酸、過酸化水素、および陰イオン性界面活性剤を含む濃縮溶液を作製するための別のアプローチは、溶液中の酸の溶解度を増加させるためにpHを増加させ、これをより水溶性であるその塩形態に部分的に変化させることである。しかし、このような酸は、その酸形態においてより良く作用する傾向があるため、pHの増加は、当該溶液の抗菌性を減少させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、1つ以上の陰イオン性界面活性剤、および1つ以上の難溶性の環状カルボン酸を含む、安定な、濃縮された、過酸化水素ベースの洗浄消毒用溶液であって、使用前に希釈することができる溶液についてのニーズが存在する。好ましくは、当該溶液は引火性ではなく、希釈後に表面に塗布した後に高量の残留物を残さず、かつ、高希釈であっても、有効かつ速効性である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、難溶性の環状カルボン酸を、過酸化水素、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、およびブロックコポリマー界面活性剤を含む酸性(すなわち、pH≦2)水溶液中に溶解させることができることを見出した。これは、高い溶剤濃度を要求せず、かつ、希釈後に有効である濃縮された過酸化水素ベースかつカルボン酸ベースの溶液の調製を可能にする。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、約0.05〜約2のpHを有する、濃縮され、かつ、安定な洗浄消毒用溶液であって、
a.約2%w/w〜約8%w/wの過酸化水素と、
b.約5%w/w〜約20%w/wの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(例えば、C8〜C16直鎖アルキルアリールスルホン酸)と、
c.約0.5%w/w〜約8%w/wの少なくとも1つの難溶性の環状カルボン酸であって、当該環状カルボン酸は、酸形態および塩形態で、少なくとも9:1(酸:塩)の比で存在する環状カルボン酸と、
d.約2%w/w〜約10%w/wの少なくとも1つのブロックコポリマー界面活性剤と、
e.約4%w/w〜約15%w/wの少なくとも1つの溶剤と、を含み、基本的にこれらからなり、またはこれらからなる洗浄消毒用溶液が提供される。
【0012】
当該溶液のpHは、約0.05〜約1、約0.2〜約2、および約0.2〜約1に及んでもよい。
【0013】
当該過酸化水素は、約4%w/w〜約7.5%w/w、および約3%w/w〜約8%w/wの濃度で存在してもよい。
【0014】
当該直鎖アルキルベンゼンスルホン酸は、約7%w/w〜約15%w/wの濃度でC8〜C16で存在してもよく、ドデシルベンゼンスルホン酸であってもよい。
【0015】
当該少なくとも1つの難溶性の環状カルボン酸は、約2%w/w〜約3.5%w/wの濃度で存在してもよく、安息香酸および安息香酸誘導体(例えば、サリチル酸)から選択されてもよい。
【0016】
当該少なくとも1つのブロックコポリマー界面活性剤は、約3%w/w〜約7%w/wの濃度で存在してもよく、(A)−(B)−(A)または(B)−(A)−(B)または
【化1】

(i.Aは、プロピレンオキシド反復単位のブロックを示し、Bは、エチレンオキシド反復単位のブロックを示し、かつ、当該ブロックコポリマー界面活性剤は1500〜30000の分子量を有する(例えば、PLURONIC L62))から選択されてもよい。
【0017】
当該溶剤は、約4%w/w〜約15%w/wの濃度で存在してもよく、グリコールエーテル、1〜8の炭素原子を有する短鎖アルコール、ベンジルアルコール、およびフェノキシエタノールから選択されてもよい。当該グリコールエーテルは、プロピレングリコール n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール n−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコール n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコール n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルから選択されてもよい。
【0018】
当該溶液は、下記の成分のうち1つ以上をさらに含み、基本的にこれらからなり、またはこれらからなっていてもよい;(a)約0.1%w/w〜約20%w/wの別の陰イオン性界面活性剤;(b)約0.1%w/w〜約20%w/wの過酸化水素の安定剤またはキレート化剤;(c)約0.1%w/w〜約10%w/wの別の非イオン性界面活性剤;(d)約0.01%w/w〜約10%w/wの緩衝剤;(e)約0.1%w/w〜約10%w/wの腐食防止剤;(e)約0.05%w/w〜約5%w/wの別のカルボン酸;および(f)当該溶液の市場性をより高くする他の添加剤(例えば、着色剤および芳香剤)。DK
【0019】
いくつかの実施態様では、当該溶液は、約0.05〜約1.5のpHを有し、かつ、
a.約2%w/w〜約8%w/wの過酸化水素と、
b.約8%w/w〜約12%w/wのドデシルベンゼンスルホン酸と、
c.約2%w/w〜約3%w/wのサリチル酸と、
d.約4%w/w〜約6%w/wのPLURONIC L62と、
e.約7%w/w〜約9%w/wのプロピレングリコール n−プロピルエーテルと、
f.0%w/w〜約0.1%w/wの1−ヒドロキシエチリデン−1,1,−ジホスホン酸と、
g.0%w/w〜約0.1%w/wのC10アルキル化スルホン化ジフェニルオキシド二ナトリウム塩と、
h.0%w/w〜約3%w/wのリン酸と、
i.約0.1%w/w〜約1%w/wのベンゾトリアゾールと、を含み、基本的にこれらからなり、またはこれらからなる。
【0020】
他の実施態様では、当該溶液はリンを含まず、約0.05〜約2のpHを有し、かつ、
a.約2%w/w〜約8%w/wの過酸化水素と、
b.約5%w/w〜約20%w/wの少なくとも1つのC8〜C16アルキルアリールスルホン酸と、
c.約0.5%w/w〜約8%w/wの少なくとも1つの難溶性の環状カルボン酸であって、当該環状カルボン酸は酸形態および塩形態で、少なくとも9:1(酸:塩)の比で存在する環状カルボン酸と、
d.約2%w/w〜約10%w/wの少なくとも1つのブロックコポリマー界面活性剤と、
e.約4%w/w〜約15%w/wの少なくとも1つの溶剤と、を含み、基本的にこれらからなり、またはこれらからなる。
【0021】
さらなる実施態様では、当該溶液はリンを含まず、約1.5未満のpHを有し、かつ
a.約2%w/w〜約8%w/wの過酸化水素と、
b.約8%w/w〜約12%w/wのドデシルベンゼンスルホン酸と、
c.約2%w/w〜約3%w/wのサリチル酸と、
d.約4%w/w〜約6%w/wのPLURONIC L62と、
e.約7%w/w〜約9%w/wの少なくとも1つの溶剤と、を含み、基本的にこれらからなり、またはこれらからなる。
【0022】
本発明はまた、別の態様に従い、1:10〜1:1000(溶液:水)の比で水によって希釈された第1の態様の溶液も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
用語「含む」とは、いくつかの整数または成分に関連して使用される場合、記載された整数または成分に制限されることなく包含することを意味する。用語「基本的に・・・からなる」とは、記載された整数または成分(およびその中に存在する通常の不純物)および、本発明の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しないようなさらなる整数または成分を包含することを意味する。「本発明の基本的かつ新規な特性」とは、本発明の溶解度および安定性を指す。単相である溶液は、本発明の範囲内にあるものとして考えられる。逆に、2以上の相である溶液は、本発明の範囲外であると理解されるものとする。
【0024】
用語「からなる」とは、記載された整数または成分のみを含み、かつ、さらなる整数または成分を含まない(ただし、通常の不純物として存在する可能性があるものを除く)ことを意味する。
【0025】
「%w/w」という量の表現は、別段の記載がない限り、全溶液または全組成物の重量に関連する重量パーセントを意味する。
【0026】
用語「約」は、特定の数値または量を修飾するために使用される場合、(a)濃縮物を作製するために使用される典型的な測定および液体処理方法;(b)本発明の溶液を作製するために使用される成分の製造、供給源、または純度の差異、等によって生じる可能性がある数値または量の変動を指す。用語「約」はまた、本発明の溶液の異なる平衡条件によって生じる可能性がある値または量の変動を包含する。用語「約」によって修飾されるかどうかに関わらず、請求項には、特定された値または量の等価物が含まれる。
【0027】
用語「安定な溶液」は、少なくとも1年の間、室温で、その最初の過酸化水素の濃度の少なくとも90%を保持し、かつ、その有効期間の間中、凍結融解のサイクル後でさえも、沈殿せず、または相に分離しない溶液を意味するように解釈されるものとする。
【0028】
単数形「1つの(a)、「1つの(an)」および「その、当該(the)」は、文脈から明らかにそうではないと分かる限り、複数形を含む。従って、例えば、「1つの化合物」を含む組成物は、2以上の化合物の混合物を包含しうる。用語「または、もしくは」は、文脈から明らかにそうではないと分かる限り、一般的に、「および(ならびに)/または(もしくは)」の意味で使用されることもまた注意しなければならない。
【0029】
用語「低溶解性の」または「難溶性の」とは、純水中の、室温での溶解度が1%w/w未満であることを意味する。
【0030】
本願明細書で与えられる全ての濃度値は、別段の記載がない限り、または文脈からそうではないと分かる限り、本発明の濃縮溶液に関する濃度値である。
【0031】
(難溶性の環状カルボン酸)
本発明において有用な、難溶性の環状カルボン酸は、2−ヒドロキシ安息香酸(すなわち、サリチル酸)、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、およびジヒドロキシ安息香酸等の安息香酸ならびに安息香酸誘導体から選択されてもよい。このような化合物の水に対する溶解度は、Merck Index等の化学文献中で見出すことができる。安息香酸およびサリチル酸について、20℃での水に対する溶解度は、それぞれ0.29%および0.2%である。
【0032】
これらのカルボン酸は、約0.5%w/w〜約8%w/wの濃度で使用できる。あるいは、約1.5%w/w、約2%w/w、および約2.5%w/wの最小濃度が可能である。同様に、約7%w/w、約6%w/w、約5%w/w、約4%w/wおよび約3.5%w/wの最大濃度もまた考えられる。
【0033】
(非イオン性界面活性剤)
本発明の実施態様で使用されるブロックコポリマーは非イオン性界面活性剤である。適したブロックコポリマー界面活性剤のクラスは、(PO)−(EO)−(PO)および(EO)−(PO)−(EO)によって一般的に示される構造を有する。あるいは、これらは、(A)−(B)−(A)および(B)−(A)−(B)(Aは、プロピレンオキシド反復単位のブロックを示し、Bは、エチレンオキシド反復単位のブロックを示す)として示すことができる。本発明において有用なブロックコポリマーは、約1500〜約10000の平均分子量を有する。表1(下記)は、いくつかの代表的な界面活性剤(BASF Corporation製(ニュージャージー州、フローラムパーク、登録商標PLURONICに関連して販売されている)を示す。これらの界面活性剤は、約2%w/w〜約10%w/wの濃度で使用できる。あるいは、約3%w/w、約4%w/w、および約5%w/wの最小濃度が可能である。同様に、約8%w/w、約7%w/w、約6%w/w、および約5.5%w/wの最大濃度もまた考えられる。
【0034】
【表1】

【0035】
ポロキサミンは、ブロックコポリマー界面活性剤の別の有用なクラスである。これらは、エチレンジアミンの中心基(central group)に、プロピレンオキシド部分を介して結合し、エチレンジアミン分子あたり4ブロックをもたらす、四官能性エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーである。ポロキサミンは、エチレンジアミンアルコキシレート、N,N_,N_,N_−テトラ[(オキシエチレン)−(オキシプロピレン)]ジアミノエチレンとも呼ばれ、商標Tetronicsおよび商標Synperonicに関連して販売されている。ポロキサミンの平均分子量は、1500〜30000に及ぶ。低い平均分子量のポロキサミンは、粘稠性の油またはペーストである。より高い分子量の対応物は非晶質固体である。ポロキサミンは、産業において、多数の用途を有する。なぜなら、POEブロックおよびPOPブロックの両方のサイズは、容易にかつ独立に変化させることができ、親水性/疎水性の平衡およびコポリマーの全分子量の変化を引き起こすことができるからである。これらの界面活性剤は下記の一般構造を有する。
【化2】

【0036】
あるいは、上記は、
【化3】

(Aは、プロピレンオキシド反復単位のブロックを示し、Bは、エチレンオキシド反復単位のブロックを示し、かつ当該ブロックコポリマーの分子量は1500〜30000である)として示すことができる。
【0037】
適したポロキサミンの例は、Tetronic 1301、104、1307、150R1、701、901、904、908(BASF Corporation製)である。さらなる例は、表2中で与えられる。
【0038】
【表2】

【0039】
(過酸化水素)
当該濃縮溶液中の過酸化水素の濃度は、約2%w/w〜約8%w/wに及んでもよい。約3%w/w、3.5%w/w、約4%w/w、約4.5%w/w、および約5%w/wの別の最小濃度もまた、考えられる。約7.5%w/w、約7%w/w、および約6.5%w/wの別の最大濃度も可能である。
【0040】
(陰イオン性界面活性剤)
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸は、当該過酸化水素水の洗浄消毒活性を増強する。難溶性の環状カルボン酸との組み合わせにおいて、これらの陰イオン性界面活性剤はまた、さらなる酸を必要とすることなく、高希釈で有効に機能するために要求される酸性度を与える。当該直鎖アルキルベンゼンスルホン酸は、C8〜C16アルキルベンゼンスルホン酸から選択されてもよい。当該直鎖アルキルベンゼンスルホン酸はドデシルベンゼンスルホン酸であってもよい。溶剤およびブロックコポリマーとの組み合わせにおいて、これらは、当該難溶性の環状カルボン酸の可溶化において機能する。
【0041】
当該直鎖アルキルベンゼンスルホン酸は、濃縮溶液中に、約5%w/w〜約20%w/wの濃度で存在する。あるいは、約6%w/w、約7%w/w、約10%w/w、および約14%w/wの最小濃度が考えられる。同様に、約19%w/w、約17%w/w、約15%w/w、約14%w/w、約12%w/wおよび約10%w/wの最大濃度が考えられる。
【0042】
(溶剤)
溶剤は約4%w/w〜約15%w/wの濃度で使用される。あるいは、約5%w/w、約6%w/w、および約7%w/wの最小濃度が考えられる。同様に、約10%w/w、約9%w/w、および約8%w/wの最大濃度が考えられる。溶剤の非限定的な例は、短鎖アルコール、グリコールエーテルおよびその誘導体、ならびに芳香族アルコールである。
【0043】
適した短鎖アルコールは、一般的に、メタノール、エタノール、イソ−プロパノール、n−ブタノールおよびn−ペンタノール等の(しかしこれらに限定されない)C1〜C8アルコールである。
【0044】
プロピレングリコール n−プロピルエーテル(Dowanol PnP(商標)、Dow Chemical)は、溶剤として使用するための代表的なグリコールエーテルである。他の適したグリコールエーテルとしては、ジプロピレングリコール n−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコール n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコール n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの製品は、Dow Chemical Company(ミシガン州、ミッドランド)から入手でき、登録商標Dowanolと関連して販売されている。芳香族アルコールのうち、ベンジルアルコールおよびフェノキシエタノールは、代表的な溶剤である。さらに有用な溶剤は3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(MMB)である。適した溶剤としては、非可燃性の溶剤(37℃超の引火点を有する溶剤であるもの)も挙げられる。好ましい溶剤は、より高い引火点を有するものである。
【0045】
下記の成分は、本発明の溶液において任意に使用できる。
【0046】
(他の陰イオン性界面活性剤)
当該溶液は、スルホン化C12〜C22カルボン酸、ならびにそのアルカリ金属、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩、C6〜C22アルキルジフェニルオキシドスルホン酸、ならびにそのアルカリ金属、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩、ナフタレンスルホン酸ならびにそのアルカリ金属、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩、C8〜C22アルキルスルホン酸、ならびにそのアルカリ金属、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩、アルカリ金属、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムのC8〜C18アルキル硫酸塩、ならびに、アルキル基もしくはアルケニル基が独立に6〜18の炭素原子を含む、スルホコハク酸のアルキルもしくはアルケニルのエステルまたはジエステル、ならびにそのアルカリ金属、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩から選択される1つ以上の他の陰イオン性界面活性剤をさらに含み、基本的にこれらからなり、またはこれらからなっていてもよい。当該スルホン化C12〜C22カルボン酸およびその上記塩のうち、スルホン化9−オクタデカン酸、2−スルホC12−C18脂肪酸二ナトリウム塩およびメチル−2−スルホC12−C16エステルナトリウムが代表的である。ナフタレンスルホン酸の代表的な塩は、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムである。C8〜C22アルキルスルホン酸の代表的な塩は、オクチル(C8)スルホン酸ナトリウム、C14〜C17 sec−アルキルスルホン酸ナトリウム、ならびに1−オクタンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、およびトリデカンスルホン酸のナトリウム塩である。上記C8〜C18アルキル硫酸塩のうち、ラウリル硫酸ナトリウムおよびオクチル硫酸ナトリウムが代表的である。
【0047】
アルキル基もしくはアルケニル基が独立に6〜18の炭素原子を含む、スルホコハク酸のアルキルもしくはアルケニルのエステル、またはジエステル、ならびにそのアルカリ金属、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩のうち、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウムおよびスルホコハク酸ジオクチルナトリウムが代表的である。
【0048】
アルキルジフェニルオキシドスルホン酸のうち、C6およびC10のアルキル化スルホン化ジフェニルオキシド二ナトリウム塩が代表的である。他のアルキル化スルホン化ジフェニルオキシド二ナトリウム塩(ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸および4−ドデシル化ジフェニルオキシドスルホン酸二ナトリウム等)もまた代表的である。
【0049】
これらの成分は、典型的に、約0.1%w/w〜約20%w/wの濃度で存在する。あるいは、約0.5%w/w以上、約1%w/w、および約2%w/wの最小濃度が考えられる。約15%w/w、約13%w/w、約11%w/w、約10%w/w、約9%w/w、約7%w/w、約5%w/w、約3%w/w、および約2.5%w/wの最大濃度が同様に考えられる。
【0050】
(過酸化水素安定剤およびキレート化剤)
少なくとも1つの過酸化水素の安定剤またはキレート化剤は、溶液中の適切なレベルの過酸化水素が長期間維持され、それによって有効期間が延長することを確実にするために含まれていてもよい。適した過酸化水素安定剤としては、リン酸(HPO)およびホスホン酸(1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(ATMP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2−ヒドロキシエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)、およびエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMPA)等)が挙げられる。代表的なホスホン酸は、Rhodia(ニュージャージー州、クランバリー)から、商標BRIQUESTの下で入手でき、一方、さらなる代表的なホスホン酸は、ThermPhos(英国、サウスウェールズ)から、商標DEQUESTの下で入手できる。
【0051】
これらの成分は、典型的に、約0.1%w/w〜約20%w/wの濃度で存在する。あるいは、約0.5%w/w以上、1%w/wおよび約2%w/wの最小濃度が考えられる。約15%w/w、約13%w/w、約11%w/w、約10%w/w、約9%w/w、約7%w/w、約5%w/w、約3%w/w、および約2.5%w/wの最大濃度が同様に考えられる。
【0052】
(他の非イオン性界面活性剤)
当該溶液は、アルキルポリグルコシド、アルカノールアミン、エトキシ化アルカノールアミド、脂肪酸エステル、グリセロールエステル、およびPEGエステル、ソルビタンエステル、エトキシ化ソルビタンエステル、およびアルコールエトキシレートから選択される非イオン性界面活性剤をさらに含み、基本的にこれらからなり、またはこれらからなっていてもよい。
【0053】
これらの成分は、典型的に、約0.1%w/w〜約10%w/wの濃度で存在する。あるいは、約0.5%w/w以上、約1%w/w、および約2%w/wの最小濃度が考えられる。約8%w/w、約7%w/w、約5%w/w、約3%w/w、および約2.5%w/wの最大濃度が同様に考えられる。
【0054】
(緩衝剤)
所望の好ましいpH値(下記でさらに論じられる)を達成するために、緩衝剤を、溶液に、約0.01%w/w〜約10%w/wに及ぶ濃度で加えてもよい。これらの緩衝剤としては、リン酸、酢酸、乳酸、およびグリコール酸が挙げられる。
【0055】
当該濃縮溶液中で、当該pHは、最大約2であってもよい。あるいは、当該pHは、最大約1.5、または最大約1.0であってもよい。当該pHはまた、約0.05以上または約0.2以上であってもよい。
【0056】
そのまま水で希釈された場合、当該溶液は、約1.5〜約5のpHを有していてもよい。あるいは、当該溶液は、約1.7以上のpHを有していてもよい。最大約4、最大約3、または最大約2.5のpHを有する希釈された溶液もまた考えられる。
【0057】
(腐食防止剤)
腐食防止剤は、非鉄金属との溶液の適合性を改善する目的で加えられてもよい。例としては、ベンゾトリアゾール、ヒドロベンゾトリアゾール、およびカルボキシベンゾトリアゾール等のトリアゾールが挙げられる。さらなる例としては、モリブデン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウムならびにそれらの組み合わせが挙げられる。含まれる場合には、本発明の濃縮溶液中の濃度は、約0.1%w/w〜約10%w/wである。約0.2%w/w以上の濃度もまた考えられる。最大約1.5%w/w、約2.5%w/w、約3.5%w/w、約4.5%w/w、約5%w/w、約6%w/wおよび約8%w/wの濃度もまた考えられる。
【0058】
(他のカルボン酸)
そのpH緩衝特性、安定化特性または洗浄特性によって知られる1つ以上のモノカルボン酸、およびポリカルボン酸もまた、当該溶液に加えられてもよい。代表的なモノカルボン酸は、乳酸、グリコール酸、酢酸、2−フロ酸、および3−フロ酸である。代表的なポリカルボン酸はクエン酸である。
【0059】
これらの他のカルボン酸が当該濃縮溶液に含まれる場合、これらは、溶液の約0.05%w/w〜約5%w/wの濃度で存在する。あるいは、約0.5%w/w以上、約1%w/w、および約2%w/wの最小濃度が考えられる。約4.5%w/w、約4%w/w、および約3%w/wの最大濃度もまた考えられる。
【0060】
(他の添加剤)
製品の市場性の高い品質を増強するため、添加剤(着色料または色素および香料または芳香剤等)を加えてもよい。
【実施例】
【0061】
本願明細書に記載された濃縮溶液は、約1:10〜約1:1000(溶液/水)の比で、水によって希釈されてもよい。典型的に、当該溶液は、約1:64または1:32の比で希釈される。
【0062】
本発明の濃縮溶液は、キットの形態で提供されてもよい。例えば、上記の様々な成分は、希釈および使用の前に共に混合される2以上の分離部の形態で提供されてもよい。
【0063】
本発明は、下記の非限定的な実施例への参照によって、より良く理解することができ、実施例においては下記の成分が使用される。
【0064】
(過酸化水素および水)
全ての実施例において使用した過酸化水素は、Arkema社(ペンシルベニア州、フィラデルフィア)によって製造または販売された、50%w/wの食品グレードの市販の溶液である。
DI水:脱イオン水を水溶液の作製のために使用した。
【0065】
(キレート化剤)
Dequest 2010:ThermPhos(英国、サウスウェールズ)によって製造または販売された1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(60%w/w 溶液)
サリチル酸
【0066】
(陰イオン性界面活性剤)
Biosoft S−101:Stepan Company(イリノイ州、ノースフィールド)によって製造または販売されたドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)(98%w/w 溶液)
Bioterge PAS−8S:Stepan Company(イリノイ州、ノースフィールド)によって製造または販売されたオクチルスルホン酸ナトリウム(SOS)(40%w/w 溶液)
Aerosol OT−75:Cytec Industries社(ニュージャージー州、ウエストパターソン)によって製造または販売されたスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(75%w/w 溶液)
Stepanol AM:Stepan Company(イリノイ州、ノースフィールド)によって製造または販売されたラウリル硫酸アンモニウム(30%w/w 溶液)
【0067】
(難溶性のカルボン酸)
サリチル酸
安息香酸
【0068】
(非イオン性界面活性剤(乳化剤))
Alfonic L610−3.5:Sasol North America社(テキサス州、ヒューストン)によって製造または販売されたC6〜C10アルキル、3.5モルのエチレンオキシド(EO)アルコールエトキシレート(AE)(100%w/w 溶液)
Surfynol 104 PG−50:Air Products(ペンシルベニア州、アレンタウン)によって製造または販売されたテトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール,2,4,7,9(プロピレングリコール中の50%w/w 溶液として)
Surfynol 420:Air Products(ペンシルベニア州、アレンタウン)によって製造または販売されたテトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール,2,4,7,9(25%w/w 溶液)、エトキシ化テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール,2,4,7,9(75%w/w 溶液)
Surfynol 440:Air Products(ペンシルベニア州、アレンタウン)によって製造または販売されたエトキシ化テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール,2,4,7,9(100%w/w 溶液)
Ninol 40−CO:Stepan Company(イリノイ州、ノースフィールド)によって製造または販売されたコカミドジエタノールアミド(85%w/w 溶液)
Ninol 30−LL:Stepan Company(イリノイ州、ノースフィールド)によって製造または販売されたラウラミドジエタノールアミド(85%w/w 溶液)
Ninol 11−CM:Stepan Company(イリノイ州、ノースフィールド)によって製造または販売されたココナツジエタノールアミド(60%w/w 溶液)
APG 325:Cognis GmbH(ドイツ、モンハイム)によって製造または販売されたD−グルコピラノシド、C9〜C11アルキル、オリゴマー(50%w/w 溶液)
Glucopon 425N:Cognis GmbH(ドイツ、モンハイム)によって製造または販売された、アルキルポリグルコシド、D−グルコピラノシド、C10〜C16アルキル、オリゴマー、20%w/w D−グルコース、デシル、オクチルエーテル、オリゴマー(30%w/w 溶液)の混合物
Glucopon 600UP:Cognis GmbH(ドイツ、モンハイム)によって製造または販売されたアルキルポリグルコシド、D−グルコピラノシド、C10〜C16アルキル、オリゴマー(50%w/w 溶液)
Levenol H&B:Kao Corporation(オハイオ州、シンシナティ)によって製造または販売されたグリセリス−2−ココエート(100%w/w 溶液)
Emanon XLF:Kao Corporation(オハイオ州、シンシナティ)によって製造または販売されたグリセレス−7−カプリレート/カプレート(100%w/w 溶液)
Oxidet DM−20:Kao Corporation(オハイオ州、シンシナティ)によって製造または販売されたジメチルラウラミンオキシド(30%w/w 溶液)
Ethox TAM−15:Ethox Chemicals(サウスカロライナ州、グリーンビル)によって製造または販売されたPEG−15獣脂アンモニウムエトサルフェート
Ethox TAM−20:Ethox Chemicals(サウスカロライナ州、グリーンビル)によって製造または販売されたPOE(20)獣脂アミン
Ethox LF 1226:Ethox Chemicals(サウスカロライナ州、グリーンビル)によって製造または販売されたポリオキシアルキレングリコールエーテル(100%w/w 溶液)
Ethal OA 23:Ethox Company(サウスカロライナ州、グリーンビル)によって製造または販売されたオレイル(C18)アルコールエトキシレート、23モルのEO/1モルのアルコール(70%w/w 溶液)
Tomadol 91−2.5:Tomah Products社(ルイジアナ州、リザーブ)によって製造または販売されたエトキシル化C9〜C11アルコール(90%w/w 溶液)
Tomadol 91.6:Tomah Products社(ルイジアナ州、リザーブ)によって製造または販売されたエトキシル化C9〜C11アルコール(90%w/w 溶液)
Tomadol 91.8:Tomah Products社(ルイジアナ州、リザーブ)によって製造または販売されたエトキシル化C9〜C11アルコール(100%w/w 溶液)
Rhodasurf ON−877:Rhodia(ニュージャージー州、クランバリー)によって製造または販売されたポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(70%w/w 溶液)
Tergitol L61:Dow Chemicalsによって製造または販売されたポリアルキレングリコール(99%w/w 溶液)
【0069】
下記の実施例中で使用されたPluronicは、全て、BASF Corporationによって製造または販売されたEO−POのブロックコポリマーである。これらの化合物については、上記でさらに十分に記載されている。
【0070】
下記の実施例中で使用されたTetronicsは、全て、BASF Corporationによって製造または販売されたブロックコポリマーである。これらの化合物は、上記でさらに十分に記載されている。
【0071】
(陰イオン性界面活性剤(ハイドロトロープ))
Stepanate SXS:Stepan Company(イリノイ州、ノースフィールド)によって製造または販売されたキシレンスルホン酸ナトリウム(40%w/w 溶液)
Dowfax C10L:Dow Chemical Companyによって製造または販売されたC10 アルキル化スルホン化ジフェニルオキシド二ナトリウム塩(40%w/w 溶液)
DOWFAX C6L:Dow Chemical Companyによって製造または販売されたC6アルキル化スルホン化ジフェニルオキシド二ナトリウム塩(40%w/w 溶液)(Dowfax ハイドロトロープとも呼ばれる)
【0072】
(溶剤)
Dowanol PnP:Dow Chemical Companyによって製造または販売されたプロピレングリコール、n−プロピルエーテル(100%w/w 溶液)
Dowanol TPnB:Dow Chemical Companyによって製造または販売されたトリプロピレングリコール、n−ブチルエーテル(100%w/w 溶液)
Dowanol DPnP:Dow Chemical Companyによって製造または販売されたジプロピレングリコール、n−プロピルエーテル(100%w/w 溶液)
1,3 ブチレングリコール
イソプロピルアルコール
ベンジルアルコール
メトキシメチルブタノール(MMB)
【0073】
(pH調整剤/緩衝剤)
リン酸
【0074】
(微生物の試験方法および生物)
試験は、下記の供試生物を使用して行った:緑膿菌(ATCC 15442)、黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)、サルモネラ・コレレスイス(ATCC 10708)、マイコバクテリウム・テラエ(ATCC 15755)、白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)(ATCC 9533)、およびポリオウイルス タイプ1のセービンワクチン株(ATCC VR−192)。
【0075】
溶液を、ASTM E2111(Standard Quantitative Carrier Test Method To Evaluate the Bactericidal, Fungicidal, Mycobactericidal and Sporicidal Potencies of Liquid Chemical Germicides、ASTM International、2005)、およびASTM E1053/97(Standard Test Method for Efficacy of Virucidal Agents Intended for Inanimate Environmental Surfaces、ASTM International、2002)を使用して試験した。
【0076】
(物理的安定性試験方法)
凍結融解試験を、当該溶液の物理的安定性を評価するために行った。試料を、フリーザー中に、−15℃で、少なくとも12時間置き、次いで、室温で、約8時間解凍した。各試料の結晶化または沈殿が視覚的に認められ、記録した。
【0077】
(化学安定性試験方法)
溶液を、試料の調製後すぐに、その過酸化物量について試験した。当該試験を、異なる時間間隔で、室温で繰り返した。次いで、その結果を、1年間にわたる当該溶液のペルオキシドの減少およびpHの変化を算出するために外挿した。
【0078】
検討を容易にするため、下記の表中に記載される全ての濃度は、当該溶液中の成分の実際の濃度であり、当該溶液を作製するために使用される出発物質の量ではない。
【0079】
(実施例I)
例示的な溶液を、下記の表3、4、5、6および7中に示されるように調製した。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
上記の溶液は、約0.05〜約1.5のpHを有する。
【0086】
溶液A1〜A20をその物理的安定性について試験した。当該溶液は凍結融解試験後に透明なままだった。沈殿は認められなかった。当該凍結融解試験を5回繰り返した。全ての試料溶液は透明なままだった。
【0087】
溶液A8、A17、およびA18を、殺菌活性、殺ウイルス活性、殺真菌活性、および殺マイコバクテリア活性について試験した。殺菌性、殺ウイルス性、および殺真菌性の試験は、1:64の希釈で行い、殺マイコバクテリア性の試験は、1:32の希釈で行った。全ての試験は、5分間の接触時間および20℃±2の温度で行った。全ての供試生物を、まず、ウシ血清中に懸濁し、5%w/wの最終濃度の溶液にした。標準的な硬度である400ppm(炭酸カルシウム換算)を有する水を希釈剤として使用した。当該水は、AOAC International(1990)中の処方に従って調製した。その結果を下記表8中に示す。
【0088】
【表8】

【0089】
上記の結果は、例示的な溶液A8、A17、およびA18が、5分間の接触時間後において、6log超の細菌数の減少、3log超のウイルス数の減少、および5log超のマイコバクテリア数の減少の達成において有効であることを示す。
【0090】
溶液A8、A17、A18を、過酸化水素の安定性について、室温で試験した。1年後、これらの溶液では、4%未満のペルオキシドが減少した。
【0091】
(実施例II)
下記の比較例は、同一の化学分類に属する他の成分による、本発明の溶液中の成分の置き換えは、第1もしくは第2の凍結融解試験後か、または溶液の調製直後かのいずれかに、環状カルボン酸の沈殿をもたらす可能性があることを示す。上記の通り、アルキルベンゼンスルホン酸、ブロックコポリマーおよび溶剤の組み合わせは、安定な濃縮溶液を与える。興味深いことに、アルキルベンゼンスルホン酸は陰イオン性界面活性剤であるが、アルキルベンゼンスルホン酸の他の陰イオン性界面活性剤による置き換えは、相分離(沈殿)をもたらした。さらに、ブロックコポリマーは非イオン性界面活性剤であるが、当該ブロックコポリマーの他の非イオン性界面活性剤による置き換えは、相分離(沈殿)をもたらした。さらに、溶剤が当該溶液から除去され、より高い濃度の乳化剤に置き換えられた場合、得られた溶液は沈殿を生じた。
【0092】
比較液B1〜B48(表9〜14中で詳述)を調製し、その物理的安定性について試験した。当該溶液は、調製後に濁るか、または、第2の凍結融解試験後に沈殿するかのいずれかだった。溶液B43のみが透明なままであり、凍結融解後でさえも沈殿しなかったが、当該組成物は下記で説明される通り、本発明によるものではない。
【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
溶液B1〜B28のpHは、0.5〜1.5だった。これらの溶液中で、ブロックコポリマー界面活性剤を、異なる非イオン性および陰イオン性の界面活性剤に置き換えた。さらに、溶剤を各溶液に加えた。全ての溶液は、調製後すぐに濁り、または凍結融解試験後に沈殿した。
【0098】
【表13】

【0099】
溶液B29〜B33は、Biosoft S101(ドデシルベンゼンスルホン酸)を有さず、代わりに他の陰イオン性界面活性剤を組み込んだ。溶液B34〜B37は、溶剤を含まなかった。溶液B29〜B37は、調製後すぐに濁り、または第2の凍結融解後に沈殿した。
【0100】
【表14】

【0101】
溶液B38〜B40は、単相の溶液を形成せず、調製後すぐに2相になった。溶液B41、B42は、混合後すぐに沈殿した。溶液B43のみが、凍結融解後でさえも、透明なままだった。この溶液は、50%w/wイソプロピルアルコールを含んでおり、従って、可燃性溶液である。
【0102】
上記の実験は、成分の適切な混合物が使用されないと、単相溶液を達成するために非常に高いレベルの溶剤を使用することが必要であることを示す。上記のように、高い溶剤量を含む溶液は、危険である可能性がある。
【0103】
前述の実施例は説明のみを目的とし、かつ、請求項によって定められる本発明の範囲を制限するように解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
過酸化水素は、広い範囲の活性を有するため、本発明の溶液は、多くの異なる用途において有用である。医療分野では、当該溶液は、病院、診療所、研究室、歯科診療室、在宅医療および長期療養施設において使用されてもよい。これは、食品および飲料の加工ならびに調製、畜産、接客業において使用されてもよく、一般的な公衆衛生(例えば、清掃業)のために使用されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.05〜約2のpHを有する、濃縮され、かつ、安定な洗浄消毒用溶液であって、
a.約2%w/w〜約8%w/wの過酸化水素と、
b.約5%w/w〜約20%w/wのC8〜C16直鎖アルキルアリールスルホン酸と、
c.約0.5%w/w〜約8%w/wの少なくとも1つの難溶性の環状カルボン酸であって、前記環状カルボン酸は、酸形態および塩形態で、少なくとも9:1(酸:塩)の比で存在する環状カルボン酸と、
d.約2%w/w〜約10%w/wの少なくとも1つのブロックコポリマー界面活性剤と、
e.約4%w/w〜約15%w/wの少なくとも1つの溶剤と、を含む洗浄消毒用溶液。
【請求項2】
前記過酸化水素の濃度は約3%w/w〜約8%w/wである請求項1記載の溶液。
【請求項3】
前記pHは約0.2〜約2である請求項1または2記載の溶液。
【請求項4】
前記難溶性のカルボン酸は、安息香酸および安息香酸誘導体から選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項5】
サリチル酸を含む請求項4記載の溶液。
【請求項6】
前記溶剤は、グリコールエーテル、1〜8の炭素原子を有する短鎖アルコール、ベンジルアルコール、およびフェノキシエタノールから選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項7】
前記グリコールエーテルは、プロピレングリコール n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール n−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコール n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコール n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルから選択される請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項8】
プロピレングリコール n−プロピルエーテルを含む請求項8記載の溶液。
【請求項9】
ドデシルベンゼンスルホン酸を含む請求項12記載の溶液。
【請求項10】
前記少なくとも1つのブロックコポリマー界面活性剤は、(A)−(B)−(A)または(B)−(A)−(B)、または
【化1】

(i.Aは、プロピレンオキシド反復単位のブロックを示し、Bは、エチレンオキシド反復単位のブロックを示し、かつ、前記ブロックコポリマー界面活性剤は1500〜30000の分子量を有する)から選択される請求項1〜15のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項11】
前記少なくとも1つのブロックコポリマー界面活性剤はPLURONIC L62である請求項16記載の溶液。
【請求項12】
1:10〜1:1000(溶液:水)の比で、水によって希釈された請求項1〜22のいずれか1項に記載の溶液。

【公表番号】特表2012−504109(P2012−504109A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528154(P2011−528154)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001376
【国際公開番号】WO2010/037219
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(511072884)ヴィロックス テクノロジーズ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】