説明

濾過材収納体を備えた石詰め構造物及び鋼製枠堰堤

【課題】濾過材を収納することができる濾過材収納体を備えた石詰め構造物及び鋼製枠堰堤を提供すること。
【解決手段】石詰め構造物内に、濾過材収納体が縦向きに埋め込み配置され、その濾過材収納体に、濾過材が収納されている石詰め構造物であって、濾過材収納体16は、縦向きに配置され側周面に通水孔2を有する複数の縦断面波形筒状管体1を備え、各縦断面波形筒状管体1内に濾過材9が収納され、濾過材収納体16の周囲に充填材7による通水性充填材層8が形成されて、前記濾過材収納体16が埋め込まれている石詰め構造物とする。その石詰め構造物は、鋼製枠を用いた鋼製枠堰堤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム等に流れ込む上流河川その他の河川における水質を浄化するために設置される濾過材収納体を備えた石詰め構造物及び鋼製枠堰堤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の水浄化接触材を構造体内の多数のフックに係止した構造の海水浄化設備が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、やし殻繊維又は不織布を用いた袋体内に木炭片を詰め込んだ袋体を載置するようにした水質浄化型木工沈床で、河川等に設置される石詰め形態の水質浄化型木工沈床を上流側から下流側に向かって順次レベルが低くなるように設置する形態も知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、濾過材料としては、植物を用いた形態の濾過材料も知られている(例えば、特許文献3参照)
また、上流河川の浄化用堰堤としては、河床上に設置される石詰め部の鋼製箱枠を、上流側から下流側方向に間隔をおいて形成し、各石詰め部の鋼製箱枠の両端部を袖部の鋼製箱枠に接合し、石詰め部の鋼製箱枠間に、空洞鋼製箱枠を形成し、その空洞鋼製箱枠を活性炭又は/及び木炭の充填部とし、その充填部内に、活性炭シートを前後両面に張設した網籠内に木炭を充填してなる浄化フィルターを収容するようにした上流河川の浄化用堰堤も知られている(例えば、特許文献4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−228930号公報
【特許文献2】特開2001−140240号公報
【特許文献3】特開2001−269517号公報
【特許文献4】特開平06−154744号公報
【特許文献5】特開2004−114161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多数の水浄化接触材を構造体内の多数のフックに係止する構造の場合は、多数の水浄化接触材の設置作業が煩雑であると共に交換作業に時間がかかり施工コストが高くなるという問題があった。
また、多数の水浄化接触材を構造体内の多数のフックに係止する構造の場合は、各水浄化接触材が水流により揺れ動くため、安定した状態で設置することが困難であり、安定した浄化作用を発揮しづらいという問題がある。
木炭片を詰め込んだ袋体を載置するようにした形態の水質浄化型木工沈床では、水流に対しての袋体の安定性が低いという問題がある。
石詰め部の鋼製箱枠間に、空洞鋼製箱枠を形成し、その空洞鋼製箱枠を活性炭又は/及び木炭の充填部とし、その充填部内に、活性炭シートを前後両面に張設した網籠内に木炭を充填してなる浄化フィルターを収容する形態では、浄化フィルターが大型となり、また、空洞鋼製箱枠が容器ではないため、浄化フィルターの交換が容易でないという問題がある。
【0005】
本発明は、濾過材の安定性もよく、濾過材設置及び/又は交換を容易に行うことができる濾過材収納体を備えた石詰め構造物及び鋼製枠堰堤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の濾過材収納体を備えた石詰め構造物では、濾過材が収納されている濾過材収納体が縦向きに埋め込み配置される石詰め構造物であって、濾過材収納体は、縦向きに配置され側周面に通水孔を有する複数の縦断面波形筒状管体を備え、各縦断面波形筒状管体内に濾過材が収納され、濾過材収納体の周囲に充填材による通水性充填材層が形成されて、前記濾過材収納体が埋め込まれていることを特徴とする。
第2発明では、第1発明の濾過材収納体を備えた石詰め構造物において、縦断面波形筒状管体は、その外周面側の凹部に透水性充填材層の充填材が入り込んで石詰め構造物内で保持されるとともに、縦断面波形筒状管体の内周面側の凸部が内部に収納された濾過材に接触して濾過材を保持することを特徴とする。
第3発明では、第1発明又は第2発明の濾過材収納体を備えた石詰め構造物において、濾過材収納体は、その上端部に通水孔を備えていない蓋材が設けられていることを特徴とする。
第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかの濾過材収納体を備えた石詰め構造物において、濾過材が、天然やし繊維あるいは合成繊維等の多数の繊維を柱状に成形すると共に繊維製ネットにより包んだ濾過材であることを特徴とする。
第5発明の濾過材収納体を備えた石詰め鋼製枠堰堤では、第1発明〜第4発明のいずれかに記載の石詰め構造物が、石詰め鋼製枠堰堤であることを特徴とする。
第6発明の濾過材収納体を備えた石詰め鋼製枠堰堤では、第1発明〜第4発明のいずれかの石詰め構造物が、充填材に代えて、鋼製枠体内に石を充填した鋼製枠堰堤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によると、濾過材が収納されている濾過材収納体が縦向きに埋め込み配置される石詰め構造物であって、濾過材収納体は、縦向きに配置され側周面に通水孔を有する複数の縦断面波形筒状管体を備え、各縦断面波形筒状管体内に濾過材が収納され、濾過材収納体の周囲に充填材による通水性充填材層が形成されて、前記濾過材収納体が埋め込まれているので、簡単な構成で濾過機能を有する石詰め構造物とすることができる。
しかも、濾過材が側周面に通水孔を有する中空の縦断面波形筒状管体内に配置されているため、濾過材を所定の位置に所定の姿勢で安定した状態で設置することができ、安定した濾過機能を有する濾過材収納体を備えた石詰め構造物とすることができる。
また、縦断面波形筒状管体を備えた濾過材収納体が縦向きに石詰め構造物内に配置され、その縦断面波形筒状管体内に濾過材が収納されているので、濾過材の設置及び/又は交換を容易に行うことができる等の効果が得られる。
第2発明によると、縦断面波形筒状管体は、その外周面側の凹部に透水性充填材層の充填材が入り込んで石詰め構造物内で保持されるとともに、縦断面波形筒状管体の内周面側の凸部が内部に収納された濾過材に接触して濾過材を保持するので、縦断面波形筒状管体の外周面側の凹部に石が入り込むため、断面波形筒状管体の周囲に充填される石により、縦断面波形筒状管体を保持することができ、濾過材の引き抜き交換時において縦断面波形筒状管体の抜け出しを防止し、設置位置を維持することができる。また、縦断面波形筒状管体は縦断面が波形の筒状管体で内周面側の凸部が内部に収納された濾過材に接触して保持しているので、濾過材と濾過材収納体とに働く摩擦力を小さく抑えられ、濾過材の交換時には濾過材の引き抜きが容易に行える。
各縦断面波形筒状管体の内周面側の凸部が内部に収納された濾過材に接触して保持されていることで濾過材が安定した姿勢となると共に安定した濾過機能を発揮することができ等の効果が得られる。
濾過材収納体の周囲にクラッシャラン等からなる充填材を充填しているので、濾過材収納体の周囲へのクラッシャラン等からなる充填材の充填が容易であると共に、濾過材収納体の周囲に確実にクラッシャラン等からなる充填材を充填して、通水性充填材層を形成することができる等の効果が得られる。
第3発明によると、濾過材収納体の上端部に通水孔を備えていない蓋材が設けられているので、濾過材の上端部側からのからの土砂の流入を防止でき、これにより安定した濾過機能を発揮させることができる等の効果がえられる。
第4発明によると、濾過材が、天然やし繊維あるいは合成繊維等の多数の繊維を柱状に成形すると共に繊維製ネットにより包んだ濾過材であるので、天然やし繊維等の安価な濾過材を用いて、土石流あるいは河川等における濁水中の土粒子を吸着して、濁水の濾過をすることができる等の効果が得られる。
第5発明の濾過材収納体を備えた石詰め鋼製枠堰堤では、第1発明〜第4発明のいずれかに記載の石詰め構造物が、石詰め鋼製枠堰堤であるので、石詰め鋼製枠堰堤に濾過機能を付与することができ、また鋼製枠堰堤を組み立てて構築することができるので、構造が簡単であると共に構築が容易である等の効果が得られる。
第6発明の濾過材収納体を備えた石詰め鋼製枠堰堤では、第1発明〜第4発明のいずれかの石詰め構造物が、充填材に代えて、鋼製枠体内に石を充填した鋼製枠堰堤であるので、石詰め鋼製枠堰堤に濾過機能を付与することができ、また石を充填した鋼製枠堰堤を組み立てて構築することができるので、構造が簡単であると共に構築が容易である等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の複数の縦断面波形筒状管体を備えた濾過材収納体を埋め込んだ石詰め構造物を示す概略縦断側面図である。
【図2】図1の概略正面図である。
【図3】図1の一部を拡大して示す縦断側面図である。
【図4】図3の一部を拡大すると共に斜材を手前側にして示す縦断側面図である。
【図5】図1の一部を拡大すると共に一部を切り欠いて示す正面図である。
【図6】図3の一部を拡大して示す縦断側面図である。
【図7】図3の一部拡大平面図である。
【図8】図7において、蓋を取り外した状態を示す平面図である。
【図9】濾過材を交換する場合の説明図である。
【図10】濾過材を交換する場合の説明図である。
【図11】濾過材を交換した状態を示す説明図である。
【図12】間隔をおいて縦断面波形筒状管体を連結した状態を示す一部縦断正面図である。
【図13】図12に示す縦断面波形筒状管体を連結した状態の横断平面図である。
【図14】周側面に多数の通水孔を設けた断面波形筒状管体を備えた濾過材収納体を示す一部縦断側面図である。
【図15】濾過材を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図16】濾過材を示すものであって、(a)は縦断正面図、(b)は横断平面図である。
【図17】他の配置形態の濾過材収納体を埋め込んだ石詰め構造物を示す平面図である。
【図18】さらに他の配置形態の濾過材収納体を埋め込んだ石詰め構造物を示す平面図である。
【図19】他の形態の濾過材を示すものであって、(a)は縦断正面図、(b)は横断平面図である。
【図20】複数の縦断面波形筒状管体を相互を連結した他の形態の濾過材収納体状態を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
先ず、図14を参照して、本発明において用いる縦断面波形筒状管体1の一形態について説明すると、鋼製筒状の縦断面波形筒状管体1とされ、側周面に内側に貫通する通水孔2を有する中空の縦断面波形筒状管体1が用いられている。
このような縦断面波形筒状管体1を製作する場合には、例えば、縦方向(管軸方向)の断面形態が波形で、かつ平面視の断面形態が、断面半円状で両側部に接合用外フランジを有する断面半円状短尺ユニット3相互をボルト・ナット等により接合して断面円状短尺ユニット4を形成し、かつ直列に隣り合う断面円状短尺ユニット4相互は、縦方向の端部を重合させて、ボルト・ナット等により接合して、通水孔2を有する中空管状の長尺の縦断面波形筒状管体1が形成される。
【0011】
前記のような縦方向の断面形態が波形であると、縦断面波形筒状管体1の外表面に、その縦方向に波形形態による凹部5と凸部6が交互に形成されているため、縦断面波形筒状管体1の外側周囲にクラッシャラン等からなる充填材7(図4参照)を充填して通水性充填材層8を形成した場合に、凹部にクラッシャラン等からなる充填材7の一部が入り込み、通水性充填材層8あるいはその周囲の石とが鋼製構造物内に配置されて保持されていることで、縦断面波形筒状管体1を確実に保持し、縦断面波形筒状管体1内に配置される濾過材9を交換する場合に、縦断面波形筒状管体1の抜け出しを確実に防止すると共に安定した状態で保持することができる。
【0012】
図14に示す形態は、縦断面波形筒状管体1の一例を示したもので、縦断面波形筒状管体1の外面に、その縦方向に波形の凹部5凸部6を交互に設けてなる抜け出し防止手段としている。図14以外の形態も可能であり、例えば、図20に示すように、側周面に多数の通水孔2を有する中空の鋼管からなる縦断面波形筒状管体1の縦方向の端部あるいは中間部に、フランジあるいはストッパ10等からなる抜け出し防止手段を備えた形態としてもよい。縦断面波形筒状管体1の下端部には、下端側からの濁水の流入を防止するために、底板を設けるのが好ましい。同様に、縦断面波形筒状管体1の上端部には、下端側からの濁水の流入を防止し、濾過性能の低下を防止するために、着脱可能で通水孔を備えていない蓋材11を設けるのが好ましい。
前記の着脱可能な蓋材11としては、例えば、図20に示すように、蓋本体12の周縁部に下方に向かって突出する周側壁13を設け、その周側壁13に平面視で角度間隔をおいて複数の雌ねじ孔あるいは雌ねじ部材を設けて、半径方向に進退移動可能にボルト14を設けることで、前記ボルト14の先端部を、縦断面波形筒状管体1の凹部5または凸部6等に係止したり外面に圧着させることで、蓋の離脱を防止し、濾過材9の上下方向からの濁水の濾過を避けるようにしている。
【0013】
図12および図13に示すように、間隔をおいて隣り合う縦断面波形筒状管体1を連結リンク15により連結して、ユニット化された濾過材収納体16を形成するようにしてもよい。したがって、前記の濾過材収納体16は、複数の縦断面波形筒状管体1を備えた形態とし、前記の蓋材11としては、個々の縦断面波形筒状管体1に設けるようにしてもよく、図示を省略するが、濾過材収納体16の上端部全体にわたるような蓋材11を設けるようにしてもよい。
この形態の場合には、縦断面波形筒状管体1に、半径方向の対称位置にブラケット17を縦断面波形筒状管体1の外面に溶接により設けると共に上下方向に間隔をおいて複数設けて、間隔をおいて隣り合う縦断面波形筒状管体1相互のブラケット17を、連結リンク15及びボルト等の横ピン18により連結して、ユニット化すると、複数の縦断面波形筒状管体を備えた濾過材収納体16を一度に、吊り上げ搬送して設置することができ、また、隣り合う縦断面波形筒状管体1の間隔を一定の間隔に配置することも可能になる。ユニット化する場合には、前後方向に連結してユニット化してもよく、あるいは左右方向にユニット化してもよい。
なお、図示を省略するが、縦断面波形筒状管体1の外面には、吊金具(図示を省略した)が設けられている。
縦断面波形筒状管体1の材質としては、特に限定されるものではないが、鋼管製或はエキスパンドメタルを円筒状に形成した縦断面波形筒状管体1あるいは合成樹脂製の縦断面波形筒状管体1としてもよく、横断面形態としては、図示の円形以外にも縦断面波形の筒状管体であれば、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形の形態、半円形等の形態であってもよく、その横断面形態に応じて、濾過材の横断面形態を設定すればよい。
【0014】
次に、図15および図16を参照して、前記の複数の縦断面波形筒状管体1を備えた濾過材収納体16に収納配置される各濾過材9の一形態について説明すると、多数の天然やし繊維を高密度にほぼ均一な状態で柱状に成形した濾過材本体9aで、濁水中の土粒子を効率よく補足可能した部材で、これを、同材質の天然やし繊維製縄体19を編んだ袋状ネット20により包んでなる濾過材9とされている。 前記の濾過材9の透水係数としては、例えば、4mm/秒〜10mm/秒、好ましくは5mm/秒程度の濾過材を用いる。
前記のような濾過材9は、側周面に通水孔を有する中空の縦断面波形筒状管体内に収納配置されるため、柱状の濾過材を所定の位置に所定の姿勢で安定した状態で設置することができ、安定した濾過機能を有する濾過材収納体16を備えた石詰め構造物とすることができる。
また、濾過材9は、濁水等の水に浸すと吸水するため、交換の引き抜き時にかなりの重量となる。この際に、濾過材9と縦断面波形筒状管体1とに周面摩擦力が働くと、重量と周面摩擦力で引き抜きが困難となる。しかし、濾過材収納体1は縦断面が波形の筒状管体で内周面側の凸部が内部に収納された濾過材に接触して保持しているので、濾過材9と濾過材収納体1とに働く摩擦力を小さく抑えられ、濾過材9の交換で引き抜きが容易に行える。
濾過材9の外径寸法は、縦断面波形筒状管体1の内径寸法よりも僅かに小さくされ、また、濾過材9の上下方向の長さ寸法は、縦断面波形筒状管体1の内側の高さ寸法よりも僅かに小さくされていることで、濾過材9を縦断面波形筒状管体1内に収容配置することができるようにされている。
【0015】
濾過材としては、前記の形態以外にも、例えば、図19に示すような、多数の天然植物繊維、あるいは合成繊維等の縦繊維を束ねた縦繊維郡(束)21を、袋状ネット20により包んでなる濾過材9としてもよい。濾過材としては、濾過材の横断面形態に応じて、横断面小径の棒状濾過材を集合させて袋状ネット20に収容するようにしてもよい。
【0016】
次に、複数の各縦断面波形筒状管体1内に、濾過材9が収納されている、濾過材収納体を備えた石詰め構造物の一形態について、図1〜図8を参照して説明する。
【0017】
図1を拡大して示す図3あるいは図4に示すように、上流側(前部)から下流側(後部)に向かう垂直面に位置し、上部が上流側に向かって傾斜して配置されたH形鋼からなる柱材22が前後間隔をおいて配置され、前後に間隔をおいて隣り合う各柱材22は、上下方向に間隔をおいて平行に配置された奥行き梁23にガセットプレートを介して剛接合され、上位に位置する奥行き梁23の下流側の柱材との接合部と、下位に位置する奥行き梁23の上流側の柱材との接合部とに渡って、溝形鋼からなる斜材24が配置されてガセットプレートを介して剛接合されて、トラス構造が形成されている。
上流側に位置する傾斜した柱材22の上端部は、下流側に位置する傾斜した柱材22の上端部よりも、ほぼ、上下の奥行き梁23のレベル差程度、低く配置されて、各傾斜した柱材22の上端部により、下流側に向かって、順次、高レベルとなるように階段状に配置されている。前記の傾斜した柱材22は適宜、長さ寸法を長くした形態の柱材を用いることが出来る。
【0018】
図1に矢印Xで示すように、上流側から下流側に向かう濁水の流れに対して、上部が上流側よりに傾斜し、各階段状に傾斜して配置された柱材22の上端部には、鉛直な上部柱材25の下部が載置され、各上部柱材25の上端の下流側の背面には、前記垂直面において奥行き梁23が水平に配置されて、その奥行き梁23の前端部がガセットプレートを介して上部柱材25に剛接合され、その奥行き梁23の後端部は、後部の傾斜した柱材及び後部の上部柱材25に、ガセットプレートを介して剛接合されて、前記と同様にトラス構造とされている。なお、図中、符号35はコンクリート製の側壁である。
なお、図示を省略するが、下流側端部では、傾斜した柱材22が後端部に位置するようにされる。
【0019】
川幅方向(左右方向)に間隔をおいて隣り合うH形鋼からなる上部柱材25間には、上下方向に間隔をおいて並行に、川幅方向に水平配置される溝形等の形鋼からなるスクリーン材26が、上部柱材25の前部フランジの背面側に配置されて、ボルト等によりピン接合されている。
また、図示を省略するが、下流側の後端部に位置する傾斜した柱材には、川幅方向に間隔をおいて隣り合う傾斜した柱材22間に渡って、溝形鋼等のスクリーン材26が配置されて、ボルト等によりピン接合されている。
【0020】
また、上部柱材25の上端部及び各傾斜した柱材22の上端部及び中間部における奥行き梁23のレベル付近には、川幅方向に渡って溝形鋼等からなる左右方向の前部梁材27または中間梁材28あるいは後面梁材(図示を省略)が配置されて、ボルト等によりピン接合されている。
また、図示を省略するが、下端に位置し、川幅方向に間隔をおいて平行な奥行き梁間には、形鋼からなるスクリーン材が配置されてその各端部が奥行き梁にボルト等により連結される。
【0021】
前記のように、川幅方向に間隔をおいた垂直面に面状トラス構造体が形成され、隣り合う面状トラス構造体が、左右方向の梁材あるいはスクリーン材によりピン接合されていることで、地盤の沈降に追従変形可能で、片面側が階段状の鋼製立体構造物29が形成されている。
【0022】
左右の各上部柱材25にピン接合されているスクリーン材26の背面側には、前記の上部柱材25におけるフランジ間の溝内において、隣り合う上部柱材25間にわたって、複数枚のエキスパンドメタル等からなる通水性流出防止材30が、前部梁材27の下側でスクリーン材26の背面側に配置されて、固定されている。前記の通水性流出防止材30により、地盤の沈降に追従変形が阻害されないように、前記通水性流出防止材30は設けられる。
前記の通水性流出防止材30は、その背面側に充填されるクラッシャランからなる充填材7あるいはクラッシャランから粒度が調整された砕石等からなる充填材7が流出するのを防止するために設けられる。
前記の通水性流出防止材30を設ける上下方向の高さ寸法は、前記の縦断面波形筒状管体1又は濾過材収納体16の高さ寸法あるいはこれよりも長い寸法とされている。
【0023】
図示の形態では、前記の通水性流出防止材30から下流側に間隔をおいて、かつ、平面視で、前部梁材27の長さ範囲内の鋼製立体構造物29内において、複数枚のエキスパンドメタル等からなる通水性仕切り壁32が設けられている。前記の通水性流出防止材30と通水性仕切り壁32との間において、左右方向に間隔をおくと共に前後方向に間隔をおいて複数の縦断面波形筒状管体1を備えた多数の濾過材収納体16が配置され、前記通水性仕切り壁32と通水性流出防止材30との間には、前記濾過材収納体16を埋め込むように充填材7が充填されて、濾過材収納体16が安定した状態で埋め込み配置されている。
前記の縦断面波形筒状管体1及び濾過材9の上下方向の長さ寸法は、図示の形態では、上部柱材25の長さ寸法の2倍程度の寸法とされ、上流側に位置する濾過材9の上部と、下流側に位置する濾過材9の下部が、上流側から見て、重なることで、2度濾過されるようにされている。
【0024】
前記の通水性仕切り壁32の背面側には、粒径が前記クラッシャランの最大径よりも大きな岩石又は玉石33が充填され、縦断面波形筒状管体1の上端部に蓋材11が設けられ、左右方向に延長する前後に間隔をおく梁材上面間に渡って、前後方向のスクリーン材26を左右方向に間隔をおいて並行に、縦断面波形筒状管体1の外径寸法よりも小さく、かつ岩石あるいは玉石の粒径よりも小さい間隔に密にボルト・ナットにより着脱可能に設けることで、縦断面波形筒状管体1およびこれを備えた濾過材収納体16及び岩石又は玉石33の流出を防止するようにした、濾過材収納体を備えた石詰め構造物34が形成されている。
【0025】
前記のような濾過材収納体を備えた石詰め構造物34を構築する手順としては、例えば、鋼製枠体構造物等の鋼製立体構造物29を組立てた後、またはその鋼製立体構造物29の組立と併行して通水性流出防止材30を設けた後、縦断面波形筒状管体1又はその内部に濾過材9を収納した状態の複数の縦断面波形筒状管体1を備えた複数の濾過材収納体16における各縦断面波形筒状管体1を、前部梁材27よりも僅かに下位レベルとなるように、縦向き好ましくは鉛直に所定の位置に配置し、必要に応じ通水性仕切り壁32を設け、前記各濾過材収納体16を埋め込むように、クラシャラン等からなる充填材7を設けると共に、構造物内の下流側に岩石又は玉石33を充填するように設ける。なお、階段状に順次上位のレベルに配置される濾過材収納体16は、すでに設置された岩石又は玉石33の層上に載置され、必要に応じ、鋼線等を縦断面波形筒状管体1に装着して、鋼線を周囲の鋼材等に係止して、縦断面波形筒状管体1を鉛直状態で仮保持した状態で、充填材7あるいは岩石又は玉石33は充填される。
【0026】
前記の濾過材9を交換する場合には、図9〜図11に概略を示すように、前記の前後方向のスクリーン材26を取り外した後、前記の縦断面波形筒状管体1(または濾過材収納体16)の上端部に設けている蓋材11を取り外した後、濾過材9のネット上端部を、適宜、簡易クレーン等を用いて垂直に吊り上げて、撤去し、新たな濾過材9を吊下ろして、濾過材収納体1における縦断面波形筒状管体1内に配置し、蓋材11を設けた後、前記の前後方向のスクリーン材26をボルト・ナットにより固定することで、補修して濾過機能を容易に回復させることができる。
【0027】
前記実施形態のように、川幅方向に構築した鋼製立体枠組構造物内に収容するように、側周面に通水孔を有する中空の縦断面波形筒状管体1を複数備えた濾過材収納体16が縦向きに埋め込み配置され、その各縦断面波形筒状管体1内に、濾過材9が収納されているので、簡単な構成で濾過機能を有する濾過材収納体を備えた石詰め構造物(石詰め鋼製枠堰堤)34とすることができる。
しかも、濾過材9が側周面に通水孔を有する中空の縦断面波形筒状管体1内に配置されているため、濾過材9を所定の位置に所定の姿勢で安定した状態で設置することができ、安定した濾過機能を有する濾過材収納体を備えた石詰め構造物(鋼製枠堰堤)34とすることができる。濾過材収納体を備えた石詰め構造物(鋼製枠堰堤)34とする場合に前記の充填材7を、全て石に代えて充填すると、通水性もよく、通水性仕切り壁32を省略することもでき安価になる。前記の充填材7としては、セメント等を硬化させて破砕した人口石を用いるようにしてもよい。
また、濾過材収納体16が縦向きに石詰め構造物内に配置され、その濾過材収納体16における縦断面波形筒状管体1内に濾過材9が収納されているので、濾過材9の設置及び/又は交換を容易に行うことができる。
【0028】
また、濾過材収納体16における縦断面波形筒状管体1を、鉛直に配置することで、濾過材収納体に配置されている濾過材を引き抜く場合には、濾過材を鉛直方向に吊り上げことで縦断面波形筒状管体1から引き抜くことができ、濾過材の縦断面波形筒状管体1内への設置或は撤去を容易に行うことができる。
【0029】
本発明を実施する場合に、縦断面波形筒状管体としては、安価な市販のコルゲートパイプ等の縦断面波形筒状管体を利用してもよい。組立型のコルゲートパイプからなる断面波形筒状管体の場合では、その外周面側の凹部に石が入り込むため、縦断面波形筒状管体の周囲に充填される石により、縦断面波形筒状管体を保持することができ、濾過材の引き抜き交換時において縦断面波形筒状管体の抜け出しを防止することができる。また、濾過材9は、濁水等の水に浸すと吸水するため、交換をする場合の引き抜き時にかなりの重量となる。この際に、濾過材9と縦断面波形筒状管体1とに周面摩擦力が働くと、重量と周面摩擦力で引き抜きが困難となる。しかし、縦断面波形筒状管体1は縦断面が波形の筒状管体で内周面側の凸部が内部に収納された濾過材に接触して保持している状態であるので、濾過材9と縦断面波形筒状管体1とに働く摩擦力あるいは引き抜き抵抗力を小さく抑えられ、濾過材9の交換で引き抜きが容易に行える。また、適宜底部等に張り出しフランジ等の突出部あるいはストッパ等の抜け出し防止手段を設けることで、縦断面波形筒状管体の周囲に充填される石を利用して、筒状管体を保持できると共に、縦断面波形筒状管体の抜け出しを防止して濾過材の引き抜き交換が容易になる。
【0030】
縦断面波形筒状管体1又は濾過材収納体の上端部に通水孔を備えていない蓋材が設けられていると、濾過材の上端部側からの土砂の流入を防止でき、濾過材を長期に渡って濾過機能を発揮させることができる等の効果がえられる。
【0031】
本発明を実施する場合に、濾過材が、天然やし繊維あるいは合成繊維等の多数の繊維を柱状に成形すると共に繊維製ネットにより包んだ濾過材であると、天然やし繊維等の安価な柱状濾過材を用いて、土石流あるいは河川等における濁水中の土粒子を吸着(捕捉)して、濁水の濾過をすることができる等の効果が得られる。
【0032】
本発明を実施する場合に、石詰め構造物を構成する通水性鋼製箱体又は通水性鋼製枠体としては、従来公知の鋼製箱型枠体又は図示のような形鋼からなる鋼材による組立可能な鋼製枠体を用いてもよい。
【0033】
本発明を実施する場合、図示を省略するが、濾過材収納体を備えた石詰め構造物は、例えば、立方体状あるいは直方体状等の箱体の外側6面に形鋼等からなるスクリーン材を設けて、その箱体内に縦断面波形筒状管体1を備えた濾過材収納体16を収納配置し、その周囲にクラッシャラン等からなる充填材を充填して、濾過材収納体16を埋め込み、充填材7の下流側に仕切り壁を介して粒径の大きい石を収納するようにしてもよく、また、前記のような箱体を順次上方向に積み重ねると共に、上位に位置する箱体が下流側に向かって変位した位置としてもよい。
【0034】
また、本発明を実施する場合に、図17に示すように、左右方向に隣り合う縦断面波形筒状管体1を連結リンク15により連結した濾過材収納体16を2列、石詰め構造物34内に設置したり、図18に示すように、石詰め構造物(石詰め鋼製枠堰堤)34内に3列設置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 縦断面波形筒状管体
2 通水孔
3 断面半円状短尺ユニット
4 断面円状短尺ユニット
5 凹部
6 凸部
7 充填材
8 通水性充填材層
9 濾過材
9a 濾過材本体
10 フランジあるいはストッパ
11 蓋材
12 蓋本体
13 周側壁
14 ボルト
15 連結リンク
16 濾過材収納体
17 ブラケット
18 横ピン
19 天然やし繊維製縄体
20 袋状ネット
21 縦繊維郡
22 傾斜して配置された柱材
23 奥行き梁
24 斜材
25 上部柱材
26 スクリーン材
27 前部梁材
28 中間梁材
29 鋼製立体構造物
30 通水性流出防止材
32 通水性仕切り壁
33 岩石又は玉石
34 濾過材収納体を備えた石詰め構造物(石詰め鋼製枠堰堤)
35 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過材が収納されている濾過材収納体が縦向きに埋め込み配置される石詰め構造物であって、濾過材収納体は、縦向きに配置され側周面に通水孔を有する複数の縦断面波形筒状管体を備え、各縦断面波形筒状管体内に濾過材が収納され、濾過材収納体の周囲に充填材による通水性充填材層が形成されて、前記濾過材収納体が埋め込まれていることを特徴とする濾過材収納体を備えた石詰め構造物。
【請求項2】
縦断面波形筒状管体は、その外周面側の凹部に透水性充填材層の充填材が入り込んで石詰め構造物内で保持されるとともに、縦断面波形筒状管体の内周面側の凸部が内部に収納された濾過材に接触して濾過材を保持することを特徴とする請求項1記載の濾過材収納体を備えた石詰め構造物。
【請求項3】
濾過材収納体は、その上端部に通水孔を備えていない蓋材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の濾過材収納体を備えた石詰め構造物。
【請求項4】
濾過材が、天然やし繊維あるいは合成繊維等の多数の繊維を柱状に成形すると共に繊維製ネットにより包んだ濾過材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の濾過材収納体を備えた石詰め構造物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の石詰め構造物が、石詰め鋼製枠堰堤であることを特徴とする濾過材収納体を備えた石詰め鋼製枠堰堤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の石詰め構造物が、充填材に代えて、鋼製枠体内に石を充填した鋼製枠堰堤であることを特徴とする濾過材収納体を備えた石詰め鋼製枠堰堤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−112217(P2012−112217A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264346(P2010−264346)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】