火薬カップ
新規なタイプの火薬カップが開示される。火薬カップは、エアバッグイニシエータの一部として使用できるように設計されている。幾つかの実施形態において、カップは、円筒部と、円筒部の第1の端部に取り付けられるドームとを備える。カップには十字形部も加えられる。十字形部はドームの頂部に位置決めされる。幾つかの実施形態において、十字形部は1つ以上のペタルを備える。イニシエータの展開によってガスがドームの頂部を通って火薬カップの外側へ向かわせられる他の実施形態が構成されてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エアバッグ及びエアバッグシステムは、長年にわたって安全な装置として自動車で実装されて使用されてきた。これらのシステムは、衝突時又は事故時にエアバッグが膨張されて車両の搭乗者に隣接して位置決めされるように設計される。エアバッグのそのような位置決めは、車両の搭乗者がステアリングホイール、ダッシュボード、又は、車両内装の他の部分と有害な衝突を防止する。エアバッグシステムは多くの命を救うことで高い評価を得てきたため、現在、エアバッグシステムを新たな車両に組み込むことが多くの国々で求められている。
【背景技術】
【0002】
エアバッグを展開するために、エアバッグシステムは一般にインフレータを含む。インフレータは、展開中に多量の膨張ガスを急速に生成してエアバッグへ送り込むことができる装置である。エアバッグ内へのガスのこの流入がエアバッグを膨張させ、それにより、エアバッグが車両の内側に位置決めされるようになる。
【0003】
エアバッグを急速に展開させるために、インフレータは一般にイニシエータを含む。イニシエータは、一般に、適切な信号の受信時に点火される可燃材料を含む。そして、可燃材料のそのような点火は、インフレータ内に圧力変化を引き起こして、インフレータの展開をもたらす。
【0004】
イニシエータで見出される可燃材料は、一般に、「カップ」(時として、「火薬カップ」と呼ばれる)内に収容される。カップは、一般に、可燃材料を取り囲む壁である。残念ながら、可燃材料の点火/燃焼中、燃焼によって引き起こされる圧力変化により、しばしば、カップが小さな断片へと破砕する。明らかに、カップの破片をエアバッグ内に流入させることは望ましくなく、したがって、インフレータは、これらの破片がインフレータ内に保持されてエアバッグに流入できないようにするべく設計されなければならない。
【0005】
点火によって形成される破片を捕捉するため、現在構成される多くのイニシエータは、レーザ溶接されるチャージホルダを有するガラス−金属シール(「GTMS」)ヘッダを含む。このチャージホルダは、カップにおける応力を減少させてカップが破砕するのを防止する圧力容器としての機能を果たす。また、他のインフレータは、火薬カップの破片を保持するためにスクリーンなどのカップ保持装置も付加する。残念ながら、これらのチャージホルダ及び/又はカップ保持装置はインフレータのコストを増大させる。したがって、当分野においては、チャージホルダ及び/又はカップ保持装置を必要とせず、更にはカップ破片がエアバッグ内に入ることを防止する新たなタイプのインフレータが必要である。そのような装置が本明細書中に開示される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施形態は、エアバッグイニシエータの一部として使用されてもよい火薬カップに関する。幾つかの実施形態において、カップは、円筒部と、円筒部の第1の端部に取り付けられるドームとを備える。カップには十字形部も加えられる。十字形部はドームの頂部に位置決めされる。幾つかの実施形態において、十字形部は1つ以上のペタルを画定する。イニシエータの展開によってガスがドームの頂部を通って火薬カップの外側へ向かわせられる他の実施形態が設計されてもよい。
【0007】
上端部品がドームに加えられる他の実施形態が設計されてもよい。上端部品は略平坦であってもよい。上端部品に関して他の形状及び/又は構成が使用されてもよい。他の実施形態では、突出溶着フランジがカップに加えられる。突出溶着フランジは円筒部の第2の端部に位置決めされてもよい。突出溶着フランジの直径は、円筒部の直径よりも大きくてもよい。
【0008】
火薬カップがイニシエータの展開中に広がる波状屈曲部も含む他の実施形態が設計されてもよい。この波状屈曲部は、ドームと突出溶着フランジとの中間に位置決めされてもよい。火薬カップがスクイブと所定量の可燃材料とを収容する更なる他の実施形態が設計されてもよい。幾つかの実施形態では、波状屈曲部が重なり合い部分を備える。重なり合い部分は、材料を内側に或いは外側に折り曲げることによって形成されてもよい。幾つかの実施形態において、イニシエータの作動時の円筒部の拡張は、重なり合い部分を広げる。重なり合い部分のそのような「広がり」は、全体的に或いは部分的に起こる場合がある。
【0009】
本発明の他の実施形態はイニシエータに関する。イニシエータはエアバッグインフレータと共に使用されてもよい。これらの実施形態において、イニシエータは、スクイブと、所定量の可燃材料とを備える。可燃材料は、イニシエータの展開中にスクイブにより点火されてもよい。イニシエータには火薬カップも加えられる。カップは、スクイブと可燃材料とを収容する。カップは、円筒部と、円筒部の第1の端部に取り付けられるドームと、ドームの頂部に位置決めされる十字形部と、円筒部の第2の端部に位置決めされる突出溶着フランジとを備える。突出溶着フランジは火薬カップをスクイブに取り付ける。
【0010】
幾つかの実施形態では、突出溶着フランジの直径が円筒部の直径よりも大きい。他の実施形態において、火薬カップは、可燃材料の点火の結果として広がる波状屈曲部を更に含み、波状屈曲部は円筒部に位置決めされる。
【0011】
また、本実施形態は、インフレータ内での火薬カップの破砕を防止するための方法に関する。本方法は、火薬カップを得るステップを含んでもよい。この火薬カップは、円筒部と、円筒部の第1の端部に取り付けられるドームと、ドームの頂部に位置決めされる十字形部とを備える。本方法はまた、カップをスクイブ及び可燃材料の周囲に位置決めするステップを含む。位置決めされると、ドームがカップの破砕を防止する。
【0012】
本実施形態は、イニシエータの一部として使用されてもよい火薬カップに関する。この場合、イニシエータは、エアバッグインフレータに加えられてもよく、エアバッグシステムの一部として使用されてもよい。この火薬カップは、展開中にカップが最小の破片を有するように或いは破片を有さないように設計される。
【0013】
火薬カップは円筒部とドームとを含んでもよい。ドームは、円筒部の端部に位置決めされてもよい。ドームは頂部を有してもよい。ドームは、上端部品とテーパ部とを更に備えてもよい。テーパ部は円筒部に接続される。テーパ部は、湾曲されてもよく、上端部品から円筒部への滑らかな移行部を形成してもよい。
【0014】
火薬カップはまた、十字形部を含んでもよい。十字形部はドームの頂部に加えられてもよい。十字形部は、ドームの1つ以上のスリット又は開口を備えてもよい。更なる実施形態において、十字形部はドームの脆弱領域を備える。更なる実施形態では、十字形部がドームの外面に加えられてもよい。十字形部がドームの脆弱領域を備える更なる他の実施形態が設計されてもよい。
【0015】
火薬カップが突出溶着フランジを更に含んでもよい。突出溶着フランジは、円筒部から延びるフランジ、リング、又は、他の形態部である。突出フランジは、火薬カップをスクイブ又はイニシエータの他の部分に(溶着などにより)取り付けるために使用されてもよい。突出溶着フランジは、円筒部の第2の端部に位置決めされてもよい。突出溶着フランジの直径は、円筒部の直径より大きくてもよい。
【0016】
波状屈曲部はまた、火薬カップに加えられてもよい。幾つかの実施形態では、波状屈曲部が円筒部に加えられる。更なる実施形態では、屈曲部がドームと溶着フランジとの中間に位置決めされる。波状屈曲部は内側に折り曲げられたカップの部分又は区域であり、それにより、重なり合い部分が形成される。
【0017】
火薬カップは、それをイニシエータと併せて使用できるように設計されている。衝突状態を示す信号の受信時に、イニシエータが作動される。そのような作動により、電荷及び/又は電流が配線を介して火薬カップ内に収容される所定量の可燃材料へ伝えられる。可燃材料への電流/電荷のそのような伝達は、可燃材料を点火して、カップ内にガスを形成する。
【0018】
カップ内のガスの形成は、カップ内の圧力を増大させる。そして、カップ内の圧力の増大が波状屈曲部を拡張させる。より具体的には、ガスの形成は、カップを押圧して、波状屈曲部を展開させて広がらせ、それにより、火薬カップの長さを増大させる。
【0019】
火薬カップにおける十字形部の存在は、ドームの頂部に隣接して位置決めされる高応力部位を形成する。したがって、ガスが形成されると、ガスは、十字形部を押圧し、幾つかの実施形態では十字形部が開放する前に十字形部を外側へ撓ませる(すなわち、フランジから離れる)ことができる。しかしながら、最終的に、ガスにより形成される圧力は、十字形部を開放し、ガスがドームの頂部の開口を通過することによりカップから逃げることができるようにする。
【0020】
本発明の前述した特徴、他の特徴、及び、利点が得られる態様を容易に理解できるようにするため、簡単に上記した本発明の更に特定の記載が、添付図面に示される本発明の特定の実施形態を参照して与えられる。これらの図面が、本発明の単なる典型的な実施形態を描いており、したがって、本発明の範囲の限定であると見なされるべきでないことを理解しつつ、添付図面の使用により本発明を更なる特異性をもって詳しく言及して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る火薬カップの斜視図である。
【図2】図1の火薬カップを組み込むインフレータの一部を切り取った断面図である。
【図3】インフレータが衝突状態を示す信号を受けた後における図2のインフレータの一部を切り取った断面図である。
【図4】カップの十字形部が開放された後における図3のインフレータを示す一部を切り取った断面図である。
【図5A】本実施形態に係る火薬カップの他の実施形態の斜視図である。
【図5B】図5Aの実施形態の断面図である。
【図6】本実施形態に係る火薬カップの他の実施形態の斜視図である。
【図7】本実施形態に係る火薬カップの他の実施形態の斜視図である。
【図7A】図7の実施形態の断面図である。
【図8】本実施形態に係る火薬カップの他の実施形態の斜視図である。
【図9】本実施形態の火薬カップを取り付けることができる方法を示す断面図である。
【図10】本実施形態の火薬カップを取り付けることができる方法を示す断面図である。
【図11】本実施形態の火薬カップを取り付けることができる方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の現在好ましい実施形態は、図面を参照することにより最も良く理解できる。図中、全体にわたって同様の部分が同様の符号により示される。ここで一般的に説明されて図面に示される本発明の構成要素を多種多様な異なる形態で配置して設計できることは容易に理解され得る。したがって、図面に描かれるような本発明の実施形態の以下の更に詳しい説明は、請求項に記載の本発明の範囲を限定しようとするものではなく、本発明の現在好ましい実施形態を単に表わすものである。
【0023】
ここで、図1を参照すると、火薬カップ10の一実施形態の斜視図が示されている。この火薬カップ10は、エアバッグインフレータ(図1に示されない)と共に使用するように設計されている。より具体的には、火薬カップ10は、衝突中又は事故中にインフレータを展開する働きをするイニシエータアセンブリ12の一部として使用されてもよい。本明細書中で更に詳しく説明するように、火薬カップ10は、展開中にカップ10の破砕が最小となるように或いは破砕が無いように設計される。したがって、火薬カップ10の使用により、展開中に破片が形成されてエアバッグに入る危険が大きく減少される。
【0024】
カップ10は、スクイブ(図1には示されない)と所定量の可燃材料(図1には示されない)とを取り囲んで囲繞するように設計されている。一般に、適切な信号を受けると、可燃材料が点火してカップ10内で燃焼する。
【0025】
カップ10は円筒部14とドーム18とを含んでもよい。ドーム18は、円筒部14の第1の端部22に位置決めされてもよい。幾つかの実施形態では、円筒部14及びドーム18が金属などの同じ材料から形成される。他の実施形態では、円筒部14及びドーム18が異なる材料から形成されるように設計されてもよい。更なる実施形態では、円筒部14が第1の金属から形成され、一方、ドーム18が第2の金属から形成される。
【0026】
幾つかの実施形態において、円筒部14及びドーム18は、互いに溶着され、取り付けられ、圧入され、あるいは、接続された2つの別個の要素である。他の実施形態では、円筒部14及びドーム18は、鋳造され或いは成形された同じ一体部材の部分である。
【0027】
図1に示される実施形態において、ドーム18は、上端部品26とテーパ部30とを備える。テーパ部30は円筒部14に接続される。幾つかの実施形態において、上端部品26及びテーパ部30は、互いに溶着され、取り付けられ、あるいは、接続された2つの別個の部品である。他の実施形態では、テーパ部30及び上端部品26が同じ一体部材の区域又は部分である。
【0028】
図1に示される実施形態において、上端部品26は平坦又は略平坦であってもよい。このことは、上端部品26が火薬カップ10の長手軸34に対して垂直又は略垂直であることを意味する。当然のことながら、他の実施形態は、上端部品26が湾曲され或いは丸められるように構成されてもよい。
【0029】
テーパ部30は、一般に、湾曲されており、上端部品30から円筒部14への滑らかな移行部を形成する。幾つかの実施形態では、テーパ部30の湾曲形状が放物線である。他の実施形態では、テーパ部30の湾曲形状が球状又は放射状であってもよい。テーパ部30に関して他の形状及び/又は構成が使用されてもよい。
【0030】
また、火薬カップ10は十字形部38を含んでもよい。十字形部38は、ドーム18の頂部42に加えられてもよい。十字形部38がドーム18の脆弱領域39を構成してもよい。幾つかの実施形態において、この脆弱部39は、スリット、溝、窪み、引き裂き継ぎ目、又は、ドーム18に加えられる他の同様の形態部であってもよい。図1に示されるように、脆弱領域39はドーム18の外面41に位置決めされてもよい。脆弱部39がドーム18の下面に加えられる他の実施形態が構成されてもよい。また、脆弱部39がドーム18の内面に加えられる他の実施形態が構成されてもよい。幾つかの実施形態において、脆弱領域39は、作動中に脆弱領域39がドーム18の1つ以上のスリット又は開口へと開放するように設計されてもよい。
【0031】
図1の実施形態では、十字形部38が1つ以上のペタル46を形成する。当然のことながら、十字形部38に関して他の形状及び/又は形態が使用されてもよい。また、図1に示される実施形態では、十字形部38の一部が上端部品26上に位置決めされる一方で、十字形部38の一部がテーパ部30上に位置決めされる。また、他の実施形態は、十字形部38の全体が上端部品26上に位置決めされるように構成されてもよい。更なる他の実施形態は、十字形部38の全体がテーパ部30上に位置決めされるように構成されてもよい。
【0032】
更に図1を参照すると、火薬カップ10は突出溶着フランジ50を更に含んでもよい。突出溶着フランジ50は、円筒部14から延びるフランジ、リング、又は、他の形態部であり、火薬カップ10をスクイブ又はイニシエータの他の部分に(溶着などによって)取り付けるために使用されてもよい。図1に示される実施形態において、突出溶着フランジ50の直径54は円筒部14の直径58よりも大きい。しかしながら、他のサイズ及び/又は構成も可能である。
【0033】
突出溶着フランジ50は円筒部14の第2の端部62に位置決めされてもよい。当然のことながら、他の実施形態では、フランジ50が円筒部14の中央部又は内部に沿って位置決めされてもよい。
【0034】
波状屈曲部66が火薬カップ10に加えられてもよい。図1に示される実施形態などの幾つかの実施形態では、波状屈曲部66が円筒部14に加えられる。しかしながら、他の実施形態において、波状屈曲部66は、溶着フランジ50を含む火薬カップ10の他の部分に加えられてもよい。更なる実施形態では、屈曲部66がドーム18と溶着フランジ50との中間に位置決めされる。波状屈曲部66は内側に折り曲げられたカップ10の部分又は区域であり、それにより、重なり合い部分67が形成される(図2に示される)。本明細書中で説明されるように、イニシエータの展開中にこの波状屈曲部66が広がり得、それにより、火薬カップ10の長手方向の長さが増大される。
【0035】
前述したように、上端部品26が平坦又は略平坦である実施形態が構成されてもよい。これらの実施形態では、上端部品26の平坦(又は、略平坦)部位がドーム18の頂部42を構成する。
【0036】
ここで、図2を参照すると、断面図は、イニシエータ70の一部として使用される火薬カップ10を示している。イニシエータ70は、エアバッグインフレータ74の一部として位置付けられてもよい。より具体的には、イニシエータ70は、適切な信号の受信時にイニシエータ70が作動するように設計される。イニシエータ70のそのような作動がインフレータ74を作動させ、それにより、インフレータ74は、所定量の膨張ガスを生成し/車両エアバッグ(図示せず)内へ送り込む。
【0037】
イニシエータ70はスクイブ78と所定量の可燃材料82とを含む。スクイブ78及び可燃材料82は火薬カップ10内に収容される。スクイブ78はまた、電流及び/又は電荷を可燃材料82へ伝えることができる1つ以上の配線86を含んでもよい。
【0038】
火薬カップ10内に収容される可燃材料82の量は、インフレータのサイズ、インフレータのタイプ、インフレータ内に含まれる火薬材料(あるとすれば)の量などを含む様々な要因によって決まる。図2に示されるように、カップ10は可燃材料82でほぼ満たされる。しかしながら、更に多い或いは更に少ない量の可燃材料82が使用されてもよい。可燃材料の量の選択は、様々な異なる要因を考慮に入れて当業者が行なうことができる。
【0039】
ここで、図3を参照すると、断面図は、図2に示される実施形態の展開を更に詳しく示している。衝突状態を示す信号の受信時にイニシエータ70が作動される。そのような作動により、電荷及び/又は電流が配線86を介して可燃材料82(図2に示される)へ伝えられる。可燃材料82への電流/電荷のそのような伝達は、可燃材料86を点火して、ガス90を形成する。ガス90の形成は、火薬カップ10内の圧力をかなり増大させる。
【0040】
カップ10内の圧力の増大は、波状屈曲部66を拡張させる。より具体的には、ガス90の形成は、カップ10を押圧して、波状屈曲部66を展開させて広がらせ、それにより、火薬カップ10の長さを増大させる。波状屈曲部66が存在しない実施形態では、可燃材料82の点火に関連する応力/圧力が溶着フランジ50へと向けられる。しかしながら、波状屈曲部66を有する実施形態では、点火に関連する応力/圧力の一部が波状屈曲部66を広げるために使用され、それにより、溶着フランジ50に課される応力/圧力の大きさが減少される。溶着フランジ50が受ける応力の大きさのそのような減少は、幾つかの実施形態では、カップ10/溶着フランジ50がスクイブ78(又は、イニシエータ70を含むインフレータ74の他の部分)から分離するのを防止するため望ましい場合がある。
【0041】
幾つかの実施形態では、波状屈曲部66の存在が火薬カップ10に応力勾配を形成する場合もある。より具体的には、屈曲部66が広がって展開し得るという事実は、材料82の点火/燃焼により生じる応力の大きさが溶着フランジ50近傍よりも十字形部38近傍の方が大きいことを意味する。
【0042】
更に図3を参照すると、火薬カップ10における十字形部38の存在は、ドーム18の頂部42に隣接して位置付けられる高応力部位を形成する。したがって、ガス90が形成されると、ガス90は、十字形部38を押圧し、幾つかの実施形態では十字形部38が開放する前に十字形部38を外側へ撓ませる(すなわち、フランジ50から離れる)ことができる。そのため、展開前にドーム18/上端部品26が平坦又は略平坦であっても、展開中にドーム18の「頂部」を形成することができる。
【0043】
ここで、図4を参照すると、イニシエータ70の展開の他の段階が示されている。具体的に、可燃材料82の燃焼に関連する内圧が閾値レベルを超えた後、十字形部38が開放する。より具体的には、各ペタル46が開放し、それにより、頂部42に通路が形成され、この通路を通じてガス90がエアバッグインフレータ74内へ逃げることができる。そして、エアバッグインフレータ74内へのガス90のこの流入がインフレータ74を作動させる(インフレータ内の火薬材料を点火することにより、及び/又は、インフレータ74の圧力を閾値を超えて増大させることにより)。当分野において知られるように、インフレータ74の作動は、所定量の膨張ガスを形成してエアバッグ内へ送り込む働きをする。
【0044】
ここで、図5Aを参照すると、火薬カップ110の新たな実施形態が示されている。カップ110は、前述した火薬カップ10に類似し及び/又は同一であってもよい。しかしながら、簡単のため、説明の大部分を繰り返すことはしない。カップ110は、前述したようにイニシエータと併せて使用されてもよい。カップ110は円筒部14とドーム18とを含む。十字形部38が加えられてもよい。十字形部38はドーム18の頂部42に位置決めされてもよい。幾つかの実施形態では、ドーム18のこの頂部42が円筒部14の第1の端部22に加えられる。
【0045】
カップ110は、展開中に火薬カップ110の破砕が最小となるように或いは破砕が無いように設計されてもよい。したがって、火薬カップ110の使用により、展開中に破片が形成されてエアバッグに入る危険が大きく減少される。
【0046】
幾つかの実施形態では、ドーム18が上端部品26とテーパ部30とを備える。テーパ部30は円筒部14に接続される。図5Aの実施形態では、テーパ部30及び上端部品26が同じ一体部材の区域又は部分である。
【0047】
突出溶着フランジ50が火薬カップ110に加えられてもよい。溶着フランジ50は、火薬カップ110をスクイブ又はイニシエータの他の部分に取り付けるために使用されてもよい。図5Aの実施形態において、突出溶着フランジ50の直径は円筒部14の直径よりも大きい。しかしながら、溶着フランジ50に関して他のサイズ及び/又は構成も可能である。
【0048】
前述した実施形態と同様、カップ110が波状屈曲部166を含んでもよい。この波状屈曲部166が図5B(図5Aの断面図である)に更に詳しく示されている。波状屈曲部166は、円筒部14(又は、カップ110の他の部分)を外側に折り曲げることによって形成されてもよく、それにより、重なり合い部分167が形成される(前述したように、前述した波状屈曲部66は、円筒部14を内側に折り曲げることによって形成されてもよい)。幾つかの実施形態において、波状屈曲部166は、イニシエータの展開中に折れ曲がり或いは広がってもよく、それにより、カップ110の長手方向の長さを増大する。
【0049】
図5A及び図5Bに示される実施形態では、屈曲部166が溶着フランジ50に隣接して位置決めされる。当然のことながら、屈曲部166に関してはカップ110の長さに沿う他の位置が使用されてもよい。
【0050】
他の実施形態では、波状屈曲部166(又は、波状屈曲部66)と併せて1つ以上の溝が使用されてもよい。これらの溝は、円筒部14に位置決めされる窪みである。展開中、そのような溝は、カップの長手方向の長さを増大させるように広がってもよい。更なる実施形態では、溝が波状屈曲部166(又は、波状屈曲部66)の代わりに使用されてもよい。
【0051】
イニシエータの展開中、カップ110内の圧力が増大して波状屈曲部166を広がらせる。より具体的には、ガス90(図5Bに示されない)の形成が、カップ110を押圧して、波状屈曲部166を展開させて広がらせ、それにより、火薬カップ110の長さを増大させる。波状屈曲部166が存在しない実施形態では、点火に関連する応力/圧力が溶着フランジ50へと向けられる。しかしながら、波状屈曲部166を有する実施形態では、点火に関連する応力/圧力の一部が波状屈曲部166を広げるために使用され、それにより、溶着フランジ50に課される応力/圧力の大きさが減少される。溶着フランジ50が受ける応力の大きさのそのような減少は、幾つかの実施形態では、カップ110/溶着フランジ50が分離するのを防止するため望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、波状屈曲部166の存在が火薬カップ110に応力勾配を形成する場合もある。より具体的には、屈曲部166が広がって展開し得るという事実は、点火/燃焼により生じる応力の大きさが溶着フランジ50近傍よりも十字形部38近傍の方が大きいことを意味する。
【0052】
ここで、図6を参照すると、火薬カップ210の更なる実施形態が示されている。火薬カップ210は、前述した実施形態に類似し及び/又は同一である。カップ210は、前述したようにイニシエータと併せて使用されてもよく、最小の破片を形成してもよく、或いは破片を形成しなくてもよい。カップ210は円筒部14とドーム18とを含む。十字形部38が加えられてもよい。十字形部38はドーム18の頂部42に位置決めされてもよい。幾つかの実施形態では、ドーム18のこの頂部42が円筒部14の第1の端部22に加えられる。
【0053】
図6のカップ210の実施形態は波状屈曲部266も含む。屈曲部266は、イニシエータの展開中に広がり及び/又は展開するように設計されてもよい。屈曲部266のそのような拡張は、カップ210の長手方向の長さを増大させる。図6の実施形態において、屈曲部266は、1つ以上の溝、窪み、又は、他の類似の形態部を備えてもよい。これらの形態部は、全体が或いは一部がベース268の背後に配置されてもよい。屈曲部266をベース268の背後に位置決めすることにより、イニシエータが展開するときにカップ210が外側に伸び、カップ210の長さが拡張する。当然のことながら、他の実施形態において、屈曲部266は、(前述したように)円筒部14を折り曲げることにより形成される重なり合い部分を備えてもよい。更なる実施形態において、屈曲部266は、異なって構成されてもよく、及び/又は、前述した実施形態に示される態様と同様の態様で位置決めされてもよい。
【0054】
イニシエータの展開中、カップ210内の圧力が増大して波状屈曲部266を拡張させる。より具体的には、ガス90(図6に示されない)の形成は、カップ210を押圧して、波状屈曲部266を展開させて広がらせ、それにより、火薬カップ210の長さを増大させる。点火に関連する応力/圧力の一部が波状屈曲部266を広げるために使用され、それにより、溶着フランジ50に課される応力/圧力の大きさが減少される。溶着フランジ50が受ける応力の大きさのそのような減少は、幾つかの実施形態では、カップ210/溶着フランジ50が分離するのを防止するため望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、波状屈曲部266の存在が火薬カップ210に応力勾配を形成する場合もある。より具体的には、屈曲部266が広がって展開し得るという事実は、点火/燃焼により生じる応力の大きさが溶着フランジ50近傍よりも十字形部38近傍の方が大きいことを意味する。
【0055】
図5A、図5B、及び図6の実施形態は、前述したイニシエータアセンブリ12と併せて更に使用されてもよい。また、図5A、図5B、及び図6の実施形態は、イニシエータ70、スクイブ78、及び/又は、可燃材料(これらの全てが図2に示されている)と併せて前述した態様で使用されてもよい。更に、図1〜図4に関連して前述した特徴及び/又は要素の多くが、図5A、図5B、及び図6の実施形態に加えられてもよく及び/又は図5A、図5B、及び図6の実施形態と併せて使用されてもよい。
【0056】
図7及び図7Aは火薬カップ310の他の実施形態を表わしている。このカップ310は前述したカップに類似している。したがって、本明細書においては、簡略にするために、カップ310と他の実施形態との間の違いについてのみ説明する。カップ310に関しては、十字形部38がドームの頂部に位置決めされない。むしろ、十字形部が円筒部14上にある。図7に示されるように、1つの十字形部38だけが加えられる。しかしながら、円筒部14の外周にわたって更なる十字形部38が加えられてもよい。更に図7に示されるように、十字形部は、「星」形状ではなく、むしろ付加されてもよい単なるタブである。図7Aは、このタブ形状の十字形部38が展開中にどのように開放するのかを示している。
【0057】
図7及び図7Aの実施形態は、図5A及び図5Bに描いて示されたように、波状屈曲部166及び重なり合い部分167を含む。当業者であれば分かるように、本明細書において説明される他のタイプの波状屈曲部が使用されてもよい。
【0058】
ここで、図8を参照すると、火薬カップ410の他の実施形態が示されている。火薬カップ410は先に示される実施形態に類似する。より具体的には、カップ410は、図7のカップ310に類似しており、波状屈曲部166と重なり合い部分167とを含む。しかしながら、他のタイプの波状屈曲部が使用されてもよい。カップ410は円筒部14に位置決めされる十字形部38を含む。円筒部14の外周にわたって複数の十字形部38が加えられてもよい。十字形部38は、これまで説明した他の実施形態と同様に星形状を成している。
【0059】
ここで、図9〜図11を参照して、本実施形態の異なる態様について説明する。特に、図9〜図11は、図2のカップ10をイニシエータ70及び/又はスクイブ78に取り付けることができる異なる方法を示している。図9〜図11の描写は図2の火薬カップ10に関してなされているが、当業者であれば分かるように、図9〜図11に示される取り付け機構は、本明細書中で説明される火薬カップの他の実施形態に同様に適用されてもよい。図9に示されるように、カップ10は、イニシエータ70及び/又はスクイブ78に対して溶着され、例えば抵抗溶着されてもよい。この抵抗溶着は要素500によって示される。図10では、火薬カップ10がラップ溶着(時として、ラップ溶着透明溶着と称される)によってイニシエータ70及び/又はスクイブ78に対して溶着される。この溶着は、イニシエータ70及び/又はスクイブ78の端502及び側面504に加えられてもよい。他のタイプの溶着又は溶着技術が使用されてもよい。図11において、火薬カップ10は、イニシエータ70及び/又はスクイブ78の全て或いは一部にわたってカップ10の端部510を圧着又は(任意の既知のタイプの溶着技術により)溶着することにより取り付けられる。当業者であれば分かるように、火薬カップをイニシエータ70及び/又はスクイブ78に取り付けるために任意の数の技術が使用されてもよい。図9〜図11に示される実施形態は、使用されてもよい異なるタイプの方法の単なる例示として与えられている。
【0060】
ここで、全ての図面を参照すると、本実施形態は、インフレータ内での火薬カップの破砕を防止するための方法にも関連する。本方法は、本明細書中で説明される火薬カップ10、110、210又は任意の他のカップを得るステップを含んでもよい。この火薬カップは、円筒部14と、円筒部14の第1の端部22に取り付けられるドーム18と、ドーム18の頂部42に位置決めされる十字形部38とを備える。本方法はまた、カップ10をスクイブ78及び可燃材料82の周囲に位置決めするステップを含む。位置決めされると、ドームがカップの破砕を防止する。
【0061】
本発明は、本明細書及び以下の請求項に広く記載されるその構造、方法、又は、他の本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよい。記載される実施形態は、あらゆる点で、単なる例示として見なされるべきであり、限定的と見なされるべきではない。したがって、本発明の範囲は、前述した説明によってではなく、添付の請求項によって示される。請求項の意味及び等価範囲内に入る全ての変更が本発明の範囲内に包含されるものである。
【技術分野】
【0001】
エアバッグ及びエアバッグシステムは、長年にわたって安全な装置として自動車で実装されて使用されてきた。これらのシステムは、衝突時又は事故時にエアバッグが膨張されて車両の搭乗者に隣接して位置決めされるように設計される。エアバッグのそのような位置決めは、車両の搭乗者がステアリングホイール、ダッシュボード、又は、車両内装の他の部分と有害な衝突を防止する。エアバッグシステムは多くの命を救うことで高い評価を得てきたため、現在、エアバッグシステムを新たな車両に組み込むことが多くの国々で求められている。
【背景技術】
【0002】
エアバッグを展開するために、エアバッグシステムは一般にインフレータを含む。インフレータは、展開中に多量の膨張ガスを急速に生成してエアバッグへ送り込むことができる装置である。エアバッグ内へのガスのこの流入がエアバッグを膨張させ、それにより、エアバッグが車両の内側に位置決めされるようになる。
【0003】
エアバッグを急速に展開させるために、インフレータは一般にイニシエータを含む。イニシエータは、一般に、適切な信号の受信時に点火される可燃材料を含む。そして、可燃材料のそのような点火は、インフレータ内に圧力変化を引き起こして、インフレータの展開をもたらす。
【0004】
イニシエータで見出される可燃材料は、一般に、「カップ」(時として、「火薬カップ」と呼ばれる)内に収容される。カップは、一般に、可燃材料を取り囲む壁である。残念ながら、可燃材料の点火/燃焼中、燃焼によって引き起こされる圧力変化により、しばしば、カップが小さな断片へと破砕する。明らかに、カップの破片をエアバッグ内に流入させることは望ましくなく、したがって、インフレータは、これらの破片がインフレータ内に保持されてエアバッグに流入できないようにするべく設計されなければならない。
【0005】
点火によって形成される破片を捕捉するため、現在構成される多くのイニシエータは、レーザ溶接されるチャージホルダを有するガラス−金属シール(「GTMS」)ヘッダを含む。このチャージホルダは、カップにおける応力を減少させてカップが破砕するのを防止する圧力容器としての機能を果たす。また、他のインフレータは、火薬カップの破片を保持するためにスクリーンなどのカップ保持装置も付加する。残念ながら、これらのチャージホルダ及び/又はカップ保持装置はインフレータのコストを増大させる。したがって、当分野においては、チャージホルダ及び/又はカップ保持装置を必要とせず、更にはカップ破片がエアバッグ内に入ることを防止する新たなタイプのインフレータが必要である。そのような装置が本明細書中に開示される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施形態は、エアバッグイニシエータの一部として使用されてもよい火薬カップに関する。幾つかの実施形態において、カップは、円筒部と、円筒部の第1の端部に取り付けられるドームとを備える。カップには十字形部も加えられる。十字形部はドームの頂部に位置決めされる。幾つかの実施形態において、十字形部は1つ以上のペタルを画定する。イニシエータの展開によってガスがドームの頂部を通って火薬カップの外側へ向かわせられる他の実施形態が設計されてもよい。
【0007】
上端部品がドームに加えられる他の実施形態が設計されてもよい。上端部品は略平坦であってもよい。上端部品に関して他の形状及び/又は構成が使用されてもよい。他の実施形態では、突出溶着フランジがカップに加えられる。突出溶着フランジは円筒部の第2の端部に位置決めされてもよい。突出溶着フランジの直径は、円筒部の直径よりも大きくてもよい。
【0008】
火薬カップがイニシエータの展開中に広がる波状屈曲部も含む他の実施形態が設計されてもよい。この波状屈曲部は、ドームと突出溶着フランジとの中間に位置決めされてもよい。火薬カップがスクイブと所定量の可燃材料とを収容する更なる他の実施形態が設計されてもよい。幾つかの実施形態では、波状屈曲部が重なり合い部分を備える。重なり合い部分は、材料を内側に或いは外側に折り曲げることによって形成されてもよい。幾つかの実施形態において、イニシエータの作動時の円筒部の拡張は、重なり合い部分を広げる。重なり合い部分のそのような「広がり」は、全体的に或いは部分的に起こる場合がある。
【0009】
本発明の他の実施形態はイニシエータに関する。イニシエータはエアバッグインフレータと共に使用されてもよい。これらの実施形態において、イニシエータは、スクイブと、所定量の可燃材料とを備える。可燃材料は、イニシエータの展開中にスクイブにより点火されてもよい。イニシエータには火薬カップも加えられる。カップは、スクイブと可燃材料とを収容する。カップは、円筒部と、円筒部の第1の端部に取り付けられるドームと、ドームの頂部に位置決めされる十字形部と、円筒部の第2の端部に位置決めされる突出溶着フランジとを備える。突出溶着フランジは火薬カップをスクイブに取り付ける。
【0010】
幾つかの実施形態では、突出溶着フランジの直径が円筒部の直径よりも大きい。他の実施形態において、火薬カップは、可燃材料の点火の結果として広がる波状屈曲部を更に含み、波状屈曲部は円筒部に位置決めされる。
【0011】
また、本実施形態は、インフレータ内での火薬カップの破砕を防止するための方法に関する。本方法は、火薬カップを得るステップを含んでもよい。この火薬カップは、円筒部と、円筒部の第1の端部に取り付けられるドームと、ドームの頂部に位置決めされる十字形部とを備える。本方法はまた、カップをスクイブ及び可燃材料の周囲に位置決めするステップを含む。位置決めされると、ドームがカップの破砕を防止する。
【0012】
本実施形態は、イニシエータの一部として使用されてもよい火薬カップに関する。この場合、イニシエータは、エアバッグインフレータに加えられてもよく、エアバッグシステムの一部として使用されてもよい。この火薬カップは、展開中にカップが最小の破片を有するように或いは破片を有さないように設計される。
【0013】
火薬カップは円筒部とドームとを含んでもよい。ドームは、円筒部の端部に位置決めされてもよい。ドームは頂部を有してもよい。ドームは、上端部品とテーパ部とを更に備えてもよい。テーパ部は円筒部に接続される。テーパ部は、湾曲されてもよく、上端部品から円筒部への滑らかな移行部を形成してもよい。
【0014】
火薬カップはまた、十字形部を含んでもよい。十字形部はドームの頂部に加えられてもよい。十字形部は、ドームの1つ以上のスリット又は開口を備えてもよい。更なる実施形態において、十字形部はドームの脆弱領域を備える。更なる実施形態では、十字形部がドームの外面に加えられてもよい。十字形部がドームの脆弱領域を備える更なる他の実施形態が設計されてもよい。
【0015】
火薬カップが突出溶着フランジを更に含んでもよい。突出溶着フランジは、円筒部から延びるフランジ、リング、又は、他の形態部である。突出フランジは、火薬カップをスクイブ又はイニシエータの他の部分に(溶着などにより)取り付けるために使用されてもよい。突出溶着フランジは、円筒部の第2の端部に位置決めされてもよい。突出溶着フランジの直径は、円筒部の直径より大きくてもよい。
【0016】
波状屈曲部はまた、火薬カップに加えられてもよい。幾つかの実施形態では、波状屈曲部が円筒部に加えられる。更なる実施形態では、屈曲部がドームと溶着フランジとの中間に位置決めされる。波状屈曲部は内側に折り曲げられたカップの部分又は区域であり、それにより、重なり合い部分が形成される。
【0017】
火薬カップは、それをイニシエータと併せて使用できるように設計されている。衝突状態を示す信号の受信時に、イニシエータが作動される。そのような作動により、電荷及び/又は電流が配線を介して火薬カップ内に収容される所定量の可燃材料へ伝えられる。可燃材料への電流/電荷のそのような伝達は、可燃材料を点火して、カップ内にガスを形成する。
【0018】
カップ内のガスの形成は、カップ内の圧力を増大させる。そして、カップ内の圧力の増大が波状屈曲部を拡張させる。より具体的には、ガスの形成は、カップを押圧して、波状屈曲部を展開させて広がらせ、それにより、火薬カップの長さを増大させる。
【0019】
火薬カップにおける十字形部の存在は、ドームの頂部に隣接して位置決めされる高応力部位を形成する。したがって、ガスが形成されると、ガスは、十字形部を押圧し、幾つかの実施形態では十字形部が開放する前に十字形部を外側へ撓ませる(すなわち、フランジから離れる)ことができる。しかしながら、最終的に、ガスにより形成される圧力は、十字形部を開放し、ガスがドームの頂部の開口を通過することによりカップから逃げることができるようにする。
【0020】
本発明の前述した特徴、他の特徴、及び、利点が得られる態様を容易に理解できるようにするため、簡単に上記した本発明の更に特定の記載が、添付図面に示される本発明の特定の実施形態を参照して与えられる。これらの図面が、本発明の単なる典型的な実施形態を描いており、したがって、本発明の範囲の限定であると見なされるべきでないことを理解しつつ、添付図面の使用により本発明を更なる特異性をもって詳しく言及して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る火薬カップの斜視図である。
【図2】図1の火薬カップを組み込むインフレータの一部を切り取った断面図である。
【図3】インフレータが衝突状態を示す信号を受けた後における図2のインフレータの一部を切り取った断面図である。
【図4】カップの十字形部が開放された後における図3のインフレータを示す一部を切り取った断面図である。
【図5A】本実施形態に係る火薬カップの他の実施形態の斜視図である。
【図5B】図5Aの実施形態の断面図である。
【図6】本実施形態に係る火薬カップの他の実施形態の斜視図である。
【図7】本実施形態に係る火薬カップの他の実施形態の斜視図である。
【図7A】図7の実施形態の断面図である。
【図8】本実施形態に係る火薬カップの他の実施形態の斜視図である。
【図9】本実施形態の火薬カップを取り付けることができる方法を示す断面図である。
【図10】本実施形態の火薬カップを取り付けることができる方法を示す断面図である。
【図11】本実施形態の火薬カップを取り付けることができる方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の現在好ましい実施形態は、図面を参照することにより最も良く理解できる。図中、全体にわたって同様の部分が同様の符号により示される。ここで一般的に説明されて図面に示される本発明の構成要素を多種多様な異なる形態で配置して設計できることは容易に理解され得る。したがって、図面に描かれるような本発明の実施形態の以下の更に詳しい説明は、請求項に記載の本発明の範囲を限定しようとするものではなく、本発明の現在好ましい実施形態を単に表わすものである。
【0023】
ここで、図1を参照すると、火薬カップ10の一実施形態の斜視図が示されている。この火薬カップ10は、エアバッグインフレータ(図1に示されない)と共に使用するように設計されている。より具体的には、火薬カップ10は、衝突中又は事故中にインフレータを展開する働きをするイニシエータアセンブリ12の一部として使用されてもよい。本明細書中で更に詳しく説明するように、火薬カップ10は、展開中にカップ10の破砕が最小となるように或いは破砕が無いように設計される。したがって、火薬カップ10の使用により、展開中に破片が形成されてエアバッグに入る危険が大きく減少される。
【0024】
カップ10は、スクイブ(図1には示されない)と所定量の可燃材料(図1には示されない)とを取り囲んで囲繞するように設計されている。一般に、適切な信号を受けると、可燃材料が点火してカップ10内で燃焼する。
【0025】
カップ10は円筒部14とドーム18とを含んでもよい。ドーム18は、円筒部14の第1の端部22に位置決めされてもよい。幾つかの実施形態では、円筒部14及びドーム18が金属などの同じ材料から形成される。他の実施形態では、円筒部14及びドーム18が異なる材料から形成されるように設計されてもよい。更なる実施形態では、円筒部14が第1の金属から形成され、一方、ドーム18が第2の金属から形成される。
【0026】
幾つかの実施形態において、円筒部14及びドーム18は、互いに溶着され、取り付けられ、圧入され、あるいは、接続された2つの別個の要素である。他の実施形態では、円筒部14及びドーム18は、鋳造され或いは成形された同じ一体部材の部分である。
【0027】
図1に示される実施形態において、ドーム18は、上端部品26とテーパ部30とを備える。テーパ部30は円筒部14に接続される。幾つかの実施形態において、上端部品26及びテーパ部30は、互いに溶着され、取り付けられ、あるいは、接続された2つの別個の部品である。他の実施形態では、テーパ部30及び上端部品26が同じ一体部材の区域又は部分である。
【0028】
図1に示される実施形態において、上端部品26は平坦又は略平坦であってもよい。このことは、上端部品26が火薬カップ10の長手軸34に対して垂直又は略垂直であることを意味する。当然のことながら、他の実施形態は、上端部品26が湾曲され或いは丸められるように構成されてもよい。
【0029】
テーパ部30は、一般に、湾曲されており、上端部品30から円筒部14への滑らかな移行部を形成する。幾つかの実施形態では、テーパ部30の湾曲形状が放物線である。他の実施形態では、テーパ部30の湾曲形状が球状又は放射状であってもよい。テーパ部30に関して他の形状及び/又は構成が使用されてもよい。
【0030】
また、火薬カップ10は十字形部38を含んでもよい。十字形部38は、ドーム18の頂部42に加えられてもよい。十字形部38がドーム18の脆弱領域39を構成してもよい。幾つかの実施形態において、この脆弱部39は、スリット、溝、窪み、引き裂き継ぎ目、又は、ドーム18に加えられる他の同様の形態部であってもよい。図1に示されるように、脆弱領域39はドーム18の外面41に位置決めされてもよい。脆弱部39がドーム18の下面に加えられる他の実施形態が構成されてもよい。また、脆弱部39がドーム18の内面に加えられる他の実施形態が構成されてもよい。幾つかの実施形態において、脆弱領域39は、作動中に脆弱領域39がドーム18の1つ以上のスリット又は開口へと開放するように設計されてもよい。
【0031】
図1の実施形態では、十字形部38が1つ以上のペタル46を形成する。当然のことながら、十字形部38に関して他の形状及び/又は形態が使用されてもよい。また、図1に示される実施形態では、十字形部38の一部が上端部品26上に位置決めされる一方で、十字形部38の一部がテーパ部30上に位置決めされる。また、他の実施形態は、十字形部38の全体が上端部品26上に位置決めされるように構成されてもよい。更なる他の実施形態は、十字形部38の全体がテーパ部30上に位置決めされるように構成されてもよい。
【0032】
更に図1を参照すると、火薬カップ10は突出溶着フランジ50を更に含んでもよい。突出溶着フランジ50は、円筒部14から延びるフランジ、リング、又は、他の形態部であり、火薬カップ10をスクイブ又はイニシエータの他の部分に(溶着などによって)取り付けるために使用されてもよい。図1に示される実施形態において、突出溶着フランジ50の直径54は円筒部14の直径58よりも大きい。しかしながら、他のサイズ及び/又は構成も可能である。
【0033】
突出溶着フランジ50は円筒部14の第2の端部62に位置決めされてもよい。当然のことながら、他の実施形態では、フランジ50が円筒部14の中央部又は内部に沿って位置決めされてもよい。
【0034】
波状屈曲部66が火薬カップ10に加えられてもよい。図1に示される実施形態などの幾つかの実施形態では、波状屈曲部66が円筒部14に加えられる。しかしながら、他の実施形態において、波状屈曲部66は、溶着フランジ50を含む火薬カップ10の他の部分に加えられてもよい。更なる実施形態では、屈曲部66がドーム18と溶着フランジ50との中間に位置決めされる。波状屈曲部66は内側に折り曲げられたカップ10の部分又は区域であり、それにより、重なり合い部分67が形成される(図2に示される)。本明細書中で説明されるように、イニシエータの展開中にこの波状屈曲部66が広がり得、それにより、火薬カップ10の長手方向の長さが増大される。
【0035】
前述したように、上端部品26が平坦又は略平坦である実施形態が構成されてもよい。これらの実施形態では、上端部品26の平坦(又は、略平坦)部位がドーム18の頂部42を構成する。
【0036】
ここで、図2を参照すると、断面図は、イニシエータ70の一部として使用される火薬カップ10を示している。イニシエータ70は、エアバッグインフレータ74の一部として位置付けられてもよい。より具体的には、イニシエータ70は、適切な信号の受信時にイニシエータ70が作動するように設計される。イニシエータ70のそのような作動がインフレータ74を作動させ、それにより、インフレータ74は、所定量の膨張ガスを生成し/車両エアバッグ(図示せず)内へ送り込む。
【0037】
イニシエータ70はスクイブ78と所定量の可燃材料82とを含む。スクイブ78及び可燃材料82は火薬カップ10内に収容される。スクイブ78はまた、電流及び/又は電荷を可燃材料82へ伝えることができる1つ以上の配線86を含んでもよい。
【0038】
火薬カップ10内に収容される可燃材料82の量は、インフレータのサイズ、インフレータのタイプ、インフレータ内に含まれる火薬材料(あるとすれば)の量などを含む様々な要因によって決まる。図2に示されるように、カップ10は可燃材料82でほぼ満たされる。しかしながら、更に多い或いは更に少ない量の可燃材料82が使用されてもよい。可燃材料の量の選択は、様々な異なる要因を考慮に入れて当業者が行なうことができる。
【0039】
ここで、図3を参照すると、断面図は、図2に示される実施形態の展開を更に詳しく示している。衝突状態を示す信号の受信時にイニシエータ70が作動される。そのような作動により、電荷及び/又は電流が配線86を介して可燃材料82(図2に示される)へ伝えられる。可燃材料82への電流/電荷のそのような伝達は、可燃材料86を点火して、ガス90を形成する。ガス90の形成は、火薬カップ10内の圧力をかなり増大させる。
【0040】
カップ10内の圧力の増大は、波状屈曲部66を拡張させる。より具体的には、ガス90の形成は、カップ10を押圧して、波状屈曲部66を展開させて広がらせ、それにより、火薬カップ10の長さを増大させる。波状屈曲部66が存在しない実施形態では、可燃材料82の点火に関連する応力/圧力が溶着フランジ50へと向けられる。しかしながら、波状屈曲部66を有する実施形態では、点火に関連する応力/圧力の一部が波状屈曲部66を広げるために使用され、それにより、溶着フランジ50に課される応力/圧力の大きさが減少される。溶着フランジ50が受ける応力の大きさのそのような減少は、幾つかの実施形態では、カップ10/溶着フランジ50がスクイブ78(又は、イニシエータ70を含むインフレータ74の他の部分)から分離するのを防止するため望ましい場合がある。
【0041】
幾つかの実施形態では、波状屈曲部66の存在が火薬カップ10に応力勾配を形成する場合もある。より具体的には、屈曲部66が広がって展開し得るという事実は、材料82の点火/燃焼により生じる応力の大きさが溶着フランジ50近傍よりも十字形部38近傍の方が大きいことを意味する。
【0042】
更に図3を参照すると、火薬カップ10における十字形部38の存在は、ドーム18の頂部42に隣接して位置付けられる高応力部位を形成する。したがって、ガス90が形成されると、ガス90は、十字形部38を押圧し、幾つかの実施形態では十字形部38が開放する前に十字形部38を外側へ撓ませる(すなわち、フランジ50から離れる)ことができる。そのため、展開前にドーム18/上端部品26が平坦又は略平坦であっても、展開中にドーム18の「頂部」を形成することができる。
【0043】
ここで、図4を参照すると、イニシエータ70の展開の他の段階が示されている。具体的に、可燃材料82の燃焼に関連する内圧が閾値レベルを超えた後、十字形部38が開放する。より具体的には、各ペタル46が開放し、それにより、頂部42に通路が形成され、この通路を通じてガス90がエアバッグインフレータ74内へ逃げることができる。そして、エアバッグインフレータ74内へのガス90のこの流入がインフレータ74を作動させる(インフレータ内の火薬材料を点火することにより、及び/又は、インフレータ74の圧力を閾値を超えて増大させることにより)。当分野において知られるように、インフレータ74の作動は、所定量の膨張ガスを形成してエアバッグ内へ送り込む働きをする。
【0044】
ここで、図5Aを参照すると、火薬カップ110の新たな実施形態が示されている。カップ110は、前述した火薬カップ10に類似し及び/又は同一であってもよい。しかしながら、簡単のため、説明の大部分を繰り返すことはしない。カップ110は、前述したようにイニシエータと併せて使用されてもよい。カップ110は円筒部14とドーム18とを含む。十字形部38が加えられてもよい。十字形部38はドーム18の頂部42に位置決めされてもよい。幾つかの実施形態では、ドーム18のこの頂部42が円筒部14の第1の端部22に加えられる。
【0045】
カップ110は、展開中に火薬カップ110の破砕が最小となるように或いは破砕が無いように設計されてもよい。したがって、火薬カップ110の使用により、展開中に破片が形成されてエアバッグに入る危険が大きく減少される。
【0046】
幾つかの実施形態では、ドーム18が上端部品26とテーパ部30とを備える。テーパ部30は円筒部14に接続される。図5Aの実施形態では、テーパ部30及び上端部品26が同じ一体部材の区域又は部分である。
【0047】
突出溶着フランジ50が火薬カップ110に加えられてもよい。溶着フランジ50は、火薬カップ110をスクイブ又はイニシエータの他の部分に取り付けるために使用されてもよい。図5Aの実施形態において、突出溶着フランジ50の直径は円筒部14の直径よりも大きい。しかしながら、溶着フランジ50に関して他のサイズ及び/又は構成も可能である。
【0048】
前述した実施形態と同様、カップ110が波状屈曲部166を含んでもよい。この波状屈曲部166が図5B(図5Aの断面図である)に更に詳しく示されている。波状屈曲部166は、円筒部14(又は、カップ110の他の部分)を外側に折り曲げることによって形成されてもよく、それにより、重なり合い部分167が形成される(前述したように、前述した波状屈曲部66は、円筒部14を内側に折り曲げることによって形成されてもよい)。幾つかの実施形態において、波状屈曲部166は、イニシエータの展開中に折れ曲がり或いは広がってもよく、それにより、カップ110の長手方向の長さを増大する。
【0049】
図5A及び図5Bに示される実施形態では、屈曲部166が溶着フランジ50に隣接して位置決めされる。当然のことながら、屈曲部166に関してはカップ110の長さに沿う他の位置が使用されてもよい。
【0050】
他の実施形態では、波状屈曲部166(又は、波状屈曲部66)と併せて1つ以上の溝が使用されてもよい。これらの溝は、円筒部14に位置決めされる窪みである。展開中、そのような溝は、カップの長手方向の長さを増大させるように広がってもよい。更なる実施形態では、溝が波状屈曲部166(又は、波状屈曲部66)の代わりに使用されてもよい。
【0051】
イニシエータの展開中、カップ110内の圧力が増大して波状屈曲部166を広がらせる。より具体的には、ガス90(図5Bに示されない)の形成が、カップ110を押圧して、波状屈曲部166を展開させて広がらせ、それにより、火薬カップ110の長さを増大させる。波状屈曲部166が存在しない実施形態では、点火に関連する応力/圧力が溶着フランジ50へと向けられる。しかしながら、波状屈曲部166を有する実施形態では、点火に関連する応力/圧力の一部が波状屈曲部166を広げるために使用され、それにより、溶着フランジ50に課される応力/圧力の大きさが減少される。溶着フランジ50が受ける応力の大きさのそのような減少は、幾つかの実施形態では、カップ110/溶着フランジ50が分離するのを防止するため望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、波状屈曲部166の存在が火薬カップ110に応力勾配を形成する場合もある。より具体的には、屈曲部166が広がって展開し得るという事実は、点火/燃焼により生じる応力の大きさが溶着フランジ50近傍よりも十字形部38近傍の方が大きいことを意味する。
【0052】
ここで、図6を参照すると、火薬カップ210の更なる実施形態が示されている。火薬カップ210は、前述した実施形態に類似し及び/又は同一である。カップ210は、前述したようにイニシエータと併せて使用されてもよく、最小の破片を形成してもよく、或いは破片を形成しなくてもよい。カップ210は円筒部14とドーム18とを含む。十字形部38が加えられてもよい。十字形部38はドーム18の頂部42に位置決めされてもよい。幾つかの実施形態では、ドーム18のこの頂部42が円筒部14の第1の端部22に加えられる。
【0053】
図6のカップ210の実施形態は波状屈曲部266も含む。屈曲部266は、イニシエータの展開中に広がり及び/又は展開するように設計されてもよい。屈曲部266のそのような拡張は、カップ210の長手方向の長さを増大させる。図6の実施形態において、屈曲部266は、1つ以上の溝、窪み、又は、他の類似の形態部を備えてもよい。これらの形態部は、全体が或いは一部がベース268の背後に配置されてもよい。屈曲部266をベース268の背後に位置決めすることにより、イニシエータが展開するときにカップ210が外側に伸び、カップ210の長さが拡張する。当然のことながら、他の実施形態において、屈曲部266は、(前述したように)円筒部14を折り曲げることにより形成される重なり合い部分を備えてもよい。更なる実施形態において、屈曲部266は、異なって構成されてもよく、及び/又は、前述した実施形態に示される態様と同様の態様で位置決めされてもよい。
【0054】
イニシエータの展開中、カップ210内の圧力が増大して波状屈曲部266を拡張させる。より具体的には、ガス90(図6に示されない)の形成は、カップ210を押圧して、波状屈曲部266を展開させて広がらせ、それにより、火薬カップ210の長さを増大させる。点火に関連する応力/圧力の一部が波状屈曲部266を広げるために使用され、それにより、溶着フランジ50に課される応力/圧力の大きさが減少される。溶着フランジ50が受ける応力の大きさのそのような減少は、幾つかの実施形態では、カップ210/溶着フランジ50が分離するのを防止するため望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、波状屈曲部266の存在が火薬カップ210に応力勾配を形成する場合もある。より具体的には、屈曲部266が広がって展開し得るという事実は、点火/燃焼により生じる応力の大きさが溶着フランジ50近傍よりも十字形部38近傍の方が大きいことを意味する。
【0055】
図5A、図5B、及び図6の実施形態は、前述したイニシエータアセンブリ12と併せて更に使用されてもよい。また、図5A、図5B、及び図6の実施形態は、イニシエータ70、スクイブ78、及び/又は、可燃材料(これらの全てが図2に示されている)と併せて前述した態様で使用されてもよい。更に、図1〜図4に関連して前述した特徴及び/又は要素の多くが、図5A、図5B、及び図6の実施形態に加えられてもよく及び/又は図5A、図5B、及び図6の実施形態と併せて使用されてもよい。
【0056】
図7及び図7Aは火薬カップ310の他の実施形態を表わしている。このカップ310は前述したカップに類似している。したがって、本明細書においては、簡略にするために、カップ310と他の実施形態との間の違いについてのみ説明する。カップ310に関しては、十字形部38がドームの頂部に位置決めされない。むしろ、十字形部が円筒部14上にある。図7に示されるように、1つの十字形部38だけが加えられる。しかしながら、円筒部14の外周にわたって更なる十字形部38が加えられてもよい。更に図7に示されるように、十字形部は、「星」形状ではなく、むしろ付加されてもよい単なるタブである。図7Aは、このタブ形状の十字形部38が展開中にどのように開放するのかを示している。
【0057】
図7及び図7Aの実施形態は、図5A及び図5Bに描いて示されたように、波状屈曲部166及び重なり合い部分167を含む。当業者であれば分かるように、本明細書において説明される他のタイプの波状屈曲部が使用されてもよい。
【0058】
ここで、図8を参照すると、火薬カップ410の他の実施形態が示されている。火薬カップ410は先に示される実施形態に類似する。より具体的には、カップ410は、図7のカップ310に類似しており、波状屈曲部166と重なり合い部分167とを含む。しかしながら、他のタイプの波状屈曲部が使用されてもよい。カップ410は円筒部14に位置決めされる十字形部38を含む。円筒部14の外周にわたって複数の十字形部38が加えられてもよい。十字形部38は、これまで説明した他の実施形態と同様に星形状を成している。
【0059】
ここで、図9〜図11を参照して、本実施形態の異なる態様について説明する。特に、図9〜図11は、図2のカップ10をイニシエータ70及び/又はスクイブ78に取り付けることができる異なる方法を示している。図9〜図11の描写は図2の火薬カップ10に関してなされているが、当業者であれば分かるように、図9〜図11に示される取り付け機構は、本明細書中で説明される火薬カップの他の実施形態に同様に適用されてもよい。図9に示されるように、カップ10は、イニシエータ70及び/又はスクイブ78に対して溶着され、例えば抵抗溶着されてもよい。この抵抗溶着は要素500によって示される。図10では、火薬カップ10がラップ溶着(時として、ラップ溶着透明溶着と称される)によってイニシエータ70及び/又はスクイブ78に対して溶着される。この溶着は、イニシエータ70及び/又はスクイブ78の端502及び側面504に加えられてもよい。他のタイプの溶着又は溶着技術が使用されてもよい。図11において、火薬カップ10は、イニシエータ70及び/又はスクイブ78の全て或いは一部にわたってカップ10の端部510を圧着又は(任意の既知のタイプの溶着技術により)溶着することにより取り付けられる。当業者であれば分かるように、火薬カップをイニシエータ70及び/又はスクイブ78に取り付けるために任意の数の技術が使用されてもよい。図9〜図11に示される実施形態は、使用されてもよい異なるタイプの方法の単なる例示として与えられている。
【0060】
ここで、全ての図面を参照すると、本実施形態は、インフレータ内での火薬カップの破砕を防止するための方法にも関連する。本方法は、本明細書中で説明される火薬カップ10、110、210又は任意の他のカップを得るステップを含んでもよい。この火薬カップは、円筒部14と、円筒部14の第1の端部22に取り付けられるドーム18と、ドーム18の頂部42に位置決めされる十字形部38とを備える。本方法はまた、カップ10をスクイブ78及び可燃材料82の周囲に位置決めするステップを含む。位置決めされると、ドームがカップの破砕を防止する。
【0061】
本発明は、本明細書及び以下の請求項に広く記載されるその構造、方法、又は、他の本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよい。記載される実施形態は、あらゆる点で、単なる例示として見なされるべきであり、限定的と見なされるべきではない。したがって、本発明の範囲は、前述した説明によってではなく、添付の請求項によって示される。請求項の意味及び等価範囲内に入る全ての変更が本発明の範囲内に包含されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イニシエータの一部として用いるように設計されている火薬カップであって、
円筒部と、
頂部を有し、前記円筒部の第1の端部に取り付けられるドームと、
前記ドームの頂部に位置決めされる十字形部と、
を備える火薬カップ。
【請求項2】
前記十字形部が1つ以上のペタルを画定する、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項3】
前記ドームの上端部品が略平坦である、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項4】
前記円筒部の第2の端部に位置決めされる突出溶着フランジを更に備える、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項5】
前記突出溶着フランジの直径が前記円筒部の直径よりも大きい、請求項4に記載の火薬カップ。
【請求項6】
スクイブと所定量の可燃材料とを収容する、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項7】
前記イニシエータの展開中に広がる波状屈曲部を更に備える、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項8】
前記波状屈曲部は、前記ドームと前記円筒部の第2の端部に位置決めされる突出溶着フランジとの中間にある、請求項7に記載の火薬カップ。
【請求項9】
前記イニシエータの展開時に、ガスが前記ドームの頂部を通って前記火薬カップの外側へ向かわせられる、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項10】
前記十字形部が前記ドームの脆弱領域を備える、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項11】
前記十字形部が前記ドームの外面上に位置決めされる、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項12】
エアバッグインフレータと共に用いるためのイニシエータであって、
スクイブと、
前記スクイブにより展開中に点火される所定量の可燃材料と、
前記スクイブと前記可燃材料とを収容する火薬カップであって、前記円筒部と、円筒部の第1の端部に取り付けられるドームと、前記ドームの頂部に位置決めされる十字形部と、前記円筒部の第2の端部に位置決めされる突出溶着フランジとを備え、前記突出溶着フランジが前記火薬カップを前記スクイブに取り付ける、火薬カップと、
を備えるイニシエータ。
【請求項13】
前記可燃材料の点火の結果として広がる波状屈曲部を更に備え、前記波状屈曲部が前記円筒部に位置決めされる、請求項12に記載の火薬カップ。
【請求項14】
前記突出溶着フランジの直径が前記円筒部の直径よりも大きい、請求項12に記載の火薬カップ。
【請求項15】
前記十字形部が前記ドームの脆弱領域を備える、請求項12に記載の火薬カップ。
【請求項16】
前記十字形部が前記ドームの外面上に位置決めされる、請求項12に記載の火薬カップ。
【請求項17】
インフレータ内での火薬カップの破砕を防止するための方法であって、
円筒部と、
前記円筒部の第1の端部に取り付けられ、頂部を有するドームと、
前記ドームの頂部に位置決めされる十字形部と、
を備える前記火薬カップを得ることと、
前記カップをスクイブ及び可燃材料の周囲に位置決めすることと、
を含み、
前記ドームが前記カップの破砕を防止する、方法。
【請求項18】
前記波状屈曲部は、内側又は外側に折り曲げられた重なり合い部分を備える、請求項7に記載の火薬カップ。
【請求項19】
前記波状屈曲部が展開中にベースから外側に伸びる、請求項7に記載の火薬カップ。
【請求項20】
イニシエータの一部として用いるように設計されている火薬カップであって、
円筒部と、
頂部を有し、前記円筒部の第1の端部に取り付けられるドームと、
十字形部と、
前記イニシエータの展開中に広がる波状屈曲部であって、前記ドームと前記円筒部の第2の端部に位置決めされる突出溶着フランジとの中間にある波状屈曲部と、
を備える火薬カップ。
【請求項1】
イニシエータの一部として用いるように設計されている火薬カップであって、
円筒部と、
頂部を有し、前記円筒部の第1の端部に取り付けられるドームと、
前記ドームの頂部に位置決めされる十字形部と、
を備える火薬カップ。
【請求項2】
前記十字形部が1つ以上のペタルを画定する、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項3】
前記ドームの上端部品が略平坦である、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項4】
前記円筒部の第2の端部に位置決めされる突出溶着フランジを更に備える、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項5】
前記突出溶着フランジの直径が前記円筒部の直径よりも大きい、請求項4に記載の火薬カップ。
【請求項6】
スクイブと所定量の可燃材料とを収容する、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項7】
前記イニシエータの展開中に広がる波状屈曲部を更に備える、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項8】
前記波状屈曲部は、前記ドームと前記円筒部の第2の端部に位置決めされる突出溶着フランジとの中間にある、請求項7に記載の火薬カップ。
【請求項9】
前記イニシエータの展開時に、ガスが前記ドームの頂部を通って前記火薬カップの外側へ向かわせられる、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項10】
前記十字形部が前記ドームの脆弱領域を備える、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項11】
前記十字形部が前記ドームの外面上に位置決めされる、請求項1に記載の火薬カップ。
【請求項12】
エアバッグインフレータと共に用いるためのイニシエータであって、
スクイブと、
前記スクイブにより展開中に点火される所定量の可燃材料と、
前記スクイブと前記可燃材料とを収容する火薬カップであって、前記円筒部と、円筒部の第1の端部に取り付けられるドームと、前記ドームの頂部に位置決めされる十字形部と、前記円筒部の第2の端部に位置決めされる突出溶着フランジとを備え、前記突出溶着フランジが前記火薬カップを前記スクイブに取り付ける、火薬カップと、
を備えるイニシエータ。
【請求項13】
前記可燃材料の点火の結果として広がる波状屈曲部を更に備え、前記波状屈曲部が前記円筒部に位置決めされる、請求項12に記載の火薬カップ。
【請求項14】
前記突出溶着フランジの直径が前記円筒部の直径よりも大きい、請求項12に記載の火薬カップ。
【請求項15】
前記十字形部が前記ドームの脆弱領域を備える、請求項12に記載の火薬カップ。
【請求項16】
前記十字形部が前記ドームの外面上に位置決めされる、請求項12に記載の火薬カップ。
【請求項17】
インフレータ内での火薬カップの破砕を防止するための方法であって、
円筒部と、
前記円筒部の第1の端部に取り付けられ、頂部を有するドームと、
前記ドームの頂部に位置決めされる十字形部と、
を備える前記火薬カップを得ることと、
前記カップをスクイブ及び可燃材料の周囲に位置決めすることと、
を含み、
前記ドームが前記カップの破砕を防止する、方法。
【請求項18】
前記波状屈曲部は、内側又は外側に折り曲げられた重なり合い部分を備える、請求項7に記載の火薬カップ。
【請求項19】
前記波状屈曲部が展開中にベースから外側に伸びる、請求項7に記載の火薬カップ。
【請求項20】
イニシエータの一部として用いるように設計されている火薬カップであって、
円筒部と、
頂部を有し、前記円筒部の第1の端部に取り付けられるドームと、
十字形部と、
前記イニシエータの展開中に広がる波状屈曲部であって、前記ドームと前記円筒部の第2の端部に位置決めされる突出溶着フランジとの中間にある波状屈曲部と、
を備える火薬カップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−509861(P2011−509861A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542299(P2010−542299)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/030081
【国際公開番号】WO2009/091624
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(597065363)オートリブ エーエスピー,インコーポレイティド (87)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/030081
【国際公開番号】WO2009/091624
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(597065363)オートリブ エーエスピー,インコーポレイティド (87)
【Fターム(参考)】
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