説明

炉内観察装置およびそれを備えた押出ラム

【課題】高温の炉内を精度良く観察することができる炉内観察装置を提供する。
【解決手段】冷却用空気の導入部とその冷却用空気が冷却に供せられた後、排出される排出部とを有する筺体13と、この筺体13内の排出部近傍に収納される撮像装置20とを有し、この撮像装置20は、撮像素子16と、吸熱面側が撮像素子本体の周囲を取り囲んだ状態で配置されるプレート状の熱電冷却素子18と、撮像素子本体と熱電冷却素子18の吸熱面側との隙間を埋める熱伝導ブロック17と、熱電冷却素子18の放熱面側に形成された冷却フィン19とを一体化してなることを特徴とする炉内観察装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の炉内を観察するための炉内観察装置およびコークス炉の炉内観察に好適な炉内観察装置付き押出ラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークス炉は炭化室と燃焼室が炉団方向に交互に配置されている構造からなり、コークス炉の炉上を炉団方向に走行する石炭装入車から炭化室内に石炭が装入され、燃焼室の熱をその炭化室に伝えることにより装入された石炭を乾留しコークスを製造するようになっている。
【0003】
この種のコークス炉の多くは築炉から30年を経過し老朽化しており、炭化室の壁面を構築している耐火煉瓦は、炉壁損傷部分に付着したカーボンがコークス押出し或いは石炭装入によって剥離し、炉壁がさらに損傷するといったサイクルを繰り返しており、炉壁が変形する等、操業を阻害する要因が顕在化しつつある。
【0004】
特に、カーボンの付着状態は日々の操業においても微妙に異なっており、炉壁の状態を観察することは安定操業を得るために極めて重要な検査項目になっている。
【0005】
この炉内観察は、図6に示すようにコークス押出しが行われている時、具体的には、炉蓋が外され、炭化室50で乾留された赤熱コークス51を、ラムビーム52先端のラムヘッド53により炉外に待機しているガイド車(図示しない)に押し出している間に行われ、通常、押出機運転室54の位置からオペレータ55の目視によって行われている。
【0006】
また、炉内観察においては、炉内温度が約1100℃と高温であり炉の間近まで近寄れないこと、炉幅は450mm前後と狭いのに対し奥行きは約15mと長く視界が悪いこと、また、操業度にもよるが炉内を観察できる時間が約2〜10分程度と制限されていること等、制約も多い。このような事情から、熟練したオペレータ55であっても目視で炉内全体を観察することは不可能とされている。なお、図中56は炉壁に付着したカーボンを示しており、各石炭装入孔57の下方に付着する傾向がある。
【0007】
そこで、水冷または空冷されたカメラを炉内に挿入し、炉外のモニタ画面で壁面の損傷状態を観察する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
この種の炉内観察装置は、図7に示すように、外側冷却筒60と内側冷却筒61からなる二重筒状の冷却筒62を有し、この冷却筒62先端部の一方側面には耐熱ガラスからなる観察窓63が設けられている。
【0009】
この観察窓63と対向して反射鏡64が配置され、反射鏡64によって折り曲げられた光路はズームレンズ65に案内され、それにより、ズームアップされた炉壁がCCDカメラ66によって撮影できるようになっている。
【0010】
また、冷却筒62の内壁にはペルチェ効果を発生させる複数の電子冷却素子体67が配設されており、CCDカメラ66等を高温から保護するようになっている。
【特許文献1】実開平5−27599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した炉内観察装置によれば、熟練者でなくとも炉内の奥部まで観察することが可能になる。しかしながら、この炉内観察装置では反射鏡64等を使用して炉壁を間接的に観察する構成上、振動が加わっただけでモニタ画面に映し出される画像が乱れたり、焦点がずれたりする等、炉内観察を正確に行えない場合がある。
【0012】
また、反射鏡64からズームレンズ65までの光路を長く取る必要があるため、炉内観察装置が大型化するという問題もある。
【0013】
このように反射鏡64を用いて炉内を間接的に観察する理由は、二重筒状を構成していない観察窓63近傍にCCDカメラ66を配置すると、CCDカメラ66が高温に曝されて故障してしまうからである。また、電子冷却素子体67による冷却は空気を介しての間接冷却となるため冷却速度が遅く温度制御が難しい。しかも、密閉室内での冷却であるために空気が撹拌されず、均一な冷却効果、必要とする温度降下が得られない。なお、この電子冷却素子体67の能力を高めようとしても冷却筒62内のスペースが限られているため、電子冷却素子体67のサイズを大きくすることは不可能である。
【0014】
本発明は以上のような従来の炉内観察装置における課題を考慮してなされたものであり、第一の目的は、高温の炉内を精度良く観察することができる炉内観察装置を提供することにあり、第二の目的は、コンパクト化を図ることによりラムビームに炉内観察装置を設置できるようにした炉内観察装置付き押出ラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、冷却用空気の導入部とその冷却用空気が冷却に供せられた後、排出される排出部とを有する筺体と、この筺体内の上記排出部近傍に収納される撮像装置とを有し、上記撮像装置は、撮像素子と、吸熱面側が撮像素子本体の周囲を取り囲んだ状態で配置されるプレート状の熱電冷却素子と、撮像素子本体と熱電冷却素子の吸熱面側との隙間を埋める熱伝導体と、熱電冷却素子の放熱面に形成された冷却フィンとを一体化してなる炉内観察装置である。
【0016】
本発明において、上記撮像装置を筒状の断熱部を介して筺体内に収納し、この断熱部外壁と上記筺体内壁との間に冷却用空気を流すための冷却通路を形成すれば、筺体内に侵入してくる熱を吸収して排出部から排出することができる。
【0017】
また、上記筺体内壁には断熱材を貼着することが好ましい。
【0018】
また、上記筺体の前面において撮像素子のレンズと対向する位置に観察窓を設け、この観察窓を、耐熱ガラスと赤外線吸収フィルタと赤外線反射フィルタとの積層体から構成することが好ましい。
【0019】
また、上記冷却フィンの外周部を筒状の断熱部によって閉塞することにより、各冷却フィンの隙間を冷却空気を流すための第二の冷却通路とすることができる。上記冷却通路に冷却用空気を通過させて筺体外部からの熱の侵入を抑制した状態で、第二の冷却通路に冷却用空気を通過させることで冷却フィンの冷却効率を高めることができ、それにより熱電冷却素子を安定動作させることが可能になる。
【0020】
また、上記筒状の断熱部における冷却用空気の流れの下流側に、第二の冷却通路を通過した冷却用空気の流れを観察窓側に向けて方向転換する方向転換部を形成することができる。方向転換された冷却用空気により、観察窓に付着した粉塵等を吹き飛ばすことができる。
【0021】
本発明は、上記構成を有する炉内観察装置を、コークス炉に配置される押出ラムのラムビームに設置した炉内観察装置付き押出ラムである。
【0022】
上記炉内観察装置付き押出ラムでは、ラムビームに敷設された断熱配管内に、冷却用空気を炉内観察装置に供給するホースと、撮像素子および熱電冷却素子に電源を供給するとともに撮影画像を出力するためのケーブルと、熱電冷却素子の温度制御を行うための制御信号を送信するケーブルを収納することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の炉内観察装置によれば、高温の炉内を精度良く観察することができる。
【0024】
また、本発明の炉内観察装置付き押出ラムによれば、コンパクト化が図れるためラムビームに設置することができ、日々のコークス押出し作業時において常時、炭化室内を精度良く観察することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明に係る炉内観察装置をコークス押出し機のラムビームに設置した場合の構成を示したものである。
【0027】
同図においてコークス押出し機は、ラムヘッド1と、このラムヘッド1を水平方向に往復移動させるためのラムビーム2とを有する押出ラム3を備えており、コークス炉内で乾留された赤熱コークスをラムヘッド1によって炉外に押し出すようになっている。
【0028】
ラムビーム2上で且つラムヘッド1寄りには支持スタンド4が立設されており、この支持スタンド4に炉内観察装置5が設置されている。
【0029】
なお、図中、Aは押出ラム3の押し出し方向を示している。また、Bは炉内観察装置5による観察方向を示し、θaは炉内観察装置5に搭載されているCCDカメラ(後述する)の画角を示している。
【0030】
炉内観察装置5の信号系統は、巻取装置6のドラム一方側から巻き解かれた信号/電源ケーブル7を介して図示しない押出機運転室内のコントローラと接続され、炉内の映像は運転室内で観察することができ、必要な場合にはその映像を記録装置に記録することができるようになっている。
【0031】
上記信号系統とは、具体的には、CCDカメラおよび熱電冷却素子に電源を供給する電源ライン、CCDカメラによって撮影された画像信号を出力する出力ライン、熱電冷却素子を温度制御するための制御信号ライン等が含まれる。
【0032】
炉内観察装置5の冷却系統は、同じ巻取装置6のドラム他方側から巻き解かれたホース8を介して冷却用空気を貯留するタンク9と接続されており、このタンク9には冷却用空気を所定圧(配管等の圧力損失で失われる圧力を供給できる圧力、例えば0.4〜0.7MPa)に保持するためのコンプレッサ10が接続されている。上記巻取装置6、タンク9およびコンプレッサ10は押出機に搭載されている。
【0033】
11はCCDカメラ(後述する)用の画像変換装置、熱電冷却素子(後述する)の電源供給装置を含む変換器・温度制御装置であり、炉内の熱の影響が及ばないラムビーム2後端部に配置されている。
【0034】
また、信号/電源ケーブル7およびホース8は、ラムビーム2後端部よりラムビーム2内に敷設された断熱配管12内を通り、ラムビーム2先端側に設置された炉内観察装置5に接続されている。なお、信号/電源ケーブル7は耐熱ケーブルを使用している。
【0035】
図2は上記炉内観察装置5を拡大して示したものである。
【0036】
同図において、炉内観察装置5は断熱された箱形の筺体13を有し、この筺体13内にCCDカメラ、熱電冷却素子、温度管理用の熱電対等、必要最小限の装置を組み合わせた撮像装置としての電子冷却装置付きカメラを収納している。
【0037】
詳しくは、筺体13は角筒部13aと、この角筒部13aの後側端面(観察方向Bに対して後側となる)を閉塞する後面板13bと、前側に配置される前面板13cとから構成されている。角筒部13aの内面および後面板13bの内面にはそれぞれセラミック製の断熱材14が貼着されている。
【0038】
後面板13bには配管12を接続するための接続部15が備えられており、配管12を通じて冷却用空気caが筺体13内に導入されるようになっている。また、信号/電源ケーブル7に収容された撮影ケーブル7aを通じて画像信号が出力され、制御ケーブル7bを通じて熱電冷却素子を温度制御するための制御信号が送信されるようになっている。なお、上記接続部15における配管12は冷却用空気caの導入部として機能する。
【0039】
図3(a)は電子冷却装置付きカメラ20の構成を、一部切欠きを有する斜視図で示したものであり、同図(b)はその正面図を示したものである。
【0040】
図3(a)において、電子冷却装置付きカメラ20は、撮像素子としてのCCDカメラ16と、このCCDカメラ16の周囲に配置される熱伝導体17と、各熱電動体17の外側に配置される熱電冷却素子群18と、さらにそれらの熱電冷却素子群18の外側に配置される冷却フィン群19とを一体化した構造から構成されている。
【0041】
CCDカメラ16は例えば有効画素数40万画素の1/2型CCDを搭載した小型カラーCCDカメラを使用することができる。なお、CCDカメラ16の有効画素数については40万画素程度あれば炉内の観察が可能であるが、もちろんそれ以上の画素数を有するCCDカメラを使用してもよい。また、炉内では左右の壁面を撮影するために広角系のレンズを装着しているが、炉内壁面のクローズアップが必要な場合にはズームレンズを装着するなど、目的にあったレンズを装着して撮影することが可能である。
【0042】
このCCDカメラ16の本体を取り囲むようにしてその周囲に熱伝導体17として4つのアルミニウム製熱伝導ブロック17a〜17dが配置されている、ただし、手前側の熱伝導ブロック17dについては内部構成を説明する都合上、取り外している。
【0043】
熱伝導ブロック17a〜17dの各外面にはそれぞれ熱電冷却素子18a〜18d(図では18cおよび18dの一部が現れている)が密着した状態で配置されており、熱伝導ブロック17a〜17dの周囲を籠状に覆っている。
【0044】
図3(b)において、各熱電冷却素子18a〜18dは、プレート状のペルチェ素子を二層配置することによって構成されており、熱電冷却素子18aを代表して説明すると、吸熱面18eをCCDカメラ16側に向け、放熱面18fを冷却フィン19a側に向けて配置している。
【0045】
このように構成することにより、CCDカメラ16本体の表面温度は、熱伝導ブロック17a〜17dを通じ熱電冷却素子群18によって制御されることになる。
【0046】
熱伝導ブロック17a〜17dで囲まれ、さらに熱電冷却素子群18で囲まれたCCDカメラ16は、熱伝導部材からなる角筒状のケース19e内に収納される。このケース19eの外壁各面には冷却フィン群19を構成している冷却フィン19a〜19dが形成されており、熱電冷却素子18の発熱を放熱するようになっている。
【0047】
なお、ケース19eの内壁と熱伝導ブロック17a〜17dとの間に生じる隙間は断熱材30で塞がれ、冷却用空気caが冷却フィン19a〜19d以外に流れないようになっている。
【0048】
このようにユニット化された電子冷却装置付きカメラ(以下カメラユニットと略称する)20は、筺体13の前側に収納される。
【0049】
図2に戻って説明する。
【0050】
筺体13内の前側には、筺体13の角筒部13a各内壁から所定の隙間を空けた状態で一回り小さい角筒状の仕切部材(筒状の断熱部)21が収納されており、この仕切部材21はステンレス製の薄板とセラミックから構成されている。上記隙間は冷却用空気caの一部を筺体内壁に沿って流すための冷却通路Paとなっている。なお、仕切部材21と筺体内壁とは筺体長手方向に沿って配置された複数の棒状部材によって部分的に接続されている。
【0051】
この仕切部材21内に上記カメラユニット20が収納されている。
【0052】
カメラユニット20が収納された状態で冷却フィン群19のフィン外周端と仕切部材21の内壁とが接続され、冷却フィン群19の各冷却フィンの隙間にも冷却用空気caが流れるようになる。これらの冷却フィンの隙間は第二の冷却通路Pb(図3(a)参照)を構成する。
【0053】
また、上記仕切部材21の前側端部(方向転換部)21aは、筺体13の筒軸方向と直交する方向に所定長さL字状に折り曲げられており、その先端は上下および左右とも角度θb(図4参照)に開いたテーパに形成されている。この角度θbはCCDカメラ16のレンズ16aの画角θaより若干広く設定されている。
【0054】
この前側端部21aと平行に、カメラユニット20の前側端部にはプレート状のフィルタ支持部材22が配置され、このフィルタ支持部材22の中心に穿設された孔部に、後述するフィルタ群が配置されている。
【0055】
なお、図中、30はCCDカメラ16の本体周囲を被覆している断熱材であり、冷却フィン群19を断熱している。
【0056】
図4は観察窓およびその周辺の構造を拡大して示したものである。
【0057】
同図において、23は耐熱ガラスの内側に赤外線反射フィルタを重ね合わせた複層フィルタをさらに積層した耐熱ガラスであり、この耐熱ガラス23から隙間Sを空けてその内側に赤外線吸収フィルタ・赤外線反射フィルタ・耐熱ガラスを、スペーサを介して組み合わせ(24〜26)配置することにより観察窓が構成されている。この耐熱ガラス26に対してCCDカメラ16のレンズ16aが対向するようになっている。
【0058】
また、前側端部21aがL字状に折り曲げられていることによって冷却用空気caは第二の冷却通路Pbを通過した後、その向きが90°変更され、フィルタ支持部材22と前側端部21aとの間の隙間Dを流れて耐熱ガラス23の中心で合流し外側に向けて中央部開口27から筺体13の外部に放出される。
【0059】
また、フィルタ支持部材22と前側端部21aとの間の隙間を上向きに流れる冷却用空気caは耐熱ガラス23の前後両側を分岐して流れ、下向きに流れる冷却用空気caと合流する。それにより、耐熱ガラス23をその両面から効率良く冷却することができるとともに、耐熱ガラス23の外面に付着した粉塵等を冷却用空気caによって吹き飛ばすことができるようになっている。
【0060】
一方、冷却通路Paを流れた冷却用空気caは前面板13cに形成されているスリット状開口から筺体13の外部に放出されるようになっている。
【0061】
図5は前面板13cに形成されたスリット状開口の配置を示したものである。
【0062】
同図においてスリット状開口13dは、前面板13cの上下および左右に合計4箇所、正方形状に配置されている。各スリット状開口13dにはそのサイズより若干大きなサイズを有する帯板状部材からなるカバー28が備えられている。
【0063】
このカバー28はねじ29を緩めることによってスリット状開口13dの長手方向と直交する方向(矢印C方向)に移動させることができ、それにより、スリット状開口13dから吹き出される冷却用空気caの流量を調節することができるようになっている。これにより、長期使用により冷却空気量のバランスが変化した場合にも、状況に合わせてバランス調整が可能になる。なお、冷却空気caの吹出量の測定は観測前に測定され、所定の開度に設定される。
【0064】
上記中央部開口27および上記スリット状開口13dは、冷却用空気caが冷却に供せられた後、排出される排出部を構成する。
【0065】
ところで、冷却用空気caをラムビーム2の先端側に設置された炉内観察装置5に供給する場合、冷却用空気caを供給するホースを断熱配管12内に収納したとしても、炉内観察装置5に到達した時点で供給した冷却用空気caの温度は100℃程度に昇温してしまう。
【0066】
このように昇温した冷却用空気caが筺体13内に導入されると、CCDカメラ16の表面温度を上昇させてしまうが、CCDカメラ16の動作温度範囲は通常、0〜+40℃であるため、100℃に昇温した冷却用空気caの温度を60℃程度降下させる必要がある。
【0067】
従来の炉内観察装置には冷却手段として装置内にペルチェ素子を複数配設したものもあるが、単にペルチェ素子を配置したものは、まず、CCDカメラが配置されている装置内の空間を冷却し、冷却された雰囲気によって間接的にCCDカメラを冷却するものであるから、60℃程度に降下させることは不可能である。
【0068】
これに対し、本発明の炉内観察装置5では、CCDカメラ16に対し熱伝導体17を介して熱電冷却素子18の吸熱側を密着させ、その熱電冷却素子18の放熱側に冷却フィン群19を取り付けて一体化することで熱電冷却素子18を高効率で冷却動作させるように構成している。
【0069】
具体的には、CCDカメラ16の表面温度を熱電対で監視し、40℃を超える場合には熱電冷却素子18をON動作させる。熱電冷却素子18をON動作させると、放熱側温度は冷却用空気caの温度と略同じ温度であるから熱電冷却素子18は安定してCCDカメラ16を冷却することができる。それにより、CCDカメラ16の表面温度を40℃以下に保つことが可能になり、CCDカメラ16を安定動作させることが可能になる。
【0070】
また、筺体13外部から炉内観察装置5内に侵入する熱は、まず筺体13内壁に貼着されている断熱材14によって遮断され、熱の一部がその断熱材14を通過したとしても冷却通路Paを流れる冷却用空気によってそのほとんどが奪われる。そのため、第二の冷却通路Pbに配置されている冷却フィン群19を通過する冷却用空気caに与える影響は少ない。
【0071】
次に、上記構成を有する炉内観察装置5の動作について説明する。
【0072】
炭化室で乾留された赤熱コークス51を炉外に押し出す押出作業において炉蓋が外されると、図1に示した押出ラム3が炭化室内に挿入され、ラムビーム2先端のラムヘッド1によって赤熱コークスが押し出される。
【0073】
押出ラム3が炭化室内を移動していく際、押出ラム3の挿入方向と逆向に設置されている炉内観察装置5は炭化室の炉壁を押出機側からガイド車側に向けて、押出ラム3の位置信号情報のもとに連続的に撮影していく。
【0074】
炉内観察装置5には冷却用空気caが配管12を通じて常時供給されており、炉内観察装置5に供給された冷却用空気caは、図2に示したように冷却通路Paと第二の冷却通路Pbとに別れて筺体13内を流れる。
【0075】
冷却通路Paを流れる冷却用空気caは、筺体13内壁に貼着された断熱材14を通過して筺体13内に侵入してくる熱を吸収し、熱交換に供せられた冷却用空気caは前面板13cに設けられたスリット状開口13dから筺体13外部に放出される。
【0076】
カメラユニット20内のCCDカメラ16はその周囲に配設された熱伝導ブロック17a〜17dを介して熱電冷却素子18a〜18dの吸熱側と接触しているため、熱電冷却素子18a〜18dが温度制御されることによって冷却される。
【0077】
また、熱電冷却素子18a〜18dの発熱は冷却フィン19a〜19dに伝達され、これらの冷却フィン19a〜19dが配置されている第二の冷却通路Pbには冷却用空気caが常時流れているため、熱電冷却素子18a〜18dによって生じた発熱はその冷却空気caによって放熱される。
【0078】
第二の冷却通路Pbを通過して熱交換に供せられた冷却用空気caは、さらに、仕切部材21の前側端部とフィルタ支持部材22との隙間Dを流れることにより、その向きを耐熱ガラス23に集中する方向に変換し、耐熱ガラス23の表面に粉塵等が付着することを防止する。
【0079】
また、第二の冷却通路Pbを通過した冷却用空気caの一部は耐熱ガラス23と赤外線吸収フィルタ24との間に設けられた隙間にも流れ、それにより耐熱ガラス23を効率良く冷却するようになっている。
【0080】
また、上記炉内観察装置5は、押出ラム3によるコークス押出し時(片方向のみ)に動作させるものであってもよく、また、コークス押出し時と押出ラム3の戻り時(両方向)に動作させるものであってもよい。
【0081】
また、上記実施形態ではコークス炉の炉内を観察する場合を例に取り説明したが、これに限らず、本発明の炉内観察装置は、転炉、焼成炉、焼却ボイラー、発電用ボイラー、その他の高温の炉内を観察する場合に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る炉内観察装置を押出ラムに設置した状態を示す側面図である。
【図2】図1に示す炉内観察装置の拡大縦断面図である。
【図3】(a)は炉内観察装置に組み込まれるカメラユニットの構成を示す一部切り欠きを有する斜視図、(b)はその正面図である。
【図4】図2に示す炉内観察装置のフィルタ部分およびその周辺構造を示す要部拡大図である。
【図5】炉内観察装置の前面側の構成を示す正面図である。
【図6】コークス押出し作業時に行われる従来の炉内観察方法を説明する側面図である。
【図7】従来の炉内観察装置の内部構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 ラムヘッド
2 ラムビーム
3 押出ラム
4 支持スタンド
5 炉内観察装置
6 巻取装置
7 信号/電源ケーブル
8 ホース
9 タンク
10 コンプレッサ
11 変換器・温度制御装置
12 配管
13 筺体
14 断熱材
15 接続部
16 CCDカメラ
17 熱伝導体
17a〜17d 熱伝導ブロック
18 熱電冷却素子群
18a〜18d 熱電冷却素子
19 冷却フィン群
19a〜19d 冷却フィン
20 カメラユニット(電子冷却装置付きカメラ)
21 仕切部材
22 フィルタ支持部材
23 耐熱ガラス
27 中央部開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用空気の導入部とその冷却用空気が冷却に供せられた後、排出される排出部とを有する筺体と、この筺体内の上記排出部近傍に収納される撮像装置とを有し、
上記撮像装置は、
撮像素子と、
吸熱面側が上記撮像素子本体の周囲を取り囲んだ状態で配置されるプレート状の熱電冷却素子と、
上記撮像素子本体と上記熱電冷却素子の吸熱面側との隙間を埋める熱伝導体と、
上記熱電冷却素子の放熱面側に形成された冷却フィンとを一体化してなることを特徴とする炉内観察装置。
【請求項2】
上記撮像装置が筒状の断熱部を介して上記筺体内に収納され、この断熱部外壁と上記筺体内壁との間に冷却用空気を流すための冷却通路が形成されている請求項1記載の炉内観察装置。
【請求項3】
上記筺体内壁に断熱材が貼着されている請求項2記載の炉内観察装置。
【請求項4】
上記筺体の前面において上記撮像素子のレンズと対向する位置に観察窓が設けられ、この観察窓が、耐熱ガラスと赤外線吸収フィルタと赤外線反射フィルタとの積層体から構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の炉内観察装置。
【請求項5】
上記冷却フィンの外周部が上記筒状の断熱部によって閉塞され、各冷却フィンの隙間が冷却空気を流すための第二の冷却通路を構成している請求項2〜4のいずれか1項に記載の炉内観察装置。
【請求項6】
上記筒状の断熱部における冷却用空気の流れの下流側に、上記第二の冷却通路を通過した冷却用空気の流れを上記観察窓側に向けて方向転換する方向転換部が形成されている請求項5記載の炉内観察装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の炉内観察装置を、コークス炉に配置される押出ラムのラムビームに設置したことを特徴とする炉内観察装置付き押出ラム。
【請求項8】
上記ラムビームに敷設された断熱配管内に、冷却用空気を上記炉内観察装置に供給するホースと、上記撮像素子および熱電冷却素子に電源を供給するとともに撮影画像を出力するためのケーブルと、上記熱電冷却素子の温度制御を行うための制御信号を送信するケーブルが収納されている請求項7記載の炉内観察装置付き押出ラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−225266(P2007−225266A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50454(P2006−50454)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
【出願人】(502369746)住重機器システム株式会社 (29)
【Fターム(参考)】