説明

炊飯器

【課題】保存したご飯の食味向上と環境負荷低減を目指す。
【解決手段】鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、調理物の沸騰を検知する沸騰検知手段と、前記鍋の上面開口部を覆う蓋と、蓋内に設置する蒸し容器とを有し、前記蒸し容器は有底円筒状で、少なくとも底部に複数個の穴を有しかつ上面及び底面を各々閉止可能な蒸し容器蓋体を備えかつ蒸しコースを具備することによりご飯を加熱する工程で水に状態変化しご飯表面に付着する。前記で付着した水がβ澱粉化したご飯を再び加水分解しご飯をα化するため炊きたてのご飯を再現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間保存したご飯を簡便な手段で食味を改善した炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な家庭用の炊飯器においては、炊飯した後食べきれなかったご飯を、約70℃の温度に保つ保温工程や、残ったご飯を、ラップに包んで冷蔵または、冷凍し食べる直前に電子レンジにて温める等を行ない食することが多い。
【特許文献1】特開平2−74218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、残ったご飯を保温工程にて保温する場合、ご飯を高温で保つためご飯成分が分解したり、酸化、乾燥するなどして食味が劣化すると言う課題が有った。また、約12時間保温すると炊飯約1回分の電力を消費してしまい環境負荷がかかるものであった。
【0004】
また、ラップ等に包んで約5℃にて冷蔵した場合、ご飯の澱粉はβ化し食味が著しく劣化することが知られている。即ち、炊飯とは米に水を加え加熱することにより、米内にある澱粉質を加水分解し澱粉の分子量を小さくし、人間が消化できる澱粉に変質させることである。分子量の大きな澱粉をβ澱粉、分子量の小さな澱粉をα澱粉と呼ぶ。
【0005】
炊飯直後のご飯は、ほぼ100%α澱粉に変化しているが、温度が70℃以下になるとご飯の中にある水分の働きによりα澱粉は再びβ澱粉に変化し食味が劣化する。特に米内の水が凍らない範囲の低温ではご飯の中に含まれる水分により、米の再β澱粉化が促進される。この状態で電子レンジにて加熱した場合β澱粉化したご飯がすべてα澱粉化されず食味の劣化してしまう。
【0006】
この現象を防ぐためには、ご飯の老化する領域をすばやく通過させて、ご飯を冷凍保存すると、ご飯に内部にある水分が凝固してしまいα澱粉からβ澱粉への変化が生じないため、冷凍されたご飯の澱粉はα澱粉を維持する。従って、冷凍したご飯を電子レンジで解凍した場合、ほぼ炊きたてのご飯を得ることができる。しかしながら、冷凍したご飯を加熱する場合多大の電力を必要とする。即ち、約−20℃にて冷凍したご飯を70℃以上に加熱する必要が有り、また0℃付近で水の融解熱にも多大のエネルギーが必要となり環境負荷が大きくなる課題がある。また、冷凍したご飯を電子レンジにて加熱する際、加熱むらが生じるため解凍時間中に何度もご飯をひっくり返す動作が必要となり手間がかかると言った課題が生じていた。また、ご飯を冷蔵、冷凍する時、ご飯をラップに包んだ場合、加熱後前記ラップは再使用が利かないため廃棄する必要が有り、更なる環境負荷がかかるものであった。
【0007】
本発明の炊飯器は、長期間保存したご飯を簡便な手段で食味を改善し環境負荷も少ない加熱手段を備えた炊飯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、調理物の沸騰を検知する沸騰検知手段と、前記鍋の上面開口部を覆う蓋と、蓋内に設置する蒸し容器とを有し、前記蒸し容器は有底円筒状で、少なくとも底部に複数個の穴を有しかつ上面及び底面を各々閉止可能な蒸し容器蓋体を備えた炊飯器である。
【0009】
これによって、炊飯で残ったご飯を前記蒸し容器に入れた後、上底両端面に蓋体を取り付けた後冷蔵または冷凍保存する。保存しているご飯を食するに際しては、前記上下両端面の蓋体を取り外し、所定の蒸し水を入れた炊飯器にセットした後、炊飯器を蒸しコースにて運転を開始する。蒸しコースとは、炊飯器を強電力で通電し後蒸し水が沸騰したら、蒸し水の沸騰を維持するレベルの弱電力で通電し設定された蒸し時間を経過することで蒸しコースの運転を終了するものである。蒸し時間はご飯の温度により決定される。具体的には冷蔵されたご飯の温めには5分、冷凍されたご飯の温めには15分程度が適当である。
【0010】
冷えたご飯を、蒸気により再加熱することにより、以下に示す効果が得られる。
【0011】
第1に、蒸気で蒸すことにより、水蒸気がご飯にあたり水に変化するさい発生する潜熱によってすばやくご飯の温度を上げることができる。第2にご飯を加熱する工程で水に状態変化しご飯表面に付着する。前記で付着した水がβ澱粉化したご飯を再び加水分解しご飯をα化するため炊きたてのご飯を再現することができる。また、第3の効果として蒸気で蒸し状態とするため均一に加熱することができ、ご飯をひっくり返す動作が必要となり扱いやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炊飯器は、少なくとも底部に複数個の穴を有しかつ上面及び下面を各々閉止可能な蒸し容器蓋体を備えかつ蒸しコースを具備することにより、長期間保存したご飯を簡便な手段で食味を改善し環境負荷も少なくした炊飯器を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、調理物の沸騰を検知する沸騰検知手段と、前記鍋の上面開口部を覆う蓋と、蓋内に設置する蒸し容器とを有し、前記蒸し容器は有底円筒状で、少なくとも底部に複数個の穴を有することにより、ご飯に水分を補給しながら高効率でかつ均一に加熱することが可能となり温めた後のご飯の食味を向上させしかも扱いやすくすることができる。また、上面及び下面を各々閉止可能な蒸し容器蓋体を備えかつ蒸しコースを具備することにより、保存中のご飯を包むラップ等が不要になる、容器蓋体は繰り返し使用が可能であり環境負荷を低減することができる。
【0014】
第2の発明は、蒸し容器は、前記鍋開口部に懸架して載置するフランジを備えることにより、蒸し容器のセット性が向上するため一層使いやすくなる。
【0015】
(実施の形態1)
本発明の第一の実施の形態について図1〜図2を参照しながら説明する。図において1は炊飯器の本体を示し、着脱自在の鍋2を内装する。さらに鍋2の上面を覆う蓋3が開閉自在に設置されている。また鍋2を加熱する鍋加熱手段4と鍋2内に入れた水が沸騰したことを検知するサーミスタよりなる沸騰検知手段5が蓋3内に設置されている。6は加熱手段の通電量を制御する制御装置、7は蒸し時間を入力する入力装置である。8は有底円筒状の蒸し容器で、そこ面には複数の穴9が設けられている。また、蒸し容器8の上端部にはフランジ10を設けている。
【0016】
鍋2の開口部の内径をφ1、蒸し容器8の外径をφ2、フランジ10の外径をφ3とした場合、φ2<φ1<φ3となる寸法関係に設定することにより、蒸し容器8は、前記鍋2の開口部に懸架して歳置することができる。また、前記蒸し容器8の上面及び底面を封止する蓋体11を備えている。
【0017】
前記構成の炊飯器においてその動作を説明する。まず、食事後残ったご飯を蒸し容器8の中に投入し蒸し容器8の上面及び底面にそれぞれに蓋体11を取り付け蒸し容器8の開口面を封止する。前記、ご飯の入った蒸し容器8を冷蔵あるいは冷凍して保存する。食事前に前記ご飯の入った蒸し容器8を取り出し、蒸し容器8に取り付けた蓋体11を外す。次に、鍋2に蒸し水を所定量入れた後、本体1に鍋2をセットし、さらに鍋2に蒸し容器8をセットする。蓋3を閉めた後入力装置に蒸し時間を入力し炊飯を開始する。炊飯を開始すると鍋加熱手段4が最大電力で鍋2を加熱する。蒸し水の温度が上昇し沸騰すると沸騰検知手段5が蒸し水の沸騰を検知する。その後、鍋加熱手段4の通電を最大電力の5/16にて通電し蒸し水の沸騰を維持すると共に当初設定した時間通電した後、通電をストップし蒸し工程を終了する。
【0018】
発明者らは、電子レンジ及び本実施の形態にて保存したご飯の温めにかかる時間及び使用電力量を測定した。なお、ご飯の温めた後の温度は約80℃である。
【0019】
試験条件は以下に示す。
保存ご飯条件
ご飯温度 冷蔵5℃ 冷凍−25℃
保存量 150g 300g 450g
保存形態
本実施の形態 蒸し容器8に投入
電子レンジ ご飯150g毎にラップに包む。
(ご飯150gとは、茶碗約1杯分に相当する)
機器条件
本実施の形態
入力 1200W(蒸し水沸騰までは最大電力、蒸し水沸騰後は5/16通電)
蒸し水温度及び量 20℃ 700ml
電子レンジ
入力 1000W(高周波出力700W)
室温 20℃
実験結果を(表1)に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
(表1)より、冷凍したご飯にあっては、150gでは消費電力量、調理時間とも電子レンジの方がよいが300g以上では消費電力は本実施の形態の消費電力が少なくなり、さらに450gでは調理時間及び消費電力が少なくなった。
【0022】
また、冷蔵ご飯においては450g以上で消費電力が本実施の形態の方が少なくなった。冷蔵ご飯においては、冷凍ご飯と比べて環境負荷効果が少ないが、米内の水が凍らない範囲の低温ではご飯の中に含まれる水分により、米の再β澱粉化が促進される。この状態で電子レンジにて加熱した場合β澱粉化したご飯がすべてα澱粉化されず食味の劣化してしまう。
【0023】
本実施の形態では、ご飯を加熱する工程で水に状態変化しご飯表面に付着する。前記で付着した水がβ澱粉化したご飯を再び加水分解しご飯をα化するため炊きたてのご飯を再現することができるため、温めた後のご飯で炊きたての食味を再現することができた。
【0024】
したがって、1〜2日の保存であれば本実施の形態の手順でご飯を冷蔵保存することで食味及び環境負荷を両立させた炊飯器を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、保存したご飯の食味及び環境負荷低減に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施の形態における炊飯器の断面図
【図2】同、蒸し容器の斜視図
【符号の説明】
【0027】
2 鍋
3 蓋
4 鍋加熱手段
5 沸騰検知手段
6 制御装置
7 入力装置
8 蒸し容器
9 穴
10 フランジ
11 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、調理物の沸騰を検知する沸騰検知手段と、前記鍋の上面開口部を覆う蓋と、前記蓋内に設置する蒸し容器とを有し、前記蒸し容器は有底円筒状で、少なくとも底部に複数個の穴を有しかつ上面及び底面を各々閉止可能な蒸し容器蓋体を備えてなる炊飯器。
【請求項2】
蒸し容器は、前記鍋開口部に懸架して歳置するフランジを備えた請求項1に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−288519(P2006−288519A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110625(P2005−110625)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】