説明

炊飯器

【課題】加熱制御基板への水の付着を防止し、炊飯器本体の外郭を形成する部材の溶解、発火、炊飯器本体内部の拡大延焼を防止することで安全性を確保しつつ、経年使用により、炊飯器本体と蓋との隙間が拡大し外観を損なったり、蓋が開きにくくなることを防止する炊飯器を提供する。
【解決手段】有底筒状の内鍋収納部を有する炊飯器本体と、前記炊飯器本体に着脱自在に収納される内鍋と、前記炊飯器の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体と、前記内鍋を加熱するための加熱手段と、前記炊飯器本体の上面を構成し、後方に前記蓋体を軸支するヒンジ部を有する上枠と、前記上枠のヒンジ部下方に配し、前記加熱手段を制御する制御装置を備えた加熱制御基板とを備え、前記上枠のヒンジ部下面に支持されかつ前記加熱制御基板の上面全体を覆う金属製のヒンジ補強板を有する炊飯器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭、あるいは業務用に使用する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の機器の構成は以下のようなものであった。特許文献1によれば、本体と、前記本体の上部を覆う蓋と、前記本体の外郭を形成するボディと、このボディに嵌着する上枠と、前記上枠に懸架状態に載置されかつ着脱自在に収納される内鍋と、前記内鍋を誘導加熱する底加熱コイルと、前記底加熱コイルを支持する難燃性樹脂製の保護枠と、前記底加熱コイルに高周波電力を供給する制御部と、蓋に配設された操作部とを備え、前記制御部は前記本体のヒンジ側に立てて配置し、前記保護枠は前記上枠の外形に合わせて決定し、前記上枠のヒンジ部をネジで固定させた炊飯器である。
【特許文献1】特開平11−56606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の炊飯器では、加熱基板上を難燃性樹脂製の保護枠で覆う構成をとることにより、長年の使用により上枠にクラック等が入った場合、本体上面に溜まった水が加熱制御基板に付着するのを防止し、また加熱制御基板上の部品からの万一の発火による炊飯器本体の外郭を形成する部材の溶解、発火、内部の拡大延焼を防止することを実現できるが、ヒンジバネの力により経年使用で上枠が変形することで、炊飯器本体と蓋との隙間が拡大し外観を損なったり、蓋の開き角度や開き速度が悪化し蓋が開きにくくなるという課題を有していた。又、製品外形を変更する都度、保護枠を新設する必要があり投資コストが発生するという課題も有していた。
【0004】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、ヒンジバネの力により経年使用で上枠が変形することで、炊飯器本体と蓋との隙間が拡大し外観を損なったり、蓋の開き角度や開き速度が悪化し蓋が開きにくくなるという課題を解決することを目的とする。また、基板ベースを保護枠に固定し、金属性のヒンジ補強板を加熱制御基板の上面全体に配置する構成とすることにより、製品外形を変形する都度、保護枠を新設する必要がなく、投資コストを抑えることを実現した炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決する為に、本発明の炊飯器は、有底筒状の内鍋収納部を有する炊飯器本体と、炊飯器本体に着脱自在に収納される内鍋と、炊飯器の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体と、内鍋を加熱する加熱手段と、炊飯器本体の上面を構成し後方に蓋体を軸支するヒンジ部を有する上枠と、上枠のヒンジ部下方に配し加熱手段を制御する制御装置を備えた加熱制御基板とを備え、上枠のヒンジ部下面に支持されかつ加熱制御基板の上面全体を覆う金属製のヒンジ補強板を有する構成としたものである。
【0006】
これにより、長年の使用により上枠にクラック等が入っても、本体上面に溜まった水が加熱制御基板に付着するのを防止し、また加熱制御基板上の部品からの万一の発火による炊飯器本体の外郭を形成する部材の溶解、発火、内部の拡大延焼を防止し、安全性を確保しつつ、ヒンジバネの力により経年使用で上枠が変形することで、炊飯器本体と蓋との隙間が拡大し外観を損なったり、蓋の開き角度や開き速度が悪化し蓋が開きにくくなるという課題を解決することができる。また、基板ベースを保護枠に固定し、金属性のヒンジ補強板を加熱制御基板の上面全体に配置する構成とすることにより、製品外形を変形する都度、保護枠を新設する必要がなく、投資コストを抑えることを実現した炊飯器を提供する
ことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の炊飯器は、ヒンジバネの力により経年使用で上枠が変形することで、炊飯器本体と蓋との隙間が拡大し外観を損なったり、蓋の開き角度や開き速度が悪化し蓋が開きにくくなることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、有底筒状の内鍋収納部を有する炊飯器本体と、前記炊飯器本体に着脱自在に収納される内鍋と、前記炊飯器の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記炊飯器本体の上面を構成し後方に前記蓋体を軸支するヒンジ部を有する上枠と、前記上枠のヒンジ部下方に配し前記加熱手段を制御する制御装置を備えた加熱制御基板とを備え、前記上枠のヒンジ部下面に支持されかつ前記加熱制御基板の上面全体を覆う金属製のヒンジ補強板を有する炊飯器である。
【0009】
これにより、長年の使用により上枠にクラック等が入っても、本体上面に溜まった水が加熱制御基板に付着するのを防止し、また加熱制御基板上の部品からの万一の発火による炊飯器本体の外郭を形成する部材の溶解、発火、内部の拡大延焼を防止し、安全性を確保しつつ、ヒンジバネの力により経年使用で上枠が変形することで、炊飯器本体と蓋との隙間が拡大し外観を損なったり、蓋の開き角度や開き速度が悪化し蓋が開きにくくなることを防ぐことができる。
【0010】
第2の発明は、特に第1の発明において、加熱制御基板は基板ベースに保持され、前記基板ベースは難燃性樹脂又は不燃性樹脂からなり、前記加熱制御基板のパターン面を覆う構成とした炊飯器である。これにより、加熱制御基板上の部品からの万一の発火による炊飯器本体の外郭を形成する部材の溶解、発火、内部の拡大延焼を防止し、安全性を確保することができる。
【0011】
第3の発明は、特に第2の発明において、有底筒状の内鍋収納部を構成し加熱手段を保持する保護枠を有し、基板ベースは前記保護枠に固定する構成とした炊飯器である。これにより、製品外形を変形する都度、保護枠を新設する必要がなく、投資コストを抑えることを実現した炊飯器を提供することができる。
【0012】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における炊飯器について、図1を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態1の炊飯器の側面断面図である。図面を簡潔にするために、リード線等は省略する。
【0014】
図1において、炊飯器本体1は上面を構成する上枠3と側面および底面を構成するボディ4でその外郭が構成されており、上枠3は円筒状の穴部3a有し、穴部3aより連なる筒状で保護枠胴5と皿状の保護枠6により有底筒状の内鍋収納部1aを構成し、着脱自在に内鍋2を収納する。保護枠6の底部には底誘導コイル7を配置し、底誘導コイル7の外側には、内鍋2底部の底誘導加熱コイル7と側面部の底誘導コイル7の間を磁気結合する目的で磁性材料にて構成された底フェライト8を複数配置している。底誘導コイル7が内鍋加熱手段であり、誘導加熱方式は、各誘導コイルに通電した高周波電流から発生する高周波磁界が被加熱金属を通過する際に誘導加熱を引き起こし発熱することにより、内鍋2を誘導加熱し炊飯・保温を行う。底誘導コイル7の外周には反射枠26が環状に設けており、底誘導コイル7からの高周波磁界が炊飯器本体1の外部に漏れ出すのを防止し、周囲の機器に影響を及ぼさないような工夫がなされている。
【0015】
保護枠6の下方には、内鍋2と当接し、内鍋2の温度検知をする内鍋温度検知手段である底センサー9を配置している。内鍋2は上枠3に配設している上枠キャップ29により支持され、底誘導加熱コイル7との距離を保っている。内鍋2の側面部には、内鍋側面部の加熱手段である側面誘導加熱コイル21を配置している。
【0016】
蓋体15は炊飯器本体1上部を形成する開閉自在で、蓋体15が閉じている状態では、フックレバー18により炊飯器本体1に支持されている。蓋体15の下部には、蓋加熱板22を配置し、内部には蓋加熱手段である蓋誘導加熱コイル23と蓋温度検知手段である蓋センサー24を配設している。蓋加熱板22には、内鍋フランジ部2aと当接する内鍋パッキン25を配設し、内鍋2内の調理物が加熱されることにより発生する蒸気等が漏れないようにシールをしている。なお、底誘導加熱コイル7、側面誘導加熱コイル21、蓋誘導加熱コイル23はヒーターであっても良い。蓋体15には、炊飯器を操作するための入力装置を備えた操作制御基板27が配設されている。
【0017】
各加熱手段を制御する制御装置を備えた加熱制御基板10は、加熱制御基板用基板ベース11に支持され、上枠3の下方に垂直に保護枠6に固定している。前述の各基板はフェノール積層板、加熱制御基板用基板ベース11は難燃性樹脂でできている。加熱制御基板10に配設された加熱電力送出部12はアルミやアルミダイキャスト等でできたヒートシンク13を有し、ヒートシンク13に外気を送風するファンモータ14が取り付けてある。
【0018】
加熱制御基板10を支持した加熱制御基板用基板ベース11は、上枠3のヒンジ部3bの下面に鉛直に配設され、加熱制御基板用基板ベース11の上方両側面に配設されたリブ11aが上枠3の溝部3cに挿入され、加熱制御基板用基板ベース11の下方に配設された固定用アーム11bを保護枠6に固定している。上枠3のヒンジ部3bの下面には金属製のヒンジ補強板20が加熱制御基板10の上方全体を覆うように配設され、上枠3に固定されている。
【0019】
上枠3の本体後方の上面にはヒンジ部3bが設けられており、蓋体15がヒンジ部3bに取り付けたヒンジ軸16にて軸支され、開閉自在に本体上面を覆っている。ヒンジ部3bにはヒンジバネ17が蓋体15と炊飯器本体1双方に係合するように取り付けてあり、蓋体15に対し開放する方向の付勢力を有している。そして、ヒンジ部3bの後部はヒンジカバー28がその外郭を覆い、外部よりヒンジ軸16やヒンジバネ17が見えないようにしている。
【0020】
次に上記構成において動作を説明する。加熱制御基板10は操作制御基板27からの信号及び底センサー9、蓋センサー24が検知した温度情報を基に、加熱電力送出部12より通電される底誘導コイル7や蓋誘導コイル23や側面誘導加熱コイル21の通電量を出力として制御する。
【0021】
誘導加熱方式は、各誘導コイルに通電した高周波電流から発生する高周波磁界が被加熱金属を通過する際に誘導加熱を引き起こし発熱する。ここで、加熱電力送出部12は高周波電流を各誘導コイルへ供給する際、電気抵抗ロスおよび高周波発生時のスイッチングロスで自己発熱する。加熱電力送出部12が自己発熱で加熱電力送出部12が許容温度以上に高温となると、加熱電力送出部12が破壊する場合があるので、加熱電力送出部12はアルミやアルミダイキャスト等でできたヒートシンク13を有し、ヒートシンク13を通じで自己発熱による熱を放熱する。また、ファンモータ14でヒートシンク13は冷却され、効率的に加熱電力送出部12は冷却される。
【0022】
底誘導コイル7は加熱電力送出部12より供給される電流で誘導加熱により内鍋2の底面を発熱させる。ここで、底フェライト8は磁性材料で構成されており、底誘導コイル7から発生する磁界を効率よく鍋側へ集める。これにより、内鍋2周辺に高密度の磁界が発生し、鍋はより高効率に高発熱する。また、反射枠32が底誘導コイル7からの高周波磁界が炊飯器本体1の外部に漏れ出すのを防止し、周囲の機器に影響を及ぼさないような工夫がなされている。
【0023】
フックレバー18を押し、蓋を開け、炊飯を行う米とその米量に対応する水を内鍋2に入れ、内鍋収納部1aの所定の状態に内挿する。ここで、ダンパー19が蓋の開放動作により蓋が完全に開いたときに蓋の開放の勢いで本体がバウンドしないよう、蓋開き時のブレーキ力を発生する。これにより、蓋体15はフックレバー18を押すと自動で開放しつつも、蓋の勢いによる本体のバウンド等も発生しない。加えて、蓋開き時に本体の重心が後方に移動するが、その勢いで本体が後方へ倒れないよう、通常若干床面から浮いた本体後方脚部1bが床面に当接し、勢いによる本体後方への倒れも防止する。よって使用者は蓋のバウンド等の心配なく安心感をもって蓋を開けることができる。
【0024】
上枠3のヒンジ部3bの下面に配設された金属製のヒンジ補強板20は蓋開閉時にヒンジバネ17によりヒンジ部3bにかかる力で上枠3が変形するのを防止する。これにより、経年使用での上枠3の変形による、炊飯器本体1と蓋体15隙間の拡大化、蓋体15の開き角度や開き速度の悪化の発生を防止することができる。又、金属製のヒンジ補強板20を使用することにより、樹脂製の保護枠6による補強を行うよりもより補強の効果を得られる。ヒンジ補強板20は加熱制御基板10の上方を覆うように配設されており、上枠3の破損時に上枠3から侵入してくる水を加熱制御基板10に配設されている部品へ滴下するのを防止することができる。又、加熱制御基板10上の部品からの万が一の発火による炊飯器本体1の外郭を形成する部材の溶解、発火、内部の拡大延焼を防止することにより、安全性を確保することができる。難燃性樹脂製の加熱制御基板用基板ベース11は、加熱制御基板10のパターン面を覆っており、これにより、加熱制御基板10上の部品からの万一の発火による炊飯器本体1の外郭を形成する部材の溶解、発火、内部の拡大延焼を防止し、安全性を確保することができる。
【0025】
また、本実施の形態では、上枠3の下面にヒンジ補強板20を配設することにより、上枠3の変形を防止することができ、またヒンジ補強板20は加熱制御基板10の上方を覆っていることより、水の浸入、万が一の発火時の拡大延焼を防止することができることにより、難燃製の保護枠6を上枠3の外形形状に合わせて決定し、ヒンジ部3bで固定する必要はないため、製品外形を変形する都度、保護枠6を新設する必要がなく、投資コストを抑えることができると共に、保護枠6の小型化により、炊飯器本体1のデザインや大きさの選択肢が広がり、コンパクト化を実現した炊飯器を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、ヒンジバネの力により経年使用で上枠が変形することで、炊飯器本体と蓋との隙間が拡大し外観を損なったり、蓋の開き角度や開き速度が悪化し蓋が開きにくくなることを防ぐことができるので、家庭用のみならず、業務用の炊飯器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1の炊飯器の断面図
【図2】本発明の実施の形態1の炊飯器の要部下面図
【符号の説明】
【0028】
1 炊飯器本体
2 内鍋
6 保護枠
7 底誘導コイル(加熱手段)
10 加熱制御基板
11 加熱制御基板用基板ベース
15 蓋体
20 ヒンジ補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の内鍋収納部を有する炊飯器本体と、前記炊飯器本体に着脱自在に収納される内鍋と、前記炊飯器の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記炊飯器本体の上面を構成し後方に前記蓋体を軸支するヒンジ部を有する上枠と、前記上枠のヒンジ部下方に配し前記加熱手段を制御する制御装置を備えた加熱制御基板とを備え、前記上枠のヒンジ部下面に支持されかつ前記加熱制御基板の上面全体を覆う金属製のヒンジ補強板を有する炊飯器。
【請求項2】
加熱制御基板は基板ベースに保持され、前記基板ベースは難燃性樹脂又は不燃性樹脂からなり、前記加熱制御基板のパターン面を覆う構成とした請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
有底筒状の内鍋収納部を構成し加熱手段を保持する保護枠を有し、基板ベースは前記保護枠に固定してなる請求項2記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−214036(P2010−214036A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67419(P2009−67419)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】