炊飯器
【課題】それぞれ2つずつ設けられた圧力弁及び圧力弁開放機構が片方又は両方使用されても加圧状態において蓋体のロックが解除されない炊飯機を提供する。
【解決手段】圧力弁29及び圧力弁開放機構30が蓋体7内にそれぞれ2つずつ設けられた炊飯器1において、圧力弁開放機構30は、移動可能なプランジャー34と、プランジャーの移動を伝動するリンク機構38と、リンク機構から伝動された移動に伴い移動される作動部材43とを有し、蓋体7には、蓋体ロック機構70のロックの解除を抑制するロック部材80が備えられ、作動部材43には、圧力弁29の開閉機構を作動させる作動杭44とロック部材80が押動される腕部47とが形成され、ロック部材80は、作動部材44の移動により圧力弁29が閉状態とされたとき、作動部材43の移動に伴い腕部47がロック部材80を蓋体ロック機構70のロックの解除を抑制するように移動させる。
【解決手段】圧力弁29及び圧力弁開放機構30が蓋体7内にそれぞれ2つずつ設けられた炊飯器1において、圧力弁開放機構30は、移動可能なプランジャー34と、プランジャーの移動を伝動するリンク機構38と、リンク機構から伝動された移動に伴い移動される作動部材43とを有し、蓋体7には、蓋体ロック機構70のロックの解除を抑制するロック部材80が備えられ、作動部材43には、圧力弁29の開閉機構を作動させる作動杭44とロック部材80が押動される腕部47とが形成され、ロック部材80は、作動部材44の移動により圧力弁29が閉状態とされたとき、作動部材43の移動に伴い腕部47がロック部材80を蓋体ロック機構70のロックの解除を抑制するように移動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯器に関し、詳しくは、加圧状態から急激な減圧を起こすことにより爆発的な撹拌作用が得られ、被炊飯物のメニューに応じて沸騰時の減圧度を加減し、撹拌の状態を調整できる炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からおいしいご飯を炊き上げるために、炊飯工程中に内鍋内に圧力を加える炊飯器が数多く提案されている。
【0003】
例えば、本出願人により開示された下記特許文献1では、炊飯の過程で加圧と減圧を繰り返し行う方式、つまり加圧時に高温をかけて熱と水分を米の芯に浸透させ、その状態からの急激な減圧によって起きる爆発的対流により米をかき混ぜ熱をむらなく通す、いわゆる「おどり炊き」方式の炊飯器を開発した。この炊飯方式は、加圧時には例えば1.2気圧、105℃で炊飯し、減圧時には急激に1気圧まで減圧することを、被炊飯物に応じて数回乃至十数回繰り返すものである。そうすると、米の場合には加圧時には熱と水分が米の芯まで浸透して甘みと粘りを引き出し、減圧時には大沸騰が生じて米が鍋の底からかき混ぜられることになるので、米の吸水が促進され米が芯からα化するとともに、撹拌により鍋の中心部まで加熱され、ふっくらしたご飯が炊けるとされている。
【0004】
このように、この方式の炊飯器では被炊飯物を入れる鍋に溜められた水が炊飯時に加熱され加圧状態から急激に減圧されると一気に沸騰して、激しい熱対流を引き起こすこととなり、この沸騰熱が米に浸透し、美味さを引き出すことができる。かつ沸騰水によりかき混ぜられた米は吸水が促進され各粒の芯からのα化ができるとされている。
【0005】
しかし、下記特許文献1に開示された炊飯器では、減圧機構は備えているがその能力が不足していて、減圧の回数が少ないと十分な撹拌効果が得られず減圧を何度も繰り返す必要があり、さらに改善が望まれていた。
【0006】
その課題を解決すべく、本出願人は、下記特許文献2に示すように、鍋の蓋体に設ける減圧機構を構成する圧力弁として圧力調整弁と圧力抜き弁の2つの圧力弁を設けることによって、一度の減圧でも十分な撹拌が行なわれ、突沸時の撹拌における熱エネルギーが有効活用できて、さらに美味しいご飯が提供できる炊飯器を発明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−344568号公報
【特許文献2】特開2008−048766号公報
【特許文献3】特開2008−048767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献2に開示された炊飯器では、圧力弁を2つ設けたことにより、新たな課題が出ている。課題として、圧力弁を2つ設けたことにより、開放される圧力により放出される蒸気の量が1つのときと比べ、約1.5倍から2倍程度に増え、このような状態のとき蓋体が開閉されると使用者に危険が及ぶおそれがある。
【0009】
そのため、圧力弁が2つ備えられた炊飯器において、炊飯器内が加圧状態とされたとき、蓋体が開けられない状態にロックしておくことが好ましく、しかも、この蓋体のロックを圧力弁が閉じた状態となったとき自動的及び強制的にされるようにすると、使用者の不注意による蓋体の開放が抑制されさらに好ましい。このときのロックは圧力弁が2つ使用された場合のみならず、1つ使用された場合でも蓋体のロックができるようにすることが臨まれている。
【0010】
なお、上記特許文献3には、調理中に蓋体のロック解除釦を押しても蓋体が開かないようにした圧力安全機構を備えた圧力調理器が開示されているが、この圧力安全機構は圧力弁が1つの場合についてのものであるため、圧力弁が2つの場合には適応できない。たとえ、この圧力安全機構を2つの圧力弁のそれぞれに適応しても、使用される圧力弁が1つのときと2つのときの両方に対応することはできない。
【0011】
そこで、本願の発明者は、上記課題を解決するため、種々検討をした結果、圧力弁と圧力弁開放機構がそれぞれ2つ設けられた炊飯器において、2つの圧力弁と圧力弁開放機構との間にクロスさせたリンク機構を設け、このリンク機構の間にロック部材を設けることで、ロック部材は、リンク機構が両方作動しても、片方だけ作動してもロック部材により蓋体をロックすることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は、圧力弁及び圧力安全機構が2つずつ備えられた炊飯器において、炊飯器内が加圧状態にあるときは、蓋体のロックが解除されないようにされた、安全性の高い炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願の請求項1に記載の炊飯器は、水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記蓋体を前記炊飯器本体にロック及びロックを解除する蓋体ロック機構と、前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁と、前記圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを有し、前記圧力弁及び前記圧力弁開放機構が前記蓋体内にそれぞれ2つずつ設けられた炊飯器において、前記圧力弁開放機構は、電気的又は機械的手段によって移動が可能なプランジャーと、前記プランジャーの移動を伝動するためのリンク機構と、前記リンク機構から伝動された移動に伴い移動される作動部材とを有し、前記蓋体には、前記蓋体ロック機構のロックの解除を抑制するためのロック部材が備えられ、前記作動部材には、前記圧力弁の開閉機構を作動させる作動杭と前記ロック部材が押動される腕部とが形成され、前記ロック部材は、前記作動部材の移動により前記圧力弁が閉状態とされたとき、前記作動部材の移動に伴い前記作動部材の前記腕部が前記ロック部材を前記蓋体ロック機構のロックの解除を抑制するように移動させることを特徴とする炊飯器。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記リンク機構は、略中央部が前記蓋体と枢支されるリンクバーで形成され、
前記リンクバーの両端部にはそれぞれ貫通孔が形成され、一方の前記貫通孔は前記プランジャーの端部と、他方の前記貫通孔は前記作動部材の端部とがそれぞれ遊動可能に連結され、前記リンクバーの略中央部を中心として回動されることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2に記載の炊飯器において、前記プランジャーの端部には、前記プランジャーの移動に追従可能な移動部材が設けられ、前記リンクバーの一方の貫通孔は、前記移動部材に遊動可能に連結されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の炊飯器において、前記それぞれのリンク機構は、前記リンクバーが互いにクロスして設置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項6に記載の炊飯器において、前記クロスして配置されたリンク機構は、互いが接触しないよう高さが互い違いに設置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載の炊飯器において、前記作動部材には、前記蓋体と前記リンクバーの前記枢支される部分が挿通される孔が形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記蓋体ロック機構は、一端に前記炊飯器本体に係止される少なくとも1つの係止爪と、他端に前記ロック部材が当接されるロック部材当接部を有し、前記ロック部材当接部が前記ロック部材と当接されることを特徴とする。
【0020】
請求項8の発明は、請求項7に記載の炊飯器において、前記ロック部材には、前記作動部材に形成された突起部と嵌合される溝部が形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項9の発明は、請求項7又は8に記載の炊飯器において、前記ロック部材は、前記作動部材の前記作動杭に対して垂直方向に形成された腕部により押動され、前記蓋体ロック機構の前記ロック部材当接部に移動されることを特徴とする。
【0022】
請求項10の発明は、請求項9に記載の炊飯器において、前記それぞれの作動部材は、並列に設けられており、
前記並列に設けられた作動部材に形成されたそれぞれの腕部は、高さが互い違いに形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項11の発明は、請求項7〜10の何れかに記載の炊飯器において、前記ロック部材は、前記作動部材と接続された復帰バネを有し、
前記作動部材により移動された前記ロック部材は、前記復帰バネにより規定位置に復帰し、前記蓋体ロック機構の前記ロック部材当接部から離脱することを特徴とする。
【0024】
請求項12の発明は、請求項1〜11の何れかに記載の炊飯器において、前記それぞれの圧力弁は、互いに異なった口径を有することを特徴とする。
【0025】
請求項13の発明は、請求項1〜12のいずれかに記載の炊飯器において、前記圧力弁開放機構は、前記それぞれの圧力弁を個別に又は同時に開放させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は上記の構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、炊飯機の内部が加圧状態となるように作動部材が移動すると同時に、作動部材がロック部材を押動し蓋体ロック機構のロックが解除されないようにすることができ、炊飯器が加圧状態のときに蓋体が開けられることを抑制するので、安全な炊飯器を提供することができる。また、リンク機構を用いることで、プランジャー及び作動部材の運動を狭いスペースに収めることができるので、炊飯器の設計の幅を広げることができ、また、リンク機構を含む圧力弁開放機構の小型化及び炊飯器の小型化も可能となる。
【0027】
請求項2の発明によれば、リンク機構を簡単な構造で作成することができ、炊飯器の製造コストを減らすことができるとともに、設計の幅を広げることができる。
【0028】
請求項3の発明によれば、プランジャーは、電気的又は機械的に作動される精密な部材であるので、このプランジャー自体にリンク機構と連結される部分を形成する必要がなく、プランジャーの設計が容易に行え、また、プランジャーの故障を抑制することができる。
【0029】
請求項4の発明によれば、リンクバーをクロスして設置することにより、設置スペースを小さくすることができ、リンク機構等の小型化を図ることができる。
【0030】
請求項5の発明によれば、クロスしたそれぞれのリンクバーが接触することを抑制することができるので、故障の少ない炊飯器を提供することができる。
【0031】
請求項6の発明によれば、リンク機構と蓋体とを枢支される部分を作動部材を貫通して形成することができるので、さらに設置スペースを小さくでき、リンク機構等のさらなる小型化を図ることができる。
【0032】
請求項7の発明によれば、蓋体ロック機構にロック部材が当接されるロック部材当接部が形成されるので、このロック部材当接部がロック部材と当接されることによって蓋体ロック機構自体の開動作を抑制することができ、より確実にロックの解除を抑制することができるようになる。また、蓋体ロック機構のロック部材当接部にロック部材を当接させることで、炊飯器内の内圧が上昇するに伴い、蓋体の内蓋が上昇する。この内蓋の上昇により、ロック部材も上昇し、蓋体ロック機構のロック部材当接部を上方へ押し上げる力が働くため、蓋体ロック機構の解除がさらに抑制され、安全度が増すこととなる。
【0033】
請求項8の発明によれば、作動部材の突起部とロック部材の溝部を嵌合させることにより、ロック部材の動きを制御し、ロック部材を確実に蓋体ロック機構のロック部材当接部に導くことができるようになる。
【0034】
請求項9の発明によれば、作動部材には圧力弁の開閉機構を作動させる作動杭と垂直方向にロック部材を押動する腕部が形成されているので、作動部材が移動される圧力弁と同一直線上にロック部材を配置しなくても、ロック部材を押動することができる。
【0035】
請求項10の発明によれば、作動部材を並列に並べても腕部が互いに接触することがなくなり、2つの作動部材の両方又はいずれか一方が移動することで、1つのロック部材を押動させることができるようになる。
【0036】
請求項11の発明によれば、移動されたロック部材は、復帰バネの弾性力を利用して、蓋体ロック機構のロック部材当接部から規定の配置に戻ることができるので、複雑な形状を作動部材に形成する必要がなくなる。
【0037】
請求項12の発明によれば、それぞれの圧力弁の口径を変えることで圧力の開放状態を制御することができ、炊飯量にあわせた炊飯ができるようになる。
【0038】
請求項13の発明によれば、炊飯される量によって開閉される圧力弁を1つにするか2つにするかを決められ、炊飯量にあわせた炊飯が可能となる。なお、圧力弁の開放は、炊飯器内の米を攪拌するときに用いられるので、炊飯量の少ないときに2つの圧力弁を同時に開放すると、攪拌が激しくなりすぎて好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施例にかかる炊飯器の外観斜視図である。
【図2】本実施例にかかる炊飯器の蓋体を開けた状態を示す斜視図である。
【図3】本実施例にかかる炊飯器の蓋体の内蓋を外した状態を示す平面図である。
【図4】本実施例にかかる炊飯器の略中央部で切断した断面図である。
【図5】図5Aは図4の蓋体のみを示した拡大断面図であり、図5Bは蓋体に配置される2つの圧力弁を示した図であり、図5Cは2つの圧力弁の変形例を示した図である。
【図6】蓋体の外蓋を外した状態を示す斜視図である。
【図7】蓋体ロック機構及びリンク機構を備えた圧力弁開放機構を示した斜視図である。
【図8】蓋体ロック機構及びリンク機構を備えた圧力弁開放機構の分解斜視図である。
【図9】第1リンク機構を備えた第1圧力弁開放機構を示した斜視図である。
【図10】第2リンク機構を備えた第2圧力弁開放機構を示した斜視図である。
【図11】ロック部材及び復帰バネを示した斜視図である。
【図12】両方の圧力弁開放機構が作動していない状態の蓋体ロック機構とリンク機構及を備えた圧力弁開放機構の部分拡大平面図である。
【図13】図12における両方の圧力弁開放機構が作動した状態を示す部分拡大図である。
【図14】第1及び第2作動部材とロック部材の配置を説明する概略図である。
【図15】図12における第1圧力弁開放機構が作動した状態を示す部分拡大図である。
【図16】図12における第2圧力弁開放機構が作動した状態を示す部分拡大図である。
【図17】図17Aは図15における第1作動部材及びロック部材の動きを示した概略図であり、図17Bは図16における第2作動部材及びロック部材の動きを示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して、本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこの炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0041】
本発明の実施例に係る炊飯器1を図1〜図6を用いて説明する。炊飯器1は、水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋6と、この鍋を着脱自在に収容する開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する誘導加熱コイル18等の加熱手段並びに加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体2と、鍋6及び炊飯器本体2の開口部を塞ぐ蓋体7とを備えている。制御手段は、鍋6内の圧力を略一定とするように鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁29と、圧力弁29に付設され圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構30とを備えており、加熱手段の加熱量とを制御するとともに、圧力弁開放機構30による圧力弁29の開動作の制御を行なう。制御手段は、沸騰中に圧力弁開放機構30により圧力弁29を少なくとも1回開動作させて鍋内の圧力を変更するようにしてある。また、本実施例では、圧力弁29及び圧力弁開放機構30は2つ設けられている(図5参照)。なお、制御手段は後述する制御基板21に記憶されたプログラムを実行することで行われる。
【0042】
炊飯器本体2は、その内部に鍋6を収容する非金属材料で成形された有底筒状の内ケース3と、この内ケースを覆う外ケース4とを有し、内ケース3内に鍋6が着脱自在に収容されるようになっている。内ケース3は、その上端部に外周へ突出したフランジ部3aが形成されている。鍋6は、その上端開口部に外方に張り出すフランジ6aが形成されており、このフランジ6aが内ケース3のフランジ部3aに掛るように載置される。
【0043】
また、内ケース3のフランジ部3aの対向する側面側には、一部分を切り欠いた切り欠き部4aが形成されており、鍋6のフランジ6aの一部がこの切り欠き部4aからはみ出し、鍋6を内ケース3内から取出しやすくなっている。
【0044】
内ケース3は、その底部付近の外周囲に誘導加熱コイル18が配設される。また、内ケース3には、上方開口部と誘導加熱コイル18との間に側面ヒータ19が配設されている。
【0045】
炊飯器本体2には、誘導加熱コイル18、側面ヒータ19及び蓋ヒータ20等へ電力を供給・制御する制御基板21が吸気孔5aに近接した箇所に配設されている。電源制御基板21には、半導体素子からなるインバータ22、スイッチング素子、タイマー素子等の電子部品が装着されている。これらの電子部品のうち、特にインバータ22は作動時に発熱するのでヒートシンク、或いは冷却ファン26によって冷却される。また、炊飯器本体2は、その底部5の中央部に鍋6の底面に接触するようにして温度検出センサ6bが設けられている。
【0046】
炊飯器本体2の底部5には、図4に示すように左右に、空気を吸気する吸気孔5a及び吸気された空気を排出する排気孔5bが形成され、吸気孔5a及び排気孔5bは、底部5に所定の幅長及び長さを有する複数本の細溝、いわゆるスリットで形成されている。冷却ファン26は、吸気孔5aに近接した位置に配設されている。この冷却ファン26は、図示しないモータにより作動され、吸気孔5aから吸気した空気でインバータ22を冷却する。
【0047】
炊飯器本体2には、後述するヒンジ部材15の反対側に、内ケース3の上端部に形成された係止部材71が設けられており、係止部材71に形成された2つの係止爪72により炊飯器本体2に形成された係止部2aと係止され蓋体7を固定することができる。さらに、この係止部材71には、ロック部材当接部74が形成され、後述するロック部材80と当接し加圧時の蓋体7の開閉ができないようにされている。また、係止部2aは外ケース4に設けた開閉ツマミ76と連動されて蓋体7の開閉を行うようになっている。このとき、開閉ツマミ76と係止部2aとの間には、加圧時に開閉ツマミ76が押されても蓋体7が開閉されない装置が組み込まれている。なお、この装置は公知であるので詳細な説明は省略する。
【0048】
蓋体7は、その外蓋8の上面に操作プレート23が装着されている。この操作プレート23には、炊飯ボタン、選択及び時刻調整ボタン、切りボタン、保温ボタン、予約ボタン及びファンクションボタン等の操作釦及び表示パネル24が装着されており、表示パネル24には制御・選択された炊飯メニュー等が表示される。
【0049】
蓋体7は、枠体9の上下に外蓋8及び蓋カバー11をそれぞれ取り付け、蓋カバー11を介して枠体に内蓋10が着脱自在に装着された構成を有し、炊飯器本体2の内ケース3の上方開口部を覆うように取り付けられている。蓋体7は、枠体9をヒンジ部材15と枢支ピン16とを用いて炊飯器本体2に軸支されており、蓋体7を炊飯器本体2に開閉できるようになっている。また枠体9と内蓋10の間には、蓋カバー11に覆われて蓋ヒータ20が配設されるとともに、蓋温度センサ(図示省略)が設けられている。内蓋10のほぼ中央部には、鍋の圧力や温度の検知用のセンサが取り付けられるとともに、炊飯器本体2内の蒸気圧を制御し圧力を調整して吹きこぼれを防ぐ圧力弁29や、圧力弁の故障などで鍋が異常に加圧されたときに開放され鍋の圧力を逃がす安全弁(図示省略)が装着されている。
【0050】
外蓋8には、吹きこぼれるおねばを一時貯留するおねば貯留タンク27が着脱自在に装着されている。おねば貯留タンク27の内部は蒸気とおねばとを分離させるために上下から分離構造を設けた多室構造となっており、蒸気口27aを蒸気のみが通過できるようになっている。おねばは、立上加熱工程、沸騰維持工程でおねば貯留タンク27に溜まり、蒸らし工程で、鍋6内の圧力が低下すると、負圧弁12より、鍋6内に還元されるようになっている。
【0051】
内蓋10の外周囲には、鍋6のフランジ6aと内蓋10とをシールする鍋パッキン14が外枠13に支持されて装着されている。炊飯器本体2内に鍋6を収容して蓋体7で覆うと、鍋パッキン14が鍋6の開口縁部に圧接して鍋6が閉鎖される。
【0052】
また、内蓋10の鍋6側には、おねば貯留タンク27に溜められたおねばを、鍋6内に拡散して供給するための、おねば拡散部28が取り付けられている。
【0053】
蓋体7は、その内蓋10がステンレス鋼材やアルミニウム材あるいは両者からなるクラッド材で形成されたものである。内蓋10は金属板を周縁部と内部との間に段差が形成されるように円盤状にプレス成型して形成され、周縁部にはゴム製の鍋パッキン14を介して硬質のプラスチック製の外枠13を取り付けている。外枠13には内蓋を装着するための係止部が設けてある。鍋パッキン14は、鍋6のフランジ6aと密着し、鍋6をシールすることにより圧力を保持する。鍋パッキン14は、耐久性、耐熱性に優れているシリコンゴムから形成するのが好ましい。
【0054】
蓋体の内側の内ケース3に形成された切り欠き部4aと対向する部分には、この切り欠き部4aを塞ぐことができる閉塞突起7aが形成されている。
【0055】
また、内蓋10には、選択的に動作可能にした2つの圧力弁が設けられている(図5参照)。このとき、圧力弁は、図5Bに示すように弁孔が同じものを2つ設けることもでき、また、図5Cに示すように弁孔が異なるものを1つずつ設けることもできる。なお、図6は蓋体7から外蓋8を外して内蓋10の方を見た平面図であり、格子状に組まれたのは枠体9である。内蓋10のほぼ中央付近に二つ並べて圧力弁が設けられており、これらの圧力弁が蓋カバー11の中央付近の孔から外蓋8内に突出している。これらの圧力弁は、外蓋8の内部に取り付けられたソレノイドによって駆動されるが、本実施例では、それぞれの圧力弁とソレノイドの間にはリンク機構が設けられ、このリンク機構を介してソレノイドの動きが圧力弁に伝えられる。詳細は後述する。
【0056】
圧力弁29は、図5に示すように、弁孔29aを有する弁座29bと、この弁座29bの上に自重により弁孔29aを塞ぐ開閉機構としての金属製のボール29cと、このボール29cを覆うカバー29eとからなる。この圧力弁29は、鍋6内の圧力とボール29cの自重とのバランスによって、ボール29cが弁孔29a上に移動されたり離れたりすることにより、さらには圧力弁開放機構30の制御によって強制的にボール29cを移動させることにより、弁孔29aの開閉が行われる。
【0057】
以下、図6〜図17を用いて実施例にかかる炊飯器1のリンク機構を備えた圧力弁開放機構の動作、及びこの動作に伴う蓋体の蓋体ロック機構について説明する。
【0058】
図6に示すように、蓋体7の外蓋8を外すと、図6を正面から見て手前方向に蓋体ロック機構70があり、その奥に2つの第1リンク機構38及び第2リンク機構57をそれぞれ備えた第1圧力弁開放機構31及び第2圧力弁開放機構50がそれぞれ配置されている。なお、第1圧力弁開放機構31及び第2圧力弁開放機構50をまとめて単に圧力弁開放機構30ともいう。また、蓋体7の略中央部には2つの第1圧力弁29A及び第2圧力弁29Bが格納された圧力弁格納部29Cが備えられている。なお、第1圧力弁29A及び第2圧力弁29Bをまとめて単に圧力弁29ともいう。
【0059】
蓋体ロック機構70及び圧力弁開放機構30は、図7に示すように配置されている。なお、2つの圧力弁開放機構は、図7を正面にみて左側を第1圧力弁開放機構31、右側を第2圧力弁開放機構50とする。
【0060】
図7及び図8に示すように、第1圧力弁開放機構31は、第1プランジャー34を移動させる第1ソレノイド32が格納された第1ソレノイドカバー33と、第1ソレノイド32の励磁により移動される第1プランジャー34と、第1プランジャー34の移動に追従する第1移動部材36と、第1移動部材36に連結された第1リンクバー39と、第1リンクバー39と連結された第1作動部材43で構成されている。また、第2圧力弁開放機構50は、同様に、第2プランジャー53を移動させる第2ソレノイド51が格納された第2ソレノイドカバー52と、第2ソレノイド51の励磁により移動される第2プランジャー53と、第2プランジャー53の移動に追従する第2移動部材55と、第2移動部材55に連結された第2リンクバー58と、第2リンクバー58と連結された第2作動部材62で構成されている。そして、第1リンクバー39と第2リンクバー58がクロスして配置されている。
【0061】
また、第1作動部材43と第2作動部材62の間には、ロック部材80が配置され、このロック部材80と第1、第2作動部材43、62とは復帰バネで係止されている。
【0062】
また、蓋体ロック機構70は、一方の端部に炊飯器本体2と係止される一対の係止爪72が形成されて、その反対側には、ロック部材80が当接されるロック部材当接部74が形成されている。また、蓋体ロック機構70は、ロック部材当接部74に対して垂直方向にあたる両端部には小径の孔75が形成されており、この孔75と蓋体7に形成された孔とが軸支棒73を挿通することで回動自在に固定されている。さらに蓋体ロック機構70は、バネ等の弾性体を介され、蓋体ロック機構70が解除される力が加わらないときは、係止爪72がロックする位置に配置されるように構成されている。
【0063】
次に図9を参照して第1圧力弁開放機構31について説明する。
【0064】
第1プランジャー34は、第1ソレノイド32の中心部に配置され、第1ソレノイド32が励磁されることで可動する。この第1ソレノイド32は第1ソレノイドカバー33内に格納され、第1ソレノイドカバー33が蓋体7に固定される(図6参照)。また、第1プランジャー34の先端には、第1ワッシャー35が装着されている。
【0065】
また、第1移動部材36は第1プランジャー34の移動に追従するように設けられ、第1プランジャー34の先端に装着された第1ワッシャー35を第1移動部材36に嵌め込むことで接続されている。この第1移動部材36には、第1リンク機構38と接続される返しのついた第1遊合突起A37が形成されている。
【0066】
第1リンク機構38は、略中央部が蓋体7と枢支され、回動可能な第1枢支部40が形成された板状態の第1リンクバー39で形成され、その両端部には第1移動部材36の第1遊合突起A37と第1作動部材43の第1遊合突起B49とそれぞれ遊合される第1遊合孔A41及び第1遊合孔B42がそれぞれ形成されている。これらの第1遊合孔A41及び第1遊合孔B42は、遊合されるそれぞれの第1遊合突起A37及び第1遊合突起B49と比べて大きめに形成され、それぞれの第1遊合孔A41及び第1遊合孔B42内でそれぞれの第1遊合突起A37及び第1遊合突起B49が可動できるようないわゆる遊びを設けて形成されている。このとき第1遊合突起A37及び第1遊合突起B49に返しが形成されていることで、第1遊合突起A37及び第1遊合突起B49が第1遊合孔A41及び第1遊合孔B42から外れるのを抑制している。
【0067】
第1作動部材43は、一端に第1圧力弁29Aの開閉機構としてのボール29cを作動させる第1作動杭44が形成され、他端には復帰バネ84が係止される第1復帰バネ係止部48が形成された板状体で形成されている。さらに、第1作動杭44及び第1復帰バネ係止部48が形成された端部に対して垂直方向側の両端部にはロック部材80を押動する第1腕部47及びロック部材80の溝部82に嵌合される第1突起部46が形成されている。また、第1作動部材43の板状体の表面には第1リンクバー39が遊合される返しのついた第1遊合突起B49が形成され、さらに、第2リンクバー58の第2枢支部59が貫通される第1枢支部貫通孔45が形成されている。この第1枢支部貫通孔45も第2枢支部59に比べ大きめに形成されることで、第2枢支部59が第1枢支部貫通孔45内を可動するように形成されている。
【0068】
次に、図10を参照して第2圧力弁開放機構50について説明する。第2圧力弁開放機構50は、第1圧力弁開放機構31と全く同じ構成をしており、異なるのは、第2リンクバーの形状及び配置される位置のみである。
【0069】
第2プランジャー53は、第2ソレノイド51の中心部に配置され、第2ソレノイド51が励磁されることで可動する。この第2ソレノイド51は第2ソレノイドカバー52内に格納され、第2ソレノイドカバー52が蓋体7に固定される(図6参照)。また、第2プランジャー53の先端には、第2ワッシャー54が装着されている。
【0070】
また、第2移動部材55は第2プランジャー53の移動に追従するように設けられ、第2プランジャー53の先端に装着された第2ワッシャー54を第2移動部材55に嵌め込むことで接続されている。この第2移動部材55には、第2リンク機構57と接続される返しのついた第2遊合突起A56が形成されている。
【0071】
第2リンク機構57は、略中央部が蓋体7と枢支され、回動可能な第2枢支部59が形成された板状態の第2リンクバー58で形成され、その両端部には第2移動部材55の第2遊合突起A56と第2作動部材62の第2遊合突起B68とそれぞれ遊合される第2遊合孔A60及び第2遊合孔B61がそれぞれ形成されている。これらの第2遊合孔A60及び第2遊合孔B61は、遊合されるそれぞれの第2遊合突起A56及び第2遊合突起B68と比べて大きめに形成され、第2遊合孔A60及び第2遊合孔B61内で第2遊合突起A56及び第2遊合突起B68が可動できるようないわゆる遊びを設けて形成されている。このとき第2遊合突起A56及び第2遊合突起B68に返しが形成されていることで、第2遊合突起A56及び第2遊合突起B68が第2遊合孔A60及び第2遊合孔B61から外れるのを抑制している。
【0072】
第2作動部材62は、一端に第2圧力弁29Bの開閉機構としてのボール29cを作動させる第2作動杭63が形成され、他端には復帰バネ84が係止される第2復帰バネ係止部67が形成された板状体で形成されている。さらに、第2作動杭63及び第2復帰バネ係止部67が形成された端部に対して垂直方向側の両端部にはロック部材80を押動する第2腕部66及びロック部材80の溝部82に嵌合される第2突起部65が形成されている。また、第2作動部材62の板状体の表面には第2リンクバー58が遊合される返しのついた第2遊合突起B68が形成され、さらに、第1リンクバー39の第1枢支部40が貫通される第2枢支部貫通孔64が形成されている。この第2枢支部貫通孔64も第1枢支部40に比べ大きめに形成されることで、第1枢支部40が第2枢支部貫通孔64内を可動するように形成されている。
【0073】
なお、第2リンクバー以外の各部材の形状がまったく同じである(対称になっていない)のは、同じ部材で形成することにより、形の違う部品の金型等を製造する必要がなくなり、コストダウンが図れるからである。
【0074】
図11に示すように、ロック部材80は、直方体状に形成されたブロック体の上面80aとなる面の一部に突起81が形成されている。この突起81が蓋体ロック機構70のロック部材当接部74と当接される部分である。また、ロック部材80の突起が形成された面に対して垂直方向側の長側面側にはそれぞれ溝部82が形成されている。さらに突起81が形成された面には復帰バネ84が固定される復帰バネ固定部83が形成されている。また、復帰バネ84は、両端が長く伸ばされ、この両端部に係り部85が形成されたコイル状のバネである。
【0075】
次に、蓋体ロック機構70及びリンク機構が備えられた圧力弁開放機構30についての動作について説明する。
【0076】
まず、図12に示すように、第1及び第2圧力弁開放機構31、50が作動していない状態では、第1及び第2作動部材43、62の第1及び第2作動杭44、63がそれぞれの第2圧力弁29Bのボール29cを押して、弁孔29aから離した状態である。そのため、弁孔29aが開き、炊飯器1内の圧力はこの弁孔29aから排除され、炊飯器1内の圧力は略大気圧と同じ状態である。
【0077】
この場合、蓋体7を開けても危険はないので、ロック部材80は蓋体ロック機構70から離れた位置にあり、蓋体7のロックは解除できる状態となっている。
【0078】
一方、図13に示すように、第1及び第2作動部材43、62が移動され、第1及び第2作動杭44、63が、圧力弁29のボール29cから離れ、ボール29cが弁孔29aを塞いだ状態である場合、炊飯器1内は加圧状態となり、蓋体7が開けられると危険な状態となっている。このときの第1圧力弁開放機構31の動作を、第1圧力弁開放機構31を例に取り説明すると、まず、第1プランジャー34が励磁され第1ソレノイド32内に引き込まれる。この第1プランジャー34の動きに合わせ第1移動部材36が移動され、第1移動部材36に形成された第1遊合突起A37に連結された第1リンクバー39が第1リンクバー39の第1枢支部40を中心として時計周りに回動する。このとき第1遊合突起A37に連結される第1遊合孔A41が大きめに形成されているので、この遊びの部分を利用することで滑らかに第1リンクバー39を回動させることができる。そして、第1リンクバー39の第1遊合孔B42に連結された第1作動部材43に形成された第1遊合突起B49がこの回動にあわせ、第1作動部材43を移動させることができる。この移動は、第1作動部材43が圧力弁がある位置から反対側の蓋体ロック機構70がある方向への移動となる。
【0079】
そして、この第1作動部材43の移動により、第1作動部材43に形成された第1腕部47がロック部材80を押動することで、ロック部材80を蓋体ロック機構70のロック部材当接部74まで移動させ、ロック部材当接部74と当接させることで、蓋体ロック機構70のロックが解除されるのを抑制することができる。なお、この動作は第2圧力弁開放機構50でも同じように行われ、図13に示すように第2作動部材62が移動され、第2作動部材62によりロック部材80が押動されている(図14参照)。
そして、この動作は、プランジャーの移動が行われるたび、すなわち、鍋6内の圧力が上昇するたびに行われるので、炊飯器1内が加圧状態のときは、蓋体ロック機構70のロックは解除されることはなくなる。
【0080】
なお、ロック部材80とロック部材当接部74が当接された後、炊飯器1内の圧力の上昇により、蓋体7の内蓋10が上昇することで、ロック部材80も上昇し、この上昇の力によりロック部材当接部74をより押し上げる力が働くので、より蓋体ロック機構70の解除を抑制することができる。
【0081】
また、炊飯器1内の加圧を停止し、第1圧力弁29Aを開くときの第1圧力弁開放機構31の動作は、第1プランジャー34の励磁が停止され、第1プランジャー34が第1ソレノイド32内から外に向かって移動する。このとき、第1プランジャー34を第1ソレノイド32内から外に出すために、第1ソレノイド32内にばね等の弾性体を備えておいてもいいし、機械的な装置を設けてもよい。そして、第1プランジャー34の移動により、第1移動部材36が移動され、第1移動部材36に形成された第1遊合突起A37に連結された第1リンクバー39が第1リンクバー39の第1枢支部40を中心として反時計周りに回動する。このとき第1遊合突起A37に連結される第1遊合孔A41が大きめに形成されているので、この遊びの部分を利用することで滑らかに第1リンクバーを回動させることができる。
【0082】
そして、第1リンクバー39の第1遊合孔B42に連結された第1作動部材43に形成された第1遊合突起B49がこの回動にあわせ、第1作動部材43を移動させることができる。この移動は、第1作動部材43が蓋体ロック機構70がある位置から反対側の圧力弁29がある方向への移動となる。そして、この第1作動部材43の移動により、第1作動部材43は設置された位置に戻ることとなる。このとき、第1作動部材43に形成された復帰バネ固定部83に係止された復帰バネ84により、第1作動部材43の移動にあわせ復帰バネ84の弾性力を利用してロック部材80を規定の位置に戻すことができる(図12参照)。なお、この動作は第2圧力弁開放機構50でも同じように行われ、第2作動部材62が移動され、第2作動部材62に係止された復帰ばねによりロック部材80が規定の位置に戻される(図14参照)。
【0083】
なお、ロック部材80を規定の位置に戻すのに弾性体である復帰バネ84を用いるのは、硬い部材により接続されていると、圧力弁29が開放されたとしても炊飯器1内の圧力が大気圧近傍に戻るのには多少の時間がかかるため、ロック部材80が蓋体7の内蓋10の上昇に伴い、ロック部材当接部74に当接された状態で、ロック部材80が規定の位置に戻された場合、作動部材を移動させてもロック部材80が移動できない状態となっていると、この部材が損傷するおそれがある。
【0084】
次に、図15を参照して、第1圧力弁開放機構31のみを作動させた場合について説明する。炊飯量に応じて圧力弁の使用を1つとすることもできる。このとき、第1圧力弁開放機構31のみ使用した場合を説明すると、第1圧力弁開放機構31の動作は上述したものと同じである。異なる点は、移動されるのが第1作動部材43のみであるので、このときでもロック部材80をロック部材当接部74に押動させる必要があることである。この点は、第1作動部材43及び第2作動部材62に形成されているロック部材80を押動させる第1腕部47と第2腕部66は、同じ位置に形成されているが(図14参照)、これらの腕部47、66は高さが互い違いになるように形成されているので、図17Aに示すように、第1作動部材43が移動すると第1腕部47のみ移動し、第1腕部47によりロック部材80を押動することが可能となる。そのため、一方の圧力弁開放機構のみを作動させても、蓋体ロック機構70のロックの解除を抑制させることが可能となる。
【0085】
また、ロック部材80を規定の位置に戻すときも、復帰バネ84が図15に示すように第1作動部材43の第1復帰バネ係止部48に係止されているので、この復帰バネ84の弾性力により戻すことは可能である。
【0086】
また、図16及び図17Bに示すように、第2圧力弁開放機構50のみを作動させることも可能であり動作は第1圧力弁開放機構31と同様である。
【0087】
第1圧力弁開放機構31と第2圧力弁開放機構50とを別々に使用する場合は、図5Cに示すようにそれぞれの圧力弁29A’、29Bに形成される弁孔の直径が異なる場合に有効であり、炊飯量をさらに細かく規定し、その炊飯量にあった炊飯が可能となるため、さらに美味しいご飯を炊くことができる。
【符号の説明】
【0088】
1:炊飯器 2:炊飯器本体 3:内ケース 4:外ケース 6:鍋 7:蓋体 8:外蓋 10:内蓋 11:蓋カバー 18:誘導加熱コイル 19:側面ヒータ 20:蓋ヒータ 21:制御基板 27:おねば貯留タンク 29:圧力弁 29A:第1圧力弁 29B:第2圧力弁 30:圧力弁開放機構 31:第1圧力弁開放機構 32:第1ソレノイド 33:第1ソレノイドカバー 34:第1プランジャー 35:第1ワッシャー 36:第1移動部材 37:第1遊合突起A 38:第1リンク機構 39:第1リンクバー 40:第1枢支部 41:第1遊合孔A 42:第1遊合孔B 43:第1作動部材 44:第1作動杭 45:第1枢支部貫通孔 46:第1突起部 47:第1腕部 48:第1復帰バネ係止部 49:第1遊合突起B 50:第2圧力弁開放機構 51:第2ソレノイド 52:第2ソレノイドカバー 53:第2プランジャー 54:第2ワッシャー 55:第2移動部材 56:第2遊合突起A 57:第2リンク機構 58:第2リンクバー 59:第2枢支部 60:第2遊合孔A 61:第2遊合孔B 62:第2作動部材 63:第2作動杭 64:第2枢支部貫通孔 65:第2突起部 66:第2腕部 67:第2復帰バネ係止部 68:第2遊合突起B 70:蓋体ロック機構 71:係止部材 72:係止爪 73:軸支棒 74:ロック部材当接部 76:開閉ツマミ 80:ロック部材 81:突起 82:溝部 83:復帰バネ固定部 84:復帰バネ
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯器に関し、詳しくは、加圧状態から急激な減圧を起こすことにより爆発的な撹拌作用が得られ、被炊飯物のメニューに応じて沸騰時の減圧度を加減し、撹拌の状態を調整できる炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からおいしいご飯を炊き上げるために、炊飯工程中に内鍋内に圧力を加える炊飯器が数多く提案されている。
【0003】
例えば、本出願人により開示された下記特許文献1では、炊飯の過程で加圧と減圧を繰り返し行う方式、つまり加圧時に高温をかけて熱と水分を米の芯に浸透させ、その状態からの急激な減圧によって起きる爆発的対流により米をかき混ぜ熱をむらなく通す、いわゆる「おどり炊き」方式の炊飯器を開発した。この炊飯方式は、加圧時には例えば1.2気圧、105℃で炊飯し、減圧時には急激に1気圧まで減圧することを、被炊飯物に応じて数回乃至十数回繰り返すものである。そうすると、米の場合には加圧時には熱と水分が米の芯まで浸透して甘みと粘りを引き出し、減圧時には大沸騰が生じて米が鍋の底からかき混ぜられることになるので、米の吸水が促進され米が芯からα化するとともに、撹拌により鍋の中心部まで加熱され、ふっくらしたご飯が炊けるとされている。
【0004】
このように、この方式の炊飯器では被炊飯物を入れる鍋に溜められた水が炊飯時に加熱され加圧状態から急激に減圧されると一気に沸騰して、激しい熱対流を引き起こすこととなり、この沸騰熱が米に浸透し、美味さを引き出すことができる。かつ沸騰水によりかき混ぜられた米は吸水が促進され各粒の芯からのα化ができるとされている。
【0005】
しかし、下記特許文献1に開示された炊飯器では、減圧機構は備えているがその能力が不足していて、減圧の回数が少ないと十分な撹拌効果が得られず減圧を何度も繰り返す必要があり、さらに改善が望まれていた。
【0006】
その課題を解決すべく、本出願人は、下記特許文献2に示すように、鍋の蓋体に設ける減圧機構を構成する圧力弁として圧力調整弁と圧力抜き弁の2つの圧力弁を設けることによって、一度の減圧でも十分な撹拌が行なわれ、突沸時の撹拌における熱エネルギーが有効活用できて、さらに美味しいご飯が提供できる炊飯器を発明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−344568号公報
【特許文献2】特開2008−048766号公報
【特許文献3】特開2008−048767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献2に開示された炊飯器では、圧力弁を2つ設けたことにより、新たな課題が出ている。課題として、圧力弁を2つ設けたことにより、開放される圧力により放出される蒸気の量が1つのときと比べ、約1.5倍から2倍程度に増え、このような状態のとき蓋体が開閉されると使用者に危険が及ぶおそれがある。
【0009】
そのため、圧力弁が2つ備えられた炊飯器において、炊飯器内が加圧状態とされたとき、蓋体が開けられない状態にロックしておくことが好ましく、しかも、この蓋体のロックを圧力弁が閉じた状態となったとき自動的及び強制的にされるようにすると、使用者の不注意による蓋体の開放が抑制されさらに好ましい。このときのロックは圧力弁が2つ使用された場合のみならず、1つ使用された場合でも蓋体のロックができるようにすることが臨まれている。
【0010】
なお、上記特許文献3には、調理中に蓋体のロック解除釦を押しても蓋体が開かないようにした圧力安全機構を備えた圧力調理器が開示されているが、この圧力安全機構は圧力弁が1つの場合についてのものであるため、圧力弁が2つの場合には適応できない。たとえ、この圧力安全機構を2つの圧力弁のそれぞれに適応しても、使用される圧力弁が1つのときと2つのときの両方に対応することはできない。
【0011】
そこで、本願の発明者は、上記課題を解決するため、種々検討をした結果、圧力弁と圧力弁開放機構がそれぞれ2つ設けられた炊飯器において、2つの圧力弁と圧力弁開放機構との間にクロスさせたリンク機構を設け、このリンク機構の間にロック部材を設けることで、ロック部材は、リンク機構が両方作動しても、片方だけ作動してもロック部材により蓋体をロックすることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は、圧力弁及び圧力安全機構が2つずつ備えられた炊飯器において、炊飯器内が加圧状態にあるときは、蓋体のロックが解除されないようにされた、安全性の高い炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願の請求項1に記載の炊飯器は、水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記蓋体を前記炊飯器本体にロック及びロックを解除する蓋体ロック機構と、前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁と、前記圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを有し、前記圧力弁及び前記圧力弁開放機構が前記蓋体内にそれぞれ2つずつ設けられた炊飯器において、前記圧力弁開放機構は、電気的又は機械的手段によって移動が可能なプランジャーと、前記プランジャーの移動を伝動するためのリンク機構と、前記リンク機構から伝動された移動に伴い移動される作動部材とを有し、前記蓋体には、前記蓋体ロック機構のロックの解除を抑制するためのロック部材が備えられ、前記作動部材には、前記圧力弁の開閉機構を作動させる作動杭と前記ロック部材が押動される腕部とが形成され、前記ロック部材は、前記作動部材の移動により前記圧力弁が閉状態とされたとき、前記作動部材の移動に伴い前記作動部材の前記腕部が前記ロック部材を前記蓋体ロック機構のロックの解除を抑制するように移動させることを特徴とする炊飯器。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記リンク機構は、略中央部が前記蓋体と枢支されるリンクバーで形成され、
前記リンクバーの両端部にはそれぞれ貫通孔が形成され、一方の前記貫通孔は前記プランジャーの端部と、他方の前記貫通孔は前記作動部材の端部とがそれぞれ遊動可能に連結され、前記リンクバーの略中央部を中心として回動されることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2に記載の炊飯器において、前記プランジャーの端部には、前記プランジャーの移動に追従可能な移動部材が設けられ、前記リンクバーの一方の貫通孔は、前記移動部材に遊動可能に連結されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の炊飯器において、前記それぞれのリンク機構は、前記リンクバーが互いにクロスして設置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項6に記載の炊飯器において、前記クロスして配置されたリンク機構は、互いが接触しないよう高さが互い違いに設置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載の炊飯器において、前記作動部材には、前記蓋体と前記リンクバーの前記枢支される部分が挿通される孔が形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記蓋体ロック機構は、一端に前記炊飯器本体に係止される少なくとも1つの係止爪と、他端に前記ロック部材が当接されるロック部材当接部を有し、前記ロック部材当接部が前記ロック部材と当接されることを特徴とする。
【0020】
請求項8の発明は、請求項7に記載の炊飯器において、前記ロック部材には、前記作動部材に形成された突起部と嵌合される溝部が形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項9の発明は、請求項7又は8に記載の炊飯器において、前記ロック部材は、前記作動部材の前記作動杭に対して垂直方向に形成された腕部により押動され、前記蓋体ロック機構の前記ロック部材当接部に移動されることを特徴とする。
【0022】
請求項10の発明は、請求項9に記載の炊飯器において、前記それぞれの作動部材は、並列に設けられており、
前記並列に設けられた作動部材に形成されたそれぞれの腕部は、高さが互い違いに形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項11の発明は、請求項7〜10の何れかに記載の炊飯器において、前記ロック部材は、前記作動部材と接続された復帰バネを有し、
前記作動部材により移動された前記ロック部材は、前記復帰バネにより規定位置に復帰し、前記蓋体ロック機構の前記ロック部材当接部から離脱することを特徴とする。
【0024】
請求項12の発明は、請求項1〜11の何れかに記載の炊飯器において、前記それぞれの圧力弁は、互いに異なった口径を有することを特徴とする。
【0025】
請求項13の発明は、請求項1〜12のいずれかに記載の炊飯器において、前記圧力弁開放機構は、前記それぞれの圧力弁を個別に又は同時に開放させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は上記の構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、炊飯機の内部が加圧状態となるように作動部材が移動すると同時に、作動部材がロック部材を押動し蓋体ロック機構のロックが解除されないようにすることができ、炊飯器が加圧状態のときに蓋体が開けられることを抑制するので、安全な炊飯器を提供することができる。また、リンク機構を用いることで、プランジャー及び作動部材の運動を狭いスペースに収めることができるので、炊飯器の設計の幅を広げることができ、また、リンク機構を含む圧力弁開放機構の小型化及び炊飯器の小型化も可能となる。
【0027】
請求項2の発明によれば、リンク機構を簡単な構造で作成することができ、炊飯器の製造コストを減らすことができるとともに、設計の幅を広げることができる。
【0028】
請求項3の発明によれば、プランジャーは、電気的又は機械的に作動される精密な部材であるので、このプランジャー自体にリンク機構と連結される部分を形成する必要がなく、プランジャーの設計が容易に行え、また、プランジャーの故障を抑制することができる。
【0029】
請求項4の発明によれば、リンクバーをクロスして設置することにより、設置スペースを小さくすることができ、リンク機構等の小型化を図ることができる。
【0030】
請求項5の発明によれば、クロスしたそれぞれのリンクバーが接触することを抑制することができるので、故障の少ない炊飯器を提供することができる。
【0031】
請求項6の発明によれば、リンク機構と蓋体とを枢支される部分を作動部材を貫通して形成することができるので、さらに設置スペースを小さくでき、リンク機構等のさらなる小型化を図ることができる。
【0032】
請求項7の発明によれば、蓋体ロック機構にロック部材が当接されるロック部材当接部が形成されるので、このロック部材当接部がロック部材と当接されることによって蓋体ロック機構自体の開動作を抑制することができ、より確実にロックの解除を抑制することができるようになる。また、蓋体ロック機構のロック部材当接部にロック部材を当接させることで、炊飯器内の内圧が上昇するに伴い、蓋体の内蓋が上昇する。この内蓋の上昇により、ロック部材も上昇し、蓋体ロック機構のロック部材当接部を上方へ押し上げる力が働くため、蓋体ロック機構の解除がさらに抑制され、安全度が増すこととなる。
【0033】
請求項8の発明によれば、作動部材の突起部とロック部材の溝部を嵌合させることにより、ロック部材の動きを制御し、ロック部材を確実に蓋体ロック機構のロック部材当接部に導くことができるようになる。
【0034】
請求項9の発明によれば、作動部材には圧力弁の開閉機構を作動させる作動杭と垂直方向にロック部材を押動する腕部が形成されているので、作動部材が移動される圧力弁と同一直線上にロック部材を配置しなくても、ロック部材を押動することができる。
【0035】
請求項10の発明によれば、作動部材を並列に並べても腕部が互いに接触することがなくなり、2つの作動部材の両方又はいずれか一方が移動することで、1つのロック部材を押動させることができるようになる。
【0036】
請求項11の発明によれば、移動されたロック部材は、復帰バネの弾性力を利用して、蓋体ロック機構のロック部材当接部から規定の配置に戻ることができるので、複雑な形状を作動部材に形成する必要がなくなる。
【0037】
請求項12の発明によれば、それぞれの圧力弁の口径を変えることで圧力の開放状態を制御することができ、炊飯量にあわせた炊飯ができるようになる。
【0038】
請求項13の発明によれば、炊飯される量によって開閉される圧力弁を1つにするか2つにするかを決められ、炊飯量にあわせた炊飯が可能となる。なお、圧力弁の開放は、炊飯器内の米を攪拌するときに用いられるので、炊飯量の少ないときに2つの圧力弁を同時に開放すると、攪拌が激しくなりすぎて好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施例にかかる炊飯器の外観斜視図である。
【図2】本実施例にかかる炊飯器の蓋体を開けた状態を示す斜視図である。
【図3】本実施例にかかる炊飯器の蓋体の内蓋を外した状態を示す平面図である。
【図4】本実施例にかかる炊飯器の略中央部で切断した断面図である。
【図5】図5Aは図4の蓋体のみを示した拡大断面図であり、図5Bは蓋体に配置される2つの圧力弁を示した図であり、図5Cは2つの圧力弁の変形例を示した図である。
【図6】蓋体の外蓋を外した状態を示す斜視図である。
【図7】蓋体ロック機構及びリンク機構を備えた圧力弁開放機構を示した斜視図である。
【図8】蓋体ロック機構及びリンク機構を備えた圧力弁開放機構の分解斜視図である。
【図9】第1リンク機構を備えた第1圧力弁開放機構を示した斜視図である。
【図10】第2リンク機構を備えた第2圧力弁開放機構を示した斜視図である。
【図11】ロック部材及び復帰バネを示した斜視図である。
【図12】両方の圧力弁開放機構が作動していない状態の蓋体ロック機構とリンク機構及を備えた圧力弁開放機構の部分拡大平面図である。
【図13】図12における両方の圧力弁開放機構が作動した状態を示す部分拡大図である。
【図14】第1及び第2作動部材とロック部材の配置を説明する概略図である。
【図15】図12における第1圧力弁開放機構が作動した状態を示す部分拡大図である。
【図16】図12における第2圧力弁開放機構が作動した状態を示す部分拡大図である。
【図17】図17Aは図15における第1作動部材及びロック部材の動きを示した概略図であり、図17Bは図16における第2作動部材及びロック部材の動きを示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して、本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこの炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0041】
本発明の実施例に係る炊飯器1を図1〜図6を用いて説明する。炊飯器1は、水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋6と、この鍋を着脱自在に収容する開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する誘導加熱コイル18等の加熱手段並びに加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体2と、鍋6及び炊飯器本体2の開口部を塞ぐ蓋体7とを備えている。制御手段は、鍋6内の圧力を略一定とするように鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁29と、圧力弁29に付設され圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構30とを備えており、加熱手段の加熱量とを制御するとともに、圧力弁開放機構30による圧力弁29の開動作の制御を行なう。制御手段は、沸騰中に圧力弁開放機構30により圧力弁29を少なくとも1回開動作させて鍋内の圧力を変更するようにしてある。また、本実施例では、圧力弁29及び圧力弁開放機構30は2つ設けられている(図5参照)。なお、制御手段は後述する制御基板21に記憶されたプログラムを実行することで行われる。
【0042】
炊飯器本体2は、その内部に鍋6を収容する非金属材料で成形された有底筒状の内ケース3と、この内ケースを覆う外ケース4とを有し、内ケース3内に鍋6が着脱自在に収容されるようになっている。内ケース3は、その上端部に外周へ突出したフランジ部3aが形成されている。鍋6は、その上端開口部に外方に張り出すフランジ6aが形成されており、このフランジ6aが内ケース3のフランジ部3aに掛るように載置される。
【0043】
また、内ケース3のフランジ部3aの対向する側面側には、一部分を切り欠いた切り欠き部4aが形成されており、鍋6のフランジ6aの一部がこの切り欠き部4aからはみ出し、鍋6を内ケース3内から取出しやすくなっている。
【0044】
内ケース3は、その底部付近の外周囲に誘導加熱コイル18が配設される。また、内ケース3には、上方開口部と誘導加熱コイル18との間に側面ヒータ19が配設されている。
【0045】
炊飯器本体2には、誘導加熱コイル18、側面ヒータ19及び蓋ヒータ20等へ電力を供給・制御する制御基板21が吸気孔5aに近接した箇所に配設されている。電源制御基板21には、半導体素子からなるインバータ22、スイッチング素子、タイマー素子等の電子部品が装着されている。これらの電子部品のうち、特にインバータ22は作動時に発熱するのでヒートシンク、或いは冷却ファン26によって冷却される。また、炊飯器本体2は、その底部5の中央部に鍋6の底面に接触するようにして温度検出センサ6bが設けられている。
【0046】
炊飯器本体2の底部5には、図4に示すように左右に、空気を吸気する吸気孔5a及び吸気された空気を排出する排気孔5bが形成され、吸気孔5a及び排気孔5bは、底部5に所定の幅長及び長さを有する複数本の細溝、いわゆるスリットで形成されている。冷却ファン26は、吸気孔5aに近接した位置に配設されている。この冷却ファン26は、図示しないモータにより作動され、吸気孔5aから吸気した空気でインバータ22を冷却する。
【0047】
炊飯器本体2には、後述するヒンジ部材15の反対側に、内ケース3の上端部に形成された係止部材71が設けられており、係止部材71に形成された2つの係止爪72により炊飯器本体2に形成された係止部2aと係止され蓋体7を固定することができる。さらに、この係止部材71には、ロック部材当接部74が形成され、後述するロック部材80と当接し加圧時の蓋体7の開閉ができないようにされている。また、係止部2aは外ケース4に設けた開閉ツマミ76と連動されて蓋体7の開閉を行うようになっている。このとき、開閉ツマミ76と係止部2aとの間には、加圧時に開閉ツマミ76が押されても蓋体7が開閉されない装置が組み込まれている。なお、この装置は公知であるので詳細な説明は省略する。
【0048】
蓋体7は、その外蓋8の上面に操作プレート23が装着されている。この操作プレート23には、炊飯ボタン、選択及び時刻調整ボタン、切りボタン、保温ボタン、予約ボタン及びファンクションボタン等の操作釦及び表示パネル24が装着されており、表示パネル24には制御・選択された炊飯メニュー等が表示される。
【0049】
蓋体7は、枠体9の上下に外蓋8及び蓋カバー11をそれぞれ取り付け、蓋カバー11を介して枠体に内蓋10が着脱自在に装着された構成を有し、炊飯器本体2の内ケース3の上方開口部を覆うように取り付けられている。蓋体7は、枠体9をヒンジ部材15と枢支ピン16とを用いて炊飯器本体2に軸支されており、蓋体7を炊飯器本体2に開閉できるようになっている。また枠体9と内蓋10の間には、蓋カバー11に覆われて蓋ヒータ20が配設されるとともに、蓋温度センサ(図示省略)が設けられている。内蓋10のほぼ中央部には、鍋の圧力や温度の検知用のセンサが取り付けられるとともに、炊飯器本体2内の蒸気圧を制御し圧力を調整して吹きこぼれを防ぐ圧力弁29や、圧力弁の故障などで鍋が異常に加圧されたときに開放され鍋の圧力を逃がす安全弁(図示省略)が装着されている。
【0050】
外蓋8には、吹きこぼれるおねばを一時貯留するおねば貯留タンク27が着脱自在に装着されている。おねば貯留タンク27の内部は蒸気とおねばとを分離させるために上下から分離構造を設けた多室構造となっており、蒸気口27aを蒸気のみが通過できるようになっている。おねばは、立上加熱工程、沸騰維持工程でおねば貯留タンク27に溜まり、蒸らし工程で、鍋6内の圧力が低下すると、負圧弁12より、鍋6内に還元されるようになっている。
【0051】
内蓋10の外周囲には、鍋6のフランジ6aと内蓋10とをシールする鍋パッキン14が外枠13に支持されて装着されている。炊飯器本体2内に鍋6を収容して蓋体7で覆うと、鍋パッキン14が鍋6の開口縁部に圧接して鍋6が閉鎖される。
【0052】
また、内蓋10の鍋6側には、おねば貯留タンク27に溜められたおねばを、鍋6内に拡散して供給するための、おねば拡散部28が取り付けられている。
【0053】
蓋体7は、その内蓋10がステンレス鋼材やアルミニウム材あるいは両者からなるクラッド材で形成されたものである。内蓋10は金属板を周縁部と内部との間に段差が形成されるように円盤状にプレス成型して形成され、周縁部にはゴム製の鍋パッキン14を介して硬質のプラスチック製の外枠13を取り付けている。外枠13には内蓋を装着するための係止部が設けてある。鍋パッキン14は、鍋6のフランジ6aと密着し、鍋6をシールすることにより圧力を保持する。鍋パッキン14は、耐久性、耐熱性に優れているシリコンゴムから形成するのが好ましい。
【0054】
蓋体の内側の内ケース3に形成された切り欠き部4aと対向する部分には、この切り欠き部4aを塞ぐことができる閉塞突起7aが形成されている。
【0055】
また、内蓋10には、選択的に動作可能にした2つの圧力弁が設けられている(図5参照)。このとき、圧力弁は、図5Bに示すように弁孔が同じものを2つ設けることもでき、また、図5Cに示すように弁孔が異なるものを1つずつ設けることもできる。なお、図6は蓋体7から外蓋8を外して内蓋10の方を見た平面図であり、格子状に組まれたのは枠体9である。内蓋10のほぼ中央付近に二つ並べて圧力弁が設けられており、これらの圧力弁が蓋カバー11の中央付近の孔から外蓋8内に突出している。これらの圧力弁は、外蓋8の内部に取り付けられたソレノイドによって駆動されるが、本実施例では、それぞれの圧力弁とソレノイドの間にはリンク機構が設けられ、このリンク機構を介してソレノイドの動きが圧力弁に伝えられる。詳細は後述する。
【0056】
圧力弁29は、図5に示すように、弁孔29aを有する弁座29bと、この弁座29bの上に自重により弁孔29aを塞ぐ開閉機構としての金属製のボール29cと、このボール29cを覆うカバー29eとからなる。この圧力弁29は、鍋6内の圧力とボール29cの自重とのバランスによって、ボール29cが弁孔29a上に移動されたり離れたりすることにより、さらには圧力弁開放機構30の制御によって強制的にボール29cを移動させることにより、弁孔29aの開閉が行われる。
【0057】
以下、図6〜図17を用いて実施例にかかる炊飯器1のリンク機構を備えた圧力弁開放機構の動作、及びこの動作に伴う蓋体の蓋体ロック機構について説明する。
【0058】
図6に示すように、蓋体7の外蓋8を外すと、図6を正面から見て手前方向に蓋体ロック機構70があり、その奥に2つの第1リンク機構38及び第2リンク機構57をそれぞれ備えた第1圧力弁開放機構31及び第2圧力弁開放機構50がそれぞれ配置されている。なお、第1圧力弁開放機構31及び第2圧力弁開放機構50をまとめて単に圧力弁開放機構30ともいう。また、蓋体7の略中央部には2つの第1圧力弁29A及び第2圧力弁29Bが格納された圧力弁格納部29Cが備えられている。なお、第1圧力弁29A及び第2圧力弁29Bをまとめて単に圧力弁29ともいう。
【0059】
蓋体ロック機構70及び圧力弁開放機構30は、図7に示すように配置されている。なお、2つの圧力弁開放機構は、図7を正面にみて左側を第1圧力弁開放機構31、右側を第2圧力弁開放機構50とする。
【0060】
図7及び図8に示すように、第1圧力弁開放機構31は、第1プランジャー34を移動させる第1ソレノイド32が格納された第1ソレノイドカバー33と、第1ソレノイド32の励磁により移動される第1プランジャー34と、第1プランジャー34の移動に追従する第1移動部材36と、第1移動部材36に連結された第1リンクバー39と、第1リンクバー39と連結された第1作動部材43で構成されている。また、第2圧力弁開放機構50は、同様に、第2プランジャー53を移動させる第2ソレノイド51が格納された第2ソレノイドカバー52と、第2ソレノイド51の励磁により移動される第2プランジャー53と、第2プランジャー53の移動に追従する第2移動部材55と、第2移動部材55に連結された第2リンクバー58と、第2リンクバー58と連結された第2作動部材62で構成されている。そして、第1リンクバー39と第2リンクバー58がクロスして配置されている。
【0061】
また、第1作動部材43と第2作動部材62の間には、ロック部材80が配置され、このロック部材80と第1、第2作動部材43、62とは復帰バネで係止されている。
【0062】
また、蓋体ロック機構70は、一方の端部に炊飯器本体2と係止される一対の係止爪72が形成されて、その反対側には、ロック部材80が当接されるロック部材当接部74が形成されている。また、蓋体ロック機構70は、ロック部材当接部74に対して垂直方向にあたる両端部には小径の孔75が形成されており、この孔75と蓋体7に形成された孔とが軸支棒73を挿通することで回動自在に固定されている。さらに蓋体ロック機構70は、バネ等の弾性体を介され、蓋体ロック機構70が解除される力が加わらないときは、係止爪72がロックする位置に配置されるように構成されている。
【0063】
次に図9を参照して第1圧力弁開放機構31について説明する。
【0064】
第1プランジャー34は、第1ソレノイド32の中心部に配置され、第1ソレノイド32が励磁されることで可動する。この第1ソレノイド32は第1ソレノイドカバー33内に格納され、第1ソレノイドカバー33が蓋体7に固定される(図6参照)。また、第1プランジャー34の先端には、第1ワッシャー35が装着されている。
【0065】
また、第1移動部材36は第1プランジャー34の移動に追従するように設けられ、第1プランジャー34の先端に装着された第1ワッシャー35を第1移動部材36に嵌め込むことで接続されている。この第1移動部材36には、第1リンク機構38と接続される返しのついた第1遊合突起A37が形成されている。
【0066】
第1リンク機構38は、略中央部が蓋体7と枢支され、回動可能な第1枢支部40が形成された板状態の第1リンクバー39で形成され、その両端部には第1移動部材36の第1遊合突起A37と第1作動部材43の第1遊合突起B49とそれぞれ遊合される第1遊合孔A41及び第1遊合孔B42がそれぞれ形成されている。これらの第1遊合孔A41及び第1遊合孔B42は、遊合されるそれぞれの第1遊合突起A37及び第1遊合突起B49と比べて大きめに形成され、それぞれの第1遊合孔A41及び第1遊合孔B42内でそれぞれの第1遊合突起A37及び第1遊合突起B49が可動できるようないわゆる遊びを設けて形成されている。このとき第1遊合突起A37及び第1遊合突起B49に返しが形成されていることで、第1遊合突起A37及び第1遊合突起B49が第1遊合孔A41及び第1遊合孔B42から外れるのを抑制している。
【0067】
第1作動部材43は、一端に第1圧力弁29Aの開閉機構としてのボール29cを作動させる第1作動杭44が形成され、他端には復帰バネ84が係止される第1復帰バネ係止部48が形成された板状体で形成されている。さらに、第1作動杭44及び第1復帰バネ係止部48が形成された端部に対して垂直方向側の両端部にはロック部材80を押動する第1腕部47及びロック部材80の溝部82に嵌合される第1突起部46が形成されている。また、第1作動部材43の板状体の表面には第1リンクバー39が遊合される返しのついた第1遊合突起B49が形成され、さらに、第2リンクバー58の第2枢支部59が貫通される第1枢支部貫通孔45が形成されている。この第1枢支部貫通孔45も第2枢支部59に比べ大きめに形成されることで、第2枢支部59が第1枢支部貫通孔45内を可動するように形成されている。
【0068】
次に、図10を参照して第2圧力弁開放機構50について説明する。第2圧力弁開放機構50は、第1圧力弁開放機構31と全く同じ構成をしており、異なるのは、第2リンクバーの形状及び配置される位置のみである。
【0069】
第2プランジャー53は、第2ソレノイド51の中心部に配置され、第2ソレノイド51が励磁されることで可動する。この第2ソレノイド51は第2ソレノイドカバー52内に格納され、第2ソレノイドカバー52が蓋体7に固定される(図6参照)。また、第2プランジャー53の先端には、第2ワッシャー54が装着されている。
【0070】
また、第2移動部材55は第2プランジャー53の移動に追従するように設けられ、第2プランジャー53の先端に装着された第2ワッシャー54を第2移動部材55に嵌め込むことで接続されている。この第2移動部材55には、第2リンク機構57と接続される返しのついた第2遊合突起A56が形成されている。
【0071】
第2リンク機構57は、略中央部が蓋体7と枢支され、回動可能な第2枢支部59が形成された板状態の第2リンクバー58で形成され、その両端部には第2移動部材55の第2遊合突起A56と第2作動部材62の第2遊合突起B68とそれぞれ遊合される第2遊合孔A60及び第2遊合孔B61がそれぞれ形成されている。これらの第2遊合孔A60及び第2遊合孔B61は、遊合されるそれぞれの第2遊合突起A56及び第2遊合突起B68と比べて大きめに形成され、第2遊合孔A60及び第2遊合孔B61内で第2遊合突起A56及び第2遊合突起B68が可動できるようないわゆる遊びを設けて形成されている。このとき第2遊合突起A56及び第2遊合突起B68に返しが形成されていることで、第2遊合突起A56及び第2遊合突起B68が第2遊合孔A60及び第2遊合孔B61から外れるのを抑制している。
【0072】
第2作動部材62は、一端に第2圧力弁29Bの開閉機構としてのボール29cを作動させる第2作動杭63が形成され、他端には復帰バネ84が係止される第2復帰バネ係止部67が形成された板状体で形成されている。さらに、第2作動杭63及び第2復帰バネ係止部67が形成された端部に対して垂直方向側の両端部にはロック部材80を押動する第2腕部66及びロック部材80の溝部82に嵌合される第2突起部65が形成されている。また、第2作動部材62の板状体の表面には第2リンクバー58が遊合される返しのついた第2遊合突起B68が形成され、さらに、第1リンクバー39の第1枢支部40が貫通される第2枢支部貫通孔64が形成されている。この第2枢支部貫通孔64も第1枢支部40に比べ大きめに形成されることで、第1枢支部40が第2枢支部貫通孔64内を可動するように形成されている。
【0073】
なお、第2リンクバー以外の各部材の形状がまったく同じである(対称になっていない)のは、同じ部材で形成することにより、形の違う部品の金型等を製造する必要がなくなり、コストダウンが図れるからである。
【0074】
図11に示すように、ロック部材80は、直方体状に形成されたブロック体の上面80aとなる面の一部に突起81が形成されている。この突起81が蓋体ロック機構70のロック部材当接部74と当接される部分である。また、ロック部材80の突起が形成された面に対して垂直方向側の長側面側にはそれぞれ溝部82が形成されている。さらに突起81が形成された面には復帰バネ84が固定される復帰バネ固定部83が形成されている。また、復帰バネ84は、両端が長く伸ばされ、この両端部に係り部85が形成されたコイル状のバネである。
【0075】
次に、蓋体ロック機構70及びリンク機構が備えられた圧力弁開放機構30についての動作について説明する。
【0076】
まず、図12に示すように、第1及び第2圧力弁開放機構31、50が作動していない状態では、第1及び第2作動部材43、62の第1及び第2作動杭44、63がそれぞれの第2圧力弁29Bのボール29cを押して、弁孔29aから離した状態である。そのため、弁孔29aが開き、炊飯器1内の圧力はこの弁孔29aから排除され、炊飯器1内の圧力は略大気圧と同じ状態である。
【0077】
この場合、蓋体7を開けても危険はないので、ロック部材80は蓋体ロック機構70から離れた位置にあり、蓋体7のロックは解除できる状態となっている。
【0078】
一方、図13に示すように、第1及び第2作動部材43、62が移動され、第1及び第2作動杭44、63が、圧力弁29のボール29cから離れ、ボール29cが弁孔29aを塞いだ状態である場合、炊飯器1内は加圧状態となり、蓋体7が開けられると危険な状態となっている。このときの第1圧力弁開放機構31の動作を、第1圧力弁開放機構31を例に取り説明すると、まず、第1プランジャー34が励磁され第1ソレノイド32内に引き込まれる。この第1プランジャー34の動きに合わせ第1移動部材36が移動され、第1移動部材36に形成された第1遊合突起A37に連結された第1リンクバー39が第1リンクバー39の第1枢支部40を中心として時計周りに回動する。このとき第1遊合突起A37に連結される第1遊合孔A41が大きめに形成されているので、この遊びの部分を利用することで滑らかに第1リンクバー39を回動させることができる。そして、第1リンクバー39の第1遊合孔B42に連結された第1作動部材43に形成された第1遊合突起B49がこの回動にあわせ、第1作動部材43を移動させることができる。この移動は、第1作動部材43が圧力弁がある位置から反対側の蓋体ロック機構70がある方向への移動となる。
【0079】
そして、この第1作動部材43の移動により、第1作動部材43に形成された第1腕部47がロック部材80を押動することで、ロック部材80を蓋体ロック機構70のロック部材当接部74まで移動させ、ロック部材当接部74と当接させることで、蓋体ロック機構70のロックが解除されるのを抑制することができる。なお、この動作は第2圧力弁開放機構50でも同じように行われ、図13に示すように第2作動部材62が移動され、第2作動部材62によりロック部材80が押動されている(図14参照)。
そして、この動作は、プランジャーの移動が行われるたび、すなわち、鍋6内の圧力が上昇するたびに行われるので、炊飯器1内が加圧状態のときは、蓋体ロック機構70のロックは解除されることはなくなる。
【0080】
なお、ロック部材80とロック部材当接部74が当接された後、炊飯器1内の圧力の上昇により、蓋体7の内蓋10が上昇することで、ロック部材80も上昇し、この上昇の力によりロック部材当接部74をより押し上げる力が働くので、より蓋体ロック機構70の解除を抑制することができる。
【0081】
また、炊飯器1内の加圧を停止し、第1圧力弁29Aを開くときの第1圧力弁開放機構31の動作は、第1プランジャー34の励磁が停止され、第1プランジャー34が第1ソレノイド32内から外に向かって移動する。このとき、第1プランジャー34を第1ソレノイド32内から外に出すために、第1ソレノイド32内にばね等の弾性体を備えておいてもいいし、機械的な装置を設けてもよい。そして、第1プランジャー34の移動により、第1移動部材36が移動され、第1移動部材36に形成された第1遊合突起A37に連結された第1リンクバー39が第1リンクバー39の第1枢支部40を中心として反時計周りに回動する。このとき第1遊合突起A37に連結される第1遊合孔A41が大きめに形成されているので、この遊びの部分を利用することで滑らかに第1リンクバーを回動させることができる。
【0082】
そして、第1リンクバー39の第1遊合孔B42に連結された第1作動部材43に形成された第1遊合突起B49がこの回動にあわせ、第1作動部材43を移動させることができる。この移動は、第1作動部材43が蓋体ロック機構70がある位置から反対側の圧力弁29がある方向への移動となる。そして、この第1作動部材43の移動により、第1作動部材43は設置された位置に戻ることとなる。このとき、第1作動部材43に形成された復帰バネ固定部83に係止された復帰バネ84により、第1作動部材43の移動にあわせ復帰バネ84の弾性力を利用してロック部材80を規定の位置に戻すことができる(図12参照)。なお、この動作は第2圧力弁開放機構50でも同じように行われ、第2作動部材62が移動され、第2作動部材62に係止された復帰ばねによりロック部材80が規定の位置に戻される(図14参照)。
【0083】
なお、ロック部材80を規定の位置に戻すのに弾性体である復帰バネ84を用いるのは、硬い部材により接続されていると、圧力弁29が開放されたとしても炊飯器1内の圧力が大気圧近傍に戻るのには多少の時間がかかるため、ロック部材80が蓋体7の内蓋10の上昇に伴い、ロック部材当接部74に当接された状態で、ロック部材80が規定の位置に戻された場合、作動部材を移動させてもロック部材80が移動できない状態となっていると、この部材が損傷するおそれがある。
【0084】
次に、図15を参照して、第1圧力弁開放機構31のみを作動させた場合について説明する。炊飯量に応じて圧力弁の使用を1つとすることもできる。このとき、第1圧力弁開放機構31のみ使用した場合を説明すると、第1圧力弁開放機構31の動作は上述したものと同じである。異なる点は、移動されるのが第1作動部材43のみであるので、このときでもロック部材80をロック部材当接部74に押動させる必要があることである。この点は、第1作動部材43及び第2作動部材62に形成されているロック部材80を押動させる第1腕部47と第2腕部66は、同じ位置に形成されているが(図14参照)、これらの腕部47、66は高さが互い違いになるように形成されているので、図17Aに示すように、第1作動部材43が移動すると第1腕部47のみ移動し、第1腕部47によりロック部材80を押動することが可能となる。そのため、一方の圧力弁開放機構のみを作動させても、蓋体ロック機構70のロックの解除を抑制させることが可能となる。
【0085】
また、ロック部材80を規定の位置に戻すときも、復帰バネ84が図15に示すように第1作動部材43の第1復帰バネ係止部48に係止されているので、この復帰バネ84の弾性力により戻すことは可能である。
【0086】
また、図16及び図17Bに示すように、第2圧力弁開放機構50のみを作動させることも可能であり動作は第1圧力弁開放機構31と同様である。
【0087】
第1圧力弁開放機構31と第2圧力弁開放機構50とを別々に使用する場合は、図5Cに示すようにそれぞれの圧力弁29A’、29Bに形成される弁孔の直径が異なる場合に有効であり、炊飯量をさらに細かく規定し、その炊飯量にあった炊飯が可能となるため、さらに美味しいご飯を炊くことができる。
【符号の説明】
【0088】
1:炊飯器 2:炊飯器本体 3:内ケース 4:外ケース 6:鍋 7:蓋体 8:外蓋 10:内蓋 11:蓋カバー 18:誘導加熱コイル 19:側面ヒータ 20:蓋ヒータ 21:制御基板 27:おねば貯留タンク 29:圧力弁 29A:第1圧力弁 29B:第2圧力弁 30:圧力弁開放機構 31:第1圧力弁開放機構 32:第1ソレノイド 33:第1ソレノイドカバー 34:第1プランジャー 35:第1ワッシャー 36:第1移動部材 37:第1遊合突起A 38:第1リンク機構 39:第1リンクバー 40:第1枢支部 41:第1遊合孔A 42:第1遊合孔B 43:第1作動部材 44:第1作動杭 45:第1枢支部貫通孔 46:第1突起部 47:第1腕部 48:第1復帰バネ係止部 49:第1遊合突起B 50:第2圧力弁開放機構 51:第2ソレノイド 52:第2ソレノイドカバー 53:第2プランジャー 54:第2ワッシャー 55:第2移動部材 56:第2遊合突起A 57:第2リンク機構 58:第2リンクバー 59:第2枢支部 60:第2遊合孔A 61:第2遊合孔B 62:第2作動部材 63:第2作動杭 64:第2枢支部貫通孔 65:第2突起部 66:第2腕部 67:第2復帰バネ係止部 68:第2遊合突起B 70:蓋体ロック機構 71:係止部材 72:係止爪 73:軸支棒 74:ロック部材当接部 76:開閉ツマミ 80:ロック部材 81:突起 82:溝部 83:復帰バネ固定部 84:復帰バネ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、
前記蓋体を前記炊飯器本体にロック及びロックを解除する蓋体ロック機構と、
前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁と、
前記圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを有し、
前記圧力弁及び前記圧力弁開放機構が前記蓋体内にそれぞれ2つずつ設けられた炊飯器において、
前記圧力弁開放機構は、電気的又は機械的手段によって移動が可能なプランジャーと、前記プランジャーの移動を伝動するためのリンク機構と、前記リンク機構から伝動された移動に伴い移動される作動部材とを有し、
前記蓋体には、前記蓋体ロック機構のロックの解除を抑制するためのロック部材が備えられ、
前記作動部材には、前記圧力弁の開閉機構を作動させる作動杭と前記ロック部材が押動される腕部とが形成され、
前記ロック部材は、前記作動部材の移動により前記圧力弁が閉状態とされたとき、前記作動部材の移動に伴い前記作動部材の前記腕部が前記ロック部材を前記蓋体ロック機構のロックの解除を抑制するように移動させることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記リンク機構は、略中央部が前記蓋体と枢支されるリンクバーで形成され、
前記リンクバーの両端部にはそれぞれ貫通孔が形成され、一方の前記貫通孔は前記プランジャーの端部と、他方の前記貫通孔は前記作動部材の端部とがそれぞれ遊動可能に連結され、前記リンクバーの略中央部を中心として回動されることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記プランジャーの端部には、前記プランジャーの移動に追従可能な移動部材が設けられ、前記リンクバーの一方の貫通孔は、前記移動部材に遊動可能に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記それぞれのリンク機構は、前記リンクバーが互いにクロスして設置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記クロスして配置されたリンク機構は、互いが接触しないよう高さが互い違いに設置されていることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記作動部材には、前記蓋体と前記リンクバーの前記枢支される部分が挿通される孔が形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記蓋体ロック機構は、一端に前記炊飯器本体に係止される少なくとも1つの係止爪と、他端に前記ロック部材が当接されるロック部材当接部を有し、前記ロック部材当接部が前記ロック部材と当接されることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記ロック部材には、前記作動部材に形成された突起部と嵌合される溝部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記ロック部材は、前記作動部材の前記作動杭に対して垂直方向に形成された腕部により押動され、前記蓋体ロック機構の前記ロック部材当接部に移動されることを特徴とする請求項7又は8に記載の炊飯器。
【請求項10】
前記それぞれの作動部材は、並列に設けられており、
前記並列に設けられた作動部材に形成されたそれぞれの腕部は、高さが互い違いに形成されていることを特徴とする請求項9に記載の炊飯器。
【請求項11】
前記ロック部材は、前記作動部材と接続された復帰バネを有し、
前記作動部材により移動された前記ロック部材は、前記復帰バネにより規定位置に復帰し、前記蓋体ロック機構の前記ロック部材当接部から離脱することを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載の炊飯器。
【請求項12】
前記それぞれの圧力弁は、互いに異なった口径を有することを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の炊飯器。
【請求項13】
前記圧力弁開放機構は、前記それぞれの圧力弁を個別に又は同時に開放させることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項1】
水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、
前記蓋体を前記炊飯器本体にロック及びロックを解除する蓋体ロック機構と、
前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁と、
前記圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを有し、
前記圧力弁及び前記圧力弁開放機構が前記蓋体内にそれぞれ2つずつ設けられた炊飯器において、
前記圧力弁開放機構は、電気的又は機械的手段によって移動が可能なプランジャーと、前記プランジャーの移動を伝動するためのリンク機構と、前記リンク機構から伝動された移動に伴い移動される作動部材とを有し、
前記蓋体には、前記蓋体ロック機構のロックの解除を抑制するためのロック部材が備えられ、
前記作動部材には、前記圧力弁の開閉機構を作動させる作動杭と前記ロック部材が押動される腕部とが形成され、
前記ロック部材は、前記作動部材の移動により前記圧力弁が閉状態とされたとき、前記作動部材の移動に伴い前記作動部材の前記腕部が前記ロック部材を前記蓋体ロック機構のロックの解除を抑制するように移動させることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記リンク機構は、略中央部が前記蓋体と枢支されるリンクバーで形成され、
前記リンクバーの両端部にはそれぞれ貫通孔が形成され、一方の前記貫通孔は前記プランジャーの端部と、他方の前記貫通孔は前記作動部材の端部とがそれぞれ遊動可能に連結され、前記リンクバーの略中央部を中心として回動されることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記プランジャーの端部には、前記プランジャーの移動に追従可能な移動部材が設けられ、前記リンクバーの一方の貫通孔は、前記移動部材に遊動可能に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記それぞれのリンク機構は、前記リンクバーが互いにクロスして設置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記クロスして配置されたリンク機構は、互いが接触しないよう高さが互い違いに設置されていることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記作動部材には、前記蓋体と前記リンクバーの前記枢支される部分が挿通される孔が形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記蓋体ロック機構は、一端に前記炊飯器本体に係止される少なくとも1つの係止爪と、他端に前記ロック部材が当接されるロック部材当接部を有し、前記ロック部材当接部が前記ロック部材と当接されることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記ロック部材には、前記作動部材に形成された突起部と嵌合される溝部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記ロック部材は、前記作動部材の前記作動杭に対して垂直方向に形成された腕部により押動され、前記蓋体ロック機構の前記ロック部材当接部に移動されることを特徴とする請求項7又は8に記載の炊飯器。
【請求項10】
前記それぞれの作動部材は、並列に設けられており、
前記並列に設けられた作動部材に形成されたそれぞれの腕部は、高さが互い違いに形成されていることを特徴とする請求項9に記載の炊飯器。
【請求項11】
前記ロック部材は、前記作動部材と接続された復帰バネを有し、
前記作動部材により移動された前記ロック部材は、前記復帰バネにより規定位置に復帰し、前記蓋体ロック機構の前記ロック部材当接部から離脱することを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載の炊飯器。
【請求項12】
前記それぞれの圧力弁は、互いに異なった口径を有することを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の炊飯器。
【請求項13】
前記圧力弁開放機構は、前記それぞれの圧力弁を個別に又は同時に開放させることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の炊飯器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−10923(P2012−10923A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149847(P2010−149847)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
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