説明

炊飯器

【課題】撹拌羽根を用いることなく内鍋内を積極的に撹拌して均一加熱を可能にする。
【解決手段】内鍋13の底部には、内側に突出している概略三角形状を成す突出部13aを設ける一方、モータ18の回転軸18aには、突出部13aと略同じ寸法および形状の三角形状を成す回転体19を取り付ける。こうして、内鍋13の突出部13a内に回転体19を嵌合させて、予熱運転モード時において、米と水とを入れた内鍋13を、モータ18によって正回転と逆回転とを交互に繰り返すことによって、内鍋13内を積極的に攪拌する。また、内鍋13を回転させることにより、突出部13aの周囲に渦流を発生させて内鍋13内をより積極的に攪拌して、内鍋13内の攪拌効果をさらに高める。その結果、誘導コイル22によって内鍋13を誘導加熱した際に、内鍋13内を均一に加熱することができ、内鍋13内の温度を澱粉分解酵素が最も有効に働く略60℃に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
炊飯時に均一な加熱を行うために、予熱モード時に、米と水とが投入された炊飯鍋内を撹拌することが重要である。従来より、炊飯鍋内を撹拌するために、炊飯鍋自体を回転する方法が提案されている。
【0003】
米と水とが投入された炊飯鍋が回転可能になっている炊飯器として、特開平5‐317178号公報(特許文献1)に開示された自動洗米炊飯器がある。
【0004】
この自動洗米炊飯器は、本体に設けられた炊飯室の内部に装着される炊飯鍋と、この炊飯鍋の底面に配置された誘導加熱用の加熱コイルと、上記本体の上部を覆う蓋とを含んで構成されている。
【0005】
上記炊飯鍋の鍋底部には鍋回転駆動用の上カップリングが設けられており、この上カップリングは上記炊飯鍋の下方の支持台で軸支された回転軸の上端に設けられた下カップリングと着脱自在に係合している。上記回転軸は、大プーリを介してモータによって回転駆動される。
【0006】
上記構成において、上記炊飯鍋に米を投入して運転を開始すると、ブレーキが上記大プーリの外周側面から離脱する。そして、上記炊飯鍋内に水が一定量流入され、上記モータに断続的に通電されて上記炊飯鍋が断続的に正転・停止をくり返す。こうして、上記炊飯鍋内の米と水とが運動し、その慣性の掛かり方の違いによって米が洗われる。
【0007】
続いて、上記ブレーキが上記大プーリの外周側面に圧接されて上記回転軸の回転がとめられる。そして、炊飯用の水が所定量給水された後に、炊飯・保温行程に移行して、一連の炊飯作業が終了する。
【0008】
しかしながら、上記従来の自動洗米炊飯器には、以下のような問題がある。すなわち、上記炊飯鍋が断続的に正転・停止をくり返すことによって、洗米を行うようにしている。ところが、炊飯行程においては、上記ブレーキによって上記炊飯鍋の回転が止められており、通常の炊飯器の場合と同様の炊飯動作が行われる。そのために、米と水との撹拌は、上記炊飯鍋の底面に配置された上記加熱コイルの加熱による内部対流のみであり、米と水とが均一に混ざることが無く、加熱斑が発生することになる。
【0009】
尚、上記炊飯鍋の断続的な正転・停止を炊飯行程においても実行して、炊飯時に米と水とを撹拌することが考えられる。ところが、米と水とが入った上記炊飯鍋を繰り返し正転・停止させても、上記炊飯鍋の回転方向に米と水とが一緒に回転するため、米と水とを積極的に撹拌する効果は得られないのである。
【0010】
また、調理容器内を撹拌手段で積極的に撹拌する加熱調理器として、特開2008‐178462号公報(特許文献2)に開示された調理器がある。
【0011】
この調理器は、調理容器の底面中央部には回転軸が貫通しており、上記回転軸における上記調理容器内に位置する上端部には攪拌ブレード等の攪拌手段が取り付けられ、上記調理容器外に位置する下端部はモータによって回転駆動される。そして、上記調理容器に投入されたジャムやパン等の調理物を、上記攪拌手段によって撹拌あるいは混練りするようにしている。
【0012】
上記従来の調理器では、ジャムやパン等の水分が少ない調理物を撹拌あるいは混練りするので、上記調理容器における上記回転軸の貫通箇所での水漏れの心配はない。しかしながら、炊飯器のように、米と多量の水とが投入された炊飯鍋内を撹拌する場合には、上記調理容器における上記回転軸の貫通箇所でのシール性が問題になる。したがって、炊飯鍋内を撹拌する場合には、上記シール性を確保するための構造が大掛かりになってしまう。
【0013】
一方において、炊飯時に均一な加熱を行うために、圧力加熱やIH加熱の改善によって内部対流の改善を図る方法や、炊飯鍋の蓋と炊飯鍋の側面と炊飯鍋の底面等の総てに加熱コイルを設けて炊飯鍋の全体を加熱する方法等が試みられている。しかしながら、上記内部対流の改善や上記炊飯鍋の全体加熱を行った場合には、対流によって米は動くものの均一な加熱という点では不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5‐317178号公報
【特許文献2】特開2008‐178462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、この発明の課題は、撹拌羽根を用いることなく内鍋内を積極的に撹拌して均一加熱を可能にする炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、この発明の炊飯器は、
被加熱物を収容すると共に、回転可能な内鍋と、
上記内鍋が収納される本体と、
上記本体の上部に開閉自在に取り付けられると共に、閉鎖された場合に上記内鍋を覆う蓋体と、
上記本体内に収納されると共に、上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記内鍋を回転駆動する回転駆動部と、
上記回転駆動部を、一方向への正回転と上記正回転とは反対方向への逆回転とを行うように制御する回転制御部と
を備えたことを特徴としている。
【0017】
上記構成によれば、回転制御部による制御の下に、回転駆動部によって内鍋が正回転と逆回転とを行うように駆動されるので、炊飯時における予熱運転モードの場合に、米と適量の水とを入れた上記内鍋内を積極的に攪拌することができる。したがって、上記内鍋が加熱された際に、上記内鍋内を正転と停止とを繰り返すのみで積極的に攪拌されない場合よりも、上記内鍋内を均一に加熱することができ、上記内鍋内の温度を澱粉分解酵素が最も有効に働く略60℃に保つことができる。
【0018】
すなわち、上記内鍋内の米および水を積極的に撹拌しない場合よりも安定して且つ均一に目標温度(60℃)に保った状態で米に吸水させて、うまみ成分であるグルコースを生成することができるのである。
【0019】
さらに、上記内鍋の底面を貫通する回転軸は存在しない。したがって、上記内鍋の底部における上記回転軸の貫通箇所でのシール不良の問題も発生しない。
【0020】
また、1実施の形態の炊飯器では、
上記内鍋には、内側に突出している突出部が設けられている。
【0021】
この実施の形態によれば、上記内鍋に、内側に突出している突出部が設けられているので、上記内鍋が交互に正回転と逆回転とを繰り返した場合に、上記突出部の周囲の水に渦流を発生させて、上記内鍋内をより積極的に攪拌することができる。したがって、上記内鍋内の攪拌効果をさらに高めて、上記内鍋内をさらに均一に加熱することができる。
【0022】
また、1実施の形態の炊飯器では、
上記内鍋の回転軸は、使用時において水平面に対して非垂直に傾斜している。
【0023】
この実施の形態によれば、上記内鍋の回転軸は水平面に対して非垂直に傾斜しているので、上記内鍋は斜めになって回転される。したがって、上記内鍋内における水よりも質量の大きい米は、上記内鍋の下側に位置している側面および底面との間の摩擦力によって上記側面および上記底面の回転に伴って上側に持ち上げられる。そして、上記米と上記側面および上記底面との間の力の釣り合いが崩れると、上記米は落下する。こうして、上記内鍋内をより積極的に攪拌して攪拌効果をさらに高め、上記内鍋内をさらに均一に加熱することができる。
【0024】
また、1実施の形態の炊飯器では、
上記内鍋の上記突出部は、上記内鍋の底部に設けられており、
上記回転駆動部は回転軸を有し、上記回転駆動部は、上記回転軸に取り付けられると共に、上記内鍋の上記突出部の外側の凹部に嵌合する回転体を含んでおり、
上記内鍋は、上記突出部と上記回転体とのカップリングを介して、上記回転駆動部によって回転駆動される。
【0025】
この実施の形態によれば、上記回転駆動部を上記内鍋の下部に設置することができ、上記内鍋の上記本体への収納および取出し時の操作性を良くすることができる。
【0026】
また、1実施の形態の炊飯器では、
上記回転駆動部は、上記内鍋に接触して上記内鍋を回転駆動する駆動ローラを含んでいる。
【0027】
この実施の形態によれば、上記内鍋の側面等に駆動力を与えることができるので、上記回転駆動部とのカップリングを構成する構造体を上記内鍋に設ける必要がない。したがって、従来の炊飯器に用いられている内鍋をそのまま用いることができ、コストダウンを図ることが可能になる。
【0028】
また、1実施の形態の炊飯器では、
上記内鍋の上縁には、環状のフランジが設けられており、
上記回転駆動部の駆動ローラは、上記内鍋のフランジに接触して、上記フランジを介して上記内鍋を回転駆動する。
【0029】
この実施の形態によれば、上記内鍋を、上記内鍋のフランジを介して回転するようにしている。したがって、上記本体の下部に、上記回転駆動部等を設置する空間を確保できない場合でも、上記内鍋を正回転と逆回転とを交互に行わせて上記内鍋内を撹拌することができる。
【0030】
また、1実施の形態の炊飯器では、
上記回転駆動部の駆動ローラは、上記内鍋の側面に接触して上記内鍋を回転駆動する。
【0031】
この実施の形態によれば、上記内鍋の側面を上記駆動ローラによって回転駆動するようにしている。したがって、上記本体の下部に、上記回転駆動部等を設置する空間を確保できない場合でも、上記内鍋を正回転と逆回転とを交互に行わせて上記内鍋内を撹拌することができる。
【0032】
また、1実施の形態の炊飯器では、
上記内鍋の少なくとも底面は、磁性体で構成されており、
上記回転駆動部は回転軸を有し、上記回転駆動部は、上記回転軸に取り付けられたマグネットを含んでおり、
上記内鍋は、上記磁性体と上記マグネットとの磁気カップリングを介して、上記回転駆動部によって回転駆動される。
【0033】
この実施の形態によれば、上記回転駆動部のマグネットと上記内鍋の底面の磁性体との磁気カップリングを介して、上記回転駆動部によって上記内鍋を回転駆動するので、上記回転駆動部との機械的カップリングを構成する構造体を上記内鍋に設ける必要がない。したがって、上記内鍋として、従来の炊飯器に用いられている内鍋をそのまま用いることができ、コストダウンを図ることが可能になる。
【0034】
また、1実施の形態の炊飯器では、
上記蓋体は、
上記本体の上部に開閉自在に取り付けられた外蓋と、
上記外蓋の内側に配置されて、上記外蓋に回転可能に軸支されると共に、上記内鍋に密着して上記内鍋と共に回転する内蓋と
を含み、
上記内鍋内を撹拌する撹拌羽根と、
上記外蓋に取り付けられると共に、上記内蓋における回転中心部を貫通して上記内鍋内まで延在し、上記外蓋と上記撹拌羽根とを連結する連結部材と
を備えている。
【0035】
この実施の形態によれば、静止している外蓋に取り付けられると共に、上記内鍋と共に回転する内蓋の回転中心部を貫通して上記内鍋内まで延在している連結部材によって、上記外蓋と連結された撹拌羽根を備えているので、上記予熱運転モードにおいて、上記内鍋が交互に正転および逆転されると、静止している撹拌羽根が上記内鍋内の米と水とに対して邪魔板として機能することになる。したがって、上記内鍋内をさらに積極的に撹拌することができるのである。
【0036】
さらに、上記内鍋の底面を貫通して上記撹拌羽根を回転させる回転軸は存在しない。したがって、上記内鍋の底部における上記回転軸の貫通箇所でのシール不良の問題も発生しない。
【発明の効果】
【0037】
以上より明らかなように、この発明の炊飯器は、回転制御部による制御の下に、回転駆動部によって内鍋を正回転と逆回転を行うように駆動するので、炊飯時における予熱運転モードの場合に、米と適量の水とを入れた上記内鍋内を積極的に攪拌することができる。したがって、上記内鍋が加熱された際に、上記内鍋内を正転と停止とを繰り返すのみで積極的に攪拌できない場合よりも、上記内鍋内を均一に加熱することができ、上記内鍋内の温度を澱粉分解酵素が最も有効に働く略60℃に保つことができる。
【0038】
すなわち、この発明によれば、上記内鍋内の米および水を積極的に撹拌しない場合よりも安定して且つ均一に目標温度(60℃)に保った状態で米に吸水させて、うまみ成分であるグルコースを生成することができるのである。
【0039】
さらに、上記内鍋の底面を貫通する回転軸は存在しない。したがって、上記内鍋の底部における上記回転軸の貫通箇所でのシール不良の問題も発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の炊飯器における斜め上から見た斜視図である。
【図2】図1におけるA‐A'矢視断面図である。
【図3】図2における内鍋の平面図である。
【図4】図3とは異なる内鍋の平面図である。
【図5】図4におけるC‐C'矢視断面図である。
【図6】図2とは異なる炊飯器における縦断面図である。
【図7】図2および図6とは異なる炊飯器における内鍋の部分縦断面図である。
【図8】図2,図6および図7とは異なる炊飯器における内鍋および蓋体の要部断面図である。
【図9】図8における撹拌羽根本体が回動した状態を示す内鍋および蓋体の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0042】
・第1実施の形態
図1は、本実施の形態の炊飯器における斜め上から見た斜視図である。この炊飯器は、図1に示すように、炊飯器本体1と、炊飯器本体1に開閉自在に取り付けられた蓋体2とを含んでいる。炊飯器本体1は、前面側に設けられた表示操作部3、前面側上部に設けられたフックボタン4、後面側に回動自在に取り付けられた本体ハンドル5、後面側下部に収納される電源コード6を含んでいる。また、蓋体2の頂部には、蒸気排出口2aを設けている。
【0043】
上記表示操作部3は、液晶ディスプレイと複数の操作ボタンとを含んでおり、調理メニューや調理状況等の表示とボタン操作とが可能になっている。蓋体2は、炊飯器本体1に設けられたラッチ機構(図示せず)によって係脱可能に係止されて閉じられており、フックボタン4を押すことによって上記ラッチ機構が外れて、スプリング24a(図2参照)の付勢力で蓋体2が開くようになっている。
【0044】
図2は、図1におけるA‐A'矢視断面図である。図2に示すように、上記炊飯器本体1は、外ケース11と、その外ケース11内に配置されて内鍋13を収納する内ケース12とを含んでいる。ここで、内ケース12は、耐熱性と電気絶縁性とを有する材料で形成されている。
【0045】
図3は、上記内鍋13の平面図である。ここで、図2における内鍋13は、図3におけるB‐B'矢視断面図で表されている。
【0046】
上記外ケース11と内ケース12との間の空間における後側(図2の右側)には、電源回路やインバータ回路等を含む電源部14を配置し、電源部14の下側に電源部14等を冷却する冷却ファン15を配置している。さらに、冷却ファン15の下側における外ケース11の底部に電源コード6を巻き取るコードリール16を配置している。
【0047】
また、上記内鍋13の底部には、図3にも示すように、内側に突出するように変形している概略三角形状を成す突出部13aを設けている。この三角形状を成す突出部13aにおける三角形の頂点の箇所には、内側に向かってさらに窪んで変形している半球状の球状変形部17が形成されている。一方、内ケース12における内鍋13の突出部13aに対向する領域には、円形の開口部12aを設けている。そして、この開口部12aには、内鍋13の底部の下側に配置されたモータ18の回転軸18aによって回転駆動される回転体19が挿通されており、回転体19は内鍋13の突出部13aにおける外側の凹部内に嵌合している。すなわち、回転体19は、突出部13aと略同じ寸法および形状の三角形状を成しており、三角形状を成す回転体19における三角形の頂点の箇所には、突出部13aの球状変形部17と略同じ寸法および形状を有して内鍋13側に向かって突出する半球状の球状突出部20が形成されている。
【0048】
このように、上記回転体19は内鍋13の突出部13aに密着して嵌合可能になっており、回転体19を突出部13aに嵌合した場合には回転体19における3箇所の球状突出部20が突出部13aにおける3箇所の球状変形部17に嵌合することによって、回転体19の内鍋13の突出部13aへの嵌合がより強固になるようにしている。したがって、モータ18によって回転体19が回転駆動されると、回転体19と突出部13aとのカップリングを介して内鍋13が回転されるのである。
【0049】
また、上記外ケース11と内ケース12との間の空間の前側(図2の左側)に、表示操作部3(図1参照)と、電源部14のインバータ回路と、冷却ファン15と、モータ18等を制御する制御部21を設置している。
【0050】
また、上記炊飯器本体1内の内ケース12における外側下面には、内鍋13を誘導加熱するための誘導コイル22を設置している。この誘導コイル22は、耐熱性を有する樹脂等によって内ケース12の外面に接着されている。尚、誘導コイル22の下側には、誘導コイル22の漏れ磁束を防止するフェライト部材(図示せず)を配置している。さらに、炊飯器本体1内の内ケース12における上部側面を囲むように横ヒータ23を周方向に配設している。こうして、上記誘導コイル22および横ヒータ23を含んで、内鍋13全体を加熱する加熱部を構成している。
【0051】
上記内鍋13は、例えばアルミニウム等の高熱伝導部材で形成され、その外面には加熱効率を向上させるために例えばステンレス等の磁性体が貼り付けられている一方、内面には被加熱物の付着を防ぐためにフッ素樹脂がコーティングされている。
【0052】
上記蓋体2は、炊飯器本体1の上部後側に設けられたヒンジ軸24によって回動自在に支持されると共に、二重に構成された外蓋25と、この外蓋25における内鍋13に対向する側に着脱自在に取り付けられた内蓋26とを有する。この内蓋26の外周には環状の耐熱ゴム製のパッキン27が取り付けられており、蓋体2が閉じられた際に、パッキン27が内鍋13のフランジ部13bの上面に密着して、内鍋13と内蓋26との間をシールするようになっている。また、28は内蓋26に設けられた蒸気穴である。
【0053】
さらに、上記外蓋25における中央部には、上述したように蒸気排出口2aが設けられており、この蒸気排出口2aは蒸気穴28に連通している。したがって、内鍋13内で発生した水蒸気は、内蓋26の蒸気穴28を通って蒸気排出口2aから外部に排出される。
【0054】
上記内蓋26の上面における蒸気穴28の箇所には、蒸気穴28の内径と略同じ内径を有する円筒体29の一端が取り付けられている。そして、この円筒体29は、外蓋25を貫通すると共に、その他端は外蓋25の外面に位置しており、円筒体29の他端部が外蓋25の蒸気排出口2aを構成している。
【0055】
上記円筒体29は、円盤状の軸受部材30の軸穴30aに挿通されている。また、軸受部材30の外周面には、外蓋25を装着可能な環状の溝30bが水平方向に形成されており、二重に形成された外蓋25における内側の一重部25aの中央部に設けられた穴の周囲が軸受部材30の溝30bに装着される一方、外蓋25における外側の二重部25bの中央部に設けられた穴の周囲が軸受部材30の外面に取り付けられている。こうして、軸受部材30は、外蓋25における中央部に固定されている。
【0056】
上記軸受部材30は、含油ポリアセタール樹脂等で構成された無潤滑軸受けである。したがって、円筒体29は軸受部材30によって滑らかに回転可能に軸支されており、円筒体29に取り付けられた内蓋26は、軸受部材30に固定された外蓋25に対して回転することが可能になっている。さらに、内蓋26の上面における外周部と外蓋25の一重部25aとの間には周方向に略等間隔に複数の第1支持ローラ31が配置されている。そして、各第1支持ローラ31は、中心部が円筒体29に挿通されると共に内蓋26と外蓋25の一重部25aとの間に配置された支持ローラステー32によって、転動可能に軸支されている。また、内鍋13のフランジ部13bは、内ケース12に軸支されている複数の第2支持ローラ33上に載置されて、第2支持ローラ33によって回転可能に支持されている。尚、支持ローラステー32は、円筒体29の周りに回転可能になっていても、外蓋25と共に停止していても、内蓋26と共に回転可能になっていても構わない。
【0057】
上述のように構成された上記蓋体2は、外蓋25を閉じることによって、外蓋25,第1支持ローラ31,内蓋26,パッキン27および内鍋13のフランジ部13bが、互いに密着するようになっている。そして、内鍋13が回転されると、内鍋13のフランジ部13bに密着している内蓋26も、内鍋13と共に外蓋25に対して回転できるのである。
【0058】
上記制御部21は、マイクロコンピュータおよび入出力回路等を含んでおり、表示操作部3からの操作信号と、炊飯器本体1内に内鍋13を収納して蓋体2を閉じた場合にオンするリードスイッチ,内鍋13の底部温度を検出する底温度センサ等からの信号等とに基づいて、表示操作部3,モータ18,冷却ファン15,誘導コイル用インバータ回路および横ヒータ用回路等を制御する。ここで、上記誘導コイル用インバータ回路は、誘導コイル22に交番磁界を発生させる。
【0059】
尚、上記誘導コイル用インバータ回路および上記横ヒータ用回路は、電源部14に含まれている。
【0060】
すなわち、本実施の形態においては、特許請求の範囲における加熱部を、上記誘導コイル用インバータ回路,誘導コイル22,上記横ヒータ用回路および横ヒータ23で構成している。また、特許請求の範囲における回転駆動部を、モータ18,回転軸18aおよび回転体19で構成している。また、特許請求の範囲における回転制御部を、制御部21で構成しているのである。
【0061】
上記構成の炊飯器は、米と適量の水とを入れた内鍋13を炊飯器本体1内に収納して突出部13aを回転体19に嵌合させた後、使用者が表示操作部3を操作して、加熱調理(炊飯)を開始すると、制御部21は、上記リードスイッチがオンして、炊飯器本体1内に内鍋13が収納された状態で蓋体2が閉じられていると判定すると、誘導コイル22および横ヒータ23を制御して加熱調理(炊飯)を開始する。
【0062】
この加熱調理運転においては、上記制御部21は、「予熱運転モード」,「立ち上げ運転モード」,「炊き上げ運転モード」,「蒸らし運転モード」,「保温運転モード」の順に加熱調理(炊飯)制御を行う。以下、各運転モードについて、順次説明する。
【0063】
〔予熱運転モード〕
先ず、上記予熱運転モードでは、モータ18によって回転体19を正回転と逆回転とを所定の時間間隔で交互に繰り返すように駆動することにより、回転体19に底部の突出部13aが嵌合している内鍋13に対して正回転と逆回転が交互に行われる。このように、内鍋13を交互に正転および逆転させることにより、内鍋13内が積極的に攪拌されることになる。この場合、内鍋13の底部には、概略三角形状に内側に突出する突出部13aが形成されている。さらに、三角形状を成す突出部13aにおける三角形の頂点の箇所には、突出部13aよりもさらに内側に向かって半球状に窪んでいる球状変形部17が形成されている。したがって、内鍋13内の水における突出部13aの周囲、特に球状変形部17の周囲には渦流が発生し、内鍋13内の攪拌効果をさらに高めることができる。
【0064】
この状態で、上記誘導コイル用インバータ回路から誘導コイル22に小電力を供給し、誘導コイル22によって内鍋13を誘導加熱する。そして、上記底温度センサによって検出された内鍋13内の温度を60℃に保つように、誘導コイル22の電力を制御することによって、予熱運転を所定時間行う。その際に、内鍋13の正逆回転によって内鍋13内を攪拌することにより、内鍋13内の被加熱物(米および水)を撹拌しない場合よりも安定して且つ均一に目標温度(60℃)に保った状態で米に吸水させて、うまみ成分であるグルコースを生成することができるのである。
【0065】
尚、本実施の形態においては、予熱運転モードの目標温度を60℃としているが、これに限定されるものではなく、諸条件に応じて適宜設定すればよい。
【0066】
〔立ち上げ運転モード〕
次に、上記モータ18の運転を停止して内鍋13の回転を止めた後、上記誘導コイル用インバータ回路から誘導コイル22に大電力を供給して、誘導コイル22によって内鍋13を誘導加熱する。さらに、上記横ヒータ用回路を制御して、横ヒータ23によって内鍋13を側方から加熱する。こうして、内鍋13内の温度を100℃に立ち上げる立ち上げ運転が行われる。
【0067】
〔炊き上げ運転モード〕
次に、上記内鍋13内の温度が100℃に達してから内鍋13内の温度が120℃に至るまで、誘導コイル22および横ヒータ23による加熱量を調整して、沸騰を維持した炊き上げ運転を行う。その際に、内鍋13内の水が無くなって沸騰しなくなると、内鍋13内の温度が100℃から上昇し始める。
【0068】
上記炊き上げ運転によって、米に熱と水とが加わって米に含まれるβ澱粉がα澱粉へと変化する糊化と呼ばれる化学反応が起こり、美味しいご飯ができるのである。
【0069】
〔蒸らし運転モード〕
上記炊き上げ運転中において、内鍋13内の温度が120℃に到達すると、誘導コイル22および横ヒータ23による加熱量を調整して、蒸らし運転を所定時間行う。そうした後、加熱調理(炊飯)を終了して保温運転モードに移行する。
【0070】
以上のごとく、本実施の形態においては、上記内鍋13の底部には、内側に突出している概略三角形状を成す突出部13aを設けている。一方、モータ18の回転軸18aにおける先端には、突出部13aと略同じ寸法および形状の三角形状を成す回転体19を取り付けている。こうして、内鍋13の突出部13aにおける外側の凹部内に回転体19が嵌合して、モータ18によって回転体19が回転駆動されると、内鍋13が回転されるようにしている。
【0071】
したがって、上記予熱運転モード時において、米と水とを入れた内鍋13を正回転と逆回転とを所定の時間間隔で交互に繰り返すように回転させることによって、内鍋13内を積極的に攪拌することができる。その結果、上記誘導コイル22によって内鍋13を誘導加熱した際に、内鍋13を一方向に回転・停止する場合のごとく内鍋13が積極的に攪拌されない場合に比して、内鍋13内を均一に加熱することができ、内鍋13内の温度を澱粉分解酵素が最も有効に働く略60℃に保つことができるのである。
【0072】
また、上記内鍋13を回転させることによって、内鍋13内の水における突出部13aの周囲に渦流が発生して内鍋13内をより積極的に攪拌することができ、内鍋13内の攪拌効果をさらに高めることができる。したがって、内鍋13内をさらに均一に加熱することができるのである。
【0073】
また、上記突出部13aにおける三角形の頂点の箇所には、内側に向かって窪んでいる半球状の球状変形部17を形成している。一方、回転体19における三角形の頂点の箇所には、突出部13aの球状変形部17と略同じ寸法および形状を有して内鍋13側に向かって突出する半球状の球状突出部20を形成している。したがって、回転体19の突出部13aへの嵌合をより強固にすることができる。さらに、内鍋13を回転させた場合に、内鍋13内の水における球状変形部17の周囲により強く渦流を発生させることができ、内鍋13内の攪拌効果をさらに高めることができる。
【0074】
また、上記内鍋13における回転体19が嵌合する嵌合部として、内側に突出するように変形している変形部(突出部13a)における外側の凹部をそのまま利用している。したがって、内鍋13に上記嵌合部を突出部13aとは別体に形成する必要はない。但し、内鍋13の内側に突出する突出部と上記嵌合部とを別体に構成しても一向に構わない。
【0075】
また、上記内鍋13内に設けた撹拌翼を、内鍋13を貫通する回転軸で回転させる構造の場合のように、内鍋13の底部における上記回転軸の貫通箇所でのシール不良の問題もない。
【0076】
・第2実施の形態
図4は、本実施の形態の炊飯器における内鍋41の平面図である。また、図5は、図4におけるC‐C'矢視断面図である。
【0077】
本実施の形態における上記内鍋41は、内鍋41の側壁42から底壁43にかけての湾曲部44に、周方向に、略等間隔に、内側に向かって窪んでいる略楕円形の突出部45が3個形成されている。さらに、上記第1実施の形態の場合と同様に、内鍋41の外面には磁性体が貼り付けられている。一方、モータ(図2参照)の回転軸にマグネット(図示せず)を取り付けている。こうして、内鍋41の底面に貼り付けられた磁性体と上記マグネットとの磁気カップリングによって、内鍋41を回転駆動するのである。
【0078】
すなわち、本実施の形態においては、特許請求の範囲における回転駆動部を、上記モータ,上記回転軸および上記マグネットで構成しているのである。
【0079】
尚、本実施の形態の炊飯器における上記内鍋41および上記磁気カップリング以外の基本構成は、上記第1実施の形態の場合と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0080】
上記構成の内鍋41によれば、上記突出部45は、内鍋41の底壁43よりも外側に位置する湾曲部44に形成されている。したがって、米と水とを入れた内鍋41を回転させた場合に、内鍋41内の水における突出部45の周囲に発生する渦流は、上記第1実施の形態のごとく、内鍋13の底部に形成された突出部13aの周囲に発生する渦流よりも半径方向外側に発生することになる。
【0081】
その結果、本実施の形態によれば、上記内鍋41内を内鍋41の底部外側で大きく攪拌することが可能になる。すなわち、上記第1実施の形態の場合よりも大きな撹拌効果を得ることができ、より均一に内鍋41内を加熱することができるのである。
【0082】
・第3実施の形態
図6は、本実施の形態の炊飯器における縦断面図である。
【0083】
本実施の形態における炊飯器は、炊飯器本体51と、炊飯器本体51に開閉自在に取り付けられた蓋体52とを含んでいる。
【0084】
上記炊飯器本体51は、外ケース53と、その外ケース53内に配置されて内鍋54を収納する内ケース55とを含んでいる。内ケース55における側面の一部と底面とには、内鍋54を誘導加熱するための誘導コイル56を設置している。
【0085】
本実施の形態においては、上記内鍋54の回転軸(図示せず)における上側を垂直方向に対して45度だけ操作者側(前側)に倒して、内鍋54の全体を斜め45度に傾けて設置している。したがって、内鍋54を収納する内ケース55も、誘導コイル56による誘導加熱が可能なように、斜め45度に傾いている内鍋54の周囲を取り囲む形状に形成されている。尚、内鍋54の傾き角度は、上記45度に限定されるものではない。
【0086】
上記蓋体52の構成は、上記第1実施の形態における蓋体2の構成と同様である。すなわち、内蓋57の外周には環状のパッキン58が取り付けられており、内蓋57の中心部は円筒体59の一端に取り付けられている。円筒体59は軸受部材60の軸穴60aに挿通されている。そして、軸受部材60の外周面に水平方向に形成された環状の溝60bには、二重に形成された外蓋61における内側の一重部61aの中央部に設けられた穴の周囲が装着されている。ここで、図6においては、二重に形成された外蓋61における外側の二重部を省略している。
【0087】
尚、上記軸受部材60は、上記第1実施の形態における軸受部材30の場合と同様に、含油ポリアセタール樹脂等で構成された無潤滑軸受けである。また、上記第1実施の形態においては、内蓋26と外蓋25の一重部25aとの間に支持ローラ31を配置しているが、本実施の形態においては配置していない。本実施の形態においても、必要であれば、内蓋57と外蓋61の一重部61aとの間に支持ローラを配置しても構わない。
【0088】
上述のように構成された上記蓋体52は、外蓋61を閉じることによって、外蓋61,内蓋57,パッキン58および内鍋54のフランジ部54aが、互いに密着するようになっている。そして、内鍋54が回転されると、内鍋54のフランジ部54aに密着している内蓋57も、内鍋54と共に外蓋61に対して回転可能になっている。
【0089】
上記内ケース55における内鍋54の側壁54bに対向する位置には矩形の穴55aを設け、この穴55a内には、円筒状の駆動ローラ62を、駆動ローラ62の回転軸が内鍋54の回転軸と平行になると共に、駆動ローラ62の側面が内鍋54の側壁54bに接触するように配置している。この駆動ローラ62は、モータ63によってベルト64を介して回転駆動されるようになっており、モータ63が回転駆動されると、駆動ローラ62によって内鍋54が回転されるようになっている。
【0090】
すなわち、本実施の形態においては、特許請求の範囲における回転駆動部を、モータ63,ベルト64および駆動ローラ62で構成しているのである。
【0091】
ところで、上述の状態では、上記内鍋54は下側から回動可能に支持されてはいない。したがって、内鍋54は落下して内鍋54の下部が内ケース55の内面を押圧することになり、内鍋54は回転することはできない。そこで、本実施の形態においては、内鍋54における下側に位置している側壁54cから底壁54dにかけての湾曲部54eの位置に内ケース55を貫通して接触し、内鍋54を下側から支持する支持部材65を設けている。この支持部材65は、図示してはいないが、外ケース53に対して取り付け固定されている。また、支持部材65は、軸受部材60と同様に含油ポリアセタール樹脂等で構成された無潤滑の滑り軸受けである。
【0092】
上記構成において、上記第1実施の形態の場合と同様に、上記予熱運転モード時には、米と適量の水とを入れた内鍋54を炊飯器本体51内に収納した後に、モータ63によって駆動ローラ62を回転駆動することにより、駆動ローラ62に側壁54bが接触している内鍋54を正方向と逆方向とに交互に回転させる。この場合、内鍋54は斜め45度に傾けて設置されているために、内鍋54内の水よりも質量の大きい米は、内鍋54の下側に位置している側壁54cおよび底壁54dとの間の摩擦力によって側壁54cおよび底壁54dの回転に伴って持ち上げられる。そして、上記米と側壁54cおよび底壁54dとの間の滑り力が上記摩擦力に打ち勝つと、あるいは、上記米に重力のみが作用するようになると、上記米は落下する。こうして、内鍋54内が積極的に撹拌されるのである。
【0093】
このように、本実施の形態によれば、上記第1実施の形態および上記第2実施の形態の場合のように、内鍋54の底壁54dや湾曲部54eに、内側に突出するように変形させた突出部を形成する必要がなく、従来の機種に用いられている内鍋をそのまま本実施の形態の内鍋54として用いることができ、コストダウンを図ることが可能になる。
【0094】
上述のように、本実施の形態においては、内鍋54を、駆動ローラ62によって、内鍋54の側壁54bを介して回転させるようにしている。したがって、内ケース55の下部に、支持部材65を配置する必要があるため、内鍋54を回転駆動するモータや、このモータの回転軸に取り付けられる回転体等を設置する空間を確保できない場合でも、内鍋54を正逆回転させて内鍋54内の米と水とを撹拌することができるのである。
【0095】
尚、本実施の形態においては、上述したように、内鍋54の底壁54dや湾曲部54eに突出部を形成する必要はない。しかしながら、内鍋54の側壁54b,54cや底壁54dに内側の突出する突出部を設ければ、更なる撹拌効果を得ることができる。
【0096】
また、上記モータ63からの駆動ローラ62への駆動力の伝達は、ベルト64に限定されるものではなく、歯車等の他の伝達機構を用いても一向に差し支えない。
【0097】
また、本実施の形態においては、予め上記内鍋54の回転軸を垂直方向に対して45度だけ傾けている。しかしながら、通常は上記回転軸を垂直方向に位置させ、使用時において傾けるようにしても構わない。
【0098】
・第4実施の形態
本実施の形態は、上記第1実施の形態から上記第3実施の形態までにおける内鍋の駆動方法とは異なる内鍋の駆動方法に関する。
【0099】
図7は、本実施の形態の炊飯器における内鍋71の部分縦断面図である。内鍋71は、上記第1実施の形態における内鍋13と略同じ構成を有しており、底部に形成された内側に突出した概略三角形状の突出部71aと、この突出部71aにおける三角形の頂点の箇所に形成された内側に向って窪んでいる球状変形部71bとを有している。尚、図7に示す内鍋71は、上記第1実施の形態の図3におけるB‐B'矢視断面図に相当する。
【0100】
本実施の形態の炊飯器における上記内鍋71のフランジ部71cの下面には、円筒状の駆動ローラ72を、駆動ローラ72の回転軸が内鍋71の回転軸に交差すると共に、駆動ローラ72の側面がフランジ部71cの下面に接触するように配置している。この駆動ローラ72は、モータ73によってベルト74を介して回転駆動されるようになっており、モータ73が回転駆動されると、駆動ローラ72によって内鍋71が回転されるようになっている。
【0101】
すなわち、本実施の形態においては、特許請求の範囲における回転駆動部を、モータ73,ベルト74および駆動ローラ72で構成しているのである。
【0102】
尚、75はパッキンであり、76は内ケースであり、77は誘導コイルであり、78は横ヒータである。
【0103】
上述のように、本実施の形態においては、内鍋71を、駆動ローラ72によって、内鍋71のフランジ部71cを介して回転させるようにしている。したがって、外ケース(図示せず)の下部に、内鍋71の突出部71aに嵌合する回転体や、この回転体を回転駆動するモータ等を設置する空間を確保できない場合でも、内鍋71を正逆回転させて内鍋71内の米と水とを撹拌することができるのである。
【0104】
尚、上記モータ73と駆動ローラ72との組みを、内鍋71の周囲に複数配置しても構わない。また、モータ73と駆動ローラ72とを配置しない箇所には、内ケース76に軸支された支持ローラを配置して、内鍋71のフランジ部71cを上記支持ローラによって回転可能に支持してもよい。
【0105】
また、上記突出部71aと球状変形部71bとはほんの一例であり、その形状は最適になるように適宜形成すればよい。尚、突出部71aおよび球状変形部71bは必ずしも必要ではなく、無くても一向に構わない。
【0106】
・第5実施の形態
本実施の形態は、上記内鍋内をさらに積極的に撹拌する炊飯器に関する。尚、以下の説明においては、本実施の形態を上記第1実施の形態の炊飯器に適用した場合を例に説明する。
【0107】
図8は、本実施の形態の炊飯器における内鍋および蓋体の要部断面図である。図8において、内ケース81,内鍋82,突出部82a,球状変形部83,回転体84,球状突出部85,誘導コイル86,横ヒータ87,円筒体88,軸受部材89,第1支持ローラ90,支持ローラステー91および第2支持ローラ92は、上記第1実施の形態における内ケース12,内鍋13,突出部13a,球状変形部17,回転体19,球状突出部20,誘導コイル22,横ヒータ23,外蓋25,円筒体29,軸受部材30,第1支持ローラ31,支持ローラステー32および第2支持ローラ33と全く同じ構成であり、詳細な説明は省略する。尚、図8に示す内鍋82は、上記第1実施の形態の図3におけるB‐B'矢視断面図に相当する。
【0108】
本実施の形態においては、上記円筒体88の下端に取り付けられる内蓋93は、外蓋94側に向かって突出して浅鍋を伏せたような形状を有している、そして、内蓋93の内部空間には、撹拌羽根95が収納されるようになっている。この撹拌羽根95は、収納部96と、この収納部96に回動且つ出没自在に取り付けられた撹拌羽根本体97とで、概略構成されている。但し、図8においては、内蓋93の外周に取り付けられる環状のパッキンは省略されている。
【0109】
上記円筒体88内には円筒状の連結部材98が回転自在に挿通されており、連結部材98の下端には収納部96が取り付けられている。さらに、連結部材98の上端には、軸受部材89の外面に取り付けられている外蓋94の二重部94aにおける穴の周囲が取り付けられている。こうして、連結部材98によって収納部96は外蓋94の二重部94aに連結されており、撹拌羽根95は回転することがない。
【0110】
尚、上記連結部材98は、円筒体88が回転可能なように、軸受部材89と同様に上記含油ポリアセタール樹脂等で構成することが望ましい。また、炊飯時に内鍋82内に発生した水蒸気は、円筒状の連結部材98を通って外部に排出される。
【0111】
図9は、上記撹拌羽根95における撹拌羽根本体97が、回動して収納部96から出ている状態を示す。以下、図8および図9にしたがって、撹拌羽根95について詳細に説明する。
【0112】
上記撹拌羽根95の収納部96は、上記連結部材98の下端に水平方向に延在して取り付けられており、その一端部には回動軸96aが設けられている。また、撹拌羽根本体97は、棒状の支持部99と、支持部99の先端に取り付けられた湾曲した板状の羽根部100とを含んでいる。そして、支持部99の基端は、収納部96の上記一端部に設けられた回動軸96aによって、回動自在に軸支されている。こうして、撹拌羽根本体97は、収納部96に対して回動且つ出没可能に取り付けられている。
【0113】
上記収納部96の他端部には電磁石101が取り付けられている。また、撹拌羽根本体97は非磁性材料で形成されており、撹拌羽根本体97の羽根部100における撹拌羽根本体97が収納部96に収納された際に電磁石101に対向する位置には、磁性体102が取り付けられている。
【0114】
尚、上述以外の基本構成は、上記第1実施の形態の場合と同様である。
【0115】
上記構成を有する本実施の形態の炊飯器は、以下のように動作する。すなわち、炊飯動作を開始するに先立って、撹拌羽根95の撹拌羽根本体97は、収納部96に収納されており、制御部によって電磁石101に通電され、羽根部100の磁性体102が電磁石101に吸引されて撹拌羽根本体97が収納部96内に保持される。そして、炊飯動作が開始されると、上記予熱運転モードにおいては、上記制御部によって電磁石101への通電が遮断される。その結果、撹拌羽根本体97は自重によって回動して、図9に示すように収納部96から内鍋82内に出現する。
【0116】
こうして、上記撹拌羽根本体97が内鍋82内に出現すると、モータ(図示せず)によって回転体84を正回転と逆回転とを所定の時間間隔で交互に繰り返すように駆動され、内鍋82が交互に正転および逆転される。その場合、内鍋82が正転および逆転しているのに対して、撹拌羽根本体97は静止している。そのため、内鍋82内の米と水とに対して羽根部100が邪魔板として機能することになり、さらに積極的に内鍋82内が撹拌されることになる。
【0117】
以上のごとく、本実施の形態においては、上記連結部材98によって外蓋94に連結された撹拌羽根95を設け、上記予熱運転モードにおいて、撹拌羽根95の収納部96に収納された撹拌羽根本体97を、内鍋82内に出現させるようにしている。したがって、内鍋82の正転および逆転による内鍋82内の撹拌効果と、突出部82aおよび球状変形部83による内鍋82内の撹拌効果とに加えて、羽根部100による邪魔板としての機能による内鍋82内の撹拌効果を奏することができるのである。
【0118】
したがって、本実施の形態によれば、上記内鍋82内をさらに積極的に撹拌することができ、内鍋82内の温度をさらに均一に保つことができるのである。
【0119】
尚、本実施の形態における、上記撹拌羽根95の構造は、図8および図9に示す構造に限定されるものではない。要は、外蓋94に連結されて、内鍋82の正転および逆転に対して静止して、内鍋82内の水と米とに対して邪魔板としての機能できる構造であればよいのである。
【0120】
また、本実施の形態においては、上記撹拌羽根95は連結部材98の下端に取り付けられている。しかしながら、撹拌羽根95は、連結部材98に着脱可能に構成しても構わない。その場合には、撹拌羽根95の掃除が非常に容易になる。
【0121】
また、本実施の形態においては、上記内鍋82に突出部82aを設けている。しかしながら、突出部82aは無くとも差し支えない。その場合には、上記磁気カップリングや上記駆動ローラを用いた方法等によって内鍋82を回転駆動すればよい。
【0122】
また、本実施の形態においては、上記撹拌羽根本体97を内鍋82内に自動的に出現させることが可能ではあるが、自動的に収納部96内に収納できない構造になっている。しかしながら、撹拌羽根本体97を、自動的に収納部96内に収納可能に構成しても一向に構わない。撹拌羽根本体97を自動的に収納部96内に収納可能に構成すれば、上記予熱運転モードから上記立ち上げ運転モードに移行して内鍋13の回転を止める際に、撹拌羽根本体97を収納部96内に自動的に収納することができ、炊飯が終了した後に外蓋94と内蓋93とで成る蓋体の開放が容易になると共に、撹拌羽根本体97に付着した御飯を除去する手間を省くことができる。
【0123】
その場合における上記撹拌羽根本体97を自動的に収納部96内に収納するための機構は、歯車やレバーやリンク等の従来からよく知られた機構を組合せることによって、容易に構成することが可能である。
【0124】
また、本実施の形態においては、上記第1実施の形態の炊飯器に適用した場合を例に説明しているが、上記第2実施の形態〜上記第4実施の形態の何れかに適用しても差し支えない。
【0125】
また、上記各実施の形態における突出部13a,45,71a,82aの形状や形成箇所は、上述した形状や形成箇所に限定されるものではない。
【0126】
また、上記内鍋13,41,54,71,82を回転駆動するための構造は、突出部13a,82aと回転体19,84とのカップリング構造や、上記磁気カップリング構造や、駆動ローラ62,72を用いた構造に限定されるものではない。
【0127】
また、上記各実施の形態は、適宜組み合わせても一向に差し支えない。
【符号の説明】
【0128】
1,51…炊飯器本体、
2,52…蓋体、
11,53…外ケース、
12,55,76,81…内ケース、
13,41,54,71,82…内鍋、
13b,54a,71c…フランジ部、
13a,45,71a,82a…突出部、
17,71b,83…球状変形部、
18,63,73…モータ、
19,84…回転体、
20,85…球状突出部、
21…制御部、
22,56,77,86…誘導コイル、
23,78,87…横ヒータ、
25,61,94…外蓋、
26,57,93…内蓋、
27,58,75…パッキン、
29,59,88…円筒体、
30,60,89…軸受部材、
31,90…第1支持ローラ、
32,91…支持ローラステー、
33,92…第2支持ローラ、
62,72…駆動ローラ、
65…支持部材、
95…撹拌羽根、
96…収納部、
96a…回動軸、
97…撹拌羽根本体、
98…連結部材、
99…支持部、
100…羽根部、
101…電磁石、
102…磁性体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容すると共に、回転可能な内鍋と、
上記内鍋が収納される本体と、
上記本体の上部に開閉自在に取り付けられると共に、閉鎖された場合に上記内鍋を覆う蓋体と、
上記本体内に収納されると共に、上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記内鍋を回転駆動する回転駆動部と、
上記回転駆動部を、一方向への正回転と上記正回転とは反対方向への逆回転とを行うように制御する回転制御部と
を備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載の炊飯器において、
上記内鍋には、内側に突出している突出部が設けられている
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2に記載の炊飯器において、
上記内鍋の回転軸は、使用時において水平面に対して非垂直に傾斜している
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
請求項2に記載の炊飯器において、
上記内鍋の上記突出部は、上記内鍋の底部に設けられており、
上記回転駆動部は回転軸を有し、上記回転駆動部は、上記回転軸に取り付けられると共に、上記内鍋の上記突出部の外側の凹部に嵌合する回転体を含んでおり、
上記内鍋は、上記突出部と上記回転体とのカップリングを介して、上記回転駆動部によって回転駆動される
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか一つに記載の炊飯器において、
上記回転駆動部は、上記内鍋に接触して上記内鍋を回転駆動する駆動ローラを含んでいる
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項6】
請求項5に記載の炊飯器において、
上記内鍋の上縁には、環状のフランジが設けられており、
上記回転駆動部の駆動ローラは、上記内鍋のフランジに接触して、上記フランジを介して上記内鍋を回転駆動する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項7】
請求項5に記載の炊飯器において、
上記回転駆動部の駆動ローラは、上記内鍋の側面に接触して上記内鍋を回転駆動する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項8】
請求項1あるいは請求項2に記載の炊飯器において、
上記内鍋の少なくとも底面は、磁性体で構成されており、
上記回転駆動部は回転軸を有し、上記回転駆動部は、上記回転軸に取り付けられたマグネットを含んでおり、
上記内鍋は、上記磁性体と上記マグネットとの磁気カップリングを介して、上記回転駆動部によって回転駆動される
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか一つに記載の炊飯器において、
上記蓋体は、
上記本体の上部に開閉自在に取り付けられた外蓋と、
上記外蓋の内側に配置されて、上記外蓋に回転可能に軸支されると共に、上記内鍋に密着して上記内鍋と共に回転する内蓋と
を含み、
上記内鍋内を撹拌する撹拌羽根と、
上記外蓋に取り付けられると共に、上記内蓋における回転中心部を貫通して上記内鍋内まで延在し、上記外蓋と上記撹拌羽根とを連結する連結部材と
を備えたことを特徴とする炊飯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−125467(P2012−125467A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280705(P2010−280705)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】