説明

炊飯器

【課題】鍋内の炊きムラをなくして、おいしく、ごはん上面を平坦に炊き上げることのできる炊飯器を提供すること。
【解決手段】米の糊化温度以下の温度から沸騰状態まで加熱する炊き上げ工程において、鍋底内側加熱コイル5a−1のみ通電する工程を設け、集中加熱によって沸騰気泡を上昇させて被調理物44の略中央部に底面から上面へと連通する少なくとも1つの連通部41を生成し、この連通部41を通じて沸騰気泡46を上昇させ、加熱され難い中央部をも加熱して、鍋2内全体をムラなく加熱することができるので、炊きムラのない、おいしい、上面が平坦なごはんを炊くことのできる炊飯器を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は沸騰時の気泡を制御してムラなくおいしく、ごはん上面を平坦に炊き上げる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な家庭用の炊飯器においては、炊き上がったごはんにムラが少なく、おいしく炊き上がることが要求される。さらには視覚的にも炊き上がったごはん表面が平坦に仕上がることで視覚的な美味効果を得ることができると考えられる。
【0003】
そこで従来、この種の炊飯器は、沸騰時に高まった圧力を強制的に抜いて突沸現象を発生させて米を撹拌させることで、ムラなく、ごはん表面を平坦に炊き上げることができる圧力式炊飯器が発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図6は、特許文献1に記載された従来の圧力式炊飯器の側断面図を示すものである。
【0005】
図6に示すように、炊飯器本体1と、炊飯器本体1に着脱自在に内装される鍋2と、鍋2の上面を開閉自在に覆う蓋3と、鍋を加熱する加熱手段5と、所定の自重を有するボール15と、鍋内に連通する弁孔4bと、蒸気を鍋2内から炊飯器本体1の外へと排出するための蒸気筒10と、プランジャ16から構成されている。
【0006】
このように構成される圧力式炊飯器においては、ボール15は鍋内に連通する弁孔4bを塞ぐように載置されており、プランジャ16は、ボール15を押して弁孔4bと蒸気筒10を連通させるためのロッド16aと、そのロッド16aの押し引きを制御するためのシリンダ16bで構成される。
【0007】
プランジャ16のロッド16aが引かれた状態で、弁孔4bをボール15が塞いだ状態で鍋2内が沸騰状態となるとボール15の重量に応じた圧力が鍋2内に掛かる。ここでロッド16aを押してボール15を移動させ、弁孔4bが蒸気筒10と連通すると、鍋内の圧力が大気圧に下がり、突沸現象が起こるために鍋内に激しい沸騰が起こり米、水が撹拌される。これを沸騰状態が続く間に複数回繰り返す。
【0008】
以上のように、圧力を上下させることによる突沸現象を利用して米、水を撹拌して熱の伝わりを均一にするとともに、ごはん上面を平坦にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−75652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の構成では、突沸を起こすために圧力式炊飯器の構成が必須となる。その上、ごはんの糊化がある程度進む沸騰工程で米を撹拌することによって、糊状の表面が接着された状態の米同士を引き剥がすこととなり、米表面にダメージを与えて米粒の見た目を損ない、栄養分の流出、米の弾力構造の欠損などが起こり得るという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、圧力構成を必要とせず、撹拌による米表
面へのダメージを与えることなしにムラなく、おいしく、ごはん上面を平坦に炊き上げる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者らは、前記従来の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下のことを見出した。
【0013】
即ち、ごはんにムラなく熱を加えるためには、炊上工程から沸騰工程にかけて鍋から立ち上る沸騰気泡をごはん全体に接触するようにすることが重要であること。
【0014】
また米を撹拌するなど移動させる場合には、ごはん表面が糊化してしまった後の沸騰工程ではなく、米の糊化温度以下の温度から沸騰状態に加熱する炊上工程の前半が米表面にダメージを与えることがないということを見出した。そしてこの知見により本発明に想到した。
【0015】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、ごはんの上層から鍋肌まで連通する連通部を生成する連通部生成手段を設けて、炊上工程の初期にごはんの略中央部に連通部を生成する構成とした。
【0016】
これによって、その後鍋底を均一に加熱したときに沸騰気泡が通りやすい鍋肌のみでなく、通りにくい中央部からも連通部を通じて、沸騰気泡が上昇するためにごはん全体に沸騰気泡を接触させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の炊飯器は、減圧による突沸現象で撹拌をしなくともごはん全体に沸騰気泡を接触させることで鍋内をムラなく加熱することができ、おいしく、ごはん上面を平坦に炊き上げることができる。
【0018】
また、糊化が進んでいない炊上工程の初期に連通部を生成することで、米粒表面にダメージを与え難く、栄養分の流出や米の弾力構造の欠損がなく、見た目も損なわれない、よりおいしいごはんを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の側断面図
【図2】本発明の実施の形態1における炊飯工程の時間毎の鍋温度を示すグラフ
【図3】本発明の実施の形態1における炊上工程初期の段階Aにおいて鍋底内側加熱コイルのみを通電させたときの鍋の側断面図
【図4】本発明の実施の形態1における炊上工程後半から沸騰工程にかけての段階Bにおいて鍋底内側加熱コイルと鍋底外側加熱コイルを通電させたときの鍋の側断面図
【図5】炊上工程初期の段階Aに集中加熱によるかに穴を生成しない場合の、段階Bにおける鍋底内側加熱コイルと鍋底外側加熱コイルを通電させたときの鍋の側断面図
【図6】従来の圧力式炊飯器の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の発明は、炊飯器本体と、前記炊飯器本体に装備する鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記炊飯器本体を覆う蓋と、前記鍋の温度を検出する鍋温度検出手段と、前記鍋温度検出手段の出力に応じた所定の炊飯シーケンスに従って前記加熱手段を制御する加熱制御手段と、前記鍋内で調理される被調理物の底面から上面へと連通する少なくとも1つの連通部を生成するための連通部生成手段を備え、前記連通部生成手段で、米の糊化温度以下の温度から沸騰状態に加熱するための炊上工程の初期に、前記被調理物の略中央部に
前記連通部を生成したのちに前記加熱手段で前記鍋底全体を加熱することにより、沸騰気泡が通りやすい鍋肌のみでなく、通りにくい中央部からも連通部を通じて沸騰気泡が上昇するために、ごはん全体に沸騰気泡を接触させて熱伝達することが可能となり、鍋内全体をムラなく加熱することができ、おいしく、ごはん上面を平坦に炊き上げることができる。また、糊化が進んでいない炊上工程の初期に連通部を生成することで、米粒表面にダメージを与えることがなく、見た目も損なわれない、よりおいしいごはんを提供することができる。
【0021】
第2の発明は、特に、第1の発明の前記加熱手段のうち前記鍋の底部の加熱手段は、鍋底内側加熱手段と、鍋底外側加熱手段とで構成され、前記鍋底内側加熱手段で前記鍋の略中央部を加熱することで前記連通部を生成することにより、鍋の略中央部に集中加熱を起こして、その沸騰気泡によって連通部を生成することで、ごはんに機構部品等が触れることなく衛生上問題なく連通部を生成でき、そして沸騰気泡が通りやすい鍋肌のみでなく、通りにくい中央部からも連通部を通じて沸騰気泡が上昇するために、ごはん全体に沸騰気泡を接触させて熱伝達することが可能となり、鍋内全体をムラなく加熱することができ、おいしく、ごはん上面を平坦に炊き上げることができる。また、糊化が進んでいない炊上工程の初期に連通部を生成することで、米粒表面にダメージを与えることがなく、見た目も損なわれない、よりおいしいごはんを提供することができる。
【0022】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の前記鍋底内側加熱手段による前記鍋の略中央部への加熱量を、前記鍋底外側加熱手段による前記鍋肌付近への加熱量より大きくして前記連通部を生成することで、ごはんに機構部品等が触れることなく衛生上問題なく連通部を生成でき、そして沸騰気泡が通りやすい鍋肌のみでなく、通りにくい中央部からも連通部を通じて沸騰気泡が上昇するために、ごはん全体に沸騰気泡を接触させて熱伝達することが可能となり、鍋内全体をムラなく加熱することができ、おいしく、ごはん上面を平坦に炊き上げることができる。また、糊化が進んでいない炊上工程の初期に連通部を生成することで、米粒表面にダメージを与えることがなく、見た目も損なわれない、よりおいしいごはんを提供することができる。
【0023】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の前記鍋の内側のコーティングを熱伝導が良く、前記コーティング内への熱の拡散を抑えて前記鍋の基材の熱を前記鍋内の被調理物に多く伝達することのできる素材で構成することにより、加熱を集中させることが容易となり、連通部を生成する場所を制御し易くなる。そして沸騰気泡が通りやすい鍋肌のみでなく、通りにくい中央部からも連通部を通じて沸騰気泡が上昇するためにごはん全体に沸騰気泡を接触させて熱伝達することが可能となり、鍋内全体をムラなく加熱することができ、おいしく、ごはん上面を平坦に炊き上げることができる。また、糊化が進んでいない炊上工程の初期に連通部を生成することで、米粒表面にダメージを与えることがなく、見た目も損なわれない、よりおいしいごはんを提供することができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の側断面図を示すものである。
【0026】
図1において、炊飯器本体1は、上面が開口する略円筒状に形成しており、この炊飯器本体1の内部に鍋収納部である保護枠9を配設し、この保護枠9内には内周面に描かれた水位線を有する鍋2を着脱自在に配設している。
【0027】
保護枠9の外側には鍋2を加熱する加熱手段5を配設している。加熱手段5は、鍋2の
側面外側の鍋底面加熱コイル5aと側面外側の鍋側面加熱コイル5bから成り、鍋底面加熱コイル5aは、鍋底内側を加熱する鍋底内側加熱コイル5a−1と、鍋底外側を加熱する鍋底外側加熱コイル5a−2とから成り、それぞれ独立に制御することができる。
【0028】
なお、鍋底面加熱コイル5aおよび鍋側面加熱コイル5bは加熱コイルに代えてヒータであってもよい。
【0029】
鍋温度検知手段8は、鍋2の底略中心部に当接して熱伝導によって鍋2の温度を検知する。
【0030】
保護枠9の外側には、制御手段6がある。制御手段6には、加熱制御手段6aが含まれ、鍋温度検知手段8の出力に応じた所定の炊飯シーケンスに従って加熱手段5を制御する。
【0031】
炊飯器本体1の上部に蓋3を開閉自在に取り付けている。蓋3は、その一端を保護枠9の後部に設けられたヒンジ軸3aに回動自在に軸支され、回動バネ3bにより開蓋方向に付勢されている。
【0032】
蓋3の他端側で、保護枠9の前方にフックボタン1aを配設し蓋3の開放を抑止する。フックボタン1aが蓋3へ係合しているときには、蓋3は開放することなくフックボタン1aに係止され、閉蓋状態となっている。
【0033】
蓋3の下部に、炊飯および保温中に鍋2内に発生する蒸気を排出する蒸気口4bを有する内蓋4を配設する。内蓋4の上部には、加熱手段5である、内蓋4を加熱する内蓋加熱コイル(ヒータ)5cと、蒸気口4bを通じて鍋2内と連通すると共に、本体外部とも連通している筒形状の蒸気筒10を配設している。
【0034】
内蓋4の蒸気口4bを包囲するように、蒸気筒10に蒸気口パッキン7を着設し、鍋2内に発生する蒸気が蓋3の内部に流入するのを防止している。また、内蓋4の外周部に、鍋2のフランジ部(図示しない)の上面と当接する内蓋パッキン4aを着設しており、炊飯および保温中に鍋2内に発生する蒸気が蒸気口4b以外から外部に流出するのを防止している。
【0035】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0036】
使用者が、被調理物として米とその米量に対応した水を鍋2に入れて炊飯器本体1にセットし、蓋3を閉めた後に、操作入力表示部12の開始ボタン(図示しない)を操作することで調理工程、即ち炊飯工程が実施される。
【0037】
図2は、本発明の第1の実施の形態における炊飯工程の時間毎の鍋温度を示すグラフである。炊飯工程は、主として、時間順に前炊、炊上、沸騰、むらしに大分される。
【0038】
前炊工程では、炊飯開始から第一の所定時間t1(通常20分前後)になるまで、鍋温度検知手段8の検知温度Taが、米の糊化温度以下でかつ米の吸水に適した第一の所定温度T1(通常55℃前後、例えば60℃)になるように加熱制御手段6aが加熱手段5を制御し、加熱手段5で鍋2を加熱するものである。
【0039】
前炊工程は、糊化温度よりも低温の水に米を浸し、予め米に吸水させておくことで、以降の工程において、米の中心部まで十分に糊化させるための工程である。また、本工程は、米に含まれるアミラーゼにより澱粉を分解しグルコースを生成させる工程でもあり、こ
こで、飯の甘味を生み出すのである。
【0040】
次に、前炊工程終了後、炊上工程に移行する。炊上工程では、図2(a)に示すように、鍋温度検知手段8の検知温度Taが第二の所定温度T2(水の沸点(通常100℃近傍))になるまで、加熱手段5が鍋2を加熱するものである。この時の温度上昇速度によって、炊飯量を判定する。
【0041】
なお、本工程では、鍋温度検知手段8の検知温度により加熱手段5を制御したが、別途、鍋2の開口部を覆う内蓋4の温度を検知する蓋温度検知手段を設け、蓋温度検知手段の検知温度が所定温度(例えば80℃)に達するまで、加熱手段5が鍋2を加熱することもできる。
【0042】
炊上工程において、鍋底からの沸騰気泡が多く上昇すると、米の下層から上層にかけて気泡の通り道となる連通部ができる。炊飯においては、特にこれを「かに穴」と称することがある。このかに穴が多いほどごはん中心部を良く加熱することができる。このかに穴を生成するには、炊上工程の中でも米の表面が糊化する前の早い段階A(図2に図示)で強い沸騰を起こして米同士が合着してしまう前に沸騰気泡を上昇させる必要がある。
【0043】
そこで鍋底面加熱コイル5aを、鍋底内側加熱コイル5a−1と鍋底外側加熱コイル5a−2に分けて独立に制御できるようにして、鍋底内側加熱コイル5a−1のみに通電すると、鍋底面加熱コイル5a全体を通電するよりも大きなパワーを入れることができるので、強力な沸騰を局所的に起こすことができる。
【0044】
このとき、鍋2の内側のコーティング(図示せず)を熱伝導が良く、コーティング内への熱の拡散を抑えて鍋2の基材である金属の熱を鍋2内の米44、水45に多く伝達することのできる素材、たとえばセラミックで構成することでより容易に集中加熱を起こすことができる。
【0045】
ここで図3は炊上工程初期の段階Aにおいて鍋底内側加熱コイル5a−1のみを通電させたときの鍋内の状態を示す略図である。
【0046】
この場合、鍋2の略中央に集中加熱することができるので、局所的な沸騰が起こりごはんの略中央部から沸騰気泡46が上昇する。沸騰気泡46はその浮力によって米44を押し退けて水面まで達する。このとき米44には沸騰気泡46の通り道であるかに穴(連通部)41が生成される。
【0047】
引き続き、炊上工程終了後、沸騰工程に移行する。沸騰工程では、鍋2に水が有る間は、鍋温度検知手段8の検知温度Taが、図2に示すように、第二の所定温度T2(水の沸点(通常100℃近傍))で沸騰状態を維持するように加熱制御手段6aが加熱手段5を制御し、加熱手段5(この場合、鍋底面加熱コイル5a)が鍋2を加熱する。
【0048】
そして、沸騰工程が経過していくと、鍋2内の水が蒸発して、鍋2内に水がなくなると、鍋2の温度が上昇する。鍋温度検知手段8の検知温度Taが、第三の所定温度T3(水の沸点以上)に到達すると、鍋2内に水がなくなったと判断し工程の終了とする。この工程は、米澱粉を糊化させる工程であり、炊飯後の飯の糊化度は100%近くに達するが、この工程終了時には糊化度は50〜60%程度となる。
【0049】
本実施の形態では、炊上の後半から沸騰工程にかけての段階B(図2に図示)で、鍋底内側加熱コイル5a−1と鍋底外側加熱コイル5a−2を所定のバランスに加熱制御して、鍋2の底全体から沸騰気泡46を上昇させる。
【0050】
ここで図4は、炊上工程後半から沸騰工程にかけての段階Bにおいて鍋底内側加熱コイル5a−1と鍋底外側加熱コイル5a−2を所定のバランスに加熱制御したときの鍋内の状態を示す略図である。
【0051】
このとき、沸騰気泡46は米44と一定の隙間ができる鍋肌付近に多く上昇するものの、段階Aに生成した中央部のかに穴41付近からも沸騰気泡46が上昇して、ごはん全体に沸騰気泡46が接触させて熱伝達することが可能となり、鍋内の米44全体に熱を与えることによってムラなく、おいしく炊き上げることができる。
【0052】
また沸騰気泡46によってムラなく米が糊化して膨潤することで、ごはん上面が平坦に炊き上がる。
【0053】
図5は、段階Aに集中加熱によるかに穴41を生成しない場合の、段階Bにおける鍋底内側加熱コイル5a−1と鍋底外側加熱コイル5a−2を所定のバランスに加熱制御したときの鍋内の状態を示す略図(従来の加熱制御時の鍋内の状態を示す略図)である。
【0054】
このとき、米44は米粒表面の糊化が始まり、米同士が合着して隙間がないために、沸騰気泡46は米44と一定の隙間ができる鍋肌付近で上昇して、その浮力によって鍋肌付近の米を押し上げて米44全体としてはすり鉢状の炊上り形状となってしまう。これは視覚的な美味効果にも欠けてしまう。
【0055】
また、鍋肌付近の米が、上昇する沸騰気泡による熱伝達及び加熱された鍋肌からの熱伝導により加熱されるのに比べ、鍋中央近辺の米は、加熱度合いが低く、その結果、鍋内の米の位置によって、炊きムラが生じてしまうことになる。
【0056】
次に、むらし工程に進む。むらし工程では、図2に示すように、第二の所定時間t2(通常15分前後)経過するまで、鍋温度検知手段8の検知温度Taが第二の所定温度T2(通常100℃近傍、例えば98℃)で維持するように加熱制御手段6aが加熱手段5を制御し、加熱手段5が鍋2を加熱してごはんを蒸らす。
【0057】
むらし工程は沸騰工程に引き続き、米澱粉の糊化させる工程であり、むらし工程の開始時には糊化度は50〜60%程度であったものが、むらし工程終了時、すなわち、炊飯終了時には、糊化度は100%近くに達するのである。
【0058】
このような炊飯工程を実行すると、鍋温度検知手段8の検知温度Taが図2に示すようになる。
【0059】
以上のように炊上工程の初期に集中加熱によって局所的に強力な沸騰を起こしてかに穴(連通部)を生成するためのかに穴生成手段43として鍋底内側加熱コイル5a−1で鍋の略中央部を加熱する。
【0060】
これによって、その後の炊上工程後半から沸騰工程において鍋2の底から均一に沸騰気泡46を上昇させる際に鍋肌付近のみでなくかに穴41付近にも沸騰気泡46を上昇させ、ごはん全体を加熱して、ムラなく、おいしく、そしてごはん上面を平坦に炊き上げることができる。
【0061】
さらにかに穴41を生成するために沸騰気泡46の浮力によって米44を動かすのは米表面の糊化が始まる前の炊上工程の初期であるので米粒同士は合着しておらず、米表面にダメージを与えることがない。
【0062】
なお、本実施の形態では鍋底面加熱コイル5aを内側と外側とを同心円形状に分割した構成を示したが、局所沸騰を起こすための構成であれば、この構成に制限するものではない。
【0063】
また、本実施の形態では、炊上工程の初期に鍋底内側加熱コイル5a−1のみを通電させることで、鍋中心付近の集中加熱集中加熱によって局所的に強力な沸騰を起こしてかに穴(連通部)を生成したが、鍋底外側加熱コイル5a−2も加熱して、その加熱量を、鍋底内側加熱コイル5a−1による加熱量より小さくするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、鍋内の沸騰箇所を制御できることから、沸騰箇所を動かすことによって具材を沸騰気泡の浮力によって撹拌する自動調理器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 炊飯器本体
1a フックボタン
2 鍋
3 蓋
3a ヒンジ軸
3b 回動バネ
4 内蓋
4a 内蓋パッキン
4b 蒸気口(弁孔)
5 加熱手段
5a 鍋底面加熱コイル
5a−1 鍋底内側加熱コイル
5a−2 鍋底外側加熱コイル
5b 鍋側面加熱コイル
5c 内蓋加熱コイル
6 制御手段
6a 加熱制御手段
7 蒸気口パッキン
8 鍋温度検知手段
9 保護枠
10 蒸気筒
12 操作入力表示部
15 ボール
16 プランジャ
16a ロッド
16b シリンダ
41 かに穴(連通部)
43 かに穴生成手段
44 米
45 水
46 沸騰気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、前記炊飯器本体に装備する鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記炊飯器本体を覆う蓋と、前記鍋の温度を検出する鍋温度検出手段と、前記鍋温度検出手段の出力に応じた所定の炊飯シーケンスに従って前記加熱手段を制御する加熱制御手段と、前記鍋内で調理される被調理物の底面から上面へと連通する少なくとも1つの連通部を生成するための連通部生成手段を備え、前記連通部生成手段で、米の糊化温度以下の温度から沸騰状態に加熱するための炊上工程の初期に、前記被調理物の略中央部に前記連通部を生成したのちに前記加熱手段で前記鍋底全体を加熱することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記加熱手段のうち前記鍋の底部の加熱手段は、鍋底内側加熱手段と、鍋底外側加熱手段とで構成され、前記鍋底内側加熱手段で前記鍋の略中央部を加熱することで前記連通部を生成することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記鍋底内側加熱手段による前記鍋の略中央部への加熱量を、前記鍋底外側加熱手段による前記鍋肌付近への加熱量より大きくして前記連通部を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記鍋の内側のコーティングを熱伝導が良く、前記コーティング内への熱の拡散を抑えて前記鍋の基材の熱を前記鍋内の被調理物に多く伝達することのできる素材で構成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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