説明

炊飯器

【課題】内釜収容部と内釜との周壁の間に密閉した空気層を設け、この空気層に炊飯中に発生した熱量を蓄熱することにより、少ない電力で炊飯を行うことにより消費電力を低減することのできる炊飯器を提供すること。
【解決手段】上部が開口されて下面に誘導加熱コイル6が設けられ、上部外周にパッキン受け部5が形成された内釜収容部3を有する炊飯器本体2と、外蓋11と内蓋12とからなり、内釜収容部3の上部開口部を開閉する蓋体10と、磁性材料からなり上端部外周に内釜収容部3のパッキン受け部5に載置されるフランジ11が設けられ、内釜収容部3内に収容されたときに両者の周壁の間に中空の空気層25が形成される内釜20とを有し、炊飯器本体2と蓋体10との間に配設された第1のパッキン15により空気層25を密閉するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭等で日常的に使用される加熱手段として誘導加熱コイルを用いた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱手段として誘導加熱コイルを用いた炊飯器においては、調理物である米や水が入れられた内釜を炊飯器本体内に収容し、蓋を閉じて炊飯スイッチをONすると、制御部に設定した制御プログラムにしたがって炊飯が開始され、先ず、図3に実線で示すように、予熱工程、ついで炊飯工程、最後にむらし工程を経て炊飯を終了し、保温工程に移行する。
【0003】
予熱工程は約15分から20分程度の時間を要し、ついで炊飯工程に入る。炊飯工程では火力を上げて水を沸騰状態にし、内釜内の水が無くなるまで沸騰を継続させる。内釜内の水が無くなると、それまで水の蒸発潜熱で消費されていた熱が内釜温度を上昇させることに使われるようになり、内釜温度が急激に上昇する。これをドライアップと呼び、内釜の底部に設けた温度センサでこの温度上昇をとらえて炊飯工程を終了し、以降むらし工程に入る。そして、10分から15分程度むらした後炊飯を終了し、保温工程に移行する。これらの各工程では、最適な火加減を実現するようにマイコンプログラムで火力、したがって誘導加熱コイルの出力が制御される。
【0004】
このように、予熱工程から保温工程まではかなり長時間加熱しているため、加熱時間を減らして省エネルギー性を向上させるための方法が種々提案されており、その中でも保温鍋を用いることがよく知られている。
【0005】
このような保温鍋に、底部の周囲から上方に立ち上った周壁部を形成してなる炊飯鍋において、上記周壁部にその高さ方向に所要幅の真空層を全周にわたって設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、鍋本体の上部内周部に他の鍋本体の上部周縁部を係止してこの鍋本体内に他の鍋本体を支承状態に収納する段差部を設け、この段差部に柔軟性材で形成したリング状パッキンを着脱自在に設けて、鍋本体内面と他の鍋本体外面との間に形成された断熱空隙がリング状パッキンによって密閉されるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−152868号公報(第2−3頁、図1)
【特許文献2】特許第3533193号公報(第3−5頁、図1−4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の炊飯器用鍋は、周壁部の高さ方向に所要幅の真空層を設けているため密閉性を保つことが構造上難しく、その上真空層を形成するための設備費も膨大になる。
【0009】
また、特許文献2の鍋は、構造がきわめて複雑であり、その上鍋本体の底部と他の鍋本体の底部との間に大きな断熱空間が設けられているため、加熱手段として誘導加熱コイルを使用する場合は加熱効率がきわめて悪く、さらに、内蓋と外蓋との間に大きな空気層が存在するため内蓋に結露が生じ易い等の問題があり、炊飯器の内釜として使用することができない。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、内釜収容部の周壁と内釜の周壁との間に密閉した空気層を設け、この空気層に炊飯中に発生した熱量を蓄熱することにより、少ない電力で炊飯を行うことにより消費電力を低減することのできる誘導加熱コイルを用いた炊飯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る炊飯器は、上部が開口されて下面に誘導加熱コイルが設けられ、上部外周にパッキン受け部が形成された内釜収容部を有する炊飯器本体と、外蓋と内蓋とからなり、前記内釜収容部の上部開口部を開閉する蓋体と、上端部外周に前記内釜収容部のパッキン受け部に載置されるフランジが設けられ、前記内釜収容部内に収容されたときに両者の周壁の間に中空の空気層が形成される内釜とを有し、前記炊飯器本体と蓋体との間に配設された第1のパッキンにより前記空気層を密閉するように構成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少ない電力で炊飯を行うことができるので、炊飯に要する消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の模式的説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の他の例の模式的説明図である。
【図3】本発明の炊飯器と従来の炊飯器の炊飯に要する時間と消費電力との関係を示す線図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る炊飯器の模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る炊飯器の模式的説明図である。
炊飯器1において、2は上部が開口され、内部に有底円筒状で内径がD1の内釜収容部3が設けられた炊飯器本体で、内釜収容部3の上部外周にはリング状の段部によりパッキン受け部5が形成されている。6は内釜収容部3の底部4及びコーナ部の外面に設けられた誘導加熱コイルである。
【0015】
10は一端がヒンジ13により炊飯器本体2に取付けられて、炊飯器本体2の上部開口部を開閉する蓋体で、外蓋11と外蓋11の下面に着脱可能に装着された内蓋12とからなり、この内蓋12の下面周縁部には、内側突片15aとこれより若干長い外側突片15bとからなる断面ほぼコ字状で、リング状の第1のパッキン15が一体的に設けられている。なお、この第1のパッキン15は外蓋11の下面に直接設けてもよい。また、後述するように、第1のパッキンは、内蓋12の下面又は外蓋11と別体として設けてもよい(図4参照)。
【0016】
20は例えばステンレスの如き磁性材料からなる有底円筒状の内釜で、上端部外周にはフランジ21が設けられている。この内釜20の外径D2は内釜収容部3の内径D1より小さく、D1>D2に形成されている。なお、内釜20は磁性材料からなるものとしたがこれに限るものではなく、炭材やアルミニウムなどで構成してもよく、誘導加熱される材料であればよい。
【0017】
この内釜20を内釜収容部3内に収容すると、内釜20はそのフランジ21が内釜収容部3のパッキン受け部5に載置されて保持され、その底部22が内釜収容部3の底部4に当接し又は近接して位置する。そして、内釜収容部3と内釜20との間には、下部のコーナ部の立ち上り部から周壁の全周にわたって、幅dの中空の空気層25が形成される。この空気層25の幅dはD1−D2/2で設定され、実施例では8〜12mmであったが、これに限定するものではない。
【0018】
なお、図示してないが、炊飯器本体2内には、誘導加熱コイル6へ供給する電力等の制御部、内釜20の温度を検出する温度センサ等が設けられており、蓋体10の内部には結露防止用の蓋ヒータが設けられ、外蓋11には操作部が設けられている。
【0019】
上記のように構成した炊飯器1において、蓋体10を開放し、所定量の米と水が入れられた内釜20を内釜収容部3内に収容し、そのフランジ21を内釜収容部3のパッキン受け部5上に載置する。このとき、内釜20の底部22は内釜収容部3の底部に当接又は近接して位置し、内釜収容部3の底部4を貫通して設けられた温度センサが、内釜20の底部22に当接する。
【0020】
この状態で蓋体10を閉じると、内蓋12と一体的に設けた断面コ字状の第1のパッキン15の内側突片15aが内釜20のフランジ21に圧着され、外側突片15bが内釜収容部3のパッキン受け部5に圧着されて、内釜20の上部開口部を封止すると共に、内釜収容部3の周壁と内釜20の周壁との間に形成された空気層25を密閉する。なお、図示してないが、内釜収容部3の上部又は内釜20の上部には、空気層25に連通する調圧弁が設けられている。
【0021】
図2は本実施の形態に係る炊飯器の他の例の模式的説明図である。
本例は、炊飯器本体2に設けた内釜収容部3の上部外周に設けたパッキン受け部5を幅狭に形成し、その外側にリング状の凹溝5aを設け、また、内蓋12と一体的に形成され又は外蓋11の下面に設けられた断面コ字状の第1のパッキン15を、内側突片15aを図1の場合より短かく、外側突片15bを長く形成したものである。
【0022】
そして、内釜20を炊飯器本体2の内釜収容部3内にセットして蓋体10を閉じると、第1のパッキン15の内側突片15aが内釜20のフランジ21に圧着され、外側突片15bが凹溝5aの底部に圧着されて、内釜20の上部開口部を封止すると共に、空気層25を密閉する。
【0023】
次に、上記のように構成した炊飯器1による炊飯作用を、図3を参照して説明する。なお、図3は炊飯時における時間と消費電力との関係を示す線図で、実線は従来の炊飯器の場合を示し、破線は本実施の形態に係る炊飯器1の場合を示す。
【0024】
先ず、所定量の米と水が入れられた内釜20を炊飯器本体2の内釜収容部3内にセットし、蓋体10を閉じて操作部の炊飯スイッチをONし、炊飯を開始する。これにより、誘導加熱コイル6に低い電力が供給されて予熱工程が開始され、一定時間経過すると炊飯工程に移行する。炊飯工程では誘導加熱コイル6に高い電力が供給され、火力を上げて短時間で内釜20内の水を沸騰状態にし、内釜20内の水が無くなるまで沸騰を継続させる。ここまでは、従来の炊飯器の場合も本実施の形態に係る炊飯器の場合もほぼ同じである。
【0025】
そして、従来の炊飯器においては、引続きそれまでより弱い火力でドライアップするまで加熱を行っていた。しかし、本実施の形態に係る炊飯器1においては、内釜20内の水が沸騰することにより内釜20が加熱され、その熱量が空気層25に蓄熱されているので、破線で示すように、誘導加熱コイル6への電力の供給を停止し又は極く僅かに給電して、空気層25に蓄熱された熱により引続き加熱する。
【0026】
炊飯工程が終ってむらし工程に移行したときは、誘導加熱コイル6に再び低い電力を供給して内釜20を加熱したのち再び給電を中止し、又は極く僅かに給電して空気層25に蓄熱された熱により保温を行う。
なお、空気層25の温度が上昇すると内圧があがり、また、万一空気層25内に水が入った状態で空気層25の温度が上昇して内圧があがり、これが設定圧力を超えた場合は、安全のために調圧弁を開いて空気層25の内圧を調整し、内圧の上昇を防止する。
【0027】
本実施の形態によれば、炊飯工程時に生じた熱により、内釜収容部3と内釜20との間に形成された空気層25に熱量が蓄熱されて、炊飯中の放熱を抑制することができ、また、内釜20内の水が沸騰したあとの炊飯工程において、誘導加熱コイル6への電力の供給を停止し又は大幅に給電を低減することができるので、炊飯工程時における加熱効率が向上し、少ない電力で炊飯できるため、消費電力を低減することができる。
【0028】
また、炊飯工程のあとのむらし工程の際に、誘導加熱コイル6に通電して再加熱することにより、内釜20内の水分をとばして炊き上り時の水滴の付着を防止すると共に、むらし工程時の内釜20の熱により空気層25に再度蓄熱されるため、炊飯後の保温工程において、誘導加熱コイル6への電力の供給を停止し又は給電を大幅に低減することができる。これにより、炊き上り時に内側に付着した水滴によるご飯のベチャベチャ感が無くなるばかりでなく、保温工程時の消費電力を節減することができる。
【0029】
[実施の形態2]
図4は本発明の実施の形態2に係る炊飯器の模式的説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分には、これと同じ符号が付してある。
本実施の形態においては、内釜収容部3の上方に設けたパッキン受け部5を幅狭に形成し、さらに、その外周の上方に、リング状の第2のパッキン受け部5bを設け、また、蓋体10の内蓋12の下面の内釜20の開口部と対応した位置に、外径が内釜20の外径とほぼ等しいリング状の第2のパッキン12aを内蓋12の下面周縁部に一体的に設けたものである。この第2のパッキン12aは、蓋体10を閉じたときに内釜20の内部を密閉する。
【0030】
また、蓋体10とは独立して断面コ字状でリング状の単体の第1のパッキン16を設けたもので、この第1のパッキン16は内側突片16aとこれより短かい外側突片16bとからなっている。なお、実施の形態1では第1のパッキン15を内蓋12と一体に設けたが、本実施の形態においては、第1のパッキン16は内蓋12とは別体に設けられている。
【0031】
本実施の形態に係る炊飯器1においては、蓋体10を開放し、所定量の米と水が入れられた内釜20を内釜収容部3内に収容して、そのフランジ21を内釜収容部3のパッキン受け部5上に載置する。
ついで、第1のパッキン16を内釜20の上方に位置させて、その内側突片16aを内釜20のフランジ21上に載置し、外側突片16bを第2のパッキン受け部5b上に載置する。
【0032】
この状態で蓋体10を閉じると、内蓋12の下面の周縁に設けた第2のパッキン12aの下部外周縁が内釜20の上部内周縁に当接して内釜20の内部を密閉する。一方、第1のパッキン16は、内側突片16aが内釜20のフランジ21に、外側突片16bが第2のパッキン受け部5bに圧着されて内釜20の上部開口部を封止すると共に、空気層25を密閉する。さらに、第1のパッキン16の内側突片16aの内周側と、第2のパッキン12aの外周側とが当接し、内釜20の内部を効率よく密閉する。
本実施の形態に係る炊飯器の炊飯作用及び効果は、実施の形態1の場合とほぼ同様である。
【0033】
上記の説明では、炊飯器本体2の内釜収容部3及びこれに収容される内釜20を有底円筒状に形成した場合を示したが、これらを例えば有底角筒状に構成するなど、他の形状であってもよい。
【0034】
また、第1のパッキンとパッキン受け部について、図4の第2のパッキン受け部5と外側突片16bを、それぞれ図2の凹溝5aと外側突片15bに置き換えてもよく、また、逆に、図2の凹溝5aと外側突片15bを、それぞれ図4の第2のパッキン受け部5と外側突片16bに置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 炊飯器、2 炊飯器本体、3 内釜収容部、5 パッキン受け部、5a 溝部、5b 第2のパッキン受け部、6 誘導加熱コイル、10 蓋体、11 外蓋、12 内蓋、12a 第2のパッキン、15,16 第1のパッキン、15a,16a 内側突片、15b,16b 外側突片、20 内釜、21 フランジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口されて下面に誘導加熱コイルが設けられ、上部外周にパッキン受け部が形成された内釜収容部を有する炊飯器本体と、
外蓋と内蓋とからなり、前記内釜収容部の上部開口部を開閉する蓋体と、
上端部外周に前記内釜収容部のパッキン受け部に載置されるフランジが設けられ、前記内釜収容部内に収容されたときに両者の周壁の間に中空の空気層が形成される内釜とを有し、
前記炊飯器本体と蓋体との間に配設された第1のパッキンにより前記空気層を密閉するように構成したことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記第1のパッキンを、断面コ字状でリング状に形成したことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記第1のパッキンを、前記蓋体の外蓋又は内蓋の下面に一体的に取付けたことを特徴とする請求項1又は2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記第1のパッキンを、前記蓋体の外蓋又は内蓋の下面に別体で設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記蓋体の内蓋の下面の周縁に第2のパッキンを設け、前記蓋体を閉じると前記第1のパッキンにより前記空気層を密閉し、前記第2のパッキンが前記内蓋内部を密閉するとともに、前記第2のパッキンが前記第1のパッキンに当接することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項6】
前記断面コ字状の第1のパッキンの内側突片を前記内釜のフランジの上に位置させ、外側突片を前記内釜収容部のパッキン受け部上に位置させることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項7】
前記内釜収容部のパッキン受け部の外周に凹溝を設け、前記断面コ字状の第1のパッキンの内側突片を前記内釜のフランジ上に位置させ、外側突片を前記凹溝内に位置させたことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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