説明

炊飯器

【課題】こんにゃく加工食品と米の分布むらを改善し、こんにゃく加工食品を配合したご飯の食味を一層良好にすることができる炊飯器を提供する。
【解決手段】米と水を収容する鍋2と、鍋を加熱する鍋加熱装置5と、鍋の温度を検知する鍋温度検知部6と、鍋温度検知部6の検知温度に基づいて鍋加熱装置5への通電のオンオフを制御し、予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程、蒸らし工程を含む炊飯工程を行う炊飯制御部7とを備え、炊飯制御部7は、少なくとも、通常炊飯コースとこんにゃく加工食品専用炊飯コースとを有し、こんにゃく加工食品専用炊飯コースの予熱工程において、通常炊飯コースよりも加熱量を少なくするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に家庭用に使用する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市販されているマンナンヒカリ(大塚食品(株)製)に代表されるこんにゃく加工食品は、コレステロールを減らす効果や食物繊維のひとつとして腸の中の不要な成分を体外に排出する働きがあり、腸内の環境を整え、大腸がんや糖尿病の予防に効果的な、マンナンという多糖類の一種を主成分(乾燥重量で約40%)として含むことから、健康・美容・ダイエット志向の高まりとともに注目されている。
【0003】
従来から、こんにゃく加工食品を米に混ぜた炊飯は、炊飯における加熱所作は通常の米と同様の炊飯コースを用い、炊飯材料となるこんにゃく加工食品の製法、あるいは一緒に配合する米の製法、また米との配合比を工夫することで、炊き上がりの外観や食感、風味(石灰臭や苦み)の違和感を低減してきている。例えば、特許文献1(特開平6−46774号公報)には、 組成や形状の工夫により、炊飯米様外観及びテクスチャーを有し、しかもセルロースを含有し且つ低カロリーであるという独特の特徴を有するこんにゃく加工食品が開示されている。このこんにゃく加工食品では、配合比が炊飯米の半量を下回れば、違和感を感じる者は過半数に至らないことが確認されている。
【0004】
また例えば、特許文献2(特開平7−155118号公報)には、形状とpHを工夫したこんにゃく加工食品が開示されている。このこんにゃく加工食品では、外観や風味の違和感の低減を図っている。
【0005】
また例えば、特許文献3(特開2003−88309号公報)には、米に無洗米処理を施し、予め米粒とこんにゃく粒が所用の割合で混合された食品とすることを特徴とするこんにゃく加工食品が開示されている。このこんにゃく加工食品では、洗米時に発生する吸水バラつきを防ぐことにより、個人差がなくだれでも同じようにおいしい炊き上がりになることを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−46774号公報
【特許文献2】特開平7−155118号公報
【特許文献3】特開2003−88309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、通常の米と同様の炊飯コースを用いると、その炊飯プログラムは米に最適の予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程、蒸らし工程が設定されているため、米の糊化温度より低い温度帯における吸水速度が米より早く、また米のようなでんぷん構造を有さず、米の糊化温度帯における吸水膨潤が米に比べて小さいこんにゃく加工食品にとっては、前記各工程の設定は最適とは言い難く、さらに、こんにゃく加工食品と混合した米の炊飯特性にも影響が及ぶ。具体的には、糊化温度より低い温度で制御する予熱工程での吸水については、こんにゃく加工食品の吸水速度が米より早いため、米の吸水が阻害される。また、米より比重の軽いこんにゃく加工食品は、予熱工程や昇温工程における米に最適な対流では、勢いが強すぎて表層に集まってしまい、鍋内でこんにゃく加工食品と米の分布むらの発生につながる。
【0008】
さらに、米に最適な沸騰維持工程や蒸らし工程での火力は、米のぬか臭を飛ばすだけの蒸気は発生するが、こんにゃく加工食品特有の石灰臭等の低減効果は少ない。
【0009】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、こんにゃく加工食品と米の分布むらを改善し、こんにゃく加工食品を配合したご飯の食味を一層良好にすることができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0011】
本発明の第1態様によれば、米と水を収容する鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱装置と、前記鍋の温度を検知する鍋温度検知部と、前記鍋温度検知部の検知温度に基づいて前記鍋加熱装置への通電のオンオフを制御し、予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程、蒸らし工程を含む炊飯工程を行う炊飯制御部とを備え、前記炊飯制御部は、少なくとも、通常炊飯コースとこんにゃく加工食品専用炊飯コースとを有し、前記こんにゃく加工食品専用炊飯コースの予熱工程において、前記通常炊飯コースよりも加熱量を少なくする炊飯器を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、炊飯制御部は、こんにゃく加工食品専用炊飯コースの予熱工程において、通常炊飯コースよりも工程時間を長くする、第1態様の炊飯器を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、炊飯制御部は、こんにゃく加工食品専用炊飯コースの昇温工程において、通常炊飯コースよりも加熱量を少なくする、第1態様の炊飯器を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、炊飯制御部は、こんにゃく加工食品専用炊飯コースの沸騰維持工程において、通常炊飯コースよりも工程終了時の鍋温度検知部の検知温度が高くなるように制御する、第1態様の炊飯器を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、炊飯制御部は、こんにゃく加工食品専用炊飯コースの蒸らし工程において、通常炊飯コースよりも加熱量を増やす、第1態様の炊飯器を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1態様にかかる炊飯器によれば、マンナンごはんコースの予熱工程において、通常の炊飯コースよりも出力あるいは通電率を低くすることにより、鍋内の対流の勢いが控えめになる。これにより、米より比重の軽いこんにゃく加工食品が表層に集まるのを抑え、鍋内でこんにゃく加工食品と米の分布むらが発生するのを改善しながら炊飯を行うことができる。なお、この効果は第2,第3態様にかかる炊飯器によっても同様である。
【0017】
また、本発明の第4態様にかかる炊飯器によれば、マンナンごはんコースの沸騰維持工程において、通常の炊飯コースよりも工程終了時の前記鍋の温度が高くなるように制御することにより、蒸発量が多くなる。これにより、米のぬか臭だけでなく、こんにゃく加工食品の混合により新たに加わったこんにゃく加工食品特有の石灰臭等、不快な臭い成分の低減を図ることができる。なお、この効果は第5態様にかかる炊飯器によっても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる炊飯器の断面図
【図2】本発明の第1実施形態にかかる炊飯器の通常炊飯コースの炊飯工程を示す図
【図3】(A)一般的な炊飯工程における鍋温度検知部の検知温度を示す図(B)一般的な炊飯工程における鍋温度検知部の検知温度を示す図
【図4】本発明の第1実施形態にかかる炊飯器の炊飯工程を示す図
【図5】本発明の第1実施形態にかかる炊飯器の他の炊飯工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
《第1実施形態》
図1を用いて、本発明の第1実施形態にかかる炊飯器の構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる炊飯器の断面図である。
【0021】
図1に示すように、本第1実施形態にかかる炊飯器は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納される鍋2とを備えている。炊飯器本体1の上部には、炊飯器本体1の上部開口部を開閉可能に蓋本体3が取り付けられている。蓋本体3の内側(鍋2の開口部を覆う側)には、鍋2の上部開口部を塞ぐことが可能な略円盤状の内蓋4が着脱可能に取り付けられている。
【0022】
炊飯器本体1の前壁上部(図1の左側上部)には、蓋本体3のフック3aに係合可能なフック1dが設けられている。フック1dと上枠1bの筒状部分1baとの間にはバネ1eが設けられている。フック1dは、バネ1eにより前方(図1の左側)に付勢されている。
【0023】
蓋本体3は、ヒンジ軸Aを備えている。ヒンジ軸Aは、蓋本体3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部を回動自在に固定されている。ヒンジ軸Aの周りには、ねじりコイルバネなどの回動バネ(図示せず)が装着されている。この回動バネは、ヒンジ軸Aを回転中心として蓋本体3が炊飯器本体1から離れる方向に回転するように付勢している。従って、蓋本体3のフック3aと炊飯器本体1のフック1dとの係合が解除されたとき、蓋本体3が前記付勢力により自動的に回転して、炊飯器本体1の上部開口部が閉状態から開状態になる。
【0024】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、上枠1bとコイルベース1cとで構成されている。上枠1bは、収納された鍋2の側壁に対して所定の隙間が空くように配置される筒状部分1baと、筒状部分1baの上部から外方に突出し炊飯器本体1の上部開口部の内周部に嵌合するフランジ部1bbとで構成されている。コイルベース1cは、鍋2の形状に対応して有底円筒形状に形成され、その上部が上枠1bの筒状部分1baの下端部に取り付けられている。
【0025】
コイルベース1cの外周面には、鍋2を加熱(誘導加熱)する鍋加熱装置5が取り付けられている。鍋加熱装置5は、例えば底内加熱コイル5aと底外加熱コイル5bとで構成されている。底内加熱コイル5aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されている。底外加熱コイル5bは、コイルベース1cを介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。
【0026】
コイルベース1cの底部の中央部分には開口が設けられている。当該開口部分には、鍋2の温度を測定するための鍋温度検知部の一例である鍋温度センサ6が、鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に、例えば当接可能に配置されており、その検知情報を炊飯制御部7に入力する。
【0027】
蓋本体3には、その中央部付近を蓋本体3の厚み方向に貫通するように貫通穴3cが設けられ、当該貫通穴3cに蒸気筒8が着脱可能に取り付けられている。蒸気筒8の天壁及び底壁には、鍋2内(より詳しくは鍋2の内側の被調理物で満たされていない上部空間)の余分な蒸気を炊飯器の外部に排出できるように、蒸気逃がし孔8a,8bが設けられている。蓋本体3の内蓋4側の貫通穴3cの周囲には、ゴム等の弾性体で構成された環状の蒸気筒用パッキン9が取り付けられている。蒸気筒用パッキン9は、内蓋4が蓋本体3に取り付けられたときに内蓋4に密着するように設けられている。なお、蒸気筒用パッキン9は、内蓋4あるいは蒸気筒8に取り付けられていてもよい。内蓋4には、蒸気筒8の底壁と対向する位置に蒸気通過用孔4aが1ヶ所以上設けられている。
【0028】
また、蓋本体3の底壁3bの内面(蓋本体内側)には、内蓋加熱装置の一例である内蓋加熱コイル11が取り付けられている。内蓋加熱コイル11は、炊飯制御部7の制御により内蓋4を誘導加熱する。内蓋4は、誘導加熱が可能なステンレスなどの金属で構成されている。なお、蓋本体3の底壁3bの材質は、金属又は樹脂のどちらを用いてもよい。内蓋加熱コイル11が誘導加熱方式の加熱装置ではなくヒータ方式の加熱装置である場合は、蓋本体3の底壁3bの材質として金属を用いることが好ましい。
【0029】
内蓋4の外周部の鍋2側の面には、ゴムなどの弾性体で構成された環状の内蓋用パッキン12が取り付けられている。内蓋用パッキン12は、蓋本体3が閉状態にあるときに鍋2のフランジ部に密着するように設けられている(あるいはパッキン12は蓋本体3に設けられて鍋2のフランジ部と密着させても良い)。
【0030】
蓋本体3には、内蓋4を介して鍋2内の空間の温度を検知する蓋温度検知部の一例である内蓋温度センサ10が底壁3bを貫通するように取り付けられている。内蓋温度センサ10は、内蓋4が蓋本体3に取り付けられたときに、例えば内蓋4に当接するように設けられており、その検知情報を炊飯制御部7に入力する。
【0031】
炊飯器本体1の内部には、炊飯制御部7が搭載されている。炊飯制御部7は、米を炊飯するための炊飯プログラム(炊飯シーケンスともいう)を複数記憶する記憶部(図示せず)や、炊飯中や保温中の各炊飯工程(例えば予熱工程)経過時間を計測する計時部(図示せず)等を備えている。ここで「炊飯プログラム」とは、予熱(吸水ともいう)、昇温、沸騰維持、蒸らし、の主として4つの工程からなり、各工程を順に行うにあたって、各工程において通電時間、加熱温度、加熱時間、加熱出力等が予め決められている炊飯の手順をいう。
【0032】
各炊飯プログラムは、少なくとも市販されているマンナンヒカリ(大塚食品(株)製)に代表されるこんにゃく加工食品専用の炊飯工程を有したマンナンごはんコースを含め、米の種類などに応じた複数の炊飯コースのいずれかにそれぞれ対応している。炊飯制御部7は、鍋温度センサ6及び内蓋温度センサ10の検知温度に基づいて、各部及び各装置の駆動を制御し、炊飯工程を実行する。より具体的には、炊飯制御部7は、蓋本体3に設けられた操作部(図示せず)を使用して行われた使用者の指示を受け取り、当該指示に対応する炊飯プログラムと、鍋温度センサ6及び内蓋温度センサ10の検知温度に基づいて、各部及び各装置の駆動を制御し、後述する炊飯工程を実行する。
【0033】
第1実施形態の炊飯器は、以上のように構成されている。
【0034】
次に、ユーザが鍋2内に米と水を入れ、本発明の第1実施形態の炊飯器にセットした後、前記通常炊飯コースが選択入力された場合の炊飯工程について、図2、図3(A)及び(B)を参照しつつ以下に説明する。図2は、前記通常炊飯コースが入力された場合の炊飯工程を示す図である。図3(A)は一般的な炊飯工程における鍋温度センサ6の検知温度Taを示す図であり、図3(B)は一般的な炊飯工程における米の温度Tbを示す図である。ここで炊飯工程とは、主として、米に吸水させる予熱工程(吸水工程ともいう)Aと、被調理物(米及び水)を沸騰させる昇温工程Bと、その沸騰状態を維持して米への吸水と余分な水の蒸発を同時に行い、米の澱粉を糊化させながら鍋2内の水を無くす沸騰維持工程Cと、炊き上がったごはんを蒸らして鍋内を均一に仕上げる蒸らし工程Dとから構成されている。なお、図2、図3(A)において実線で示したものは、各工程における鍋温度センサ6の検知温度Taの推移を表している。
【0035】
予熱工程Aは、米が糊化する温度よりも低温の水に米を浸して、予め米に吸水させることで、以降の工程おいて、米の中心部まで十分に糊化できるようにする工程である。また、予熱工程Aは、米に含まれる酵素(アミラーゼ)により澱粉を分解し、糖(グルコース)を生成させ、ごはんの甘みを生み出す工程でもある。このため、予熱工程Aでは、計時部の計時時間が第一の時間t1(通常20分前後)になるまで、鍋温度センサ6の検知温度Taが第一の温度T1(通常55℃前後)になるように、炊飯制御部7が鍋加熱装置5を制御して、加熱動作を行う。なお、図2及び後述する図4〜図5中の黒塗り部分は通電中、つまり鍋加熱装置5がONの状態を示している。
【0036】
計時部の計時時間が第一の時間t1になると、予熱工程Aを終了し、昇温工程Bに移行する。昇温工程Bでは、図2及び図3(A)に示すように、鍋温度センサ6の検知温度Taが第二の温度T2(水の沸騰状態(通常100℃近傍))になるまで、鍋加熱装置5が鍋2を加熱する。なお、このとき計時部により、一定火力で加熱して沸騰するまでの所要時間を計測することによって、被調理物の量、すなわち炊飯量を判定することができる。
【0037】
なお、本工程では、炊飯制御部7は鍋温度センサ6の検知温度Taに基づいて、鍋加熱装置5の加熱動作(加熱量(例えば通電率)、加熱温度、加熱時間など)を制御しているが、内蓋温度センサ10の検知温度が所定温度(通常80℃程度)になるまで、鍋2を加熱するように構成してもよい。
【0038】
鍋温度センサ6の検知温度Taが第二の温度T2に達すると、昇温工程Bを終了し、沸騰維持工程Cに移行する。沸騰維持工程Cは、米の澱粉を糊化させて、糊化度を50〜60%程度まで引き上げる工程である。ここで、「糊化」とは、米中の澱粉が水を吸収し、さらに熱が加わることで、膨潤、軟化した状態をいう。沸騰維持工程Cでは、鍋2に水がある間は、鍋2内の米及び水が沸騰状態を維持するように、炊飯制御部7が、鍋加熱装置5を制御して、炊飯量に応じた火力で加熱を行う。この加熱動作により、米への吸水と余分な水の蒸発を同時に行い、米の澱粉を糊化させながら鍋2内の水が無くなると、鍋2の温度が上昇する。鍋温度センサ6の検知温度Taが、図2及び図3(A)に示すように、第3の温度T3(水の沸点以上、例えば130℃)に到達すると、沸騰維持工程Cを終了し、蒸らし工程Dに移行する。なお、沸騰維持工程Cの時間は、炊飯量によって変わるので、図2中及び後述する図4〜図5においては「任意」としている。
【0039】
蒸らし工程Dは、米の澱粉の糊化をさらに促進して、糊化度を100%近くまで引き上げる工程である。蒸らし工程Dでは、鍋底のごはんが焦げたり乾燥したりするのを避けつつ、ごはんの温度が低下するのを防ぎ、糊化を促進させて鍋2内のごはんを均一化するため、計時部の計時時間に応じて、休止と追炊き加熱とを交互に複数回(例えば2回)繰り返す。本発明の第1実施形態においては、図2及び図3(A)に示すように、計時部の計時時間が第二の時間t2(通常15分前後)になるまで、鍋温度センサ6の検知温度Taが第二の温度T2(通常100℃近傍)を維持するように、炊飯制御部7が、鍋加熱装置5を制御して、炊飯量に応じた火力で加熱を行う。
【0040】
このようにして炊飯工程を実行すると、鍋温度センサ6の検知温度Taは図3(A)に示すようになり、鍋2内の温度、すなわち米の温度Tbは図3(B)に示すように推移する。
【0041】
次に、前記マンナンごはんコースが選択入力された場合の炊飯工程について説明する。
【0042】
本発明の第1実施形態にかかる炊飯器は、前記マンナンごはんコースが選択入力された場合、炊飯制御部7は、鍋加熱装置5を制御して、以下に説明する第1〜第2の制御のうち少なくとも1つの制御を行う。それ以外の点については、前記通常炊飯コースが選択入力された場合と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0043】
第1の制御は、予熱工程Aにおいて、炊飯開始から鍋温度センサ6の検知温度Taについて、Ta=第一の温度T1到達後、鍋加熱装置5を制御して被加熱物への加熱量を通常の炊飯コースより弱める制御である。
【0044】
ここで、加熱量の設定は、鍋温度センサ6による温調制御において、被加熱物が第一の温度T1を維持し得る範囲で設定する。設定する加熱量は例えば通常の加熱量の−20%である。なお、加熱量の調整は、例えば、鍋加熱装置への供給電力あるいは通電率で行うものである。また、併せて、予熱工程Aの工程時間t1は、通常の炊飯コースより長い(例えば+10%)ことが好ましい。図4は、この第1の制御を行った炊飯工程を示す図である。
【0045】
この第1の制御によれば、米の吸水を促進させ、また米に含まれる酵素(アミラーゼ)により澱粉を分解し、糖(グルコース)を生成させる温度帯(通常55℃前後)を維持しながら火力を弱めて対流の勢いを控えるので、甘みの生成を損なうことなく、また、米の吸水に必要な時間を大きく変えることなく、米より比重の軽いこんにゃく加工食品が表層に集まるのを抑え、鍋内でこんにゃく加工食品と米の分布むらが発生するのを改善しながら炊飯を行うことができる。一方、こんにゃく加工食品を混合して炊飯すると、糊化温度より低い温度で制御する予熱工程Aでの吸水については、こんにゃく加工食品の吸水速度が米より早いため、米の吸水が多少阻害されるため、予熱工程Aの工程時間t1は、通常の炊飯コースより長く(例えば+10%)設定すると、食味を一層良好にすることができる。
【0046】
第2の制御は、沸騰維持工程Cにおいて、鍋2内の水が無くなり、鍋2の温度が上昇するとき、鍋温度センサ6の検知温度Taについて、通常の炊飯コースの第三の温度T3よりも高い温度T4に到達すると沸騰維持工程Cを終了する制御である。
【0047】
ここで、検知温度T4の設定は、被加熱物に焦げや乾燥が過度に生じない範囲で設定する。設定する温度は例えば通常の温度(130℃)の+3%である。図5はこの弟2の制御を行った炊飯工程を示す図である。
【0048】
この第2の制御によれば、通常の炊飯コースより水蒸気の放出量が増える。米のぬか臭はじめこんにゃく加工食品特有の臭気成分(例えば石灰臭)は、水溶性であるので、炊飯時に放出される水蒸気が多くなるこの制御によれば、不快な臭いを低減し一層良好な食味を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明にかかる炊飯器は、こんにゃく加工食品を配合したご飯の食味を一層良好にするとともにむらを改善することができるので、家庭用及び業務用に使用する炊飯器に有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 炊飯器本体
2 鍋
3 蓋本体
4 内蓋
5 鍋加熱装置
6 鍋温度センサ(鍋温度検知部)
7 炊飯制御部
8 蒸気筒
9 蒸気筒用パッキン
10 内蓋温度センサ(蓋温度検知部)
11 内蓋加熱コイル(内蓋加熱装置)
12 内蓋用パッキン
A ヒンジ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と水を収容する鍋と、
前記鍋を加熱する鍋加熱装置と、
前記鍋の温度を検知する鍋温度検知部と、
前記鍋温度検知部の検知温度に基づいて前記鍋加熱装置への通電のオンオフを制御し、予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程、蒸らし工程を含む炊飯工程を行う炊飯制御部とを備え、
前記炊飯制御部は、少なくとも、通常炊飯コースとこんにゃく加工食品専用炊飯コースとを有し、前記こんにゃく加工食品専用炊飯コースの予熱工程において、前記通常炊飯コースよりも加熱量を少なくする炊飯器。
【請求項2】
前記炊飯制御部は、前記こんにゃく加工食品専用炊飯コースの予熱工程において、前記通常炊飯コースよりも工程時間を長くする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記炊飯制御部は、前記こんにゃく加工食品専用炊飯コースの昇温工程において、前記通常炊飯コースよりも加熱量を少なくする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記炊飯制御部は、前記こんにゃく加工食品専用炊飯コースの沸騰維持工程において、前記通常炊飯コースよりも工程終了時の前記鍋温度検知部の検知温度が高くなるように制御する、請求項1記載の炊飯器。
【請求項5】
前記炊飯制御部は、前記こんにゃく加工食品専用炊飯コースの蒸らし工程において、前記通常炊飯コースよりも加熱量を増やす請求項1記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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