説明

炊飯器

【課題】操作手段を操作しても、操作手段が必要以上に沈み込み過ぎたりしないようにできる炊飯器を提供する。
【解決手段】蓋体21の内部でクランプ34が軸支されていたとしても、蓋開スイッチ32はこれに連動せず、直線的に上下動する構造であるため、蓋開スイッチ32が必要以上に沈み込み過ぎることはなく、また蓋体21と蓋開スイッチ32との隙間から製品の内部が見えるような不具合を回避できる。しかも、本体1内の鍋11が大気圧未満の状態で、クランプ34の保持状態を解除する操作を、最初に蓋体21を開けようとして操作する同じ蓋開スイッチ32で行なうことができ、蓋体21を開ける際に別な操作手段を必要とせず、操作性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力を調整できる炊飯器に関する
【背景技術】
【0002】
一般に、本体に鍋を収納自在に設け、この本体を覆うように蓋体を設けた炊飯器が、例えば特許文献1などに開示されている。また、このような炊飯器では、大気圧よりも低い状態にする調圧手段を備えたものも知られている。
【特許文献1】特開2006−350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来の炊飯器の構造では、次のような問題点があった。
【0004】
圧力を調整するためには、圧力を調整する圧力調整手段が必要である。圧力調整手段は、係合により内蓋に取付けられる。しかし、こうした係合構造は、そもそも係合部を圧入しながら係合することになるため、係合部分がダメージを受けて、係合状態も不安定になり易い。
【0005】
炊飯器は一般に、操作手段を操作することにより、保持手段の保持状態を解除する構造となっている。しかし、圧力炊飯器においては、大気圧以外の場合に、保持手段の保持状態を解除しようとする操作を規制するものがない。
【0006】
また別な問題として、部品寸法のバラツキや組立によるバラツキが原因で、操作手段を操作した場合でも検知手段が検知できない場合が発生する。また、それまで正しく検知していた検知手段が、操作手段の操作の有無を検知できなくなる虞れがあった。
【0007】
本発明の第1の目的は、操作手段を操作しても、操作手段が必要以上に沈み込み過ぎたりしないようにできる炊飯器を提供することにある。
【0008】
本発明の第2の目的は、部品や組立のバラツキに影響されることなく、検知手段の検知性能を維持することができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1における炊飯器では、操作手段は上下動する構造であるため、操作手段が必要以上に沈み込み過ぎるような不具合を回避できる。しかも、大気圧未満の状態で、保持手段の保持状態を解除する操作を操作手段で行なうことができ、操作性を向上できる。
【0010】
本発明の請求項2における炊飯器では、検知手段として磁性材料を用いることで、操作手段の操作の有無を検知する際に、当該操作手段の動作距離ひいては沈み込みを少なくすることができ、検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0011】
本発明の請求項3における炊飯器では、検知手段を蓋体に設けることで、蓋体と操作手段との相対的な位置の変化を、検知手段により検知することが可能となり、検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0012】
本発明の請求項4における炊飯器では、部品や組立のバラツキに応じて、検知手段をその都度の別な位置に取付けることが可能になり、検知手段の検知性能を維持することができる。
【0013】
本発明の請求項5における炊飯器では、製造時において、通常は基準となる目印に検知手段を取付け、そこから必要に応じて検知手段の取付け位置を調節すればよく、生産スピードを落とさず検知手段の取付け作業を行なうことができる。
【0014】
本発明の請求項6における炊飯器では、検知手段を蓋体に設けることで、蓋体と操作手段との相対的な位置の変化を、検知手段により検知することが可能となり、検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0015】
本発明の請求項7における炊飯器では、検知手段として磁性材料を用いることで、操作手段の操作の有無を検知する際に、当該操作手段の動作距離を少なくすることができ、検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0016】
本発明の請求項8における炊飯器では、大気圧未満の状態で、保持手段の保持状態を解除する操作を操作手段で行なうことができ、操作性を向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1の炊飯器によれば、操作手段が必要以上に沈み込み過ぎないようにすることができる。また、操作性を向上できる。
【0018】
本発明の請求項2の炊飯器によれば、操作手段の操作の有無を検知する上で、操作手段の動作距離ひいては沈み込みを少なくすることができ、検知手段における検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0019】
本発明の請求項3の炊飯器によれば、蓋体と操作手段との相対的な位置の変化を、検知手段により検知することで、検知手段における検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0020】
本発明の請求項4の炊飯器によれば、部品や組立のバラツキに影響されることなく、検知手段の検知性能を維持することができる。
【0021】
本発明の請求項5の炊飯器によれば、生産スピードを落とさず検知手段の取付け作業を行なうことができる。
【0022】
本発明の請求項6の炊飯器によれば、蓋体と操作手段との相対的な位置の変化を、検知手段により検知することが可能となり、検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0023】
本発明の請求項7の炊飯器によれば、操作手段の操作の有無を検知する際に、この操作手段の動作距離を少なくすることができ、検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0024】
本発明の請求項8の炊飯器によれば、操作性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例における炊飯器の全体断面図である。
【図2】同上、蓋閉時における要部の拡大断面図である。
【図3】同上、図2とは別な断面であらわした蓋閉時における要部の拡大断面図である。
【図4A】同上、蓋閉時において、蓋開ボタンを押動操作していない状態の要部の拡大断面図である。
【図4B】同上、蓋閉時において、1回目に蓋開ボタンを押動操作した状態の要部の拡大断面図である。
【図4C】同上、蓋閉時において、2回目に蓋開ボタンを押動操作した状態の要部の拡大断面図である。
【図5】同上、基板ホルダーを外した状態の可動部組立体を示す斜視図である。
【図6】同上、完成した可動部組立体を示す斜視図である。
【図7】同上、完成した可動部組立体を示す断面図である。
【図8】同上、完成した可動部組立体を示す断面図である。
【図9】同上、加圧時における調圧部の拡大断面図である。
【図10】同上、減圧時における調圧部の拡大断面図である。
【図11】同上、図9とは別な断面であらわした加圧時における調圧部および安全弁の拡大断面図である。
【図12】同上、外蓋を外した状態の蓋体内部の斜視図である。
【図13】同上、外蓋を外した状態の蓋体内部の斜視図である。
【図14】同上、クランプと、調圧用ソレノイドおよび開閉用ソレノイドの周辺の構造を示す斜視図である。
【図15】同上、調圧用ソレノイドとその周辺の構造を示す斜視図である。
【図16】同上、開閉用ソレノイドとその周辺の構造を示す斜視図である。
【図17】同上、開閉用ソレノイドの非通電時における要部の断面図である。
【図18】同上、開閉用ソレノイドの通電時における要部の断面図である。
【図19】同上、安全弁の断面図である。
【図20】同上、電気的構成を示すブロック図である。
【図21】同上、鍋内の温度および圧力の推移と、各部の動作状態をあらわしたタイミングチャートである。
【図22】同上、鍋内の温度および圧力の推移と、各部の動作状態をあらわしたタイミングチャートである。
【図23】好ましい変形例を示す減圧ポンプ周辺の断面図である。
【図24】同上、ポンプカバーの取付け部周辺の断面図である。
【図25】同上、図24とは別な方向から見たポンプカバーの取付け部周辺の断面図である。
【図26】同上、炊飯器の平面図である。
【図27】同上、外蓋とポンプカバーが別体な場合の斜視図である。
【図28】同上、外蓋とポンプカバーが一体である場合の斜視図である。
【図29】同上、外蓋とポンプカバーを製造する際の金型を示す断面図である。
【図30】調圧部の変形例を示す斜視図である。
【図31】同上、調圧弁カバーに嵌合部材を組み込んだ状態の斜視図である。
【図32】クランプおよび蓋開ボタン周辺の別な変形例を示す断面図である。
【図33】同上、クランプおよび蓋開ボタン周辺の別な方向の断面図である。
【図34】検知手段の取付け例を示す要部の斜視図である。
【図35】同上、検知手段周辺の断面図である。
【図36】別な検知手段の取付け例を示す要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明における炊飯器の好ましい実施例を説明する。
【0027】
図1は、各実施例に共通する炊飯器の基本的な全体構成を示している。同図において、炊飯器の外郭をなす本体1は、その上面と上側面を構成する上枠2と、側面を構成するほぼ筒状の外枠3と、外枠3の底部開口を覆う底板4とにより構成される。また、上枠2の上面内周部から一体に垂下させて形成されるほぼ筒状の鍋収容部5と、この鍋収容部5の下面開口を覆って設けられる内枠6とにより、後述する鍋11を収納する有底筒状で非磁性材料からなる鍋収容体7が形成される。
【0028】
11は、米や水などの被炊飯物を収容し、前記本体1を構成する鍋収容体9内に着脱自在に収納される有底筒状の鍋である。この鍋11は、熱伝導性のよいアルミニウムを主材料とした鍋本体12と、この鍋本体12の外面の側面下部から底面部にかけて接合されたフェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体13とにより構成される。また、鍋11の上端周囲には、その外周側に延出する円環状のフランジ部14が形成される。
【0029】
前記内枠6の外面の発熱体13に対向する側面下部および底面部には、鍋11の特に底部を電磁誘導加熱する加熱手段としての加熱コイル16が設けられている。そして、この加熱コイル16に高周波電流を供給すると、加熱コイル16から発生する交番磁界によって鍋11の発熱体13が発熱し、鍋11ひいては鍋11内の被炊飯物が加熱されるようになっている。
【0030】
また、内枠6の底部中央部には、鍋11の底部外面と弾発的に接触するように、鍋温度検出手段としての温度センサ17が配置され、鍋11の温度を検知し、加熱コイル16による鍋11の底部の加熱温度を主に温度管理するようになっている。
【0031】
前記鍋収容体7の上端には、鍋11の側面上部、特にフランジ部14を加熱するためのコードヒータ18が円環状に配置される。このコードヒータ18は電熱式ヒータからなり、鍋収容体7の上端に載置して取付けられた熱放散抑止部材としてのヒータリング19上に保持されると共に、コードヒータ18を上から覆うようにしてヒータリング19に取付けられた金属板20を備えて、フランジヒータを構成している。この金属板20は、本体1と後述する蓋体21との隙間に対向して位置している。そして、前記金属板20の上面に鍋11のフランジ部14の下面が載置し、これにより、鍋11が本体1の上枠2に吊られた状態で、鍋収容体7内に収容されるようになっている。
【0032】
蓋体21は、図2や図3にもその細部が示されているように、蓋体21の上面外殻をなす外蓋22と、外蓋22の上面部を覆う三次元形状の金属蓋23と、その外面が蓋体21の内面(下面)を形成する放熱板24と、外蓋22および放熱板24を結合させて蓋体21の骨格を形成する蓋ベース材としての外蓋カバー25とを主たる構成要素としている。また、前記蓋体21の内部にあって、放熱板24の上面には、蓋加熱手段としての蓋ヒータ26が設けられている。この蓋ヒータ26は、コードヒータなどの電熱式ヒータや、電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。
【0033】
前記上枠2の後方には、蓋体21と連結するヒンジ部28が設けられる。このヒンジ部28には、正面から見て左右方向に一対の孔(図示せず)が設けられていると共に、ねじりコイルバネなどで形成した付勢手段としてのヒンジバネ29が、その内部に収納される。一方、外蓋カバー25の後方にも、前記ヒンジ部28に設けた孔と対向するようにヒンジ受部としての外蓋カバーヒンジ孔(図示せず)が設けられる。そして、このヒンジ孔とヒンジ部28の孔に共通して、棒状のヒンジシャフト30を挿通することで、本体1と蓋体21がヒンジ部28のヒンジシャフト30を支点として開閉自在に軸支される。さらに、前記ヒンジバネ29の一端と他端が、外蓋カバー25と上枠2にそれぞれ引掛けられることで、蓋体21はヒンジバネ29の弾性反発力を利用して常時開方向に付勢される。
【0034】
蓋体21の前方上面には、開閉手段としての蓋開ボタン32が露出状態で配設されており、この蓋開ボタン32を押すと、蓋体21と本体1との係合が解除され、ヒンジバネ29によって蓋体21が自動的に開く構成となっている。
【0035】
ここで、図2や図3を参照しながら、本実施例における蓋体21と本体1の開閉構造について、さらに詳しく説明する。蓋体21には係合部に相当するクランプ34が配置される。このクランプ34は、蓋体21の内部に設けたクランプシャフト35を中心として、外蓋カバー25に対し回転自在に軸支される。蓋体21を開閉する蓋開ボタン32は、使用者が操作できるように蓋体21の前方上面から露出状態に配設される。蓋体21の内部には、クランプ34の基端部34Aを蓋開ボタン32側に付勢するバネなどのクランプ付勢手段36が設けられ、これにより蓋開ボタン32を常時上方に押し上げる力が作用するようになっている。
【0036】
クランプ34は、蓋開ボタン32に当接する基端部34Aの他に、外蓋カバー25の下面にあるクランプ用孔37を貫通して下方に突出する垂下部34Bと、クランプ34の実質的な先端部に相当し、垂下部34Bの下端を起点として、そこから本体1の内方に延出する係合部34Cとにより構成される。クランプ34はステンレスなどの金属部品で形成し、係合部34Cは略L字状とする。そうすることで、クランプ34を合成樹脂で構成する場合と比べ、強度の強いクランプ受け38との係合を得られる。また、炊飯器ひいては本体1の正面側から見て、中央から左右の略均等位置に、前記クランプ34の係合部34Cを設ける。これらの垂下部34Bや係合部34Cは、クランプ34の下側にあって左右一対に設けられる。クランプ34の回転中心となるクランプシャフト35は、垂下部34Bの上端に沿うように配置され、係合部34Cは本体1の略前後方向に遥動する。
【0037】
一方、上枠2に設けたヒンジ部28の略反対側に位置して、該上枠2の前方には係合受部に相当するクランプ受け38が配設されており、蓋体21を本体1側に閉じようとすると、クランプ付勢手段36の付勢力により、クランプ34がクランプシャフト35を中心軸として回転し、当該クランプ受け38に係合することで、本体1に対し蓋体21を閉状態に保持するようになっている。クランプ受け38はステンレスなどの金属部品で形成する。そうすることで、クランプ受け38を合成樹脂で構成する場合と比べ、強度の強いクランプ34との係合を得られる。反対に蓋体21を開く場合には、蓋開ボタン32を押動操作し、クランプ34の基端部を下方に押下げてクランプ34を逆方向に回転させ、係合部44Cを本体1の前方に変位させて、クランプ34とクランプ受け38との係合を解除する。上枠2のクランプ受け下方部は、クランプ34がクランプシャフト35を軸として回転動作する際に、ぶつからない深さを有することが必要である。また、クランプ34とクランプ受け38下方部の隙間は、通常時のクランプ34とクランプ受け38の係合量よりも大となる寸法関係としておく。更に、外蓋カバー25と上枠2の隙間よりも大となる寸法関係としておく。
【0038】
なお、ここでは蓋体21側にある可動するクランプ34を係合部といい、本体1側にある固定したクランプ受け38を係合受部としているが、蓋体21に固定した係合部を設け、本体1に可動する係合受部を設けてもよい。何れにせよ、これらのクランプ34およびクランプ受け38が、本体1と蓋体21との閉状態を保持するための係合手段を構成する。
【0039】
次に、蓋開ボタン32の変位を検知する検知の構成について、図1〜図3の他に、図4A〜図4Cと、図5〜図8をそれぞれ参照しながら説明する。蓋開ボタン32の裏(内)側部には、LED41やホール素子42を実装した基板43が配設される。LED41は、蓋開ボタン32の上面部に対向して配置され、後述する減圧手段91が動作すると点灯作動する警報手段として設けられている。また、磁気検知素子としてのホール素子42は、蓋開ボタン32が押されていない状態では、外蓋22に設けた磁性体としてのマグネット44に対向して配設される。ホール素子42は、蓋開ボタン32を押動操作して、クランプ34とクランプ受け38との係合を解除しようとしたときに、マグネット44から離れることにより、その動作を検知して検知信号を出力する。つまり、ここでのホール素子42とマグネット44は、蓋開ボタン32の変化を検知する検知手段45として設けられる。なお、別なセンサにより同等の機能を有する検知手段45を構成してもよい。また、本実施例のマグネット44は、クランプ34を軸支する蓋体21に設けられているが、検知手段45として本来の目的を発揮すれば、その限りではない。
【0040】
図5および図6は、基板43の取付け例を示している。ここでは警報手段としてのLED41を外部に透光させるために、基板43が透明部材からなる基板ホルダー47と基板カバー48で囲まれる。基板カバー48は、基板43を収容する膨出部49の周囲に平板部50を形成してなり、前記LED41に臨んで、蓋開ボタン32の中央部をなす凸状の導光部32Aが形成されると共に、平板部50の端縁には、外部から基板43への水などの浸入を防ぐツバ部51が起立形成される。また、基板43に接続した電気配線用の複数のリード線52は、膨出部49の側部に形成した通し穴部53を通して、基板カバー48の外部に引き出されているが、この通し穴部53からの水や蒸気などの浸入を防ぐために、リード線52を1本ずつ挿通させる溝部54が、当該通し穴部53に形成される。基板ホルダー47は、膨出部49の開口面を塞いで、基板43に対向するように基板カバー48に取付け固定される。
【0041】
さらに、この基板ホルダー47を取付けた側の反対側に位置して、基板カバー48の外面には、前述した蓋開ボタン32が取付け固定される。これにより、蓋開ボタン32と基板43は、基板ホルダー47や基板カバー48を含む一体的な可動部組立体55として構成され、蓋開ボタン32の押動操作と共に、ホール素子42を実装した基板43も動くことになる。
【0042】
図6は、前記可動部組立体55とクランプ34との固定構造を示している。基板ホルダー47には、クランプ34の基端部34Aが当接嵌合する位置決め部57が形成され、ねじ58により可動部組立体55がクランプ34の基端部34Aの所望する位置で取付け固定される。なお、ねじ58を設けず、嵌め込むだけの取付け構造であってもよい。こうして図7に示すように、可動部組立体55とクランプ34は、共に可動する一体のクランプユニット59として構成され、ホール素子42は蓋開ボタン32のみならず、クランプ34の変化をも正しく検知することができる。
【0043】
図8は、外蓋カバー25に前記マグネット44を配設した例を示している。ホール素子42を備えた蓋開ボタン32は、前述したようにクランプユニット59としてクランプ34と一体化されているが、このクランプ34を軸支する蓋体21の外蓋カバー25に、検知手段であるマグネット44を配置するのが好ましい。その理由は、仮に外蓋カバー25以外の部材にマグネット44を取付けた場合、蓋開ボタン32を押動操作したのに伴い、マグネット44を取付けた部材と外蓋カバー25との間に変位を生じると、蓋開ボタン32がどの程度動いたのを正しく検知できなくなるからである。マグネット44が外蓋カバー25に取付けられていれば、そうした部材間の変位に起因する検知精度の低下は発生しない。
【0044】
61は、放熱板24の外側すなわち下側に着脱自在に設けられる蓋体21の下部部材としての内蓋組立体である。この内蓋組立体61は、鍋11の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有し、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属性の内蓋62と、鍋11と内蓋62との間をシールするために、当該内蓋62の外側全周に設けられ、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材からなる蓋パッキン63と、内釜の内圧力を調整する調圧部64とを備えている。環状に形成された蓋パッキン63は、蓋体21を閉じた時(蓋閉時)に、鍋11のフランジ部14上面に当接して、この鍋11と内蓋62との間の隙間を塞ぎ、鍋11から発生する蒸気を密閉するものである。
【0045】
前記放熱板24には、蓋体21の特に内蓋62の温度を検知する蓋温度検知手段として、蓋ヒータ51による内蓋62の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋温度センサ65が設けられていている。また、蓋体21の上面後方寄り部には、蓋体21の上面側から着脱可能な蒸気排出部としての蒸気排出ユニット66が設けられる。蒸気排出ユニット66と調圧部64は蓋体21の内部で連通しており、これらの蒸気排出ユニット66や調圧部64により、鍋11内で発生した蒸気を外部へ放出するための蒸気排出機構が形成される。
【0046】
ここで、図9〜図11を参照しながら、調圧部64の構成をより詳しく説明する。前記調圧部64は、調圧用の調圧弁69と、調圧弁69を保持する調圧弁ホルダー組立体70と、調圧弁69を覆うドーム状の調圧弁カバー71とを備えて構成される。調圧弁69は耐食性に優れた材料で、ある程度の重量を有する部品であればよく、例えばオーステナイト系のステンレスからなるボールで形成される。
【0047】
調圧弁ホルダー組立体70は、第1ホルダー72と、第2ホルダー73と、減圧支持部材に相当する第1調圧パッキン75と、第2調圧パッキン76と、鍋11内からの圧力が第1調圧パッキン75に直接加わらないように、この第1調圧パッキン75の下方にあって、加圧支持部材に相当する弁支持体77と、第1調圧パッキン75の下面に弁支持体77が当接する方向に、当該弁支持体77を付勢する弾性体としての調圧バネ78と、により構成される。弁支持体77には、鍋11内の加圧時にボール状の調圧弁69の下方に当接する連通孔74が設けられる。この連通孔74は、鍋11と内蓋62とを連通させる為のもので、連通孔74を通過する蒸気が、蒸気排出ユニット66から外気へ放出されるようになっている。また、第1ホルダー72と第2ホルダー73には、互いを嵌合する為の凸状の係合部79と凹状の被係合部80がそれぞれ設けられている。これらの第1ホルダー72と第2ホルダー73は、前記第1調圧パッキン75や弁支持体77などを保持する保持部材として、内蓋62に設けた孔81に装着される。第1ホルダー72は全体がキャップ状に形成され、その中央部に貫通孔72Aを有し、貫通孔72Aの周辺部72Bと第2ホルダー73の上端部73Aとにより、第1調圧パッキン75の基部を挟持するようになっている。また、第2ホルダー73は筒状で、その下側には内蓋62の孔81周辺の下面に当接するフランジ73Bが形成されると共に、フランジ69の上方外周には、リング状の前記第2調圧パッキン76を嵌合させる凹溝73Cが形成される。さらに、第2ホルダー73の内周側には、調圧バネ78の一端部を嵌め込むために、断面L字状の突片73Dが形成される。
【0048】
調圧弁ホルダー組立体70の組立に際しては、まず第2ホルダー73の凹溝73Cに調圧パッキン76を嵌め込んだものを、内蓋62に設けた孔81に差込み、第2ホルダー73の内周側で調圧バネ78を挟むようにして、弁支持体77を第2ホルダー73の上方から挿入する。次に、弁支持体77および第2ホルダー73の上端部73Aを覆うようにして、第1調圧パッキン75を弁支持体77に載置し、その状態から更に第1調圧パッキン75を挟む様にして、第1ホルダー72を上方から被せ、係合部79と被係合部80とを互いに嵌合させて、第2ホルダー73に第1ホルダー72を取付ける。そして、図9や図10に示すように、調圧弁ホルダー組立体70を組立てた状態では、鍋11内部に第2ホルダー73の内側面と弁支持体77の下面が直接対向し、これらの第2ホルダー73や弁支持体77の上側に配置された第1調圧パッキン75は、鍋11内から直接圧力を受けずに済む構造になっている。
【0049】
このように組立てた調圧弁ホルダー組立体70で調圧弁69を保持し、上方から調圧弁カバー71を被せることで調圧部64を構成する。この時、調圧弁ホルダー組立体70と調圧弁カバー71との取付けは爪嵌合でも良いし、ネジやリベットなどの止着部材を利用して止めてもよい。調圧弁カバー71は、調圧弁69の移動範囲を規制するためのもので、連通孔74から放出する蒸気を蒸気排出ユニット66に導く複数の孔が設けられている。また内蓋62は、調圧弁ホルダー組立66と調圧弁カバー71とで峡持されるので、内蓋62の孔81は露出しない。
【0050】
弁支持体77の連通孔74の開口面積は、弁支持体77の下側に形成した脚部83の内側の、鍋11内から直接圧力を受ける面84の面積より小さくなっている。これにより、連通孔74の開口面積と調圧弁69との重量により、鍋11内の圧力を調整することができる。
【0051】
調圧弁69を動かして蓋体21の密閉度即ち鍋11の内圧を調節するソレノイド82が、蓋体21内部に設けられている。ソレノイド82の非通電状態では、その先端部を進出位置に保持し、調圧弁69を連通孔74から退避する一方、ソレノイド82の通電状態では、その先端部を退避させ、調圧弁69を連通孔74に自重で転動させ、連通孔74を塞いで鍋11内に圧力を投入する。
【0052】
第1調圧パッキン75および第2調圧パッキン76は、何れもシリコーンゴム等の弾性部材で構成する。これにより、特に図10に示す鍋11内の減圧時には、第1調圧パッキン75の弾性変形により、調圧弁69が当該第1調圧パッキン75に密着し、第1調圧パッキン75における開口部すなわち孔75Aのシール性が向上する。
【0053】
前記内蓋組立体61には、その他に鍋11内の圧力が何らかの要因で設定値以上である異常圧力に昇圧すると開弁して、鍋11の内圧を下げる安全弁85が設けられる。調圧部64および安全弁85は、内蓋62を外蓋カバー25の下側に取付けたときに、蒸気排出ユニット66の入口側に臨んで設けられる。そして、内蓋62,蓋パッキン63,調圧部64および安全弁85は、内蓋組立体61の外周に設けたパッキンベース86で一体化され、外蓋カバー25内面に着脱可能に備えてある。この円環状のパッキンベース86は、内蓋62と蓋パッキン63とを装着するものであるが、ここには内蓋62の取付部と、蓋パッキン63の取付部の他に、外蓋カバー25への取付部と、使用者が内蓋組立体61を容易に着脱できるように、取手部をそれぞれ形成している。
【0054】
91は、蓋体21を本体1に閉じた状態で、鍋11内を通常の大気圧よりも低くするために設けた減圧手段である。この減圧手段91は、蓋体21の後部に設けた減圧駆動源としての減圧ポンプ92と、この減圧ポンプ92から本体1および蓋体21を経て、内蓋62に設けた孔(図示せず)に至る管状の経路94とにより構成される。また、蓋体21の内部には、経路94の基端部を開閉する開閉手段としての電磁弁95(図8参照)が設けられる。電磁弁95には、前記内蓋62の孔の周囲に向けて放熱板24から下方に突出した筒状の減圧パッキン(図示せず)が接続される。
【0055】
そして、内蓋62を含む内蓋組立体61を蓋体21の下面に装着すると、減圧パッキンが弾性変形しながら内蓋62の上面に密閉当接し、これにより鍋11と減圧ポンプ92とを連通する経路94が形成される。また、内蓋組立体61を装着した状態で蓋体21を閉じると、蓋パッキン63が鍋11に密着して、調圧弁69が連通孔74を塞いでいれば、密閉した鍋11と電磁ポンプ82との間が経路94により連通する。この状態から減圧ポンプ92を起動させると、電磁弁95ひいては経路94が開放して、鍋11内の空気が経路94および減圧ポンプ92を通って本体1の外部に排出され、密閉した鍋11内の圧力が低下する。また、鍋11内の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合に、電磁弁95ひいては経路94を閉塞して、鍋11内を減圧状態に保っている。さらに、スローリークにより鍋11内の圧力が上昇した場合にも、電磁弁95ひいては経路94を開放し、減圧ポンプ92を起動させて、鍋11内を大気圧よりも低い状態に維持している。
【0056】
この様な鍋11内が大気圧よりも低い状態では、弁支持体77を構成する脚部83の内側の空気が鍋11内に吸引され、それに伴い調圧弁69や、この調圧弁69を載置支持する弁支持体77が、調圧バネ78の付勢に抗して下降する。しかし、弁支持体77の開口部70が第1調圧パッキン75の孔75Aよりも低い位置に移動すると、調圧弁69はそれまでの弁支持体77に代わって第1調圧パッキン75に載置され、当該第1調圧パッキン75の孔75Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保され、減圧を継続して行なえる(図10参照)。
【0057】
逆に炊飯時などにおいて、鍋11内を大気圧以上に加圧する時には、弁支持体脚79の内側が鍋11内から直接圧力を受けるため、調圧弁69の自重に抗して弁支持体77が上昇する。ここで、弁支持体77の開口部70が第1調圧パッキン75の孔75Aよりも高い位置に移動すると、調圧弁69はそれまでの第1調圧パッキン75に代わって弁支持体77に載置され、連通孔74を塞ぐと共に、弁支持体77に載置している調圧弁69も、弁支持体77と同様に上昇する。そして、弁支持体77は上昇後、第1調圧パッキン75に当接し、それにより第1調圧パッキン75の孔75Aを通過しようとする蒸気などを遮断して、鍋11内の密閉を保持できる(図9参照)。
【0058】
次に、減圧手段91を構成する減圧ポンプ92周辺の構造について、図1,図8,図12を参照して説明する。減圧ポンプ92は、鍋11内より発生する蒸気を外部へ排出する蒸気排出ユニット66の近傍にあるポンプケース96上に固定される。このポンプケース96は、外蓋カバー25の後方に配置されたものである。また、減圧ポンプ92を取付けるポンプケース96の固定部には、減圧ポンプ92からの振動伝達を低減させるために、弾性部材からなるブッシュ97が取付けられる。減圧ポンプ92は、空気を吸入する吸入口92Aと、その吸入した空気を外部に排出する排出口92Bがそれぞれ設けられており、前記電磁弁95と吸入口92Aとをチューブによる経路94により連通し、内蓋62の下方に位置する鍋11内の空気を吸引するようになっている。また、減圧ポンプ92から排出される空気には、被調理物から蒸発する水分が若干含まれることから、排出口92Bと外蓋カバー25に形成されたボスを連通した経路98により、空気中の水分を蓋体21の外部に排出する構成としている。
【0059】
なお、前記ポンプケース96は、減圧ポンプ92を外蓋カバー25に設置するための補助的部品であり、その使用を強要するものではない。本実施例では、外蓋カバー25を覆う補強部材としての蓋補強板99を設けた関係で、減圧ポンプ92を外蓋カバー25に直接設置するのが難しいために、ポンプケース96を使用している。
【0060】
本実施例では、蓋体21に配置した減圧ポンプ92の存在感を主張するために、敢えて外蓋22とは別体に、ポンプカバー105とポンプケースカバー106を設けている。ポンプケースカバー106は、前記ポンプケース96と共に、減圧ポンプ92を囲むように設けられ、またポンプケース105はポンプケースカバー106の上方にあって、蓋体21の外郭部品の一部をなしている。外蓋22の溝部には弾性部材からなる防水パッキン107(図1参照)が設けられ、この防水パッキン107をポンプケース96とポンプケースカバー106の端縁で挟み込むことで、減圧ポンプ92への水や蒸気などの侵入を防いでいる。
【0061】
蓋体21内に減圧ポンプ92を含む全ての減圧手段91が配置されている関係で、減圧ポンプ92から電磁弁95に至る経路94を最短の距離で引き回すことができる。また経路94は、その途中で可動するヒンジ部28などを通らず、経路94の損傷を防ぐことができる。
【0062】
再度図1〜図3に戻り、前記本体1の前部には操作パネル101が設けられている。この操作パネル101の内側には、時間や選択したメニューを表示するLCD102や、図示しないが、現在の行程を表示するLEDや、炊飯を開始させたり、メニューを選択させたりする操作スイッチ103の他に、鍋11内の減圧状態を選択する減圧選択スイッチなどを配置した基板が配設される。操作パネル101にはボタン名などが表示され、電子部品である制御手段にほこりや水が付着することも防止している。なお、操作パネル101を蓋体21の正面側に設けてもよい。
【0063】
111は、本体1の内部前方に設けられた加熱制御手段である。この加熱制御手段111は、加熱手段である加熱コイル16を駆動させるための発熱素子(図示せず)を基板に備えて構成される。この加熱コイル16を駆動する素子は、加熱コイル16の発振と共に加熱されるが、動作状態を保証する使用条件温度を有するので、一定温度以下で使用する必要がある。そのために、加熱コイル16を駆動する素子は、例えばアルミニウムのような熱伝導性の良好な材料で構成されるフィン状の放熱器112に熱的に接続され、冷却手段である冷却ファン113から発する風を放熱器112に当てて熱を奪うことにより、使用条件温度内で素子を駆動するようにしている。さらに、本体1の内部には、電源プラグ(図示せず)を巻き取るためのコードリール116が設けられる。
【0064】
蓋体21の内部には、減圧手段91の他に、クランプ34の移動を規制する阻害手段121が設けられる。阻害手段121の構成について、図13〜図18を参照して説明すると、調圧用のソレノイド82は、調圧弁69を動かして蓋体21の密閉度即ち鍋11内圧を調節するものであり、電磁力により内部からプランジャー151を出没させて、調圧部64内にある調圧弁69を動かす構成となっている。また蓋体21の内部には、外蓋カバー25に向けてプランジャー151と共に可動する調圧フレーム152と、蓋体21内部を水密状態に保持するための可撓性調圧パッキン153(図2および図3を参照)が設けられる。図13にも示すように、これらの調圧用ソレノイド82や調圧フレーム152は、外蓋カバー25により蓋体21内に形成された調圧収容部154に収容配置される。
【0065】
調圧フレーム152は、図14や図15に示すように、調圧弁69に向けて突出した操作部としての調圧操作部161と、調圧用ソレノイド82を囲うようにして設けたフレーム部162と、調圧操作部161の略反対側に設けられた調圧フレームロック片163とを備えて構成される。
【0066】
さらにここでは、外蓋カバー25により蓋体21内に形成された別の開閉手段収容部171に、開閉用ソレノイド172が配置される。この開閉用ソレノイド172も、前記調圧用ソレノイド82と同様に、電磁力により内部からプランジャー173を出没させる構成となっている。また蓋体21の内部には、プランジャー173と共に可動し、開閉用ソレノイド172と共に調圧収容部154に収容配置される開閉フレーム175と、蓋体21内部を水密状態に保持するための可撓性開閉パッキン176(図17および図18参照)が設けられる。
【0067】
一方、図17や図18に示すように、前記内蓋62には、前記調圧部64に対向する孔81とは別な開閉用孔181が設けられ、この開閉用孔181に臨んで上下動する開閉弁182を収容した弁開閉手段183が、内蓋62の上面側に装着される。したがって、この変形例では、調圧部64および安全弁85の他に、弁開閉手段183が内蓋62に設けられる。弁開閉手段183は、前述した開閉用孔181の上方にある開閉弁182と、開閉用孔181を開ける方向、すなわち上方に開閉弁182を付勢する付勢手段としての開閉弁バネ184とを備えている。また、開閉弁182の上部に臨んで、接触若しくは所定の隙間を有した状態で、蓋体21側に前記可撓性開閉パッキン176が配設される。可撓性開閉パッキン176は、外蓋カバー25に設けられた開閉用シャフト186の動作と連動するようになっている。
【0068】
開閉用シャフト186と前記開閉用ソレノイド172のプランジャー173との間には、開閉フレーム175の前方に一体化して設けた腕片状の開閉用シャフト操作部188が配設される。この開閉用シャフト操作部188は、開閉用シャフト186の上部に対向してカム面188Aを形成しており、プランジャー173ひいてはこれに連動する開閉用シャフト操作部188が出没するのに伴い、開閉用シャフト186の上部が接するカム面188Aの位置が変わることで、開閉用シャフト186ひいては開閉弁182が上下動するようになっている。具体的には、図17に示す開閉用ソレノイド172の非通電状態では、開閉弁バネ184により開閉弁182が開閉用孔181から離れて、この開閉弁182および開閉用シャフト186が押し上がるように、プランジャー173および開閉用シャフト操作部188が進出位置に移動し、逆に図18に示す開閉用ソレノイド172の通電状態では、開閉弁バネ184の付勢に抗して、開閉用シャフト操作部188のカム面188Aが開閉用シャフト186ひいては開閉弁182を押下げ、それにより開閉弁182の下部が内蓋62の開閉用孔181を閉塞するように、プランジャー173および開閉用シャフト操作部188が後退位置に移動する。よって、開閉用ソレノイド172の通電状態では、蒸気口146に連通する開閉用孔181を開閉弁182が塞いで、鍋11内に圧力を投入できる状態にする。
【0069】
先に説明したように、調圧用ソレノイド82の周辺において、調圧フレーム152の前方には、調圧弁69を動かすための調圧操作部161が設けられる一方で、調圧フレーム152の後方には、突出した調圧フレームロック片163が設けられる。これと同様に、開閉用ソレノイド172の周辺において、開閉フレーム175の前方には、カム面188Aを有する開閉用シャフト操作部188が設けられ、開閉フレーム175の後方には、突出した開閉フレームロック片189が設けられる。そして、調圧用ソレノイド82のプランジャー151が後退位置にあるときには、クランプ34がクランプ受け38から係合解除する方向に動くのを規制するために、調圧フレームロック片163がクランプ34の基端部44Aの下方に潜り込むように配置されると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173が後退位置にあるときにも、開閉フレームロック片189がクランプ34の基端部44Aの下方に潜り込むように配置される。逆に、調圧用ソレノイド82のプランジャー151が進出位置にあるときには、調圧フレームロック片163がクランプ34の基端部34Aから離れると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173が進出位置にあるときにも、開閉フレームロック片189がクランプ34の基端部34Aから離れる。つまり、クランプ34の基端部34Aの下方に、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方またはどちらか一方が位置するときには、クランプ34の動作が規制され、クランプ34がクランプ受け38から係合解除できなくなるが、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ34の基端部34Aの下方から離れると、クランプ34の動作は規制されなくなり、蓋開ボタン32を押動操作すると、クランプ34がクランプ受け38から離脱して、蓋体21が開くようになっている。
【0070】
図19は、前記安全弁85の断面図である。この安全弁85は、内蓋62に形成した孔201の周辺に設けられ、この孔201の下側から取付けられるベース部材202と、孔201の上側から取付けられるキャップ部材203と、キャップ部材203内に設けられる開閉保持手段204と、孔201の内面とベース部材202との間を水密に封止する環状パッキン206とにより構成される。この中で、開閉保持部材204は、キャップ部材203内に上下動自在に設けられる弁体としての開閉手段207と、キャップ部材203および開閉手段207の間に介在する弾性部材208とを備えている。ベース部材202には、内蓋62の孔201ひいては安全弁85の内部から前記蒸気排出ユニット66に連通する開放部211が開口形成されていると共に、この開放部211を常時塞ぐように、開閉保持手段204を構成する弾性部材208が、開閉手段207を一方向に付勢するようになっている。
【0071】
次に制御系統について、図20を参照しながら説明する。同図において、111は加熱制御手段で、これは前記鍋温度センサ17および蓋温度センサ65からの各温度情報や、操作スイッチ103からの操作信号の他に、前記蓋開ボタン32に設けたホール素子42や、蓋体21の開閉を検知する別なホール素子191からの検知信号を受けて、炊飯時および保温時に鍋11の底部を加熱する加熱コイル16と、鍋11の側部を加熱するコードヒータ18と、蓋体21を加熱する蓋ヒータ36とを各々制御すると共に、前述した減圧ポンプ92や電磁弁95を各々制御するものである。ここで、ホール素子191を含む蓋開閉検知手段について説明すると、蓋体21には蓋体側検知部としてのマグネット(図示せず)を配置する。また、蓋体21を閉じたときにマグネットと上下で重なる位置に、前記ホール素子191を配置する。このホール素子191は、本体1の上枠2に配置される。ホール素子191を有する回路は本体側検知部として設けられ、前記マグネットと共に蓋体21の開閉を検知する蓋開閉検知手段を構成する。蓋開閉検知手段は、炊飯器の前方のクランプ34側に設けてもよいし、炊飯器の後方のヒンジ部28側に設けてもよい。これにより、マグネットからホール素子191に到達する磁界が、蓋体21の開閉に応じて変化するのを利用して、電気的に蓋21の開閉を検知することができる。なお、本実施例では、磁性材料となるマグネットと、ホール素子191を使用する構成となっているが、同様の機能を発揮できれば、代わりの電気的素子を用いてもよい。また、各種センサを採用してもよいし、機械的に蓋体21の開閉を検知する構成としてもよい。
【0072】
本実施例の加熱制御手段111は、鍋温度センサ17の検出温度に基づいて主に加熱コイル16が制御されて鍋11の底部を温度管理し、蓋温度センサ65の検出温度に基づいて主に蓋ヒータ26が制御されて放熱板24ひいては内蓋62を温度管理するようになっている。加熱制御手段111は、自身の記憶手段(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、炊飯時に前記鍋11内の被炊飯物を炊飯加熱する炊飯制御手段117と、保温時に鍋11内のご飯を所定の保温温度に保温加熱する保温制御手段118とをそれぞれ備えている。
【0073】
ここでの保温制御手段118はタイマー手段119を備えており、保温動作が開始するとタイマー手段119を起動させて保温経過時間を計時し、この保温経過時間が予め設定した時間(例えば1時間)に達したら、鍋11内の圧力が加圧状態からほぼ大気圧に戻り、且つ鍋11内の温度が保温温度にまで低下した、いわゆる保温が安定する状態と判断するようになっている。また、加熱制御手段11はその他に、操作スイッチ103からの予約炊飯開始の指令を受けて、予め記憶手段に記憶された所定時間に鍋11内の被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御手段117を制御する予約炊飯コースを実行可能な予約炊飯制御手段120を備えている。なお、前記所定時間は、操作スイッチ103の例えば時間キーや分キーを操作することで、適宜変更することができる。
【0074】
122は、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、加熱コイル16に所定の高周波電流を供給する高周波インバータ回路などを内蔵した加熱コイル駆動手段である。またこれとは別に、加熱制御手段111の出力側には、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、放熱板24や内蓋62を加熱するように蓋ヒータ36を駆動させる蓋ヒータ駆動手段123と、コードヒータ18をオンにするコードヒータ駆動手段124と、ソレノイド82,172を個々にオンまたはオフにするソレノイド駆動手段125と、減圧ポンプ92を駆動させるポンプ駆動手段126と、電磁弁89をオンまたはオフにする電磁弁駆動手段127と、前述したLED41やLCD102などを含む表示手段128を駆動させる表示駆動手段129が各々設けられる。前記炊飯制御手段117による炊飯時、および保温制御手段118による保温時には、鍋温度センサ17と蓋温度センサ65からの各温度検出により、加熱コイル16による鍋11の底部への加熱と、コードヒータ18による鍋11の側面への加熱と、蓋ヒータ36による蓋体21への加熱が行なわれるように構成する。また、前記炊飯制御手段117による炊飯が終了し、鍋11内の被調理物がご飯として炊き上がった後は、保温制御手段118による保温に自動的に移行し、鍋温度センサ17の検知温度に基づき、加熱コイル16やコードヒータ18による鍋11への加熱を調節することで、ご飯を所定の保温温度(約70℃〜76℃)に保温するように構成している。
【0075】
特に前記コードヒータ18による加熱について補足説明すると、炊飯後にご飯の温度が約100℃から約73℃の保温温度に低下するまでと、約73℃の保温安定時に、コードヒータ18を発熱させて、蓋体21と本体1との隙間の空間に金属板29から熱放射して、この隙間からの外気の侵入による冷えを抑制すると共に、鍋11のフランジ部14を加熱する。また、保温時にご飯を再加熱する期間にもコードヒータ18により鍋11のフランジ部14を加熱し、ご飯の加熱により発生する水分が鍋11の内面上部に結露することを防止するように構成している。
【0076】
さらに、本実施例における加熱制御手段111は、予約炊飯制御手段120による予約炊飯の待機時の炊飯が開始するまでの期間や、炊飯制御手段117が実質的な炊飯を開始するまでのひたし行程の期間や、保温制御手段118により前述した保温が安定する状態と判断した後で、鍋11内が大気圧より低くなるように、減圧ポンプ92や減圧状態保持用の電磁弁95を動作させる減圧制御手段130としての機能をも備えている。
【0077】
次に、上記構成について、その作用を図21および図22のタイミングチャートに基づき説明する。図21において、最上段およびその次の段にある各グラフは、鍋11内における圧力および温度の各推移を示し、以下、減圧選択スイッチの動作タイミングと、前記LCDによる減圧表示ランプの動作タイミングと、減圧ポンプ92の動作タイミングと、電磁弁95の動作タイミングとをそれぞれ示している(塗潰しの状態がオン)。また、図22において、最上段およびその次の段にある各グラフは、鍋11内における温度および圧力の各推移を示し、以下、調圧弁69(調圧用ソレノイド82)の動作タイミングと、開閉弁182(開閉用ソレノイド172)の動作タイミングとをそれぞれ示している(塗潰しの状態がオン)。
【0078】
炊飯や保温が行なわれていない切状態において、調圧用ソレノイド82と開閉用ソレノイド172は共に非通電(オフ)状態にある。このとき、調圧用ソレノイド82のプランジャー151は進出位置にあって、連通孔74が開放するように調圧弁69が移動すると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173も進出位置にあって、内蓋62の開閉用孔181が開放するように開閉弁182が上方に移動する。したがって、鍋11内は連通孔74および開閉用孔181を通して外部と連通し、大気圧に維持される。また、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ34の基端部34Aの下方から離れた位置にあるので、クランプ34の動作は規制されず、蓋開ボタン32を押動操作すれば、クランプ34がクランプ受け38から離脱する。すなわち切状態では、蓋体21を自由に開閉することができる。
【0079】
次に、予約炊飯時における動作を説明すると、操作スイッチ103の時間キーや分キーを操作することで、前記所定時間に相当する炊上がりの希望時刻を設定し、鍋11内に被炊飯物である米および水を入れて、その後で操作スイッチ103の別な例えばタイマースイッチを操作すると、予約炊飯制御手段120による予約炊飯コースが設定(セット)され、予約炊飯の待機状態に移行する。この予約炊飯コースでは、所定時間に鍋11内の被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御手段117を制御するが、予約炊飯の待機状態から実質的に炊飯が開始する時点までの間に、減圧制御手段130が動作して鍋11内の圧力が大気圧(1atm=1013hPa)よりも低くなるように、減圧ポンプ92や電磁弁95が制御される。
【0080】
具体的には、予約炊飯コースがセットされると、減圧制御手段130は炊飯が開始する直前まで減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128に表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。また、減圧制御手段130は、鍋11内から空気を排出するために、減圧ポンプ92を駆動させる信号をポンプ駆動手段126に出力すると共に、この減圧ポンプ92に同期して電磁弁95ひいては経路94を開放させる信号を電磁弁駆動手段127に出力する。その後、減圧制御手段130は減圧ポンプ92の駆動を停止させ、且つ電磁弁95ひいては経路94を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持する。
【0081】
予約炊飯の待機中は、加熱制御手段111がソレノイド82をオン状態(通電状態)にしているため、調圧弁69が連通孔74を塞ぐ位置に転動されているが、鍋11内には僅かではあるが空気が侵入し(スローリーク)、鍋11内の圧力が電磁弁95の閉塞時点から次第に上昇する。減圧制御手段130は、一定時間が経過すると、再び減圧ポンプ92を駆動させると共に、電磁弁95ひいては経路94を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、減圧ポンプ92と電磁弁95が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。なお、実質的な炊飯が開始した後の動作は、後述する通常の炊飯動作と共通しているので、ここでは省略する。
【0082】
こうして、予約炊飯コースが設定された後、炊飯が開始するまでの待機時間が長く設定された場合でも、鍋11内は減圧状態が維持される。また、この減圧時には、調圧弁69が第1調圧パッキン75に載置され、当該第1調圧パッキン75の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。そのため、鍋11内で雑菌が増殖したり、被炊飯物である米や水の腐敗が起こるのを効果的に防止できる。よって、最終的には炊上がり時に食味のよいご飯を得ることができる。また、この実施例では、予約炊飯の待機中の全期間に渡って、圧力制御手段130が鍋11内の圧力を減圧する制御を行なっているが、例えば予約炊飯コースが設定された後、所定の時間(例えば2時間)が経過したら、鍋11に対する減圧制御を行なうようにしてもよい。このように、予約炊飯の待機中の一定時間だけ、鍋11の圧力を大気圧よりも低くすることで、例えば炊飯開始までの待機時間がさほど長くないのに、鍋11内への減圧制御が強制的に行なわれて、減圧ポンプ92や電磁弁95を動作させるのに無駄な電力を消費する懸念を解消できる。
【0083】
次に、予約炊飯を行なわない通常の炊飯について、その動作を説明する。なお、前述した通り、予約炊飯コースにおける実質的な炊飯が開始した後の動作は、これから説明する通常炊飯の動作と共通している。
【0084】
鍋11内に被炊飯物である米および水を入れ、操作スイッチ103の例えば炊飯キーを操作すると、炊飯制御手段117による炊飯が開始する。ここで炊飯制御手段117は、実質的な炊飯を開始する前に、鍋11内の米に対する吸水を促進させるために、鍋温度センサ17による鍋11の底部の温度検知に基づいて、加熱コイル16とコードヒータ18で鍋11の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋11内の水温を約45〜60℃に15〜20分間保持するひたしを行なう。
【0085】
このひたし時には、減圧制御手段130が動作して鍋11内の圧力が大気圧よりも低くなるように、減圧ポンプ92や電磁弁95が制御される。具体的には、ひたし行程が開始すると、減圧制御手段130は実質的な炊飯が開始する直前まで減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128のLCDに表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。また、減圧制御手段130は、鍋11内から空気を排出するために、減圧ポンプ92を駆動させる信号をポンプ駆動手段126に出力すると共に、この減圧ポンプ92に同期して電磁弁95ひいては経路94を開放させる信号を電磁弁駆動手段127に出力する。その後、減圧制御手段130は減圧ポンプ92の駆動を停止させ、且つ電磁弁95ひいては経路94を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、所定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び減圧ポンプ92を所定時間駆動させると共に、電磁弁95ひいては経路94を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、減圧ポンプ92と電磁弁95が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
【0086】
また、鍋11内が大気圧以下のときには、調圧用ソレノイド82と開閉用ソレノイド172が共に通電(オン)状態になって、調圧用ソレノイド82のプランジャー151と開閉用ソレノイド172のプランジャー173が各々後退位置に移動する。これにより、調圧弁69が第1調圧パッキン75の孔71Aを塞ぎ、開閉弁96が内蓋62の開閉用孔181を塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。また、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ34の基端部34Aの下方に潜り込むので、クランプ34の回動が規制され、蓋開ボタン32を押動操作しようとしても、クランプ34とクランプ受け38との係合が二重にロックされ、蓋体21が開かないようになる。
【0087】
こうして、ひたし時には鍋11内は減圧状態が維持される。また、この減圧時には、調圧弁69が第1調圧パッキン75に載置され、当該第1調圧パッキン75の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。そのため、ひたし時に密閉状態で鍋11内を減圧することができ、鍋11内において米に水を十分に吸水させることが可能になる。
【0088】
その後、所定時間のひたしが終了すると、炊飯制御手段117は実質的な炊飯動作を開始すると共に、減圧制御手段130による鍋11への減圧制御は中断し、減圧選択スイッチはオフになると共に、LCDによる減圧状態である旨の表示も停止する。併せて、減圧ポンプ92および電磁弁95は、その後の保温が安定した状態になるまでオフ状態となる。また、炊飯制御手段11は、調圧弁69を連通孔74から退避させる。これにより鍋11はほぼ大気圧に維持されるが、開閉用ソレノイド172は引き続きオン状態にあり、開閉フレームロック片189がクランプ34の基端部34Aの下方に位置して、蓋体21を開けることができないようになっている。
【0089】
鍋11内の沸騰状態を検知すると、炊き上げ(沸騰継続加熱)とむらしが続けて行なわれるが、むらしの途中までは鍋11内を大気圧以上にするために、炊飯制御手段117は減圧手段91の作動を停止させつつ、調圧用ソレノイド82をオン状態にし、調圧弁69により連通口70を閉塞する。これにより、鍋11内と外部との連通は遮断される。また、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ34の基端部44Aの下方に潜り込むので、クランプ34とクランプ受け38との係合が二重にロックされ、蓋体21を開けることはできない。
【0090】
炊飯行程に移行すると、炊飯制御手段117は加熱コイル16により鍋11を強加熱し、被炊飯物への沸騰加熱を行なう。この沸騰加熱時に鍋11の底部の温度が90℃以上になり、蓋体21の温度が90℃以上で安定したら、鍋11内が沸騰状態になったものとして、それまでよりも加熱量を低減した沸騰継続加熱に移行する。沸騰加熱の途中で、炊飯制御手段117はソレノイド82をオフ状態にして、調圧弁69を連通口70から退避させる。これにより、調圧部64は密閉せずに鍋11の内外を連通させた開放状態となり、鍋11はほぼ大気圧に維持される。一方、開閉用ソレノイド172は引き続きオン状態にあり、開閉フレームロック片189がクランプ34の基端部44Aの下方に位置して、蓋体21を開けることができないようになっている。なお、上述の蓋体21の温度が90℃以上で安定したことは、蓋温度センサ65からの検出温度の温度上昇率により検知される。また、この沸騰検知において、鍋温度センサ17と蓋温度センサ65とにより、鍋11の底部および蓋体21がいずれも90℃以上になったことを確認でき、完全に鍋11内が沸騰したことを精度よく検知できる。
【0091】
また、前記鍋11の底部,鍋11の側面部または蓋体21のいずれかが120℃以上の通常ではあり得ない検知温度になったら、加熱制御手段111は何らかの異常があると判断して炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、後述するむらしに移行するか、保温を行ない、異常加熱を防止する。逆に、前記鍋11の底部または蓋体21のいずれかが90℃以上になって所定時間(例えば5分)経過しているのに、それ以外の鍋11の底部または蓋体21のいずれかが90℃未満で低い状態の場合、この温度の低い状態の鍋温度センサ17または蓋温度センサ65が、何らかの理由(汚れや傾きや接触不良など)で温度検知精度が悪化していると判断し、同様に炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、むらしに移行するか、保温を行ない、これに対処する。
【0092】
鍋11内の沸騰状態を検知すると、炊き上げ(沸騰継続加熱)とむらしが続けて行なわれるが、むらしの途中までは鍋11内を大気圧以上にするために、炊飯制御手段117は減圧手段91の作動を停止させつつ、調圧用ソレノイド82をオン状態にし、調圧弁69により連通孔74を閉塞する。これにより、鍋11内と外部との連通は遮断される。また、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ34の基端部44Aの下方に潜り込むので、クランプ34とクランプ受け38との係合が二重にロックされ、蓋体21を開けることはできない。
【0093】
また、沸騰継続に移行すると、炊飯制御手段117は蓋ヒータ36による蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋62の温度が100〜110℃になるように、蓋温度センサ65の検知温度により管理される。また沸騰継続加熱に移行したら、炊飯制御手段117はソレノイド82を周期的にオン・オフさせる。この沸騰継続加熱では、操作スイッチ103により選択したメニューに応じて、ソレノイド82の通断電タイミングを変えるのが好ましい。これにより、鍋11に通じる調圧部64の密閉度を、選択したメニューに応じて最適なものに可変することができる。
【0094】
そして、鍋11の底部が所定の温度上昇を生じたら、鍋11内の炊上がりを検知して、炊飯制御手段117による炊飯行程を終了し、保温制御手段118により保温行程に移行して、最初のむらしに移行する。むらし中は蓋温度センサ65の検出温度による温度管理によって蓋ヒータ36を通断電し、内蓋62への露付きを防止すると共に、ご飯が焦げない程度に高温(98〜100℃)が保持されるように、鍋11の底部の温度を管理する。むらしは所定時間(15〜20分)続けられ、むらしが終了したら保温制御手段118による保温に移行する。
【0095】
また、むらしに移行すると、その後の保温開始直後に蓋体21が開けられることを考慮して、鍋11内を徐々に大気圧に戻す動作が行なわれる。そして保温制御手段118は、むらしの途中で調圧用ソレノイド82を先にオン状態からオフ状態に切り換えて、調圧弁69を連通孔74から退避させ、その後で所定時間が経過してから、開閉用ソレノイド172をオン状態からオフ状態に切り換える。こうすれば、少なくとも連通孔74を開放した後も、開閉用ソレノイド172がオフ状態になるまでは、蓋体21を開けることができなくなり、鍋11内が大気圧に戻りきらないうちに、不用意に蓋体21が開くのを防止できる。
【0096】
保温行程に移行した直後は、鍋11内が連通孔74および開閉用孔181を通して外部と連通し、大気圧に維持される。それと共に、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ34の基端部44Aの下方から離れた位置にあるので、蓋体21を自由に開閉することができる。
【0097】
その後、前記実施例でも説明したように、保温制御手段118は保温経過時間が予め設定した時間に達すると、減圧制御手段130により鍋11内の圧力が大気圧よりも低くなるように、減圧ポンプ92や電磁弁95が再び作動制御する。それと共に、鍋11内を密閉状態にするために、調圧用ソレノイド82と開閉用ソレノイド172を同時にオン状態にする。これにより、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ34の基端部34Aの下方に潜り込んで、クランプ34の回動が規制される。なお、こうした動作は、保温行程の所定時間後ではなく、保温行程で鍋11内が所定温度に到達したのを鍋温度センサ17が検出したときに、行なわれるようにしてもよい。
【0098】
また保温になると、加熱コイル16にて鍋11の底部と側面下部を加熱すると共に、鍋11内に収容するご飯の温度よりも僅かに高く、蓋ヒータ36により蓋体21の下面を加熱し、さらに鍋11の側面をコードヒータ18でご飯が乾燥せず、かつ露が多量に付着しないように温度管理する。鍋11内のご飯の温度は70〜76℃に温度保持されるが、この保温時においても、鍋温度センサ17や蓋温度センサ65が相互に異常に高かったり、あるいは異常に低かったりした場合には、異常を検知してこの異常加熱を防止する。
【0099】
保温行程に移行すると、保温制御手段118は前記ホール素子42,191からの検知信号を受け付ける。すなわち、図4Aに示すように、鍋11内を減圧状態にする減圧手段91の作動制御中であって、調圧用ソレノイド82と開閉用ソレノイド172が同時にオンしている状態で、使用者が蓋体21を開けようと意図して蓋開ボタン32を押動操作しようとすると、クランプ34の基端部34Aが調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189に当たって、その回動を規制されてはいるものの、蓋開ボタン32がクランプ34の弾性などにより若干下方に押し込まれ、ホール素子42がマグネット44から離れた位置に移動する(図4B)。このときのホール素子42からの検知信号を保温制御手段118が受けると、調圧用ソレノイド82と開閉用ソレノイド172は連動してオフ状態になり、双方のプランジャー151,173が進出して、連通孔74および開閉用孔181を開放すると共に、クランプ34に対する調圧フレームロック片163や開閉フレームロック片189の回動規制も解除され、蓋開ボタン32を再度押すことで、クランプ34とクランプ受け38との係合を解除して、蓋体21を開けることができるようになる。
【0100】
蓋体21が開くと、蓋開閉検知手段のホール素子191がマグネットから離れ、それに応じた信号がホール素子191から加熱制御手段111に出力される。これにより加熱制御手段111を構成する減圧制御手段130は、蓋体21が開いていることをホール素子191からの検知信号で判断している間は、減圧手段91を駆動させる信号は出力されない。
【0101】
その後、鍋11内から炊き上がったご飯を取り出すなどして、蓋体21を再度閉じると、ホール素子191とマグネットとの距離が所定値以下となり、それに応じた信号をホール素子191から加熱制御手段111に送出する。これを受けて減圧制御手段130と保温制御手段118は、蓋体21が閉じていることをホール素子191からの検知信号で判断している間は、所定時間後に再び減圧手段91を作動させ、且つ不用意に蓋体21が開かないように、調圧用ソレノイド82と開閉用ソレノイド172を同時にオン状態にする。
【0102】
加熱制御手段111は、所定の行程である保温中にのみ、ホール素子191からの信号を読取っている。この場合、加熱制御手段111はホール素子191からの信号を受け付けるものの、その受け付けた信号を利用して制御を行なうことはしない。こうすることで、加熱制御手段111としてのソフトウェア上の構成を簡素化することができる。また、保温以外の行程で、加熱制御手段111がホール素子191からの信号を読取ってもよい。
【0103】
また、前記むらしや保温行程中において、減圧手段91が作動し、鍋11内が大気圧以下のときには、LED142を連続点灯させる制御信号を、加熱制御手段111が表示駆動手段129に送出する。これにより使用者は、鍋11内が減圧中であることにより、蓋体21と本体1が係合ロックされていることを直ぐに認識できる。また、蓋開ボタン32を押動操作しようと意図してから、実際に蓋体21を開放できるまでには、若干のタイムラグがあるので、蓋体21のクランプ34と本体1のクランプ受け38との係合を解除しようと意図したときの検知信号をホール素子42が出力すると、LED142が点滅動作に切り替わり、その後所定時間が経過したら、LED142を自動的に消灯させるようにすれば、何故直ぐに蓋体21が開かないのかを使用者に理解させることができる。
【0104】
このように、クランプ34とクランプ受け38との係合が解除しようとしたときの動作を、蓋開スイッチ32の変化として検知手段45が検知すると、阻害手段121によるクランプ34への移動の阻害が解除され、蓋体21を本体1から開けることができるようになる。そのため、意図しない蓋開スイッチ32への操作では、これを蓋開スイッチ32の変化として検知手段45が検知できず、不意に蓋体21が開くのを防ぐことができる。また、クランプ34そのものではなく、蓋体21の開閉を操作するための蓋開スイッチ32の変化を検知することで、より少ない動作(軽い操作力)でクランプ34とクランプ受け38との係合を解除可能にすることができる。
【0105】
次に、減圧ポンプ92周辺の構造に関連した別な変形例を図23〜図25にそれぞれ示す。これらの各図において、前述したポンプカバー105とポンプケースカバー106は減圧ポンプ92の存在感を主張するために、敢えて半透明材料で、外蓋22とは別体に設けられている。また、特に減圧ポンプ92の上部を直接覆うポンプケースカバー106は、メッキ処理やロゴによる表示部(図示せず)を設けることで、高級感をユーザに演出している。
【0106】
ポンプカバー105の端縁は、蓋体21側に向けて折り曲げられた差込み部105Aが形成される。同様に、ポンプケースカバー106の端縁にも、蓋体21側に向けて折り曲げられた差込み部106Aが形成される。これらの差込み部105A,106Aは、外蓋22に形成した断面コ字状の嵌入溝221に共に嵌入され、ポンプカバー105やポンプケースカバー106と外蓋22との取付け固定が図られる。
【0107】
外蓋22には、ポンプカバー105の端縁外周囲に位置して溝222が形成される。この溝222は、ポンプカバー105の取付け部である嵌入溝221の外方に並んで設けられ、蒸気排出ユニット66から流出したおねばなどがポンプカバー105に到達しない形状になっている。また、嵌入溝221と溝222を別々に設けるために、嵌入溝221と溝222との間には、蓋体21ひいては外蓋22の周囲表面よりも一段高い凸部223が形成される。このように形成することで、溝222に達したおねばなどの異物が、そのまま嵌入溝221に到達することなく凸部223で遮断され、溝222から蓋体21の外部に排出される。
【0108】
このように、図23〜図25の変形例では、鍋11を備えた本体1と、本体1を覆う蓋体21と、本体1内を大気圧未満にする調圧手段としての減圧手段91を備えた炊飯器において、蓋体21に配置した減圧手段91の減圧ポンプ92を覆うように、カバーとしてのポンプカバー105を設け、このポンプカバー105の周囲に位置して、蓋体21に溝部たる溝222を形成している。こうすると、蓋体21に配置した減圧ポンプ92を覆うようにポンプカバー105を設けることで、例えばポンプカバー105を半透明材料で形成すれば、ユーザに減圧ポンプ92の存在感を目視で主張できる。また、例えば炊飯器外部からの水や蒸気排出ユニット66から流出したおねばなどが、ポンプカバー105の周囲に位置する蓋体21に到達しても、そこには異物を回収する溝222が形成されていて、蓋体21の外部に排出される。したがって、わざわざシール部材などを別に設けなくても、蓋体21とポンプカバー105との間からの異物の侵入を防止できる。
【0109】
また、蓋体21にポンプカバー105との取付部である嵌入溝221を設け、この嵌入溝221に蓋体21の表面より突出した凸部223を形成している。こうすると、蓋体21に設けたポンプカバー105との取付部である嵌入溝221が、その周囲にある蓋体21の表面より一段高く凸部223として形成されているので、この凸部223によって、蓋体21とポンプカバー105との間からの異物の侵入を確実に防ぐことが可能になる。
【0110】
次に、外蓋22とポンプカバー105の製造上の特徴について、図26〜図29を参照しながら説明する。図26は、外蓋22にポンプカバー105を取付けた状態を示しているが、ポンプカバー105はこれまで説明してきたように、外蓋22と別部品で構成され、ポンプカバー105の取付け部に相当する外蓋22の溝222とポンプケースカバー106の差込み部106Aとの間に、その差込み部105Aを差込むことで、外蓋22の表面側から取付け固定がなされる。また図27に示すように、ポンプカバー105には必要に応じて外蓋22に嵌合する嵌合爪225が設けられる。したがって、この場合の外蓋22には、ポンプカバー105を装着するための取付け孔226を形成する必要がある。
【0111】
一方図28のように、製品のラインナップ上、外蓋22とポンプカバー105とを一体にしたものも製造上必要となる。この場合、外蓋22には前述のような取付け孔226は存在しない。
【0112】
図29は、取付け孔226が存在する場合の外蓋22(上段)と、取付け孔226が存在しない場合の外蓋22(下段)を製造する際の金型断面を示したものである。同図において、231は双方の外蓋22で共通して使用するコア(固定)側金型,232は双方の外蓋22で共通して使用するキャビ(可動)側金型である。これらの各金型231,232は、双方の外蓋22で共通する部分に対応して設けられている。一方、双方の外蓋22で異なる部分には、上段の外蓋22を製造する場合に使用するコア側金型233およびキャビ側金型234と、下段の外蓋22を製造する場合に使用するコア側金型235とキャビ側金型236の何れか一方が、交換可能に設けられる。
【0113】
そして、図29の上段に示す取付け孔226が存在する場合の外蓋22を製造する場合には、コア側金型231,233とキャビ側金型232,234とを用い、これらのコア側金型231,233およびキャビ側金型232,234の間に形成される隙間241に溶融した樹脂を注入することで、別体のポンプカバー105が取付けられる形状の外蓋22を得る。一方、図29の下段に示すような、取付け孔226が存在しない外蓋22を製造する場合には、コア側金型231,235とキャビ側金型232,236とを用い、これらのコア側金型231,235およびキャビ側金型232,236の間に形成される隙間241に溶融した樹脂を注入することで、ポンプカバー105が一体の外蓋22を得る。こうして、外蓋22の成形金型の一部だけを組替えるだけで、ポンプカバー105が一体または別体の外蓋22を製造することが可能になる。
【0114】
因みに、外蓋22の外面に接する共通のキャビ側金型232と、交換可能なキャビ側金型234,236の境界面242は、前述した嵌入溝221に相当する部位に設けることが好ましい。こうすると、キャビ側金型234,236を交換する際に、境界面242によって外蓋22に形成される入れ子線を、ポンプカバー105の組込み時に差込み部105Aで隠すことができる。
【0115】
こうして、蓋体21を成形する金型の一部(コア側金型233,235およびキャビ側金型234,236)を組み替えて、ポンプカバー105を蓋体21と一体に形成すれば、ポンプカバー105が蓋体21と別体または一体となる部分で、コア側金型233,235およびキャビ側金型234,236の何れかを組み替え、他の蓋体21の部分を共通の金型(コア側金型231,キャビ側金型232)とすることにより、ポンプカバー105が別体で装着される蓋体21と、ポンプカバー105が最初から一体化された蓋体21とを、金型の一部を組み替えるだけで製造することができる。そのため、ポンプカバー105が別体または一体の蓋体21をそれぞれ製造するに際し、金型費の発生を抑制すると共に、作業時間を低減することが可能になる。
【0116】
図30および図31は、調整手段である調圧部64の別な変形例を示したものである。ここでの調圧部64は、調圧部64の調圧弁カバー71を内蓋62に係合させるための嵌合部材251が付加される。嵌合部材251は弾性を有する線状体からなり、調圧弁カバー71の側部に形成した環状溝部71Aに嵌合するリング状の固定部252と、この固定部252の両端から屈曲して形成され、調圧弁カバー71の挿通孔71Bに挿通される引掛け部253とにより構成される。また調圧弁カバー71には、嵌合部材251を装着したときに容易に弾性変形して、第1ホルダー72に係合し易いように、切れ目部となるスリット71Cが形成される。スリット71Cの形状などは特に限定されるものではなく、調圧弁カバー71自体が比較的弾性に富む材料ならば、スリット71Cを設けなくてもよい。さらに、255はフィルター押えであり、それ例外の構成は、前述した基本構成の調圧部64と共通している。
【0117】
ここでは、予め内蓋62に装着された調圧弁ホルダー組立体70上に調圧弁69を保持した状態で、上方から調圧弁カバー71を被せた後に、嵌合部材251を調圧弁カバー71に取付ける。嵌合部材251の固定部252を調圧弁カバー71の環状溝部71Aに嵌合させながら、引掛け部253を調圧弁カバー71の挿通孔71Bに差し込むと、嵌合部材251の弾性力が作用して、調圧弁カバー71が調圧弁ホルダー組立体70を締め付ける方向に弾性変形し、調圧弁カバー71を調圧弁ホルダー組立体70、ひいては内蓋62に係合させることができる。また、内蓋組立体61の細部を清掃する場合には、嵌合部材251を調圧弁カバー71から取外すだけで、調圧弁カバー71に対する弾性力が作用しなくなって、調圧弁カバー71を調圧弁ホルダー組立体70から簡単に外すことが可能になる。したがって、この場合は調圧弁カバー71や、調圧弁69や、調圧弁ホルダー組立体70などを、個々に清掃することができる。
【0118】
このように、本例では、鍋11を備えた本体1と、本体1を覆う蓋体21と、蓋体21に着脱可能な内蓋62と、本体1内の圧力を調整する圧力調整手段たる調圧部64とを備えた炊飯器において、調圧部64を内蓋62に係合させる嵌合部材251を設けると共に、この嵌合部材251は、調圧部64を固定するための固定部252と、調圧部64の調圧弁カバー71に着脱自在に係合される引掛け部253とを形成している。この場合、調圧部64とは別の嵌合部材251を利用して、調圧部64を内蓋62に係合させることができるので、調圧部64と内蓋62との係合状態を損ねることなく、安定した状態で調圧部64を内蓋62に組み込むことができる。また引掛け部253を調圧弁カバー71に取付けまたは取外すだけで、調圧部64と内蓋62とを簡単に着脱することができ、組立て作業が容易になるだけでなく、ユーザが清掃しやすい炊飯器を提供できる。
【0119】
また、本例における嵌合部材251が弾性部材よりなるので、嵌合部材251が持つ弾性力を利用して、調圧部64を内蓋62に係合したままの状態にすることができる。
【0120】
また、ここでの調圧部64は、調圧弁69と、少なくともこの調圧弁69の保持部材である調圧弁ホルダー組立体70またはカバー部材としての調圧弁カバー71とにより構成され、調圧弁カバー71を固定部252で固定する構成となっている。このように、調圧部64の調圧弁カバー71を嵌合部材251の固定部252が固定する構造になっていると、調圧弁カバー71に例えば切れ目部であるスリット71Cを入れて若干の弾性を持たせることにより、従来の圧入による係合をやめて、ダメージを受けることなく調圧部64の調圧弁カバー71と内蓋62とを簡単に着脱することができる。
【0121】
図32および図33は、クランプ34と蓋開ボタン32が連動しない別な変形例を示すものである。この変形例において、蓋開ボタン32などを含む可動部組立体55は、蓋体21の外面に開口を有する凹部301に沿って、直線方向に上下動自在に設けられているが、上述した基本構成とは異なり、クランプ34の基端部34Aには取付け固定されてはおらず、蓋開ボタン32を押動操作した時に、基板ホルダー47の下面より突出する当接部47Aがクランプ34の基端部34Aに当接して、この基端部34Aを押し込めるような位置に設けられる。また、可動部組立体55の下側には、外蓋22にねじ302によって取付け固定された板状のボタン押え303が設けられ、このボタン押え302と可動部組立体55とに間にクランプバネ304を介在させることで、蓋開ボタン32が外蓋32の表面から突出する方向に、可動部組立体55を常時付勢している。なお、その他の各部の構成は、上述した基本構成と共通している。
【0122】
そしてこの変形例では、鍋11内を減圧状態にする減圧手段91の作動制御中で、且つ調圧用ソレノイド82と開閉用ソレノイド172が同時にオンしている状態で、使用者が蓋体21を開けようと意図して、クランプバネ304の付勢に抗して蓋開ボタン32を押動操作しようとすると、蓋開ボタン32を含む可動部組立体55が凹部301に沿って直線状に押し込まれることにより、基板43に取付けたホール素子42がマグネット44から離れた位置に移動する。このときのホール素子42からの検知信号を保温制御手段118が受けると、調圧用ソレノイド82と開閉用ソレノイド172は連動してオフ状態になり、双方のプランジャー151,173が進出して、連通孔74および開閉用孔181を開放すると共に、クランプ34に対する調圧フレームロック片163や開閉フレームロック片189の回動規制も解除される。
【0123】
ここで、蓋開ボタン32を再度操作すると、今度は基板ホルダー47の当接部47Aがクランプ34の基端部34Aに当接し、クランプバネ304やクランプ付勢手段36の付勢に抗して、クランプシャフト35を中心軸としてクランプ34が回動する。その結果、クランプ34とクランプ受け38との係合が解除され、蓋体21を開けることができるようになる。蓋体21の内部において、クランプシャフト35に軸支されるクランプ34は回転動作するが、蓋開ボタン32はクランプ34とは別に直線状に上下動するため、クランプ34を所定の位置にまで回動させるための蓋開ボタン32の動作を、従来よりも少ない距離に止めることができ、開閉手段が必要以上に沈み込み過ぎる弊害を一掃できる。
【0124】
このように本変形例では、鍋11と、鍋11を備えた本体1と、本体1を覆う蓋体21と、本体1と蓋体21における所定の閉状態を保持する保持手段としてのクランプ34およびクランプ受け38と、クランプ34の所定方向である解除方向への移動を阻害する阻害手段121と、阻害手段121の動きを調整する調整手段とを設け、この調整手段は、本体1と蓋体21の閉状態を解除する方向にクランプ34を動作させる操作手段としての蓋開スイッチ32と、この蓋開スイッチ32の変化を検知する検知手段45と、検知手段45からの検知出力を受けて阻害手段121を動作させる制御部としての加熱制御手段111とにより構成され、蓋開スイッチ32を操作したときの変化を検知手段45が検知して、調整手段が阻害手段121を動かし、クランプ34の保持状態を解除するように構成したものにおいて、蓋開スイッチ32を蓋体21に対して直線方向に動く上下動可能に配置すると共に、本体1内の鍋11が大気圧未満の状態で蓋開スイッチ32を操作すると、検知手段45からの検知信号によって阻害手段121を動かし、次の操作でクランプ34の保持状態を解除する構成となっている。
【0125】
こうすると、蓋体21の内部でクランプ34が軸支されていたとしても、蓋開スイッチ32はこれに連動せず、直線的に上下動する構造であるため、蓋開スイッチ32が必要以上に沈み込み過ぎることはなく、また蓋体21と蓋開スイッチ32との隙間から製品の内部が見えるような不具合を回避できる。しかも、本体1内の鍋11が大気圧未満の状態で、クランプ34の保持状態を解除する操作を、最初に蓋体21を開けようとして操作する同じ蓋開スイッチ32で行なうことができ、蓋体21を開ける際に別な操作手段を必要とせず、操作性を向上できる。
【0126】
また、クランプ34とクランプ受け38との保持状態を解除しようとしたときの動作を、蓋開スイッチ32の変化として検知手段45が検知すると、阻害手段121によるクランプ34への移動の阻害が解除され、蓋体21を本体1から開けることができるようになる。そのため、意図しない蓋開スイッチ32への操作では、これを蓋開スイッチ32の変化として検知手段45が検知できず、不意に蓋体21が開くのを防ぐことができる。しかも、クランプ34そのものではなく、蓋体21の開閉を操作するための蓋開スイッチ32の変化を検知することで、より少ない動作(軽い操作力)でクランプ34とクランプ受け38との保持状態を解除可能にすることができる。
【0127】
ここで、検知手段45としては磁性材料であるマグネット44を用いるのが好ましい。検知手段として磁性材料であるマグネット44を用いることで、蓋開スイッチ32の操作の有無を検知する際に、当該蓋開スイッチ32の動作距離ひいては沈み込みを少なくすることができ、検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0128】
また、検知手段45は蓋開スイッチ32を配置した蓋体21に設けられる。検知手段45を蓋体21に設けることで、基準となる蓋体21と蓋開スイッチ32との相対的な位置の変化を、検知手段45により検知することが可能となり、検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0129】
図34および図35は、検知手段45の取付け位置を調整可能とした変形例を示している。ここでは一定の磁力線を発生するマグネット44が、樹脂製のマグネットホルダ321を介して、蓋体21に対して位置調整可能なように取付けられている。より具体的には、マグネットホルダ321は断面クランク状をなし、その先端部322上面にマグネット44が取付けられる一方で、基端部323には止め具であるねじ324を挿通する孔325と、下方に突出したリブ326が形成される。そして、このマグネット44に対向するように、蓋開ボタン32と連動するホール素子42が設けされる。ホール素子42は、基板ホルダー47と基板カバー48との収容空間内において、基板43に実装される点は前述した通りである。
【0130】
前記クランプ34の回転軸となるクランプシャフト35を回動自在に軸支する蓋補強板99には、ねじ324とナット327を用いてマグネットホルダ321を取付け可能にする長孔331と、この長孔331と平行に形成され、リブ326が挿入されるガイド孔332がそれぞれ設けられる。リブ326とガイド孔332は、マグネットホルダ321を取付けた時のがたつきを防止するためのもので、マグネットホルダ321の取付け孔を一定の長さの長孔331とすることにより、マグネットホルダ321を長孔331に沿って任意の位置に取付けることが可能になる。つまり、ここでのマグネットホルダ321と長孔331は、マグネット44の取付け位置を可変する取付部341に相当する。そのため、製品毎に部品寸法のバラツキや組立によるバラツキがあっても、長孔331を利用してマグネットホルダ321の取付け位置を調整することにより、蓋開ボタン32が同じ位置に達した段階で、検知手段45が正しく蓋開ボタン32を操作したことを検知できる。また、製品の故障などにより、別なサービス部品に取り替えた場合にも、長孔331を利用してマグネットホルダ321の取付け位置を調整すれば、引き続き検知手段45が、蓋開ボタン32の操作の有無を正しく検知できる。
【0131】
なお、長孔331は直線状に形成する必要はなく、例えば湾曲状に形成してもよい。また、蓋開ボタン32が設けられる蓋体21の他の部位に、長孔331やガイド孔332を取付けてもよい。さらに、検知手段45として、マグネット44ではなくホール素子42の取付け位置を調整できる機構としてもよい。
【0132】
この変形例では、鍋11と、鍋11を備えた本体1と、本体1を覆う蓋体21と、本体1と蓋体21の所定の閉状態を保持する保持手段としてのクランプ34およびクランプ受け38と、クランプ34の所定方向である解除方向への移動を阻害する阻害手段121と、阻害手段121の動きを調整する調整手段とを設け、この調整手段は、本体1と蓋体21の閉状態を解除する方向にクランプ34を動作させる蓋開スイッチ32と、この蓋開スイッチ32の変化を検知する検知手段45と、検知手段45からの検知出力を受けて阻害手段121を動作させる制御部としての加熱制御手段111とにより構成され、蓋開スイッチ32を操作したときの変化を検知手段45が検知して、調整手段が阻害手段121を動かし、クランプ34の保持状態を解除するように構成したものにおいて、検知手段45の取付け位置を調節可能にする検知手段取付部としての取付部341を設けている。
【0133】
こうすると、部品や組立のバラツキなどに応じて、検知手段45のマグネット44をその都度の別な位置に取付けることが可能になり、検知手段45の検知性能を維持することができる。
【0134】
また、別な例として、図36にはマグネットホルダ321の基端部323に例えば三角形状に突出した指示部328を形成すると共に、この指示部328に対向して、マグネットホルダ321の取付け位置を目視できるようにする目盛329を、蓋補強板99に一定間隔毎に形成している。さらにここでは、長孔331およびガイド孔332に沿って形成した目盛329の中央部付近に、マグネット44ひいてはマグネットホルダ321の基準となる取付け位置を示す目印330を設けている。こうした目盛329や目印330は、刻印による凹部,孔または線を形成することで達成できる。
【0135】
このように、図36の例では、取付部341として、マグネット44の基準となる取付け位置に目印330を設けているので、製造時において、通常は基準となる目印330に指示部328を一致させて、マグネット44ひいてはマグネットホルダ321を取付け、そこから必要に応じてマグネット44の取付け位置を調節すればよく、生産スピードを落とさずマグネット44の取付け作業を行なうことができる。またこうした取付け作業で、検知手段45が正しく検知しない場合には、調整用の目盛329を利用して、マグネット44ひいてはマグネットホルダ321の取付け位置を変更することで、的確に取付け位置を調整することができる。
【0136】
また、マグネット44は、クランプ34を配置した蓋体21に設けられている。マグネット44を蓋体21に設けることで、基準となる蓋体21と蓋開スイッチ32との相対的な位置の変化を、マグネット44により正しく検知することが可能となり、検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0137】
また、検知手段45として磁性材料としてのマグネット44を用いることで、蓋開スイッチ32の操作の有無を検知する際に、当該蓋開スイッチ32の動作距離を少なくすることができ、検知精度の向上を図ることが可能になる。
【0138】
さらにここでは、本体1が大気圧未満の状態で蓋開スイッチ32を操作すると、調整手段が阻害手段121を動かし、次の操作でクランプ34の保持状態を解除する構成となっている。つまり、本体1が大気圧未満の状態で、クランプ34の保持状態を解除する操作を蓋開スイッチ32で行なうことができ、蓋体21を開ける際に別な操作手段を必要とせず、操作性を向上できる。
【0139】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【符号の説明】
【0140】
1 本体
21 蓋体
32 蓋開ボタン(操作手段,調整手段)
34 クランプ(保持手段)
38 クランプ受け(保持手段)
44 マグネット(磁性材料)
45 検知手段
121 阻害手段
330 目印
341 取付部(検知手段取付部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、蓋体と、前記本体と前記蓋体の所定状態を保持する保持手段と、前記保持手段の所定方向への移動を阻害する阻害手段と、前記阻害手段の動きを調整する調整手段とを設け、
前記調整手段は、前記保持手段を動作させる操作手段と、この操作手段の変化を検知する検知手段とにより構成され、
前記調整手段が前記阻害手段を動かし、前記保持手段の保持状態を解除するように構成した炊飯器において、
前記操作手段を上下動可能に配置すると共に、
大気圧未満の状態で前記操作手段を操作すると、前記調整手段が前記阻害手段を動かし、次の操作で前記保持手段の保持状態を解除する構成としたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記検知手段は磁性材料を用いたことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記検知手段は、前記操作手段を配置した前記蓋体に設けられることを特徴とする請求項1または2記載の炊飯器。
【請求項4】
本体と、蓋体と、前記本体と前記蓋体の所定状態を保持する保持手段と、前記保持手段の所定方向への移動を阻害する阻害手段と、前記阻害手段の動きを調整する調整手段とを設け、
前記調整手段は、前記保持手段を動作させる操作手段と、この操作手段の変化を検知する検知手段とにより構成され、
前記調整手段が前記阻害手段を動かし、前記保持手段の保持状態を解除するように構成した炊飯器において、
前記検知手段の取付け位置を調節可能にする検知手段取付部を設けたことを特徴とする炊飯器。
【請求項5】
前記検知手段取付部は、基準となる取付け位置に目印を設けたことを特徴とする請求項4記載の炊飯器。
【請求項6】
前記検知手段は、前記保持手段を配置した前記蓋体に設けられることを特徴とする請求項4または5記載の炊飯器。
【請求項7】
前記検知手段は磁性材料を用いたことを特徴とする請求項4〜6の何れか一つに記載の炊飯器。
【請求項8】
大気圧未満の状態で前記操作手段を操作すると、前記調整手段が前記阻害手段を動かし、次の操作で前記保持手段の保持状態を解除する構成としたことを特徴とする請求項4〜7の何れか一つに記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−78657(P2013−78657A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−10611(P2013−10611)
【出願日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【分割の表示】特願2011−98338(P2011−98338)の分割
【原出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)
【Fターム(参考)】