説明

炎感知器及び炎判定方法

【課題】炎とアーク溶接光の識別性を高め、アーク溶接光により誤作動することなく確実に炎を識別して火災発報することを可能とする。
【解決手段】第1光学フィルタ14aにより有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光を選択透過し、第1受光素子16aで電気信号に変換して4.5μm受光信号e1を出力する。第2光学フィルタ14aによりアーク溶接光に含まれる0.7〜1.0μmの近赤外波長帯域の光を透過し、第2受光素子16bで電気信号に変換して近赤外受光信号e2を出力する。炎判定部26は4.5μm受光信号e1と所定時間Td遅延して時間ずれを補正した近赤外受光信号e2に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定し、炎の存在を判定した場合に発報回路28を作動して火災発報信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災に伴う炎を検知して発報する炎感知器及び炎判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有炎燃焼により発生する赤外線放射を検出して、炎の有無を検出する炎感知器にあっては、炎と炎以外の赤外線放射体との識別を行うため、有炎燃焼時に発生するCO2の共鳴放射による波長帯域を含む複数の波長帯域における放射強度を検出して、それら複数の波長帯域における検出値の相対比により炎の有無を検出する2波長式、3波長式等の炎検出装置や炎検出方法がよく知られている。
【0003】
従来技術の2波長式や3波長式の炎感知器の検出原理は次のようになる。燃焼炎においては、CO2の共鳴放射により4.5μm付近の波長帯域に放射強度のピークがあり、また、このピーク波長の近傍に存在する特徴的な波長としては、例えば、短波長側の3.8μm付近や長波長側の5.1μmに、放射強度が低い波長帯域が存在する。
【0004】
なお、放射源としての炎はCO2の共鳴放射により、4.3μm帯に赤外線の放射強度のピークがあることが知られている。しかしながら、炎感知器は放射源から離れた位置で炎からの放射エネルギーを検知しており、このため炎感知器の設置場所で実際に測定した場合にあっては、4.5μm付近に放射強度のピークが現れることが経験的に示されている。したがって、以下では、特に断らない限り、CO2共鳴放射帯とは、4.5μm帯を指すものとする。
【0005】
このため2波長式の炎感知器にあっては、4.5μm付近の波長帯域と、例えば3.8μm付近の波長帯域における各々の放射エネルギーを狭帯域の光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光素子により該放射エネルギーを検出して対応する電気信号に変換し、それぞれの検出出力の相対比をとり、所定の閾値と比較することにより炎と判定する。これにより、炎以外の赤外線放射体、例えば、太陽光等の高温放射体や、300°C程度の比較的低温の放射体、人体などの低温放射体等との識別が可能となる。
【0006】
また3波長式の炎感知器にあっては、上述した2波長に加え、CO2の共鳴放射帯である4.5μm帯の長波長側の、例えば、5.1μm付近の波長帯域における放射エネルギーを、上記2波長式と同様の手法で検出し、これらの3波長帯域における検出出力の相対比によって炎の有無を判定しており、このような炎検出方法により、炎と炎以外の赤外線放射体との識別性能をさらに向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭55−33119号公報
【特許文献2】特公昭59−34252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の炎感知器を工場等に設置していた場合に、アーク溶接作業により炎感知器が誤作動してしまう問題がある。
【0009】
これはアーク溶接の溶接光には、有炎燃焼時に発生するCO2の共鳴放射による4.5μm付近の赤外線が含まれていることによる。例えばアーク溶接に使用する溶接棒の被覆には、でんぷんなどの有機物が成分として含まれており、有機物が燃焼することで4.5μm付近の赤外線が放射CO2の共鳴放射により出ているほか、高温となっている溶接部位から黒体放射によっても出ており、従来の炎感知器では判別が難しく、アーク溶接光により誤作動するという問題がある。
【0010】
この問題を解決するため本願出願人にあっては、有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光による第1受光信号を検出すると共に、アーク溶接光により放射される、0.7〜1.0μm付近の波長帯域の近赤外線の光による第2受光信号を検出し、第1受光信号と第2受光信号の相対比に基づいて炎とアーク溶接光の放射線源とを識別判定するようにした炎感知器を提案している。
【0011】
しかしながら、このような炎感知器にあっても、タイミングによってはアーク溶接光を火災による炎と誤って認識してしまう可能性があり、その原因の究明による更なる改良を必要としている。
【0012】
本発明は、炎とアーク溶接光との識別性を高め、アーク溶接光により誤作動することなく確実に炎の存在を判別して火災発報することを可能とする炎感知器及び炎判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(炎感知器)
本発明は、炎感知器に於いて、
有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光を選択透過して電気信号に変換し、当該電気信号から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第1受光信号を出力する第1検知部と、
所定の波長帯域の近赤外線光を選択透過して電気信号に変換し、当該電気信号から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第2受光信号を出力する第2検知部と、
第1検知部からの第1受光信号と第2検知部からの第2受光信号との時間的なずれを補正する補正部と、
補正部で時間的なずれが補正された第1受光信号と第2受光信号に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定する炎判定部と、
炎判定部で炎の存在を判定した場合に火災信号を出力する発報回路と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
ここで、補正部は、第2検知部からの第2受光信号を所定時間遅延して第1受光信号との時間ずれを抑制する。
【0015】
第1検知部は、
有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光を選択透過させる第1光学フィルタと、
第1光学フィルタを透過した透過した光を受光し電気信号に変換して出力する第1受光素子と、
第1受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第1受光信号を出力する第1周波数抽出部と、
を備え、
第2検知部は、
所定の波長帯域の近赤外線光を透過させる第2光学フィルタと、
第2光学フィルタを透過した光を受光し電気信号に変換して出力する第2受光素子と、
第2の受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第2受光信号を出力する第2周波数抽出部と、
を備える。
【0016】
第2光学フィルタは、0.7μm乃至1.0μm付近(700nm〜1000nm付近)の波長帯域の近赤外線光を透過させる。
【0017】
第2光学フィルタと第2受光素子は、近赤外帯域の光を透過させる透過窓を備え、近赤外帯域の所定波長にピーク波長を持つフォトトランジスタまたはフォトダイオードである。
【0018】
炎判定部は、第1受光信号e1と第2受光信号e2との比率K=e1/e2を求め、当該比率が所定の判定閾値Kth以上の場合に炎の存在を判定する。
【0019】
炎判定部は、
第2受光信号e2が所定の受光閾値eth未満の場合は、第1受光信号e1と第2受光信号e2との比率K=e1/e2を求め、
第2受光信号e2が所定の受光閾値eth以上の場合は、第1受光信号e1と、所定の定数cの比率K=e1/cを求め、
比率が所定の判定閾値Kth以上の場合に炎の存在を判定する。
【0020】
本発明の炎感知器は、更に、
有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする波長帯域に隣接した所定波長を中心波長とする狭帯域波長の光のみを選択透過させて電気信号に変換し、当該電気信号から所定の周波数の信号成分を選択抽出する第3検知部と、
を設け、
炎判定部は、第1検知部、第2検知部及び第3検知部からの第1受光信号、第2受光信号及び第3受光信号に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定する。
【0021】
第3検知部は、
4.5μm付近を中心波長とする波長帯域に隣接した所定波長を中心波長とする狭帯域波長の光を選択透過させる第3光学フィルタと、
第3光学フィルタを透過した透過した光を受光し電気信号に変換して出力する第3受光素子と、
第3受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第3受光信号を出力する第3周波数抽出部と、
を備える。
【0022】
第3光学フィルタは、第1光学フィルタの4.5μm付近の透過波長帯域に隣接した3.8μm付近または5.1μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光のみを選択透過させる。
【0023】
炎判定部は、
第1受光信号e1と第2受光信号e2との第1比率K1=e1/e2を求めると共に第1受光信号e1と第3受光信号e3との第2比率K2=e1/e3を求め、
第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上で且つ第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上の場合に炎の存在を判定する。
【0024】
炎判定部は、
第2受光信号e2が所定の受光閾値eth未満の場合は、第1受光信号e1と第2受光信号e2との第1比率K1=e1/e2を求めると共に第1受光信号e1と第3受光信号e3との第2比率K2=e1/e3を求め、
第2受光信号e2が所定の受光閾値eth以上の場合は、第1受光信号e1と所定の定数cとの第1比率K1=e1/cを求めると共に第1受光信号e1と第3受光信号e3との第2比率K2=e1/e3を求め、第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上で且つ第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上の場合に炎の存在を判定する。
【0025】
炎判定部は、第1信号乃至第3受光信号を積分した積分信号に基づいて炎の存在を判定する。
【0026】
(炎判定方法)
本発明は、炎判定方法に於いて、
第1検知部により、有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光を選択透過して電気信号に変換し、当該電気信号から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第1受光信号を出力し、
第2検知部により、所定の波長帯域の近赤外線光を選択透過して電気信号に変換し、当該電気信号から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第2受光信号を出力し、
補正部により、第1検知部からの第1受光信号と第2検知部からの第2受光信号との時間的なずれを補正し、
炎判定部により、補正部で時間的なずれが補正された第1受光信号と第2受光信号に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定することを特徴とする。
【0027】
本発明による炎判定方法の他の特徴は、前述した炎感知器の場合と基本的に同じになる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の炎感知器によれば、有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光による第1受光信号(4.5μm受光信号)を検出すると共に、アーク溶接光により放射される、0.7〜1.0μm付近の波長帯域の近赤外線の光による第2受光信号(近赤外受光信号)を検出し(2波長方式)、第1受光信号と第2受光信号に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定したため、アーク溶接作業を行う工場等に設置した場合に、アーク溶接光では誤作動せず、また日光、白熱電球、ハロゲンランプ等でも誤作動せず、火災による炎を確実に検知して報知することができる。
【0029】
この場合、タイミングによってはアーク溶接光を火災による炎と誤判定する場合があり、その原因を究明したところ、アーク溶接作業を行った場合に検知される4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光による第1受光信号(4.5μm受光信号)と、アーク溶接光により放射される、0.7〜1.0μm付近の波長帯域の近赤外線の光による第2受光信号(近赤外受光信号)との間に時間的なタイミングずれがあり、両者の例えば相対比を求めて炎の存在を判定する場合、両者の時間的なピークタイミングのずれに起因して相対比が大きくなり、炎と誤判定する場合があることが判明した。
【0030】
このような第1受光信号(4.5μm受光信号)と第2受光信号(近赤外受光信号)のピークタイミングの時間ずれは、アーク溶接作業において溶接棒のスパークによる光が最初に発生して近赤外線を含む可視光が放射され、続いて溶接棒の被覆が燃焼してでんぷん等の有機物の燃焼や高温部の黒体放射によるCO2共鳴放射による4.5μm付近にピークをもつ光が放射されることによるものと推定される。
【0031】
そこで本発明にあっては、時間的に早いタイミングで検知される第2受光信号(近赤外受光信号)を所定時間遅延することで、時間的に遅いタイミングで検知される第1受光信号(4.5μm受光信号)との時間的なずれを抑制して両者の相対比を求めることで、アーク溶接光を炎と誤判定してしまうことを確実に防止することができる。
【0032】
また、アーク溶接を行う工場等に本発明による炎感知器を設置することで、工場での火災感知を早めることができる。従来、アーク溶接作業を行う工場では、炎感知器が使用できないために、熱感知器を使用している。なお、煙感知器は通常の状態で工場内に煙が発生するので使用できない。工場で熱感知器を使用する場合、熱感知器は高天井に設置されており、火災に伴う熱気流が高天井に届いて熱感知器で火災を検知するまでには時間がかかり、そのあいだに火災が拡大してしまう可能性が高い。しかしながら、アーク溶接光に対し誤作動することのない本発明の炎感知器を使用することで、アーク溶接を行う工場等の高天井に設置していても火災による炎を早期に検知することができ、火災が大きくなってしまう前に火災を報知することができる。
【0033】
また、有炎燃焼によるCO2共鳴で放射される、4.5μm付近の光による第1受光信号と、アーク溶接光による、0.7〜1.0μm付近の近赤外線光による第2受光信号をとの比率を求めることで、炎の場合に求めた比率を、アーク溶接光の場合に求めた比率に対し、充分に大きな値とすることができ、両者の差を大きくすることで、炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定をより正確にできる。
【0034】
また、アーク溶接光(外乱光)や照明、太陽光による、0.7〜1.0μm付近の近赤外線光の第2受光信号が大きくなりすぎると、有炎燃焼によるCO2共鳴で放射される4.5μm付近の光による第1受光信号との比率が低下して感度が極端に低下する。そこで本発明にあっては、第2受光信号が所定レベルを超えた場合、第2受光信号の代りに所定の定数を使用して第1受光信号との比率を求めることで、外乱光となるアーク溶接光による感度低下を抑制することができる。
【0035】
また、CO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光による第1受光信号、アーク溶接光に固有な0.7〜1.0μm付近となる近赤外線の光による第2受光信号の検出に加え、CO2共鳴による4.5μm付近に隣接した3.8μm付近または5.1μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光による第3受光信号を検出し((3波長方式)、第1受光信号、第2受光信号及び第3受光信号に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定することで、工場などに炎感知器を設置した場合にアーク溶接作業を行っても誤作動せず、また日光、白熱電球、ハロゲンランプ等でも誤作動せず、火災による炎を更に確実に検知して報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】2波長方式となる本発明による炎感知器の実施形態を示したブロック図
【図2】図1の炎判定部の機能構成を示したブロック図
【図3】時間的なタイミングずれを持つ近赤外受光信号と4.5μm受光信号と両者の相対比の時間変化を示したタイムチャート
【図4】時間的なタイミングずれ補償した近赤外受光信号と4.5μm受光信号と両者の相対比の時間変化を示したタイムチャート
【図5】断続的な溶接作業を行った場合の近赤外受光信号と4.5μm受光信号の実測データを示したタイムチャート
【図6】図2の炎判定部における近赤外受光信号と4.5μm受光信号の時間ずれを補正した積分処理を示した説明図
【図7】図2の炎判定部をプロセッサのプログラム制御で実現する場合の炎判定処理を示したフローチャート
【図8】炎とアーク溶接光の分光特性を示した放射スペクトル特性図
【図9】アーク溶接光に対する4.5μm積分値と近赤外積分値から算出した比率Kの時間変化を示したタイムチャート
【図10】ヘプタン炎に対する4.5μm積分値と近赤外積分値から算出した比率Kの時間変化を示したタイムチャート
【図11】図1の炎判定部の他の実施形態による機能構成を示したブロック図
【図12】図11の炎判定部をプロセッサのプログラム制御で実現する場合の炎判定処理を示したフローチャート
【図13】3波長方式となる本発明による炎感知器の実施形態を示したブロック図
【図14】図13の炎判定部の機能構成を示したブロック図
【図15】図14の炎判定部をプロセッサのプログラム制御で実現する場合の炎判定処理を示したフローチャート
【図16】図13の炎判定部の他の実施形態による機能構成を示したブロック図
【図17】図16の炎判定部をプロセッサのプログラム制御で実現する場合の炎判定処理を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は本発明による炎感知器の実施形態を示したブロック図であり、2波長方式を例にとっている。図1において、炎感知器10は、第1検知部11aにより有炎燃焼時に発生するCO2の共鳴放射(4.5μm付近の波長帯域の赤外線を出す元は、炎とは限らない)による波長帯域を検知し、第2検知部11bによりアーク溶接光による近赤外線の波長帯域における放射線強度を検知し、炎判定部26で第1検知部11aと第2検知部11bで検知した2つの波長帯域における検知値の相対比により炎の存在を判定する2波長式による炎検知を行う。
【0038】
第1検知部11aには、CO2の共鳴放射により4.5μm付近の波長帯域を有する赤外線エネルギーを透過して電気信号に変換して出力する第1光学フィルタ14aと焦電型の第1受光素子16aを備えたセンサモジュール12aと、センサモジュール12aから出力される信号から炎のゆらぎ周波数と知られた所定の周波数帯域、例えば2Hzを中心とした周波数帯域の信号成分のみを通過させる前置フィルタを用いた第1周波数抽出部18aと、第1周波数抽出部18aを通過した信号成分を初段増幅するプリアンプ20aと、プリアンプ20aからの出力を、炎判定処理に適した信号レベルに増幅するメインアンプ22aと、メインアンプ22aから出力される増幅出力(アナログ信号)をデジタル信号となる4.5μm受光信号e1に変換するA/D変換器24aとを設けている。ここで、4.5μm受光信号は特許請求範囲の第1受光信号に対応する。
【0039】
また第2検知部11bには、700〜1000nm付近(0.7〜1.0μm付近)となる近接赤外線の波長帯域を有する近赤外線エネルギーを透過して電気信号に変換して出力する第2光学フィルタ14bとフォトトランジスタまたはフォトダイオードを用いた第2受光素子16bを備えたセンサモジュール12bと、センサモジュール12bから出力される信号から炎のゆらぎ周波数と知られた所定の周波数帯域、例えば2Hzを中心とした周波数帯域の信号成分のみを通過させる前置フィルタを用いた第2周波数抽出部18bと、第2周波数抽出部18bを通過した信号成分を初段増幅するプリアンプ20bと、プリアンプ20bからの出力を、炎判定処理に適した信号レベルに増幅するメインアンプ22bと、メインアンプ22bから出力される増幅出力(アナログ信号)をデジタル信号となる近赤外受光信号e2に変換するA/D変換器24bとを設けている。
【0040】
なお、一般に近赤外線の波長は700〜2500nm付近(0.7〜2.5μm付近)であるが、第2受光素子16bとして使用するフォトトランジスタやフォトダイオードのピーク感度波長に基づき本実施形態にあっては、700〜1000nm付近の近赤外線波長帯域の放射強度を検知するようにしている。また、近赤外受光信号は特許請求範囲の第2受光信号に対応する。
【0041】
第2受光素子16bとしてフォトトランジスタを使用する場合、フォトトランジスタのケースに設けた透過窓が、近接赤外線の700〜1000nm付近(0.7〜1.0μm付近)の波長帯域を有する近赤外線エネルギーを透過して電気信号に変換して出力する光学波長フィルタ14bとしてそのまま機能し、第2受光素子としてのフォトトランジスタは、ピーク感度波長として例えば800〜900nm付近にある市販品をそのまま使用できる。
【0042】
また、第2受光素子16bとして使用するフォトトランジスタとしては透過窓にフィルタを設けないものも使用できる。この場合には、透過窓の特性ではなく、半導体素子の分光特性として、700〜1000nm付近に感度を持つものを使用する。
【0043】
この点は第2受光素子16bとしてフォトダイオードを使用した場合も同様であり、例えばピーク感度波長を1050nm付近にをもつフォトPINダイオードなどが使用できる。
【0044】
A/D変換器24a,24bからの4.5μm受光信号e1と近赤外受光信号e2は炎判定部26に入力される。炎判定部26は、4.5μm受光信号e1と近赤外受光信号e2に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源との識別判定を行う。
【0045】
本発明にあっては、炎判定部26内に、第1検知部11aからの4.5μm受光信号e1と第2検知部11bからの近赤外受光信号e2との時間的なずれを補正する補正部としての機能を設けている。この補正部は、第2検知部11bからの近赤外受光信号e2を所定時間Tdだけ遅延して4.5μm受光信号e1との時間ずれを抑制する。
【0046】
このため炎判定部26は、補正部で時間的なずれが補正された4.5μm受光信号e1と近赤外受光信号e2に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定することになる。このように時間的に早いタイミングで検知される近赤外受光信号e2を所定時間Tdだけ遅延することで、時間的に遅いタイミングで検知される4.5μm受光信号e1との時間的なずれを低減し、アーク溶接光を炎と誤判定してしまうことを確実に防止する。
【0047】
炎判定部26で炎の存在が判定された場合、発報回路28に炎判定信号が出力され、スイッチング素子等をオンすることで、感知器端子30a,30bに接続している受信機からの感知器回線L,C間に発報電流を流し、受信機に火災発報信号を送出する。
【0048】
炎判定部26は4.5μm受光信号e1とTd時間遅延した近赤外受光信号e2の比率Kとして
K=e1/e2
を求め、当該比率Kが所定の閾値Kth以上の場合に炎の存在を判定する。
【0049】
図2は図1に設けた炎判定部の機能構成の実施形態を示したブロック図である。図2において、炎判定部26には積分器32aが設けられ、図1のA/D変換器24aからの4.5μm受光信号e1を所定時間単位で積分し、4.5μm積分信号E1を出力する。この積分により受光信号のノイズなどによる急激な変動を抑制する。
【0050】
また炎判定部26には補正部として機能する遅延器31と積分器32bが設けられる。遅延器31は、図1のA/D変換器24bからの近赤外受光信号e2を所定のTd時間遅延して積分器24bに入力し、積分器32aに入力する4.5μm受光信号e1との時間ずれを補正する。遅延器31でTd時間遅延した近赤外受光信号e2は積分器32bに入力され、積分器32aと同様、所定時間単位で積分することにより近赤外積分信号E2を出力し、ノイズなどによる急激な変動を抑制する。
【0051】
遅延器31としてはシフトレジスタ等を使用することができ、クロック入力によるシフト動作により近赤外受光信号e2を入力してから出力するまで時間が所定の遅延時間Tdとなるようにシフト段数を設定している。なお、遅延器31によるデジタル的な遅延動作以外に、例えばA/D変換器24bの前段にアナログ遅延器を設けて遅延するようにしても良い。
【0052】
積分器32a、32bによる積分動作は、A/D変換器24a,24bのサンプリングにより一定の単位時間に得られる受光信号(デジタル信号)の和を求める。またA/D変換器24a,24bのサンプリング毎に、現時点から一定の単位時間前までに得られた受光信号(デジタル信号)の和となる移動加算による和を求めても良い。
【0053】
積分器32aからの4.5μm積分信号E1は比率演算器42に与えられ、また積分器32aからの近赤外積分信号E2は切替器40の切替端子aを介して比率演算器42に与えられ、
K=E1/E2
として比率Kを演算する。尚、この比率Kは4.5μm受光信号e1と近赤外受光信号e2に基づく
K=e1/e2
と実質的に同じ値となる。
【0054】
比率演算器42で算出された比率Kは比較器44に与えられ、基準電圧源45により設定した所定の判定閾値Kthと比較され、比率Kが判定閾値Kth以上の場合、比較器44は炎判定信号としてHレベル出力を生ずる。
【0055】
図3はアーク溶接を断続的に行った場合の4.5μm受光信号と時間的なタイミングずれを持つ近赤外受光信号及び両者の比率の時間変化を示したタイムチャート(グラフ図)である。
【0056】
図3(A)は受光信号のタイムチャートであり、アーク溶接を行うと、最初に近赤外受光信号e2のピークが現れ、所定時間Tdだけ遅れて4.5μm受光信号e1のピークが現れている。
【0057】
図3(B)は図3(A)の4.5μm受光信号e1と近赤外受光信号e2から算出した比率K=e1/e2の時間変化であり、アーク溶接光による2つの受光信号の時間ずれに起因して2箇所に比率K=2以上となるピーク部分を生じ、例えば図2で比較器44に対する判定閾値KthとしてKth=2を設定していた場合、アーク溶接光でありながら炎と誤判定されることになる。
【0058】
図4はアーク溶接を断続的に行った場合の4.5μm受光信号と時間的なタイミングずれを補正した近赤外受光信号及び両者の比率の時間変化を示したタイムチャート(グラフ図)である。
【0059】
図4(A)は受光信号のタイムチャートであり、図3(A)に示した近赤外受光信号e2を所定時間Tdだけ遅延することで、破線で示す近赤外受光信号e2となり、4.5μm受光信号e1との時間ずれが低減し、両者のピークが一致するように補正されている。
【0060】
図4(B)は図4(A)の4.5μm受光信号e1とTd時間遅延した近赤外受光信号e2から算出した比率Kの時間変化であり、アーク溶接光による2つの受光信号の時間ずれが低減したため、比率Kのピーク値は例えば判定閾値KthとなるKth=2未満に収まり、アーク溶接光を炎と誤判定することを確実に防止できる。
【0061】
図5は断続的な溶接作業を行った場合の4.5μm受光信号e1と近赤外受光信号e2の実測データを示したタイムチャート(グラフ図)であり、例えば近赤外受光信号e2のピークP1に対し4.5μm受光信号e1のピークP2の遅れ時間Td1は0.4秒程度であり、また近赤外受光信号e2のピークP3に対し4.5μm受光信号e1のピークP4の遅れ時間Td2は0.3秒程度でとなっており、これに基づき図2の遅延器31の遅延時間としてTd=0.4秒を設定すれば良い。
【0062】
図6は、図2の炎判定部26における4.5μm受光信号と近赤外受光信号との時間ずれを補正した積分処理を示した説明図である。
【0063】
図6(A)及び図6(C)はA/D変換器24b、24aにより所定ビット数のデジタル信号に変換した離散的な近赤外受光信号e2と4.5μm受光信号e1を時間軸方向に並べて示しており、時刻t1から近赤外受光信号e2が得られているのに対し、4.5μm受光信号e1は時間的に遅れた時刻t2から得られており、Td時間の時間遅れをもっている。
【0064】
図6(A)のA/D変換器24bからの近赤外受光信号e2は遅延器31によりTd時間遅延され、図6(B)に示す遅延近赤外受光信号e2となり、両者の時間ずれが解消される。
【0065】
積分器32aは単位時間Tiの間、4.5μm受光信号e1を加算する離散的な積分動作を行い、4.5μm積分信号E1を出力する。積分器32bは同じタイミングで単位時間Tiの間、近赤外受光信号e2を加算する離散的な積分動作を行い、近赤外積分信号E2を出力する。
【0066】
なお、積分器31a,32bの積分としては、A/D変換器24a,24bのサンプリング毎に、現時点から一定の単位時間前までに得られた受光信号(デジタル信号)の和となる移動加算による積分値を求めても良い。
【0067】
図7は図2の炎判定部の機能をプロセッサによるプログラムの実行により実現する場合の炎判定処理を示したフローチャートである。図7において、炎判定処理は、ステップS1でA/D変換器24aからの4.5μm受光信号e1を積分した4.5μm積分値E1を読込み、続いてステップS2でA/D変換器24bからの近赤外受光信号e2を所定時間Td遅延して積分した近赤外積分値E2を読込む。
【0068】
続いてステップS3に進み、比率Kを
K=E1/E2
として計算する。
【0069】
続いてステップS4で比率Kが所定の判定閾値Kth以上か否か判定し、判定閾値Kth以上であることを判定した場合はステップS5に進み、炎の存在を判定すると共に炎判定信号を発報回路28に出力して動作させることで、火災発報信号を受信機に出力させる。
【0070】
次に本発明における炎とアーク溶接光の識別判定の原理を説明する。図8は炎とアーク溶接光の分光特性を示した放射スペクトル特性図であり、炎スペクトル46とアーク溶接光スペクトル48につき、有炎燃焼時に発生するCO2の共鳴放射共鳴放射による4.5μm付近の放射強度を略同じ状態として測定した結果を示している。
【0071】
図8において、炎スペクトル46はCO2の共鳴放射により4.5μm付近に大きな放射強度のピーク値をもっている。アーク溶接光スペクトル48は溶接棒の被覆に含まれるでんぷん等の有機物の燃焼により、CO2の共鳴放射による4.5μm付近に放射強度のピーク値をもち、700〜1000nm付近(0.7〜1.0μm付近)の波長帯域となる近赤外線波長帯域およびそれより短波長側の帯域に放射強度が分布している。
【0072】
ここで図1の実施形態に設けた第2フォトセンサ12bにあっては、光学波長フィルタ14bとフォトトランジスタまたはフォトダイオードを用いた第2受光素子16bにより、図4における700〜1000nm付近(0.7〜1.0μm付近)となる近赤外線波長帯域50に放射強度をもつ近赤外線エネルギーを検知している。
【0073】
アーク溶接光スペクトラム48が近赤外波長帯域50に分布する理由は、アーク溶接に使用する溶接棒の被覆には例えば長石が含まれており、長石に含まれるカリウムが燃焼する場合に、760nm付近にピークをもつ近赤外線光が特徴的に放射されることによると考えられる。またアルゴンガスを保護用ガスとして用いるTIG溶接(タングステン・イナート・ガス溶接の略)にあっては、アーク溶接に伴うアルゴンガスのプラズマから811nm付近の近赤外線が特徴的に放射されることによると考えられる。このようなアーク溶接に使用する溶接棒の被覆成分の燃焼に起因し、アーク溶接光スペクトル48は、CO2の共鳴放射による4.5μm付近の放射強度のピーク値を持つと共に、第2フォトセンサ12bの検知波長帯域となる700〜1000nm付近(0.7〜1.0μm付近)の近赤外線波長帯域50に放射強度が分布している。
【0074】
この炎スペクトル46とアーク溶接光スペクトル48の分光特性から明らかなように、従来の例えば2波長方式において、CO2の共鳴放射帯である4.5μm付近を中心波長とした狭波長帯域と、その長波長側の例えば、5.1μm付近の狭波長帯域における放射エネルギーを検知し、これらの2波長帯域における検知出力の相対比によっては、炎とアーク溶接光を識別判定することはできないことが分かる。
【0075】
図9は、断続的にアーク溶接を行った場合のアーク溶接光に対する4.5μm積分信号と近赤外積分信号から算出した比率Kの時間変化を示したタイムチャートである。なお、図9はアーク溶接光における近赤外光に対するCO2共鳴放射による4.5μm付近の光のタイミングずれが小さい場合である。
【0076】
図9において、CO2の共鳴放射共鳴放射による4.5μm付近の放射強度を検知した4.5μm積分信号は測定特性52に示すように、アーク溶接を断続的に行う毎にピーク値が生じている。
【0077】
この測定特性52となる4.5μm積分信号と共に検知している近赤外線波長帯域の放射強度に対応した近赤外積分信号(図示せず)とに基づき計算した比率K=E1/E2は、比率特性54に示すように変化する。即ち、測定特性52において4.5μm積分信号が大きくなると、比率特性54のように比率Kの値が小さくなる関係にあり、この場合、比率Kは概ねK=2以下に収まっている。
【0078】
図10は、ヘプタン炎に対する4.5μm積分信号と、近赤外積分信号から算出した比率Kの時間変化を示したタイムチャートである。
【0079】
図10において、CO2の共鳴放射共鳴放射による4.5μm付近の放射強度を検知した4.5μm積分信号は測定特性56に示すように、炎の大きさの変化に対応して変動している。
【0080】
この測定特性56となる4.5μm積分信号と共に検知している近赤外線波長帯域の放射強度に対応した近赤外積分信号(図示せず)とに基づき計算した比率K=E1/E2は、比率特性58に示すように変化する。即ち、測定特性58において、4.5μm積分信号が大きくなると、比率特性54のように比率Kの値も大きくなる関係にあり、この場合、比率Kは概ねK=50〜200といった大きな値を示している。
【0081】
この結果、図9に示したアーク溶接の場合の比率Kが概ねK=2以下であったのに対し、図10のヘプタン炎の場合の比率Kは概ねK=50〜200と非常に大きくなり、このように変化する比率Kを比較判定することで炎の存在とアーク溶接光とを確実に識別判定することができる。
【0082】
図11は図1に設けた炎判定部の他の実施形態による機能構成を示したブロック図であり、本実施形態の炎判定部26にあっては、近赤外受光信号e2が極端に大きくなった場合の外乱光となるアーク溶接光による感度低下を抑制するため、近赤外受光信号e2が所定レベルを超えた場合、近赤外受光信号e2の代りに所定の定数cを使用して4.5μm受光信号との比率Kを求めることでアーク溶接光による感度低下を抑制するようにしたことを特徴とする。
【0083】
即ち、炎判定部26は、所定時間Td遅延した近赤外受光信号e2が所定の受光閾値eth未満の場合は、4.5μm受光信号e1と近赤外受光信号e2との比率Kとして
K=e1/e2
を求め、一方、所定時間Td遅延した近赤外受光信号e2が所定の受光閾値eth以上の場合は、4.5μm受光信号e1と、所定の定数cの比率Kとして
K=e1/c
を求め、比率が所定の判定閾値Kth以上の場合に炎の存在を判定することを基本とする。
【0084】
図11の炎判定部26にあっては、新たに定数設定器34、比較器36及び切替器40を設けており、それ以外の構成は図2の実施形態と同じになる。即ち、炎判定部26には積分器32a、32bが設けられ、図1のA/D変換器24a,24bからの4.5μm受光信号e1と遅延器31でTd時間遅延した近赤外受光信号e2を所定時間単位で積分し、4.5μm積分信号E1と近赤外積分信号E2を出力する。
【0085】
積分器32aからの4.5μm積分信号E1は比率演算器42に与えられ、また積分器32aからの近赤外積分信号E2は切替器40の切替端子aを介して比率演算器42に与えられる。切替器40の他方の切替端子bには所定の定数cを出力する定数設定器34を接続している。
【0086】
切替器40は比較器36により切替制御される。比較器36は積分器32bからの近赤外積分信号e2と基準電圧源38で設定した所定の受光閾値Ethとを比較しており、近赤外積分信号E42が受光閾値Eth未満の場合のLレベル出力で、図示のように、切替器40を切替端子aに切替え、積分器32bからの近赤外積分信号E2を比率演算器42に与え、比率演算器42は
K=E1/E2
として比率Kを演算する。尚、この比率Kは4.5μm受光信号e1と所定時間Td遅延した近赤外受光信号e2に基づく
K=e1/e2
と実質的に同じ値となる。
【0087】
一方、比較器36は近赤外積分信号E2が受光閾値Eth以上となった場合にHレベル出力を生じ、切替器40を切替端子b側に切替え、定数設定器34からの定数cを比率演算器42に与え、率演算器42は
K=E1/c
として比率Kを演算する。尚、この比率Kは4.5μm受光信号e1と定数cに基づく
K=e1/c
と実質的に同じ値となる。
【0088】
比率演算器42で算出された比率Kは比較器44に与えられ、基準電圧源45により設定した所定の判定閾値Kthと比較され、比率Kが判定閾値Kth以上の場合、比較器44は炎判定信号としてHレベル出力を生ずる。
【0089】
図12は図11の炎判定部の機能をプロセッサによるプログラムの実行により実現する場合の炎判定処理を示したフローチャートである。図12において、炎判定処理は、ステップS11でA/D変換器24aからの4.5μm受光信号e1を積分した4.5μm積分値E1を読込み、続いてステップS12でA/D変換器24bからの近赤外受光信号e2を所定時間Td遅延した積分した近赤外積分値E2を読込む。
【0090】
続いてステップS13で近赤外積分値E2が所定の受光閾値Eth未満か否か判別し、受光閾値Eth未満を検知した場合はステップS14に進み、比率Kを
K=E1/E2
として計算する。
【0091】
一方、ステップS13で近赤外積分値E2が所定の受光閾値Eth以上となることを検知した場合はステップS15に進み、近赤外積分値E2を定数cに変更し、比率Kを
K=E1/c
として計算する。
【0092】
続いてステップS17で比率Kが所定の判定閾値Kth以上か否か判定し、判定閾値Kth以上であることを判定した場合はステップS18に進み、炎の存在を判定すると共に炎判定信号を発報回路28に出力して動作させることで、火災発報信号を受信機に出力させる。
【0093】
図13は本発明による炎感知器の他の実施形態を示したブロック図であり、3波長方式を例にとっている。図13において、炎感知器10は、有炎燃焼時に発生するCO2の共鳴放射による4.5μm付近の波長帯域と、CO2の共鳴放射による4.5μm付近の波長帯域に隣接した5.1μm付近の波長帯域と、アーク溶接光による近赤外線の0.7〜1.0μm付近の波長帯域における放射強度を検知し、3つの波長帯域における検知値の相対比により炎の有無を検知する3波長式による炎判定を行う。
【0094】
炎感知器10は、第1光学フィルタ14aと第1受光素子16aを備えたセンサモジュール12a、第1周波数抽出部18a、プリアンプ20a、メインアンプ22a及びA/D変換器24aを備えた第1検知部11aにより4.5μm受光信号e1を検知し、また、第2光学フィルタ14bと第2受光素子16bを備えたセンサモジュール12b、第2周波数抽出部18b、プリアンプ20b、メインアンプ22b及びA/D変換器24bを備えた第2検知部11bにより近赤外受光信号e2を検知し、この点は図1の実施形態と同じである。
【0095】
これに加え本実施形態にあっては、CO2の共鳴放射による4.5μm付近の波長帯域に隣接した5.1μm付近の波長帯域の放射強度を検知する第3検知部11cを設けており、第3検知部11cには、5.1μm付近を中心波長と擦る狭波長帯域を有する赤外線エネルギーを透過して電気信号に変換して出力する第3光学フィルタ14cと焦電型の第3受光素子16cを備えたセンサモジュール12cと、センサモジュール12cから出力される信号から炎のゆらぎ周波数と知られた所定の周波数帯域、例えば2Hzを中心とした周波数帯域の信号成分のみを通過させる前置フィルタを用いた第3周波数抽出部18cと、第3周波数抽出部18cを通過した信号成分を初段増幅するプリアンプ20cと、プリアンプ20cからの出力を、炎判定処理に適した信号レベルに増幅するメインアンプ22cと、メインアンプ22cから出力される増幅出力(アナログ信号)をデジタル信号となる5.1μm受光信号e3に変換するA/D変換器24cとを設けている。なお、5.1μm受光信号は特許請求の範囲の第3受光信号に対応する。
【0096】
炎判定部260は、A/変換器24a,24b,24cからの4.5μm受光信号e1、近赤外受光信号e2及び5.1μm受光信号e3を入力し、近赤外受光信号e2については所定時間Tdの遅延を行い、当該3つの受光信号e1,e2,e3に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源との識別判定を行い、炎の存在を判定した場合、発報回路28に炎判定信号を出力し、スイッチング素子等をオンすることで、感知器端子30a,30bに接続している受信機からの感知器回線に発報電流を流し、受信機に火災発報信号を送出する。
【0097】
炎判定部260は4.5μm受光信号e1とTd時間遅延した近赤外受光信号e2の第1比率K1として
K1=e1/e2
を求め、また炎判定部26は4.5μm受光信号e1と5.1μm受光信号e3の第2比率Kとして
K2=e1/e3
を求め、第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上で、且つ第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上の場合に炎の存在を判定する。なお、第2比率K2は炎のみに特徴的に大きく出る出力による信号e1と、その他の光源で特徴的な出力による信号e3を比較するものである。
【0098】
比率演算器420で算出された第1及び第2比率K1,K2は比較判定部440に与えられる。比較判定部440は、第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上で、且つ第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上の場合に炎の存在を判定する。
【0099】
このように3番目の波長としてCO2の共鳴放射による4.5μm付近の波長帯域に隣接した5.1μm付近の波長帯域の放射強度を検知して炎判定を行うことで、炎以外の赤外線放射体、例えば、太陽光等の高温放射体や、300°C程度の比較的低温の放射体、人体などの低温放射体等との識別判定をより確実に行うことできる。
【0100】
図14は図13に設けた炎判定部の実施形態となる機能構成を示したブロック図である。図14において、炎判定部260に設けた遅延器31及び積分器32a,32bは図2の2波長方式の実施形態と同じである。これに加え本実施形態では、積分器32cが設けられ、A/D変換器24cからの5.1μm受光信号e3を所定時間単位で積分し、5.1μm積分信号E3を出力する。
【0101】
比率演算器420は、積分器32aからの4.5μm積分信号E1、積分器32bからの近赤外積分信号E2及び積分器32cからの5.1μm積分信号E3を入力し、第1比率K1及び第2比率K2として
K1=E1/E2
K2=E1/E3
を求める。
【0102】
比率演算器420で算出された第1及び第2比率K1,K2は比較判定部440に与えられる。比較判定部440は、第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上で、且つ第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上の場合に炎の存在を判定する。
【0103】
このように3番目の波長としてCO2の共鳴放射による4.5μm波長帯域に隣接した5.1μm波長帯域の放射強度を検知して炎判定を行うことで、炎以外の赤外線放射体、例えば、太陽光等の高温放射体や、300°C程度の比較的低温の放射体、人体などの低温放射体等との識別判定をより確実に行うことできる。
【0104】
図15は図14の炎判定部の機能をプロセッサによるプログラムの実行により実現する場合の炎判定処理を示したフローチャートである。図15において、炎判定処理は、ステップS21でA/D変換器24aからの4.5μm受光信号e1を積分した4.5μm積分値E1を読込み、ステップS22でA/D変換器24bからの近赤外受光信号e2を所定時間Tdだけ遅延して積分した近赤外積分値E2を読込み、更にステップS23でA/D変換器24cからの近赤外受光信号e3を積分した近赤外積分値E3を読込む。
【0105】
続いてステップS24に進み、第1及び第2比率K1,K2を
K1=E1/E2
K2=E1/E3
として計算する。続いてステップS25で第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上か否か判定し、第1判定閾値Kth1以上であることを判定した場合はステップS26に進み、第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上か否か判定する。ステップS26で第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上であることを判定した場合はステップS27に進み、炎の存在を判定したことで発報回路28を動作させ、火災発報信号を受信機に出力させる。
【0106】
図16は図13に設けた炎判定部の他の実施形態となる機能構成を示したブロック図である。本実施形態の炎判定部26にあっては、近赤外受光信号e2が極端に大きくなった場合の外乱光となるアーク溶接光による感度低下を抑制するため、近赤外受光信号e2が所定レベルを超えた場合、近赤外受光信号e2の代りに所定の定数cを使用して4.5μm受光信号との比率Kを求めることでアーク溶接光による感度低下を抑制するようにしたことを特徴とする。
【0107】
図16の炎判定部260にあっては、新たに定数設定器34、比較器36及び切替器40を設けており、それ以外の構成は図14の実施形態と同じになる。
【0108】
比率演算器420は、積分器32bからの近赤外積分信号E2が基準電圧源38で設定した受光閾値Eth未満の場合の比較器36のLレベル出力で、図示のように、切替器40を切替端子aに切替えて積分器32bからの近赤外積分信号E2を入力し、4.5μm積分信号E1、近赤外積分信号E2及び5.1μm積分信号E3から第1比率K1及び第2比率K2として
K1=E1/E2
K2=E1/E3
を求める。
【0109】
また比率演算器420は、積分器32bからの近赤外積分信号E2が基準電圧源38で設定した受光閾値Eth以上の場合の比較器36のHレベル出力で、切替器40を切替端子bに切替えて定数設定器34bからの定数cを入力し、4.5μm積分信号E1、近赤外積分信号E2に代る定数c及び5.1μm積分信号E3から第1比率K1及び第2比率K2として
K1=E1/c
K2=E1/E3
を求める。
【0110】
比率演算器420で算出された第1及び第2比率K1,K2は比較判定部440に与えられる。比較判定部440は、第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上で、且つ第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上の場合に炎の存在を判定する。
【0111】
図17は図16の炎判定部の機能をプロセッサによるプログラムの実行により実現する場合の炎判定処理を示したフローチャートである。図17において、炎判定処理は、ステップS31でA/D変換器24aからの4.5μm受光信号e1を積分した4.5μm積分値E1を読込み、ステップS32でA/D変換器24bからの近赤外受光信号e2を所定時間Tdだけ遅延して積分した近赤外積分値E2を読込み、更にステップS13でA/D変換器24cからの近赤外受光信号e3を積分した近赤外積分値E3を読込む。
【0112】
続いてステップS34で近赤外積分値E2が所定の受光閾値Eth未満か否か判別し、受光閾値Eth未満を検知した場合はステップS35に進み、第1及び第比率K1,K2を
K1=E1/E2
K2=E1/E3
として計算する。
【0113】
一方、ステップS34で近赤外積分値E2が所定の受光閾値Eth以上となることを検知した場合はステップS36に進み、近赤外積分値E2を定数cに変更し、第1及び第比率K1,K2を
K1=E1/c
K2=E1/E3
として計算する。
【0114】
続いてステップS38で第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上か否か判定し、第1判定閾値Kth1以上であることを判定した場合はステップS39に進み、第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上か否か判定する。ステップS39で第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上であることを判定した場合はステップS40に進み、炎の存在を判定していることで発報回路28を動作させ、火災発報信号を受信機に出力させる。
【0115】
なお、上記の実施形態にあっては、近赤外受光信号をリアルタイムで所定時間Td遅延して4.5μm受光信号との時間ずれを低減しているが、近赤外受光信号と4.5μm受光信号をメモリに一時的に記憶し、読出し位置を遅延時間に対応したアドレス分シフトして読み出すことで、時間ずれを補正するようしても良い。
【0116】
また、溶接時、特に溶接開始時の遅延時間Tdのばらつきにより、近赤外受光信号e2と4.5μm受光信号e1が立ち上がるタイミングのずれが所定時間Tdより短かった場合には、比率K1が大きくなり、Kth1を超えてしまうことも考えられるが、例えば近赤外受光信号e2の読み出し終了位置を4.5μm受光信号e1の読み出し終了位置と同じ程度まで伸ばすことにより、この問題への対策を行っても良い。
【0117】
また、上記の実施形態にあっては、炎の存在を判定した場合に発報回路の動作で受信機からの感知回線の発報電流を流して火災発報信号を送出しているが、発報回路に代えて適宜の伝送回路を設け、炎判定に基づき火災信号を受信側に伝送するようにしても良い。
【0118】
また上記の実施形態の3波長方式にあっては、CO2の共鳴放射による4.5μm付近の波長帯域に隣接した長波長側の5.1μm付近の波長帯域の放射強度を検知しているが、4.5μm付近の波長帯域に隣接した短波長側の3.8μm付近の波長帯域の放射強度を検知するようにしても良い。
【0119】
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0120】
10:炎感知器
11a,11b,11c:第1〜第3検知部
12a,12b,12c:センサモジュール
14a,14b,14c:第1〜第3光学フィルタ
16a,16b,16c:第1〜第3受光素子
18a,18b,18c:第1〜第3周波数抽出部
20a,20b,20c:プリアンプ
22a,22b,22c:メインアンプ
24a,24b,24c:A/D変換器
26,260:炎判定部
28:発報回路
31:遅延器
32a,32b,32c:積分器
34:定水設定器
36,44:比較器
38,45:基準電圧源
40:切替器
42,420:比率演算器
440:比較判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光を選択透過して電気信号に変換し、当該電気信号から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第1受光信号を出力する第1検知部と、
所定の波長帯域の近赤外線光を選択透過して電気信号に変換し、当該電気信号から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第2受光信号を出力する第2検知部と、
前記第1検知部からの第1受光信号と前記第2検知部からの第2受光信号との時間的なずれを補正する補正部と、
前記補正部で時間的なずれが補正された前記第1受光信号と第2受光信号に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定する炎判定部と、
前記炎判定部で炎の存在を判定した場合に火災信号を出力する発報回路と、
を備えたことを特徴とする炎感知器。
【請求項2】
請求項1記載の炎感知器に於いて、
前記補正部は、前記第2検知部からの第2受光信号を所定時間遅延して前記第1受光信号との時間ずれを抑制することを特徴とする炎感知器。
【請求項3】
請求項1記載の炎感知器に於いて、
前記第1検知部は、
有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光を選択透過させる第1光学フィルタと、
前記第1光学フィルタを透過した透過した光を受光し電気信号に変換して出力する第1受光素子と、
前記第1受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第1受光信号を出力する第1周波数抽出部と、
を備え、
前記第2検知部は、
所定の波長帯域の近赤外線光を透過させる第2光学フィルタと、
前記第2光学フィルタを透過した光を受光し電気信号に変換して出力する第2受光素子と、
前記第2の受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第2受光信号を出力する第2周波数抽出部と、
を備えたことを特徴とする炎感知器。
【請求項4】
請求項3記載の炎感知器に於いて、前記第2光学フィルタは、0.7μm乃至1.0μm付近の波長帯域の近赤外線光を透過させることを特徴とする炎感知器。
【請求項5】
請求項3記載の炎感知器に於いて、前記第2光学フィルタと第2受光素子は、近赤外帯域の光を透過させる透過窓を備え、近赤外帯域の所定波長にピーク波長を持つフォトトランジスタまたはフォトダイオードであることを特徴とする炎感知器。
【請求項6】
請求項1記載の炎感知器に於いて、前記判定部は、
前記第1受光信号e1と第2受光信号e2との比率K−e1/e2を求め、当該比率Kが所定の閾値Kth以上の場合に炎の存在を判定することを特徴とする炎感知器。
【請求項7】
請求項1記載の炎感知器に於いて、前記判定部は、
前記第2受光信号e2が所定の受光閾値eth未満の場合は、前記第第1受光信号e1と前記第2受光信号e2との比率K=e1/e2を求め、
前記第2受光信号e2が前記受光閾値eth以上の場合は、前記第1受光信号e1と所定の定数cの比率K=e1/cを求め、
前記比率Kが所定の判定閾値Kth以上の場合に炎の存在を判定することを特徴とする炎感知器。
【請求項8】
請求項1記載の炎感知器に於いて、更に、
有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする波長帯域に隣接した所定波長を中心波長とする狭帯域波長の光のみを選択透過させて電気信号に変換し、当該電気信号から所定の周波数の信号成分を選択抽出する第3検知部と、
を設け、
前記炎判定部は、前記第1検知部、第2検知部及び第3検知部からの前記第1受光信号、第2受光信号及び第3受光信号に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定することを特徴とする炎感知器。
【請求項9】
請求項8記載の炎感知器に於いて、前記第3検知部は、
4.5μm付近を中心波長とする波長帯域に隣接した所定波長を中心波長とする狭帯域波長の光を選択透過させる第3光学フィルタと、
前記第3光学フィルタを透過した透過した光を受光し電気信号に変換して出力する第3受光素子と、
前記第3受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第3受光信号を出力する第3周波数抽出部と、
を備えることを特徴とする炎感知器。
【請求項10】
請求項9記載の炎感知器に於いて、前記第3光学フィルタは、前記第1光学フィルタの4.5μm付近を中心波長とする透過狭波長帯域に隣接した5.1μm付近または3.8μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光のみを選択透過させることを特徴とする炎感知器。
【請求項11】
請求項8記載の炎感知器に於いて、前記判定部は、
前記第1受光信号e1と前記第2受光信号e2との第1比率K1=e1/e2を求めると共に前記第3受光信号e3と前記第2受光信号e2との第2比率K2=e3/e2を求め、
前記第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上で且つ前記第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上の場合に炎の存在を判定することを特徴とする炎感知器。
【請求項12】
請求項8記載の炎感知器に於いて、前記判定部は、
前記第2受光信号e2が所定の受光閾値eth以上の場合は、前記第1受光信号e1と前記第2受光信号e2との第1比率K1=e1/e2を求めると共に前記第3受光信号e3と前記第2受光信号e2との第2比率K2=e3/e2を求め、
前記第2受光信号が前記受光閾値eth未満の場合は、前記第1受光信号e1と所定の定数cとの第1比率K1=e1/cを求めると共に前記第3受光信号e3と前記定数cとの第2比率K2=e3/cを求め、前記第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上で且つ前記第2比率Kが所定の第2判定閾値Kth2以上の場合に炎の存在を判定することを特徴とする炎感知器。
【請求項13】
請求項1又は8記載の炎感知器に於いて、前記判定部は、前記第1信号乃至第3受光信号を積分した積分信号に基づいて炎の存在を判定することを特徴とする炎感知器。
【請求項14】
第1検知部により、有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光を選択透過して電気信号に変換し、当該電気信号から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第1受光信号を出力し、
第2検知部により、所定の波長帯域の近赤外線光を選択透過して電気信号に変換し、当該電気信号から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第2受光信号を出力し、
補正部により、前記第1検知部からの第1受光信号と前記第2検知部からの第2受光信号との時間的なずれを補正し、
炎判定部により、前記補正部で時間的なずれが補正された前記第1受光信号と第2受光信号に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定することを特徴とする炎判定方法。
【請求項15】
請求項14記載の炎判定方法に於いて、
前記補正部により、前記第2検知部からの第2受光信号を所定時間遅延して前記第1受光信号との時間ずれを抑制することを特徴とする炎判定方法。
【請求項16】
請求項14記載の炎判定方法に於いて、
前記第1検知部は、
第1光学フィルタにより、有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光を選択透過し、
第1受光素子により、前記第1光学フィルタを透過した透過した光を受光し電気信号に変換して出力し、
第1周波数抽出部により、前記第1受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第1受光信号を出力し、
前記第2検知部は、
第2光学フィルタにより、所定の波長帯域の近赤外線光を透過し、
第2受光素子により、前記第2光学フィルタを透過した光を受光し電気信号に変換して出力し、
第2周波数抽出部により、前記第2の受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第2受光信号を出力する、
ことを特徴とする炎判定方法。
【請求項17】
請求項16記載の炎判定方法に於いて、前記第2光学フィルタは、0.7μm乃至1.0μm付近の波長帯域の近赤外線光を透過させることを特徴とする炎判定方法。
【請求項18】
請求項16記載の炎判定方法に於いて、前記第2光学フィルタと第2受光素子は、近赤外帯域の光を透過させる透過窓を備え、近赤外帯域の所定波長にピーク波長を持つフォトトランジスタまたはフォトダイオードであることを特徴とする炎判定方法。
【請求項19】
請求項16記載の炎判定方法に於いて、前記判定部は、
前記第1受光信号e1と第2受光信号e2との比率を求め、当該比率K=e1/e2が所定の閾値Kth以上の場合に炎の存在を判定することを特徴とする炎判定方法。
【請求項20】
請求項16記載の炎判定方法に於いて、前記判定部は、
前記第2受光信号e2が所定の受光閾値eth未満の場合は、前記第第1受光信号e1と前記第2受光信号e2との比率K=e1/e2を求め、
前記第2受光信号e2が所定の受光閾値eth以上の場合は、前記第1受光信号e1と、所定の定数cの比率K=e1/cを求め、
前記比率が所定の判定閾値Kth以上の場合に炎の存在を判定することを特徴とする炎判定方法。
【請求項21】
請求項16記載の炎判定方法に於いて、更に、
第3検知部により、有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、4.5μm付近を中心波長とする波長帯域に隣接した所定波長を中心波長とする狭帯域波長の光のみを選択透過させて電気信号に変換し、当該電気信号から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第3受光信号を出力し、
前記炎判定部は、前記第1検知部、第2検知部及び第3検知部からの前記第1受光信号、第2受光信号及び第3受光信号に基づいて炎の存在とアーク溶接光の放射線源とを識別判定することを特徴とする炎判定方法。
【請求項22】
請求項21記載の炎判定方法に於いて、前記第3検知部は、
第3光学フィルタにより、前記第1光学フィルタの透過波長帯域に隣接した所定波長を中心波長とする狭帯域波長の光のみを選択透過させた光を第3受光素子により受光し電気信号に変換して出力し、
第3周波数抽出部により、前記第3受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出して第3受光信号を出力する、
ことを特徴とする炎判定方法。
【請求項23】
請求項22記載の炎判定方法に於いて、前記第3光学フィルタは、前記第1光学フィルタの透過波長帯域に隣接した3.8μm付近または5.1μm付近を中心波長とする狭帯域波長の光のみを選択透過させることを特徴とする炎判定方法。
【請求項24】
請求項21記載の炎判定方法に於いて、前記判定部は、
前記第1受光信号e1と前記第2受光信号e2との第1比率K1=e1/e2を求めると共に前記第3受光信号e3と前記第2受光信号e2との第2比率K2=e3/e2を求め、
前記第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上で且つ前記第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上の場合に炎の存在を判定することを特徴とする炎判定方法。
【請求項25】
請求項21記載の炎判定方法に於いて、前記判定部は、
前記第2受光信号e2が所定の受光閾値eth以上の場合は、前記第1受光信号e1と前記第2受光信号e2との第1比率K1=e1/e2を求めると共に前記第3受光信号e3と前記第2受光信号e2との第2比率K2=e3/e2を求め、
前記第2受光信号e2が前記受光閾値eth未満の場合は、前記第1受光信号e1と所定の定数cとの第1比率K1=e1/cを求めると共に前記第3受光信号e3と前記定数cとの第2比率K2=e3/cを求め、前記第1比率K1が所定の第1判定閾値Kth1以上で且つ前記第2比率K2が所定の第2判定閾値Kth2以上の場合に炎の存在を判定することを特徴とする炎判定方法。
【請求項26】
請求項16又は21記載の炎判定方法に於いて、前記判定部は、前記第1信号乃至第3受光信号を積分した積分受光信号に基づいて炎の存在を判定することを特徴とする炎判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−72835(P2013−72835A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214082(P2011−214082)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】