説明

炭化ケイ素単結晶の製造装置及び炭化ケイ素単結晶基板

【課題】良好な品質を有する炭化ケイ素単結晶を製造することが可能な炭化ケイ素単結晶の製造装置及び当該装置で製造された炭化ケイ素単結晶により作製される炭化ケイ素単結晶基板を提供する。
【解決手段】改良レイリー法により炭化ケイ素単結晶を製造する装置であって、台座20は、当該台座20の外周側面が種基板30の外周側面よりも外側に位置するとともに、種基板30を保持するフィクサー21を当該台座20の外周側面から下側に向けて当該台座20の底面20aよりも下側に突き出た状態で備えており、種基板30は、当該種基板30の一方の面(裏面)と台座20の底面20aとの間に接着剤が一切塗布されず、当該種基板30の外周側面とフィクサー21との間に接着剤Gが塗布された状態で当該フィクサー21に保持されて固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良レイリー法により炭化ケイ素単結晶を製造する装置及び当該装置で製造された炭化ケイ素単結晶により作製される炭化ケイ素単結晶基板に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスは自動車や産業機器など様々な分野で用いられており、現状では、これらパワーデバイスには主にSi単結晶が用いられている。比較的低いパワー領域には金属/酸化膜/半導体ゲート電界効果トランジスタ(MOSFET)構造のデバイスが使用され、高いパワーで高耐圧が要求される領域にはバイポーラトランジスタ(BT)や絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)が使用されている。
【0003】
パワーデバイスは、高い電力変換効率による省エネルギー化と、より高電力での使用を目指して開発が進められている。Si単結晶を用いたパワーデバイスの改良の結果、電力ロスはおよそ1/3まで減少したが、その効率向上は物性上限界に近づいており、Siに代わる新しい材料への要望が高まっている。
そのため、Siに比べて物性的に優れるSiC(炭化ケイ素)をベースとしたパワーデバイスの開発が進められている。例えば、インバータ等のパワーデバイスの材料をSiからSiCに変えることで、電気エネルギーのロスがSiデバイスに比べて1/3となり、国内電気製品において2〜20%電力削減が期待できると試算されている。
【0004】
しかしながら、SiC単結晶はSi単結晶に比べて、マイクロパイプや転位などの結晶欠陥の発生を抑制することが難しい。
SiC単結晶は、通常、改良レイリー法と呼ばれる昇華再結晶法によって育成される。この方法で育成されたSiC単結晶には、マイクロパイプと呼ばれる直径数〜数十ミクロンの中空状欠陥が10/cm以上の密度で含まれ、これが半導体デバイスの漏れ電流の増大を引き起こすという問題がある。
そのため、SiC単結晶の成長方向の傾きの調整(例えば特許文献1参照)や、種結晶と育成されたSiC単結晶の熱処理(例えば特許文献2参照)などによって、マイクロパイプの発生の低減が図られている。
【0005】
ところで、改良レイリー法では、SiC単結晶を坩堝内で育成する。そのため、坩堝内面(例えば坩堝の天井面)における露出部分に結晶が析出されると、その結晶が核となって、坩堝内において、種基板から成長した炭化ケイ素単結晶とは結晶構造の連続しない炭化ケイ素多結晶が成長してしまう場合がある。この場合、炭化ケイ素単結晶の成長が阻害されて、炭化ケイ素単結晶の生産性を上げることが難しくなってしまう。また、炭化ケイ素単結晶の成長時には種基板近傍の温度が2000℃を超えるため、炭化ケイ素多結晶から炭化ケイ素単結晶に熱応力が加えられて、炭化ケイ素単結晶に割れ等が生じ易くなってしまう。
【0006】
そこで、坩堝の形状を上側部分の内壁面が上方向に向かって縮小する形状とし、種基板を当該種基板の外縁が坩堝の内壁面に近接するように坩堝の天井面に取り付け、坩堝内における上部の温度が下部の温度に比べてやや低くなるように設定した温度勾配を保ちつつ、坩堝を外側から加熱することが可能な炭化ケイ素単結晶の製造装置が提案されている(例えば特許文献3参照)。
この製造装置によれば、坩堝の天井面の一部分に炭化ケイ素からなる結晶が析出されることを十分に抑えて、坩堝内において炭化ケイ素多結晶が成長されることを阻止できるため、炭化ケイ素単結晶の生産性を上げることができるとともに、炭化ケイ素単結晶の割れ等が生じ難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−17399号公報
【特許文献2】特開2000−109393号公報
【特許文献3】特開2007−308355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の製造装置において、坩堝蓋の裏面(換言すれば、坩堝の天井面)には、炭化ケイ素からなる円板状の種結晶基板が接着剤等によって取り付けられている。図11に示すように、坩堝蓋(図11では坩堝蓋に取り付けられる台座D)に種基板30が接着剤Gによって取り付けられていると、炭化ケイ素の成長温度は2200℃程度と非常に高温であるため、種基板30と坩堝蓋(図11では坩堝蓋に取り付けられる台座D)との間で熱応力が発生し、種基板30や育成された炭化ケイ素単結晶が割れたり、種基板30が坩堝蓋(図11では坩堝蓋に取り付けられる台座D)から剥離して落下したりする等の事故が発生するという懸念がある。さらに、種基板30の外周部に応力が集中し、この部分からマイクロパイプや転位などの結晶欠陥が生じて結晶品質に悪影響を与え得るという懸念もある。
また、特許文献1や2には、種基板の保持機構や保持方法についての具体的な記載がない。
【0009】
したがって、これらの技術をもってしても、炭化ケイ素単結晶にマイクロパイプや転位などの結晶欠陥が多発する傾向は変わらず、依然として、この問題を解決するには至っていない。そのため、育成された炭化ケイ素単結晶と、育成に使用した種基板とを比べた際に、育成された炭化ケイ素単結晶のマイクロパイプ数や転位密度が、育成に使用した種基板のマイクロパイプ数や転位密度よりも大幅に大きくなり、種基板よりも結晶品質の低い炭化ケイ素単結晶しか得られないことが多かった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたもので、良好な品質を有する炭化ケイ素単結晶を製造することが可能な炭化ケイ素単結晶の製造装置及び当該装置で製造された炭化ケイ素単結晶により作製される炭化ケイ素単結晶基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、
改良レイリー法により炭化ケイ素単結晶を製造する装置であって、
原料を入れる坩堝と、
平坦な底面を有し、当該底面を下向きにした状態で前記坩堝内上部に配設された台座と、
前記台座の底面に一方の面が対向した状態で当該台座に装着された炭化ケイ素からなる種基板と、を備え、
前記台座は、当該台座の外周側面が前記種基板の外周側面よりも外側に位置するとともに、前記種基板を保持するフィクサーを当該台座の外周側面から下側に向けて当該台座の底面よりも下側に突き出た状態で備えており、
前記種基板は、当該種基板の一方の面と前記台座の底面との間に接着剤が一切塗布されず、当該種基板の外周側面と前記フィクサーとの間に接着剤が塗布された状態で当該フィクサーに保持されて固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶の製造装置において、
前記フィクサーは、前記台座の底面よりも下側に突き出た部分のうち前記種基板と対向する面が、前記台座の外周側面に沿った単一面のみから形成されており、前記台座に装着された前記種基板に向けて突出する凸部分を一切有さないことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、
請求項1または2に記載の炭化ケイ素単結晶の製造装置において、
前記フィクサーは、前記台座の底面よりも下側に突き出た部分のうち前記種基板と対向する面とは反対側の面に、前記種基板と対向する面の最下部に向かって傾斜する傾斜面を有することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の炭化ケイ素単結晶の製造装置において、
コーンノズル形状のガイドを備え、
前記ガイドは、当該ガイドの狭開口部を上向きにした状態で当該狭開口部の内周端と前記フィクサーの前記傾斜面とが所定の距離を保つように配設されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、
請求項1から4の何れか一項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造装置において、
前記フィクサーは、前記台座の外周側面の4箇所に配置されてなることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、
炭化ケイ素単結晶基板において、
前記種基板のマイクロパイプ数は2000cm−2以下であり、
請求項1から5の何れか一項に記載の製造装置を用いて製造された炭化ケイ素単結晶により作製され、前記種基板のマイクロパイプ数と略同等のマイクロパイプ数を有することを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、
炭化ケイ素単結晶基板において、
前記種基板のエッチピット密度は40000cm−2以下であり、
請求項1から5の何れか一項に記載の製造装置を用いて製造された炭化ケイ素単結晶により作製され、前記種基板のエッチピット密度と略同等のエッチピット密度を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、種基板は、当該種基板の一方の面と台座の底面との間に接着剤が一切塗布されず、当該種基板の外周側面とフィクサーとの間に接着剤が塗布された状態で当該フィクサーに保持されて固定されている。したがって、種基板の一方の面と台座の底面との間に接着剤が塗布された状態で種基板が台座に装着されている場合と比較して、高温下でも種基板と台座(フィクサーを含む)との間に熱応力が発生し難いので、当該熱応力が影響して生じるマイクロパイプや転位などの結晶欠陥の発生を抑制することが可能となる。そのため、良好な品質を有する炭化ケイ素単結晶を製造することが可能となる。
【0019】
また、高温下でも種基板と台座(フィクサーを含む)との間に熱応力が発生し難いので、当該熱応力が影響して生じる事故、具体的には、種基板や育成された炭化ケイ素単結晶が割れたり、種基板が台座から剥離して落下したりする等の事故の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る炭化ケイ素単結晶の製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】実施形態に係る炭化ケイ素単結晶の製造装置における、種基板の固定の仕方について説明するための模式図である。
【図3】実施形態に係る炭化ケイ素単結晶の製造装置における、種基板の固定の仕方について説明するための図面代用写真である。
【図4】実施形態に係る炭化ケイ素単結晶の製造装置における、台座とガイドとの関係を説明するための模式図である。
【図5】実施形態に係る炭化ケイ素単結晶の製造装置における、台座とガイドとの関係を説明するための図面代用写真であって、ガイドの広開口部側から撮影して得た図面代用写真である。
【図6】実施形態に係る炭化ケイ素単結晶の製造装置における、台座とガイドとの関係を説明するための図面代用写真であって、ガイドの側面側から撮影して得た図面代用写真である。
【図7】図1に示す炭化ケイ素単結晶の製造装置を用いた炭化ケイ素単結晶の製造の仕方について説明するための模式図である。
【図8】実施形態に係る炭化ケイ素単結晶の製造装置を用いて製造された炭化ケイ素単結晶を撮影して得た図面代用写真である。
【図9】(A)実施例の炭化ケイ素単結晶の育成に使用した種基板のMPDを測定した結果を示す図、(B)実施例の炭化ケイ素単結晶の育成に使用した種基板のEPDを測定した結果を示す図である。
【図10】(A)実施例の炭化ケイ素単結晶のMPDを測定した結果を示す図、(B)実施例の炭化ケイ素単結晶のEPDを測定した結果を示す図である。
【図11】比較例における種基板の固定の仕方について説明するための模式図である。
【図12】(A)比較例の炭化ケイ素単結晶の育成に使用した種基板のMPDを測定した結果を示す図、(B)比較例の炭化ケイ素単結晶の育成に使用した種基板のEPDを測定した結果を示す図である。
【図13】(A)比較例の炭化ケイ素単結晶のMPDを測定した結果を示す図、(B)比較例の炭化ケイ素単結晶のEPDを測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る炭化ケイ素単結晶の製造装置の概略構成を示す断面図である。
なお、以下の説明では、図1に示すように、炭化ケイ素単結晶の製造装置(以下「製造装置」という。)1において、坩堝10を構成する坩堝本体部11の底部側を下側、坩堝10を構成する坩堝蓋部12側を上側とする。
【0022】
本実施形態に係る製造装置1は、改良レイリー法により炭化ケイ素単結晶Cを製造する装置である。
具体的には、製造装置1は、例えば、図1に示すように、原料を入れる坩堝10と、平坦な底面20aを有し坩堝10内上部に配設された外形円柱形状の台座20と、台座20に装着された炭化ケイ素からなる円板形状の種基板30と、坩堝10内上部に配設されたコーンノズル形状のガイド40と、坩堝10全体を覆う断熱材50と、断熱材50で覆われた坩堝10を収容する略円筒形状の反応管60と、反応管60の周囲を囲むコイル状のヒータ70と、等を備えて構成されている。
【0023】
坩堝10は、カーボン・グラファイト等からなり、有底円筒形状の坩堝本体部11と、坩堝本体部11の開口部を開閉自在に覆う円板形状の坩堝蓋部12と、により構成されている。
坩堝本体部11には、原料である炭化ケイ素粉末Pが収容されている。
坩堝蓋部12は、当該坩堝蓋部12の一方の面に台座20が取り付けられている。坩堝蓋部12は、当該坩堝蓋部12に取り付けられた台座20の底面20aを下向きにした状態で、坩堝本体部11の開口部を覆う。すなわち、台座20が取り付けられた坩堝蓋部12で坩堝本体部11に蓋をすると、当該台座20が坩堝10内上部に配設されるように構成されている。
【0024】
台座20は、カーボン・グラファイト等からなる。なお、台座20の形状は、種基板30の直径よりも大きな直径を有するとともに、外形が円柱形状であれば、図1に示すような中に空洞を有する有底円筒形状であってもよいし、中に空洞を有さない円柱形状であってもよい。
【0025】
台座20には、種基板30を保持する種基板固定用フィクサーとしてのフィクサー21が設けられている。
【0026】
フィクサー21は、台座20に装着された種基板30を固定するための固定治具である。
フィクサー21は、図2や図3に示すように、台座20の外周側面から下側に向けて当該台座20の底面20aよりも下側に突き出た状態で台座20に設けられている。
ここで、図2は、本実施形態に係る製造装置1における、種基板30の固定の仕方について説明するための模式図である。図3は、本実施形態に係る製造装置1における、種基板30の固定の仕方について説明するための図面代用写真である。
【0027】
なお、本実施形態では、図3に示すように、接着剤Gを介してフィクサー21で点状に種基板30を保持できるよう、フィクサー21を、台座20の外周側面の4箇所に等間隔で配置するように構成したが、これに限定されるものではない。台座20に装着された種基板30を、接着剤Gを介してフィクサー21で保持することが可能であれば、フィクサー21の個数や配置位置は任意である。
また、フィクサー21は、当該フィクサー21に塗布された接着剤Gを介して点状に種基板30を保持するものに限ることはなく、例えば、フィクサー21の幅(フィクサー21の突出方向に直交する方向の長さ)を実施形態の幅よりも長くしたり、或いは、フィクサー21を台座20の外周側面全体から下側に向けて当該台座20の底面20aよりも下側に突き出た状態で備えたりして、当該フィクサー21に塗布された接着剤Gを介して線状に種基板30を保持するように構成することも可能である。
【0028】
フィクサー21は、台座20の底面20aよりも下側に突き出た部分のうち内面(すなわち、種基板30と対向する面)が、台座20の外周側面に沿った単一面のみから形成されている。すなわち、フィクサー21は、台座20に装着された種基板30に向けて突出する凸部分を一切有していない。
したがって、種基板30上のSiCの成長方向の面にフィクサー21との界面がない。種基板30上のSiCの成長方向の面にフィクサー21との界面があると、炭化ケイ素単結晶Cが成長する際に、当該界面(すなわち、図11におけるSiC種基板30上のSiCの成長方向の面とフィクサーFのカーボン・グラファイトとの界面)付近から結晶が異常成長し易く、炭化ケイ素多結晶の成長を招く場合がある。また、当該界面からマイクロパイプや転位などの結晶欠陥が発生し易いため、本実施形態のように炭化ケイ素単結晶Cの成長方向に界面がない方が、これらの問題を抑制することが可能となる。
【0029】
また、フィクサー21は、図2や図4に示すように、台座20の底面20aよりも下側に突き出た部分のうち外面(すなわち、種基板30と対向する面とは反対側の面)に、内面(すなわち、種基板30と対向する面)の最下部に向かって傾斜する傾斜面21aを有している。
ここで、図4は、本実施形態に係る製造装置1における、台座20とガイド40との関係を説明するための模式図である。図5は、本実施形態に係る製造装置1における、台座20とガイド40との関係を説明するための図面代用写真であって、ガイド40の広開口部40b側から撮影して得た図面代用写真である。図6は、本実施形態に係る製造装置1における、台座20とガイド40との関係を説明するための図面代用写真であって、ガイド40の側面側から撮影して得た図面代用写真である。
【0030】
そして、ガイド40は、図4〜図6に示すように、ガイド40の狭開口部40aを上向きにした状態で当該狭開口部40aの内周端とフィクサー21の傾斜面21aとが所定の適切な距離を保つように配設されている。
このように、フィクサー21は傾斜面21aを有しているので、フィクサー21に炭化ケイ素が付着し難くすることができる。
また、ガイド部40は、狭開口部40aの内周端とフィクサー21の傾斜面21aとが所定の適切な距離を保つように配設されているので、炭化ケイ素単結晶Cの成長速度を適切に制御することが可能となる。フィクサー40とガイド40との距離は炭化ケイ素単結晶Cの成長速度に大きく関係し、炭化ケイ素単結晶Cの成長速度は結晶性とも関係するため、フィクサー21とガイド40との距離を適切に制御して、炭化ケイ素単結晶Cの成長速度を適切に制御することで、良好な品質を有する炭化ケイ素単結晶Cを的確に製造することが可能となる。
【0031】
ガイド40は、カーボン・グラファイト等からなる。そして、ガイド40は、当該ガイド40の狭開口部40aの内周端とフィクサー21の傾斜面21aとが所定の適切な距離を保つように配設されているとともに、当該ガイド40の広開口部40bの外周端が坩堝本体部11の内壁に隣接して配設されている。
このように、ガイド40を設けることで、坩堝10の内面(具体的には、坩堝蓋部12の下面等)に炭化ケイ素からなる結晶が析出されることを十分に抑制することができる。また、ガイド40を備えることで、炭化ケイ素単結晶Cが横方向に成長することを防ぐことができ、軸方向(上下方向)に向かって炭化ケイ素単結晶Cの成長を促進することが可能となる。
【0032】
坩堝10の内面に炭化ケイ素からなる結晶が析出されると、その結晶が核となって、坩堝10内において、種基板30から成長した炭化ケイ素単結晶Cとは結晶構造の連続しない炭化ケイ素多結晶が成長してしまう場合がある。この場合、炭化ケイ素単結晶Cの成長が阻害されて、炭化ケイ素単結晶Cの生産性を上げることが難しくなってしまう。また、炭化ケイ素単結晶Cの成長時には種基板30近傍の温度が2000℃を超えるため、炭化ケイ素多結晶から炭化ケイ素単結晶Cに熱応力が加えられて、炭化ケイ素単結晶Cに割れ等が生じ易くなってしまう。
これに対し、本実施形態に係る製造装置1では、ガイド40を備えることで、坩堝10の内面に炭化ケイ素からなる結晶が析出されることを十分に抑制することができるので、炭化ケイ素単結晶Cの生産性を向上させることが可能であるとともに、炭化ケイ素多結晶からの熱応力に基づく炭化ケイ素単結晶Cの割れ等を防止することが可能となる。
【0033】
なお、ガイド40の形状は、狭開口部40aと狭開口部40aに対向する広開口部40bとを有し、当該ガイド40の内面が広開口部40bから狭開口部40aへと徐々に縮小していく形状であれば、コーンノズル形状に限ることはない。ガイド40は、例えば、内面が広開口部40bから狭開口部40aへと湾曲しながら縮小していく形状に構成することも可能であるし、内面が広開口部40bから狭開口部40aへと階段状に縮小していく形状に構成することも可能である。
【0034】
反応管60は、石英等からなる。反応管60は、例えば、当該反応管60の下側から不活性ガス等の所定のガスが供給され、当該反応管60の上側から所定のガスが排出されるように構成されている。
【0035】
ヒータ70は、RFコイル等からなり、坩堝10内上部の温度が坩堝10内下部の温度よりも低くなるような所定の温度勾配で坩堝10を外側から加熱する。
具体的には、ヒータ70によって、坩堝10内下部の温度が、坩堝10内下部に位置する炭化ケイ素粉末Pを加熱昇華させることが可能な温度になるとともに、坩堝10内上部の温度が、加熱昇華された炭化ケイ素を坩堝10内上部で再結晶化させて坩堝10内上部に位置する種基板30の表面から炭化ケイ素単結晶Cを成長させることが可能な温度になるよう、坩堝10を外側から加熱することができるように構成されている。
【0036】
ここで、本実施形態に係る製造装置1を用いた炭化ケイ素単結晶Cの製造方法の一例について説明する。
【0037】
まず、坩堝蓋部12に取り付けられた台座20のフィクサー21に、カーボン接着剤等の接着剤Gを塗布する。そして、台座20の底面20aと種基板30の一方の面(裏面)とが対向するよう、種基板30を台座20に装着する。
この際、種基板30は、図2に示すように、当該種基板30の一方の面(裏面)と台座20の底面20aとの間に接着剤が一切塗布されず、当該種基板30の外周側面とフィクサー21との間に接着剤Gが塗布された状態で当該フィクサー21に保持されて固定されている。
【0038】
次いで、ガイド40の狭開口部40aの内周端とフィクサー21の傾斜面21aとの間隔が所定の適切な距離となるように、ガイド40を坩堝本体部11に取り付ける。
そして、炭化ケイ素粉末Pが収容され、ガイド40が取り付けられた坩堝本体部11に坩堝蓋部12で蓋をして、坩堝10を断熱材50で覆う。
【0039】
次いで、断熱材50で覆われた坩堝10を反応管60の内部に配設して、反応管60の内部に所定のガス(具体的には、例えば、アルゴンガスや窒素ガスなどの各種不活性ガスを混合した混合ガス)を供給する。
【0040】
次いで、所定の温度勾配(具体的には、例えば、坩堝10内上部の温度が2150℃、坩堝10内下部の温度が2200℃となるような温度勾配)が保たれるように、ヒータ70を用いて反応管60内部に配設されている坩堝10を外側から加熱するとともに、反応管60の内部の圧力を所定の圧力(具体的には、例えば、1Torr)まで減圧する。これにより、坩堝10内下部に収容されている炭化ケイ素粉末Pが加熱昇華し、加熱昇華した炭化ケイ素が坩堝10内上部で再結晶化して坩堝10内上部に配設されている種基板30の他方の面(表面)から炭化ケイ素単結晶Cが成長していく。
このようにして、例えば図7および図8に示すように、炭化ケイ素単結晶Cを製造することができる。
【0041】
そして、この製造された炭化ケイ素単結晶Cに、スライス加工や鏡面研磨加工などを施すことによって、炭化ケイ素単結晶基板を作製することができる。
【0042】
以上説明した本実施形態における炭化ケイ素単結晶の製造装置1によれば、改良レイリー法により炭化ケイ素単結晶を製造する装置であって、原料を入れる坩堝10と、平坦な底面20aを有し、当該底面20aを下向きにした状態で坩堝10内上部に配設された台座20と、台座20の底面20aに一方の面(裏面)が対向した状態で当該台座20に装着された炭化ケイ素からなる種基板30と、を備えている。そして、台座20は、種基板30の直径よりも大きな直径を有するとともに、種基板30を保持するフィクサー21を当該台座20の外周側面から下側に向けて当該台座20の底面20aよりも下側に突き出た状態で備えており、種基板30は、当該種基板30の一方の面(裏面)と台座20の底面20aとの間に接着剤が一切塗布されず、当該種基板30の外周側面とフィクサー21との間に接着剤Gが塗布された状態で当該フィクサー21に保持されて固定されている。
【0043】
すなわち、種基板30は、当該種基板30の一方の面(裏面)と台座20の底面20aとの間に接着剤が一切塗布されず、当該種基板30の外周側面とフィクサー21との間に接着剤Gが塗布された状態で当該フィクサー21に保持されて固定されている。したがって、種基板の一方の面と台座の底面との間に接着剤が塗布された状態で種基板が台座に装着されている場合と比較して、高温下でも種基板30と台座20(フィクサー21を含む)との間に熱応力が発生し難いので、当該熱応力が影響して生じるマイクロパイプや転位などの結晶欠陥の発生を抑制することが可能となる。そのため、良好な品質を有する炭化ケイ素単結晶Cを製造することが可能となる。
また、高温下でも種基板30と台座20(フィクサー21を含む)との間に熱応力が発生し難いので、当該熱応力が影響して生じる事故、具体的には、種基板30や育成された炭化ケイ素単結晶Cが割れたり、種基板30が台座20から剥離して落下したりする等の事故の発生を抑制することが可能となる。
【0044】
また、以上説明した本実施形態における炭化ケイ素単結晶の製造装置1によれば、フィクサー21は、台座20の底面20aよりも下側に突き出た部分のうち種基板30と対向する面(内面)が、台座20の外周側面に沿った単一面のみから形成されており、台座20に装着された種基板30に向けて突出する凸部分を一切有していない。
【0045】
すなわち、フィクサー21は台座20に装着された種基板30に向けて突出する凸部分を一切有していないので、種基板30上のSiCの成長方向の面にフィクサー21との界面がない。種基板30上のSiCの成長方向の面にフィクサー21との界面があると、炭化ケイ素単結晶Cが成長する際に、当該界面(すなわち、図11におけるSiC種基板のSiCの成長方向の面とフィクサーFのカーボン・グラファイトとの界面)付近から結晶が異常成長し易く、炭化ケイ素多結晶の成長を招く場合がある。また、当該界面からマイクロパイプや転位などの結晶欠陥が発生し易いため、本実施形態のように炭化ケイ素単結晶Cの成長方向に界面がない方が、これらの問題を抑制することが可能となる。
【0046】
また、以上説明した本実施形態における炭化ケイ素単結晶の製造装置1によれば、フィクサー21は、台座20の底面20aよりも下側に突き出た部分のうち種基板30と対向する面とは反対側の面(外面)に、種基板30と対向する面(内面)の最下部に向かって傾斜する傾斜面21aを有している。
そして、以上説明した本実施形態における炭化ケイ素単結晶の製造装置1によれば、コーンノズル形状のガイド40を備え、ガイド40は、当該ガイド40の狭開口部40aを上向きにした状態で当該狭開口部40aの内周端とフィクサー21の傾斜面21aとが所定の適切な距離を保つように配設されている。
【0047】
すなわち、フィクサー21は傾斜面21aを有しているので、フィクサー21に炭化ケイ素が付着し難くすることができる。
また、ガイド部40は、狭開口部40aの内周端とフィクサー21の傾斜面21aとが所定の適切な距離を保つように配設されているので、炭化ケイ素単結晶Cの成長速度を適切に制御することが可能となる。フィクサー40とガイド40との距離は炭化ケイ素単結晶Cの成長速度に大きく関係し、炭化ケイ素単結晶Cの成長速度は結晶性とも関係するため、フィクサー21とガイド40との距離を適切に制御して、炭化ケイ素単結晶Cの成長速度を適切に制御することで、良好な品質を有する炭化ケイ素単結晶Cを的確に製造することが可能となる。
【0048】
また、以上説明した本実施形態における炭化ケイ素単結晶の製造装置1によれば、フィクサー21は、台座20の外周側面の4箇所に配置されてなる。
【0049】
したがって、フィクサー21は、当該フィクサー21に塗布された接着剤Gを介して点状(線状であってもよい)に種基板30を保持しているので、種基板の一方の面と台座の底面との間に接着剤が塗布された状態で種基板が台座に装着されている場合、すなわち種基板が面状に保持されている場合に比べて、高温下でも種基板30と台座20(フィクサー21を含む)との間に熱応力が発生することを的確に抑制することが可能となる。
【0050】
また、以上説明した本実施形態における炭化ケイ素単結晶の製造装置1を用いて製造された炭化ケイ素単結晶Cにより作製される炭化ケイ素単結晶基板によれば、種基板30と台座20(フィクサー21を含む)との間に熱応力が発生することを抑制した状態で製造された炭化ケイ素単結晶Cを用いて作製されているので、良好な品質を有することが可能となる。
【0051】
[実施例]
以下に、具体的な実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例では、図1の製造装置1を用いて、炭化ケイ素単結晶Cとして4H−SiC単結晶を作製した。
【0052】
具体的には、まず、坩堝蓋部12に取り付けられた台座20のフィクサー21に、接着剤Gとしてカーボン接着剤を塗布して、台座20の底面20aと種基板30の一方の面(裏面)とが対向するよう、種基板30を台座20に装着した。
この際、種基板30は、図2に示すように、当該種基板30の一方の面(裏面)と台座20の底面20aとの間に接着剤が一切塗布されず、当該種基板30の外周側面とフィクサー21との間に接着剤Gが塗布された状態で当該フィクサー21に保持されて固定されている。
【0053】
次いで、ガイド40の狭開口部40aの内周端とフィクサー21の傾斜面21aとの間隔が所定の適切な距離となるように、ガイド40を坩堝本体部11に取り付けた。そして、500gの炭化ケイ素粉末Pが収容され、ガイド40が取り付けられた坩堝本体部11に坩堝蓋部12で蓋をして、坩堝10を断熱材50で覆った。
次いで、断熱材50で覆われた坩堝10を反応管60の内部に配設して、反応管60の内部にアルゴンガスと窒素ガス(ドーパント)との混合ガス(Ar:N=9:1)を供給した。
【0054】
次いで、坩堝10内上部の温度(すなわち、種基板30近傍の温度)が2150℃、坩堝10内下部の温度(すなわち、原料である炭化ケイ素粉末P近傍の温度)が2200℃となるような温度勾配が保たれるように、ヒータ70を用いて反応管60内部に配設されている坩堝10を外側から加熱するとともに、反応管60の内部の圧力を1Torrまで減圧した。そして、48時間経過後、ヒータ70による加熱と反応管60内部の減圧とを終了して、炭化ケイ素粉末Pの加熱昇華を停止させ、その後、種基板30の他方の面(表面)に作製された4H−SiC単結晶を取り外した。
【0055】
次に、種基板30から取り外した4H−SiC単結晶に、スライス加工や鏡面研磨加工などを施すことによって、4H−SiC単結晶基板を作製した。
次いで、作製した4H−SiC単結晶基板を用いて、マイクロパイプ数(MPD)と、転位密度としてエッチピット密度(EPD)とを測定した。
【0056】
具体的には、Si面が鏡面に磨かれた4H−SiC単結晶基板を作製した。
また、ニッケル製の容器にKOHを入れ、ホットプレート等で加熱し500℃の溶融KOHを生成した。
次いで、4H−SiC単結晶基板をニッケル製のホルダーで固定し、溶融KOHに浸した際の熱衝撃で当該基板が割れないように温めた。
次いで、4H−SiC単結晶基板を溶融KOHに浸し、10分エッチングを行った。その後、4H−SiC単結晶基板が室温近くまで冷えるのを待ち、水洗した。
そして、顕微鏡で、マイクロパイプおよび転位(それぞれ形状が異なる)をカウントすることによって、マイクロパイプ数およびエッチピット密度を測定した。その結果を、それぞれ図10(A)および(B)に示す。
また、実施例の4H−SiC単結晶の作製に使用した種基板30のマイクロパイプ数及びエッチピット密度の測定結果を、それぞれ図9(A)及び(B)に示す。
【0057】
図9(A)及び図10(A)、並びに、後述する図12(A)及び図13(A)中の各プロットは、種基板30の中心を0mmとし、種基板30中心からの位置におけるマイクロパルプ数をプロットしたものである。すなわち、図9(A)、図10(A)、図12(A)及び図13(A)は、マイクロパイプ数の分布を示す図である。
また、図9(B)及び図10(B)、並びに、後述する図12(B)及び図13(B)中の各プロットは、種基板30の中心を0mmとし、種基板30中心からの位置におけるエッチピット密度をプロットしたものである。すなわち、図9(B)、図10(B)、図12(B)及び図13(B)は、エッチピット密度の分布を示す図である。
【0058】
図9(A)及び図10(A)に示すように、実施例の4H−SiC単結晶(具体的には、実施例の4H−SiC単結晶により作製された4H−SiC単結晶基板)のマイクロパルプ数は、当該4H−SiC単結晶の作製に使用した種基板30のマイクロパルプ数とほぼ同じレベルであることがわかった。すなわち、実施例の4H−SiC単結晶の作製に使用した種基板30のマイクロパイプ数は2000cm−2以下であり、実施例の4H−SiC単結晶により作製された4H−SiC単結晶基板は、当該種基板30のマイクロパイプ数と略同等のマイクロパイプ数を有することがわかった。
【0059】
また、図9(B)及び図10(B)に示すように、実施例の4H−SiC単結晶(具体的には、実施例の4H−SiC単結晶により作製された4H−SiC単結晶基板)のエッチピット密度は、当該4H−SiC単結晶の作製に使用した種基板30のエッチピット密度とほぼ同じレベルであることがわかった。すなわち、実施例の4H−SiC単結晶の作製に使用した種基板30のエッチピット密度は40000cm−2以下であり、実施例の4H−SiC単結晶により作製された4H−SiC単結晶基板は、当該種基板30のエッチピット密度と略同等のエッチピット密度を有することがわかった。
【0060】
さらに、実施例の4H−SiC単結晶(具体的には、実施例の4H−SiC単結晶により作製された4H−SiC単結晶基板)のうち種基板30より大きい部分(図10(A),(B)においては図示省略)では、パワーデバイス用として必要とされる4H−SiC単結晶、具体的には、構造:4H、マイクロパイプ数:<10cm−2、エッチピット密度:<10000cm−2を満たすことがわかった。
【0061】
[比較例]
比較例では、図1の製造装置1の台座20を図11に示す台座Dに取り替えて、台座Dの底面全体に接着剤Gとしてカーボン接着剤を塗布し、台座Dの底面と種基板30の一方の面(裏面)とが対向するよう、種基板30を台座Dに装着した。そして、実施例と同様の製造条件で炭化ケイ素単結晶として4H−SiC単結晶を作製した。すなわち、比較例において、台座Dに装着された種基板30は、当該種基板30の一方の面(裏面)と台座Dの底面との間に接着剤Gが塗布された状態で、フィクサーFによって物理的に固定されている。
【0062】
そして、種基板30から取り外した4H−SiC単結晶に、スライス加工や鏡面研磨加工などを施すことによって、4H−SiC単結晶基板を作製した。
次いで、作製した4H−SiC単結晶基板を用いて、マイクロパイプ数及びエッチピット密度を測定した。その結果を、それぞれ図13(A)及び(B)に示す。
また、比較例の4H−SiC単結晶の作製に使用した種基板30のマイクロパイプ数及びエッチピット密度の測定結果を、それぞれ図12(A)及び(B)に示す。
【0063】
図12(A),(B)及び図13(A),(B)に示すように、比較例の4H−SiC単結晶(具体的には、比較例の4H−SiC単結晶により作製された4H−SiC単結晶基板)のマイクロパルプ数やエッチピット密度は、当該4H−SiC単結晶の作製に使用した種基板30のマイクロパルプ数やエッチピット密度の1.5倍〜3倍程度であることがわかった。
【0064】
以上の結果から、種基板30の一方の面(裏面)と台座の底面との間に接着剤が塗布された状態、すなわち面状に種基板30を保持した状態で、当該種基板30の他方の面(表面)から炭化ケイ素単結晶を成長させた場合(比較例の場合)には、当該種基板30よりも結晶品質の低い炭化ケイ素単結晶しか得られないことがわかった。一方、実施例のように、種基板30の一方の面(裏面)と台座20の底面20aとの間に接着剤が一切塗布されず当該種基板30の外周側面とフィクサー21との間に接着剤Gが塗布された状態、すなわち、接着剤Gを介してフィクサー21で点状(或いは線状であってもよい)に種基板30を保持した状態で、当該種基板30の他方の面(表面)から炭化ケイ素単結晶Cを成長させた場合には、良好な品質を有する炭化ケイ素単結晶Cを製造できることがわかった。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0066】
例えば、実施形態では、台座20の形状を外形円柱形状とし、種基板30の形状を円板形状として、台座20が種基板30の直径よりも大きな直径を有することとしたが、これに限定されるものではなく、台座20の外周側面が種基板30の外周側面よりも外側に位置するのであれば、台座20の形状や種基板30の形状は任意である。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 炭化ケイ素単結晶の製造装置
10 坩堝
20 台座
20a 底面
21 フィクサー
21a 傾斜面
30 種基板
40 ガイド
40a 狭開口部
C 炭化ケイ素単結晶
G 接着剤
P 炭化ケイ素粉末(原料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良レイリー法により炭化ケイ素単結晶を製造する装置であって、
原料を入れる坩堝と、
平坦な底面を有し、当該底面を下向きにした状態で前記坩堝内上部に配設された台座と、
前記台座の底面に一方の面が対向した状態で当該台座に装着された炭化ケイ素からなる種基板と、を備え、
前記台座は、当該台座の外周側面が前記種基板の外周側面よりも外側に位置するとともに、前記種基板を保持するフィクサーを当該台座の外周側面から下側に向けて当該台座の底面よりも下側に突き出た状態で備えており、
前記種基板は、当該種基板の一方の面と前記台座の底面との間に接着剤が一切塗布されず、当該種基板の外周側面と前記フィクサーとの間に接着剤が塗布された状態で当該フィクサーに保持されて固定されていることを特徴とする炭化ケイ素単結晶の製造装置。
【請求項2】
前記フィクサーは、前記台座の底面よりも下側に突き出た部分のうち前記種基板と対向する面が、前記台座の外周側面に沿った単一面のみから形成されており、前記台座に装着された前記種基板に向けて突出する凸部分を一切有さないことを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶の製造装置。
【請求項3】
前記フィクサーは、前記台座の底面よりも下側に突き出た部分のうち前記種基板と対向する面とは反対側の面に、前記種基板と対向する面の最下部に向かって傾斜する傾斜面を有することを特徴とする請求項1または2に記載の炭化ケイ素単結晶の製造装置。
【請求項4】
コーンノズル形状のガイドを備え、
前記ガイドは、当該ガイドの狭開口部を上向きにした状態で当該狭開口部の内周端と前記フィクサーの前記傾斜面とが所定の距離を保つように配設されていることを特徴とする請求項3に記載の炭化ケイ素単結晶の製造装置。
【請求項5】
前記フィクサーは、前記台座の外周側面の4箇所に配置されてなることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造装置。
【請求項6】
前記種基板のマイクロパイプ数は2000cm−2以下であり、
請求項1から5の何れか一項に記載の製造装置を用いて製造された炭化ケイ素単結晶により作製され、前記種基板のマイクロパイプ数と略同等のマイクロパイプ数を有することを特徴とする炭化ケイ素単結晶基板。
【請求項7】
前記種基板のエッチピット密度は40000cm−2以下であり、
請求項1から5の何れか一項に記載の製造装置を用いて製造された炭化ケイ素単結晶により作製され、前記種基板のエッチピット密度と略同等のエッチピット密度を有することを特徴とする炭化ケイ素単結晶基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−201568(P2012−201568A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69480(P2011−69480)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】