説明

炭化水素の熱分解のためのブレード付き反応器

炭化水素の熱分解のためのブレード付き反応器は、環状の頂点区間を有する通路が形成されるように、軸方向ブレード付き翼列を形成する作業ブレード(3)と、前記ブレードの端部に隣接する固定式環状カラー(10)と、このカラーおよびロータの周囲を取り巻くハウジング(5)とを有するロータを備える。1つまたは複数のバリアが通路内に取り付けられ、各バリアの後ろに入口開口部(inlet orifice)(18)が配置され、出口開口部(outlet orifice)(19)が各バリアの前に配置される。ノズル翼列を形成するノズルブレード(20)はロータ翼列の入口側に取り付けられ、ディフューザ翼列を形成するディフューザブレード(21)はロータ翼列の出口側に取り付けられる。ディフューザ翼列の出口とノズル翼列の入口の間には、ブレードのない空間(22)がある。各バリアのすぐ後ろに配置されたノズルブレードのグループは、対応する入口開口部を前記ブレードのグループに接続するチャネルが形成されるように、隔膜によって残りのノズルブレードから分離することができ、それによって反応器の起動がより簡単になる。ノズル翼列およびディフューザ翼列の幾何学的パラメータは、ロータ翼列の入口における前記翼列の範囲全体にわたる同一の圧力およびロータ翼列の出口における前記翼列の範囲全体にわたる同一の圧力を提供するために円方向に変化することができ、それによってロータとハウジングの間のすき間を通る半径方向漏れが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低級オレフィンの製造を目的とした炭化水素の熱分解のための装置に関する。技術的解決方法の本質では、他の態様における本発明は、回転ブレード付き機械に関する。
【背景技術】
【0002】
低級オレフィン(エチレン、プロピレン、およびブチレン)は、石油化学の基本的生成物であり、プラスチック、ゴム、繊維、および被覆材の商業生産において原料として用いられる。産業界において、低級オレフィンは、エタン、プロパン、ブタン、ナフサ、または軽油などの炭化水素の熱分解によって製造される。
【0003】
現在受け入れられている技術によれば、熱分解は、管状炉と急冷装置とからなる設備において実施される。気化されて水蒸気と混合された供給原料は、炉の放射室の内部にある反応管に供給される。750〜930℃の温度を有するクラッキングされたストリームは、移送配管を通って急冷装置に向けられ、そこで、反応を停止するために急速に冷却される。次いで、このストリームはプラントに移され、そこで所望の生成物と副産物に分離される。望ましくない副産物は水素、メタン、特に炭素部分であり、その一部は煤粒子の形でガスの流れによって運び去られるが、他の一部はコークスとなって反応管と下流の装置の両方の壁に析出する。
【0004】
反応帯域では、低級オレフィンを生成する一次熱分解反応と、生成された低級オレフィンを消費して副産物を生成する二次反応という2つのプロセスが同時に生じる。したがって、原料のタイプごとに、ならびに反応帯域における温度および圧力の組み合わせごとに最適な滞留時間が存在し、前記時間は生成物ストリームにおける所望の生成物の最大収率に対応する。一次反応の速度は、圧力に左右されず、温度が上昇するにつれて急速に増加するが、二次反応の速度は、温度が上昇するにつれてゆっくりと増加し、生成された低級オレフィンの分圧に比例する。そのため、プロセス温度が増加するにつれて、最適な滞留時間が急激に減少する。したがって、ナフサが熱分解されると、最適な滞留時間は、プロセス温度がそれぞれ30〜35K増加するごとに、2分の1に減少する。
【0005】
開始供給原料が水蒸気によって希釈されることにより炭化水素分圧が減少し、それによって二次反応の速度が減少し、所望の熱分解生成物の収率が増加する。しかし、この方法には、さらなるエネルギー使用の必要性に関連して制限がある。水蒸気供給量は通常、エタンまたはプロパンでは供給原料の質量の20〜40%、ブタンでは25〜50%、ナフサでは45〜50%であり、軽油では最大80〜100%とすることができる。
【0006】
熱分解の所望の生成物の収率を増加させる他の方法は、供給原料の各部分を熱分解するのに必要な熱の量がより短時間で各部分に移送されるように、プロセス温度を適切に上昇させて滞留時間を減少させることである。熱伝達率の必要な増加は、反応管の直径を減少させ、反応管壁とストリームの間の温度差を増加させることによって達成されることができる。管状熱分解炉の構造は、1985年ごろまでこの方向で進歩した。M. W. Kellogg Company社の管状炉「Millisecond」は、このような進歩の到達点であり、工業用管状炉の反応帯域への最大の熱伝達率は前記炉で達成された。これらの炉におけるプロセスは、直径28〜35mmの管において、約900〜930℃の出力ストリームの温度および約0.05〜0.1秒の滞留時間にて実行される。壁の温度とストリームの中心部の温度差は120〜310℃に達する。
【0007】
管状熱分解炉での滞留時間をさらに短縮することは、次の理由で無駄であった。反応管の壁に隣接する境界層における温度の変化が著しいので、この壁からさまざまな距離のところで動く供給原料粒子に最適な滞留時間は大幅に異なり、したがって供給原料のかなりの部分の熱分解が、最適条件とはかけ離れた条件下で行われることは避けられない。「Millisecond」炉で標準的な動作条件下では、ストリームの断面の温度差に起因する所望の生成物の損失は、滞留時間のさらなる短縮が賢明ではないような値である。
【0008】
工業用熱分解での低級オレフィンの収率は過去20年間事実上変わっておらず、1パス当たりのエタンの収率は、エタンの熱分解では約50〜52%、プロパンおよびブタンの熱分解では32〜37%、ナフサの熱分解では29〜36%、軽油の熱分解では23〜28%である。同時に、炭化水素原料の需要が増加しているので、所望の熱分解生成物の収率の増加はますます現実的になってきている。管状炉における所望の熱分解生成物の収率の増加を妨げる原因には基本的性質があるので、石油化学のこの分野が現在陥っている技術の停滞状態は、管状熱分解炉の使用を否定することによってのみ打開され得る。
【0009】
反応帯域の境界となる壁を介する熱伝達を使用しなくてもプロセスストリーム(process stream)を加熱された熱媒体と混合することによって、このストリームが加熱される装置における炭化水素の熱分解のための方法が提案された。
【0010】
米国特許第5,389,232号、第6,538,169号、および第7,312,370号には、炭化水素を熱触媒粒子の流動ストリームと混合することによる炭化水素の熱分解のための装置が開示されている。しかし、これらの装置は、その装置内での短い滞留時間を達成できないので、達成されるエチレンの収率は比較的低い。
【0011】
米国特許第4,134,824号、第4,724,272号、および第4,832,822号には、高温のガス状熱媒体を使用する、熱分解のための装置が開示されている。これらの反応器の欠点は、生成物ストリーム中のCO、CO2、および煤の含量が高いことである。これは、プロセスストリームの断面における温度差が大きいことが原因である。この方法は、オレフィンの工業生産では使用されない。
【0012】
ガス状反応媒体のストリームの運動エネルギーを熱に変換することによってこのストリームが加熱される熱分解の方法が提案された。
【0013】
米国特許第5,300,216号には、水蒸気の存在下での高強度の定常衝撃波における炭化水素の熱分解のための装置が開示されている。管状炉で約1000℃の温度まで過熱された水蒸気を、27バール(絶対圧)の圧力で超音速ノズルを通して、混合帯域および熱分解帯域を直列に置いた反応器に供給する。約627℃まで予熱された炭化水素原材料(feed)(エタン)を、ミキサを通して超音速蒸気ストリームに供給する。その結果生成される混合物は、熱分解反応を開始するのに必要な温度よりも低い温度を有する超音速ストリームを形成する。混合帯域と熱分解帯域の間には、連続的な圧縮衝撃(定常衝撃波)が配置される。この圧縮衝撃を通過するとき、超音速ストリームの運動エネルギーは熱に変換される。圧縮衝撃の下流では、混合物は、9バール(絶対圧)の圧力で音速以下の速度および約1000℃の温度を得る。反応混合物は、0.005〜0.05秒間、熱分解帯域を通過するが、この間その温度は熱分解反応の吸熱により約863℃まで低下する。エタンからエチレンへの70%の変換率が達成される。生成物ストリームは、熱交換器を通り、次にガス分離部に移る。この装置では、反応ストリームの断面の温度差は無視でき、反応器を通るすべての原料粒子の通路の温度履歴(時間の関数としての温度の変化)は同一である。しかし、炭化水素の質量に対する水蒸気供給量は、約500〜667%でなければならない。これに関連して、製造したエチレンに関するエネルギー消費量はきわめて高い。これにより、この方法は、エネルギーコストとエチレンコストの現在の相互関係において商業利用に適さなくなる。
【0014】
米国特許第4,265,732号には、軸流ブレード翼列を形成する数列のブレードを有するロータと、媒体の入口ポートと出口ポートとを有してロータおよび固定羽根(stationary vane)を囲むハウジングとを備える、炭化水素の熱分解のためのブレード付き反応器が開示されている。熱分解に要する熱は、ブレードの流体力学的抗力のためにプロセスストリームの内部で直接生成される。熱分解生成物は、冷却され、さらにガス分離に向けられる。プロセスストリームの断面の温度差は無視でき、反応器を通るすべての流れ粒子の通路の温度履歴は同一である。しかし、本発明を実施するためには、高い円周速度のブレード(450m/秒)を持つきわめて多数の段(最大43段)を有する軸流ブレード付き機械を作製することが必要であるが、大多数のブレードのまわりを流れるストリームの温度は最高熱分解温度(1050℃まで)に等しい。このような機械を設計するときに克服しなければならない困難は非常に大きいので、このような機械は作られていない。
【0015】
米国特許第7,232,937号には、入口ニップルと出口ニップルとを有するハウジングを備える炭化水素の熱分解のためのブレード付き反応器が開示されており、前記ハウジングの空洞は、ロータが回転すると空洞内に渦輪が生成されるように、指向性(directing)固定羽根とその中に置かれた作業ブレード(working blade)を有するロータとを有する。熱分解に要する熱は、ブレードの流体力学的なドラグの間に、ある量の反応媒体の内部で直接生成される。熱分解反応は、反応器と急冷装置を接続する移送管内で進行する。強力な混合の結果、反応器空洞内の流れのすべての粒子は、事実上同じ温度を有する。ただし、この空洞での滞留期間は、個々の粒子で異なる。したがって、粒子の温度履歴は、反応器空洞の滞留期間によって異なる。温度履歴が異なることによって、理論的に可能なプロセス効率と比較してプロセス効率が低くなる。この反応器は、単純な構造を有する。しかし、そのことは、信頼性を提供することとは異なる。それは、作業ブレードのまわりを流れるストリームが、最高熱分解温度に等しい温度を有するからである。
【0016】
したがって、管状熱分解炉よりも実質的に高い低級オレフィンの収率を実現する、炭化水素の熱分解における商用利用に適した装置を開発する問題には、まだ決着が付いていない。その結果、石油化学の当業者は、現在の熱分解技術を大きく向上させようとしても達成不可能であると考えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,389,232号
【特許文献2】米国特許第6,538,169号
【特許文献3】米国特許第7,312,370号
【特許文献4】米国特許第4,134,824号
【特許文献5】米国特許第4,724,272号
【特許文献6】米国特許第4,832,822号
【特許文献7】米国特許第5,300,216号
【特許文献8】米国特許第4,265,732号
【特許文献9】米国特許第7,232,937号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、反応器を通るほとんどすべての流れ粒子の通路の温度履歴が同一であることによって低級オレフィンの収率が管状熱分解炉より高い、単純で信頼性の高い炭化水素の熱分解のためのブレード反応器を提供することである。本発明の他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
炭化水素の熱分解のための反応器は、軸流ブレード翼列を形成する作業ブレードを有するロータと、入口ポートと出口ポートとを有するハウジングとを含む、回転ブレード付き機械として構成され、前記ハウジングは、このロータおよび固定羽根を囲む。
【0020】
本発明によれば、ハウジング内に設置され作業ブレードの先端に隣接する円環形状の固定式ガイドフープ(fixed guide torus-shaped hoop)がある。ハウジングは、頂点区域(meridian section)がリング形状を有する通路が形成されるように、ロータ周囲およびフープを囲む。この通路内に、1つまたはいくつかの仕切り(partition)がロータ軸に対して対称的に取り付けられ、前記仕切り(複数可)は1つまたはいくつかの同一の作業空洞の境界を画定する。入口ポートはロータ回転方向に各仕切りのすぐ後ろに位置し、出口ポートは各仕切りのすぐ前に位置する。各作業空洞内の固定羽根は、ノズル翼列(nozzle cascade)を形成するノズル羽根(nozzle vane)と、拡散翼列(diffusing cascade)を形成する拡散羽根(diffusing vane)とを含み、前記ノズル翼列および前記拡散翼列はそれぞれ、ブレード翼列(blade cascade)の上流および下流に位置する。拡散翼列の出口とノズル翼列の入口の間には、羽根なし空間(vaneless space)がある。ロータが回転すると、各作業空洞内の流体は、流れフィラメント(flow filament)がノズル翼列、ブレード翼列、拡散翼列、および羽根なし空間を繰り返し連続して横断するように、らせん状の軌道に沿って入口ポートから出口ポートに強制的に移動される。ハウジングとこの羽根なし空間内のガイドフープ(guide hoop)の間の間隙は、羽根なし空間のあらゆる地点におけるストリーム速度を低くし、それによって、ディフューザ翼列の出口で前記翼列の長さの全体にわたって同じ圧力を提供するのに十分である。
【0021】
流体がブレード翼列を通過するとき、流体は運動エネルギーを得て、その運動エネルギーは次にディフューザ翼列で熱に変換され、したがってノズル翼列の出口における温度を含めて、らせん状の軌道のすべての類似の点における流体の温度は、入口ポートから出口ポートの方向に増加する。各ロータブレードは、ノズル翼列に沿って移動するとき、次第に上昇してからブレードが仕切りを通過して次の作業空洞に入るときにジャンプするように低下する温度を有するストリームによってまわりを流れる。ブレードの温度モードは、ブレードのまわりを流れるストリームの時間平均温度によって定められる。この温度は、反応器内のプロセスストリームの最高温度より著しく低い。これは、米国特許第4,265,732号および第7,232,937号による反応器と比較した本発明の反応器の本質的な利点である。これらの特許では、すべてまたは大多数のブレードのまわりを流れるストリームの温度は、プロセスストリームの最高温度に等しい。これに関して、本発明の反応器は、より高い信頼性およびより単純な設計を有することができる。
【0022】
羽根なし空間内の均圧によって、仕切り全体で圧力差がなくなり、それによって仕切りのまわりの漏れが減少し、供給原料粒子の、主ストリーム(main stream)内の粒子の温度履歴と異なる温度履歴を有する部分が減少する。その結果、管状熱分解炉での低級オレフィンの収率より高い収率を得ることが可能である。
【0023】
第1の好ましい実施形態によれば、ブレードは、衝動タービンブレードのプロファイルを有し、凹面によってロータ回転方向に設置されており、各作業空洞は、その中に、ロータ回転方向に仕切りのすぐ後ろに配置されたノズル羽根のグループをこの作業空洞のノズル羽根の残りから分離するように取り付けられた隔壁を有する。隔壁は、入口ポートと分離されたノズル羽根のグループを接続するチャネルが形成されるように取り付けられる。このような一実施形態は、作業空洞の他の部分で非定常流動様式(flow regime)が引き続き生じながら、この分離されたノズル羽根のグループの、反応器起動時の公称ガスダイナミック(gas-dynamic)モードでの動作を実現し、したがって反応器の信頼性の高い起動を提供する。
【0024】
第2の好ましい実施形態によれば、ノズル翼列の幾何学的パラメータは、反応器が公称条件下で動作するとき、ブレード翼列の入口におけるその長さの全体にわたる事実上同じ圧力が事実上等しいように円周方向に変化し、拡散翼列の幾何学的パラメータは、ブレード翼列の出口におけるその長さの全体にわたる事実上同じ圧力が事実上等しいように円周方向に変化する。ノズル翼列および拡散翼列のパラメータで必要な変化は、作業空洞の長さの全体にわたってプロセスストリームの温度の分布および熱物性を考慮して算出することもできるし、実験によって選択することもできる。ブレード翼列への入口における均圧およびブレード翼列の出口における均圧によって、ハウジングとロータディスクの表面の間のすき間を通る半径方向漏れが減少することができる。さらに、半径方向漏れの減少によって、主ストリームで移動しない、主ストリーム内の粒子温度履歴と異なる温度履歴を有する供給原料粒子の部分が減少する。その結果、低級オレフィンのより高い収率を得る可能性が生じる。
【0025】
次に、本発明による反応器の好ましい実施形態について、一例として示す図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】2つの作業空洞を有する反応器の概略的な正面図である。
【図2】図1の線A-A上の区域を示す図である。
【図3】図1の線B-B上の円筒状の区域を示す図である。
【図4】反応器を使用する熱分解設備を示す図である。
【図5】主ストリーム内で反応器を通過する原料粒子の温度履歴を示すグラフである。
【図6】反応器を通過する流体の平均分子質量の変化を示すグラフである。
【図7】反応器内のブレード翼列および羽根翼列(vane cascade)のプロファイルおよびチャネルの形状ならびに速度三角形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
炭化水素の熱分解のためのブレード付き反応器(図1、図2、および図3)は、シャフト1とディスク2とからなるロータを含み、作業ブレード3はディスク2の周囲に沿って配置される。ブレード3は、超音速衝動タービンブレードのプロファイルを有し、径方向に向けられ、凹面によってロータ回転方向に設置され、これらのブレードは、軸流ブレード翼列を形成する。シャフト1は、駆動装置(図示せず)と接続するための連結器4を装備し、シール8および9を使用して軸受6および7でハウジング5に取り付けられる。
【0028】
一定の断面を有する円環形状の固定式ガイドフープ10は、作業ブレード3の先端に隣接する。ハウジング5は、一定の頂点断面を有する通路が形成されるように、フープ10およびディスク2を囲む。この断面は、リング形状を有する。フープ10は中空で、フープ10内に締結されハウジング5内に作製されたガイドソケット12に入る半径方向のピン11を用いてハウジング5に締結される。
【0029】
2つの仕切りは、2つの同一の作業空洞が形成されるように、フープ10とハウジング5の間の前記通路内に、ロータ軸に対して対称的に取り付けられる。各仕切りは、分割壁13ならびに後端片(aft end piece)14および先端片(nose end piece)15からなり、後端片14および先端片15はそれぞれ、ブレード翼列に対して上流および下流に配置される。端片14および15の縁部は鋭利である。以下では、「鋭利な縁部」という用語は、ブレード翼列のピッチと比較して無視できるほど薄い厚さを有する縁部を意味する。端片14および15はそれぞれ、リング16および17内に締結される。このリング16および17はハウジング5内に締結され、円周方向にロータ軸に対して位置を調整するという可能性を有する。入口ポート18はロータ回転方向に各仕切りのすぐ後ろに配置され、出口ポート19は各仕切りのすぐ後ろに配置される。
【0030】
固定ノズル羽根(Stationary nozzle vane)20は各作業空洞内でロータ翼列(rotor cascade)の上流に配置され、前記羽根は湾曲したプロファイルを有し、凸面によってリング16内にロータ回転方向に締結され、ノズル翼列を形成する。固定拡散羽根(stationary diffusing vane)21はブレード翼列の下流に配置され、前記羽根は、湾曲した超音速プロファイルを有し、凸面によってリング17内にロータ回転方向に固定され、拡散翼列を形成する。拡散翼列の出口とノズル翼列の入口の間には、羽根なし空間22 がある。
【0031】
分割壁23および鋭利な縁部を有する端片24からなる隔壁が各作業空洞内に取り付けられている。この隔壁は、入口ポート18と前記分離されたノズル羽根のグループを接続するチャネルが形成されるように、ロータ回転方向に仕切りのすぐ後ろに配置されたノズル羽根のグループをノズル羽根の残りから分離する。端片24はリング16内に締結される。
【0032】
動作の際、ロータは、図1に示すように反時計回りに回転される。両方の作業空洞は同様に動作する。ストリームは、入口ポート18を通って反応器に入り、作業空洞内で、軸がフープ10の内部にあるらせん状軌道上を移動し、前記ストリームはノズル翼列、ブレード翼列、拡散翼列、および羽根なし空間22を繰り返し連続して横断する。ブレード翼列を通過するとき、ストリームは運動エネルギーを得て、この運動エネルギーは次に拡散翼列で熱に変換される。その結果、らせん状の軌道におけるすべての類似の点における媒体の温度は、入口ポート18から出口ポート19の方向に増加する。熱分解反応の結果、作業空洞内の流れの平均分子質量は、入口ポート18 から出口ポート19の方向に減少する。
【0033】
端片14と15の間の空間において送出(outgoing)ストリームと入来(ingoing)ストリームが部分的に混合される。後端片14および先端片15は、これらのストリームの混合が最小限となるように、円周方向に互いに相対的にずらされる。
【0034】
ハウジング5と羽根なし空間22内のガイドフープ10との間の間隙は、この空間のあらゆる地点におけるストリーム速度を低くし、それによって、拡散翼列の出口で前記翼列の長さの全体にわたって事実上同じ圧力を提供するのに十分なほど大きい。
【0035】
隔壁によって分離されたノズル羽根の動作モードは、この作業空洞の他のノズル羽根の動作モードと無関係である。したがって、前記ノズル羽根のグループの通常のガスダイナミック動作モードは、非定常流動様式がまだ作業空洞の他の部分に存在するときに反応器を動作させる時間を含めて、常に提供され得る。したがって、反応器の信頼性の高い起動が実現される。
【0036】
ノズル翼列および拡散翼列の幾何学的パラメータは、反応器が公称条件下で動作するときに事実上同じ圧力がブレード翼列への入口においてその長さの全体にわたって提供され、事実上同じ圧力がブレード翼列の出口においてその長さの全体にわたって提供されるように、円周方向に変化する(詳細は以下を参照)。ブレード翼列への入口における均圧によって、ロータディスク2とリング16の間のすき間を通る半径方向漏れが減少する。ブレード翼列の出口における均圧によって、ロータディスク2とリング17の間のすき間を通る半径方向漏れが減少する。
【0037】
図4は、例で説明した反応器25と、減速ギヤ(reduction gear)27を有する定置ガスタービンエンジン26と、燃焼室28と、ボイラ利用装置(boiler-utilizer)29と、急冷蒸発装置30および31とを含むナフサ熱分解設備の図を示す。ガスタービンエンジン26の排気ガスは2つのストリームに分けられ、その一方はボイラ利用装置29の低温部(図の上部)に入り、他方のストリームは燃焼室28に入り、そこでさらに加熱され、そこからボイラ利用装置29の高温部(図の下部)に入る。
【0038】
ある圧力下で外部源(図示せず)から入って来るナフサと蒸気希釈剤(steam diluent)を混合する。その結果生じる水蒸気-供給原料混合物を、まずボイラ利用装置29の低温部のコイルで加熱し、次いでこのボイラの高温部のコイルでさらに加熱し、反応器25に供給して、そこで熱分解が実施される。生成物ストリームを、従来の構造を有する急冷装置30および31で冷却し、ある圧力下で外部源(図示せず)から前記装置に供給される冷却水を蒸発させる。急冷装置30および31からの生成物ストリームをガス分留プラント(図示せず)に供給し、そこで所望の生成物と副産物に分離する。
【0039】
供給原料は、96.9・10-3kg/モルの平均分子質量を有するナフサである。蒸気希釈剤の量は、供給原料の質量の50%である。正常動作条件下での設備の生産能力は、1時間当たり供給原料15,260kgである。単一シャフトのガスタービンエンジン26は、15MWの出口軸出力(outlet shaft power)を有し、効率は35.2%である。
【0040】
設備内の材料ストリームは、以下の特性を有する。
ガスタービンエンジン(GTE)26での燃料(メタン)消費量 3066kg/hr
GTE26の排気ガスの流量 49.9kg/s
GTE26の排気ガスの温度 495℃
燃焼室28の出口におけるガスの流量 16.5kg/s
燃焼室28での燃料(メタン)消費量 194kg/hr
燃焼室28の出口におけるガスの温度 971℃
反応器25を通過するストリームの流量 6.36kg/s
反応器25への入口における圧力 0.215MPa(絶対圧)
反応器25への入口における流れの温度 574℃
急冷装置30および31への入口における圧力 0.215MPa(絶対圧)
急冷装置30および31への入口における流れの温度 868℃
急冷装置30および31の出口における圧力 0.160MPa(絶対圧)
急冷装置30および31の出口における流れの温度 380℃
【0041】
反応器25は、以下の特性を有する。
作業空洞の数 2
ブレードの平均的区域上のロータの半径 0.502m
ブレードの数 156
ロータ回転数 4,837rpm
ブレードの平均的区域上の周速度 254.3m/s
羽根なし空間内の圧力 0.200MPa(絶対圧)
ロータ翼列への入口における圧力 0.098MPa(絶対圧)
ロータ翼列の出口における圧力 0.098MPa(絶対圧)
【0042】
図5は、主ストリーム内で移動する流れ粒子の温度履歴である。
【0043】
反応器内部での滞留時間の間、プロセスストリームはブレード翼列を7回通過し、各通過中にジャンプ加熱(jump heating)にさらされる。破線は、ストリームが翼列を通過する時間モーメント(time moment)を示す(前記通過の期間は、値が小さいことを考慮して示さない)。結果として生じる温度ジャンプ間の時間間隔は、第1のジャンプと第2のジャンプの間の4.65・10-3sから第6のジャンプと第7のジャンプの間の3.66・10-3sに徐々に減少する。滞留時間、すなわち主ストリームで反応器25の入口ポート18から急冷装置の流入口(entry)に移動する流れ粒子の通過時間は、36・10-3sである。流れ温度の上昇は、拡散翼列内部での高強度の固定圧縮衝撃(stationary compression shock)で発生する。流れ温度の低下は、流れが羽根なし空間を横断するときの熱分解反応による吸熱により発生する。温度ジャンプの値は、第1のパスの79℃から最後の第7のパスの105℃まで徐々に増加する。全7回のパスの温度ジャンプの合計は637℃である。反応媒体の最高温度(985℃)は、第7のパス時の拡散翼列の出口において達成される。
【0044】
グラフ(図6)は、反応器内での滞留時間の間の流体の平均分子質量の変化を示す。破線は、ストリームが翼列を通過する時間モーメントを示す(前記パスの期間は、値が小さいことを考慮して示さない)。ストリームの、ブレード翼列の第1のパス中に、平均分子質量は38.29・10-3kg/モル(反応器への入口における水蒸気-供給原料混合物の組成に比例する)から37.49・10-3kg/モル(漏れによる混合に起因する)に減少し、その後は熱分解反応の結果、滑らかに減少する。急冷装置に入る時間モーメントにおける熱分解生成物の平均分子質量は22.27・10-3kg/モルである。
【0045】
各作業空洞内のノズル翼列および拡散翼列は、媒体の次の各パスが次の区域で発生するような7つの区域から構成される。その結果、各前記区域で流れを形成するすべてのストリームフィラメント(stream filament)は、同じ直前の温度履歴を有し、したがって同じ温度および同じ平均分子質量を有する。ノズル翼列への入口における流れの温度(t0)およびブレード翼列への入口における流れの温度(tl)をTableI(表1)に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
したがって、流れは、熱分解反応が発生する羽根なし空間内の流れの温度より低い温度を有するロータブレードに向かう。ブレードのまわりを周期的に流れる流体の温度は161Hzの周波数で変化し、したがってブレードの温度モードは前記流体の時間平均温度
【0048】
【数1】

【0049】
によって決定される。境界層のガスダイナミック加熱の結果、非冷却ブレードの温度は、高温合金で製作されたブレードで完全に許容可能な(quite allowable)827℃である。
【0050】
各区域内部のノズル翼列と拡散翼列の両方の幾何学的パラメータは一定であり、他の区域の前記翼列の各パラメータと異なる。第1の区域の角度寸法によって、隔壁の位置が決定される(各区域の値(z)および(ss)は、ノズル翼列および拡散翼列で同じである)。羽根の中央断面上の区域の角度寸法(Δ)、羽根チャネルの数(z)、および周ピッチ(ss)をTableII(表2)に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
ノズル翼列および拡散翼列は両方とも、各作業空洞に48の羽根チャネルを有する。
【0053】
図7は、本発明を実現する一例におけるノズル翼列、ブレード翼列、および拡散翼列のプロファイルおよびチャネルの形状ならびに反応器のブレード翼列へ流入口およびブレード翼列の流出口(exit)における適切な流速三角形を示す。
【0054】
ノズル羽根は湾曲したプロファイルを有し、羽根チャネルは収縮中であり、羽根プロファイルの吸引側(suction side)の後領域(trailing region)は羽根チャネルのスロート部(throat)までまっすぐである。後縁でのノズル羽根の高さは83mmである。
【0055】
ブレード翼列は、衝動タイプ(impulse type)の超音速ブレードからなる。ブレードの前縁および後縁は鋭利であり、ブレードチャネルのスロート部はチャネルの中央部に位置し、ブレードの吸引側の前領域(leading region)はまっすぐで、傾斜角β1=34°を有する(以下では、すべての角度は、ロータ軸に垂直な面に対して測定されている)。ブレードの高さは、前縁で83mm、後縁で91mmである。ブレードの中央断面に可能なるブレード翼列の周ピッチはsr=20.22mmである。ブレード翼列の幅はb=38mmである。
【0056】
拡散翼列は、湾曲したプロファイルを有する超音速圧縮器羽根からなる。拡散羽根の前縁は鋭利で、プロファイルの吸引側はまっすぐな前領域を有する。拡散羽根の高さは、前縁で91mm、後縁で95mmである。
【0057】
ブレード翼列への流入口における流れの相対速度は超音速で、その速度の軸方向成分は亜音速である。ブレード翼列の面に対する入口流の角度は、ブレードの吸引側の前領域の傾斜(すなわち34°)に等しい。各区域のブレード翼列への流入における流れパラメータをTableIII(表3)に示す。複数の区域にわたってTableIII(表3)に示す。この表において、a1は音速、V1は流れの絶対速度、αlは絶対流れ(absolute flow)の角度、W1はブレードに対する流速、MV1 = V1/a1、MW1 = W1/alはマッハ数、
【0058】
【数2】

【0059】
はスロートピッチ比である(gは、羽根チャネルスロート部の幅である)。
【0060】
【表3】

【0061】
したがって、ブレード翼列の円周のまわりの流入口圧力の均一化は、次の各区域のノズル翼列のチャネルのスロートピッチ比の減少によって達成される。
【0062】
ブレード翼列からの流出口における流れの絶対速度は超音速で、前記速度の軸方向成分は亜音速である。拡散翼列の面に対する入口ストリームの角度は、それぞれの区域内の拡散羽根の吸引側の前領域の傾斜角に等しい。複数の区域にわたるブレードからの流出口における流れパラメータをTableIV(表4)に示す。この表において、a2は音速、W2はブレードに対する流速、β2は傾斜した流出口の相対流れ(inclination exit relative flow)の角度、V2は流れの絶対速度、MV2 = V2/a2、MW2 = W2/aはマッハ数、α2は拡散羽根の吸引側の前領域の傾斜角度である。
【0063】
【表4】

【0064】
したがって、ブレード翼列の円周のまわりの流出口圧力の均一化は、次の各区域の拡散羽根の吸引側の前領域の傾斜/勾配の増加によって達成される。
【0065】
広く知られている構造(たとえばシール、断熱、滑油系統、ハウジング部およびロータ部のための冷却系統、支持体、留め具など)を有する要素は、本発明による反応器の好ましい実施形態で説明されていない。これは、それらの実施形態が反応器の動作に影響を及ぼさず、本発明の本質に関係がないからである。
【0066】
当業者が請求項に記載された範囲全体(whole claimed field)を通して本発明を実施できるようにするために、上述の反応器の好ましい実施形態に加えて、以下の説明をすることが必要である。
【0067】
a)現在使用されている任意のタイプの炭化水素供給原料の熱分解のための、本発明による反応器を設計することが可能である。
【0068】
b)1つまたはいくつかの作業空洞を有する、本発明による反応器を設計することが可能である。他のものが等しいならば、より大きな出力の反応器がより大きな数の作業空洞を有することが好ましい。
【0069】
c)本発明による反応器では、ノズル翼列は、軸流構成、斜流構成、または半径流構成を有することができる。拡散翼列も、軸流構成、斜流構成、または半径流構成を有することができる。
【0070】
d)ブレード翼列への流入口およびこれからの流出口における流れが亜音速または超音速の絶対速度および相対速度ならびにこれらの速度の軸方向成分を任意の考えられ得る組み合わせで有する、本発明による反応器を設計することが可能である。
【0071】
e)ブレード翼列のブレードおよびノズル翼列および拡散翼列の羽根がねじれているかまたはねじれておらず、高さを通して一定または可変のプロファイルを有する、本発明による反応器を設計することが可能である。
【0072】
f)本発明による反応器内のブレード翼列を通る媒体のパスの数は異なってよい。他のものが等しいならば、ブレード上の周速度が大きいほど、または反応器の入口ポートにおける流れの温度が高いほど、前記パスの数を少なくする必要があり、逆もまた同様である。
【0073】
g)本発明による反応器は、上述の隔壁を有さなくてもよい。この場合、このような反応器の信頼性の高い起動を提供するために、ブレードは圧縮器タイプのプロファイルを有さなければならない。ただし、反応器のこのような実施形態では、他のもの(混合物組成、ブレードの周速度)が等しいならば、各パス中にプロセスストリームに移される運動エネルギーは、反応器の好ましい実施形態に比べてより低くなり、反応プロセスストリームのブレード翼列を通るパスの必要な数は大きくなる。
【0074】
h)ノズル翼列および拡散翼列の幾何学的パラメータが、特に次の各羽根および次の各羽根チャネルが、羽根のプロファイルおよびピッチの変化により前のものと異なるように、説明した実施形態より徐々に大きく円周方向に変化する、本発明による反応器を設計することが可能である。
【0075】
i)ノズル翼列およびディフューザ翼列の幾何学的パラメータが円周方向で不変である、本発明による反応器を設計することが可能である。この場合、ブレード翼列への入口における圧力およびその出口における圧力は、円周方向に変化する。しかし、これによって、ロータディスクとハウジングの各部との間のすき間内の半径方向の漏れが増加し、流れ粒子の、主ストリーム内の粒子の温度履歴と異なる温度履歴を有して主ストリームから出る部分が増加する。さらに、このような反応器内のすべての固定羽根およびロータブレードに最適な流れの入口角度と出口角度を同時に提供することは不可能である。このため、他のもの(混合物組成、ブレード上の周速度)が等しい場合、ブレードによって流れに移される運動エネルギーは減少し、ブレード翼列を通るプロセスストリームのパスの必要な回数は増加する。このような反応器での低級オレフィンの収率は、好ましい実施形態で説明した反応器での収率よりも低いことがあるが、この収率は管状熱分解炉での収率より向上することができる。
【0076】
j)ガイドフープおよび/またはハウジングが、プロセスストリームの渦巻き流れのために形成されたパスの面積が作業空洞の長さに沿って変化するような形状を有する、本発明による反応器を設計することが可能である。ただし、本発明の実施形態で説明した構造の変形は技術的利点を有する。
【0077】
それによって、本発明は、好ましい実施形態で説明した変形のみに限定されず、あらゆる修正および特許請求の範囲に対応する等価物を含む。
【産業上の利用可能性】
【0078】
現在、世界中で年間約350,000,000トンの炭化水素供給原料が低級オレフィンの製造に消費されている。これに関連して、低分子オレフィン製造用供給原料の消費量の減少は非常に望ましい。この問題は、本発明による反応器によって解決される。専門家の推定によれば、ブレード付き反応器を装備しナフサを処理する設備における炭化水素供給原料の単位当たりのエチレンの収率は、管状炉を装備する現在の設備と比較して1.5倍に(「エチレン」モードで動作する場合)増加できるが、エチレン収率とプロピレン収率の合計は、1.25〜1.3倍に増加することができる。供給原料が石油ガスの場合、所望の生成物の収率も増加させることができる。
【0079】
本発明による反応器の特定の特徴(1列のブレードを有するロータ、ブレードの比較的低い周速度、ブレードの比較的低い温度)は、現存するガスタービン技術および現存する材料を使用しながら、構造の単純さおよびこのような反応器を製作する可能性を提供する。
【0080】
必要な付属品を有する現存する工業用ガスタービンエンジン(GTE)は、本発明による反応器の駆動装置として使用可能である。GTEは、ガスタービン発電所で使用するために設計されたものであり、良好な環境特性を有する。
【0081】
本発明による反応器を設計するときには、さまざまな適用条件を考慮に入れることができる。具体的には、機関出力(unit power)のより大きなブレード付き反応器を設計することが可能であり、ブレード反応器は特定のタイプの供給原料の熱分解を意図し、反応器は、反応帯域において減少した圧力レベルを有し、所望の生成物などの最終収率を向上させる。
【符号の説明】
【0082】
1 シャフト
2 ロータディスク
3 作業ブレード
4 連結器
5 ハウジング
6 軸受
7 軸受
8 シール
9 シール
10 円環形状の固定式ガイドフープ
11 ピン
12 ガイドソケット
13 分割壁
14 後端片
15 先端片
16 リング
17 リング
18 入口ポート
19 出口ポート
20 固定ノズル羽根
21 固定拡散羽根
22 羽根なし空間
23 分割壁
24 端片
25 反応器
26 定置ガスタービンエンジン
27 減速ギヤ
28 燃焼室
29 ボイラ利用装置
30 急冷装置
31 蒸発装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸流ブレード翼列を形成するブレードと、入口ポートと出口ポートとを有するハウジングとを有するロータを含む、炭化水素の熱分解のためのブレード付き反応器であって、前記ハウジングがこのロータおよび固定羽根を囲み、
- 円環形状の固定式ガイドフープが前記ハウジング内に設置され、前記フープが前記ブレードの先端に隣接し、前記ハウジングが、通路が形成されるようにロータ周囲および前記フープを囲み、前記通路の頂点区域がリング形状を有し、
- 1つの仕切りまたはいくつかの仕切りが前記通路内にロータ軸に対して対称的に設置され、前記1つの仕切りまたはいくつかの仕切りが1つまたはいくつかの同一の作業空洞の境界を画定し、前記入口ポートが、ロータ回転方向に各仕切りのすぐ後ろに位置し、前記出口ポートが、ロータ回転方向に各仕切りのすぐ前に位置し、
- 前記固定羽根が、ノズル翼列を形成するノズル羽根と拡散翼列を形成する拡散羽根とを含み、前記ノズル翼列および前記拡散翼列がそれぞれ、各作業空洞において前記ブレード翼列の上流および下流に位置し、したがって羽根なし空間が前記拡散翼列の出口と前記ノズル翼列の入口の間に形成され、前記ノズル翼列、前記ブレード翼列、および前記拡散翼列の幾何学的パラメータは、前記ロータが回転すると、前記ノズル翼列、前記ブレード翼列、前記拡散翼列、および前記羽根なし空間を何度も横断するらせん状の軌道に沿って、各作業空洞内の流体が前記入口ポートから前記出口ポートに強制的に移動させ、
- 前記ハウジングとこの羽根なし空間内の前記ガイドフープとの間の間隙は、動作の際に、前記拡散翼列の出口において前記翼列の長さの全体にわたって事実上同じ圧力を提供するのに十分なほど大きい、反応器。
【請求項2】
前記ブレードが、衝動タービンブレードのプロファイルを有し、凹面によってロータ回転方向に設置されており、また、各作業空洞が、前記ロータ回転方向にそれぞれの仕切りのすぐ後ろに配置されたノズル羽根のグループをこの作業空洞のノズル羽根の残りから分離するように取り付けられた隔壁をその中に有し、したがって前記それぞれの入口ポートと前記分離されたノズル羽根のグループを接続するチャネルが形成される、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記ノズル翼列および拡散翼列の前記幾何学的パラメータが、前記反応器が公称条件下で動作するとき、前記事実上同一の圧力が前記ブレード翼列の入口においてその長さの全体にわたって提供され、前記事実上同一の圧力が前記ブレード翼列の出口においてその前記長さの全体にわたって提供されるように、円周方向に変化することを特徴とする、請求項1または2に記載の反応器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−521419(P2012−521419A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501954(P2012−501954)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/RU2009/000339
【国際公開番号】WO2010/110691
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511230565)
【Fターム(参考)】