説明

炭化水素またはアルコールにより排気流中の窒素酸化物を還元するための触媒および方法

炭化水素または酸素含有有機化合物還元剤による還元により排ガス中の窒素酸化物を還元するための触媒系および方法が提供される。この触媒系は銀触媒とモディファイア触媒を含み、該モディファイア触媒はモディファイア酸化物を含み、該モディファイア酸化物は、酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。モディファイア酸化物は1種または複数の無機酸化物担体に担持されており、該無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性担体である。銀触媒とモディファイア触媒の触媒系は、銀触媒単独またはモディファイア触媒単独よりもより高いNO転化率を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素または酸素含有有機化合物により、過剰酸素含有排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元するための触媒および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、発電所、工業用燃焼炉、加熱炉、ディーゼルエンジンや、その他のデバイスの排ガスは窒素酸化物、一酸化炭素、および未燃の炭化水素を含んでいる。これらの発生源からの排ガスは過剰濃度の酸素、水蒸気、および二酸化硫黄も含んでいる。
【0003】
窒素酸化物、一酸化炭素、および炭化水素の排ガスは、環境規制による規制の対象である。
【0004】
固定源や移動源からの窒素酸化物は、酸性雨の原因の一つである。これまでに、排ガスからの窒素酸化物排気を低減する様々な方法が提案されている。
【0005】
ガソリンエンジンの排ガス中の窒素酸化物(NOおよびNO、以下総称してNOと呼ぶ)は、通常、三元触媒[three-way catalysts]を用いることにより除去される。ガスタービン、ディーゼルエンジン、および希薄燃焼方式[lean burn mode]で運転されるガソリンエンジンの排ガスのような、高酸素濃度を有している排ガスからのNOの除去においては、排ガス中にNOを還元するための十分な還元剤がないので、三元触媒は効果的でない。
【0006】
過剰酸素含有の排出ガスを生成する燃焼装置からの排ガスは、典型的には、300〜600℃の温度範囲にある。この排ガスは、酸素、水蒸気、少量のSO、一酸化炭素、未燃の炭化水素、窒素、およびNOを含んでいる。この酸化性環境でのNOの選択的還元は、興味深い課題である。
【0007】
過剰酸素を含んでいる排ガス流中のNOを選択的に還元するための既存技術では、将来の厳しい排気基準を満たすことはできない。このことは、希薄[lean]−NO還元技術を向上させるための集中的かつ広範なR&D活動を促進した。
【0008】
発電所のような大規模固定型燃焼源からの窒素酸化物は、アンモニア選択的触媒還元(SCR)法により、アンモニアで触媒的に還元することができる。
【0009】
アンモニアは、しかしながら有毒である。ガス流の中に導入されるアンモニアの濃度は、大気中への過剰なアンモニアの放出を避けるために注意深くコントロールしなければならない。さらに、アンモニアSCR用途の反応器およびコントロール装置は複雑なので、アンモニアSCRの使用は、一般に、大型の装置を必要とする。アンモニアのユーザーはまた、アンモニアの輸送、適切な引渡しおよび使用のための特別な許可を地方当局および連邦当局から得ることが必要である。アンモニアSCRの用途はしたがって、一般には、発電所などの大規模施設に限られている。
【0010】
窒素酸化物は、アンモニア、水素、一酸化炭素、あるいは炭化水素などの還元剤で非触媒的に還元することもできる。触媒を用いないので、効果的にNOを除去するためには、還元剤は、排ガス中の酸素に対する化学量論量よりも多い量で加えなければならない。非触媒法はしたがって、低酸素濃度を有している排ガスに限定される。そのような低い濃度の酸素を含んでいる排気流はほとんどない。
【0011】
したがって、希薄雰囲気中でのNO還元を達成するために、排ガス中に存在している炭化水素を用いることで、および/または排ガスの中に炭化水素またはアルコールを注入することで、高酸素含量、水蒸気、および二酸化硫黄含有排ガス中のNOを還元することができる触媒および方法を開発するための多くの試みがなされてきた。
【0012】
遷移金属を用いる、または用いないゼオライト含有触媒が、炭化水素によりNOを選択的に還元するのに用いられてきた。いくつかの参考文献としては:Iwamotoらの非特許文献1;Heldらの非特許文献2;Takeshinaらの特許文献1;Armorらに対する特許文献2;Hamonらの特許文献3;J. N. Armorの非特許文献3;Hallらの特許文献4;非特許文献4;Choらに対する特許文献5;Subbiahらの非特許文献5;Li及びFlyzani-Stephanopoulosの非特許文献6及び非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;が挙げられる。一般に、ゼオライト系製剤は有望ではあるが、さらなる研究を行って、希薄条件下でNOを選択的に還元することができる安定で耐久性のある触媒を見つけることが必要とされている。
【0013】
ゼオライト系触媒に対して得られている雑多な結果とは対照的に、炭化水素を用いて希薄条件下でNOを選択的に触媒還元するための非ゼオライト系処方、特にアルミナ担持銀型の触媒については、相当な進展がある。
【0014】
アルミナ担持銀NO還元触媒についてのいくつかの代表的な参考文献としては:Yochidaらの特許文献6;Yoshidaらの特許文献7;Itohらの特許文献8;Kharasの特許文献9;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;が挙げられる。
【0015】
これらの報告では、NOと炭化水素が銀/アルミナ触媒上で反応し、数種の一時的な窒素含有中間体を生成することが示された。この窒素含有中間体からは少なくとも三つの方式で窒素が生成され得る。すなわち:1.窒素含有中間体同士の反応から;2.窒素含有中間体とNOとの反応から;または3.窒素含有中間体の分解から生成され得る。この窒素含有中間体は、例えば、アンモニア、有機硝酸エステル、ニトロソ化合物、シアネート、イソシアネートなどであり得る。これらの窒素含有中間体の多くは、有毒である。
【0016】
NO還元のために用いられている炭化水素は銀表面で部分酸化を受けて一酸化炭素を生成し得る。一酸化炭素は有害な汚染物質である。ここまで述べた窒素含有中間体および/または一酸化炭素のような二次排気を生成することなく選択的にNOを窒素に転化する触媒に対してのニーズが存在する。
【0017】
フィンランドのアボ・アカデミー大学[Abo Akademi University]の研究者(非特許文献17)は、還元剤としてオクタンを用いる2%銀/アルミナ触媒により450℃で、排気流中のNOの90%がNに転化すると報告した。300〜600℃の温度範囲でのNOの平均転化率は66%であった。しかしながら、相当な量の一酸化炭素が発生した。
【0018】
Eraenenらは、銀/アルミナ触媒の後に配置された市販の酸化触媒とガス流とを接触させることで一酸化炭素を二酸化炭素に酸化することができた。150〜600℃の温度窓ではこの酸化触媒により一酸化炭素の100%が転化された。
【0019】
驚いたことには、450℃におけるNOのNへの転化率は、銀/アルミナ触媒単独による場合の90%から、銀/アルミナ触媒と市販酸化触媒の組み合せによる場合の45%に下がった。300〜600℃の温度区間における平均NO転化率は、銀/アルミナ触媒による場合の66%から、銀/アルミナ触媒と市販酸化触媒の組み合せによる場合の32%に落ちた。300〜600℃の温度範囲では窒素の窒素酸化物への転化は熱力学的には有利なものではない。Eraenenらは、銀/アルミナ触媒と市販酸化触媒の組み合せによって、排ガスから如何にして窒素が見かけ上消え得るのかという問題を提起した。
【0020】
Eraenenらは、銀/アルミナ触媒と市販の酸化触媒を互いに対して様々な距離に置くという一連の追加実験を行った。NOのNへの転化率は、二つの触媒間の距離が大きくなるとともに増大した。NOからNへの最大転化率は、二つの触媒間の間隙が33mmで達成された。
【0021】
33mmの間隙で450℃のときのNOからNへの転化率は約88%であった。二つの触媒を物理的に混合し、間隙を完全に無くした場合、比較すると、NOからNへの転化率は、150〜600℃の全温度範囲において10%未満であった。Eraenenらは、銀/アルミナ触媒で生成した窒素含有中間体がガス相で互いに反応すると結論した。彼等は、二つの触媒間に大きな間隙を設けることは中間体が互いに反応するための時間を与えると考えた。
【0022】
二つの触媒間の間隙が大きいシステムを設計することもできるが、得られる装置は嵩張ったものになるであろう。さらに、必要とされる間隙の大きさが系によって一定のままであろうという保証はない。
【0023】
Miyadera及びYoshida(特許文献10及び特許文献11)は、酸素含有有機化合物の存在下で排ガスと排ガスクリーナーを接触させることによる、排ガスからNOを除去するための排ガスクリーナーおよび方法について述べている。この排ガスクリーナーは、銀を含む第一の触媒と、酸化タングステンまたは酸化バナジウムを含む第二の触媒とを含有している。この第二の触媒は、第一の触媒によって発生したアンモニアで窒素酸化物を還元することができる。
【0024】
酸化バナジウムは有毒であり、廃棄するのが難しい。還元剤の存在下でNOを選択的に還元するための非有害触媒に対するニーズがある。
【特許文献1】米国特許第5,017,538号明細書
【特許文献2】米国特許第5,260,043号明細書
【特許文献3】米国特許第6,063,351号明細書
【特許文献4】米国特許第6,033,641号明細書
【特許文献5】米国特許第6,645,448号明細書
【特許文献6】米国特許第5,714,432号明細書
【特許文献7】米国特許第5,534,237号明細書
【特許文献8】米国特許第5,559,072号明細書
【特許文献9】米国特許第5,980,844号明細書
【特許文献10】米国特許第6,057,259号明細書
【特許文献11】米国特許第6,284,211号明細書
【非特許文献1】Applied Catalysis 70, L15 (1991)
【非特許文献2】Society of Automotive Engineers (SAE) Technical Paper, Ser. No. 900496 (1990)
【非特許文献3】Catalysis Today 26, 147 (1995)
【非特許文献4】Feng and Hall, Journal of Catalysis 166, 368 (1997)
【非特許文献5】Applied Catal. B: Environmental 42, 155 (2003)
【非特許文献6】Journal of Catalysis 182, 313 (1999)
【非特許文献7】Applied Catalysis B: Environmental 22, 35 (1999)
【非特許文献8】A. P. Walker, Catalysis Today 26, 107 (1995b)
【非特許文献9】J.N. Armor, Catalysis Today 26, 99 (1995)
【非特許文献10】Traa et al. Microporous and Mesoporous Materials 30, 3 (1999)
【非特許文献11】J.N. Armor, Catalysis Today 31, 191 (1996)
【非特許文献12】Yu et al., Applied Catalysis B: Environmental 49, 159, (2004)
【非特許文献13】Bogdanchikova et al., Applied Catalysis B: Environmental 36, 287 (2002)
【非特許文献14】Shibata et al., Journal of Catalysis 222, 386, (2004)
【非特許文献15】Kameoka et al., Physical Chemistry Chemical Physics (PCCP) 2, 367 (2000)
【非特許文献16】Meunier et al., Journal of Catalysis 187, 493 (1999)
【非特許文献17】Eraenen et al. Journal of Catalysis 219. 25 (2003)211)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
還元剤として炭化水素またはアルコールを用いてNOを選択的に還元するための触媒および方法であって、該触媒が一酸化炭素および/または有毒な窒素含有中間体のような二次排気を生成することなくNOを選択的にNに転化することができるものである触媒および方法に対するニーズがある。炭化水素またはアルコールで選択的にNOを還元するための触媒および方法であって、該触媒系が二つの触媒間の間隙に依存しない触媒および方法に対してもニーズがある。なぜなら、間隙は、スペースの点で制限されている用途には適さない嵩張ったシステムや、非再現性を生じ得るからである。炭化水素またはアルコールで選択的にNOを還元するための触媒および方法であって、該触媒系がバナジウムなどの有害成分を含む触媒に依存しないような、触媒および方法に対してもニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の一つの態様は、炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される還元剤による還元により排ガスから窒素酸化物を除去するための触媒系に関するもので、ここでは該排ガスは該排ガス中の未燃成分に対する化学量論量よりも多い量で窒素酸化物および酸素を含んでいる。この触媒系は吸気側と排気側を有する。この触媒系は、銀および銀化合物からなる群から選択される少なくとも1種の銀成分をおよそ0.2〜およそ15重量%、および少なくとも1種の第一の無機酸化物担体を含む第一の触媒を有し、該銀成分は第一の無機酸化物担体に担持されている。
【0027】
この触媒系はまた、酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量%、および少なくとも1種の第二の無機酸化物担体を含む第二の触媒を有し、第二の無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である。モディファイア酸化物は第二の無機酸化物担体に担持されている。銀成分の重量パーセントは第一の無機酸化物担体の重量に対する銀金属に基づくものである。モディファイア酸化物の重量パーセントは第二の無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づくものである。第一の触媒と第二の触媒はその順番で触媒系の吸気側から排気側へ配置されている。
【0028】
有利には、第二の無機酸化物担体は、少なくとも1種のゼオライトを含んでいる。実施形態では、ゼオライトの少なくとも一部分は、1A族元素、1B族元素、2A族元素、2B族元素、3B族元素、希土類元素、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の元素と少なくとも部分的に交換されている。実施形態では、ゼオライトの少なくとも一部分は、アンモニウム型またはプロトン型である。好ましくは、このゼオライトはZSM−5またはβゼオライトである。有利には、このゼオライトはZSM−5とβゼオライトの混合物である。実施形態では、第一の触媒と第二の触媒の少なくとも一方が基体に担持されていてもよい。
【0029】
実施形態では、第一の触媒と第二の触媒の少なくとも一方が形状体に成形されている。有利には、第一の触媒と第二の触媒の少なくとも一方が押出成形触媒であってよい。実施形態では、この触媒系はさらに酸化触媒を含んでいてもよく、第二の触媒は第一の触媒と酸化触媒との間に配置される。好ましくは、第二の触媒はさらに酸素貯蔵材料を含んでいる。有利には、この酸素貯蔵材料は酸化セリウム系材料である。
【0030】
実施形態では、還元剤はエタノールであってよい。有利には、排ガスは、およそ1〜およそ10,000ppmのNOを含んでいる。好ましくは、排ガスは、およそ1〜およそ50ppmのNOを含んでいる。
【0031】
本発明のもう一つの態様は、炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される還元剤による還元により排ガスから窒素酸化物を除去するための方法に関するもので、ここでは該排ガスは該排ガス中の未燃成分に対する化学量論量よりも多い量で窒素酸化物および酸素を含んでいる。この方法は、本発明による触媒系を排ガスの流路に配置することを含む。この方法はまた、炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤を排ガスの中へ触媒系の吸気側で導入することを含む。この方法はさらに、還元剤を含有している得られた排ガスと触媒系とをおよそ150℃〜およそ650℃の温度で接触させ、それによって窒素酸化物と還元剤を反応させて窒素酸化物を還元により除去することを含む。
【0032】
有利には、還元剤を含有している排ガスと触媒系とをおよそ300℃〜およそ500℃の温度で接触させる。
【0033】
本発明のなおもう一つの態様は、本発明による触媒系、排ガス源、還元剤貯槽、および排ガス源によって発生した排ガスの中に貯槽から還元剤を導入するための手段、を含む排ガス処理装置に関するものであり、ここでは該排ガスは窒素酸化物を含んでおりまた還元剤は排ガスの中へ触媒系の吸気側で導入される。
【0034】
実施形態では、この排ガス処理装置はさらに酸化触媒を含んでいてもよく、ここでは第二の触媒は第一の触媒とこの酸化触媒との間に配置される。
【0035】
本発明のもう一つの態様は、還元剤と窒素酸化物とから選択的触媒還元触媒によって発生した窒素含有中間体を転化するためのモディファイア触媒に関するものである。このモディファイア触媒は、酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量%含んでいる。このモディファイア触媒はまた少なくとも1つの無機酸化物担体を含んでおり、無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である。
【0036】
モディファイア酸化物は無機酸化物担体に担持されている。モディファイア酸化物の重量パーセントは、無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づくものである。
【0037】
本発明のなおもう一つの態様は、炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される還元剤による還元により排ガスから窒素酸化物を除去するための方法に関するものである。この方法は、本発明による触媒系を排ガスの流路中に配置することを含む。この方法はまた、炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤を排ガスの中へ触媒系の吸気側で導入することを含む。
【0038】
この方法はまた、還元剤を含有している得られた排ガスと触媒系をおよそ150℃〜およそ650℃の温度で接触させ、それによって窒素酸化物と還元剤を反応させて窒素酸化物を還元により除去することを含む。
【0039】
本発明のもう一つの態様は、窒素含有中間体を窒素に転化するための方法に関するものである。この方法は、この窒素含有中間体と本発明のモディファイア触媒を接触させることを含む。
【0040】
本発明のもう一つの態様は、還元剤と窒素酸化物とから選択的触媒還元触媒によって発生した、またはエンジンによって発生した、一酸化炭素および炭化水素の少なくとも一方を転化するためのモディファイア触媒に関するものである。このモディファイア触媒は、本発明によるモディファイア触媒つまり第二の触媒である。
【0041】
本発明のもう一つの態様は、還元剤と窒素酸化物とから選択的触媒還元触媒によって発生した、またはエンジンによって発生した、ガス流中の一酸化炭素および炭化水素の少なくとも一方を転化するための方法に関するものである。この方法は、ガス流と本発明によるモディファイア触媒とを接触させることを含む。
【0042】
本発明のなおもう一つの態様は、還元剤と窒素酸化物とから選択的触媒還元触媒によって発生した、またはエンジンによって発生した、窒素含有中間体、一酸化炭素および炭化水素の少なくとも一種を転化するための硫黄耐性モディファイア触媒に関するものである。この触媒は、本発明によるモディファイア触媒を含む。
【0043】
本発明のもう一つの態様は、炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される還元剤による還元により排ガスから窒素酸化物を除去するための触媒系に関するものである。この触媒系は、本発明による触媒系を含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
銀/アルミナ触媒は、還元剤としての炭化水素または酸素含有有機化合物によるNOの選択的触媒還元(SCR)に対して効果的な触媒である。以下の議論においては、アルコールという用語は、「酸素含有有機化合物」に対する総称であると理解すべきである。この用語アルコールの意味するところは、アルコールだけに限られるのではなく、様々な酸素含有有機化合物、例えば、限定するものではないが、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、エーテル類なども含まれる。
【0045】
NOは銀表面で炭化水素またはアルコールと反応して、N、HO、CO、CO、ならびにアンモニア、硝酸エステル、シアネート、イソシアネートなどの窒素含有中間体を生成する。このSCR過程の間に生成される窒素含有中間体および一酸化炭素は有毒である。
【0046】
Eraenenらは、市販の酸化触媒による一酸化炭素の二酸化炭素への酸化は窒素酸化物の窒素への転化率を低下させることを見出した。彼等はまた、銀/アルミナ触媒と酸化触媒との間に間隙を設けると窒素酸化物の窒素への転化率が増大することを実証した。
【0047】
理論に縛られるのを望むものではないが、銀/アルミナ触媒は、次の反応:
1.炭化水素またはアルコール+NO→窒素含有中間体;
2.窒素含有中間体+NO→N
3.窒素含有中間体→N
によって炭化水素または酸素含有有機化合物(以下の議論においては「アルコール」と短縮する)還元剤による窒素酸化物の窒素への転化を触媒するものと考えられる。
【0048】
銀/アルミナ触媒の存在下で窒素酸化物と炭化水素またはアルコール還元剤とを接触させると、窒素酸化物の少なくとも一部が窒素含有中間体に転化するものと考えられる。この窒素含有中間体はNOと反応2によって反応してNを生成するか、または該中間体は反応3に示すようにNに分解し得る。
【0049】
この系に酸化触媒を加えて副生成物である一酸化炭素を二酸化炭素に酸化させる場合、窒素含有中間体は酸化触媒で窒素酸化物、二酸化炭素および水に酸化されるであろう。窒素含有中間体の酸化は、反応2および3による窒素の生成を無くするものと考えられる。酸化触媒の存在は、それゆえ、窒素酸化物の窒素への転化を少なくするものと考えられ、Eraenenらの観測と一致している。
【0050】
反応1〜3の反応スキームはまた、銀/アルミナ選択的還元触媒と酸化触媒との間に間隙が存在する場合にEraenenらによって観察された窒素酸化物の窒素への高い転化率に対して説明を与えるものである。この二つの触媒間の間隙は、銀/アルミナ触媒で生成された窒素含有中間体に対して反応2または3によって窒素を生成するための時間を与える。
【0051】
NOをNに転化するために銀/アルミナ触媒と酸化触媒との間の間隙に依存することは、反応2および3が起こるのに必要とされる間隙の大きさが反応条件に応じて変わり得るので、当てにならないしまた非効率でもある。間隙はまた反応器のサイズも増大させる。
【0052】
窒素含有中間体をNに転化するために間隙に依存することは、排ガス中のNOの濃度が低い場合さらにもっと好ましくない。窒素含有中間体は、反応1に示すように、炭化水素またはアルコールとNOとの反応から生成される。低濃度のNOを含有しているガス流での窒素含有中間体の生成速度は、窒素含有中間体の生成がNOの存在に依存するため低くなるであろう。
【0053】
窒素含有中間体はNOと反応2によって反応してNを生成する。反応2におけるいずれの反応物質の濃度も、NOの濃度に依存する。第一の反応物質である窒素含有中間体は、炭化水素またはアルコールとNOとの反応から生成される。第二の反応物質はNOである。いずれの反応物質の濃度もNOの存在に依存する。排ガス中のNOの濃度が低いことは、したがって、反応2の速度にとっては特に好ましくない。
【0054】
ガスタービンからのオフガスは、NOを約25ppmしか含有していない。そのような低濃度のNOの転化は難しい。もし従来の銀触媒がそのような低濃度のNOを少しでも転化することができるならば、反応1のみを触媒し、窒素含有中間体を生成するであろう。
【0055】
後述の実施例1および8には、フィードガス中のNOの濃度がおよそ500ppmである実験が記載されている。実施例に示すように、そのような高いNO濃度でのNOの窒素への転化率は、NOに対する還元剤の比が低い場合でもかなり高くなり得る。
【0056】
実施例2、5〜7、および9には、フィードガス中のNOの濃度がたったの25ppmである実験が記載されている。実施例3および4には、フィード流がたったの9ppmのNOしか有していない実験が記載されている。この実施例に示すように、NOの窒素への銀触媒単独上での転化率は、実施例1および8に記載されているフィードガス中のNO濃度が500ppmの場合よりも著しく低かった。加えて、このNO濃度がより低い場合は、フィードガス中のNO濃度が500ppmである場合とは違って、高NO転化率を達成するためには過剰量の還元剤を必要とする。
【0057】
理論に縛られるのを望むものではないが、フィードガス中のNO濃度が高い場合は、排ガス中の窒素含有中間体の濃度は十分高いことが考えられ、その結果上記反応2または3によって、この窒素含有中間体がNOと、もしくは互いに反応して窒素を生成することができ、結果としてNOが窒素に転化されるものと考えられる。
【0058】
実施例2〜7および9の低NO濃度では、銀触媒はNOとその還元剤間の反応を促進することができるだけであり、しかも大過剰量の還元剤のみによって促進することができ、少量の窒素含有中間体が生成する。銀触媒上を通過した後のフィードガス中の窒素含有中間体の濃度は、反応2および3によって窒素含有中間体を窒素に大量に転化するのには低すぎるかもしれない。NOの窒素への転化率は、したがって、低濃度のNOを含有するフィードガスを用いる方が、高濃度のNOを含有するフィードガスを用いる場合よりも著しく低くなり得る。
【0059】
また、実施例に示すように、銀触媒だけの使用は、相当な量の一酸化炭素が生成される結果になる。
【0060】
実施形態では、還元剤で排ガスから窒素酸化物を除去するための触媒系は第一の触媒と第二の触媒を含み、第一の触媒と第二の触媒はその順番で触媒系の吸気側から排気側へ配置されている。この第一の触媒は銀系触媒であり、第二の触媒はモディファイア触媒である。
【0061】
後述の実施例に示すように、銀触媒とモディファイア触媒の組み合わせからなる触媒系は、銀触媒単独に比べてより多くのNOをNに転化すると考えられる。理論に縛られるのを望むものではないが、本発明の実施形態によるモディファイア触媒は窒素含有中間体の窒素への転化を触媒することができる。
【0062】
本発明の実施形態によるモディファイア触媒は、Eraenenらの間隙に置き換わるものである。この能動的なモディファイア触媒により、反応2および3によって窒素含有中間体を窒素に転化することは、Eraenenらの受動的な間隙に依存するのに比べてより再現性がある。本発明の実施形態による能動的モディファイア触媒はまた、Eraenenらにより提供される受動的間隙よりも高い窒素含有中間体の転化率を与え得る。モディファイア触媒を用いている反応器は、Eraenenらの間隙に依存する装置に比べてよりコンパクトになり得る。
【0063】
本発明の実施形態による触媒系は、例えばガスタービンからの排ガスについての場合のように、排ガス中のNOの濃度が低い場合でもNOをNに転化するのに効果的であり得る。しかしながら、本発明の実施形態による銀触媒とモディファイア触媒を含む触媒系の実施形態は、低濃度のNOを含む排ガスの用途に限られない。この触媒系は、高濃度のNOを含む排ガス中のNOの転化を触媒するのにも効果的であり得る。本発明の目的のためには、NOの濃度範囲は、1〜10,000ppmであってよい。一つの実施形態では、濃度範囲は1〜約50ppmである。
【0064】
本発明の実施形態によるモディファイア触媒は、Eraenenらの間隙に対していくつかの有利な点を有しており、高いNO転化率が得られる点、間隙に比べて高い再現性を提供する点で凌駕し得るものである。
【0065】
銀触媒上で生成される窒素含有中間体は、有機硝酸エステル、シアネート、シアン化合物、イソシアネートなどの化合物であり得る。これらの化合物の多くは有毒である。本発明の実施形態によるモディファイア触媒は、この有毒な窒素含有中間体を窒素に転化し、それによって排ガスの毒性を無くすることができる。
【0066】
モディファイア触媒はまた、排ガス中の一酸化炭素および炭化水素を二酸化炭素および水に転化することができる。排ガス中に一酸化炭素および炭化水素が存在していることは、公害問題である。排ガスが銀触媒に接触した後も排ガス中に炭化水素が存在していることは、炭化水素の不完全転化によるものである。銀触媒に接触した後も排ガス中に炭化水素が存在していることは、「炭化水素の漏れ[hydrocarbon slippage]」と呼ばれてきた。排ガス中の炭化水素は排気ガス問題を引き起こし得るので、炭化水素の漏れは好ましくない。この排気流中の一酸化炭素および炭化水素はモディファイア触媒で酸化することができ、酸化触媒のサイズを小さくしたり、あるいは一酸化炭素および炭化水素を転化するための別の酸化触媒を設ける必要性を無くする可能性さえある。
【0067】
第一の触媒は、少なくとも1種の第一の無機酸化物担体に担持された少なくとも1種の銀成分を含んでいる。この銀成分は、銀金属または銀化合物であってよい。第一の無機酸化物担体は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、あるいはこれらの複合酸化物であってよい。
【0068】
実施形態では、第二の触媒であるモディファイア触媒は、酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物を含む。モディファイア酸化物は第二の無機酸化物担体に担持されており、第二の無機酸化物担体の少なくとも一種は酸性無機酸化物担体である。実施形態では、この酸性無機酸化物は、チタニア−ジルコニア、ジルコニア−アルミナ、硫酸化ジルコニア、リン酸化ジルコニア、タングステン酸ジルコニア、シリカ−アルミナ、ゼオライト、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機酸化物である。
【0069】
銀触媒
第一の触媒である銀触媒は、銀および銀化合物からなる群から選択される少なくとも1種の銀成分、および少なくとも1種の第一の無機酸化物担体を含む。好適な銀化合物としては、限定するものではないが、銀ハロゲン化物、銀酸化物、銀硝酸塩、銀リン酸塩、または銀硫酸塩が挙げられる。銀ハロゲン化物としては、銀塩化物、銀臭化物、銀ヨウ化物、銀フッ化物、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0070】
第一の無機酸化物担体は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、これらの複合酸化物、ゼオライト、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される酸化物であってよい。ゼオライトは結晶性シリカアルミナである。一実施形態では、第一の無機酸化物担体はアルミナである。
【0071】
第一の無機酸化物担体に担持されている銀成分の量は、およそ0.2〜およそ10重量%、より好ましくはおよそ0.5〜およそ5重量%、そして最も好ましくはおよそ0.5〜およそ2重量%である。銀の重量パーセントは、第一の無機酸化物担体に対する金属の重量パーセントに基づいている。
【0072】
銀触媒中の銀の量がおよそ0.2重量パーセント未満である場合は、排ガスからのNO除去は低くなり得る。銀触媒中の銀の量がおよそ10重量パーセントよりも高い場合は、排ガス中の炭化水素もしくはアルコール還元剤は酸化され、結果として低NO転化率になり得る。
【0073】
銀触媒は、無機酸化物担体に銀化合物の溶液を含浸させることによって銀化合物を無機酸化物担体上に配置させて調製することができる。あるいは、無機酸化物担体の前駆体の溶液を銀化合物の溶液と一緒に混合し、この銀化合物および無機酸化物担体前駆体の合わせた溶液を担体に共含浸させることでできる。この担体と、銀化合物および無機酸化物担体前駆体の合わせた溶液とを焼成すると、銀触媒が生成される。
【0074】
別の実施形態では、銀化合物および無機酸化物担体前駆体の溶液を焼成して銀触媒を生成させることができ、ここでは無機酸化物担体前駆体が、焼成されると担体を形成する。
【0075】
様々な方法によって調製した銀触媒は、アルコールや炭化水素のような還元剤による窒素酸化物の還元に対して様々な活性および/または選択性を有し得る。本発明の実施形態によるモディファイア触媒は、第一の触媒である銀触媒がどのようにして調製されたかに関係なく窒素含有中間体を窒素に転化するのに効果的であろう。
【0076】
モディファイア触媒
実施形態では、第二の触媒はモディファイア触媒であり、モディファイア触媒は、少なくとも1種の第二の無機酸化物担体に担持された、酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜30重量パーセント含み、第二の無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である。
【0077】
モディファイア触媒は第二の無機酸化物担体に担持されたモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量%含んでいてよく、モディファイア酸化物の重量パーセントは第二の無機酸化物担体の合わせた重量に対する対応金属の重量に基づいている。
【0078】
より好ましくは、モディファイア触媒は、第二の無機酸化物担体上にモディファイア酸化物をおよそ1重量パーセント〜およそ20重量%、そして最も好ましくは第二の無機酸化物担体上にモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ10重量%含有し得る。モディファイア酸化物の混合物もまた好適であり得る。
【0079】
実施形態では、モディファイア触媒はモディファイア酸化物として酸化鉄を含み得る。別の実施形態では、モディファイア触媒はモディファイア酸化物として酸化セリウムを含み得る。なおもう一つの実施形態では、モディファイア触媒はモディファイア酸化物として酸化銅と酸化セリウムの混合物を含み得る。もう一つの実施形態では、モディファイア触媒は、モディファイア酸化物として酸化銅、酸化マンガン、および酸化セリウムの混合物を含み得る。
【0080】
第二の無機酸化物担体は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、これらの複合酸化物、ゼオライト、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物であってよい。ゼオライトは結晶性シリカアルミナである。第二の無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である。この無機酸化物担体は商業的に入手可能な材料であってよい。別の実施形態では、この無機酸化物担体は、適切な前駆体から調製してもよい。例えば、無機酸化物担体は、アルコキシドを加水分解することで調製することができる。無機酸化物担体を調製する他の適切な方法は、当業者には周知である。
【0081】
実施形態では、この酸性無機酸化物担体は、シリカアルミナ、チタニア−ジルコニア、アルミナ−ジルコニア、タングステン酸ジルコニア、硫酸化ジルコニア、リン酸化ジルコニア、アルミノリン酸塩(ALPO)、シリコアルミノリン酸塩(SAPO)、ゼオライト、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。上記ゼオライトは、適切であればどのようなゼオライトであってもよい。好適なゼオライトとしては、限定するものではないが、ゼオライト−A、チャバザイト、EMT−ゼオライト、Y−ゼオライト、X−ゼオライト、L−ゼオライト、モルデナイト、フェリエライト、ZSM−5、ZSM−Il、およびβゼオライト、ならびにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ゼオライトもしくはゼオライト混合物の少なくとも一部分は、H型形態、またはアンモニウム型形態にある。実施形態では、ゼオライトの少なくとも一部分は、周期表の1A族元素、1B族元素、2A族元素、2B族元素、3B族元素、希土類元素、ならびにこれらの混合物からの少なくとも1種と少なくとも部分的に交換されている。
【0082】
実施形態では、ゼオライトは、ZSM−5、ZSM−11、βゼオライト、モルデナイト、フェリエライト、Y−ゼオライト、X−ゼオライト、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0083】
実施形態では、モディファイア触媒はさらに酸素貯蔵材料を含んでおり、その酸素貯蔵材料は酸化セリウム系材料である。酸素貯蔵材料はリッチ排ガスには酸素を供給し、リーン排ガスからは酸素を取り込むことができ、フィードガス中の変動する酸素の供給から触媒を守る。酸化セリウム系酸素貯蔵材料はまた、モディファイア触媒成分の担体としての役割を果たすこともできる。酸化セリウム系材料がモディファイア触媒成分の担体である場合は、その酸化セリウム系材料は、酸素貯蔵材料であることに加えて第二の無機酸化物担体の一種となり得る。
【0084】
実施形態では、第二の無機酸化物担体は、およそ40重量%のアルミナ、およそ50重量%のゼオライト、およびおよそ10重量%の酸素貯蔵材料を含み得る。このゼオライトは、100%ZSM−5、ZSM−5とβゼオライトの組み合わせ、または他の適当なゼオライト、あるいはゼオライトの混合物であってよい。ゼオライトの混合物がβゼオライトとZSM−5の混合物である実施形態では、βゼオライト対ZSM−5の比は0〜1とすることができる。ゼオライトは、アンモニウム型形態、プロトン型形態(H−型)であってよく、あるいは1A族元素、1B族元素、2A族元素、2B族元素、3B族元素、希土類元素、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の元素と完全にまたは部分的に交換されていてもよい。酸素貯蔵材料は、CeO、Ce1−□Zr、ランタニドまたはランタニドの混合物をドープしたセリア・ジルコニア、あるいはこれらのあらゆる組み合わせであり得る。
【0085】
基体
第一の触媒と第二の触媒のいずれかまたは両方を基体に担持させることができる。本明細書で使用する場合、基体は、触媒の担持についての技術分野で知られている任意の担体構造である。本発明の一つの実施形態では、基体は、ビーズまたはペレットの形態である。ビーズまたはペレットは、アルミナ、シリカアルミナ、シリカ、チタニア、これらの混合物、または適切な材料から形成することができる。実施形態では、基体はハニカム担体である。ハニカム担体は、セラミックハニカム担体または金属ハニカム担体であり得る。セラミックハニカム担体は、例えばシリマナイト、ジルコニア、葉長石、リシア輝石、マグネシウムシリケート、シリコンカーバイド、ムライト、アルミナ、コージライト(MgAlSi18)、その他のアルミノシリケート材料、あるいはこれらの組み合わせから形成することができる。網目状発泡体のような他のセラミック担体および金属担体も好適である。
【0086】
担体が金属ハニカム担体である場合は、その金属は、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的または主要成分である合金であり得る。金属担体の表面を約1000℃超の高温で酸化して、合金の表面に酸化物層を形成させることによって合金の腐食耐性を良くすることができる。この合金表面上の酸化物層はまた、モノリス担体表面へのウォッシュコートの付着を良くすると思われる。好ましくは、金属であれセラミックであれ、すべての基体担体は三次元担持構造を呈している。
【0087】
本発明の一つの実施形態では、基体はモノリス担体であってよくこの担体はモノリス全体にわたって延びている複数の細かい、平行な流れ通路を有している。この通路は適切であればどのような断面の形状または大きさであってもよい。この通路は、例えば、台形、長方形、正方形、正弦形、六角形、楕円形、あるいは円形であってもよいが、他の形状も適している。このモノリスは断面1平方インチあたり約10〜約1200個あるいはそれ以上のガス吸気開口部つまり通路を含んでいてよいが、もっと少ない数の通路を用いることもできる。実施形態では、モノリスは、断面1平方インチあたりおよそ400個のガス吸気開口部を有している。
【0088】
実施形態では、第一の無機酸化物担体および/または第二の無機酸化物担体および/または第一および/または第二の触媒のその他の成分を基体にウォッシュコートとして配置することができる。ウォッシュコートは、触媒の各成分を水に懸濁させて水性スラリーを形成させ、その水性スラリーを基体にウォッシュコートすることで形成させることができる。スラリーは基体に適切であればどのような方法によっても付着させることができる。例えば、基体をスラリーの中に浸漬することができるし、あるいはスラリーを基体にスプレーすることもできる。別の実施形態では、当業者に知られている、基体にスラリーを付着させる他の方法を用いることもできる。基体が、平行な流れ通路を有するモノリスの担体である場合は、ウォッシュコートは通路の壁に形成させることができる。流れ通路の中を流れるガスは、通路壁上のウォッシュコートおよび該ウォッシュコート上に担持されている材料に接触する。
【0089】
この水性スラリーには酸または塩基溶液あるいは各種の塩や有機化合物などの他の成分を加えて該スラリーのレオロジーを調節することもできる。レオロジーを調節するのに用いることができる化合物のいくつかの例としては、限定するものではないが、水酸化テトラエチルアンモニウム、他のテトラアルキルアンモニウム塩、酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、グリセロール、市販のポリマー例えばポリエチレングリコール、およびその他の適切なポリマーが挙げられる。酸素貯蔵材料が存在している場合は、水性スラリーのレオロジーを改善することもできる。酸素貯蔵材料が存在していることあるいは他のレオロジー添加物が存在していることによるものと思われるウォッシュコートスラリーのレオロジーの改善は、ウォッシュコートスラリーの基体への付着性を高め得る。
【0090】
実施形態では、第一の触媒の銀成分、または第二の触媒のモディファイア酸化物をこの水性スラリーに酸化物としてあるいは酸化物の前駆体(例えば硝酸塩、酢酸塩、もしくは他の塩、および/またはこれらの混合物)として加えることができる。
【0091】
本発明の例示的な実施形態では、ウォッシュコートは、第一の無機酸化物担体または第二の無機酸化物担体および場合によってはゼオライトおよび/または酸素貯蔵材料を基体にスラリー付着させることで形成することができる。
【0092】
ウォッシュコート中には、(第一の触媒のための)銀成分の水可溶性前駆体塩または(第二の触媒のための)モディファイア酸化物の水可溶性塩を含む溶液を含浸させ、および/または交換させることができる。
【0093】
本発明で用いられる触媒は:
(a)基体;および
(b)触媒;
を含む。
【0094】
基体上にウォッシュコートが存在する場合は、触媒組成はさらに基体上のウォッシュコートを含み得る。
【0095】
基体、ウォッシュコート、および含浸もしくは交換溶液を焼成して触媒組成を形成させることができる。実施形態では、ウォッシュコートおよび含浸もしくは交換溶液は焼成の前に乾燥させてもよい。
【0096】
第一の触媒が基体に担持されている場合は、第一の触媒組成は:
a)基体;および
b)第一の触媒;
を含む。この場合、第一の触媒は:
銀および銀化合物からなる群から選択される少なくとも1種の銀成分をおよそ0.2〜およそ15重量%;および
少なくとも1種の第一の無機酸化物担体であって、銀成分がこの第一の無機酸化物担体に担持されている第一の無機酸化物担体;
を含む。
【0097】
第二の触媒が基体に担持されている場合は、第二の触媒組成は:
a)基体;および
b)以下:
酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量%;および
少なくとも1種の第二の無機酸化物担体であって、第二の無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である第二の無機酸化物担体;
を含む第二の触媒;
を含む。
【0098】
この場合、モディファイア酸化物は第二の無機酸化物担体に担持され、
銀成分の重量パーセントは第一の無機酸化物担体の重量に対する銀金属に基づくものであり、また
モディファイア酸化物の重量パーセントは第二の無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づくものである。
【0099】
別の実施形態では、第一および第二の触媒のいずれかまたは両方を適切な形状例えばハニカム、ペレット、またはビーズに成形することができる。実施形態では、第一および第二の触媒のいずれかまたは両方を押出品に押出成形することができる。
【0100】
実施形態では、第一の触媒は、銀成分、第一の無機酸化物担体、および第一の触媒のその他の成分を水と一緒にミリング[milling]またはマリング[mulling]してペーストを形成することで生成することができる。このペーストをダイスから押し出して押出成形品を生成することができる。この押出成形品を乾燥させ、焼成し、これによって第一の触媒を生成することができる。
【0101】
同様に、実施形態では、第二の触媒は、モディファイア酸化物もしくはモディファイア酸化物の前駆体、第二の無機酸化物担体、および第二の触媒のその他の成分を水と一緒にミリングまたはマリングしてペーストを形成することで生成することができる。このペーストをダイスから押し出して押出成形品を生成することができる。この押出成形品を乾燥させ、焼成し、これによって第二の触媒を生成することができる。
【0102】
別の実施形態では、第一および第二の触媒のいずれかまたは両方をペレットにプレス加工することができる。形状体の触媒を成形するその他の方法も適している。
【0103】
図1は、本発明の実施形態による排ガス処理装置を示すものである。この装置は、触媒系、排ガス源、還元剤貯槽、および排ガスの中に還元剤を導入するための手段を含んでいる。
【0104】
この触媒系は、第一の触媒10および第二の触媒20を含んでいる。この触媒系は、吸気側および排気側を有する。
【0105】
第一の触媒10は銀選択的触媒還元触媒であり、これは第一の無機酸化物担体に担持された銀成分を含んでいる。実施形態では、第一の触媒10は銀/アルミナ触媒である。第二の触媒20は、本発明の実施形態によるモディファイア触媒である。第三の触媒30は、酸化触媒、例えば、限定するものではないが、Pt/Al触媒であり、これは任意付加的である。
【0106】
第一の触媒10および第二の触媒20は、その順番で触媒系の吸気側から排気側へ配置されている。
【0107】
第一の触媒対第二の触媒の重量比は、1:5〜5:1の比にある。この比が1:5よりも大きいと、窒素酸化物と還元剤との反応が十分に進行するのには銀触媒が不十分となり得る。
【0108】
第一の触媒対第二の触媒(モディファイア触媒)の重量比が5:1よりも大きいと、第一の触媒(銀触媒)上で発生した窒素含有中間体を完全に転化するのにはモディファイア触媒が不十分となり得る。
【0109】
より好ましくは、第一の触媒(銀触媒)対第二の触媒(モディファイア触媒)の重量比は、1:3〜3:1の重量比にあり、そして最も好ましくはおよそ1:1である。
【0110】
貯槽40には、炭化水素や酸素含有有機化合物のような還元剤が入っている。実施形態では、還元剤はエタノールであってよい。排ガス源50は燃焼器であってこれが排ガスを発生する。排ガスはNOを含んでいる。
【0111】
実施形態では、還元剤は排気流の中に還元剤注入器60によって注入される。還元剤は排ガスの中に適切であればどうような方法で導入してもよい。還元剤を排ガスの中に還元剤注入器60によって導入しているのは、説明のためだけであって限定することを意味するものではない。還元剤は排ガスの中に適切であればどのような手段で導入してもよい。例えば、還元剤を含んでいる液体の中に不活性ガスをバブリングさせることでよい。不活性ガスと同伴還元剤を排ガスの中に導入することができ、これによって還元剤が排ガスの中に導入される。還元剤を含んでいる液体は、液体の還元剤、還元剤の溶液、あるいは還元剤を含んでいるその他の適切な液体であってよい。
【0112】
還元剤はまた、還元剤を還元剤注入器60から注入することによっても排ガスの中に導入することができる。還元剤を排ガスの中に導入するその他の手段は当業者には明らかであろう。
【0113】
NOを除去するための方法
排ガスは、普通、排ガス中に含まれているNOを還元するための還元剤を十分含んでいない。炭化水素や酸素含有有機化合物の還元剤は、普通、排ガスが第一の触媒10である銀触媒に接触する前に排ガスの中に導入される。排ガスと還元剤は、第一の触媒10、次いで第二の触媒であるモディファイア触媒に接触し、これによって排ガス中の窒素酸化物が還元される。排ガスと還元剤は、第二の触媒20であるモディファイア触媒に接触した後、任意的に酸化触媒30と接触する。酸化触媒30は、排ガス中に残っている炭化水素、一酸化炭素、および窒素含有有機中間体を酸化する。
【0114】
第二の触媒であるモディファイア触媒は窒素含有中間体を窒素に転化し、また相当な量の炭化水素および一酸化炭素を二酸化炭素および水に転化するので、酸化触媒30は任意付加的である。炭化水素および/または一酸化炭素のより完全な転化が必要とされる場合は、触媒系中に酸化触媒30を用いるのが好ましいと思われる。モディファイア触媒20は、炭化水素および/または一酸化炭素の少なくとも一部分を酸化することができるので、モディファイア触媒20の存在は、それがない場合に必要とされるであろう酸化触媒30の量よりもより少ない量を用いることを可能にすることができる。
【0115】
還元剤は、炭化水素、または酸素含有有機化合物(例えばアルコール、アルデヒド、またはケトン)であってよい。還元剤はまた、炭化水素の混合物、酸素含有有機化合物の混合物、あるいは炭化水素と酸素含有有機化合物の混合物であってもよい。炭化水素を含有している燃料もまた還元剤として用いることができる。ガソリン、ケロシン、ディーゼル、燃料油、C重油、およびその他の燃料などの燃料は適している。
【0116】
酸素含有有機化合物は、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類などであってよい。エタノールおよびイソプロパノールは好適なアルコールの例であるが、他のアルコールや酸素含有有機化合物も用いることができる。
【0117】
実施形態では、還元剤はエタノールである。
【0118】
NOに対する還元剤の炭素/NO比は、およそ1〜およそ1000の範囲、より好ましくはおよそ1〜およそ200の範囲、そして最も好ましくはおよそ1〜およそ10の範囲にある。運転経費を下げるためには、特に大型の用途に対しては、より低い炭素/NO比が一般的に好ましい。
【0119】
後述の実施例で示されるように、フィードガス中のNO濃度が低い場合はより高い炭素/NO比を用いるのが有利であると思われる。フィードガス中のNO濃度が低い場合NO転化率は高炭素/NO比によって向上し得る。
【0120】
第一の触媒である銀触媒を通過する排ガスの空間速度は、およそ1,000時−1〜およそ100,000時−1の範囲、より好ましくはおよそ1,000時−1〜およそ50,000時−1の範囲、そして最も好ましくは1,000時−1〜およそ30,000時−1の範囲にある。
【0121】
第二の触媒である、本発明の実施形態によるモディファイア触媒を通過する排ガスの空間速度は、およそ1,000時−1〜およそ100,000時−1の範囲、より好ましくはおよそ1,000時−1〜およそ50,000時−1の範囲、そして最も好ましくは1,000時−1〜およそ30,000時−1の範囲にある。
【0122】
第三の触媒である酸化触媒を通過する排ガスの空間速度は、およそ1,000時−1〜およそ100,000時−1の範囲、より好ましくはおよそ1,000時−1〜およそ50,000時−1の範囲、そして最も好ましくは1,000時−1〜およそ30,000時−1の範囲にある。
【0123】
排ガスは第一の触媒10および第二の触媒20とおよそ150℃〜およそ700℃の温度、より好ましくはおよそ300℃〜およそ600℃の温度、そして最も好ましくはおよそ300℃〜およそ500℃の温度で接触する。
【0124】
排ガスの温度がおよそ150℃よりも低いと、窒素酸化物の還元は低くなり得る。およそ650℃よりも高い温度では、還元剤は酸化され得る。還元剤が酸化されると、窒素酸化物を還元するための排ガス中の還元剤が不十分になり得る。
【0125】
第二の触媒20であるモディファイア触媒は、単独で用いて窒素含有中間体を窒素に転化することができる。この窒素含有中間体を窒素に転化するための反応条件は、第一の触媒10および第二の触媒20のいずれもが存在しているときの、その第二の触媒20に対して用いられる反応条件と類似の条件にすることができる。第二の触媒20であるモディファイア触媒を用いて一酸化炭素や炭化水素を二酸化炭素に転化することもできる。
【0126】
本発明の触媒および方法によって、内燃機関の排ガスや工業廃ガスから、窒素酸化物、炭化水素、および一酸化炭素を除去する能力が向上した。この触媒および方法は、過剰量の酸素で運転されるあらゆるエンジン、例えばディーゼルエンジン、希薄燃焼ガソリンエンジン、あるいは圧縮天然ガスで燃料供給されるエンジンに対して適用することができる。この触媒および方法はまた、ガスタービン、発電所、石炭火力発電所、および工業用ボイラーつまり炉で用いることもできる。
【実施例】
【0127】
以下の実施例は、本発明の範囲を説明するものであって、限定するものではない。当然、当業者に知られている他の方法を代わりに用いることができることは理解されるべきである。
【0128】
実施例1:酸化触媒有り/無しでのアルミナ担持銀触媒による温度の関数としてのNO転化率
銀/アルミナモノリス触媒を次のようにして調製した。水、硝酸銀、およびアルミナを混合して、スラリーを形成した。このスラリーをボールミルし、1平方インチあたり400個のセルがあるモノリス基体にコートし、そして600℃で焼成して、アルミナモノリス基体担持1.2%銀被覆触媒10を作製した。
【0129】
図2は、図1に示すアルミナ担持白金酸化触媒30が銀触媒の後のフィード流中に配置されている場合といない場合の、1.2%Ag/Al触媒10についての温度(℃)に対するNO転化率のグラフを示すものである。
【0130】
試験は、NOを500ppmおよびエタノールを600ppm含んでいるフィード流で行った。フィードガスはまた、バランスが窒素で酸素を15%、二酸化炭素を5%、水蒸気を10%含んでいた。フィード流の流速は1分間あたり1標準リットルに維持した。これは空間速度20,000時−1に相当する。表1は、400℃におけるNO転化率および排気CO濃度を示すものである。この銀触媒では400℃でNOの95%が還元されたが、この触媒では相当な量の一酸化炭素が生成した。この銀触媒によって生成した一酸化炭素は、アルミナ担持白金酸化触媒を用いることにより除去することができた。表1の実施例1Bも、アルミナ担持銀触媒の後にアルミナ担持白金酸化触媒が存在すると、アルミナ担持銀触媒によって生成した一酸化炭素の実質的に全部が除去されたことを示している。
【表1】

【0131】
表1および図2に示すように、酸化触媒有り/無しでの銀触媒についてのNO転化率は、フィードガスがNOを500ppmを含んでいる場合、およそ300〜600℃の温度範囲では同じようなものであった。もし排ガスが銀触媒上を通った後に多量の窒素含有中間体を含んでいたとすると、この窒素含有中間体は酸化触媒によって酸化され、見掛けのNO転化率を下げたであろう。NO転化率が酸化触媒の付加によっても大きくは変わらなかったという事実は、排ガスが酸化触媒に接触するときには排ガス中にはほんの少量の窒素含有中間体しかなかったことと一致し得る。したがって、図2の結果は、NO濃度が高い場合(例えば、およそ500ppm)は、銀/アルミナ触媒単独でNOを窒素に転化することができる可能性があることを示唆するものである。
【0132】
実施例2:NOを25ppm含んでいるフィード流での、酸化触媒有り/無しでの銀触媒におけるNO転化率
銀/アルミナモノリス触媒を、二つの異なる調製方法で調製した。触媒1は、実施例1に記載した1ステップウォッシュコート法で調製した。
【0133】
触媒2は、基体をアルミナでウォッシュコートし、その後そのアルミナウォッシュコートに硝酸銀の水溶液を含浸する2ステップ法で調製した。触媒2は、次のようにして調製した。アルミナと水を混合してアルミナスラリーを形成した。このスラリーをボールミルし、1平方インチあたり400個のセルがあるモノリス基体にコートし、そして乾燥させた。このアルミナコートモノリスに硝酸銀を含浸し、そして600℃で焼成してアルミナ担持1.2%銀触媒を作製した。
【0134】
焼成モノリス触媒上の金属負荷量を表2に示す。表中、パーセント負荷量は、アルミナ担体の重量に対する金属の重量を基にして計算されている。
【表2】

【0135】
触媒3は、ウォッシュコート基体の含浸により調製したPt/Al酸化触媒である。
【0136】
表3に示す組成の試験ガスを触媒と1分あたり1リットルの速度(これは8,000時−1の空間速度に相当する)で接触させた。この試験は、300〜500℃の温度範囲で行った。
【表3】

【0137】
触媒1および2を、酸化触媒である触媒3有り/無しでのNO転化率について試験した。温度の関数としての試験結果を図3に示す。400℃におけるNO転化率および排気CO濃度(ppm)を表4にまとめた。
【表4】

【0138】
図3および表4に示すように、NOを25ppm含んでいる表3のフィードガスについての全てのケースにおいて、銀系触媒の下流に酸化触媒が存在すると、銀含有触媒単独での対応する系と比較して、より低いNO転化率に至った。酸化触媒が、銀系触媒で生成した有機窒素含有中間体を酸化した可能性があることが考えられる。この有機窒素含有中間体からは反応2および3によって窒素が生成する。もしこの有機窒素含有中間体が酸化されるとすると、NO転化率は低下することが考えられ、図3および表4に示す結果と一致している。
【0139】
銀触媒がどのようにして調製されたかには関係なく、NO転化率は、酸化触媒が存在していた場合、より低かった。
【0140】
実施例3:酸化触媒有り/無しでのプロパンを還元剤とするNO9ppm含有フィード流による銀/アルミナ触媒におけるNO転化率とCO生成
図4は、NOを9ppm含んでいるフィードガスでの6000ppmプロパンを還元剤とする銀/アルミナ触媒についての温度に対するNO転化率(左側の軸)および排気CO(右側の目盛り)の一連のグラフを示すものである。フィードガスはまた、バランスを窒素として酸素12%、二酸化炭素4%、および水蒸気10%も含んでいた。試験は、空間速度8000時−1で行った。
【0141】
プロパンを還元剤として用いた場合、COはNO転化の副生成物として生成した。このCOを酸化触媒で酸化することによりCOが除去される。しかしながら、図4に示すように、酸化触媒の存在下では見掛けのNO転化率は大きく低下する。酸化触媒が、反応1によって生成した窒素含有中間体を酸化した可能性があり、これによって見掛けのNO転化率が低くなったことが考えられる。
【0142】
実施例4:鉄モディファイア触媒有り/無しでのエタノールを還元剤とするNO9ppm含有フィードガスでの銀/アルミナ触媒についての温度に対するNO転化率
鉄含有のモディファイア触媒は次のようにして調製した。およそ40重量%のアルミナ、50重量%の混合ゼオライト、および10重量%のCe0.24Zr0.66La0.040.06と、水を混合して混合ウォッシュコート含有スラリーを形成した。混合ゼオライトは、50/50重量比のH−ZSM−5とH−βであった。この混合ウォッシュコートスラリーをボールミルし、400セル/平方インチモノリスにコートし、そして乾燥させた。
【0143】
鉄10%を含有するモディファイア触媒をこの混合ウォッシュコート上に形成させるのに十分な量の硝酸鉄を、ウォッシュコート基体の吸水量に等しい量の蒸留水に溶解させた。この硝酸鉄溶液をウォッシュコート基体に含浸させ、そして乾燥させた。この乾燥基体を550℃で焼成して、鉄モディファイア触媒を生成させた。
【0144】
図5は、銀/アルミナ触媒を含む各種の系についてのNO9ppmおよびエタノール2250ppm含有排ガスでのNO転化率vs温度の一連のプロットを示すものである。他のフィード流成分などは、実施例2に対して用いられたのと同じである。
【0145】
プロットは、銀/アルミナ触媒単独(プロット4A)、銀/アルミナ触媒+鉄モディファイア触媒(プロット4B)、銀/アルミナ触媒+鉄モディファイア触媒+酸化触媒(プロット4C)、鉄モディファイア触媒単独(プロット4D)、および銀/アルミナ触媒+酸化触媒(プロット4E)について示されている。図5では、プロット4Aとプロット4Bにおける全触媒体積は同じである。図5では、プロット4Bとプロット4Cにおける銀触媒/鉄モディファイア触媒の体積比はおよそ1:1である。表5に、各種の触媒系についての400℃におけるNO転化率をまとめた。
【表5】

【0146】
NO9ppmおよびエタノール2250ppm含有フィード流での400℃におけるNO転化率は、銀触媒単独での84%(プロット4A)から銀触媒と酸化触媒の組み合せを含む触媒系(プロット4E)での9%に落ちた。理論に縛られるのを望むものではないが、酸化触媒が、銀/アルミナ触媒で発生した窒素含有中間体を酸化し、それによって見掛けのNO転化率が下がった可能性があることが考えられる。
【0147】
銀/アルミナ触媒と鉄モディファイア触媒の組み合せ(プロット4B)による400℃におけるNO転化率は75%であった。このNO転化率は、銀触媒単独に対する84%のNO転化率よりもほんの少ししか低くなかった。モディファイア触媒が、銀/アルミナ触媒で発生した窒素含有中間体を窒素に転化した可能性があることが考えられる。銀触媒で発生した窒素含有中間体の窒素への転化は、銀触媒で達成された高NO転化率を維持するであろう。
【0148】
Ag/Al触媒とモディファイア触媒の後に酸化触媒を配置した場合(プロット4C)、NO転化率は、ほんの少し、およそ67%に落ちた。窒素含有中間体が鉄モディファイア触媒で転化され、少量の窒素含有中間体だけが残り酸化触媒によって酸化された可能性があることが考えられる。大量の窒素含有中間体の酸化が、NO転化率を低下させたのであろう。
【0149】
Ag/Al触媒と酸化触媒の組み合せでのNO転化率は、たったの9%であった(プロット4E)。4Eの系では、窒素含有中間体を窒素に転化することができるモディファイア触媒が存在しない。銀/アルミナ触媒で生成した窒素含有中間体の多くは、酸化触媒によって酸化され、それによってNO転化率が低下したのであろう。
【0150】
プロット4Dは、Ag/Al触媒無しでの鉄モディファイア触媒に対するNO転化率vs温度のプロットを示すものである。プロット4Dの鉄モディファイア触媒によるNO転化率はたったの18%であった。モディファイア触媒単独では、NO転化活性は低い。プロット4Bに見るように、この鉄モディファイア触媒の前に銀/アルミナ触媒が配置された場合に、NO転化率は遥かに高かった。
【0151】
実施例5:NO25ppm含有フィード流によるセリウムモディファイア触媒有り/無しでのNO転化率
セリウム系モディファイア触媒1を1ステップ法により次のようにして調製した。およそ40重量%のアルミナ、50重量%の混合ゼオライト、および10重量%のCe0.24Zr0.66La0.040.06と、十分な量の硝酸セリウム、水を混合してセリウム系混合ウォッシュコートスラリーを形成した。混合ゼオライトは、50/50重量比のH−ZSM−5とH−βであった。このスラリーをボールミルし、400セル/平方インチモノリスにコートし、そして乾燥させた。この乾燥モノリスを550℃で焼成して、混合ウォッシュコートモノリス担持10重量%セリウム基体を作製した。
【0152】
セリウム系モディファイア触媒2は、次に述べる2ステップ法により調製した。およそ40重量%のアルミナ、50重量%の混合ゼオライト、および10重量%のCe0.24Zr0.66La0.040.06と、水を混合して混合ウォッシュコートスラリーを形成した。混合ゼオライトは、50/50重量比のH−ZSM−5とH−βであった。このスラリーをボールミルし、400セル/平方インチモノリスにコートし、そして乾燥させた。550℃で焼成したときに、得られる触媒が、混合ウォッシュコートモノリス基体担持10重量%セリウムを形成するような十分な量の硝酸セリウムを、この乾燥モノリスに含浸した。
【0153】
実施例2と同じ条件下で、セリウム系モディファイア触媒1と2が有り/無しでのNO転化率試験を行った。図6に、モディファイア触媒有り/無しでの銀触媒についての温度に対するNO転化率のグラフを示す。表6に、三つの触媒系に対する400℃におけるNO転化率を示す。
【表6】

【0154】
実施例5Aの試験は、空間速度8000時−1(触媒1である1.2%Ag/Al触媒の体積に基づく)で行った。実施例5Bおよび5Cの試験は、全空間速度8000時−1(銀触媒とモディファイア触媒の体積に基づく)で行った。実施例5Bおよび5Cにおける銀触媒/モディファイア触媒の体積比はおよそ1:1であった。
【0155】
実施例5Bと5Cの触媒系は、実施例5Bの触媒系がモディファイア触媒1を含んでおり、実施例5Cの触媒系がモディファイア触媒2を含んでいたという点で異なる。
【0156】
実施例5Bおよび5Cのモディファイア触媒での400℃におけるNO転化率は、モディファイア触媒を含んでいない実施例5Aに対する49%に比較して、それぞれ91%、90%であった。銀/アルミナSCR触媒と酸化触媒との間にセリウムモディファイア触媒を配置すると、NO転化率を約40%増大させた。モディファイア触媒の二つの異なる調製方法では、NO転化率は大きくは変わらなかった。
【0157】
図6に、実施例5A、5B、および5Cについての温度に対するNO転化率のグラフを示す。銀触媒とPt/Al酸化触媒との間にモディファイア触媒が配置された実施例5Bと5CについてのNO転化率は、実施例5A(モディファイア触媒無しの触媒系)のおよそ25〜50%に比較して、50〜90%であった。実施例5Bと実施例5Cにおけるモディファイア触媒の存在は、モディファイア触媒無しの実施例5Aの触媒系に比較して300〜500℃の全温度範囲において、NO転化率を向上させた。理論に縛られるのを望むものではないが、実施例5Bと5Cのモディファイア触媒が窒素含有中間体を窒素に転化し、それによって、モディファイア触媒を含んでいなかった実施例5Aの触媒系よりもより高いNO転化率を与えた可能性があることが考えられる。モディファイア触媒無しの実施例5Aの銀触媒由来の窒素含有中間体は、それらが窒素に転化される前に酸化触媒によって酸化されたのであろう。窒素含有中間体の酸化がNO転化率を低下させるのであろう。
【0158】
実施例6:下流のPt/Al酸化触媒有り/無しでの銀触媒とモディファイア触媒によるCO転化率
表7に示す三つの触媒系に対して表3のフィードガスを用いてNOとCOの転化率の試験を400℃において行った。三つの系全てにおいて第一の触媒は1.2%Ag/Al触媒であった。実施例6Bでは、銀触媒の後に、実施例5に記載したように調製したセリウム系モディファイア触媒1を用いた。実施例6Cでは、このセリウム系モディファイア触媒1の後にPt/Al触媒を配置した。
【表7】

【0159】
銀触媒単独での実施例6Aの排出ガスはCOを86ppm含んでいた。実施例6Bでは、モディファイア触媒1を付加すると、排出ガス中のCOの量は27ppmに下がった。このモディファイア触媒は、ガス流中の銀/アルミナ触媒によるCOの約69%を酸化した。
【0160】
実施例6Cではモディファイア触媒1のあとにPt/Al触媒を配置した。排出ガスは、2ppm未満のCOを含んでいた。モディファイア触媒と白金/アルミナ酸化触媒の組み合せにより実質的に全てのCOが除去された。
【0161】
実施例6Bによって示されるように、モディファイア触媒は、COを酸化する優れた能力を有している。モディファイア触媒の後の酸化触媒により、排出ガス流中に残っていたCOが除去された。
【0162】
実施例7:イソプロピルアルコールを還元剤とする銀/アルミナ触媒と各種モディファイア触媒によるNO転化率
実施例4に記載した方法に従って各種金属によるモディファイア触媒を調製した。このモディファイア触媒の組成と調製方法を表8に掲載した。
【表8】

【0163】
表8のモディファイア触媒は、次のようにして試験した。フィードガス流中のモディファイア触媒の前に1.2%銀/アルミナ触媒を配置した。モディファイア触媒の後にアルミナ担持白金触媒を配置した。還元剤としてはイソプロパノールを用いた。試験は、表9に記載のフィードガスで行った。
【表9】

【0164】
図7は、試験した各種モディファイアについての温度の関数としてのNO転化率の一連のグラフを示すものである。全空間速度は、銀触媒+モディファイア触媒に基づいている。銀触媒/モディファイア触媒の体積比は1:1であった。表10は、表8に示すモディファイア触媒系を用いた各種触媒系についての450℃でのNO転化率および排気CO濃度を示すものである。
【表10】

【0165】
実施例8:アルミナ担持銀触媒とモディファイア触媒を用いたNO500ppm含有フィードガスでのNO転化率
実施例8では、NO500ppm、エタノール600ppm、酸素6%、二酸化炭素5%、および水蒸気10%含有のフィードガスを用いた。試験は、300〜500℃の温度範囲において空間速度20,000時−1で行った。全空間速度は、モディファイアを用いない場合は銀触媒のみに基づき、モディファイア触媒を用いる場合は銀触媒+モディファイア触媒に基づいている。モディファイア触媒を含有する試験では銀触媒/モディファイア触媒の比はおよそ1:1であった。
【0166】
図8は、実施例8で行った試験についての一連のグラフを示すものである。試験した触媒系は次の通りである:アルミナ担持銀触媒;アルミナ担持銀触媒+白金酸化触媒;アルミナ担持銀触媒+セリウム系モディファイア触媒1+白金酸化触媒;アルミナ担持銀触媒その後に実施例7に記載したようにして調製したCu−Ceモディファイア触媒+白金酸化触媒;およびアルミナ担持銀触媒+Cu−Ceモディファイア触媒。このグラフは、モディファイア触媒が存在すると、およそ500ppmの高吸気NO濃度が用いられた場合でも、NO転化率が高くなることを示している。
【0167】
実施例9:SO1ppmおよびNO25ppm含有フィード流でのNO転化率の長期活性試験
1.2%Ag/Al触媒、セリウム系モディファイア触媒1(実施例5に記載のようにして調製した)、および下流のPt/Al酸化触媒を含む触媒系の安定性を測定するために、長期活性試験を行った。
【0168】
試験は、エタノール濃度を試験の期間中に変えたこと、および運転550時間後に二酸化硫黄を導入したこと以外は表3に示されているガス流により400℃で行った。試験全体は全空間速度8000時−1(銀触媒+モディファイア触媒1に基づく)で行った。銀触媒/モディファイア触媒の体積比は1:1であった。図9に時間に対するNO転化率のグラフを示す。
【0169】
試験は、エタノール/NO比6で開始した。EtOH/NO比をこの後5に、次いで4に下げた。運転およそ100時間後に、NO転化率はエタノール/NO比4で98〜99%に安定した。NO転化率は次の300時間安定であり、そしてこの時点で試験を休止した。触媒系をこのあと空気雰囲気におよそ100時間曝露した。試験を再開した後は、NO転化率は、試験を休止する前の98〜99%に対して約90%に下がった。しかしながら、NO転化率は、まもなくおよそ98〜99%に安定した。触媒系のNO転化率が安定するまでには、誘導期間があり得る。
【0170】
運転およそ550時間の時点で、フィード流の中におよそ1ppmの二酸化硫黄を導入した。NO転化率は98〜99%からおよそ80%に低下した。およそ1100時間の時点で試験を休止し、そして銀触媒を新鮮な銀触媒で置き換えた。銀触媒が新鮮である以外は前と同じ条件で試験を再開すると、直ぐに、NO転化率は98%に上がった。これは、NO転化活性の低下が銀触媒に対する二酸化硫黄の毒作用によるものであることを示している。モディファイア触媒は、フィード流中の二酸化硫黄の存在によっては失活されなかった。
【0171】
実施例の結論
実施例1および8では、NOを500ppm含んでいる排ガスが用いられた。実施例2、5、6、7、および9では、NOを25ppm含んでいる排ガスが用いられた。実施例3および4では、NOを9ppm含んでいる排ガスが用いられた。広い範囲のNO濃度について調べた。選択的触媒還元の挙動は、実施例1の高NO系と実施例2および3の低NO系とでは大きく異なっていた。
【0172】
第一には、実施例1に述べられているように、銀/アルミナ触媒の後の酸化触媒の存在は、NO濃度が高い場合、例えば、およそ500ppmの場合に、NO転化率を低下させなかった。
【0173】
第二には、排ガスが低濃度のNOを含有する場合、例えば実施例3および4の9ppmの場合、高NO転化率を得るためには高い還元剤/NO比が必要であった。それにひきかえ、実施例1に示すように、排ガスが500ppmのNOを含有する場合は、1.4:1の還元剤/NO比でNOの90%超を還元することができた。
【0174】
第三には、様々な還元剤を用いることができた。例えば:実施例1と2、4〜6、8および9に示されているエタノール;実施例3に示されているプロパン;あるいは実施例7に示されているイソプロピルアルコールである。
【0175】
第四には、排ガス中のNO濃度が低い場合(例えば、25ppm)、実施例2に示すように、銀/アルミナ触媒の後に酸化触媒を配置することは、還元剤のいかんを問わず、結果としてNO転化率の大幅な低下となった。
【0176】
第五には、実施例4〜9に述べられているように、SCR触媒とその後のモディファイア触媒の組み合せにより、低NO濃度を含んでいる排気流および高NO濃度を含んでいる排気流で、窒素への高NO転化率を得ることができた。特に低濃度のNOを含んでいる排気流についてのNO転化率は、モディファイア触媒の後に酸化触媒が配置された場合でも下がらなかった。モディファイア触媒はまた、NOの窒素への選択的転化率を高めることに加えて相当な量のCOを酸化することができた。
【0177】
第六には、モディファイア触媒単独では、優れたNO転化活性はない。銀触媒とその後のモディファイア触媒の組み合せが高NO転化率を生じることができる。この組み合せは、それに限らないが、排ガスが低NO濃度を含んでいる場合、特に有利であると思われる。
【0178】
第七には、銀触媒とモディファイア触媒の組み合せは、実施例9で述べたように、運転の数時間は安定である触媒系となる。本モディファイア触媒はまた、これも実施例9で述べたように、硫黄耐性である。
【0179】
本発明は、その必須とする特徴から逸脱することなく他の具体的な形で具現化することができる。記載した実施形態は、あらゆる面で例示としてのみであって、限定するものではないとみなされるべきである。本発明の範囲はしたがって上記の記載によってよりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の等価の意味および範囲に入る変更はすべて特許請求の範囲に包含されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】還元剤として炭化水素またはアルコールを用いてNOを還元するための本発明の実施形態による排ガス処理装置の模式図である。
【図2】およそ500ppmのNOおよびおよそ600ppmのエタノールを含有する排ガスについてのアルミナ担持白金酸化触媒有り/無しでの銀/AL触媒についての温度(℃)に対するNO転化率のグラフである。
【図3】NO25ppmおよびエタノール250ppmを含有するフィードガスでの、銀/Alウォッシュコート触媒2A;銀/Alウォッシュコート触媒と酸化触媒2B;銀/Al含浸触媒2C;および銀/Al含浸触媒と酸化触媒2D;についての温度(℃)に対するNO転化率の一連のグラフである。
【図4】銀/Al触媒、および銀Al触媒と酸化触媒とを含む触媒系についてのNO9ppmおよびプロパン6000ppm含有吸気ガスでの温度(℃)に対するNO転化率(左側の軸)および排気CO(ppm)の一連のグラフである。
【図5】NO9ppmおよびエタノール2250ppm含有フィードガスでの、以下:銀/Al触媒4A;銀/Al触媒と鉄モディファイア触媒4B;銀/Al触媒と鉄モディファイア触媒と酸化触媒を含む触媒系4C;鉄モディファイア触媒4D;および銀/Al触媒と酸化触媒4E;についての温度(℃)に対するNO転化率の一連のグラフである。
【図6】NO25ppmおよびエタノール250ppm含有フィード流での、以下:銀/Al触媒と酸化触媒5A;銀/Al触媒とセリウム系モディファイア触媒1と酸化触媒を含む触媒系5B;および銀/Al触媒とセリウム系モディファイア触媒2と酸化触媒を含む触媒系5C;についての温度(℃)に対するNO転化率の一連のグラフを表す。
【図7】NO25ppmおよびイソプロピルアルコール300ppm含有フィード流にでの、以下:銀/Al触媒と混合ウォッシュコート担持セリウムモディファイア触媒と酸化触媒を含む触媒系7A;銀/Al触媒と混合ウォッシュコート担持鉄モディファイア触媒と酸化触媒を含む触媒系7B;銀/Al触媒と混合ウォッシュコート担持セリウムおよび銅モディファイア触媒と酸化触媒を含む触媒系7C;および銀/Al触媒と混合ウォッシュコート担持銅モディファイア触媒と酸化触媒を含む触媒系7D;についての温度(℃)に対するNO転化率の一連のプロットである。
【図8】NO500ppmおよびエタノール600ppm含有フィード流での、以下:銀/Al触媒8A;銀/Al触媒と酸化触媒8B;銀/Al触媒とセリウムモディファイア触媒と酸化触媒を含む触媒系8C;銀/Al触媒と銅およびセリウムモディファイア触媒と酸化触媒を含む触媒系8D;および銀/Al触媒と銅とセリウムモディファイア触媒8E;についての温度(℃)に対するNO転化率の一連のプロットである。
【図9】NO25ppm、変動比のエタノール/NO、およびSO1ppm(SOは550時間の時点で導入が開始される)含有フィード流での、銀/Al触媒とセリウム系モディファイア触媒1と酸化触媒を含む触媒系による400℃での長期活性試験についての時間(時)に対するNO転化率のプロットである。
【符号の説明】
【0181】
10 第一の触媒
20 第二の触媒
30 酸化触媒
40 貯槽
50 排ガス源
60 還元剤注入器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される還元剤による還元により排ガスから窒素酸化物を除去するための触媒系であって、前記排ガスは該排ガス中の未燃成分に対する化学量論量よりも多い量で窒素酸化物および酸素を含み、該触媒系が吸気側と排気側を有し、
該触媒系が:
銀および銀化合物からなる群から選択される少なくとも1種の銀成分をおよそ0.2〜およそ15重量パーセント;および
少なくとも1種の第一の無機酸化物担体であって、前記銀成分はこの第一の無機酸化物担体に担持されている第一の無機酸化物担体;
を含む第一の触媒:および
酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量パーセント;および
少なくとも1種の第二の無機酸化物担体であって、この第二の無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である第二の無機酸化物担体;
を含む第二の触媒:
を含み、
モディファイア酸化物は第二の無機酸化物担体に担持され、
銀成分の重量パーセントは第一の無機酸化物担体の重量に対する銀金属に基づいており、
モディファイア酸化物の重量パーセントは第二の無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づいており、
第一の触媒と第二の触媒がその順番で触媒系の吸気側から排気側へ配置されている、
前記触媒系。
【請求項2】
第二の無機酸化物担体が少なくとも1種のゼオライトを含む、請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
ゼオライトの少なくとも一部分が、1A族元素、1B族元素、2A族元素、2B族元素、3B族元素、希土類、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の元素と少なくとも部分的に交換されている、請求項2に記載の触媒系。
【請求項4】
ゼオライトの少なくとも一部分が、アンモニウム型およびプロトン型からなる群から選択される形態にある、請求項2に記載の触媒系。
【請求項5】
ゼオライトが、ZSM−5およびβゼオライトからなる群から選択される、請求項2に記載の触媒系。
【請求項6】
ゼオライトが、ZSM−5とβゼオライトの混合物である、請求項2に記載の触媒系。
【請求項7】
第一の触媒と第二の触媒の少なくとも一方が基体に担持されている、請求項1に記載の触媒系。
【請求項8】
第一の触媒と第二の触媒の少なくとも一方が形状体に成形されている、請求項1に記載の触媒系。
【請求項9】
第一の触媒と第二の触媒の少なくとも一方が押出成形触媒である、請求項8に記載の触媒系。
【請求項10】
さらに酸化触媒を含み、第二の触媒が第一の触媒と酸化触媒との間に配置されている請求項1に記載の触媒系。
【請求項11】
第二の触媒がさらに酸素貯蔵材料を含む、請求項1に記載の触媒系。
【請求項12】
酸素貯蔵材料が酸化セリウム系材料である、請求項11に記載の触媒系。
【請求項13】
還元剤がエタノールを含む、請求項1に記載の触媒系。
【請求項14】
排ガスがおよそ1〜およそ10,000ppmのNOを含む、請求項1に記載の触媒系。
【請求項15】
排ガスがおよそ1〜およそ50ppmのNOを含む、請求項1に記載の触媒系。
【請求項16】
モディファイア酸化物が、酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、および酸化マンガンからなる群から選択される、請求項1に記載の触媒系。
【請求項17】
モディファイア酸化物が、酸化銅、酸化マンガン、および酸化セリウムを含む、請求項16に記載の触媒系。
【請求項18】
炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される還元剤による還元により排ガスから窒素酸化物を除去するための方法であって、前記排ガスは該排ガス中の未燃成分に対する化学量論量よりも多い量で窒素酸化物および酸素を含み、該方法が:
排ガスの流路中に吸気側と排気側を有する触媒系を配置すること;
排ガスの中に炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤を該触媒系の吸気側で導入すること;
得られる還元剤含有排ガスと触媒系をおよそ150℃〜およそ650℃の温度で接触させ、それによって該窒素酸化物と該還元剤を反応させて該窒素酸化物を還元により除去すること;
を含み、
触媒系が:
銀および銀化合物からなる群から選択される少なくとも1種の銀成分をおよそ0.2〜およそ15重量パーセント;および
少なくとも1種の第一の無機酸化物担体であって、前記銀成分はこの第一の無機酸化物担体に担持されている第一の無機酸化物担体;
を含む第一の触媒:および
酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量パーセント;および
少なくとも1種の第二の無機酸化物担体であって、この第二の無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である第二の無機酸化物担体;
を含む第二の触媒:
を含み、
モディファイア酸化物は第二の無機酸化物担体に担持され、
銀成分の重量パーセントは第一の無機酸化物担体の重量に対する銀金属に基づいており、
モディファイア酸化物の重量パーセントは第二の無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づいており、
第一の触媒と第二の触媒がその順番で触媒系の吸気側から排気側へ配置されている、
前記方法。
【請求項19】
還元剤含有排ガスと触媒系をおよそ300℃〜およそ500℃の温度で接触させる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される還元剤による還元により排ガスから窒素酸化物を除去するための触媒系であって、前記排ガスは該排ガス中の未燃成分に対する化学量論量よりも多い量で窒素酸化物および酸素を含み、該触媒系が吸気側と排気側を有し、該触媒系が:
銀および銀化合物からなる群から選択される少なくとも1種の銀成分をおよそ0.2〜およそ15重量パーセント;および
少なくとも1種の第一の無機酸化物担体であって、銀成分はこの第一の無機酸化物担体に担持されている第一の無機酸化物担体;
を含む第一の触媒:および
酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量パーセント;および
少なくとも1種の第二の無機酸化物担体であって、この第二の無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である第二の無機酸化物担体;
を含む第二の触媒:
を含み、
モディファイア酸化物は第二の無機酸化物担体に担持され、
銀成分の重量パーセントは第一の無機酸化物担体の重量に対する銀金属に基づくものであり、
モディファイア酸化物の重量パーセントは第二の無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づくものであり、
第一の触媒と第二の触媒がその順番で触媒系の吸気側から排気側へ配置されている、
前記触媒系;
排ガス源;
還元剤の貯槽;および
排ガス源によって発生した排ガスの中へ貯槽から還元剤を導入するための手段であって、該排ガスは窒素酸化物を含み、該還元剤は排ガスの中へ触媒系の吸気側で導入される前記手段;
を含む排ガス処理装置。
【請求項21】
さらに酸化触媒を含み、第二の触媒が第一の触媒と酸化触媒との間に配置される請求項18に記載の排ガス処理装置。
【請求項22】
選択的触媒還元触媒によって還元剤と窒素酸化物から発生した窒素含有中間体を転化するためのモディファイア触媒であって、該モディファイア触媒が:
酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量パーセント;および
少なくとも1種の無機酸化物担体であって、この無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である無機酸化物担体;
を含み、
モディファイア酸化物は無機酸化物担体に担持され、
モディファイア酸化物の重量パーセントはこの無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づくものである、
前記モディファイア触媒。
【請求項23】
炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される還元剤による還元により排ガスから窒素酸化物を除去するための方法であって、前記排ガスは該排ガス中の未燃成分に対する化学量論量よりも多い量で窒素酸化物および酸素を含み、
該方法が:
排ガスの流路中に吸気側と排気側を有する触媒系を配置すること;
排ガスの中へ炭化水素および酸素含有有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤を触媒系の吸気側で導入すること;および
得られる還元剤含有排ガスと触媒系をおよそ150℃〜およそ650℃の温度で接触させ、それによって窒素酸化物と還元剤を反応させて窒素酸化物を還元により除去すること;
を含み、
前記触媒系が:
選択的触媒還元触媒を含む第一の触媒:および
酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量パーセント;および
少なくとも1種の第二の無機酸化物担体であって、この第二の無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である第二の無機酸化物担体;
を含む第二の触媒:
を含み、
モディファイア酸化物は第二の無機酸化物担体に担持され、
モディファイア酸化物の重量パーセントは第二の無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づくものであり、
第一の触媒と第二の触媒がその順番で触媒系の吸気側から排気側へ配置されている、
前記方法。
【請求項24】
窒素含有中間体と、以下:
酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量パーセント;および
少なくとも1種の無機酸化物担体であって、この無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である無機酸化物担体;
を含むモディファイア触媒とを接触させること、
を含む窒素含有中間体を窒素に転化するための方法であって、
モディファイア酸化物は無機酸化物担体に担持され、
モディファイア酸化物の重量パーセントは無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づくものである、前記方法。
【請求項25】
還元剤と窒素酸化物とから選択的触媒還元触媒によって発生した、またはエンジンによって発生した、一酸化炭素および炭化水素の少なくとも一方を転化するためのモディファイア触媒であって、該触媒が:
酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量パーセント;および
少なくとも1種の無機酸化物担体であって、この無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である無機酸化物担体;
を含み、
モディファイア酸化物は無機酸化物担体に担持され、
モディファイア酸化物の重量パーセントは無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づくものである、
前記モディファイア触媒。
【請求項26】
還元剤と窒素酸化物とから選択的触媒還元触媒によって発生した、またはエンジンによって発生した、ガス流中の一酸化炭素および炭化水素の少なくとも一方を転化するための方法であって、該方法が:
ガス流と、以下:
酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量パーセント;および
少なくとも1種の無機酸化物担体であって、この無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である無機酸化物担体;
を含むモディファイア触媒とを接触させること、
を含み、
モディファイア酸化物は無機酸化物担体に担持され、
モディファイア酸化物の重量パーセントは無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づくものである、前記方法。
【請求項27】
還元剤と窒素酸化物とから選択的触媒還元触媒によって発生した、またはエンジンによって発生した、窒素含有中間体、一酸化炭素および炭化水素の少なくとも一種を転化するための硫黄耐性モディファイア触媒であって、該触媒が:
酸化鉄、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ランタニド、酸化アクチニド、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化オスミウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化カリウム、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモディファイア酸化物をおよそ1〜およそ30重量パーセント;および
少なくとも1種の無機酸化物担体であって、この無機酸化物担体の少なくとも1種は酸性無機酸化物担体である無機酸化物担体;
を含み、
モディファイア酸化物は無機酸化物担体に担持され、
モディファイア酸化物の重量パーセントは無機酸化物担体の重量に対する対応金属に基づくものである、
前記触媒。
【請求項28】
窒素酸化物に対する還元剤の与えられた比において触媒系の活性が時間とともに向上する、請求項1に記載の触媒系。
【請求項29】
窒素酸化物を還元するのに必要とされる還元剤の量が時間とともに減少する、請求項1に記載の触媒系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−531260(P2008−531260A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557164(P2007−557164)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/006454
【国際公開番号】WO2006/093802
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(506423741)カタリティック ソリューションズ,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】