説明

炭化水素リフォーミング用触媒およびその製造方法ならびにこれを用いた合成ガスの製法

【課題】触媒活性を長期にわたって高位に維持する炭化水素リフォーミング用触媒およびその製造方法ならびにこれを用いた合成ガスの製法を目的とする。
【解決手段】Co、Niからなる群より選ばれ、少なくともCoを含む1種以上の触媒活性成分と、周期律表第3B族元素、第6A族元素からなる群より選ばれる1種類以上の耐酸化性向上成分と、Ca、Mgからなる群より選ばれる1種以上の添加金属成分とを含む含浸用混合溶液を調製する調製工程と、マグネシア、および、マグネシアとカルシアとの複合体から選ばれる多孔質成型体からなる担体に、前記含浸用混合溶液を含浸する含浸工程と、含浸用混合溶液が含浸した前記担体を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥した前記担体を酸化性雰囲気中で焼成する焼成工程と、を有する製造方法により炭化水素リフォーミング用触媒を得ることよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素(CO)と水素(H)との混合ガスである合成ガスを、メタン等の炭化水素と水、二酸化炭素等の改質物質とから得るための炭化水素リフォーミング用触媒およびその製造方法ならびに該リフォーミング用触媒を用いた合成ガスの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン、天然ガス、石油ガス、ナフサ、重油、原油等の炭化水素を触媒存在下の高温域で水、空気、二酸化炭素等の改質物質と反応させるとき、反応性に富む一酸化炭素、水素の混合ガスに改質される。合成された一酸化炭素、水素の混合ガスは、メタノール、液体燃料油等の原料として使用される。最近では、燃料電池用水素ガスを混合ガスから取り出す研究・開発も進められている。一酸化炭素、水素の混合ガスの合成反応には、ニッケル/アルミナ、ニッケル/マグネシア/アルミナ等の炭化水素リフォーミング用触媒(以下、単にリフォーミング用触媒ということがある)が使用されている。
リフォーミング用触媒を用いた炭化水素/水蒸気の反応系では、反応副産物である炭素質粒子が触媒表面に析出しやすい。析出した炭素質粒子は触媒表面の活性点を覆い、触媒活性を低下させる。炭素質粒子の多量析出は、触媒の目詰まり、破損等の原因になることは勿論、反応域に送り込まれるガスを偏流させ、結果としてリフォーミング反応に寄与する触媒の割合を低下させる。過剰量の水蒸気を送り込むことにより触媒表面における炭素質粒子の析出を防止できるが、エネルギーコストの上昇、設備の大型化等が避けられない。
【0003】
過剰量の水蒸気供給を必要とせずに炭素質粒子の析出を抑制するため、触媒活性成分を高分散したリフォーミング用触媒が提案されている(特許文献1、2)。特許文献1の記載では、触媒活性成分が高分散化したリフォーミング用触媒を得る方法として、次のように記載されている。触媒粒子の各構成元素の水溶性塩の水溶液に共沈剤を添加して、水酸化物を沈殿せしめ、温度673K〜873Kの範囲で一次焼成し、温度1223K〜1573Kの範囲で二次焼成する方法を採用している。また、特許文献2記載のリフォーミング用触媒は、Ni、Co等の触媒活性成分およびMg、Al、Zr、Ti、Ca等の添加金属成分を含む水溶液に多孔質成形体(触媒担体)を浸漬し、触媒活性成分、担体構成成分を多孔質成形体に浸透させる。次いで、多孔質成形体を乾燥した後、700℃以上で高温焼成し、500℃以上で活性化処理すると、極微粒状の触媒粒子が多孔質成形体の表層に高分散する。触媒粒子の高分散によって、触媒表面への炭素質粒子の析出が抑えられ、長期にわたり優れた触媒活性作用が維持されることが記載されている。
また、特許文献3には触媒として金属粒子が基材としての複合酸化物の表面に高い数密度(単位面積当たりの触媒粒子の数)で均一に析出した金属粒子担持複合酸化物を用いると活性が高く、小型・コンパクトな改質器となることが記載されている。
【特許文献1】特開2002−126528号公報
【特許文献2】特開2004−141860号公報
【特許文献3】特開2005−103468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および2で紹介されているリフォーミング用触媒は、触媒活性成分の高分散化によって炭素質粒子の析出による悪影響を抑制できるが、長時間の使用の間には、余剰の水蒸気や二酸化炭素等により触媒活性成分が酸化して、触媒活性等の性能を低下させてしまうことがある。
活性成分の酸化による性能低下を防ぐ方法としては、活性成分の担持量を増やすことで対応することが考えられるが、大量の活性成分が触媒表面上に存在すると、その分散性を維持することができなくなり、その結果炭素質粒子の多量析出が避けられない。また、特許文献3に記載されたリフォーミング用触媒では、活性成分の担持量が多く、反応圧力が上昇すると炭素質粒子の析出が避けられない。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、触媒活性を長期にわたって高位に維持する炭化水素リフォーミング用触媒およびその製造方法ならびにこれを用いた合成ガスの製法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一酸化炭素、水素の混合ガスは、下記反応式(1)〜(4)の反応に従って炭化水素原料から合成される。他方、触媒表面に炭素質粒子が析出する反応は、下記反応式(5)〜(8)で表される。下記反応式(5)〜(8)の反応で析出した炭素質粒子は、触媒活性成分/触媒担体間に蓄積され、活性度を低下させ最終的には触媒を破壊する。活性度低下に至らないまでも、蓄積した炭素質粒子によって反応器を流れるガスに偏流が生じ、リフォーミング反応に寄与しない触媒の割合が増加しやすい。
【0006】
【化1】

【0007】
担体に担持されている触媒活性成分を非常に細かな粒子にすると、炭素質粒子の蓄積がなくなる。触媒活性成分の粒径が炭素質粒子の蓄積解消に及ぼす影響は、炭素質粒子の生成・析出反応(5)〜(8)に比較して逆反応の速度が相対的に大きくなることに起因すると考えられる。触媒活性成分の粒径が細かくなるほど、すなわち触媒活性成分の分散が高くなるほど炭素質粒子の蓄積が解消される傾向が強くなる。また、担体表面に担持されているガリウム、クロム、タングステン等の耐酸化性向上成分は、水蒸気や二酸化炭素等による触媒活性成分の酸化を抑制したり、活性成分自体の酸化耐性を向上させることができることを見い出した。さらに、触媒活性成分、耐酸化性向上成分、添加金属成分を担体に、同時に担持させることで、触媒活性成分の分散を高くできることを見い出し、本発明に至った。
【0008】
本発明の炭化水素リフォーミング用触媒の製造方法は、下記(I)式で表される組成を有する複合酸化物からなる炭化水素リフォーミング用触媒の製造方法であって、Co、Niからなる群より選ばれ、少なくともCoを含む1種以上の触媒活性成分と、周期律表第3B族元素、第6A族元素からなる群より選ばれる1種類以上の耐酸化性向上成分と、Ca、Mgからなる群より選ばれる1種以上の添加金属成分と、を含む含浸用混合溶液を調製する調製工程と、マグネシア、および、マグネシアとカルシアとの複合体から選ばれる多孔質成型体からなる担体に、前記含浸用混合溶液を含浸する含浸工程と、含浸用混合溶液が含浸した前記担体を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥した前記担体を酸化性雰囲気中で焼成する焼成工程と、を有することを特徴とする。
aM・bCo・cNi・dMg・eCa・fO・・・・・・(I)
[式(I)中、a、b、c、d、e、fはモル分率であり、a+b+c+d+e=1、0.0001<a≦0.20、0<b≦0.20、0≦c≦0.20、0.001<(b+c)≦0.20、0.60≦(d+e)≦0.9989、0<d<0.9989、0<e<0.9989、f=元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。また、M(以下、耐酸化性向上成分ということがある)は周期律表第3B族元素、第6A族元素の少なくとも1種類の元素である。]
【0009】
前記含浸用混合溶液は、添加金属成分と触媒活性成分との比率が、添加金属成分/触媒活性成分(モル比)=0.5〜5であることが好ましく、前記Mで表される耐酸化性向上成分が、Ga、Cr、Wからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
本発明の炭化水素リフォーミング用触媒は、前記炭化水素リフォーミング用触媒の製造方法により得られることを特徴とする。
【0011】
本発明の合成ガスの製法は、前記炭化水素リフォーミング用触媒を用いて、炭化水素と改質物質から合成ガスを得ることを特徴とする。本発明の合成ガスの製法は、炭化水素と改質物質との供給比を改質物質/炭素比=0.3〜100とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炭化水素リフォーミング用触媒によれば、触媒活性を長期にわたって高位に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(リフォーミング用触媒)
本発明のリフォーミング用触媒は、下記(I)式で表される組成を有する複合酸化物であり、Co、NiおよびMが該複合酸化物中で分散されている炭化水素リフォーミング用触媒であって、触媒活性成分と、耐酸化性向上成分と、添加金属成分とを含む含浸用混合溶液を多孔質成型体からなる担体に含浸し、含浸用混合溶液を含浸した担体を乾燥した後に焼成して得られるものである。
なお、本発明においては、下記(I)式で表される組成は、焼成後の無水物基準で表されたものである。
aM・bCo・cNi・dMg・eCa・fO・・・・・・(I)
[式(I)中、a、b、c、d、e、fはモル分率であり、a+b+c+d+e=1、0.0001<a≦0.20、0<b≦0.20、0≦c≦0.20、0.001<(b+c)≦0.20、0.60≦(d+e)≦0.9989、0<d<0.9989、0<e<0.9989、f=元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。また、Mは周期律表第3B族元素、第6A族元素の少なくとも1種類の元素である。]
なお、ここでの周期律表はIUPACによるものとする。
【0014】
<耐酸化性向上成分>
耐酸化性向上成分である前記(I)式中のMは、周期律表第3B族元素、第6A族元素の少なくとも1種類の元素である。中でも第3B族元素としてはガリウムが好ましく、第6A族元素としてはクロム、タングステンであることが好ましい。耐酸化性向上成分をガリウム、クロム、タングステンから選択される少なくとも1種類とすることで、リフォーミング用触媒の耐酸化性能をより向上させることができる。
【0015】
また、この組成において、Mの含有量(a)が0.0001以下では、酸化抑制効果が認められず、0.20を超えるとリフォーミング反応の活性を低下させ不都合である。従って、Mの含有量(a)は、0.0001<a≦0.20であり、好ましくは0.0001<a≦0.15、さらに好ましくは0.0001<a≦0.10である。
【0016】
<触媒活性成分>
触媒活性成分は、Co、Niからなる群より選ばれ、少なくともCoを含む1種以上である。コバルト含有量(b)は0<b≦0.20、またニッケル含有量(c)は0≦c≦0.20である。コバルト含有量(b)とニッケル含有量(c)との合計量(b+c)が0.001以下ではコバルトおよび/またはニッケルの含有量が少なすぎて反応活性が低く、0.20を超えると後述する高分散化が阻害され、炭素質析出防止効果が充分得られない。従って、コバルト含有量(b)とニッケル含有量(c)との合計量(b+c)は、0.001<(b+c)≦0.20であり、好ましくは、0.001<(b+c)≦0.15、さらに好ましくは0.001<(b+c)≦0.10である。
【0017】
<添加金属成分>
添加金属成分は、Mg、Caからなる群より選ばれる1種以上である。なお、前記(I)式のマグネシウム含有量(d)とカルシウム含有量(e)は、添加金属成分と担体とから供給されるマグネシウムの合計量およびカルシウムの合計量である。
【0018】
リフォーミング用触媒におけるマグネシウム含有量(d)とカルシウム含有量(e)との合計量(d+e)は、0.60≦(d+e)≦0.9989であり、好ましくは0.70≦(d+e)≦0.9989、さらに好ましくは0.80≦(d+e)≦0.9989である。このうち、マグネシウム含有量(d)は0<d<0.9989であり、好ましくは0.20≦d<0.9989、さらに好ましくは0.50≦d<0.9989である。カルシウム含有量(e)は0<e<0.9989、好ましくは0<e≦0.5、さらに好ましくは0<e≦0.3である。
マグネシウム含有量(d)とカルシウム含有量(e)との合計量(d+e)は、M含有量(a)、コバルト含有量(b)およびニッケル含有量(c)とのバランスで決められる。(d+e)は上記範囲内であればいかなる割合でもリフォーミング反応に優れた効果を発揮するが、カルシウム含有量(e)が多いと炭素質析出の抑制に効果があるものの、マグネシウム(d)が多い場合に比べて触媒活性が低い。よって、活性を重視するのであれば、カルシウム含有量(e)が0.5を超えると活性が低下し好ましくない。
【0019】
本発明における複合酸化物とは、マグネシア(MgO)またはカルシア(CaO)が岩塩型結晶構造をとり、その格子に位置するマグネシウムまたはカルシウム原子の一部が、コバルト、ニッケルおよびMに置換した一種の固溶体であって、単相をなすものであり、各元素単独の酸化物の混合物を言うものではない。そして、本発明では、コバルト、ニッケルおよびMがこの複合酸化物中に高分散状態となっている。
【0020】
本発明での分散とは、一般に触媒分野で定義されているものであって、例えば「触媒講座 第5巻 触媒設計」第141頁(触媒学会編、講談社刊)等にあるように、担持された金属の全原子数に対する触媒表面に露出している原子数の比として定められるものである。
これを、本発明について図1の模式図によって具体的に説明すると、複合酸化物からなる触媒1の表面には活性中心となる半球状等の微小粒子2、2…が無数に存在しており、この微小粒子2は、後述する活性化(還元)処理後ではコバルト、ニッケルおよびMの金属元素またはその化合物からなっている。この微小粒子2をなすコバルト、ニッケルおよびMの金属元素またはその化合物の原子数をAとし、これらの原子のうち粒子2の表面に露出している原子の数をBとすると、B/Aが分散度となる。
【0021】
触媒反応に関与するのは、微小粒子2の表面に露出している原子であると考えれば、分散度が1に近いものは多くの原子がその表面に分布することになって、活性中心が増加し、高活性となりうると考えられる。また、微小粒子2の粒径が限りなく小さくなれば、微小粒子2をなす原子の大部分は、粒子2表面に露出することになって、分散度は1に近づく。従って、微小粒子2の粒径が分散度を表す指標にもなりうる。
本発明の触媒は、微細粒子2の径が種々の測定法、例えばX線回析法等の測定限界である3.5nm未満である。このことから分散度が高く、高分散状態であると言うことができる。このため、反応に関与するコバルト、ニッケルおよびMの原子数が増加し、高活性となって、反応が化学量論的に進行し、炭素質(カーボン)の析出が防止される。
【0022】
(リフォーミング用触媒の製造方法)
本発明のリフォーミング用触媒の製造方法について説明する。本発明のリフォーミング用触媒の製造方法は、触媒活性成分、添加金属成分および耐酸化性向上成分(以下、総じて含浸用成分ということがある)を含む含浸用混合溶液を調製する調製工程と、多孔質成型体からなる担体に前記含浸用混合溶液を含浸する含浸工程と、含浸用混合溶液が含浸した担体を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥した担体を酸化性雰囲気中で焼成する焼成工程とを有するものである。
【0023】
<調製工程>
調製工程は、Co、Niからなる群より選ばれ、少なくともCoを含む1種以上の触媒活性成分と、周期律表第3B族元素、第6A族元素からなる群より選ばれる1種類以上の耐酸化性向上成分と、Ca、Mgからなる群より選ばれる1種以上の添加金属成分とを溶媒に溶解し、含浸用混合溶液を調製する工程である。
【0024】
含浸用混合溶液の溶媒は触媒活性成分と、耐酸化性向上成分と、添加金属成分とが、任意の濃度まで溶解できるものを適宜選択することができ、例えば、純水等を挙げることができる。
【0025】
触媒活性成分の溶媒への添加形態は、任意の濃度まで触媒活性成分が溶解する形態であればよく、CoまたはNiの酢酸塩、蟻酸塩等の有機酸塩、または、硝酸塩、塩化物等の無機塩を挙げることができる。
含浸用混合溶液の触媒活性成分の濃度は、所望するリフォーミング用触媒の前記(I)式におけるa〜eのモル分率と、担体への含浸量を考慮して決定することができる。
【0026】
耐酸化性向上成分の溶媒への添加形態は、任意の濃度まで触媒活性成分が溶解する形態であればよく、周期律表第3B族元素、第6A族元素の酢酸塩、蟻酸塩等の有機酸塩、あるいは、硝酸塩、塩化物等の無機塩を挙げることができる。
含浸用混合溶液の耐酸化性向上成分の濃度は、所望するリフォーミング用触媒の前記(I)式におけるa〜eのモル分率と、担体への含浸量を考慮して決定することができる。含浸用混合溶液における、触媒活性成分と耐酸化性向上成分との添加割合は、リフォーミング用触媒に求める能力を勘案して決定することができ、耐酸化性向上成分/触媒活性成分(モル比)=0.001〜0.5であることが好ましく、0.01〜0.5であることがより好ましい。耐酸化性向上成分/触媒活性成分(モル比)が0.001未満であると、触媒活性成分の酸化抑制が不充分となるおそれがある。耐酸化性向上成分/触媒活性成分(モル比)が0.5を超えると、リフォーミング用触媒中の耐酸化性向上成分の割合が高すぎて、所望の活性を得られないおそれがあるためである。
【0027】
添加金属成分の溶媒への添加形態は、任意の濃度まで添加金属成分が溶解する形態であればよく、Mg、Caの酢酸塩、蟻酸塩等の有機酸塩、または、硝酸塩、塩化物等の無機塩を挙げることができる。
含浸用混合溶液の添加金属成分の濃度は、所望するリフォーミング用触媒の前記(I)式におけるa〜eのモル分率と、担体への含浸量、ならびに、リフォーミング用触媒における触媒活性成分、耐酸化性向上成分の分散の程度を考慮して決定することができる。含浸用溶液における、添加金属成分と触媒活性成分との添加割合は、添加金属成分/触媒活性成分(モル比)=0.5〜5であることが好ましく、0.5〜3であることがより好ましい。添加金属成分/触媒活性成分(モル比)が0.5未満であると、触媒活性成分の分散が不充分となり、所望する触媒活性を得られないおそれがある。添加金属成分/触媒活性成分(モル比)が5を超えると、添加金属成分の比率が高くなりすぎ、触媒活性成分と耐酸化性向上成分とが隣接する割合が低くなり、得られるリフォーミング用触媒の耐酸化性が不充分となるおそれがあるためである。
【0028】
<含浸工程>
含浸工程は、マグネシア、および、マグネシアとカルシアとの複合体から選ばれる多孔質成型体からなる担体を得(担体成形処理)、前記担体に前記含浸用混合溶液を含浸(含浸処理)する工程である。
【0029】
[担体成形処理]
担体成形処理では、マグネシア、または、マグネシアとカルシアの複合体から選ばれた少なくとも1種を成形、焼成することにより、多孔質成型体からなる担体(以下、単に担体ということがある)を得ることができる。該担体は、細孔が表面に開口した構造のため、比較的多くの触媒活性成分および耐酸化性向上成分を担持できる。触媒活性成分の担持量は担体の細孔容積(空隙率)に応じて増加するが、空隙率の増加は担体の強度低下を意味する。そのため、触媒活性成分の必要担持量、担体強度を勘案して担体の空隙率を適宜定めることができ、例えば、空隙率は10〜50体積%の範囲で定めることが好ましい。担体には、必要に応じて、例えば、グラファイト等の滑剤、成形体強度向上に有効なセメント、バインダ等を配合することができ、また、発泡剤添加等によって必要な空隙率に調整できる。
【0030】
担体の成形方法は、所望する形状に成形できる方法を適宜選択することができ、例えば、マグネシア、または、マグネシアとカルシアの複合体の粉末を圧縮成形や押出成形等により成形する方法を挙げることができる。成形の際の圧力条件は、担体に求める空隙率を勘案して決定することができる。成形時の際の圧力を高くし、担体の圧粉体密度を大きくすることで、空隙率を下げることができる。また、成形時の際の圧力を低くし、担体粉末の圧粉体密度を小さくすることで、空隙率を上げることができる。
【0031】
担体の形状はリフォーミング用触媒の用途に応じて決定することができ、例えば、円筒形、リング形状、ハニカム形状等を挙げることができる。
【0032】
担体の焼成条件は、担体の形状や所望する空隙率に応じて適宜決定することができる。焼成温度を低くすると、空隙率を上げることができ、焼成温度を高くすると、空隙率を低くすることができる。担体の焼成温度は、例えば、500〜1400℃の範囲で設定することが好ましく、700〜1200℃の範囲で設定することがより好ましい。
【0033】
[含浸処理]
含浸処理は、担体成形処理で得られた担体に、調製工程で得られた含浸用混合溶液を含浸させるものである。
含浸処理は、含浸用混合溶液中の含浸用成分が、所望する担持量となるように、含浸できる方法を選択することができ、例えば、浸漬、噴霧、塗布等の方法を用いることができる。中でも、担体に含浸用成分を均一に含浸させる観点から、担体を含浸用混合溶液に浸漬する方法を用いることが好ましい。
【0034】
含浸処理では、担体への触媒活性成分の担持量が、0.1〜20モル%となるようにすることが好ましい。0.1モル%未満では、触媒活性成分の担持量が少なすぎて反応活性が低く、20モル%を超えると触媒活性成分の高分散化が阻害され、炭素質析出防止効果が充分に得られないおそれがあるためである。担体への触媒活性成分の担持量は、担体の吸水率に応じた、含浸用混合溶液の触媒活性成分の濃度や、含浸用混合溶液の温度、含浸処理に要する時間等の含浸処理の条件設定により、制御することができる。なお、触媒活性成分の担持量は、蛍光X線分析や原子吸光分析により測定できる。
【0035】
含浸処理における含浸用混合溶液の温度は、0〜80℃が好ましい。0℃未満であると、含浸用成分の担体への含浸が不充分となるおそれがある。80℃を超えると、担体の一部が水酸化物となり、触媒の強度が低下する等の不都合が生じるおそれがあるためである。
【0036】
含浸用混合溶液に担体を浸漬することで含浸処理を行う場合には、浸漬時間は10〜60分であることが好ましい。10分未満であると、含浸用成分の単体への含浸が不充分となるおそれがある。60分を超えると、担体を構成している酸化物の水酸化物が多く発生するおそれがあるためである。
【0037】
<乾燥工程>
乾燥工程は、含浸用混合溶液を含浸した担体(以下、触媒前駆体ということがある)から、含浸用混合溶液の溶媒を除去して乾燥する工程である。
【0038】
触媒前駆体を乾燥する方法としては、例えば、加熱乾燥を挙げることができる。加熱乾燥における加熱温度は、含浸用混合溶液の溶媒に応じて決定することができ、加熱温度が高いほど溶媒の蒸発が促進され、乾燥時間を短縮することができる。ただし、加熱温度が高すぎると突沸して、含浸用成分の担持量が不均一になったり、触媒前駆体が著しく収縮し、破壊に至るおそれがある。従って、例えば、溶媒が水である場合には、100℃以上とすることが好ましく、100〜180℃の範囲とすることがより好ましい。
【0039】
加熱乾燥の時間は、含浸用混合溶液の溶媒に応じて決定することができる。例えば、溶媒が水の場合には、0.5〜100時間とすることが好ましく、1〜50時間とすることがより好ましい。上記範囲内であれば、水分を充分に除去することができ、かつ、過加熱による触媒前駆体の破壊を防ぐことができるためである。
【0040】
乾燥後の触媒前駆体における溶媒の残留の程度は、できる限り少なくすることが好ましいが、乾燥工程に費やすことができる時間を勘案して決定することができる。触媒前駆体を充分に乾燥させることにより、結晶水の一部が除去され、次工程の焼成工程における触媒前駆体の体積変化を小さくすることができる。不充分な乾燥では、焼成工程において、残留溶媒の突沸や、触媒前駆体の収縮が生じやすく、触媒前駆体の破壊に至るおそれがあるためである。
なお、溶媒の残量は、触媒前駆体の乾燥工程前後の質量減少により判定できる。
【0041】
<焼成工程>
焼成工程は、前記乾燥工程で乾燥した触媒前駆体、又は、後述する仮焼成工程で仮焼成した触媒前駆体を酸化性雰囲気中で焼成し、複合酸化物とする工程である。
酸化性雰囲気とは、触媒活性成分、耐酸化性向上成分、添加金属成分が酸化され、複合酸化物となって担体に担持されるのに必要な酸素量よりも過剰な酸素が含まれている雰囲気をいい、例えば、大気等を挙げることができる。
【0042】
焼成温度は含浸用成分が複合酸化物化する温度であり、700〜1300℃で焼成することが好ましく、900〜1300℃で焼成することがより好ましい。700℃未満であると触媒活性成分、耐酸化性向上成分、添加金属成分の酸化が不充分となるおそれがあり、1300℃を超えると触媒の表面積が小さくなり、触媒活性が低くなるおそれがあるためである。
また、焼成時間は1〜20時間で行うことが好ましい。1時間未満であると触媒活性成分、耐酸化性向上成分、添加金属成分の酸化が不充分となるおそれがあり、20時間を超えると触媒活性が低下する可能性があるためである。
【0043】
調製工程〜焼成工程を1サイクルとした場合、1サイクルで、担体への触媒活性成分の担持量が所望の担持量とならない場合には、含浸工程の含浸処理と乾燥工程とを繰り返すことで、所望の担持量に調整することができる。また、例えば、乾燥工程と焼成工程の間に、仮焼成工程を設け、含浸工程の含浸処理と乾燥工程と仮焼成工程とを繰り返すことで、所望の担持量に調整することができる。
【0044】
<仮焼成工程>
仮焼成工程は、乾燥工程と焼成工程との間に、乾燥工程で乾燥した触媒前駆体を酸化性雰囲気中で焼成する工程である。かかる仮焼成工程で仮焼成した触媒前駆体を焼成工程で焼成することで、リフォーミング用触媒を得ることができる。
酸化性雰囲気とは、触媒活性成分、耐酸化性向上成分、添加金属成分が酸化され、複合酸化物となって担体に担持されるのに必要な酸素量よりも過剰な酸素が含まれる雰囲気をいい、例えば大気等を挙げることができる。
【0045】
仮焼成温度は含浸用成分を酸化できる温度であれば特に限定されないが、450〜1000℃で焼成することが好ましく、450〜900℃で焼成することがより好ましい。450℃未満であると触媒活性成分、耐酸化性向上成分、添加金属成分の酸化が不充分となるおそれがあり、1000℃を超えると担体の空隙率が小さくなるおそれがあるためである。
また、仮焼成時間は1〜20時間で行うことが好ましい。1時間未満であると触媒活性成分、耐酸化性向上成分、添加金属成分の酸化が不充分となるおそれがあり、20時間を超えると担体の空隙率が低下する可能性があるためである。
【0046】
(合成ガスの製法)
本発明の合成ガスの製法について説明する。本発明の合成ガスの製法は、上述の本発明のリフォーミング用触媒を用い、炭化水素と改質物質から合成ガスを得るものである。
【0047】
まず、リフォーミング用触媒の活性化処理を行う。この活性化処理は、リフォーミング用触媒を水素ガス等の還元性気体の存在下で、500〜1000℃、好ましくは600〜1000℃、さらに好ましくは650〜1000℃の温度範囲で0.5〜50時間程度加熱することによって行われる。還元性気体は窒素ガス等の不活性ガスで希釈されていてもよい。この活性化処理をリフォーミング反応を行う反応器内で行うこともできる。
この活性化処理により、図1での触媒1表面の微小粒子2、2…が還元されてCo、NiまたはMの金属元素またはその化合物となり、触媒活性が発現する。本発明での活性化処理は、従来のCoまたはNi酸化物系触媒の活性化よりも高温で行う。従来のCoまたはNi酸化物系触媒では、通常500℃未満で行われていることから、本発明における高温での活性化処理が上述の高分散化に寄与している可能性がある。
【0048】
次に、前記活性化処理が行われたリフォーミング用触媒が充填されている反応管に、炭化水素と改質物質とからなる原料ガスを供給し、任意の反応条件で、反応を行う。具体的には、温度条件は500〜1000℃、好ましくは600〜1000℃、さらに好ましくは650〜1000℃である。500℃未満であると炭化水素の転化率が低く実用的ではなく、1000℃超える条件では、高温耐性のある反応管が別途必要となり経済面での問題がある。圧力条件(ゲージ圧。以下同じ。)は0.1〜10MPa、好ましくは0.1〜5MPa、さらに好ましくは0.1〜3MPaの範囲で反応を行う。0.1MPa未満であると反応管が大きくなるため投資等がかさみ、10MPaを超えると耐高圧性の反応管が必要なためである。
原料ガスの空間速度(GHSV:原料ガスの供給速度を体積換算の触媒量で除した値)は、500〜200000h−1、好ましくは1000〜100000h−1、さらに好ましくは1000〜75000h−1の範囲とすることが望ましい。また、触媒床の形態は、固定床、移動床、流動床等の周知の形態を任意に選択できる。
【0049】
合成ガスの原料となる炭化水素としては、天然ガス、石油ガス、ナフサ、重油、原油等や石炭、コールサンド等から得られた炭化水素等が用いられ、その一部にメタン等の炭化水素が含有されていれば、特に限定されることはない。これらは2種以上が混合されていてもよい。
改質物質としては、水(水蒸気)、二酸化炭素等が用いられ、2種以上が混合されていてもよい。好ましい改質物質としては、水または二酸化炭素もしくは水と二酸化炭素との混合物である。
【0050】
反応に際しての炭化水素と改質物質との供給割合は、炭化水素中の炭素原子の数を基準とするモル比で表して、改質物質/炭素比=0.3〜100、好ましくは0.3〜10、さらに好ましくは0.5〜3である。改質物質/炭素比が0.3未満であると炭素質の析出が激しくなり、100を超えると反応管が大きくなるため投資等がかさむためである。
炭化水素と改質物質との混合気体には、希釈剤として窒素等の不活性ガスを共存させてもよい。
【0051】
本発明によれば、触媒活性成分、耐酸化性向上成分、添加金属成分を溶媒に溶解して含浸用混合溶液とし、該含浸用混合溶液から含浸用成分を同時に担体へ移行させるため、含浸用成分が担体の表面層に均一に分布させることができる。また、担体が含有するマグネシウム、カルシウムとは別に、添加金属成分としてマグネシウム、カルシウムを担体に含浸することで、触媒活性成分と耐酸化性向上成分とを担体の表面層に均一に分散することができる。この結果、触媒活性成分の酸化の抑制、あるいは、触媒活性成分自体の酸化耐性の向上を確実に図ることができ、リフォーミング用触媒の触媒反応に寄与する触媒活性成分の割合が格段に高くなり、結果として触媒消費量を低減できる。
【0052】
本発明によれば、CoO、NiOあるいはMOxをMgOまたはMgO/CaOとの複合酸化物とし、コバルト、ニッケルおよびMを分散したリフォーミング用触媒で、高活性となる。そして、メタン等の炭化水素と、水蒸気等の改質物質とを同化学当量もしくはそれに近い量で反応させても、炭素質(カーボン)の析出が抑制され、効率よく合成ガスを製造できる。このため、水蒸気等の改質物質を大過剰に供給する必要がなく、改質物質の無駄がなくなり、低コストで合成ガスを生産できる。また、触媒が炭素質で汚染されることがないので、触媒活性の経時的な低下が抑制され、触媒の寿命が長くなる。さらに、酸化による触媒性能の低下を抑制し、触媒活性を長期にわたって高位に維持することが可能となる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
カルシウムを0.1質量%含有するマグネシア粉末を外径3mm、高さ3mmの円柱状に成形し、1100℃で焼成することにより担体を得た(担体成形処理)。含浸用水溶液には、触媒活性成分としてCo(NO・6HO:238.39g、耐酸化性向上成分としてCr(NO・9HO:36.91g、分散化向上成分としてMg(NO・6HO:420.06gを水に溶解して1リットルの混合溶液を調製した(調製工程)。常温に維持した前記含浸用混合溶液に前記担体を30分間浸漬し(含浸処理)、該水溶液から引き上げた触媒前駆体を大気中120℃で12時間乾燥させた(乾燥工程)後、大気中500℃で3時間焼成した(仮焼成工程)。含浸処理、乾燥工程、仮焼成工程を4回繰り返した後、5回目の含浸処理、乾燥工程を行い、その後、大気雰囲気中1250℃で5時間焼成(焼成工程)し、Co(触媒活性成分)の担持量を5モル%とした。これにより、触媒Aを得た。このような方法により、触媒活性成分、耐酸化性向上成分、添加金属成分を担体に担持したものは、表1中の製造方法に「同時法」と記載した(実施例2〜6において同じ)。
得られた触媒Aについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0055】
(実施例2)
実施例1のCo(NO・6HOを238.03gとし、Cr(NO・9HO:36.91gをGa(NO・nHO:27.54gとし、Mg(NO・6HO:419.43gとした以外は実施例1と同様にして、触媒Bを得た。得られた触媒Bについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0056】
(実施例3)
実施例1のCo(NO・6HOを237.38gとし、Cr(NO・9HO:36.91gを(NH101241・5HO:6.83gとし、Mg(NO・6HO:418.28gとした以外は実施例1と同様にして、触媒Cを得た。得られた触媒Cについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0057】
(実施例4)
実施例1のCo(NO・6HO:238.39gを、Co(NO・6HO:178.79gとNi(NO・6HO:59.55gとした以外は実施例1と同様にして、触媒Dを得た。得られた触媒Dについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0058】
(実施例5)
実施例2のCo(NO・6HO:238.03gを、Co(NO・6HO:178.52gとNi(NO・6HO:59.46gとした以外は実施例2と同様にして、触媒Eを得た。得られた触媒Eについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0059】
(実施例6)
実施例3のCo(NO・6HO:237.38gを、Co(NO・6HO:178.03gとNi(NO・6HO:59.30gとした以外は実施例3と同様にして、触媒Fを得た。得られた触媒Fについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0060】
(比較例1)
カルシウムを0.1質量%含有するマグネシア粉末を外径3mm、高さ3mmの円柱状に成形し、1100℃で焼成することにより担体を得た。含浸用水溶液には、触媒活性成分としてCo(NO・6HO:397.32gを水に溶解して1リットルの触媒活性成分水溶液を調製した。また、耐酸化性向上成分としてCr(NO・9HO:184.54gを水に溶解し、1リットルの耐酸化性向上成分水溶液を調製した。常温に維持した前記触媒活性成分水溶液に前記担体を30分間浸漬した後、該水溶液から引き上げた触媒前駆体を大気中120℃で12時間乾燥させた。Co(触媒活性成分)の担持量が5モル%になるまで、浸漬、乾燥を3回繰り返した。乾燥後、常温に維持した耐酸化性向上成分水溶液に前記触媒前駆体を30分間浸漬し、120℃で12時間乾燥させた。乾燥後、Co、Crの硝酸塩が浸透した触媒前駆体を大気雰囲気中1250℃で5時間加熱焼成することにより、触媒Gを得た。このような方法により、触媒活性成分、耐酸化性向上成分を担体に担持したものは、表1中の製造方法に「分割法」と記載した(比較例2〜6において同じ)。
得られた触媒Gについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0061】
(比較例2)
比較例1のCo(NO・6HOを396.72gとし、Cr(NO・9HO:184.54gをGa(NO・nHO:137.69gとした以外は比較例1と同様にして、触媒Hを得た。得られた触媒Hについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0062】
(比較例3)
比較例1のCo(NO・6HOを395.63gとし、Cr(NO・9HO:184.54gを(NH101241・5HO:34.13gとした以外は比較例1と同様にして、触媒Iを得た。得られた触媒Iについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0063】
(比較例4)
比較例1のCo(NO・6HO:397.32gを、Co(NO・6HO:297.99gとNi(NO・6HO:99.25gとした以外は比較例1と同様にして、触媒Jを得た。得られた触媒Jについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0064】
(比較例5)
比較例2のCo(NO・6HO:397.32gを、Co(NO・6HO:297.54gとNi(NO・6HO:99.10gとした以外は比較例2と同様にして、触媒Kを得た。得られた触媒Kについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0065】
(比較例6)
比較例3のCo(NO・6HO:395.63gを、Co(NO・6HO:296.72gとNi(NO・6HO:98.83gとした以外は比較例3と同様にして、触媒Lを得た。得られた触媒Lについて、後述する反応例1〜3を行った。反応例1〜3の結果は表1に示す。
【0066】
(反応例1)
触媒A〜Lについて、各々20mLの触媒を内径16mmの流通式反応管に充填し、水素ガスを送り込みながら触媒層を850℃以上に加熱保持する活性化処理を施した。
次いで、触媒層の出口温度を850℃、雰囲気圧を2.0MPaに維持し、反応ガスであるメタン/二酸化炭素/水蒸気を2/1/2の割合で、ガス空間速度(GHSV):3000h−1の条件で流通式反応管に送り込んだ。反応時間20時間後の時点のメタン転化率、および触媒に析出した炭素量を表1に示す。
【0067】
(反応例2)
反応1の反応ガスの二酸化炭素を省き、メタン/水蒸気を2/3の割合で、GHSV:3000h−1の条件で流通式反応管に送り込んだ。反応時間20時間後の時点のメタン転化率を表1に示す。
【0068】
(反応例3)
反応1の反応ガスの二酸化炭素を省き、メタン/水蒸気を2/3の割合で、触媒層出口温度:580℃、GHSV:72000h−1の条件で流通式反応管に送り込んだ。反応時間5時間後の時点のメタン転化率を表1に示す。
【0069】
(メタン転化率)
反応ガス中のメタン濃度(原料ガスメタン濃度)、および触媒層出口でのメタン濃度(反応後メタン濃度)をガスクロマトグラフィで測定し、メタン転化率を下記式(II)により求めた。
【0070】
【数1】

【0071】
(炭素析出量)
反応例1の反応を終えた後、反応管から触媒を取り出し、触媒表面に析出している炭素量を熱重量分析法および昇温酸化法により測定した。
【0072】
【表1】

【0073】
表1は、実施例1〜6および比較例1〜6の反応例1〜3の結果である。
実施例1〜6および比較例1〜6は、反応例1および2のいずれにおいても、20時間後にも高いメタン転化率を維持していた。加えて、反応例1における炭素析出量が少なく抑えられることが判った。また、反応例3の結果では、実施例1〜6および比較例1〜6は原料ガスの空間速度を著しく大きくしても、触媒の失活や閉塞は見られなかった。
ただし、触媒活性成分をCoとしたリフォーミング用触媒では、同時法で製造したリフォーミング用触媒を用いた実施例1〜3は、分割法で製造したリフォーミング用触媒を用いた比較例1〜3と比較して、反応例3におけるメタン転化率が高いことが判った。また、触媒活性成分をCoとNiとしたリフォーミング用触媒では、同時法で製造したリフォーミング用触媒を用いた実施例4〜6は、分割法で製造したリフォーミング用触媒を用いた比較例4〜6と比較して、反応例3におけるメタン転化率が高いことが判った。
この結果から、同時法で製造したリフォーミング用触媒は、分割法で製造したリフォーミング用触媒に比べ、触媒活性成分の分散が高いことが推測された。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の触媒の表面状態を模式的に示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(I)式で表される組成を有する複合酸化物からなる炭化水素リフォーミング用触媒の製造方法であって、
Co、Niからなる群より選ばれ、少なくともCoを含む1種以上の触媒活性成分と、周期律表第3B族元素、第6A族元素からなる群より選ばれる1種類以上の耐酸化性向上成分と、Ca、Mgからなる群より選ばれる1種以上の添加金属成分とを含む含浸用混合溶液を調製する調製工程と、
マグネシア、および、マグネシアとカルシアとの複合体から選ばれる多孔質成型体からなる担体に、前記含浸用混合溶液を含浸する含浸工程と、
含浸用混合溶液が含浸した前記担体を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程で乾燥した前記担体を酸化性雰囲気中で焼成する焼成工程と、
を有する炭化水素リフォーミング用触媒の製造方法。
aM・bCo・cNi・dMg・eCa・fO・・・・・・(I)
[式(I)中、a、b、c、d、e、fはモル分率であり、
a+b+c+d+e=1、
0.0001<a≦0.20、
0<b≦0.20、
0≦c≦0.20、
0.001<(b+c)≦0.20、
0.60≦(d+e)≦0.9989、
0<d<0.9989、
0<e<0.9989、
f=元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。
また、Mは周期律表第3B族元素、第6A族元素の少なくとも1種類の元素である。]
【請求項2】
前記含浸用混合溶液は、添加金属成分と触媒活性成分との比率が、添加金属成分/触媒活性成分(モル比)=0.5〜5であることを特徴とする、請求項1に記載の炭化水素リフォーミング用触媒の製造方法。
【請求項3】
前記Mで表される耐酸化性向上成分が、Ga、Cr、Wからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭化水素リフォーミング用触媒の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素リフォーミング用触媒の製造方法により得られる炭化水素リフォーミング用触媒。
【請求項5】
請求項4に記載の炭化水素リフォーミング用触媒を用いて、炭化水素と改質物質から合成ガスを得ることを特徴とする、合成ガスの製法
【請求項6】
炭化水素と改質物質との供給比を改質物質/炭素比=0.3〜100とすることを特徴とする、請求項5に記載の合成ガスの製法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−22983(P2010−22983A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190062(P2008−190062)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(591090736)石油資源開発株式会社 (70)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【Fターム(参考)】