説明

炭化水素供給原料から中間留分生成物及び低級オレフィンを製造する方法及び装置

【課題】炭化水素供給原料を中間留分生成物及び低級オレフィンに優先的に転化する方法を提供する。
【解決手段】中間留分生成物及び低級オレフィンの製造法を開示する。この方法は、ガス油供給原料を立上り管反応帯中、好適な接触分解条件下で非晶質シリカアルミナ及びゼオライトを含む中間留分選択性分解触媒と接触させて分解ガス油生成物及び使用済み分解触媒を含む立上り管反応生成物を得る工程を含む。使用済み分解触媒は再生して再生分解触媒とする。ガソリン供給原料を濃厚床反応帯中、好適な高苛酷性分解条件下で再生分解触媒と接触させて分解ガソリン生成物及び使用済み再生分解触媒を得る。使用済み再生分解触媒は中間留分選択性分解触媒として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、炭化水素供給原料から中間留分生成物及び低級オレフィンを製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンのような低沸点炭化水素生成物を製造するための重質炭化水素の流動接触分解(FCC)は、当該技術分野で周知である。FCC法は、1940年代以来、出回っている。通常、FCCユニット又は方法は、立上がり管反応器、触媒の分離器及びストリッパー、並びに再生器を備えている。FCC供給原料は立上り管反応器に導入され、ここで再生器からの熱FCC触媒と接触する。供給原料とFCC触媒との混合物は、立上り管反応器を通って、触媒分離器に入り、ここで分解生成物はFCC触媒から分離される。分離された分解生成物は、触媒分離器から下流の分離システムに達し、一方、分離された触媒は、再生器に達し、ここで分解反応中、FCC触媒上に沈着したコークスは触媒から燃焼除去され、再生触媒が生成する。得られた再生触媒は、前記熱FCC触媒として使用され、立上り管反応器に導入されるFCC供給原料と混合される。
【0003】
多くのFCC法及びシステムは、FCC供給原料をガソリン沸点範囲の沸点を有する生成物に高度に転化させるように設計されている。しかし、FCC供給原料を、ガソリンの沸点範囲にある生成物とは反対に、中間留分の沸点範囲にある生成物及び低級オレフィンに高度に転化させることが望ましい場合もある。
【特許文献1】USP 3,130,007
【特許文献2】USP 3,702,886
【特許文献3】USP 3,7770,614
【特許文献4】USP 3,709,979
【特許文献5】USP 3,832,449
【特許文献6】USP 3,948,758
【特許文献7】USP 4,076,842
【特許文献8】USP 4,016,245
【特許文献9】USP 4,440,871
【特許文献10】USP 4,310,440
【特許文献11】EP−A−229,295
【特許文献12】USP 4,254,297
【特許文献13】USP 4,500,651
【非特許文献1】“Atlas of Zeolite Structure Types”,W.H.Meier及びD.H.Olson編,Butterworth−Heineman,第3版,1992年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうして、本発明の目的は、炭化水素供給原料を中間留分生成物及び低級オレフィンに優先的に転化する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、ガス油供給原料を立上り管反応帯中、好適な接触分解条件下で非晶質シリカアルミナ及びゼオライトを含む中間留分選択性分解触媒と接触させて、分解ガス油生成物及び使用済み分解触媒を得る、中間留分及び低級オレフィンの製造方法が提供される。使用済み分解触媒は、再生して再生分解触媒とする。ガソリン供給原料を濃厚床反応帯中、好適な高苛酷性分解条件下で該再生分解触媒と接触させて、分解ガソリン生成物及び使用済み再生分解触媒を得る。使用済み再生分解触媒は、中間留分選択性触媒として使用する。
【0006】
他の本発明によれば、ガス油供給原料を接触分解条件下で接触分解触媒と接触させて、分解ガス油生成物及び使用済み分解触媒を含む立上り管反応生成物を得るための立上り管反応手段;該立上り管反応生成物を分解ガス油生成物及び使用済み分解触媒に分離するための分離手段;該使用済み分解触媒を再生して、再生触媒を得るための再生手段;ガソリン供給原料を高苛酷性分解条件下で該再生触媒と接触させて、分解ガソリン生成物及び使用済み再生触媒を得るための濃厚床反応手段;及び該使用済み再生触媒を接触分解触媒として使用に供するための手段;を備えた装置が提供される。
【0007】
図1は、本発明方法の特定の局面を表すプロセスフロー概略図である。
本発明は、重質炭化水素供給原料を処理して、選択的に中間留分沸点範囲の生成物及び低級オレフィンを製造する方法及び装置である。従来のFCC法又はユニットの触媒再生器と立上り管反応器との間に濃厚相反応器又は固定流動床反応器を使用すると、中間留分の収率が向上すると共に、低級オレフィン製造への選択性が高まることが発見された。本発明方法は、好ましくはガソリンの沸点範囲の沸点を有するガソリン供給原料を分解して低級オレフィンを得ると共に、立上り管反応器中でFCC供給原料の分解に使用する際、反応条件が中間留分生成物の製造に一層好適になるよう触媒を状態調節するため、濃厚相反応器を利用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明方法ではガス油供給原料は、立上り管反応器の底部に導入され、ここで再生分解触媒、使用済み再生分解触媒又はこれら両者の組合せのような熱い分解触媒と混合される。本発明方法で使用され、また再生されて最終的には再生分解触媒となる出発接触分解触媒は、本発明で考えられる高温で分解活性を有する、当該技術分野で公知のいかなる好適な分解触媒でもよい。
【0009】
本発明方法に使用される好ましい接触分解触媒としては、多孔質無機耐火性酸化物母材又はバインダー中に、分解活性を有するモレキュラーシーブを分散してなる流動可能な分解触媒がある。ここで使用する用語“モレキュラーシーブ”とは、それぞれの次元に基づく原子又は分子を分離できる全ての材料のことである。分解触媒の成分として使用するのに好適なモレキュラーシーブとしては、柱状(pillared)粘土、層割れ(delaminated)粘土及び結晶性アルミのシリケートが挙げられる。普通は、結晶性アルミノシリケートを含む分解触媒を使用することが好ましい。このようなアルミのシリケートの例としては、Yゼオライト、Xゼオライト、ゼオライトβ、ゼオライトL、オフレタイト(offretite)、モルデナイト、ホウジャサイト及びゼオライトωである。分解触媒用に好ましい結晶性アルミのシリケートは、X及びYゼオライトであり、Yゼオライトガ最も好ましい。
【0010】
USP 3,130,007(ここでは、その開示全体を援用する)には、全体のシリカ対アルミナモル比が約3.0〜約6.0であるY型ゼオライトが記載され、通常のYゼオライトは、全体のシリカ対アルミナモル比が約5.0であると述べている。全体のシリカ対アルミナモル比が約6.0を超えるY型ゼオライトは、普通、脱アルミ化により製造できることも知られている。したがって本発明目的には、Yゼオライトは、本質的にYゼオライトのX線粉末回折パターンで示されるような特徴的なYゼオライトの結晶構造を有し、全体のシリカ対アルミナモル比が約3.0を超えるもので、また全体のシリカ対アルミナモル比が約6.0を超えるY型ゼオライトを含む。
【0011】
分解触媒の成分として使用されるゼオライトの安定性及び/又は酸性度は、このゼオライトを水素イオン、アンモニウムイオン、希土類含有カチオン、マグネシウムカチオン又はカルシウムカチオンのような多価金属カチオン、或いは水素イオン、アンモニウムイオン及び多価金属カチオンの組合わせと交換して、ナトリウム含有量がNaOとして計算して、約0.8重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満、最も好ましくは約0.3重量%未満となるまでナトリウム含有量を低下させることにより増大できる。
【0012】
分解触媒のゼオライト又は他のモレキュラーシーブ成分は、多孔質無機耐火性酸化物母材又はバインダーと組合わせて、使用前の仕上げ触媒を形成する。仕上げ触媒の耐火性酸化物成分は、シリカ−アルミナ、シリカ、アルミナ、天然又は合成粘土、柱状又は層割れ粘土、これら成分の1種以上の混合物等であってよい。好ましくは、無機耐火性酸化物母材は、シリカ−アルミナと、カオリン、ヘクトライト(hectorite)、セピオライト(sepiolite)及びアタパルガイトのような粘土との混合物を含む。好ましい仕上げ触媒は、通常、ゼオライト又は他のモレキュラーシーブを約5〜約40重量%及び無機耐火性酸化物を約20重量%よりも多く含有する。一般に仕上げ触媒は、ゼオライト又は他のモレキュラーシーブを約10〜約35重量%及び無機耐火性酸化物を約10〜約30重量%及び粘土を約30〜約70重量%含有する。
【0013】
分解触媒の結晶性アルミのシリケート又は他のモレキュラーシーブ成分は、多孔質無機耐火性酸化物成分又はその前駆体と、混合、磨砕、ブレンド又は均質化のような当該技術分野で公知のいかなる好適な方法によっても配合してよい。使用可能な前駆体の例としては、アルミナ、アルミナゾル、シリカゾル、ジルコニア、アルミナヒドロゲル、アルミニウム及びジルコニアのポリオキシカチオン、及び解凝固アルミナが挙げられる。分解触媒の好ましい製造方法では、ゼオライトは、アルミノ−シリケートゲル又はゾル、或いは他の無機耐火性酸化物成分と配合し、得られた混合物を噴霧乾燥して、普通、直径が約40〜約80μの仕上げ触媒粒子を製造する。しかし、所望ならば、ゼオライト又は他のモレキュラーシーブは、耐火性酸化物成分又はその前駆体と共に磨砕又は混合し、押出し、次いで所望の粒子サイズ範囲に粉砕してもよい。普通、仕上げ触媒は、平均嵩密度が約0.30〜約0.90g/cmで細孔容積が約0.10〜約0.90cm/gである。
【0014】
本発明方法で縦配列の立上り管反応器を用いる場合、ガス油供給原料及び熱分解触媒と一緒に立上り管反応器の底部にリフトガス又はリフト水蒸気を導入してもよい。触媒再生器から得られる再生分解触媒は、濃厚相反応器から得られる使用済み再生分解触媒よりも高温である。また、この使用済み再生分解触媒上には、濃厚相反応器に使用した結果、特定量のコークスが沈着している。他の所でも十分検討したように、特定の触媒又は触媒の組合せは、所望生成物又はその混合物の製造に必要な特定の所望分解条件を得るため、立上り管反応器内の条件制御を援助するのに使用してよい。
【0015】
ガス油供給原料と、熱分解触媒と、任意にリフトガス又は水蒸気との混合物は、立上り管反応器に通し、ここで分解を行う。立上り管反応器は、接触分解帯を規定すると共に、分解反応を誘引する接触時間を与えるための手段を備える。立上り管反応器中の炭化水素の滞留時間は、一般に約5以上〜10秒の範囲であってよいが、通常は0.1〜5秒の範囲である。触媒対炭化水素原料の重量比(触媒/油比)は、約2から約100まで更には150のように高い範囲であってよい。更に通常は、触媒対油比は、5〜100の範囲であってよい。立上り管反応器内の温度は、一般に約400℃(752°F)〜約600℃(1112°F)の範囲であってよい。更に通常、立上り管反応器温度は、約450℃(842°F)〜約550℃(1022°F)の範囲であってよい。本発明の立上り管反応器の温度は、通常の従来の流動触媒接触分解法の反応器温度よりも低くなりやすい。これは、従来の流動接触分解法で要求されることが多いガソリンの製造とは反対に、本発明は中間留分を高収率で製造しようとするからである。
【0016】
立上り管反応器からの炭化水素と触媒との混合物は、分解ガス油生成物及び使用済み分解触媒を含む立上り管反応生成物として、ストリッパーシステムに通す。ストリッパーシステムは、触媒から炭化水素を分離する手段を備えると共に、分解ガス油生成物が使用済み分解触媒から分離されるストリッパー分離帯を規定する。ストリッパーシステムは、炭化水素生成物からFCC触媒を分離するための当業者に公知のいかなるシステム又は手段であってよい。通常のストリッパー操作では、分解ガス油生成物と使用済み分解触媒との混合物である立上り管反応生成物は、各種分解ガス油生成物から使用済み分解触媒を分離するためのサイクロンを備えたストリッパーシステムに通す。分離された使用済み分解触媒は、サイクロンからストリッパー容器に入り、ここで使用済み分解触媒から更に分解ガス油生成物を除去するため、水蒸気と接触する。分離された使用済み分解触媒上のコークス含有量は、触媒と炭素との合計重量に対し、一般に約0.5〜約5重量%の範囲である。分離された使用済み分解触媒上のコークス含有量は、通常、約0.5〜約1.5重量%の範囲である。
【0017】
分離された使用済み分解触媒は、次に、分離された使用済み分解触媒を再生するための手段を備えると共に、再生帯を規定する触媒再生器に通される。再生帯には分離された使用済み分解触媒が導入され、ここで、分離された使用済み分解触媒上に沈着した炭素は燃焼し、炭素が除去されて、炭素含有量の低下した再生分解触媒が得られる。触媒再生器は、通常、再生帯を規定する縦型円筒容器で、ここでは使用済み分解触媒は、空気のような酸素含有再生ガスの上向き通過により流動床として維持される。
【0018】
再生帯内の温度は、一般に約621℃(1150°F)〜約760℃(1400°F)、更に通常は677℃(1250°F)〜約715℃(1320°F)の範囲に維持される。再生帯内の圧力は、ほぼ大気圧〜約345kPa(50psig)、好ましくは約34〜345kPa(5〜50psig)の範囲である。再生帯内の分離された使用済み分解触媒の滞留時間は、約1〜約6分、通常は約2分以上又は約2分から約4分以下又は約4分までの範囲である。再生された分解触媒上のコークス含有量は、分離された使用済み分解触媒上のコークス含有量よりも少なく、一般に0.5重量%未満であり、したがって、一般には約0.01重量%以上又は約0.01重量%から約0.5重量%以下又は約0.5重量%までの範囲である。再生分解触媒上のコークス濃度は0.1重量%未満が好ましく、したがって、一般には0.01〜0.1重量%の範囲である。
【0019】
触媒再生器からの再生分解触媒は、濃厚相反応器又は固定流動床反応器に通される。これらの反応器は、ガソリン供給原料を再生分解触媒と接触させるための手段を備えると共に、濃厚相反応帯を規定する。濃厚相反応帯ではガソリン供給原料は、好適な高苛酷性分解条件下で再生分解触媒と接触する。
【0020】
濃厚相反応器は、濃厚相反応帯を規定する容器であってよい。容器内に含まれる再生分解触媒は、ガソリン供給原料及び任意に水蒸気の導入により流動化される。濃厚相反応帯は、分解ガソリン生成物及び好ましくは高分解収率で低級オレフィンが得られるような反応条件下で操作される。高苛酷性分解条件としては、濃厚相反応帯内の温度については約482℃(900°F)〜約871℃(1600°F)の範囲であるが、好ましくは510℃(950°F)〜871℃(1600°F)の範囲であり、最も好ましくは538℃(1000°F)〜732℃(1350°F)であってよい。濃厚相反応帯内の圧力は、ほぼ大気圧〜約345kPa(50psig)、好ましくは約34〜345kPa(5〜50psig)の範囲であってよい。
【0021】
前述のように、ガソリン供給原料と一緒に水蒸気を濃厚相反応帯に導入するのは任意であるが、本発明の好ましい局面は、水蒸気及びガソリン供給原料の両方を濃厚相反応帯に導入し、反応帯中に含まれる再生分解触媒と接触させることである。水蒸気を使用することが特に好ましく、ガソリン供給原料の分解において、低級オレフィンの収率に対する選択性を向上することができる。したがって、水蒸気を使用する場合、濃厚相反応帯に導入する水蒸気対ガソリン供給原料の重量比は、約15:1以下の範囲又は約15:1であるが、好ましくは0.1:1〜10:1の範囲である。更に好ましくは、水蒸気対ガソリン供給原料の重量比は、0.2:1〜9:1の範囲、最も好ましくは0.5:1〜8:1の範囲である。
【0022】
使用済み再生分解触媒は、濃厚相反応帯から除去され、立上り管反応器に導入されるガス油供給原料と混合した熱い分解触媒として利用される。本発明の一つの有益な局面は、低級オレフィンが高収率で得られる他、立上がり反応器で熱い分解触媒として使用する前に、部分失活した再生触媒が得られることである。部分失活とは、使用済み再生分解触媒が再生分解触媒上の炭素よりも僅かに高濃度の炭素を含有することを意味する。このような再生分解触媒の部分失活は、ガス油供給原料を立上り管反応器内で分解する際、好ましい生成物収率を得る助けとなる。使用済み再生分解触媒上のコークス濃度は、再生分解触媒上のコークス濃度よりも高いが、分離した使用済み分解触媒のコークス濃度よりも低い。したがって、使用済み再生触媒のコークス含有量は、0.1重量%を超え更には0.5重量%を超える可能性がある。好ましくは、使用済み再生触媒のコークス含有量は、約0.1〜約1重量%の範囲、最も好ましくは0.1〜0.6重量%の範囲である。
【0023】
濃厚相反応帯で得られる他の利益は、再生分解触媒の温度よりも低い温度を有する使用済み再生分解触媒と関連する。このような低温の使用済み再生分解触媒は、前述の部分失活と組合わせて、ガス油供給原料の分解による優先的生成物収率に更に利益を与える。
【0024】
本発明方法の立上り管反応器内のプロセス条件を制御する際、これを援助すると共に、所望の生成物混合物を得るため、再生分解触媒は、濃厚相反応帯に通すための少なくとも一部と、立上り管反応器に導入されるガス油供給原料と混合するための残部とに分割できる。濃厚相反応帯に導入した再生分解触媒の少なくとも一部は、プロセス及び所望の生成物収率についての要件に依存して、触媒再生器から得られた再生分解触媒に対し100%以下の範囲であってよい。しかし、特に再生分解触媒の少なくとも一部は、触媒再生器から取出した分離された再生分解触媒に対し約10〜100%である。また、再生分解触媒の少なくとも一部は、触媒再生器から取出した分離再生分解触媒に対し約50〜約90%であってもよい。
立上り管反応器内のプロセス条件を制御すると共に、所望の生成物混合物を得る他の方法は、濃厚相反応帯にZSM−5添加剤の添加による方法である。ZSM−5添加剤は、中間細孔サイズの結晶性アルミのシリケート又はゼオライトの系列から選ばれたモレキュラーシーブ添加剤である。
【0025】
本発明のZSM−5添加剤として使用できるモレキュラーシーブとしては、“Atlas of Zeolite Structure Types”,W.H.Meier及びD.H.Olson編,Butterworth−Heineman,第3版,1992年(この文献はここに援用する)に記載されるような中間細孔ゼオライトがある。中間細孔サイズゼオライトの細孔サイズは、一般に約0.5〜約0.7nmで、例えばMFI、MFS、MEL、MTW、EUO、MTT、HEU、FER及びTON構造型のゼオライト(ゼオライト命名についてのIUPAC委員会)が挙げられる。このような中間細孔サイズゼオライトの非限定的例としては、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−34、ZSM−35、ZSM−38、ZSM−48、ZSM−50、シリカライト及びシリカライト2が挙げられる。最も好ましいものは、USP 3,702,886、同3,7770,614に記載されるZSM−5で、ZSM−11はUSP 3,709,979に記載され、ZSM−12はUSP 3,832,449に、ZSM−21及びZSM−38はUSP 3,948,758に、ZSM−23はUSP 4,076,842に、またZSM−35はUSP 4,016,245に記載されている。これらの特許は全てここに援用する。他の好適なモレキュラーシーブとしては、 SAPO−4、USP 4,440,871に記載されるSAPO−11のようなシリコアルミノホスフェート(SAPO);クロモシリケート;ガリウムシリケート、鉄シリケート;USP 4,310,440に記載されるALPO−11のようなアルミニウムホスフェート(ALPO);EP−A−229,295に記載されるTASO−45のようなチタンアルミノシリケート(TASO);USP 4,254,297に記載される硼素シリケート; USP 4,500,651に記載されるTAPO−11のようなチタンアルミノホスフェート(TAPO);及び鉄アルミノシリケートが挙げられる。
【0026】
ZSM−5添加剤は、従来法に従って、接触的に不活性な無機酸化物母材成分と一緒に保持してよい。
USP 4,368,114には、本発明方法で好適なZSM−5添加剤であり得るゼオライト群について詳細に記載されている(この特許はここに援用する)。
【0027】
以上述べたプロセス変数の1種以上と操作条件とを組合わせれば、ガス油供給原料の転化制御が可能である。ガス油供給原料の転化率は、一般に30〜90重量%、好ましくは40〜85重量%の範囲が望ましい。ガス油供給原料の転化率とは、221℃(430°F)を超える沸点を有するガス油供給原料中に含まれる炭化水素が、立上り管反応器中で、221℃(430°F)よりも低い沸点を有する炭化水素に転化した該ガス油供給原料中に含まれる炭化水素の量(重量)を、221℃(430°F)を超える沸点を有するガス油供給原料中に含まれる炭化水素の量(重量)で割った値(%)である。前述のように、本発明方法は、中間留分沸点範囲の生成物及び低級オレフィンが優先的又は選択的に得られるように操作できる。
【0028】
本発明方法に装入されるガス油供給原料は、通常、流動接触分解ユニットに装入できるか装入される、いずれの炭化水素供給原料でもよい。一般的にいえば、345℃(650°F)〜760℃(1400°F)の範囲の沸点を有する炭化水素混合物は、本発明方法に好適な供給原料を作ることができる。好適なガス油供給原料を作ることができる製油所原料流の種類としては、例えば真空ガス油、コーカーガス油、直留残留物、熱分解油及びその他の炭化水素流が挙げられる。
【0029】
濃厚相反応帯に装入されるガソリン供給原料は、ガソリン沸点範囲の沸点を有する、いずれの好適な炭化水素供給原料であってもよい。一般に、ガソリン供給原料は、沸点範囲が約32℃(90°F)〜約204℃(400°F)の炭化水素を含む。本発明方法のガソリン供給原料として使用可能な製油所流の例としては、直留ガソリン、ナフサ、接触分解ガソリン及びコーカーナフサが挙げられる。
【0030】
図1に、本発明方法10の一局面を代表するプロセスフローの概略を示す。本発明方法10では、ガス油供給原料は導管12を通って、立上り管反応器14の底部に導入される。立上り管反応器14は立上り管反応帯又は分解反応帯を規定し、ここでガス油供給原料は接触分解触媒と混合される。接触分解触媒は、使用済み再生分解触媒、再生分解触媒又はこれら両触媒の組合わせであってよい。
【0031】
使用済み再生分解触媒は、ガソリン供給原料の高苛酷性分解において濃厚床反応器16で使用した再生分解触媒である。この使用済み再生分解触媒は濃厚床反応器16を出て、導管18経由で立上り管反応器14に導入される。再生分解触媒は、ガス油供給原料と混合してもよい。再生分解触媒は導管22経由で再生器20を出て、導管24経由で立上り管反応器14に導入され、ここでガス油供給原料と混合される。
【0032】
接触分解条件下で操作される立上り管反応器14を通ることにより、ガス油供給原料と熱接触分解触媒との混合物は、分解ガス油生成物と使用済み分解触媒との混合物を含む立上り管反応生成物を形成する。立上り管反応生成物は、立上り管反応器14を出て、ストリッパーシステム又は分離器/ストリッパー26に導入される。
【0033】
分離器/ストリッパー26は、分離帯、ストリッピング帯又はこれら両反応帯を規定すると共に、分解ガス油生成物及び使用済み分解触媒を分離するための手段を備える。分離された分解ガス油生成物は、導管28経由で分離器/ストリッパー26を出て、分離システム30に達する。分離システム30は、分解ガス油生成物を回収し、各種FCC生成物、例えば分解がス、分解ガソリン、分解ガス油及びサイクル油に分離するための、当該技術分野で公知のいずれのシステムであってもよい。分離システム30としては、吸収器及びストリッパーのようなシステム、蒸留塔、圧縮器及び分離器、又は分解ガス油生成物を構成する複数の生成物を回収、分離するための公知システムのいずれかの組合わせが挙げられる。
【0034】
したがって、分離システム30は、分離帯を規定すると共に、分解ガス油生成物を各種分解生成物に分離するための手段を備える。分解ガス、分解ガソリン及び分解ガス油は、分離システム30から、それぞれ導管32、34、36経由で出る。サイクル油は、分離システム30から導管38経由で出て、立上り管反応器14に導入される。
【0035】
分離された使用済み分解触媒は、導管40経由で分離器/ストリッパー26を出て、再生器20に導入される。再生器20は再生帯を規定すると共に、使用済み分解触媒を炭素燃焼条件下、空気のような酸素含有ガスと接触させて、使用済み分解触媒から炭素を除去するための手段を備える。酸素含有ガスは、導管42経由で再生器20に導入され、燃焼がスは、導管44経由で再生器20を出る。
【0036】
再生分解触媒は、導管22経由で再生器20を出る。本発明方法の任意の特徴として、導管22を通る再生分解触媒流は、導管22経由で再生器20を出て導管46経由で濃厚床反応器16に入る再生触媒の少なくとも一部と、再生器20を出て導管24経由で立上り管反応器14に入る再生触媒の残部との2つの流れに分割してよい。
【0037】
濃厚床反応器16は、濃厚床流動帯を規定すると共に、ガソリン供給原料を、濃厚床反応器16内に含まれる再生分解触媒と接触させるための手段を備える。濃厚床流動帯は、ガソリン供給物を優先的にエチレン、プロピレン及びブチレンのような低級オレフィン化合物に分解して、分解ガソリン生成物を生成するように、高苛酷性分解条件下で操作される。分解ガソリン生成物は、導管48経由で濃厚床反応器16を出る。
【0038】
使用済み再生分解触媒は、導管18経由で濃厚床反応器16を出て、立上り管反応器14に導入される。ガソリン供給原料は、導管50経由で濃厚床反応器16に導入され、また水蒸気は、導管52経由で濃厚床反応器16に導入される。ガソリン供給原料及び水蒸気は、再生触媒の流動床が得られるように、濃厚床反応器16に導入される。ZSM−5添加剤は、濃厚相反応器16の再生触媒に添加するか、或いは導管54経由で濃厚床反応器16に導入してよい。
以上の開示及び添付特許請求の範囲の範囲内で本発明の範囲を逸脱することなく合理的な変形、改変及び改造を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明方法の特定の局面を表すプロセスフロー概略図である。
【符号の説明】
【0040】
10 本発明方法
14 立上り管反応器
16 濃厚床反応器
20 再生器
26 ストリッパーシステム又は分離器/ストリッパー
30 分離システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス油供給原料を立上り管反応帯中、好適な接触分解条件下で非晶質シリカアルミナ及びゼオライトを含む中間留分選択性分解触媒と接触させて、分解ガス油生成物及び使用済み分解触媒を含む立上り管反応生成物を得る工程、
該使用済み分解触媒を再生して、再生分解触媒を得る工程、
ガソリン供給原料を濃厚床反応帯中、好適な高苛酷性分解条件下で該再生分解触媒と接触させて、分解ガソリン生成物及び使用済み再生分解触媒を得る工程、及び
該使用済み再生分解触媒を中間留分選択性分解触媒として使用する工程、
を含む中間留分及び低級オレフィンの製造方法。
【請求項2】
前記立上り管反応生成物を前記分解ガス油生成物及び使用済み分解触媒に分離する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再生分解触媒にZSM−5添加剤を添加する工程を更に含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記濃厚床反応帯中に水蒸気を導入する工程を更に含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記好適な接触分解条件は、前記ガス油供給原料の転化率が全ガス油供給原料に対し40〜85重量%の範囲となるような条件である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記使用済み再生分解触媒が低濃度の炭素を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ガス油供給原料を立上り管反応帯中、好適な接触分解条件下で分解触媒と接触させて、分解ガス油生成物及び使用済み分解触媒を含む立上り管反応生成物を得る工程、
該使用済み分解触媒を再生して、再生分解触媒を得る工程、
該再生分解触媒を該再生分解触媒の少なくとも一部と該再生分解触媒の残部とに分割する工程、
該再生分解触媒の少なくとも一部を濃厚床反応帯に通し、ここで好適な高苛酷性分解条件下でガソリン供給原料と接触させて、分解ガソリン生成物及び使用済み再生分解触媒を得る工程、及び
該再生分解触媒の残部及び使用済み再生分解触媒を分解触媒として使用する工程、
を含む方法。
【請求項8】
前記使用済み分解触媒の少なくとも一部をZSM−5添加剤と混合する工程を更に含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記濃厚床反応帯中に水蒸気を導入する工程を更に含む請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記分解ガス油生成物からスラリー生成物を分離する工程を更に含む請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記スラリー生成物を立上り管反応帯に導入する工程を更に含む請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ガス油供給原料を接触分解条件下で接触分解触媒と接触させて、分解ガス油生成物及び使用済み分解触媒を含む立上り管反応生成物を得るための立上り管反応手段;
該立上り管反応生成物を分解ガス油生成物及び使用済み分解触媒に分離するための分離手段;
該使用済み分解触媒を再生して、再生触媒を得るための再生手段;
ガソリン供給原料を高苛酷性分解条件下で該再生触媒と接触させて、分解ガソリン生成物及び使用済み再生触媒を得るための濃厚床反応手段;及び
該使用済み再生触媒を接触分解触媒として使用に供するための手段;
を備えた装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−510032(P2008−510032A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525696(P2007−525696)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/028053
【国際公開番号】WO2006/020547
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】