説明

炭化水素油の水素化脱金属触媒及びそれを用いた水素化処理方法

【課題】触媒の内部まで重金属を捕捉できるようにし、反応装置内における触媒の活性低下や圧力損失を緩和し、より安定した運転を達成できるようにする点の提供。
【解決手段】炭化水素油の水素化処理における活性金属成分の合計含有量が、酸化物基準で、0質量%、又は、0を超えて0.2質量%未満であり、平均細孔径が14nm以上である無機酸化物からなることを特徴とする炭化水素油の水素化脱金属触媒及びそれを用いた水素化処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素油の水素化脱金属触媒及びそれを用いた水素化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化水素の水素化処理では、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、及び、バナジウム(V)といった活性金属を担持した水素化脱金属触媒(水素化脱メタル触媒ともいわれる)を使用していたが、バナジウム、ニッケル、鉄等の重金属(被毒金属)により細孔閉塞や活性点の被毒が起こり、望む活性や触媒寿命が得られないという問題があった。ここで、使用済み触媒の断面をエネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X−ray Spectrometer:EDS)で解析すると、その被毒金属は触媒ペレットの内部よりも外周もしくは外縁に多く分布していることが観察される。すなわち、反応がペレットの外側主体でおこり、その内部までは有効に活用されていないことがわかっている。
このような触媒の重金属の被毒に基因する活性低下や圧力損失に対して、以下に示すいろいろの技術対策が採られている。
特許文献1や特許文献2には、反応装置内の触媒のサイズや担持活性金属量を段階的に変化させる方法(グレーディング)が提案されている。また、特許文献3には、空隙率が55vol%以上であり、細孔容積が0.4〜1.5ml/gであり、金属酸化物の担持量が0.2〜3%である触媒を、全触媒量の1〜5vol%充填する方法が開示されている。更に、特許文献4には、溶存する鉄を除去するため、触媒粒子を、表面積が1〜20m/gであり、平均細孔直径が1000〜10000Åである多孔性不活性粒子とする技術が開示されており、特許文献5には、触媒形状を車輪状にして空隙率を増加させる技術が開示されている。特許文献6には、表面積が1m/g以下であり、細孔直径が10μ以上である細孔の細孔容積が0.1ml/g以上である無機酸化物粒子からなる脱スケール剤およびこれに活性金属の酸化物もしくは硫化物を担持させた触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−76137号公報
【特許文献2】特公昭49−18763号公報
【特許文献3】特開昭62−89793号公報
【特許文献4】米国特許第4510263号公報
【特許文献5】米国特許第3947347号公報
【特許文献6】特許第2730696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水素化脱金属触媒では、水素化処理反応において、バナジウム、ニッケル、鉄等の重金属により細孔閉塞や活性点の被毒が起こり、望む活性や寿命が得られないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、触媒の内部まで重金属を捕捉できるようにし、反応装置内における触媒の活性低下や圧力損失を緩和し、より安定した運転を達成できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1は、炭化水素油の水素化処理における活性金属成分(水素化活性金属成分)の合計含有量が、酸化物基準で、0質量%、又は、0を超えて0.2質量%未満であり、平均細孔径が14nm以上である無機酸化物からなることを特徴とする炭化水素油の水素化脱金属触媒に関する。
ここで、活性金属成分の含有量が0.2質量%以上では、油中のバナジウム、ニッケル、鉄等の重金属が触媒表層で反応することによる細孔閉塞や活性点の被毒が起こり易くなり、望む活性や寿命が得られ難くなる虞がある。
本発明の第2は、前記活性金属成分が、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、及び、バナジウム(V)のいずれか1又は2以上であることを特徴とする請求項1記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒に関する。
本発明の第3は、前記無機酸化物がアルミナ、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、チタニア−シリカ、及び、チタニア−アルミナよりなる群から選ばれた少なくとも1種の無機酸化物であることを特徴とする請求項1又は2記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒に関する。本発明における無機酸化物としては、アルミナ、シリカ−アルミナおよびシリカよりなる群から選ばれたものであることが好ましい。
本発明の第4は、請求項1〜3いずれかに記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒を使用することを特徴とする炭化水素油の水素化処理方法に関する
【0006】
本発明は、水素化活性金属であるMo、Ni、Co、W、Vなどをほとんど担持しない無機酸化物からなる炭化水素油の水素化脱金属触媒を使用することで、活性金属を担持した触媒のようなペレット表層での反応を抑え、さらに担体の内部までバナジウム、ニッケル、鉄等の重金属を捕捉させることにより、反応装置内の活性低下や圧力損失を緩和することができ、安定した運転が達成できる。水素化活性金属成分の含有量は、実質的に分析機器で検出されない0質量%が好ましいが、不純物として混入する程度(0.2質量%未満、好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%)であれば本発明の効果に支障がない。
【0007】
本発明の水素化活性金属をほとんど担持していない炭化水素油の水素化脱金属触媒を触媒充填塔に充填するときは、従来の水素化処理触媒(水素化脱金属触媒、水素化脱硫触媒等)と積層または混合して使用(層状充填または混合充填)することにより、有効に重金属を捕捉し、本来の脱メタル触媒や脱スケール触媒の働きを補助することができる。
本発明の炭化水素油の水素化脱金属触媒は、これら重金属をその内部まで捕捉(従来使用済み触媒の解析では触媒表層にVやFeが分布)するので、細孔直径や細孔容積(PV)が大きなものが望ましい。実際には、本発明の触媒は、従来の脱メタル触媒、脱スケール触媒、サポート触媒、脱硫触媒、及び、セラミックボールの代替として使用することができる。また、本発明の触媒は、ボトムコーン部(反応塔下部の湾曲した部分、すなわち基底部)やディストリビュータートレイ部(反応塔上部、場合によっては反応塔中部にあって、油の分配/分散装置としての役割を担っている)への充填も効果的である。
【0008】
本発明の触媒は、平均細孔径(PD)が14nm以上であって、更に、細孔容積(PV)が0.5ml/g以上であるのが好ましい。ここで、本発明の触媒は、触媒の強度(8N/mm以上、好ましくは10N/mm以上)との兼ね合いや細孔分布(ユニモーダル、バイモーダル等)にもよるが、おおむね、平均細孔径として14nm≦PD≦50nm、0.5ml/g≦PV≦1.4ml/g程であるのがよい。
これにより、重金属を捕捉するしやすさと、担体としての強度のバランスをとることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炭化水素油の水素化脱金属触媒の使用により、
(1)バナジウムやニッケル、鉄といった重金属の捕捉能が従来の触媒充填システムよりも向上する。
(2)脱スケール触媒、脱メタル触媒、脱硫触媒の負荷が減少し、その触媒活性能力の減少が抑えられる。
(3)メタル捕捉の場が分散(内部でも捕捉)することで、より高品質(低メタル)な生成油が得られる。
(4)メタル捕捉の場が分散(内部でも捕捉)することで、圧力損失が起こりにくくなる。
(5)上記事項を総合して、反応系全体としての活性低下や圧力損失を緩和し、より安定した運転を達成する。
(6)従来触媒のようにMo、Ni、Co、W、Vといった活性金属をほとんど使用しないので、生産コストが大幅に下がる。
(7)本発明の触媒は、触媒充填層の触媒層におけるいずれの層に用いても、有効性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】水素化脱メタル活性(HDM)(%)と水素化脱硫活性(HDS)(%)との関係を示すグラフである。
【図2】充填塔への触媒の充填様式をケース1〜5に示す。
【実施例】
【0011】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0012】
(実施例1:触媒A)
本出願人に係わる再公表WO95/15920号公報に記載のアルミナの製造装置を使用してアルミナ水和物を調製した。即ち、薬液添加口2箇所を持つ循環ラインを設けたタンクに純水119.9kgを張り込み、これにカルボン酸化合物(グルコン酸ナトリウム)0.1kgを添加し、約2時間高速攪拌し完全に溶解させた。この水溶液にアルミン酸ナトリウム水溶液(Alとして濃度22質量%)0.3kgを攪拌しながら添加し、60℃に加温し循環させた。次いで硫酸アルミニウム水溶液(Alとして濃度7質量%)を添加して種子アルミナ水和物スラリーを調製した。このスラリーに、アルミン酸ナトリウム水溶液(Alとして濃度22質量%)17.9kgと硫酸アルミニウム水溶液(Alとして濃度7質量%)28.1kgを各々6.0kg/hrと9.4kg/hrの添加速度で、温度60℃、pH7.9〜8.1を保ち、攪拌および循環させながら、3時間かけて添加してアルミナ水和物を調合した。得られたアルミナ水和物調合スラリーを洗浄してナトリウムおよび硫酸根を除去したアルミナ水和物スラリーを得た。このアルミナ水和物のスラリーに純水を加えて、Al濃度10質量%のスラリーに調製し、15質量%アンモニア水にて該スラリーpHを11に調製した後、還流器のついた熟成タンクにて95℃で8時間熟成した。熟成終了後、このスラリー30kg(Alとして3kg)をスチームジャケット付き双腕型ニーダーにより蒸発濃縮しながら捏和し、可塑性のある捏和物とした。この捏和物をオーガー式押し出し機で、四つ葉型の柱状ペレット(四つ葉形状断面の対角線の長さが1.8mm、ペレットの長さが3〜6mm)に押し出し成形した。得られたアルミナ成形品は、110℃で16時間乾燥した後、さらに680℃で2時間焼成して触媒Aを調製した。触媒Aの性状を表1に示す。
【0013】
(実施例2:触媒B)
実施例1で得た触媒Aにモリブデンとニッケルを酸化物として触媒組成物基準でそれぞれ0.07質量%、0.01質量%となるように、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルのカルボン酸水溶液を周知の方法で含浸した後、回転式乾燥機を用いて室温から250℃まで昇温乾燥した。さらにこの乾燥品は、550℃で1時間空気中にて焼成して触媒Bを調製した。触媒Bの性状を表1に示す。
(実施例3:触媒C)
実施例1で得た触媒Aにモリブデンとニッケルを酸化物として触媒組成物基準でそれぞれ0.15質量%、0.03質量%となるように、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルのカルボン酸水溶液を周知の方法で含浸した後、回転式乾燥機を用いて室温から250℃まで昇温乾燥した。さらにこの乾燥品は、550℃で1時間空気中にて焼成して触媒Cを調製した。触媒Cの性状を表1に示す。
【0014】
(実施例4:触媒D)
本出願人に係わる再公表WO95/15920号公報に記載のアルミナの製造装置を使用してアルミナ水和物を調製した。即ち、薬液添加口2箇所を持つ循環ラインを設けたタンクに純水119.9kgを張り込み、これにカルボン酸化合物0.1kgを添加し、約2時間高速攪拌し完全に溶解させた。この水溶液にアルミン酸ナトリウム水溶液(Alとして濃度22質量%)0.3kgを攪拌しながら添加し、60℃に加温し循環させた。次いで硫酸アルミニウム水溶液(Alとして濃度7質量%)を添加して種子アルミナ水和物スラリーを調製した。このスラリーに、アルミン酸ナトリウム水溶液(Alとして濃度22質量%)17.9kgと硫酸アルミニウム水溶液(Alとして濃度7質量%)30.9kgを各々6.0kg/hrと10.3kg/hrの添加速度で、温度60℃、pH7.1〜7.3を保ち、攪拌および循環させながら、3時間かけて添加してアルミナ水和物を調合した。得られたアルミナ水和物調合スラリーを洗浄してナトリウムおよび硫酸根を除去したアルミナ水和物スラリーを得た。このアルミナ水和物のスラリーに純水を加えて、Al濃度10質量%のスラリーに調製し、15質量%アンモニア水にて該スラリーpHを11に調製した後、還流器のついた熟成タンクにて95℃で8時間熟成した。熟成終了後、このスラリー30kg(Alとして3kg)をスチームジャケット付き双腕型ニーダーにより蒸発濃縮しながら捏和し、可塑性のある捏和物とした。この捏和物をオーガー式押し出し機で、四つ葉型の柱状ペレット(四つ葉形状断面の対角線の長さが1.8mm、ペレットの長さが3〜6mm)に押し出し成形した。得られたアルミナ成形品は、110℃で16時間乾燥した後、さらに580℃で2時間焼成して触媒Dを調製した。触媒Dの性状を表1に示す。
【0015】
(実施例5:触媒E)
実施例4で得た触媒Dにモリブデンとニッケルを酸化物として触媒組成物基準でそれぞれ0.07質量%、0.01質量%となるように、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルのカルボン酸水溶液を周知の方法で含浸した後、回転式乾燥機を用いて室温から250℃まで昇温乾燥した。さらにこの乾燥品は、550℃で1時間空気中にて焼成して触媒Eを調製した。触媒Eの性状を表1に示す。
(実施例6:触媒F)
実施例4で得た触媒Dにモリブデンとニッケルを酸化物として触媒組成物基準でそれぞれ0.15質量%、0.03質量%となるように、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルのカルボン酸水溶液を周知の方法で含浸した後、回転式乾燥機を用いて室温から250℃まで昇温乾燥した。さらにこの乾燥品は、550℃で1時間空気中にて焼成して触媒Fを調製した。触媒Fの性状を表1に示す。
【0016】
ここで、表3などに記載の充填ケース〔1〕〜〔5〕は、以下の通りのものである。
充填ケース〔1〕:粗反応して高分子炭化水素から離脱してきたメタルを捕捉する
位置に本発明触媒の充填ケースを設けた。
充填ケース〔2〕:比較的脱離しやすいメタルを捕捉する位置に本発明触媒の充填
ケースを設けた。
充填ケース〔3〕:さらに反応して離脱してきたメタルを捕捉する位置に本発明触
媒の充填ケースを設けた。
充填ケース〔4〕:充填ケース〔1〕と充填ケース〔2〕を組み合わせた混合充填
ケースを設けた。
充填ケース〔5〕:充填ケース〔1〕と充填ケース〔3〕を組み合わせた混合充填
ケースを設けた。
【0017】
(実施例7:触媒A使用/充填ケース〔1〕)
実施例1で得た触媒Aにモリブデンとニッケルを酸化物として触媒組成物基準でそれぞれ5質量%、1質量%となるように、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルのカルボン酸水溶液を周知の方法で含浸した後、回転式乾燥機を用いて室温から250℃まで昇温乾燥した。さらにこの乾燥品は、550℃で1時間空気中にて焼成して触媒Gを調製した。触媒Gの性状を表2に示す。
また、実施例4で得た触媒Dにモリブデンとニッケルを酸化物として触媒組成物基準でそれぞれ12質量%、3質量%となるように、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルのカルボン酸水溶液を周知の方法で含浸した後、回転式乾燥機を用いて室温から250℃まで昇温乾燥した。さらにこの乾燥品は、550℃で1時間空気中にて焼成して触媒Hを調製した。触媒Hの性状を表2に示す。
【0018】
実施例1の触媒Aについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて次に示す条件で反応温度を変えて水素化脱メタル活性を調べた。
反応条件; 触媒充填量 200 ml
反応圧力 13.5 MPa
液空間速度(LHSV) 0.45 hr−1
水素/油比(H/HC) 800 Nm/kl
反応温度 350℃、360℃、370℃
この時の触媒充填比率は、図2のケース1に示すように、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒G/触媒A/触媒H=25/5/70であった。
また、原料油には下記性状の常圧残渣油を使用した。
原料油性状; 比重(15/4℃) 0.9722 g/cm
残炭 11.0 %
アスファルテン分 4.5 %
イオウ分 4.179 %
メタル(Ni+V)量 78.9 %
活性評価は、上記反応条件下で反応温度360℃一定のもと原料油を通油し、定期的に測定した生成油中のメタル(Ni+V)量と通油量から触媒に堆積したメタル量(MOC:Metal on Catalyst)が15質量%になった時に、目標反応温度を350、360、370℃と変えて反応させ、実際の測定反応温度に対して得られた生成油中の硫黄分およびニッケル、バナジウムの量を測定し、脱メタル率及び脱硫率をプロットして引いた直線から、反応温度360℃に対応する脱メタル率及び脱硫率を求めた。その値を表3〜5に示す。
【0019】
(実施例8:触媒A使用/充填ケース〔2〕)
実施例1の触媒Aについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒A/触媒G/触媒H=5/25/70であった。
(実施例9:触媒A使用/充填ケース〔3〕)
実施例1の触媒Aについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒G/触媒H/触媒A=25/70/5であった。
(実施例10:触媒A使用/充填ケース〔4〕)
実施例1の触媒Aについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は実施例7に示す充填比率と同じであるが、触媒A(5%分)と触媒G(25%分)を予め混合(計30%分)して、リアクター上部(原料油供給側)から順に、(触媒A+触媒G混合品)/触媒H=30/70とした。
(実施例11:触媒A使用/充填ケース〔5〕)
実施例1の触媒Aについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は実施例7に示す充填比率と同じであるが、触媒A(5%分)と触媒H(70%分)を予め混合(計75%分)して、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒G/(触媒A+触媒H混合品)=25/75とした。
【0020】
(実施例12:触媒B使用/充填ケース〔2〕)
実施例2の触媒Bについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒B/触媒G/触媒H=5/25/70であった。
(実施例13:触媒C使用/充填ケース〔2〕)
実施例3の触媒Cについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒C/触媒G/触媒H=5/25/70であった。
(実施例14:触媒D使用/充填ケース〔1〕)
実施例4の触媒Dについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒G/触媒D/触媒H=25/5/70であった。
(実施例15:触媒E使用/充填ケース〔1〕)
実施例5の触媒Eについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒G/触媒E/触媒H=25/5/70であった。
(実施例16:触媒F使用/充填ケース〔1〕)
実施例6の触媒Fについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒G/触媒F/触媒H=25/5/70であった。
【0021】
(比較例1:触媒G使用/充填ケース〔1〕)
実施例7の触媒Gについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒G/触媒G/触媒H=25/5/70すなわち、触媒G/触媒H=30/70であった。
ここにおける触媒Gは従来の脱メタル触媒の代表例であり、触媒Hは従来の脱硫触媒の代表例である。
(比較例2:触媒I使用/充填ケース〔1〕)
実施例4で得られたアルミナ成形品を110℃で16時間乾燥した後、さらに500℃で2時間焼成して触媒Iを調製した。触媒Iの性状を表2に示す。この触媒Iについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒G/触媒I/触媒H=25/5/70であった。
(比較例3:触媒J/充填ケース〔2〕)
実施例1で得た触媒Aにモリブデンとニッケルを酸化物として触媒組成物基準でそれぞれ0.25質量%、0.05質量%となるように、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルのカルボン酸水溶液を周知の方法で含浸した後、回転式乾燥機を用いて室温から250℃まで昇温乾燥した。さらにこの乾燥品は、550℃で1時間空気中にて焼成して触媒Jを調製した。触媒Jの性状を表2に示す。この触媒Jについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒J/触媒G/触媒H=5/25/70であった。
(比較例4:触媒K/充填ケース〔1〕)
実施例4で得た触媒Dにモリブデンとニッケルを酸化物として触媒組成物基準でそれぞれ0.25質量%、0.05質量%となるように、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルのカルボン酸水溶液を周知の方法で含浸した後、回転式乾燥機を用いて室温から250℃まで昇温乾燥した。さらにこの乾燥品は、550℃で1時間空気中にて焼成して触媒Kを調製した。触媒Kの性状を表2に示す。この触媒Kについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒G/触媒K/触媒H=25/5/70であった。
(比較例5:セラミックボール使用/充填ケース〔1〕)
固定床式のリアクターに使用される無機酸化物のセラミックボールについて、固定床式のマイクロリアクターを用いて実施例7に示す条件で水素化脱メタル活性を調べた。なお、このセラミックボールは株式会社ニッカトー製セラミックス(アルミナボール,3mm径)を使用した。この時の触媒充填比率は、リアクター上部(原料油供給側)から順に、触媒G/アルミナボール/触媒H=25/5/70であった。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
表1、2において、
・細孔直径、細孔容積は、水銀圧入法により測定したものであり、細孔直径は、水銀の表面張力480dyne/cm、接触角150°を用いて計算した値である。
・圧壊強度は、前処理として、試料を500℃で1時間焼成したものを室温までデシケーターにて冷却したものから長さ4mm以上の試料40個以上を木屋式硬度計(圧縮子3.18mm)を用いて圧縮し、破砕された時の荷重を求めて次式により算出した。
圧壊強度(N/mm)=S×9.807/L×n
・ここで、Sは加圧荷重の総和(kg)、Lは圧縮子の径(3.18mm)、nは測定個数を表す。
【0025】
【表3】

【0026】
触媒充填比率は、本例で用いた触媒充填容積が200mlであるので、例えば実施例7でいえば、
触媒G(25vol%)/触媒A(5vol%)/触媒H(70vol%)
→ 触媒G(200ml×0.25)/触媒A(200ml×0.05)/触媒H
(200ml×0.70)
→ 触媒G(50ml)/触媒A(10ml)/触媒H(140ml)
の充填量となっている。
また、表中の触媒充填比率の項で、実施例7では、上から下へ、触媒G、触媒A、触媒Hと記載されているが、これは充填塔中で上から下へ順に触媒G、触媒A、触媒Hの順で充填されていることを示している。表中の記載はすべて同様である。
【0027】
【表4】

【0028】
【表5】

【0029】
なお、表3から表5記載の脱メタル率,脱硫率は次式により求めた。
脱メタル率=(原料油中のメタル濃度−生成油中のメタル濃度)/原料油中のメタル濃度×100
脱硫率=(原料油中の硫黄濃度−生成油中の硫黄濃度)/原料油中の硫黄濃度×100
【0030】
製油所では、一般に精製油中の硫黄濃度が一定になるように管理して運転する。すなわち脱硫率一定の下に運転される。通常、脱硫率を維持するには、反応温度をコントロール(脱硫率を上げるには温度を上げる)しながら運転する。本発明の炭化水素油の脱メタル触媒は、図1のように同じ脱硫率において、より高い脱メタル活性を発揮する。すなわち、脱メタル率/脱硫率の比が、従来の触媒を超えており、脱メタル選択性が高いことがあきらかである。本発明の実施例においては、各々充填層に触媒を充填しているが、それを複数組み合わせることも有効である。また、本発明の炭化水素油の水素化脱金属触媒を使用することで、図1に示すように高い脱メタル選択活性を有しているのはもちろんであるが、その機能的効果によって他の触媒の能力を保持でき、高い脱硫活性も有しているといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素油の水素化処理における活性金属成分の含有量が、酸化物基準で、0質量%、又は、0を超えて0.2質量%未満であり、平均細孔径が14nm以上である無機酸化物からなることを特徴とする炭化水素油の水素化脱金属触媒。
【請求項2】
前記活性金属成分が、モリブデン、ニッケル、コバルト、タングステン、及び、バナジウムのいずれか1又は2以上であることを特徴とする請求項1記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
【請求項3】
前記無機酸化物がアルミナ、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、チタニア−シリカ、及び、チタニア−アルミナよりなる群から選ばれた少なくとも1種の無機酸化物であることを特徴とする請求項1又は2記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒を使用することを特徴とする炭化水素油の水素化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−201281(P2010−201281A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46249(P2009−46249)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】