説明

炭化物の出荷方法

【課題】有機性廃棄物を原料として製造された炭化物の可燃分含有率を瞬時に正確に測定し、可燃分含有率に応じて振り分けを行い、それぞれの用途に出荷することができる炭化物の出荷方法を提供する。
【解決手段】有機性廃棄物を炭化炉1により炭化させて得られた粉粒状の炭化物の嵩比重を測定し、比較的低比重の炭化物を可燃分含有率の高い炭化物、比較的高比重の炭化物を可燃分含有率の低い炭化物として振り分けてサイロ7,8,9に貯留したうえ、用途に応じて出荷する。炭化炉1を流動床式炭化炉とすれば、均一な粒径の炭化物を得ることができる。出荷時に各サイロ内の炭化物をブレンドすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ゴミなどの有機性廃棄物を原料として製造された炭化物の出荷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ゴミなどに代表される有機性廃棄物は、長年にわたり主として焼却処分されてきた。しかし焼却灰の最終処分場の確保が次第に困難となっているうえに、可燃性廃棄物を単に焼却することはエネルギー資源の浪費および地球温暖化ガスの排出につながるため、最近では様々な有効利用法が開発されている。そのひとつが特許文献1に示されるように、有機性廃棄物を原料として炭化物を製造する技術である。
【0003】
この技術は、有機性廃棄物を空気比が1未満の低酸素雰囲気中で熱分解し、可燃性ガスや炭化物を取り出す技術である。特許文献1では炭化炉として流動炉を使用し、フリーボードの温度および砂層の温度を設定温度域に制御するとともに、空気比を0.3〜0.7の範囲に制御している。流動炉に投入された有機性廃棄物は流動媒体との接触により瞬時に破砕されながら熱分解され、粉粒状の炭化物を得ることができる。
【0004】
この場合には通常の工業原料とは異なり、原料となる有機性廃棄物の性状は様々であるから、得られた炭化物の性状もばらつくことが避けられない。このため炭化物の発熱量を決定する可燃分含有率も大きく変動する。現在のところ、可燃分が40%未満の炭化物は電気炉製鋼所等の保温材として利用され、また可燃分が40%以上の炭化物はコークス等の化石燃料代替として有効利用されている。また可燃性ガスの生産を主目的とした場合には、可燃分が10%以下の炭化物となることもあり、このような炭化物は土壌改良剤等に利用されている。従って製造された炭化物を可燃分含有率によって正確に選別し、それぞれの用途に出荷する必要がある。
【0005】
ところが炭化物の可燃分含有率の測定は、サンプルを恒温槽に入れて約107℃で乾燥させた後、電気炉を用いて約815℃で完全燃焼させて元の炭化物の重量と残った灰の重量から可燃分含有率を求めるというようなJISに規定される手順を踏んで行われるため、最低でも3時間程度を必要とする。このため、炭化炉から連続的に排出される炭化物の可燃分含有率を瞬時に測定して可燃分の高低に応じて振り分けることはできなかった。このため現状では炭化炉から連続的に排出される炭化物をいったんサイロに貯留し、出荷時に可燃分含有率を測定して可燃分の高低に応じてそれぞれの用途に振り分ける方法を取っている。しかし、サイロに貯留された炭化物の性状も様々であるから、出荷時には全数検査が必要であり、多くの時間を要して作業効率が上がらないという問題があった。
【特許文献1】特許第3830096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来技術の問題点を解決し、有機性廃棄物を原料として製造された炭化物の可燃分含有率を瞬時(ごく短時間内)に正確に測定し、可燃分含有率に応じて振り分けを行い、それぞれの用途に出荷することができる炭化物の出荷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、有機性廃棄物を炭化炉により炭化させて得られた粉粒状の炭化物の嵩比重を測定し、比較的低比重の炭化物を可燃分含有率の高い炭化物、比較的高比重の炭化物を可燃分含有率の低い炭化物として振り分けて貯留したうえ、用途に応じて出荷することを特徴とするものである。請求項2に記載のように、炭化炉が有機性廃棄物を流動媒体により破砕しつつ炭化することで均一な粉粒状の炭化物を製造できる流動床式炭化炉であることが好ましい。
【0008】
また請求項3のように、炭化物の嵩比重測定を炭化炉の出口で行い、可燃分含有率によって区別された複数のサイロに振り分けたうえで、各サイロから用途に応じて出荷することができ、この場合には請求項4のように、可燃分含有率によって区別された複数のサイロからの炭化物を、用途に応じてブレンドして出荷することができる。また、請求項5のように、炭化炉で製造している炭化物の可燃分が炭化炉出口で瞬時に分かるため、炭化物の可燃分率を増加したい場合には、炭化炉へ供給する空気量を低減する又は炭化炉の温度を下降させる、炭化物の可燃分率を低減したい場合には、炭化炉へ供給する空気量を増加する又は炭化炉の温度を上昇させるといった操炉条件の調整指標とすることが可能となり、更にばらつきのない可燃分含有率の炭化物を出荷することが可能となる。
【0009】
また請求項6のように、炭化炉から出た炭化物を共用のサイロに貯留し、サイロの出口において炭化物の嵩比重測定を行い、可燃分含有率によって区別された複数の搬送用バッグに振り分けて出荷することもできる。上記したいずれの場合にも、炭化物の嵩比重測定を、一定容積の容器に充填した炭化物の重量を測定する方法で行なうことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炭化物の嵩比重を測定することによって炭化物の可燃分含有率を瞬時に測定し、比較的低比重の炭化物を可燃分含有率の高い炭化物、比較的高比重の炭化物を可燃分含有率の低い炭化物として振り分け、出荷することができる。このため従来のような出荷時における全数検査は不要となる。この比重測定は請求項6に記載のように一定容積の容器に充填した炭化物の重量を測定する方法で行なうことができるが、有機性廃棄物を流動媒体により破砕しつつ炭化することで均一な粉粒状の炭化物を製造できる流動床式炭化炉を用いて製造された炭化物はサイクロンで回収されるため、可燃分含有率の高低にかかわらず粒径がほぼ一定であり、水分を殆ど含まないという特徴を持つ。このため比重測定を簡便かつ精度よく行なうことができる。
【0011】
具体的な振り分け方法は、請求項3のように炭化物の比重測定を炭化炉の出口で行い、可燃分含有率によって区別された複数のサイロに振り分けたうえで、各サイロから用途に応じて出荷するようにしても、請求項6のように炭化炉から出た炭化物を共用のサイロに貯留し、サイロの出口において炭化物の比重測定を行い、可燃分含有率によって区別された複数の搬送用バッグに振り分けて出荷することもできる。いずれの場合にも可燃分含有率の応じた適切な用途に出荷することができる。特に請求項4のようなブレンド方式を採用すれば、任意の可燃分含有率の炭化物を出荷することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1は本発明の第1の実施形態を示すブロック図であり、請求項3に対応するものである。
【0013】
1は有機性廃棄物を原料として炭化物を製造する炭化炉である。前述したとおり有機性廃棄物の代表的なものは都市ゴミであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、畜産廃棄物、農業廃棄物、林業廃棄物、有機性の工場廃棄物、下水脱水汚泥などにも適用可能である。なお最後の下水脱水汚泥は性状が比較的安定しているため、製造される炭化物の可燃分含有率も安定しており、本発明を用いるまでもない場合が多い。
【0014】
この実施形態の炭化炉1は、流動床式炭化炉である。この流動床式炭化炉は、高温の流動媒体によって炉内に投入された有機性廃棄物を破砕しつつ炭化することができる炉である。特許文献1に示されたように炉内の空気比を1未満、好ましくは0.3〜0.7の範囲に制御することにより燃焼させることなく熱分解し、熱分解ガスと固形物である炭化物とする。その運転条件は特許文献1により公知であり、本発明の要部でもないので説明を省略する。
【0015】
流動床式の炭化炉1からの熱分解ガスはサイクロン2に導かれ、固体分である炭化物が回収される。一方、サイクロン2を通過した微細な炭化物を含有する熱分解ガスは二次燃焼室3、熱回収設備4、冷却塔5、集塵機6などからなる公知の排ガス処理系統によって処理される。この実施形態では熱分解ガスは燃焼させているが、取り出して燃料として使用することもできる。
【0016】
流動床式炭化炉により破砕され、熱分解ガス中からサイクロン2によって回収された炭化物の粒径はほぼ均一で水分を殆ど含まない状態となる。しかし投入される有機性廃棄物の性状が一定ではなく、特に都市ゴミの場合には性状が大きく変動するため、炭化物の可燃分含有率は大きく変動することは前述の通りである。
【0017】
そこで本発明ではサイクロン2の出口で炭化物の嵩比重を測定する。炭化物の可燃分含有率の大小を嵩比重によって判別することはこれまで知見がないが、有機性廃棄物を原料とする炭化物は主として可燃成分と無機成分(灰分)とで構成されており、可燃成分は炭素を主体とし、無機成分はシリカ、アルミナ、カルシアを主体とする。このため可燃成分と無機成分とでは比重が大きく異なり、炭化物の可燃分含有率と炭化物の比重との間に相関関係が存在する。
【0018】
しかも上記したように、サイクロン2で回収された炭化物の粒径はほぼ均一で水分を殆ど含まない状態となるので、炭化物を一定容積の容器に充填すると空隙率はほぼ一定となり、その重量を測定する方法によって、正確にかつ瞬時に嵩比重測定を行なうことができる。そこで比較的低比重の炭化物を可燃分含有率の高い炭化物、比較的高比重の炭化物を可燃分含有率の低い炭化物として振り分ける。
【0019】
なお、個々の炭化炉1の特性や投入される有機性廃棄物の種類によって炭化物の可燃分含有率と炭化物の嵩比重との関係は変化するため、予め検量線を作成しておくことが好ましい。しかしどのような場合にも、大小関係は変化しないので嵩比重による可燃分含有率の大小の識別は常に可能である。
【0020】
この実施形態では、炭化物を可燃分含有率によって高、中、低の3つのサイロ7,8,9に振り分けて貯留する。そしてサイロ7に貯留された可燃分含有率の高い炭化物(40%以上)はコークス等の化石燃料代替としての用途に出荷され、サイロ8に貯留された可燃分含有率が中程度の炭化物(40%未満)は保温材としての用途に出荷され、サイロ9に貯留された可燃分含有率が低い炭化物(10%以下)は土壌改良剤等の用途に出荷される。
【0021】
また可燃分含有率がそれらの中間的な炭化物が要求されるような場合には、可燃分含有率によって区別された複数のサイロ7,8,9からの炭化物を、用途に応じてブレンドして出荷することができる。この方法を採用すれば、出荷される炭化物の可燃分含有率を正確に決定することができる。また、炭化炉で製造している炭化物の可燃分が炭化炉出口で瞬時に分かるため、炭化物の可燃分率を増加したい場合には、炭化炉へ供給する空気量を増加する又は炭化炉の温度を上昇させる、炭化物の可燃分率を低減したい場合には、炭化炉へ供給する空気量を増加する又は炭化炉の温度を上昇させるといった操炉条件の調整指標とすることが可能となり、更にばらつきのない可燃分含有率の炭化物を出荷することが可能となる。
【0022】
上記した実施形態では炭化物の嵩比重測定を炭化炉1の出口で行い、可燃分含有率によって区別された複数のサイロ7,8,9に振り分けた。しかし図2に示す第2の実施形態のように、炭化炉1から出た炭化物を共用のサイロ10に貯留しておき、サイロ10の出口において炭化物の比重測定を行い、可燃分含有率によって区別された複数の搬送用バッグ11,12,13に振り分けて出荷することもできる。
【0023】
この方法によれば、図1の実施形態のように炭化炉1から出たばかりの高温の炭化物の嵩比重測定を行なう必要がなく、サイロを複数設置する必要がなく、また炭化炉1の運転休止時にも嵩比重測定を行なうことができる。
【0024】
以上に説明したように、本発明によれば、有機性廃棄物を原料として製造された炭化物の可燃分含有率を瞬時に測定し、炭化物を可燃分含有率に応じて振り分けを行い、それぞれの用途に出荷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0026】
1 炭化炉
2 サイクロン
3 二次燃焼室
4 熱回収設備
5 冷却塔
6 集塵機
7 サイロ
8 サイロ
9 サイロ
10 共用のサイロ
11 搬送用バッグ
12 搬送用バッグ
13 搬送用バッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を炭化炉により炭化させて得られた粉粒状の炭化物の嵩比重を測定し、比較的低比重の炭化物を可燃分含有率の高い炭化物、比較的高比重の炭化物を可燃分含有率の低い炭化物として振り分けて貯留したうえ、用途に応じて出荷することを特徴とする炭化物の出荷方法。
【請求項2】
炭化炉が有機性廃棄物を流動媒体により破砕しつつ炭化することで均一な粉粒状の炭化物を製造できる流動床式炭化炉であることを特徴とする請求項1記載の炭化物の出荷方法。
【請求項3】
炭化物の比重測定を炭化炉の出口で行い、可燃分含有率によって区別された複数のサイロに振り分けたうえで、各サイロから用途に応じて出荷することを特徴とする請求項2記載の炭化物の出荷方法。
【請求項4】
可燃分含有率によって区別された複数のサイロからの炭化物を、用途に応じてブレンドして出荷することを特徴とする請求項3記載の炭化物の出荷方法。
【請求項5】
炭化炉出口で瞬時に測定した炭化物の可燃分含有率を炭化炉の操炉の調整指標とすることで、ばらつきのない可燃分含有率の炭化物を出荷することを特徴とする請求項3記載の炭化物の出荷方法。
【請求項6】
炭化炉から出た炭化物を共用のサイロに貯留し、サイロの出口において炭化物の比重測定を行い、可燃分含有率によって区別された複数の搬送用バッグに振り分けて出荷することを特徴とする請求項2記載の炭化物の出荷方法。
【請求項7】
炭化物の比重測定を、一定容積の容器に充填した炭化物の重量を測定する方法で行なうことを特徴とする請求項2記載の炭化物の出荷方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−235169(P2009−235169A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80396(P2008−80396)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】