説明

炭化物の洗浄方法

【課題】自然環境に優しい炭化物の洗浄方法であって、炭化物を容易かつ安定的に洗浄可能な炭化物の洗浄方法を提供する。
【解決手段】穀類、そうこう類、糖類、および植物性油粕類の少なくとも一つを含む発酵原料に対して、バシラス・サブティリスを接種し、発酵させてなる発酵産物を得るための第1工程と、発酵産物と、水とを混合するとともに、濾過処理によって、水抽出物を得る第2工程と、水抽出物を加熱温度50〜100℃、加熱時間1〜300分で熱処理し、加熱処理水抽出物を得る第3工程と、pHが8〜12の範囲の加熱処理水抽出物を用いて、被洗浄物に付着した炭化物を洗浄する第4工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化物の洗浄方法に関する。特に、被洗浄物に対して強固に付着した炭化物であっても、容易に洗浄可能な酵素含有洗浄剤を用いてなる炭化物の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルファーオレフィン酸塩、高級アルコール系化合物、ビルダー、洗浄用酵素等を含む合成洗剤が幅広く使用されている。
しかしながら、合成洗剤は、動植物の細胞、皮膚に作用し障害を引き起こすのみでなく、生存をも脅かすおそれがあり、さらには自然界で分解し難く、河川・湖沼、地下水の汚染を引き起こすことが大きな問題となっている。
【0003】
そこで、穀類と、穀類糠と、穀類脱脂粕と、を含む発酵原料に対して、バシラス・サブティリスの純粋培養物を接種し、発酵させてなる発酵産物と、廃油から得られる油脂洗剤と、を混合して得られる酵素含有油脂洗剤が提案されている(特許文献1参照)。
また、動植物の脂肪酸のアルカリ塩を主成分とし、所定量の天然分散安定剤や酵素のみならず、穀類と、穀類糠と、穀類脱脂粕と、を含む発酵原料に対して、バシラス・サブティリスの純粋培養物を接種し、発酵させてなる発酵産物の水抽出液をさらに添加してなる液状天然油脂洗剤が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
一方、金型等に付着した炭化物を洗浄するに際して、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムから選択された1以上を含む強アルカリ成分と、EDTA4ナトリウム塩からなるキレート剤と、有機窒素あるいは無機窒素からなる酸化物除去成分と、グルコン酸ナトリウムとを含む洗浄剤等が用いられていた(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−87681号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開平9−125096号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2005−344210号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された酵素含有油脂洗剤および特許文献2に記載された液状天然油脂洗剤は、それぞれ洗濯用洗剤として使用することができても、pHが制御されておらず、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物を、洗浄することは困難であった。
また、特許文献1に記載された酵素含有油脂洗剤および特許文献2に記載された液状天然油脂洗剤は、それぞれ所定の発酵産物を含むものの、保管中にその発酵が過度に進むことから、腐敗物を産出したり、洗浄性が変化したりする場合が見られた。
【0007】
一方、特許文献3に開示された洗浄方法は、強アルカリ成分やキレート剤、さらには、酸化物除去成分等を含む洗浄剤を用いなければならず、使用者のみならず自然環境に対して、悪影響を及ぼしやすいという問題が見られた。
その上、これらの配合成分からなる洗浄剤を用いた場合、金型やエンジン部品等が浸食されやすいという問題も見られた。
【0008】
そこで、本発明者らは、所定の発酵原料に対して、バシラス・サブティリス(Bacillus subtilis)を接種し、発酵させてなる発酵産物の水抽出物のpHを所定範囲に制御するとともに、高温加熱処理工程を経てなる酵素含有洗浄剤であれば、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物を容易に洗浄できるとともに、発酵状態を制御して、腐敗物の産出を有効に防止できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、所定微生物由来の発酵産物の水抽出物であって、所定pHを有するとともに、高温加熱処理を施した酵素含有洗浄剤を用いてなる、使用者のみならず自然環境にも優しい炭化物の洗浄方法であって、被洗浄物に対して強固に付着した炭化物を容易かつ安定的に洗浄可能な炭化物の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明によれば、穀類、そうこう類、糖類、および植物性油粕類の少なくとも一つを含む発酵原料に対して、バシラス・サブティリスを接種し、発酵させてなる発酵産物を得るための第1工程と、
発酵産物と、水とを混合するとともに、濾過処理によって、水抽出物を得る第2工程と、
水抽出物を加熱温度50〜100℃、加熱時間1〜300分で熱処理し、加熱処理水抽出物を得る第3工程と、
加熱処理水抽出物のpHが8〜12の範囲内の値となるように調整し、その加熱処理水抽出物を酵素含有洗浄剤として用い、被洗浄物に付着した炭化物を洗浄する第4工程と、
を含むことを特徴とする炭化物の洗浄方法が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本願発明によれば、所定の発酵原料に対して、バシラス・サブティリスを接種し、発酵させてなる発酵産物の水抽出物のpHを所定範囲に制御するとともに、高温加熱処理工程を経てなる水抽出物を、有効量の酵素を含む酵素含有洗浄剤として用いることによって、例えば、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物であっても、容易かつ迅速に洗浄することができる。
また、第3工程として、所定の熱処理工程を含むことによって、酵素含有洗浄剤における発酵状態を制御して、腐敗物の産出を有効に防止できる。したがって、酵素含有洗浄剤の取扱性を向上させるとともに、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物であっても、安定的に洗浄することができる。
なお、第3工程における所定の熱処理工程において、多少の酵素が失活する可能性があるも、第4工程との間において、所定時間を経過させることによって、水抽出物において、バシラス・サブティリスによる発酵がすすみ、有効量の酵素を含む酵素含有洗浄剤として、容易かつ迅速に炭化物を洗浄することができる。
また、酵素含有洗浄剤中に含まれる酵素としては、アミラ−ゼ、リパーゼ、プロテアーゼ等の少なくとも一種であって、例えば、酵素含有洗浄剤の全体量に対して、0.001〜10重量%の範囲で含有されていることが確認されている。
さらに、本願発明において、第4工程において、炭化物の洗浄方法に使用する洗浄剤のみならず、第2工程で得られる水抽出物、あるいは、第3工程で得られる加熱処理水抽出物、さらには、後述するハーブ抽出物の添加の如何にかかわらず、酵素含有洗浄剤と称する場合がある。
【0010】
また、本願発明の炭化物の洗浄方法を実施するに際して、第1工程において、発酵原料に、発酵促進剤として、酵母および麹菌、あるいはいずれか一方を添加するとともに、当該酵母および麹菌、あるいはいずれか一方の添加量を、発酵原料の全体量に対して、0.001〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することによって、酵母および麹菌、あるいはいずれか一方、あるいは両方の発酵効果が加味されることから、所定濃度の酵素を産出しやすくすることができ、その結果、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物であっても、さらに安定的に洗浄することができる。
【0011】
また、本願発明の炭化物の洗浄方法を実施するに際して、第1工程において、発酵原料100重量部に対して、0.01〜1重量部のバシラス・サブティリスを接種することが好ましい。
このように実施することによって、所定濃度の酵素を産出しやすくすることができ、その結果、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物であっても、さらに安定的に洗浄することができる。
【0012】
また、本願発明の炭化物の洗浄方法を実施するに際して、第2工程において、発酵産物100重量部に対して、500〜1,000,000重量部の水を混合することが好ましい。
このように実施することによって、有効量の酵素を含む酵素含有洗浄剤とすることができ、その結果、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物であっても、さらに安定的に洗浄することができる。
【0013】
また、本願発明の炭化物の洗浄方法を実施するに際して、第2工程において、水抽出物に対して、ハーブ抽出物を添加するとともに、当該ハーブ抽出物の添加量を、水抽出物の全体量に対して、0.0001〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することによって、ハーブ抽出物が水抽出物(酵素含有洗浄剤)における発酵状態を制御して、腐敗物の産出を有効に防止することができる。
また、所定量のハーブ抽出物を混合することによって、かかる水抽出物に対して、所定の香りを付けることができ、水抽出物の取り扱い性を向上させるとともに、その香りの変化から、水抽出物の劣化度合を推定することができる。
なお、かかるハーブ抽出物の添加につき、第3工程における熱処理工程を実施した後や、第4工程におけるpH確認工程の前後において、行っても良い。
【0014】
また、本願発明の炭化物の洗浄方法を実施するに際して、第2工程において、得られた水抽出物のpHを8〜12の範囲であることを確認するとともに、所定範囲外の場合には、pHを8〜12の範囲内の値に調整する工程を含むことが好ましい。
このように実施することによって、最終的な洗浄工程(第4工程)における加熱処理水抽出物のpHを肌理細かく調整することができ、その結果、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物であっても、さらに確実かつ安定的に洗浄することができる。
【0015】
また、本願発明の炭化物の洗浄方法を実施するに際して、第3工程において、熱処理を、赤外線ランプ、電熱線、オーブン、コンロ、加熱蒸気、高圧蒸気、および加熱空気の少なくとも一つを用いて行うことが好ましい。
このように実施することによって、酵素含有洗浄剤を簡易的かつ経済的に熱処理したり、あるいは、酵素含有洗浄剤を全体的に、むらなく熱処理したりすることができる。
【0016】
また、本願発明の炭化物の洗浄方法を実施するに際して、第3工程において、得られた加熱処理水抽出物のpHを8〜12の範囲であることを確認するとともに、所定範囲外の場合には、pHを8〜12の範囲内の値に調整する工程を含むことが好ましい。
このように実施することによって、最終的な洗浄工程(第4工程)における加熱処理水抽出物のpHを肌理細かく調整することができ、その結果、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物であっても、さらに確実かつ安定的に洗浄することができる。
【0017】
また、本願発明の炭化物の洗浄方法を実施するに際して、第4工程における被洗浄物が、炭化物が付着したエンジン用シリンダーまたはエンジン用ピストン、あるいは金型であることが好ましい。
このように実施することによって、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来し、高温で焼き付けられ、極めて除去しにくい炭化物が付着したエンジン用シリンダーまたはエンジン用ピストン、あるいは金型であっても、これらの被洗浄物を傷めることなく、効率的に除去することができる。
【0018】
また、本願発明の炭化物の洗浄方法を実施するに際して、第4工程において、超音波振動を付与しながら、被洗浄物に付着した炭化物を洗浄することが好ましい。
このように実施することによって、金型に付着した炭化物はもとより、エンジンオイル等に由来した高温で焼き付けられ、極めて除去しにくい炭化物であっても、さらに短時間で、効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、酵素含有洗浄剤の製造工程を説明するために供する図である。
【図2】図2は、酵素含有洗浄剤を適用する洗浄装置を説明するために供する図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、炭化物の洗浄方法の態様を説明するために供する図である。
【図4】図4(a)〜(e)は、超音波振動を付与しながら洗浄したピストンにおける洗浄状態を説明するために供する図である。
【図5】図5は、酵素含有洗浄剤におけるpH値の炭化物の洗浄性に対する影響を説明するために供する図である。
【図6】図6(a)〜(d)は、実施例9における洗浄前後の被洗浄物の状態を説明するために供する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明の実施形態は、下記第1工程〜第4工程を含むことを特徴とする炭化物の洗浄方法である。
(1)穀類、そうこう類、糖類、および植物性油粕類の少なくとも一つを含む発酵原料に対して、バシラス・サブティリス(枯草菌)を接種し、発酵させてなる発酵産物を得るための工程(第1工程)
(2)発酵産物と、水とを混合するとともに、濾過処理によって、水抽出物を得る工程(第2工程)
(3)水抽出物を加熱温度50〜100℃、加熱時間1〜300分で熱処理し、加熱処理水抽出物を得る工程(第3工程)
(4)加熱処理水抽出物のpHを8〜12の範囲内の値に調整し、その加熱処理水抽出物を酵素含有洗浄剤として用い、被洗浄物に付着した炭化物を洗浄する工程(第4工程)
以下、適宜図面を参照しながら、本願発明の実施形態につき、具体的に説明する。なお、図1に、酵素含有洗浄剤の製造工程を説明し、図2に、酵素含有洗浄剤を適用する洗浄装置を示し、図3(a)〜(d)に、酵素含有洗浄剤を用いた炭化物の洗浄方法の実施態様を示し、図4(a)〜(e)に、超音波振動を付与しながら酵素含有洗浄剤を用いて洗浄したピストンにおける洗浄状態を示し、図5に、酵素含有洗浄剤のpHの影響を示している。
【0021】
1.第1工程
(1)発酵原料の準備工程
(1)−1 種類
図1に、記号S1で示すように、穀類、そうこう類、糖類、および植物性油粕類の少なくとも一つを含む発酵原料を準備する工程である。
ここで、好ましい穀類(穀類粉砕物を含む。)としては、米(玄米、白米等)、麦(小麦、大麦、えん麦、ライ麦等)、トウモロコシ、マイロ、小麦粉、きな粉等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0022】
また、そうこう類は、穀類を精白するときに生じる副産物の総称であるが、好ましいそうこう類として、米糠、脱脂(米)糠、麦糠(フスマ)、末粉、胚芽、スクリーニングペレット、トウモロコシ糠等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、米糠、脱脂(米)糠、および麦糠(フスマ)の少なくとも一つは、安価であって、比較的安定に発酵しやすいことから、より好ましいそうこう類である。
【0023】
また、好ましい糖類として、砂糖(ショ糖)、蜂蜜、メープルシロップ、水飴、ブドウ糖、果糖、転化糖、および異性化糖等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、砂糖は、安定的に入手可能であって、かつ、分解しやすいことから、より好ましい糖類である。
【0024】
また、好ましい植物性油粕類として、大豆油粕、あまに油粕、綿実油粕、落花生油粕、ヤシ油粕、サフラワー油粕、パーム油粕、胡麻油粕、ひまわり油粕、菜種油粕、カポック油粕等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、大豆油粕やパーム油粕は、安定的に入手可能であって、かつ、発酵しやすいことから、より好ましい植物性油粕類である。
【0025】
(1)−2 配合比
また、穀類、そうこう類、糖類、植物性油粕類の配合比に関して、発酵原料が穀類を主成分として含む場合には、例えば、穀類100重量部に対して、そうこう類を1〜100重量部の範囲、糖類を1〜100重量部の範囲、および植物性油粕類を0〜80重量部の範囲で配合することが好ましい。
この理由は、かかるそうこう類の配合量が1重量部未満の値になると、添加効果が発現しない場合があるためであって、逆に、100重量部を超えた値になると、発酵程度の調整が困難となる場合があるためである。
また、かかる糖類の配合量が1重量部未満の値になると、添加効果が発現しない場合があるためであって、逆に、100重量部を超えた値になると、発酵程度の調整が困難となる場合があるためである。
さらに、かかる植物性油粕類の配合量が80重量部を超えた値になると、発酵程度の調整が困難となる場合があるためである。
したがって、穀類100重量部に対して、そうこう類を10〜80重量部の範囲、糖類を10〜80重量部の範囲、および植物性油粕類を1〜50重量部の範囲で配合することがより好ましく、そうこう類を30〜50重量部の範囲、糖類を20〜60重量部の範囲、および植物性油粕類を5〜30重量部の範囲で配合することがさらに好ましい。
【0026】
また、発酵原料がそうこう類を発酵原料の主成分として含む場合には、例えば、そうこう類100重量部に対して、穀類を0〜100重量部の範囲、糖類を0〜100重量部の範囲、および植物性油粕類を0〜80重量部の範囲で配合することが好ましい。
この理由は、かかる穀類や糖類の配合量が100重量部を超えたり、植物性油粕類の配合量が80重量部を超えたりすると、それぞれ発酵程度の調整が困難となる場合があるためである。
一方、穀類や糖類、あるいは植物性油粕類の配合量が過度に少なくなると、添加効果が安定的に発現しなかったり、発酵程度の調整が困難となったりする場合がある。
したがって、そうこう類100重量部に対して、穀類を10〜80重量部の範囲、糖類を10〜80重量部の範囲、および植物性油粕類を1〜50重量部の範囲で配合することがより好ましく、穀類を30〜50重量部の範囲、糖類を20〜50重量部の範囲、および植物性油粕類を5〜30重量部の範囲で配合することがさらに好ましい。
【0027】
(1)−3 追加発酵原料
また、発酵促進剤として、酵母または麹菌、あるいはいずれか一方を添加使用することが好ましい。
このような酵母として、サッカロマイセス属、カンジダ属、トルロプシス属、ジゴサッカロマイセス属、ピチア属、ヤロウィア属、ハンセヌラ属、クルイウェロマイセス属、デバリオマイセス属、ゲオトリウム属、ウィッケルハミア属、フェロマイセス属等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、サッカロマイセス属の酵母は、麹菌と共生し、アルコール発酵を効率良く行うことができることから好ましい酵母である。
【0028】
また、麹菌は、コウジカビなどの食品発酵に有効なカビを中心にした微生物の繁殖物である。
このような麹菌として、米麹、黒麹、餅麹、バラ麹等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
そして、これらに属する麹菌のうち、アスペルギルス属、リゾップス属、ムコール属が好適であって、特に、でんぷんを効率よくエタノールや有機酸に転換することができることから、アスペルギルス属の菌類が好ましい。
【0029】
そして、麹菌および酵母、あるいはいずれか一方の添加量を、通常、発酵原料の全体量(100重量%)に対して、0.001〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる酵母や麹菌の添加量が0.001重量%未満の値になると、添加効果が発現されない場合があるためであって、かかる酵母や麹菌の添加量が10重量%を超えた値になると、過度に発酵がすすんで、pH調整や洗浄力の調整が困難となる場合があるためである。
したがって、酵母や麹菌の添加量を、発酵原料の全体量(100重量%)に対して、0.005〜5重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.01〜1重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0030】
(2)発酵工程
図1に、記号S2で示すように、発酵工程は、バシラス・サブティリス(枯草菌)を接種して、発酵原料を発酵させて、所定酵素を産生させる工程である。
より具体的には、攪拌機および加熱装置付きの横型回転ドラムに、穀類、そうこう類、糖類、および植物性油粕類を主体とした発酵原料を仕込み、攪拌しつつ水を散布した後、蒸気殺菌を行う。さらに滅菌水を散布し、内部温度を約25℃に冷却した後、所定量の酵母を混合する。
【0031】
次いで、得られた混合物に対して、バシラス・サブティリス(枯草菌)の純粋培養物を温水に溶かした液を散布し、一例であるが、所定温度の温風を吹き込みながら、横型回転ドラムを所定時間回転させて、一次発酵を行う。
ここで、発酵温度を20〜60℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる発酵温度が20℃未満となると、発酵が進まず、酵素の生成や微生物の産生量が増加しない場合があるためである。
一方、かかる発酵温度が60℃を超えると、過度に発酵が進んで、酵素の生成量や微生物の産生量を調節することが困難となる場合があるためである。
したがって、発酵温度を30〜55℃の範囲内の値とすることがより好ましく、40〜50℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0032】
また、発酵時間について、発酵温度にもよるが、通常、1〜48時間の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる発酵時間が1時間未満となると、発酵が進まず、酵素の生成や微生物の産生量が増加しない場合があるためである。
一方、かかる発酵時間が48時間を超えると、過度に発酵が進んで、酵素の生成量や微生物の産生量を調節することが困難となる場合があるためである。
したがって、発酵時間を3〜24時間の範囲内の値とすることがより好ましく、6〜12時間の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0033】
なお、バシラス・サブティリスの純粋培養物は、下記のようにして調製することができる。
すなわち、バシラス・サブティリスの菌株としては、特に限定されないが、例えばバシラス・サブティリスIFO3025を用いるのが好適である。
この株の斜面培養の1白金耳を、ブイヨン培地(肉エキス1%、ベブトン0.5%、塩化ナトリウム0.5%、pH7.2)に接種し、30℃で18時間回転振盪培養(前培養)を行う。次いで、発酵槽に仕込み滅菌したR培地(ペプトン1%、酵母エキス0.5%、カザミノ酸0.5%、肉エキス0.2%、麦芽エキス0.5%、グリセロール0.2%、硫酸マグネシウム0.1%、トゥイーン80を0.005%、pH7.2)に前培養液(1%)を接種し、25℃で3日間深部攪拌培養を行う。
次いで、培養終了液を遠心分離にかけ、得られた湿菌体をバシラス・サブティリスの純粋培養物とする。
【0034】
次いで、図示しないものの、発酵工程として、二次発酵をさらに行うことも好ましい。
すなわち、一次発酵を行った後、さらにバシラス・サブティリスの純粋培養物と砂糖を温水に溶かした液を散布し、20〜60℃の温風を吹き込みながら、横型回転ドラムを回転しつつ、通常、1〜25時間にわたって二次発酵を行うことが好ましい。
このように二次発酵を行うことによって、発酵程度の調整が容易になり、その結果、酵素の生成量や微生物の産生量を所定範囲内の値に調節することが容易になるためである。
そして、真空乾燥機等を用いて、二次発酵終了物を乾燥し、それをさらに粉砕機にかけ、所定粒径に粉砕することによって、本発明における発酵産物とする。
【0035】
ここで、二次発酵で追加的に添加するバシラス・サブティリスの純粋培養物の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、一次発酵での発酵原料1000kgに対して、0.01〜1kgの範囲内の値とすることが好ましく、0.1〜0.8kgの範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、本願発明における発酵産物中には、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ等の酵素および各種のビタミン類が、発酵産物中のそうこう類に吸着された状態で含有されているものと推定される。
【0036】
2.第2工程
(1)水の混合工程
図1に、記号S3で示すように、水の混合工程は、バシラス・サブティリスを接種し、発酵させてなる発酵産物に対して、所定量の水を添加するとともに、均一に混合する工程である。
すなわち、第2工程において、所定の発酵産物の水抽出物を得て、アミラ−ゼ、リパーゼ、プロテアーゼ等の少なくとも一種の酵素を含む酵素含有洗浄剤(液状物)とするためである。
【0037】
また、水を混合するに際して、発酵産物100重量部に対して、500〜1,000,000重量部の水を混合することが好ましい。
この理由は、このように実施することによって、有効量の酵素を含む酵素含有洗浄剤とすることができ、その結果、所定の炭化物であっても、さらに安定的に洗浄することができるためである。
より具体的には、かかる水を混合量が、発酵産物100重量部に対して、500重量部未満の値になると、水抽出物としての酵素含有洗浄剤(液状物)の収率が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる水を混合量が、発酵産物100重量部に対して、1,000,000重量部を超えた値になると、酵素含有洗浄剤中に含まれる酵素濃度等が著しく低下したり、pH調整が困難となったりして、炭化物に対する洗浄性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、水を混合するに際して、発酵産物100重量部に対して、1,000〜300,000重量部の水を混合することがより好ましく、5,000〜100,000重量部の水を混合することがさらに好ましい。
【0038】
(2)濾過工程
また、図1に、記号S4で示すように、濾過工程は、水を添加した混合物から、発酵産物等を除去し、水抽出物としての酵素含有洗浄剤を取り出す工程である。
すなわち、例えば、所定のフィルター等を備えた濾過装置を用いて、酵素含有洗浄剤以外の発酵産物等を濾過処理し、水抽出物としての酵素含有洗浄剤を回収する工程である。
【0039】
(3)pH確認工程
また、図1に、記号S5で示すように、pH確認工程は、得られた水抽出物のpHが8〜12の範囲であることを予備的に確認するとともに、所定範囲外の場合には、pHを所定範囲(8〜12)の値に調整する工程を含むことが好ましい。
すなわち、第2工程において、このようにpH確認工程(予備)を設けることによって、後工程(第4工程)における加熱処理水抽出物のpHを肌理細かく調整することができる。その結果、後工程(第4工程)において、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物であっても、さらに確実かつ安定的に洗浄することができる。
また、かかる第2工程におけるpH確認工程は、濾過工程の前後のいずれか、あるいは両方の時期において、実施することが好ましい。
【0040】
(4)ハーブ抽出物の添加工程
また、図1に、記号S6で示すように、第2工程において、水抽出物に対して、ハーブ抽出物(液状物または水溶固体物)を添加するとともに、当該ハーブ抽出物の添加量を、水抽出物(酵素含有洗浄剤)の全体量に対して、0.0001〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにハーブ抽出物を添加することによって、ハーブ抽出物が、かかる水抽出物における発酵状態を制御して、腐敗物の産出を有効に防止することができるためである。
また、所定量のハーブ抽出物を混合することによって、水抽出物に対して、所定の香りを付けることができ、水抽出物の取り扱い性を向上させることができるためである。
さらに言えば、その香りの変化から、酵素含有洗浄剤の劣化度合を推定することができるためである。
【0041】
さらに、ハーブ抽出物の添加量を、水抽出物(酵素含有洗浄剤)の全体量に対して、0.0001〜10重量%の範囲内の値とするのは、0.0001重量%未満の値になると、ハーブ抽出物の添加効果が発現しない場合があるためである。一方、ハーブ抽出物の添加量が、水抽出物の全体量に対して、10重量%を超えると、洗浄剤としての洗浄性が時間の経過とともに低下したり、逆に、香りが強すぎたり、過度に着色したりする場合があるためである。
したがって、ハーブ抽出物の添加量を、水抽出物(酵素含有洗浄剤)の全体量に対して、0.0005〜1重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.001〜0.1重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0042】
また、このようなハーブ抽出物(液状物または水溶固体物)としては、ラベンダー、
ローズマリー、ガーリック、キャラウエイ、フェヌグリーク、ハトムギ、ハコベ、マジョラム、カモミール、ナツメグ、オレガノ、オールスパイス、クミン、タラゴン、タイム、メース、ジンジャー、ディール、リコリス、バジル、クローブ、セロリシード、レモンバーム、レモングラス、ミント、ベラニウム、フェンネル、アニス、イラクサ、エキナセア、アーティチョーク、ハイビスカス、サフラン、ジュニパー、カルダモン、コリアンダー、およびパプリカ等の一種単独または二種以上の混合物が挙げられる。
特に、ラベンダーやレモングラスであれば、比較的少量添加であっても、水抽出物(酵素含有洗浄剤)における発酵状態を制御して、腐敗物の産出を有効に防止することができることから、好ましいハーブ抽出物である。
【0043】
3.第3工程
(1)熱処理
また、図1に、記号S7で示すように、得られた水抽出物について、所定の熱処理を施すことを特徴とする。
ここで、熱処理における加熱条件として、かかる水抽出物の加熱温度を50〜100℃の範囲内の値とし、加熱時間を1〜300分の範囲内の値とすることを特徴とする。
すなわち、かかる加熱温度を50℃以上に制限するのは、当該加熱温度が50℃未満となると、熱処理効果が発揮されず、水抽出物における発酵が過度に進むためである。したがって、水抽出物の保管中に、老廃物(沈殿物)が産生されたり、異臭が放たれたり、さらには、炭化物に対する洗浄性が低下したりする場合がある。
一方、加熱温度を100℃以下に制限するのは、水抽出物に含まれる水の沸騰現象を抑制したり、バシラス・サブティリス等の微生物や酵素が過度に死滅したり失活するのを防止するためである。
したがって、加熱時間が1〜300分の場合、例えば、水抽出物の加熱温度を60〜95℃の範囲内の値とすることがより好ましく、70〜90℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0044】
また、加熱時間は、加熱温度にもよるが、当該加熱温度が50〜100℃の範囲内の値であれば、水抽出物(酵素含有洗浄剤)の加熱時間を1〜300分の範囲内の値とする。
すなわち、かかる加熱時間が1分未満となると、熱処理効果が安定的に発揮されず、過度に発酵が進むためである。
一方、かかる加熱時間が300分を超えると、水抽出物(酵素含有洗浄剤)に含まれる水の沸騰現象が生じたり、バシラス・サブティリス等の微生物や酵素が過度に死滅したり失活したりするためである。
したがって、加熱温度が50〜100℃の場合、水抽出物(酵素含有洗浄剤)の加熱時間を5〜120分の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜60分の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、大気圧以上の加圧状態であれば、上記加熱温度を低下させたり、加熱時間を多少短くしたりしても良い。
【0045】
また、かかる熱処理工程における熱処理の手段については特に制限されるものではないが、例えば、赤外線ランプ、電熱線、オーブン、コンロ、加熱蒸気、高圧蒸気、および加熱空気の少なくとも一つを用いて行うことが好ましい。
この理由は、このような熱処理装置を用いることによって、酵素含有洗浄剤を簡易的かつ経済的に熱処理したり、あるいは、酵素含有洗浄剤を全体的に、むらなく熱処理したりすることができるためである。
【0046】
(2)pH確認工程
また、図1に、記号S8で示すように、pH確認工程は、得られた加熱処理水抽出物のpHを8〜12の範囲であることを確認するとともに、所定範囲外の場合には、pHを所定範囲(8〜12)の値に調整する工程を含むことが好ましい。
すなわち、第3工程においても、このようにpH確認工程を設けることによって、後工程(第4工程)における加熱処理水抽出物のpHを肌理細かく調整することができる。その結果、後工程(第4工程)において、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物であっても、さらに確実かつ安定的に洗浄することができる。
なお、かかる第3工程におけるpH確認工程は、熱処理工程の前後のいずれか、あるいは両方の時期において、実施することが好ましい。
【0047】
(3)三次発酵工程
また、図1に、記号S8で示すように、pH確認工程において、得られた加熱処理水抽出物のpHが所定範囲外の場合はもちろんのこと、あるいは、pHが所定範囲内の場合であっても、後述する洗浄工程における洗浄性を制御するために、三次発酵工程を設けることが好ましい。
すなわち、得られた加熱処理水抽出物を所定容器内に収容した状態で、温度20〜60℃の条件下、1〜48時間、静置あるいは振動状態で催置して、三次発酵工程を実施することが好ましい。
この理由は、このような温度条件および時間であれば、マイルドに三次発酵がすすみ、腐敗物の産生を効果的に防止しつつ、所望の酵素量を増加させて、洗浄性を制御することができるためである。
【0048】
4.第4工程
(1)洗浄工程
第4工程における洗浄工程は、図1に、記号S10で示すように、pHが8〜12の範囲内である酵素含有洗浄剤(加熱処理水抽出物)を用いて、被洗浄物に付着した炭化物を洗浄する工程である。
より具体的には、例えば、図2に示される洗浄装置を用い、その洗浄槽に、pHが8〜12の範囲内である酵素含有洗浄剤を収容した状態で、それに被洗浄物を浸漬して、付着した炭化物を洗浄する工程である。
すなわち、図2に示される洗浄装置100は、主として、酵素含有洗浄剤26を収容する洗浄槽21と、電源22に連なり、酵素含有洗浄剤26を超音波振動させる大小の超音波振動子10、28と、内部に被洗浄物(図示せず)を収容し、被洗浄物と共に洗浄槽21の内部に挿脱自在に装着されるメッシュ状のカゴ20と、洗浄槽21の内部に配管して、酵素含有洗浄剤26を排出する排出管43と、フレッシュな酵素含有洗浄剤26を収容しておく浄化タンク23と、酵素含有洗浄剤26を循環させるための循環用ポンプ24と、を備えている。
このような洗浄装置100によれば、メッシュ状のカゴ20を利用できることから、被洗浄物の浸漬や取り出しが容易になるばかりか、被洗浄物の全体、あるいは部分に対して、酵素含有洗浄剤26を十分浸透させることができる。
また、大小の超音波振動子10、28を備えていることから、被洗浄物の形状や大きさ、さらには炭化物の付着程度に応じて、これらを選択的、あるいは同時に動作することができ、迅速かつ効率的に炭化物を洗浄することができる。
さらに、このような洗浄装置100によれば、排出管43、浄化タンク23、および循環用ポンプ24を備えていることから、酵素含有洗浄剤26が劣化したような場合には、その取り換えも容易である。
【0049】
さらに、図3(a)〜(d)に、炭化物の洗浄方法の実施態様を示す。
すなわち、図3(a)は、記号S1で示すように、炭化物が付着した被洗浄物を水洗いした後、記号S2で示すように、酵素含有洗浄剤(加熱処理水抽出物)を用いて本洗浄を行う実施態様を示している。
図3(a)に示す実施態様の場合、本洗浄前に水洗いすることから、所定の汚染物等については予め除去することができ、本洗浄における炭化物の洗浄性を向上させることができる。
【0050】
また、図3(b)は、記号S2で示すように、炭化物が付着した被洗浄物を、酵素含有洗浄剤(加熱処理水抽出物)を用いて本洗浄し、次いで、記号S3で示すように、エタノール/水を用いたリンス洗浄を行う実施態様を示している。
図3(b)に示す実施態様の場合、本洗浄後にリンス洗浄することから、被洗浄物に対する炭化物等の再付着を有効に防止することができる。
【0051】
また、図3(c)は、記号S2で示すように、炭化物が付着した被洗浄物を、酵素含有洗浄剤(加熱処理水抽出物)を用いて本洗浄し、次いで、記号S3で示すように、エタノール/水を用いたリンス洗浄を行い、さらに、記号S4で示すように、防錆処理を行う実施態様を示している。
図3(c)に示す実施態様の場合、本洗浄後にリンス洗浄するとともに、ベンゾトリアゾール等の防錆剤を塗布することから、被洗浄物に対する炭化物等の再付着を有効に防止できるとともに、被洗浄物における錆の発生を有効に防止することができる。
【0052】
さらに、図3(d)は、記号S1で示すように、炭化物が付着した被洗浄物を水洗いした後、記号S2で示すように、酵素含有洗浄剤(加熱処理水抽出物)を用いて本洗浄を行い、さらに、記号S1´で示すように、水洗いを行う実施態様を示している。
図3(c)に示す実施態様の場合、本洗浄前後に水洗いすることから、炭化物の洗浄性を向上できるばかりか、被洗浄物に対する炭化物等の再付着を有効に防止することができる。
【0053】
ここで、酵素含有洗浄剤としての加熱処理水抽出物の温度(液温)は、被洗浄物に対する洗浄効果や、洗浄液の酸化劣化の程度等を考慮して定めることが好ましいが、具体的に、20〜90℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる酵素含有洗浄剤の温度が20℃未満となると、被洗浄物に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる酵素含有洗浄剤の温度が90℃を越えると、酵素含有洗浄剤自身の酸化劣化が著しくなって、時間の経過とともに洗浄性が低下する場合があるためである。
したがって、酵素含有洗浄剤の温度を20〜80℃の範囲内の値とすることがより好ましく、20〜70℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0054】
また、第4工程における洗浄時間は、洗浄装置や被洗浄物の態様、あるいは酵素含有洗浄剤(加熱処理水抽出物)の温度等にもよるが、通常、5分〜240分の範囲であることが好ましい。
この理由は、かかる洗浄時間が5分未満となると、炭化物の洗浄性が不十分となる場合があるためである。
一方、かかる洗浄時間が240分を超えると、処理効率が著しく低下し、経済的に不利益となる場合があるためである。
したがって、第4工程における洗浄時間を10分〜120分の範囲内の値とすることがより好ましく、30分〜60分の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0055】
但し、被洗浄物がエンジン用シリンダーまたはエンジン用ピストン、あるいは金型等の重量物である場合、洗浄装置において、比較的長時間の浸漬方法による洗浄を行うことも好ましい。
したがって、浸漬する場合、第4工程における洗浄時間を、通常、6〜120時間の範囲内の値とすることが好ましく、12〜72時間の範囲内の値とすることがより好ましく、18〜36時間の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0056】
(2)被洗浄物
また、被洗浄物の種類については問わないが、例えば、炭化物が付着したエンジン用シリンダーまたはエンジン用ピストン、あるいは金型であることが好ましい。
すなわち、このような被洗浄物においては、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来し、高温で焼き付けられ、極めて除去しにくい炭化物が付着しやすいという特徴があるが、そのような炭化物であっても、これらの被洗浄物を傷めることなく、効率的に除去することができる。
【0057】
(3)超音波処理工程
また、加熱処理水抽出物を用いて、被洗浄物に付着した炭化物を洗浄するに際して、超音波振動を付与しながら、被洗浄物に付着した炭化物を洗浄することが好ましい。
この理由は、このように実施することによって、金型に付着した炭化物はもとより、エンジンオイル等に由来した高温で焼き付けられ、極めて除去しにくい炭化物であっても、さらに短時間で、効率的に除去することができるためである。
【0058】
そして、超音波振動を付与した場合、第4工程における洗浄時間を、通常、1分〜180分の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる洗浄時間が1分未満となると、超音波振動を付与した場合であっても、炭化物の洗浄性が不十分となる場合があるためである。
一方、かかる洗浄時間が180分を超えると、超音波振動を付与するコストも加味して、経済的に著しく不利益となる場合があるためである。
したがって、超音波振動を付与した場合、第4工程における洗浄時間を5分〜120分の範囲内の値とすることがより好ましく、10分〜80分の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0059】
ここで、図4(a)〜(e)に、エンジンオイルに由来した炭化物が付着したピストンリングを、40Hzの超音波振動を付与しながら、浸漬法により洗浄した際の外観写真を示す。
図4(a)は、洗浄前の状態を示す外観写真であるが、ピストンの表面に炭化物が全面的に付着していることを示している。
また、図4(b)は、40Hzの超音波振動を10分間付与しながら、浸漬法により洗浄した際の外観写真であるが、ピストンの表面の炭化物が、点状であるが、部分的に除去されていることを示している。
また、図4(c)は、40Hzの超音波振動を30分間付与しながら、浸漬法により洗浄した際の外観写真であるが、ピストンの表面の炭化物が、さらに部分的に除去されていることを示している。
また、図4(d)は、40Hzの超音波振動を60分間付与しながら、浸漬法により洗浄した際の外観写真であるが、ピストンの表面の炭化物が面状で除去されており、下地が透けて観察されていることを示している。
また、図4(e)は、40Hzの超音波振動を80分間付与しながら、浸漬法により洗浄した際の外観写真であるが、ピストンの表面の相当量の炭化物が除去されていることを示している。
すなわち、酵素含有洗浄剤として、加熱処理水抽出物を用いて、被洗浄物に付着した炭化物を洗浄するに際して、所定の超音波振動を付与することによって、被洗浄物に付着した炭化物を迅速に洗浄除去できることが理解される。
【0060】
また、超音波処理条件に関して、超音波振動の周波数を20KHz〜2MHzの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる超音波振動の周波数が20KHz未満となると、被洗浄物に対するダメージが大きくなる場合があるためである。
一方、かかる超音波振動の周波数が2MHzを超えると、被洗浄物に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。
したがって、超音波振動の周波数を20KHz〜1,000KHzの範囲内の値とすることがより好ましく、20KHz〜200KHzの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0061】
また、浸漬法による洗浄時間が6〜120時間の場合、被洗浄物に対する超音波振動の付与時間を、洗浄時間1時間当たり、1〜3,600秒の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる超音波振動の付与時間が1秒未満となると、被洗浄物に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる超音波振動の付与時間が3,600秒を超えると、被洗浄物に対するダメージが大きくなる場合があるためである。
したがって、超音波振動の付与時間を10〜600秒の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜300秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、浸漬法による洗浄時間が6〜120時間内の場合において、少なくとも1回、被洗浄物に対して超音波振動を付与するだけで、所定の洗浄性効果が向上するが、より好ましくは、所定の洗浄時間において、2〜100回の超音波振動を付与することである。
【0062】
(4)pH確認工程
さらに、図1に、記号S9で示すように、洗浄工程を実施する前、あるいは、洗浄工程を実施している途中で、pH確認工程を設けることを特徴とする。
すなわち、第4工程の実施前あるいは実施中において、加熱処理水抽出物のpHを8〜12の範囲であることを確認するとともに、所定範囲外の場合には、pHを所定範囲(8〜12)の値に調整することを特徴とする。
この理由は、第4工程においても、このようにpH確認工程を設けることによって、洗浄時における加熱処理水抽出物のpHを極め細かく調整することができるためである。その結果、エンジンオイルや金型の離型剤等に由来した炭化物であっても、さらに確実かつ安定的に洗浄することができる。
【0063】
ここで、図5を参照して、第4工程における炭化物の洗浄性に対する、酵素含有洗浄剤におけるpH値の影響を説明する。
すなわち、図5の横軸に、酵素含有洗浄剤のpH値をとって示してあり、縦軸に、炭化物の洗浄性評価(相対値)を採って示してある。
かかる図5中に示される特性曲線から明らかなように、加熱処理水抽出物のpHが8未満の値となっても、加熱処理水抽出物のpHが12を超えても、著しく炭化物に対する洗浄性が低下することが理解される。
したがって、炭化物に対する良好な洗浄性を得るためには、加熱処理水抽出物のpHを8〜12の範囲内の値とすることが好ましく、加熱処理水抽出物のpHを9〜11.5の範囲内の値とすることがより好ましく、加熱処理水抽出物のpHを10〜11の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により、本願発明をさらに詳しく説明するが、特に理由なく、本願発明は、これらの実施例の記載によって限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]
1.第1工程
(1)バシラス・サブティリスの純粋培養物の作成
バシラス・サブティリスの純粋培養物を、以下のようにして調製した。すなわち、バシラス・サブティリスの1菌株、例えばバシラス・サブティリスIFO3025の斜面培養の1白金耳を、121℃で20分間滅菌したブイヨン培地(肉エキス1%、ベブトン0.5%、塩化ナトリウム0.5%、pH7.2)300mlに接種し、30℃で18時間回転振盪培養を行い、前培養を行った。
次いで、50リットル容の発酵槽に仕込み滅菌した30リットルのR培地(ペプトン1%、酵母エキス0.5%、カザミノ酸0.5%、肉エキス0.2%、麦芽エキス0.5%、グリセロール0.2%、硫酸マグネシウム0.1%、トゥイーン80を0.005%、pH7.2)に前培養液を接種し、毎分1v/vの通気を行い、300回転/分で3日間深部攪拌培養を行った。培養温度は25℃、pH調節は行わなかった。
培養終了後、培養液を遠心分離にかけ、得られた湿菌体をバシラス・サブティリスの純粋培養物とした。
【0066】
(2)一次発酵工程
攪拌機および加熱装置付きの横型回転ドラムに、発酵原料として、300kgの穀類粉砕物(全農製)と、400kgのフスマ(全農製)と、250kgの穀類脱脂粕(全農製)、20kgの砂糖と、を仕込んだ。
次いで、攪拌機を用いて、発酵原料を攪拌しつつ、その上から水200リットルを散布した後、150℃、40分間の蒸気殺菌を行った。
次いで、200リットルの滅菌水を散布し、内部温度を25℃に冷却した後、10kgの酵母(鐘淵化学工業社製)を追加混合し、原料混合物とした。
次いで、得られた原料混合物に対して、バシラス・サブティリスの純粋培養物0.5kgを、予め温水30リットルに溶かした液を散布した後、43℃の温風を吹き込みながら、ドラムを回転させて、発酵処理を行った。
なお、ドラムより出る排気ガスの全体量のうち、80〜90体積%は温風と一緒にドラムに戻すが、時間と共に回収量を減じ15時間後に約10%になるように調整して、980kgの一次発酵物を得た。
【0067】
(3)二次発酵工程
得られた980kgの一次発酵物に対して、水100リットルを散布し、さらにバシラス・サブティリスの純粋培養物1kgと、砂糖5kgと、をあらかじめ温水30リットルに溶かした液を散布した。
次いで、43℃の温風を吹き込みながら、ドラムを回転させ、12時間にわたって二次発酵を行った。
次いで、得られた二次発酵物を真空乾燥機で乾燥し、粉砕し、本発明における発酵産物970kgを得た。
【0068】
2.第2工程
撹拌機付きの容器内に、得られた発酵産物1000gを収容した後、20リットルの水を添加し、均一になるまで攪拌した。
次いで、濾過処理装置を用いて、薄茶色の透明液体である水抽出物を得た。この段階で、水抽出物100重量部に対して、0.01重量部のラベンダー抽出液を添加した。
【0069】
3.第3工程
得られたラベンダー抽出液入り水抽出物を、ガスコンロを用いて、温度100℃、時間30分の加熱条件で熱処理し、薄茶色の透明液体である加熱処理水抽出物(酵素含有洗浄剤)を得た。
【0070】
4.第4工程
図2に示す超音波振動装置を備えた洗浄装置に、得られた薄茶色の透明液体である加熱処理水抽出物(酵素含有洗浄剤)を収容した。
次いで、炭化物が付着したエンジンのピストンリングを、25℃、12時間の条件で、洗浄槽における加熱処理水抽出物(酵素含有洗浄剤)に浸漬し、1時間当たり、40KHzの超音波振動を180秒間付与しながら、洗浄工程を実施した。
【0071】
5.評価
(1)評価1(酵素含有洗浄剤のpH性)
pHメータを用いて、液温25℃における酵素含有洗浄剤のpH値を測定し、以下の基準に準じて、酵素含有洗浄剤のpH性を評価した。
◎:pH値が9〜11の範囲内の値である。
○:pH値が8〜12の範囲内の値である(但し、9〜11の範囲内の値でない。)。
△:pH値が7〜13の範囲内の値である(但し、8〜12の範囲内の値でない。)。
×:pH値が7未満、あるいは13を超える値である。
【0072】
(2)評価2(酵素含有洗浄剤の保存安定性)
得られた薄茶色の透明液体である酵素含有洗浄剤を、2リットルのPETボトル内に収容した状態で、28℃、50%Rh条件下に、168時間保管して、以下の基準に準じて、酵素含有洗浄剤の保存安定性を評価した。
◎:沈澱物が全く観察されない。
○:沈澱物がほとんど観察されない。
△:沈澱物が少々観察される。
×:顕著な沈澱物が観察される。
【0073】
(3)評価3(酵素含有洗浄剤の香り性)
得られた薄茶色の透明液体である加熱処理水抽出物(酵素含有洗浄剤)を、2リットルのPETボトル内に収容した状態で、28℃、50%Rh条件下に、168時間保管して、以下の基準に準じて、酵素含有洗浄剤の香り性を評価した。
◎:初期状態と同様のラベンダーの香りが認識される。
○:ほとんど初期状態と同様のラベンダーの香りが認識される。
△:初期状態と異なる、異臭を含む匂いが認識される。
×:異臭を含む匂いが認識される。
【0074】
(4)評価4(酵素含有洗浄剤の洗浄性)
1時間当たり、40KHzの超音波振動を180秒間付与しながら、炭化物が付着したエンジンのピストンリングを浸漬法により12時間洗浄し、酵素含有洗浄剤の洗浄性を、以下の基準に準じて、評価した。
◎:炭化物は全く残存していない。
○:炭化物はほとんど残存していない。
△:炭化物は少々残存している。
×:炭化物は顕著に残存している。
【0075】
[実施例2]
実施例2では、第3工程において所定量の酢酸を加え、加熱処理水抽出物のpH値(10.5)を9.5に調整した以外は、実施例1と同様に、酵素含有洗浄剤としての加熱処理水抽出物を評価した。
【0076】
[実施例3]
実施例3では、第3工程において所定量の酢酸を加え、加熱処理水抽出物のpH値(10.5)を8.0に調整した以外は、実施例1と同様に、酵素含有洗浄剤としての加熱処理水抽出物を評価した。
【0077】
[実施例4]
実施例4では、第3工程での加熱条件を80℃、120分とした以外は、実施例1と同様に、酵素含有洗浄剤としての加熱処理水抽出物を作成して、評価した。
【0078】
[実施例5]
実施例5では、第3工程での加熱条件を60℃、240分とした以外は、実施例1と同様に、酵素含有洗浄剤としての加熱処理水抽出物を作成して、評価した。
【0079】
[実施例6]
実施例6では、第3工程での加熱条件を70℃、180分とした以外は、実施例2と同様に、pH調整した加熱処理水抽出物を作成して、酵素含有洗浄剤として評価した。
【0080】
[実施例7]
実施例7では、第3工程での加熱条件を100℃、10分とした以外は、実施例3と同様に、pH調整した加熱処理水抽出物を作成して、酵素含有洗浄剤として評価した。
【0081】
[実施例8]
実施例8では、第3工程において所定量の水酸化ナトリウムを加え、加熱処理水抽出物(酵素含有洗浄剤)のpH値(10.5)を12.0に調整した以外は、実施例1と同様に、酵素含有洗浄剤としての加熱処理水抽出物を評価した。
【0082】
[比較例1]
比較例1では、第3工程において所定量の塩酸を加え、加熱処理水抽出物のpH値(10.5)を4.0に調整した以外は、実施例1と同様に、酵素含有洗浄剤としての加熱処理水抽出物を評価した。
【0083】
[比較例2]
比較例2では、第3工程において所定量の塩酸を加え、加熱処理水抽出物のpH値(10.5)を2.0に調整した以外は、実施例1と同様に、酵素含有洗浄剤としての加熱処理水抽出物を評価した。
【0084】
[比較例3]
比較例2では、第3工程における加熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に、加熱処理水抽出物を作成して、酵素含有洗浄剤として評価した。
【0085】
[比較例4]
比較例2では、第3工程における加熱条件を、40℃、360分とした以外は、実施例1と同様に、加熱処理水抽出物を作成して、酵素含有洗浄剤として評価した。
【0086】
[比較例5]
比較例2では、第3工程における加熱条件を、48℃、240分とした以外は、実施例1と同様に、加熱処理水抽出物を作成して、酵素含有洗浄剤として評価した。
【0087】
【表1】

評価1:酵素含有洗浄剤のpH性
評価2:酵素含有洗浄剤の保存安定性
評価3:酵素含有洗浄剤の香り性
評価4:酵素含有洗浄剤の洗浄性
【0088】
[実施例9]
実施例9では、第4工程において、所定の超音波振動を付与しなかった以外は、実施例1と同様に、酵素含有洗浄剤としての加熱処理水抽出物の洗浄性のみを評価した(浸漬時間:12時間、24時間、60時間)。
その結果、25℃、12時間の条件で、炭化物が付着したエンジンのピストンリングを加熱処理水抽出物に浸漬した場合、炭化物が自然剥離することはなかったが、ワイヤーブラシにて研磨作業を行うと、炭化物を容易に除去できることが確認された。
なお、図6(a)に、炭化物が付着したエンジンのピストンリングの洗浄前状態を示している。
また、図6(b)に、25℃、12時間の条件で浸漬した後におけるエンジンのピストンリングの状態(金属光沢部分は、ワイヤーブラシによる研磨作業領域を示し、黒色部分は、ワイヤーブラシによる非研磨作業領域を示す。)を示している。
また、図6(c)に、25℃、24時間の条件で浸漬した後におけるエンジンのピストンリングの状態(金属光沢部分は、ワイヤーブラシによる研磨作業領域を示し、黒色部分は、ワイヤーブラシによる非研磨作業領域を示す。)を示している。
さらに、図6(d)に、25℃、60時間の条件で浸漬した後におけるエンジンのピストンリングの状態(金属光沢部分は、ワイヤーブラシによる研磨作業領域を示し、黒色部分は、ワイヤーブラシによる非研磨作業領域を示す。)を示している。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本願発明によれば、所定微生物由来の発酵産物の水抽出物であって、所定pHを有するとともに、高温加熱処理を施した酵素含有洗浄剤を用いてなる炭化物の洗浄方法であることから、被洗浄物に対して強固に付着した炭化物であっても、容易かつ安定的に洗浄することが可能となった。
また、天然素材に由来した酵素含有洗浄剤を用いることから、保管処理や使用後の後処理が容易であって、使用者のみならず自然環境にも優しい炭化物の洗浄方法を提供することができる。
したがって、炭化物が付着したエンジン用シリンダーまたはエンジン用ピストン、あるいは金型等はもちろんのこと、炭化物除去を目的とした各種用途に対して、安心して使用することができる。
【符号の説明】
【0090】
10:小型超音波振動子
20:メッシュ状のカゴ
21:洗浄槽
22:電源
23:浄化タンク
24:循環用ポンプ
26:酵素含有洗浄剤
28:大型超音波振動子
43:排出管
100:洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類、そうこう類、糖類、および植物性油粕類の少なくとも一つを含む発酵原料に対して、バシラス・サブティリスを接種し、発酵させてなる発酵産物を得るための第1工程と、
前記発酵産物と、水とを混合するとともに、濾過処理によって、水抽出物を得る第2工程と、
前記水抽出物を加熱温度50〜100℃、加熱時間1〜300分で熱処理し、加熱処理水抽出物を得る第3工程と、
前記加熱処理水抽出物のpHが8〜12の範囲内の値となるように調整し、その加熱処理水抽出物を酵素含有洗浄剤として用い、被洗浄物に付着した炭化物を洗浄する第4工程と、
を含むことを特徴とする炭化物の洗浄方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記発酵原料に、発酵促進剤として、酵母および麹酵、あるいはいずれか一方を添加するとともに、当該酵母および麹酵、あるいはいずれか一方の添加量を、前記発酵原料の全体量に対して、0.001〜10重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の炭化物の洗浄方法。
【請求項3】
前記第1工程において、前記発酵原料100重量部に対して、0.01〜1重量部のバシラス・サブティリスを接種することを特徴とする請求項1または2に記載の炭化物の洗浄方法。
【請求項4】
前記第2工程において、前記発酵産物100重量部に対して、500〜1,000,000重量部の水を混合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭化物の洗浄方法。
【請求項5】
前記第2工程において、ハーブ抽出物を添加するとともに、当該ハーブ抽出物の添加量を、前記水抽出物の全体量に対して、0.0001〜10重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭化物の洗浄方法。
【請求項6】
前記第2工程において、得られた水抽出物のpHを8〜12の範囲であることを確認するとともに、所定範囲外の場合には、pHを8〜12の範囲内の値に調整する工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭化物の洗浄方法。
【請求項7】
前記第3工程において、前記熱処理を、赤外線ランプ、電熱線、オーブン、コンロ、加熱蒸気、高圧蒸気、および加熱空気の少なくとも一つを用いて行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の炭化物の洗浄方法。
【請求項8】
前記第3工程において、得られた加熱処理水抽出物のpHを8〜12の範囲であることを確認するとともに、所定範囲外の場合には、pHを8〜12の範囲内の値に調整する工程を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭化物の洗浄方法。
【請求項9】
前記第4工程における被洗浄物が、炭化物が付着したエンジン用シリンダーまたはエンジン用ピストン、あるいは金型であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の炭化物の洗浄方法。
【請求項10】
前記第4工程において、超音波振動を付与しながら、前記被洗浄物に付着した炭化物を洗浄することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の炭化物の洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−45847(P2011−45847A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197612(P2009−197612)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(501097444)株式会社盛栄堂印刷所 (1)
【出願人】(509243551)株式会社テストアンドサービス (1)
【Fターム(参考)】