説明

炭塗工紙

【課題】 コストが安く、柔軟性と強度があり、紫外線や腐敗性生物などの影響で劣化しない屋根材や外装材や容器が望ましい。
【解決する手段】 炭粉と、0.03mm未満に微細化した硫酸カルシュウム、酸化鉄、酸化カルシュウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、の内二以上を混合して得た混合炭粉であり、この混合炭粉と酢酸ビニル接着剤と水を混合した炭塗工液を得て、これを塗工した紙や布及び屋外用品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
炭粉層を有する不織布と紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では紙や不織布のような柔らかな素材に炭粉を塗布したものは、90度以上曲げると炭粉の層が割れるため実用化できなかった。
【0003】
炭を塗布した紙はあるが、使用されているのはカーボンであり、カーボンを水溶性接着剤中に分散させて得た、例えば墨汁のようなものを紙に塗ったものである。しかし、カーボンと本発明で使用する木炭粉、竹炭粉、活性炭粉とは物理的な性質や質感が違う異質なものであり、加工方法も異なる。
【0004】
また、特開2001−234466に竹粉炭を特殊糊にて溶いた流体を木綿、不織布、毛布等の布に吹き付け、その面を重ね合せ乾燥させて、乾燥した竹炭粉層シ−トの竹炭粉漏れ、変形等を防止する為の補強を行ったものはある。
【0005】
従来は木炭、竹炭、活性炭の炭粉を塗工した紙や不織布で、自在に折り曲げができる柔軟性があり、炭粉が剥離しないものはなかった。
【特許文献1】特開2001−234466
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炭の特性を活用するために、竹炭や木炭や活性炭のいわゆる炭を紙と一体化させる試みは、様々な方法で実施されてきて、繊維に混合して炭粉の含有重量比率5〜6%程度は紙に漉き込むことまでは可能になっている。しかし、これを超える量を混入させると炭粉が剥落するため実用化することは困難である。
【0007】
以下には竹炭粉、木炭粉、活性炭粉を炭粉と記載する。
【0008】
炭は刺激によって破砕する性質があり、不織布や紙を構成する繊維層の隙間より炭粉が小さくなって漏れて剥落するため、多量の炭粉を繊維の間に閉じ込めることは困難である。
【0009】
このため、多量の炭粉を閉じ込めるためには、目の細かい特殊な不織布を多層使用して、仕切りを設けて袋状にして封入している。しかし、厚みにばらつきができ、コストが高くなる難点があり、不織布に覆われるため炭の美しい表情は見えない。
【00010】
炭の上品で気品ある表情を現すためには、炭の層を有する炭塗工紙が最適であり、不織布の片面に炭粉層を形成して一体化するのが適当である。
【0011】
しかし、炭粉とデンプン糊や酢酸ビニルのような水溶性接着剤を混合したものを塗布しただけでは、不織布と接着した炭粉層は形成されるが、炭粉同士も接着するために硬くなり曲げると割れる。これは炭粉をどのように微細化しても同じである。
【0012】
不織布の柔軟性を失わず、折り曲げても炭粉が剥離しない、高湿度下でも汚れない炭塗工紙を得るためには、炭粉層が曲げに柔軟に適応して、割れない性質を有することが必要であり、接着剤が高湿度下でも溶解しないようにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
炭は脆く、こすると粉塵が生じる性質があるため、炭粉塗工紙で柔軟性を得るためには、全ての炭粉が不織布と強く接着していて、炭粉同士には隙間があり移動できる部分があることが必要である。また移動によって粉塵が発生しないよう、炭の吸着特性を保持しながら、炭粉表面を補強する必要がある。
【0014】
炭粉の形状は夫々が違っていて、大きさも千差万別であるが、概ね平らな台形である。
【0015】
発明者は、水溶性接着剤と0.1mm〜0.5mmの炭粉と接着剤を適切な比率で混合して、炭粉層が不織布上に一層程度になるように配置しながら、ロールで圧迫すると、脆いところが破砕されて、いたる所に大小さまざまな空間と割れ目ができる。ここに接着剤が浸入して炭表面を補強するため、柔軟性が増し、脆い部分が無くなって、曲げても粉塵が出ないと考えた。また、繊維が緩んで擦られるため、繊維と炭粉が一体化する部分が多くできると考えた。
【0016】
破砕すると粉塵が生じるが、接着剤によって固化する。割れた部分には接着剤が侵入して炭表面を覆って脆さを補強する。大きな隙間の割れ部分では炭粉同士が接着しないが小さなところは接着して固定されるため、曲げると弱い接着部分は外れるが、強く接着している部分が残るために剥離しない。
【0017】
接着剤は不織布や炭の気孔に吸収されていくため、炭粉と不織布は強固に接着し、炭は細かく破砕されて、割れた表面が接着剤で覆われ補強された小さな塊になって柔軟性ができる。破砕されて割れた状態は、複雑な形になるため曲げても剥落しない。
【0018】
粘土などの0.03mm未満の微粉末を10%〜30%重量加えると、塗布時のすべりが良くなると共に、炭粉間や割れ目に進入して炭粉間のすべりがよくなり、炭粉同士の接着を阻害するため柔軟性が増す。
【0019】
しかし、炭粉層の厚さが0.3mmを超えると180度に曲げれば、炭粉同士がぶつかるようになって柔軟性を失う。
【0020】
接着剤が少ないと炭粉表面を覆う量が少なくなり、折りたたんだときに粉塵が生じる。接着剤が適量であると、接着剤が不織布や炭粉に吸着されて炭と不織布は強固に接着し、炭粉表面は接着剤に覆われ補強されるが、炭粉間には多くの接着剤が残らないため破砕された炭粉の一部は接着せず、粉炭間には適度の隙間ができて折り曲げても粉落ちは無い。
接着剤が多すぎると不織布や粉炭の吸着範囲を超えて炭粉層中に残るため、多くの炭粉同士が接着するばかりか、不織布も硬くなり、柔らかさが失われる。
【0021】
試験の結果、炭粉と接着剤と水の混合重量比率は1:1:1〜2程度が適当であり、不織布は坪量50g程度のものを使用するのがよい。この時使用した接着剤は小西製酢酸ビニル接着剤である。
【0022】
請求項1は水溶性接着剤を混合した0.1mm〜0.5mmの炭粉を不織布に塗工したものであり、炭粉を不織布の上に配置してロールで圧力をかけて、炭粉を破砕しながら塗工するのが特徴であり、柔軟に曲げることができることが特徴である炭塗工紙であるが、耐水性は劣る。
【0023】
請求項2は0.1mm〜0.5mmの炭粉に、ベントナイトなどの0.03mm未満の微細粒状の粘土を混入させた混合物を得ることが特徴であり、これを不織布上に配置してロールで圧力をかけて破砕しながら塗工する時、炭粉間の隙間や割れ目に微細粒状物が侵入してクッションになって、折り曲げが可能な柔軟性ができることが特徴であり、請求項1より優れた柔軟性を有する炭塗工紙になるが、耐水性は劣る。
【0024】
請求項1、請求項2共に使用する接着剤は安価な水溶性接着剤であればよく、デンプン系でもビニル系でもよい。
【0025】
炭粉に微細粉末にした硫酸カルシュウムの他に、酸化鉄、酸化カルシュウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムの内二以上加えると、炭粉間の隙間に微細粉末が挟まれてクッションになって大きな曲げにも対応できると伴に、各無機物の水和反応によって固化するため、水溶性接着剤を使用しても、汚れにくく、一定の耐水機能も生まれ、柔軟性に優れた耐水性ある炭塗工紙ができる。
【0026】
この時、デンプン系接着剤は水和反応を阻害するので、酢酸ビニルまたはビニルウレタンまたはポリビニルアルコールなどのビニル系接着剤を使用する。
【0027】
請求項3では、炭粉を不織布や紙に塗工するために、0.1mm〜0.5mmの炭粉と、0.03mm未満に微細化した硫酸カルシュウムの他に、酸化鉄、酸化カルシュウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなど無機物の内二以上を混合して混合炭粉を得るのが特徴であり、この混合炭粉にビニル系接着剤を混合して接着剤含有混合炭粉を得る。そして、不織布上に炭粉を配置しながらロールで圧迫して炭粉を破砕しながら塗布するのが特徴で、折り曲げが可能な柔軟性が特徴であり、耐水性を有する炭塗工紙ができる。
【0028】
炭粉にはばらつきがあるため、図1のように炭粉層も厚みのばらつきができ均一には塗工できないが、柔軟性を増すためには好ましい。また請求項3の混合炭粉は乾燥すると、炭粉層の体積が2.6%ほど膨張するため、仕上がりが綺麗である。
【0029】
請求項1、請求項2、請求項3の炭塗工紙は絶縁物であるが、どのような摩擦を与えても静電気が発生することはない。
【0030】
請求項4は、静電気を吸収するために行われたものであり、炭層に導電性機能を与えるために請求項1、請求項2、請求項3の炭粉に導電性カーボンやアルミニウムなどの導電性微粉末を加えたものである。
【0031】
請求項5は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4で炭塗工紙を得た後に、接着剤を炭層表面に塗布したものであり、炭粉表面を更に汚れにくい性質にすることができる。使用する接着剤は水溶性接着剤でも有機溶剤系接着剤でもよいが、有機溶剤系の接着剤を塗布すると炭粉層表面は耐水性になり高湿度でも汚れ難い。
【0032】
粒径の大きな炭粉を使用すれば炭の含有量を多くすることができるが、不織布のように柔軟に曲げることができるためには、炭粉層の厚みは0.1mmが望ましく、0.3mm程度が限界である。
【0033】
別紙の塗工試験表は縦245mm、横310mmの不織布に、0.2mm以下の炭粉75%重量と、0.03mm未満に微細化した硫酸カルシュウム、酸化鉄、酸化カルシュウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムの無機質25%重量を混合して得た混合炭粉と、酢酸ビニル接着剤を混合したものを塗工したものであり、8番が最適であった。
【0034】
この時8番で使用した不織布の厚さは0.1mmであり、炭塗工紙の厚みは約0.2mmになり、一平方メートルあたりの全重量は137gであり、不織布重量は50gである。
【0035】
炭塗工紙の片面に両面テープを貼ると、様々な場所に簡単に張り付けることができて便利である。両面テープは表面でも裏面でもよく、用途に応じて貼り分ければよい。
【0036】
使用する炭粉は、木粉炭、竹粉炭、活性炭粉のいずれでもよい。
【0037】
不織布の代わりに紙を使用してもよく、接着剤の吸着性や強度など、目的に応じた適切な品質のものを使用すればよい。
【発明の効果】
【0038】
表が上品で気品のある炭の表情を持ち、裏が不織布の表情を有するシートであり、吸着性能や吸湿性能は炭粉と大きく変わらない。不織布を折り曲げても炭粉が剥離しなくて汚れない。コストが安く不織布と同様の柔軟性を有しているため、壁紙他あらゆる形状のものにも応用することができ、炭の美しさと機能を生活の様々な場所で利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
請求項3を実施したものであり、0.2mmの炭粉に、0.03mm未満に微細粉末にした硫酸カルシュウムの他酸化鉄、酸化カルシュウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムの無機質群を10:3の重量比率で加え混合炭粉を得る。この時、無機質の概ねの配合比率は、硫酸カルシュウム:酸化鉄:酸化カルシュウム:酸化ケイ素:酸化アルミニウム=3:3:64:24:6である。
【0040】
混合炭粉:酢酸ビニル:水=1:1:1の割合で混合して、接着剤含有混合炭粉を得る。そして、この接着剤含有混合炭粉を紙や不織布上に炭粉が一層程度なるように配置して、ロールで圧力をかけ、破砕しながら塗工する。
【0041】
表面乾燥後、有機溶剤系接着剤を噴霧塗布して乾燥させた後巻き取る。
【0042】
片面に両面テープを貼る。
【産業上の利用可能性】
【0043】
壁紙ほか消臭、吸湿を目的とした身の回り品の多くに利用できる。また、遠赤外線作用を利用した商品や静電気防止材として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】は発明を実施するための最良の形態でなされた炭塗工紙の切断面を拡大した概略図である。
【符号の説明】
【0045】
1.破砕された炭粉
2.無機物
3.不織布
4.空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭粉と、デンプン系接着剤またはビニル系接着剤を混合したものを得、これを不織布上に配置して炭粉を圧迫破砕しながら塗工したものであり、曲げることが出来る炭塗工紙。
【請求項2】
炭粉と粘土の混合物を得て、これにデンプン系接着剤またはビニル系接着剤を混合したものを得、これを不織布上に配置して炭粉を圧迫破砕しながら塗工したものであり、自在に折り曲げ可能な炭塗工紙。
【請求項3】
炭粉と、0.03mm未満に微細化した硫酸カルシュウムの他に、酸化鉄、酸化カルシュウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、の内二以上を混合して得た混合炭粉であり、この混合炭粉とビニル系接着剤を混合したものを得、これを不織布上に配置して炭粉を圧迫破砕しながら塗工したものであり、耐水性を有し、自在に折り曲げ可能な炭塗工紙。
【請求項4】
請求項1、請求項2、請求項3、の炭粉に、微粉末にした導電性カーボン、アルミニュウム、鉄、銅の内一以上を加えて得た、導電性を有する炭塗工紙である。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4で得た炭塗工紙の表面を乾燥した後、有機溶剤系接着剤又は水溶性接着剤を炭粉表面に塗布する。

【図1】
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【公開番号】特開2009−167581(P2009−167581A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29653(P2008−29653)
【出願日】平成20年1月12日(2008.1.12)
【出願人】(598095042)株式会社森林研究所 (24)
【出願人】(506409136)
【Fターム(参考)】