炭水化物及び電解質補充用組成物
本発明は新規な組成物及び方法を開示する。これらの組成物ならびに方法の使用によって脱水症状や運動、高温や体液の損失につながるその他の活動による症状を緩和または回復させることが可能である。本発明の新規組成物は炭水化物、電解質、水及び香料を含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分、炭水化物、及び電解質を補充する改良された水分補給飲料に関する。本飲料は新規なミネラル配合を有し、高い自発的水分摂取性、水分保持力を有することによって水分補給を促すものである。本飲料の組成の内、液体以外の成分は飲料以外の形態で補給することが可能である。
【背景技術】
【0002】
運動や激しい活動で失われた水分を補給する目的で使用される、飲料ならびに使用者によって飲用可能な形態に調製される濃縮飲料組成物(液体、粉末、錠剤型の濃縮物)が現在、多く流通している。こうした水分補給飲料(スポーツドリンクとも呼ばれる)は、直ぐに飲める形態のものであっても、使用者が飲用可能に調製する形態のものであっても、いずれも運動前、運動中、または運動後に摂取することができるものである。これらのスポーツドリンクはただの水と比較して効率的に水分補給が行えるものの、自発的水分摂取性や水分保持力といった水分補給に関する多くの側面において優れた性能を有する水分補給飲料が依然求められている。
【0003】
水分補給を行うには多くの方法がある。最も基本的なものとして、やはり水は、発汗により失われた水分の一部を補充し、体温や重要な心血管機能の維持を図ることができるものである。スポーツドリンクが開発されたことにより、発汗によって失われる水分や電解質を補充することができるようになった。スポーツドリンクはただの水と比較して、汗で失われるミネラルの一部を補充できるばかりでなく、エネルギー源として炭水化物の補充も可能である点で優れている。しかしながらこうした飲料が更に、水分保持力が高く、尿からの水分損失を低減し、自発的吸収を促進し、知覚的にも優れ、生理的応答を促すことで継続的摂取を可能とするようなものであるならば、水分補給を更に効果的に行うことができよう。
【0004】
従来のスポーツドリンクには一般的に、水、少量のミネラル/電解質、及び炭水化物化合物としてのエネルギー源が含まれている。ナトリウムやカリウムなどの電解質を添加することの科学的な根拠は、汗で失われる電解質の一部を補充することは理にかなっているであろうという直観的にもわかりやすい概念に基づいたものであった。自発的水分摂取の促進や水分保持の促進といった問題は副次的な問題として考慮されていたか、あるいはまったく考慮されていなかった。
【0005】
更にスポーツドリンクのミネラル含量は製品によって大きく異なる。例えば、5mEq/Lのナトリウムを含む飲料もあればその4倍の量を含む飲料もある。同様に、カリウム、マグネシウム、塩化物などの他のミネラルの含量も大きく異なる。
【0006】
水分補給飲料中のナトリウム含量が運動後の水分保持に大きく影響することを示す研究もある。この研究は基本的に、40〜100mEq/Lのナトリウムを含有する基準量の溶液を被験者が摂取した場合、水分保持力が向上し正の体液平衡が維持されることによって水分補給が促されることを示したものである。しかしながら、大量のナトリウムを含有した水分補給飲料の嗜好性については考慮はなされていない(非特許文献1−3)。これらの文献をここに参照して援用する。
【0007】
顕著な脱水後の水分補給は様々な生理学的変化によって促進される。自発的水分摂取を促す2つの主要な生理学的促進因子は、血漿浸透圧と血漿量である。運動中、発汗による水分の損失によって血漿量が低下し、血漿浸透圧が上昇する。これらの生理学的変化によって口渇感がもたらされ、自発的水分摂取が促される。科学的実験によって血漿量及び血漿浸透圧の調節にはナトリウムも重要な役割を担っていることが示された。ナトリウムを含有する飲料を摂取することにより、血漿量及び血漿浸透圧が正常値に戻る速度が増大する。しかしながら、高すぎる濃度のナトリウムを摂取すると血漿量が急速に回復し、このため飲水反応が低下して適当な水分補給が妨げられる。更に、ナトリウム濃度が高すぎる飲料の知覚的性質は好ましいものとはいえず、飲水衝動を更に低下させるものである。(非特許文献4)本文献をここに参照して援用する。
【0008】
更に、他の電解質やミネラルも恐らくは水分補充ならびに水分保持に影響を及ぼすことによって水分補給の重要な役割を担っていると考えられる。脱水時に水分が失われると、細胞外区画と細胞内区画で水分欠乏量が分割されるように各体液区画間で水が分配される。これらの体液区画の充填に関与する重要な電解質/ミネラルとしてナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及び塩化物があるが、特にナトリウム、塩化物、カリウム及びマグネシウムが重要である。ナトリウム及び塩化物を供給する飲料が細胞外区画の充填を促進するのに対して、カリウム、マグネシウム及びカルシウムを供給する飲料は細胞内区画の充填を促進する。ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及び塩化物の濃度を適宜調整することによってこうした飲料の水分補給性能が更に向上する。
【0009】
これらの電解質イオンの働きによって体液区画はより迅速に充填され、水分は尿として排出されるかわりに体内に保持される。ナトリウム及び塩化物イオンはいずれも細胞外区画の充填を促すため、これらの一方を他方で置換しても全体の結果には影響はない。細胞内水分補給に関し、カリウムとマグネシウムについても同様のことがいえるかもしれない。
【0010】
ここに援用するフレグリー等(Fregly)に付与された特許文献1には、水、糖、及び電解質を含む飲料であって、更にグリセロール、ピルビン酸塩、及び/またはカフェインを含むことを改良点とする飲料が開示されている。当該特許が請求する飲料に含有される糖としては、グルコース、スクロースや他の適当な糖化合物が挙げられ、グルコースの濃度として、約2%〜約8%の範囲が特に開示され、約4%のグルコース濃度が好ましいとされている。当該特許に開示される電解質の例としては、15〜30mEq/Lのナトリウム、1〜5mEq/Lのカリウム、2〜8mEq/Lのリン酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、塩化物、カルシウム及びマグネシウムが挙げられている。
【0011】
上記に開示された飲料は労作や高温による生理学的悪影響を軽減するものであるとしている。本発明もやはり労作による生理学的悪影響の問題の解決を図ったものであるが、刺激物質や急性作用(例、グリセロールやピルビン酸塩による消化管障害)及び未知の長期的作用を有する可能性がある他の化合物は使用することなくこの問題の解決を図っている。
【特許文献1】米国特許第4,981,687号明細書
【非特許文献1】Nadel E., Mack G., and Takamata, A., Thermoregulation, Exercise, and Thirst; Interrelationships in Humans. In Perspectives in Exercise Science and Sports Medicine: Exercise, Heat, and Thermoregulation, vol.6, pp.225-251, (Gisolfi, Lamb and Nadel eds., Indianapolis IN, Brown and Benchmark, 1993);
【非特許文献2】Maughan, R. J. and J. B. Leiper, Sodium Intake and Post- Exercise Rehydration in Man, Eur. J. Appl. Physiol. 71: 311-319, (1995);
【非特許文献3】Shirreffs, S. M. and R. J. Maughan, Volume Repletion after Exercise Induced Volume Depletion in Humans: Replacement of Water and Sodium Losses, Am. J. Physiol. 43: F868-F875, (1998).
【非特許文献4】Wemple, Richard D., Morrocco, Tamara S., Mack, Gary W., Influence of Sodium Replacement on Fluid Ingestion Following-Exercised-Induced Dehydration, Int'l J. Sport Nutrition & Exerc. Metabolism 7:1 04-116(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、必要な電解質及びエネルギー源を供給し、一般のスポーツドリンクとほぼ同等もしくはこれよりも優れた感覚刺激性を有するとともに、水分保持力や自発的水分摂取性といった水分補給に関わる幾つかの機構に着目することにより優れた水分補給性能を発揮する水分補給飲料が求められている。更に、脱水症状を緩和し、水分補給を促す方法であって、水分保持や尿による水分損失といった機構に着目した方法が求められている。
【0013】
本発明はこうした要請に応えたものである。本発明の飲料は、水分補給を促し、必要な電解質及びエネルギー源を供給するとともに、他のスポーツドリンクと少なくともほぼ同等の感覚刺激性を有し、水分保持力ならびに自発的水分摂取性に優れたものである。本発明の方法もまた、本発明の組成物の投与によって上記課題を解決するものである。本組成物は経口投与することが可能である。更に本組成物はこれらに限定されるものではないが、液体、ゲル、乾燥粉末、錠剤やカプセルなどの多くの形態で摂取することが可能である。本組成物を濃縮した粉末などを、水や、場合によってはGatorade(登録商標)などのスポーツドリンクのような、電解質及び/または炭水化物を含有する他の液体に加えて本発明の飲料とすることが可能である。
【0014】
本発明の実施例2に示されるように、本発明の一実施形態を運動中に摂取した場合、尿損失が低減されることによって脱水症状が緩和され、水分保持力が向上する。実施例3〜7では更に、本発明が脱水症状を軽減し、水分保持力を向上させ、尿による水分損失を減少させるばかりでなく、運動による水分損失後に摂取される場合に自発的な水分摂取を促す優れた知覚的性質を有するものであることが示される。本発明の飲料を運動による水分損失の前に摂取することによっても同様の結果が得られるものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、経口摂取用の飲料組成物であって、約4質量%〜約10質量%の炭水化物と、少なくとも約30mEq/L(飲料)のナトリウムと、少なくとも約7mEq/L(飲料)のカリウムと、約10〜約20mEq/L(飲料)の塩化物と、必要に応じて約0%〜約0.4%の香料と、必要に応じて約0〜約100ppmの不透明化剤(clouding agent)と、必要に応じて約0.24質量%〜約0.38質量%のクエン酸と、通常残部を構成する水とからなる。更に、飲料の約40〜約78mEq/Lの濃度で細胞外液に多く含まれるイオン(特にナトリウム及び塩化物イオン)の2種以上を含有していても良い。これらの量は最終的に調製される完全な飲料の全量に対する量である。完全な飲料とは、上記に述べたようにその全体が調合されたものでもよく、あるいは、添加物が添加された液体によってその成分の一部または全体を与えることによって調製したものでもよい点は了承されるであろう。この場合の液体とは、水、または飲料の最終製品を調製するうえで適当な成分を予め含有した水のことである。後者の場合、液体に添加される添加物は、添加物と液体とが混合されて完全な飲料となった際に飲料が最終的な組成を有するように必要な成分を有するものである。
【0016】
本発明の飲料の浸透圧(osmolality)は、約250〜約350mOsm/kgの範囲である。飲料は更に約1〜約6mEq/Lのカルシウムと、必要に応じて約1〜約6mEq/Lのマグネシウムを含有してもよい。
【0017】
本発明は更に、消費者が自分で調製することで上述の飲料となるように調合された飲料濃縮物に関する。本濃縮物はこれらに限定されるものではないが、ゲル、乾燥粉末、錠剤、カプセル及び液体濃縮物など異なる形態をとりうる。本濃縮物を、水や、水と炭水化物及び/または電解質からなる例えばGatoradeのような他の液体に添加することが可能である。濃縮物は経口投与、静脈内投与や他の適当な手段によって投与することが可能である。
【0018】
以下の図面を参照することによって本発明の利点を理解するうえでの一助となろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の飲料は、水分保持力を高め、尿による水分損失を低減することにより優れた水分補給効果をもたらすものである。更に、本飲料は自発的な水分摂取を促すことによっても水分補給効果を高めるものである。更に本飲料は、他のスポーツドリンクと比較して少なくとも同等の好ましい感覚刺激的すなわち知覚的性質を有する。
【0020】
本発明の飲料は、飲料の知覚的性質を損なうことなく最大の水分補給効果を得るべく、ナトリウム濃度が最適化され、一般的に塩化物及びカリウム濃度も最適化されたものである。更に、カリウム、マグネシウム及び塩化物を特に好ましい濃度で含有することにより飲料の嗜好性を変化させることなく更なる水分補給効果を得ることができる。更に、細胞外液に多く含まれるイオンの2種以上を約20〜78mEq/Lの濃度で含有することにより、水分補給効果ならびに知覚的性質が向上する。
【0021】
上記に述べた効果は多くの実験によって実証されたものである。配合の異なる飲料を用い、異なる知覚的性質について試験を行った。更にこれらの配合で、自発的水分摂取の促進、水分保持率の増大、及び尿損失の減少といった機構の面から水分補給能についての試験も行った。本飲料の味覚特性を検討すべく、休息状態の50名の運動選手を被験者として最初の実験を行った。試験を行った実験的配合のうち、好ましいものはナトリウム含量が30mEq/Lのものであり、米国内で販売されている主要なスポーツドリンクと同等の極めて高い嗜好評価(hedonic ratings)を得た。
【0022】
この配合の自発的水分摂取の促進効果についても実証された。50名の運動選手を被験者として実験を行い、所定の運動を行わせ、その間に随意に飲料を摂取させた。この配合は、ナトリウム濃度の異なる本飲料用の他の配合と比較して自発的水分摂取の点で指向的により好まれる傾向にあった。「塩気のある」飲料が休息時と比較して運動中及び運動後により摂取しやすい傾向にあることが別の知見として明らかとなった。この配合によって脱水症状が更に軽減されることも示された。
【0023】
水分保持ならびに尿損失効果について別の試験を行った。被験者を所定時間運動させ、体重が2.5〜3.0%減少するような脱水症状下においた。運動により脱水症状とした被験者に、配合の異なる本飲料を、発汗によって失われた水分を補充するだけの充分な量摂取させた。実験の結果、ナトリウム濃度が30mEq/Lである実験的配合で水分保持力が極めて高いことが示された。同様にこの配合では、他の実験的配合と比較して尿として失われる水分量が低減することが示された。更に、この配合では嗜好評価が指向的に高くなる傾向がみられた。この配合はナトリウム濃度が18mEq/Lである別の配合と同程度に好まれる傾向にあったが、甘さ、風味、酸味、塩味及び全体の許容度において、ナトリウム濃度の異なる他のすべての実験的配合と比較して指向的により好まれる傾向がみられた。
【0024】
同様の目的で2つの実験を同様の方法で更に行った。ナトリウム濃度が30mEq/Lである実験的配合はそのままとした。この配合を異なる実験的配合と比較した。更に血液と尿の化学的分析を行った。ナトリウム濃度が30mEq/Lである実験的配合は、次の点で高い水分補給性能を示した。すなわち、尿による水分損失が低下し、水分保持率が向上し、全体の体重変化が大きかった。
【0025】
更に、所定濃度のナトリウムと塩化物の組み合わせを用いて同様の方法で2つの実験をおこなって水分補給性能への影響を調べた。これらのうち、第1の実験では、ナトリウム濃度が30mEq/Lである上述の配合と、ナトリウム濃度が18及び25mEq/Lである実験的配合とを比較した。ナトリウム濃度が25mEq/Lである配合には、所定量の塩化物を添加した。この場合、細胞外液に多く含まれるこれらのイオンの全体の濃度が、ナトリウム濃度が30または18mEq/Lである配合のいずれよりも大幅に高くなるような量の塩化物を添加した(実施例6の表を参照)。ナトリウム濃度が25mEq/Lである配合は、他の2つの配合と比較して高い水分保持力を示した。
【0026】
第2の実験では、ナトリウム濃度が30mEq/Lである配合とナトリウム濃度が25mEq/Lである配合とを比較したが、この実験ではナトリウムと塩化物の全体濃度が2つの配合間でより近い値となるようにした(実施例7の表を参照)。実験の結果、2つの配合間で水分保持力の差は見られなかったが、ナトリウム濃度が25mEq/Lである配合では、ナトリウム濃度が30mEq/Lであるが塩化物濃度はより低い配合に対して、知覚的性質の評価が初期の段階で低かった。
【0027】
本発明の飲料は、通常約4質量%〜約10質量%、好ましくは約5.5質量%〜約6.5質量%、より好ましくは約6質量%の炭水化物源を含有する。炭水化物源としては、これらに限定されるものではないが、スクロース、マルトース、マルトデキストリン、グルコース、ガラクトース、トレハロース、フルクトース、フルクト−オリゴ糖、ベータグルカン、及びピルビン酸塩や乳酸塩などの三炭糖が挙げられる。これらのうちの少なくとも3種類の混合物が好ましく、その場合、フルクトースの量はすべての炭水化物源のグルコースの全量よりも少ないことが好ましい。炭水化物の好ましい組成としては、全体で炭水化物が6%となるような約1%〜約5%のスクロース、約1%〜約2.5%のグルコース、及び約0.8%〜約1.8%のフルクトース、より好ましくは全体で炭水化物が6%となるような約2%〜約4%のスクロース、約1.4%〜約2%のグルコース、及び約1.1%〜約1.5%のフルクトースからなる組成である。
【0028】
本発明の飲料のナトリウム含量は、少なくとも30mEq/L(飲料)であり、好ましくは約30〜約100mEq/L(飲料)であり、より好ましくは約30〜約60mEq/L(飲料)であり、さらにより好ましくは約33〜約40mEq/Lである。このナトリウム濃度は、炭水化物源、(知られる範囲の)香料及び不透明化剤に含まれるナトリウムを含む、飲料中に存在するナトリウムの全量を示すものである。例えば炭水化物源としてのマルトデキストリンにはナトリウムが含まれる場合がある。しかしながらこれらのナトリウム源のみでは飲料のナトリウム濃度を必要な濃度にまで高めることはできず、したがって別のナトリウムイオン源から更なるナトリウムを添加する必要がある。
【0029】
本発明では、当業者にはその有用性が周知であるナトリウム源のいずれを用いることも可能である。有用なナトリウム源の例としては、これらに限定されるものではないが、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及びこれらの混合物が挙げられる。塩化ナトリウムとクエン酸ナトリウムの混合物が好ましいが、約10〜約50mEq/L、好ましくは約10〜約30mEq/L、より好ましくは約10〜約20mEq/Lのナトリウムが塩化ナトリウムから、約10〜約50mEq/L、好ましくは約10〜約30mEq/L、より好ましくは約10〜約20mEq/Lのナトリウムがクエン酸ナトリウムから得られることが好ましい。
【0030】
本発明の飲料は更に塩化物を含有する。塩化物イオンは当業者に周知の異なる塩化物イオン源から得ることができる。塩化物イオン源の例としては、これらに限定されるものではないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム及びこれらの混合物が挙げられる。塩化物の濃度としては、少なくとも約10mEq/L、好ましくは約10〜約20mEq/L、より好ましくは約11〜約18mEq/Lの塩化物が塩化ナトリウムから得られることが望ましい。
【0031】
更に本発明の飲料は2種以上の細胞外液に多く存在するイオンを含むことが好ましく、その場合、これらのイオンの総量は約40〜約78mEq/Lであることが好ましい。この範囲は、約42〜約70mEq/Lまたは約46〜約60mEq/Lであってもよい。細胞外体液区画に選択的に存在するイオンとしてはナトリウムイオン及び塩化物イオンがある。
【0032】
本発明の飲料は更にカリウムを含有する。カリウムイオン源としては、当業者には本発明における有用性が認識される多くのカリウムイオン源を用いることが可能である。本発明において有用であるカリウム源の例としては、これらに限定されるものではないが、モノリン酸カリウム、ジリン酸カリウム、塩化カリウム、及びこれらの混合物が挙げられ、このうち第一リン酸カリウムが好ましい。カリウムの含量は、少なくとも8mEq/L、好ましくは約8〜約20mEq/L、より好ましくは約10〜約19mEq/Lである。
【0033】
本発明の飲料は更にマグネシウムを含有することが好ましい。マグネシウムイオン源としては、やはり当業者には周知の多くのマグネシウムイオン源を用いることが可能である。マグネシウムイオン源の例としてはこれらに限定されるものではないが、酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ジリン酸マグネシウム、トリリン酸マグネシウム、アミノ酸の形態で含まれるマグネシウム、及びこれらの混合物が挙げられ、これらのうち酸化マグネシウムが好ましい。マグネシウムの濃度は、少なくとも0.1mEq/L、好ましくは約0.5〜約6mEq/L、より好ましくは1〜3mEq/Lである。
【0034】
本発明の飲料は更にカルシウムを含有することが好ましい。カルシウムムイオン源としては、当業者には周知の多くのカルシウムイオン源を用いることが可能である。その例としてはこれらに限定されるものではないが、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム塩、クエン酸カルシウム及びこれらの混合物が挙げられ、これらのうち乳酸カルシウムが好ましい。カルシウムの濃度は、少なくとも0.1mEq/L、好ましくは約0.5〜約6mEq/L、より好ましくは1〜3mEq/Lである。
【0035】
本発明の飲料に香料を使用することも可能である。本発明の飲料に使用する香料は飲料の全体の許容度にも影響するものである。この全体の許容度を達成するためには飲料の風味が強すぎてはならない。云うまでもなく、飲料の風味の強さは使用される特定の香料の量や種類によって決まるものである。更に、異なる製造業者から提供される同種の香料は風味の強さが異なる場合がある。したがって、本発明で必要な香料の濃度を決定することは困難である。しかしながら、本発明における香料の濃度は、約0質量%〜約0.400質量%であれば有用であることが一般的に示されている。更に、香料はそれ自体がアラビアガム、エステルガムや、デキストリン、「加工食用デンプン」などのデンプン、プロピレングリコールやアルコールなどを含んでいる場合がある。これらの更なる成分は担体や安定化剤として作用する場合がある。
【0036】
更に本発明では、上記の基準を満たし当業者にはその有用性が周知である香料であればそのいずれも用いることができる。特に有用な香料の例としては、これらに限定されるものではないが、レモンライム、オレンジ、及びフルーツパンチが挙げられる。例としてレモンライム香料は約0.050質量%〜約0.200質量%、好ましくは約0.080質量%〜約0.150質量%、更に好ましくは約0.090質量%〜約0.120質量%の範囲の濃度で使用することができる。
【0037】
本発明の飲料は所定の浸透圧を有するように調合される。この浸透圧は、飲料が最初に調合された時点で約220〜約350mOsm/Kg(飲料)の範囲であり、好ましくは約250〜約330mOsm/Kg(飲料)、より好ましくは約260〜約320mOsm/Kg(飲料)の範囲である。本発明の飲料は調製時には等張である。「等張」なる用語の科学的かつ厳密な定義は、別の溶液、一般にヒトの血液と同じもしくはほぼ同じ浸透圧を有する溶液である。本発明の飲料は調製時には「等張」なる用語の厳密な定義にしたがって等張であるかもしれないが、ここで云う「等張」なる用語はそのような狭い意味で用いられていない。本明細書では「等張」なる用語を、本発明の飲料が所定量の炭水化物及び電解質を含有したスポーツタイプの飲料であるという意味合いで用いている。
【0038】
本発明の飲料は、更に不透明化剤を約0〜約100ppmの範囲の濃度で含有してもよい。不透明化剤の例としては、これらに限定されるものではないが、エステルガム、SAIB、デンプン成分及びこれらの混合物を挙げることができる。これらのうちエステルガムが好ましく、その濃度は約10〜約50ppm、より好ましくは約15〜約35ppmの範囲である。
【0039】
本発明の飲料は更に約0.24質量%〜約0.45質量%の濃度のクエン酸を含有してもよい。クエン酸はpHを低下させ、本飲料を高酸性飲料とする作用を有する。高酸性飲料は低酸性飲料と比較して低温殺菌にそれほど過酷な条件を必要としない。本発明の飲料は好ましくは約2.5〜約4.5のpH、より好ましくは約2.75〜約4.25のpH、更に好ましくは約2.9〜約4.0のpHを有する。クエン酸は更に飲料に酸味を与える。
【0040】
本発明は更に、上記に述べた本発明の飲料を調製するための飲料濃縮物に関するものである。本明細書で用いる「飲料濃縮物」なる用語は、液体またはゲルの形態で与えられるか、もしくは実質的な乾燥混合物の形態で与えられる濃縮物を指して云うものである。実質的な乾燥混合物とは一般的には粉末であるが、一回使用分の錠剤や他の利便性のよい形態であってもよい。本濃縮物は、水や他の液体と混合もしくはこれらの液体で希釈することによって上記に述べたような最終的かつ完全な飲料となるように配合されたものである。
【0041】
本発明の飲料濃縮物の好ましい一例は、水と混合もしくは水で希釈することによって以下からなる飲料を提供するものである。すなわち、
約4質量%〜約10質量%の炭水化物と、
少なくとも約30mEq/L(飲料)、好ましくは30〜60mEq/L(飲料)のナトリウムと、
少なくとも8mEq/L(飲料)、好ましくは8〜20mEq/L(飲料)のカリウムと、
約10〜約20mEq/L(飲料)の塩化物と、
約0%〜約0.4%の香料と、
約0〜約100ppmの不透明化剤と、
水とからなり、浸透圧が約250〜約350mOsm/Kgである飲料。前記炭水化物は、スクロース、マルトース、マルトデキストリン、グルコース、ガラクトース、トレハロース、フルクトース、フルクト−オリゴ糖、ベータグルカン、及びピルビン酸塩や乳酸塩などの三炭糖から選択され、好ましくはこれらの少なくとも3種の混合物である。フルクトースの量はすべての炭水化物源のグルコースの全量よりも少ないことが好ましい。
【0042】
本発明を更に実施例により以下に述べるが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0043】
所定の配合をG30と呼ぶものとし、この配合と市販のスポーツドリンクで見られる一般的な成分を含んだ4つの他の配合と知覚的性質について比較を行った。G30配合は、6%炭水化物水溶液、30mEq/Lのナトリウム、3mEq/Lのカリウム、約10mEq/Lの塩化物、25ppmの不透明化剤、及び0.103質量%の香料からなる。炭水化物溶液は、3%スクロース、1.7%グルコース及び1.3%フルクトースの混合物を用いて調製した。更に塩化ナトリウムとクエン酸ナトリウムをナトリウムイオン源として用いた。比較用の配合は、第1の配合(G0と呼ぶ)で0mEq/Lのナトリウム含量、第2の配合(G18と呼ぶ)で18mEq/Lのナトリウム含量、第3の配合(G40と呼ぶ)で40mEq/Lのナトリウム含量、第4の配合(G60と呼ぶ)で60mEq/Lのナトリウム含量と、各飲料でナトリウム濃度が異なる点を除き同じ成分を含有するものを用いた。
【0044】
試験のこのフェーズは約50人のトライアスロン選手及びランナーを被験者として行い、テイスティングを知覚性実験室内で休息状態で行った。休息状態では、塩味の好み及び飲料の全体の好みは18mEq/Lが最も高い値を示したが、G18とG30の評価の差は統計的に有意なものではなかった。図1に示されるように、G30配合はG18配合を除くすべての配合よりも高い嗜好評価を示した。
【実施例2】
【0045】
同じ配合を用い、各配合について随意の飲水特性、知覚特性、水分補給特性、及び自発的水分摂取を調べた。50人の被験者でほぼすべての試験項目を行い、被験者プールとして分析に用いた。50人の内、28人は男性(平均年齢39.7±8.0)、22人は女性(平均年齢37.2±9.2)であった。プール全体で週当たりの平均トレーニング時間は11.25±6.8時間(1〜35時間の範囲)であり、年間の参加レースの平均は11.0±8.4回(0〜35回)であった。すべての被験者に以下の食餌及び運動のガイドラインを与えた。すなわち、試験前日に過激な運動を行わない。各トレーニングセッション間で少なくとも丸一日の回復期間をおく。試験当日にはカフェインを摂らない。試験前夜及び当日は高塩分高脂肪の食事は避ける。試験前3時間は食事を摂らない。試験の3時間前に水1リットルを飲む。試験前に排尿を済ませておく。
【0046】
被験者はすべて、実験への参加に先立ちこの食餌/運動ガイドラインにしたがて摂食、運動を行わせた。実験前の水分補給を確実に行うため、各被験者に水1リットルを与え、実験プロトコルの開始1.5〜2時間前までに摂取を完了させた。実験のプロトコルでは、高温環境下(80°F(27℃)、36%RH、21℃ WBGT)で、年齢から予測した最高心拍数の70〜75%で中程度の有酸素運動を2時間行わせた。被験者にボトル一本当たり約700mlの飲料を与え、2時間の全体を通じて20分毎に新鮮な冷たいボトルを与えた。被験者には運動の終了時点まで飲料を自由摂取させ、運動終了時で飲料の供給を停止した。すべての尿サンプルは20分間の各区分ごと、及び運動セッション終了15分後に採取した。被験者にはプロトコルの間、必要と感じる範囲でできるだけ頻繁に排尿させた。図2に実験手法を示す。
【0047】
図3のチャートに示されるように、飲料の全摂取量はG30で最も高く、G0で最も低かった。しかしながら(製品中の)ナトリウム濃度の影響にはわずかな有意性が見られただけであった(p=0.058)。各飲料間で全体の自発的飲料摂取量には優位な差は見られなかった。これは被験者が運動選手であるために飲料の摂取の仕方に熟練していることに一部起因するものと考えられる。
【0048】
運動後の尿量の結果では、図4に示されるようにナトリウム濃度と尿量の間に反比例する相関が示された。尿量はナトリウム濃度が0〜60mEq/Lへと上昇するにしたがって減少し、G60では他の飲料と比較して運動後15分で最低であった。運動後の尿排出量に関しデータの傾向(傾き)を分析した結果、0とは有意に異なった。すなわち、データに見られる減少傾向は偶然のみによるものではないということが95%の信頼度でいえることになる。全般的には、運動後の尿量と全尿量は各飲料間で同様の値であった。
【0049】
脱水度は各飲料間で同様の値を示した(p=0.354)が、これは各飲料の自発的摂取量がほぼ同じであったことによるものである。図5に示すように、脱水度は、G30で1.06%と指向的に最低であり、G0で1.23%と最高であった。平均で見るとHRとRPEは各飲料間で差は見られなかったが運動時間とともに増大した。
【0050】
飲料の全体の許容度(Overall Acceptance=OA)はG18及びG30で最も高く、他の飲料と比較して有意差が認められた(p<0.05)。G18とG30の飲料はOAに関しては互いに差が見られなかった。塩味の好みについてはG18及びG30で最高の値であり、0、40、及び60mEq/Lの飲料とは有意差が認められた(p<0.05)。G18とG30では塩味の好みに差が見られなかった。更にナトリウム濃度と時間の間には有意な相互作用効果が認められた。塩味の好みはG0及びG18では時間の経過とともに減少したが、G30、G40及びG60では時間とともに増大した。各ナトリウム濃度は異なる味として知覚され(p<0.05)、知覚される塩分強度はナトリウム濃度の上昇とともに増大した。
【0051】
理想的な塩味評価は各飲料で同様であり、39〜43.5mm(0〜100mmのスケール)の範囲であった。これはG18(38±1.5)とG30(47±1.7)の間の塩分濃度に相当する。図6に示されるようにこのデータをプロットすると、知覚される理想的な塩味は24mEq/Lの塩分濃度に相当する。
【0052】
休息状態から運動状態までの全体の許容度ならびに塩味の好みを比較した結果、OAの曲線の低下率はナトリウム濃度の上昇とともに低下した。すなわち、高ナトリウム濃度(30、40、60mEq/L)では運動開始60分後に記録された嗜好スコア(hedonic scores)は休息状態に記録されたスコアと比較して高い値であった。塩味の好み(Liking of saltiness=LOS)についても同様の反応が見られ、曲線のピークは18mEq/L〜30mEq/Lに移動した。これらの結果を図7に示した。
【0053】
運動時では、OA及びLOSの両方について60mEq/Lのナトリウム濃度まで嗜好スコアが「嫌い」の範囲に入ることはなかった。理想の塩味及び知覚される塩味については休息状態と運動状態の間で有意差は認められなかった。運動状態では知覚される塩味に増大方向の変化が認められた。
【0054】
休息及び運動状態での試験から導かれたこれらの結果は、G30における中程度〜高いナトリウム濃度は、高温環境下での比較的強度の高い2時間の運動によって引き起こされる消化管障害や関連する症状にともなうものではないことを示すものである。高度に訓練されたアスリートは、パフォーマンスを維持し水分を保持する目的で嗜好性が最適ではない飲料であっても飲むものと考えられる。G30飲料はG18よりも塩味が強いと感じられたにも関わらず、嗜好の観点からは30mEq/Lのナトリウム濃度は、他の配合のより高いナトリウム濃度または濃度0のいずれと比較してもより好まれ、許容度が高く、指向的に好まれる傾向が見られた。運動時では休息時と比較してより高濃度のナトリウム(30〜60mEq/L)を含有する飲料で許容度が広くなりナトリウムの好みが高くなった。
【実施例3】
【0055】
この実験では、運動によって脱水状態を引き起こした後に発汗による全水分損失を補充し、その後3時間でどの程度の速さで水分が失われ、どの程度の量が保持されるかをG40配合以外のすべての配合を比較して検討した。実験は二重盲検法で行い、各実験群間で各配合を平衡させた。
【0056】
被験者に夕食(試験前夜)、朝食及び昼食として標準的食餌内容を与えた。全カロリー摂取量は2440カロリー及びナトリウム2592mgであった。食事とともに水500mlを与えた。
【0057】
各被験者は試験への参加に先立って食餌内容及び運動内容のガイドラインにしたがわせた。実験前の水分補給として、各被験者に適宜水分を摂取させた。試験に先立ってベースラインとなる尿サンプルの導電度/浸透圧を調べ、試験前の水分補給が確実に行われていることを確認した。尿サンプルが21ミリシーメンス(mS)を上回った被験者は実験対象から除外し、別日程で試験を行った。
【0058】
被験者に高温環境下(80°F(27℃)、40%RH)で中程度の強度のサイクリング運動(または約2.5〜3.0%の体重が減少するだけの運動)を90分間行わせた。運動後に被験者を3.5時間静かに休息させた。回復期の最初の90分間に被験者に運動による脱水で失われた全発汗量の100%に相当する量の飲料を与えた。5時間の全体を通じ、プロトコルにしたがって尿サンプル及び知覚的データを一定間隔で集めた。このプロトコルを図8にまとめた。
【0059】
10人の被験者に4回の試験を行った。運動による脱水の際の平均的体重の損失は1.5時間で2.6±0.6%であった。脱水率には各配合で差は見られなかった。
【0060】
図9に示されるように実験の終了時点で平均の全尿損失は、0、18、30及び60mEq/Lの飲料でそれぞれ0.546、0.430、0.322及び0.287リットルであった。0及び18の飲料と30及び60の飲料では有意差が見られた(p<0.05)。30と60の飲料の間には差は認められなかった。尿損失の差は飲料摂取終了後1時間までは著明ではなかった。飲料摂取終了後2時間(運動後3.5時間)で0、18及び他の飲料間の差は最大となった。平均の飲料摂取量は1.8〜1.95リットルの範囲であったが、各配合間で差は認められなかった。図10に示されるように全発汗損失の100%に相当する量の水分補給後2時間における全水分保持率は、0、18、30及び60mEq/Lの飲料でそれぞれ69%、75%、82%及び83%であった。
【0061】
G30飲料は他の飲料と比較して高い値を指向的に示した。知覚性の評価では、30mEq/Lの飲料はG18と同程度に好まれたが、甘さ、風味、酸味、塩味及び全体の許容度の特性については他のすべての飲料よりも指向的に好まれた。G18とG30の飲料では、知覚される塩味の評価は飲料摂取期を通じて理想的な塩味の評価に極めて近い値を示した。一般的に水分補給期では嗜好スコアは時間の経過とともに低下した(30〜90分)。
【0062】
理想の塩味の評価は実施例2で示された結果(n=50)と一致していたが、若干高い値であった(43〜50に対し40〜42)。多くの場合、G30飲料の知覚される塩味は同飲料の理想の塩味の評価に近いものであった。60分の飲料摂取継続以降では、各飲料の知覚される塩味のレベルは理想値よりも低くなった。知覚される塩味と理想の塩味との差は、コントロールとしてのG18やG30よりもG0及びG60で大きかった。
【0063】
知覚される注意喚起性、エネルギー、消化管アセスメントや満足度では4つの飲料の間で顕著な差は認められなかった。
【0064】
G30配合は多くの嗜好評価でG18よりも指向的に高い値を得、他の飲料と比較して水分補給時の水分保持反応が良好であった。G60配合の最も高いナトリウム濃度は、尿で失われる水分の損失量を低減させるという点ではG30配合と比較して更なる効果は認められなかった。
【0065】
これらの結果によって、G30はG0、G18、G60と比較して次のような利点を有することが示された。すなわち、(1)高温環境下で運動を行う運動選手において指向的に高い嗜好評価を与える。(2)発汗損失の100%に相当する量の水分補給後の尿からの水分損失の低減。
【実施例4】
【0066】
G5配合を加え、G0及びG60配合を除いた以外は実施例3と同様の配合を使用した。G5配合は、ナトリウム濃度が5mEq/Lに調整されている以外は他の配合と同様である。
【0067】
この試験では、運動によって脱水状態を引き起こした後に発汗による全水分損失を補充し、その後3時間でどの程度の速さで水分が失われ、どの程度の量が保持されるかを各配合を比較して検討した。特定の生化学的パラメータを測定して生理学的な変化を調べた。測定したパラメータは、血液に関し、[Na+]、[K+]、[Ca++]、浸透圧、Hb、Hct、ΔPV、グルコース、pHの変化、及び尿に関し、尿量、浸透圧、[Na+]、[K+]、SEC、FWC、クレアチニン及びGFRの変化である。この実験も二重盲検法で行い、各実験群間で各配合を平衡させた。
【0068】
17人(n=17)の男性被験者に、高温環境下(80°F(27℃)、40%RH)で最大心拍数の70%で1.5時間のサイクリング運動を行わせ、体重の2.25±0.61%を脱水させた。被験者には試験前夜、及び試験当日の朝食と昼食に標準的食餌を与えた。全カロリー摂取量は2440カロリーであり全ナトリウム摂取量は2592mgであった。(ガイドラインにしたがって)更なる水を試験開始3時間前までに与えた。
【0069】
実験前の水分補給を確実に行うため、体水分正常状態が確立されるだけの適量の水を各被験者に摂取させた。この水分補給として、試験前夜に少なくとも500mlの水を摂取させ、更に試験当日に1リットルの水を摂取させた。実験に先立って実験前尿サンプルの導電度を調べ、試験前の水分補給が確実に行われていることを確認した。実験開始後最初の尿サンプルの導電度が21mS−cmを上回った被験者は実験から除外し、別日程で試験を行った。実験を通じて繰り返し血液サンプルを採取するため前腕静脈に静脈内留置カテーテルを挿入した。
【0070】
高温環境下(80°F(27℃)、40%RH)で1.5時間サイクリング運動をさせた被験者は、初期体重の2%に近い水分を運動による脱水で失った。事前に高強度トレッドミル試験で求めた最高心拍数の70〜75%に相当する運動強度を与えるような運動負荷を与えた。遠隔心拍モニター(Polar)を使用して10分毎に心拍数を計って充分な運動強度が与えられていることを確認した。
【0071】
1時間経過後、被験者に5分間の休憩を与え、乾燥質量を測定して発汗による水分損失の進行状況を調べた。運動による脱水の終了時点で自転車に乗った状態で回復前の血液サンプルを15cc採取し、更に被験者に排尿させて体重を再び測定し最終的な発汗損失を求めた。残りの回復期間中被験者は横になった姿勢で回復させた。必要に応じ、留置カテーテルが留置された被験者の腕を温熱パッドで巻くことで、脱水状態での血液サンプルの採取が適切に行われるよう血流を確保し、血管の拡張状態を維持した。
【0072】
実験に先だって1Lまたは2Lの容量フラスコ、及び飲料に電解質を与えない飲料グレードの水を用いて飲料を混合した。各飲料は冷蔵庫で冷やしてから被験者に与えた(約40°F(約4.5℃))が、最後の2つの飲料は被験者に与える時点で室温に近くなっていた。
【0073】
30分の回復時間後、被験者に6カップの飲料のうちの最初の1カップを与え、その後10分毎に1カップずつを与えた。飲料の全量は全発汗損失量に等しい量を与え、全量の50%が最初の20分で、残りの50%が残りの40分で10分毎に12.5%づつ被験者に与えられるように分けた。飲料の全量を1時間以内で摂取させた。
【0074】
3.5時間の回復期において30分毎に血液及び尿サンプルを採取した。試験のプロトコル及び手順を図11に示した。
【0075】
全血臨床分析器(Instrumentation Laboratories,Synthesis IL1735)を使用して血中のナトリウム、カリウム、イオン化カルシウム、グルコース、ヘマトクリット、ヘモグロビン、及びpH値を測定した。3mLヘパリン塗布動脈血/ガスシリンジ(Marquest,Gaslyte)に約1mlの全静脈血を採取し、臨床分析器用に特に使用した。動脈血/ガスシリンジは、サンプルの凝固が防止できるのと、臨床分析器へのサンプルの供給が容易に行えることから選択した。
【0076】
血漿量の変化を、ヘマトクリット値とヘモグロビン値の変化を関連づける公知の式(Dill/Costill)を用いて推定した。血漿浸透圧を、FISKE2400型多試料浸透圧計を用い、氷点降下法によって測定した。
【0077】
尿量は質量で求め、尿の導電度は導電計(WTW LF340、型番19706−20)を用いることで直ちに求めた。尿は少量づつに分け、後の[Na+]、[K+]、浸透圧及びクレアチニン値についての分析用に−20°F(−6.7℃)で保存した。尿中の[Na+]、[K+]を、15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、炎光光度法によって求めた(IL943、自動炎光光度計)。尿のクレアチニン値は、シグマ・クレアチニンキット(シグマ・ダイアグノスティクス、No.555)を用い、分光光度計で測定した。尿浸透圧は、凍結したサンプルを室温に解凍した後に浸透圧計を用いて氷点降下法で測定した。
【0078】
データの分析にはコンピュータ統計パッケージ(SPSS、v.10)を用いた。すべての従属測定値について記述統計及び要約表を生成した。反復計測ANOVAを用いて処置の主要効果、及び必要に応じて時間依存的効果について試験した。主要効果が存在する場合、Duncan post hoc試験を用いて平均値間の統計的差を判定した。比較の結果はα値=0.05にて試験した。各配合間での全尿損失の比較を行うために効果量を推定した。
【0079】
途中で病気(実験とは無関係)になり既に2つの試験を終えた時点で実験の中断を余儀なくされた1人の被験者を除き、17人(N=17)の被験者で3つの試験すべてを行った。運動による脱水時の体重の減少率の平均値は、1.5時間で2.25±0.61%であった。脱水期間中の被験者の平均発汗速度は1.2±0.3リットル/時であり、平均で1.7±0.5リットルの発汗量であった。脱水量と発汗量について各配合間で差は認められなかった。
【0080】
回復期間中、全尿損失量は、G5(479±209g)及びG18(408±151g)と比較してG30(298±161g)では有意に低かったが、この効果は時間依存的であった。G30の効果とG5及びG18の効果に差が現れたのは回復期間に入ってから120分経過してからであった(飲料摂取30分後)。図12は回復期間における3つの配合の累積尿損失量を示したものである。全尿損失の効果量の推定値は、0.39(G5に対するG18)、0.97(G5に対するG30)及び0.70(G18に対するG30)であった。
【0081】
回復期間の150分〜210分にかけては水分保持率はG5及びG18と比較してG30で有意に高い値を示した(P<0.05)。回復期間の終了時点(飲料摂取2時間後)での水分保持率は、G5、G18及びG30でそれぞれ72.6%、75.2%及び81.6%であった。図13に試験を行った3つの配合での回復期間における水分保持率を示す。
【0082】
ベースライン体重からの体重変化の絶対値はG18及びG30と比較してG5で有意に大きい値であった(P<0.05)。回復期間中の摂取水分について補正した体重の減少量はそれぞれ0.93、0.80、及び0.74kgであった。
【0083】
血漿の[Na+]、[K+]、[Ca++]またはグルコースに対する処置の影響は見られなかった。更にヘマトクリット値とヘモグロビン値から計算した血漿量の変化(DPV)については3つの配合間で差は認められなかった。3つの配合での血漿量の変化を図14に示す。
【0084】
ANOVA分析の結果、ナトリウム(P<0.001)及び時間(P<0.0001)の主要効果が示され、個別の排出尿量に関してナトリウムと時間との相関が示された。時間とは独立して(各時点のものを合計)、平均の尿量はG5、G18及びG30に対してそれぞれ79.8、68.0及び49.7gであった。
【0085】
尿の導電性はナトリウム濃度と時間によって変化し、ナトリウムと時間との間に相関が見られた(P<0.01)。時間とは独立して(各時点のものを合計)、平均の尿導電性はG5、G18及びG30に対してそれぞれ12.3、12.8及び14.8mS−cmであった。導電性はG5及びG18と比較してG30で有意に高い値を示した。
【0086】
尿中のナトリウム及びカリウム濃度は各飲料のナトリウム濃度による差は見られなかったが、時間による差が認められた。体積について補正した尿中のナトリウム及びカリウムの排出量は各配合間で差は見られなかったが、回復時間による差が認められた。各配合のものを合計すると、平均の[Na+]排出量は回復期間0分目で有意に高い値を示し(7mEq)、飲料摂取期間の30分経過後で4.4mEqに低下し、回復期間の90〜210分にかけて2.2〜2.4mEqの値に維持された。
【0087】
異なる配合の感覚的(味覚的)及び知覚的変化を調べるため、被験者に実験全体を通じ、異なる精神生理学的特性について異なるスケール(例、カテゴリー別、100点満点)で評価を行ってもらった。
【0088】
飲料の全体の許容度については各配合間で有意差は見られなかった。G30飲料では特に1時間の飲料摂取期間の終了時において、全体の許容度、風味の好み、塩味、甘さ、及び後味の評価が有意に低下した。G5及びG18製品の許容度は時間によって低下することはなかった。G5とG18の間で知覚される塩味に差は認められなかったが、G30は4点の評価時間のうち2点(32分と62分)においてより塩味が強いと知覚された。この効果は一定ではなかった。
【0089】
理想の塩味は100点満点のスケールで47〜51点の範囲の一貫した値であるが飲料摂取による処置によって理想の塩味に影響は認められなかった。知覚される塩味はG5及びG30では理想の塩味の評価との差は見られなかったが、G18では32分と62分において理想よりも塩味がかなり弱いという評価であった。ここでもやはり効果は時間によって一定ではなかった。
【0090】
知覚される生理学的または心理学的な満足度については各配合間で差は見られなかった。知覚されるエネルギー、注意喚起性、及び満足感は各配合間で同様の値であったが、実験のプロトコルと一致して時間の経過とともに変化した。実験の終了時点でG30製品ではG5及びG18と比較して空腹感の評価が有意に低くなった。知覚される消化管ストレス(膨満感、満腹感、吐き気、催尿感)の評価のいずれに対しても処置による他の影響は認められなかった。
【0091】
各製品間で知覚される口渇感については差が認められなかったが、G18製品を摂取した被験者ではG5またはG30を摂取した被験者と比較して高い口渇感が指向的に見られた。
【実施例5】
【0092】
実施例4と同様の目的でG30配合を、水(W)、市販製品であるPOWERade(登録商標)(P)、及びナトリウム濃度が18mEq/Lに調整してある点を除いてG30配合と同じG18配合と比較した。具体的な電解質配合を下記に示す。
【0093】
飲料の温度は41〜45°F(5.0℃〜7.2℃)で維持し、その温度で被験者に与えた。各飲料は被験者及び実験者のいずれも区別がつかないようにした。
【0094】
被験者として普段からトレーニングを行っている男性を採用した(25〜50歳)。17人が双方の試験を最後まで行った。試験後に3時間の絶食期間(飲料、食物について)をおいた。
【0095】
クロストレーナー、ステーショナリーバイク、トレッドミルについて被験者の最大心拍数(毎年のストレス試験で測定)の70〜75%の強度となるような運動負荷を設定した。更にこのオリエンテーション運動セッションの前後で体重を計って発汗速度を予測した。
【0096】
被験者には標準化した食事を与えて2つの試験に先立ってナトリウム摂取量が一定となるようにした(〜2900mg)。食事として、夕食(試験前夜)及び試験当日の朝食と昼食を与えた。被験者は与えられた食物をすべて食べなくともよいが、食べ残した品目と食べ残した量を記録してもらった。これらの品目は次の試験ではフードバッグから除外した。更に被験者にボトルに入った飲料水を試験前夜(500ml)及び試験当日(1000ml)に与えて水分補給を行った。実験の24時間前から被験者にはカフェイン及びアルコールの摂取を控えさせた。ほとんどの被験者が与えられた食物をすべて食べたが、摂取量は2109〜2278kcal、ナトリウム摂取量は2849〜2960mgの範囲で異なった。被験者はすべて与えられた食物だけを食べた。
【0097】
運動セッションは、最大心拍数の75〜80%でクロストレーナー、ステーショナリーバイク、及びトレッドミルで30分間づつ、合計90分間行った。15分間隔で心拍数を計って被験者が適当な運動強度を維持していることを確認した。被験者には運動時間の全体を通じて水分の摂取は控えさせ、2〜2.5%を脱水させた。
【0098】
運動後、被験者の体重を測定し、運動後の尿サンプルを採取した後、3.5時間の回復時間を与えた。回復時間に入って30分の時点で全発汗損失量(運動前の体重から運動後の体重を差し引いて求めた)の25%に相当する量の最初の飲料を与えた。回復時間に入って40分の時点で次の飲料(損失量の25%)を与えた。50分の時点で発汗損失の12.5%に相当する第3の分量を与えた。58分の時点でGIスケールによって消化管反応を評価し、尿サンプルを採取した。次いで被験者に第4の分量(12.5%)を与えた。70分で第5の分量(12.5%)を与え、80分で第6の最後の分量(12.5%)を与えた。感覚的性質に関する質問票を一定間隔で記入してもらった。90、120、180及び240分にGIスケールを与えて尿サンプルを採取した。最後の尿サンプル採取後に最終的な体重を測定した。
【0099】
尿量を重さで求め、尿の比重を測定した(A300臨床屈折計)。更なる分析用に尿を4mlの冷凍容器に移した。尿中の[Na+]、[K+]を、15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、炎光光度法によって求めた(IL943、自動炎光光度計)。各サンプルの浸透圧を測定した(Fiske2400浸透圧計)。
【0100】
SPSSバージョン10.0を使用してデータを分析した。一般的線形モデルを用いたANOVAによって平均値間の差を求めた。データを平均値±標準偏差として表した。
【0101】
90分間の運動セッションによって各配合で同様の脱水率が見られた(W、P、G18、及びG30に対してそれぞれ2.67±0.63%、2.71±0.64%、2.61±0.43%及び2.61±0.54%)。各配合間で発汗速度もほぼ同じ値であった(W、P、G18、及びG30に対してそれぞれ1.34±0.40L/hr、1.36±0.38L/hr、1.25±0.28L/hr及び1.30±0.33L/hr)。
【0102】
各配合での全飲料摂取量はやはり各試験間で同様の値であった(Wで2.01±0.60L、Pで2.03±0.57L、G18で1.88±0.41L、及びG30で1.95±0.50)。発汗速度にある程度の変動があることと全発汗損失の100%を補充するというプロトコルのために摂取量の平均値には若干の変動が見られた。
【0103】
初期体重に対する最終的な体重の割合は各配合間で異なった。水を与えた場合では被験者の体重は初期体重の98.45±0.29%に回復したがこれは他の3つの配合と比較すると大幅に低い値であった。POWERade(98.72±0.37%)とG18(98.87±0.28%)の間に差は見られなかった。G18とG30(98.97±0.39%)の間にも差は認められなかった。G30と水及びPOWERadeとの間には有意差が認められた。
【0104】
全累積水分排出量は各配合間で大幅に異なった。Wでは、他の3つの配合と比較して尿損失は有意に大きかった(0.726±0.225L)。P及びG18はそれぞれ0.496±0.184L、0.428±0.196Lと互いに有意差は認められなかった。G30はW及びPとの間には差が認められたが、G18(0.367±0.263L)との間には差が見られなかった。各データ収集時点における尿排出量は、60、90及び120分の時点については各配合間で有意差は認められなかった。しかし180分の時点ではWで他の3つの配合と比較して大きな尿損失が認められた。更に、240分の時点ではW及びPでG18及びG30と比較して大きな尿損失が認められた(表1を参照。各時点で収集されたデータの値をミリリットルで示してある)。
【表1】
【0105】
水分保持量、すなわち摂取された水分のうち尿として排出されなかった水分の量は、各配合間で異なった。水分保持量は相対的な量(ml/kg)及び(摂取量−排出量)/排出量で表される割合として求めた。Wの相対的水分保持量は17.07±5.22ml/kgであり、他の配合と比較して有意に小さかった。P、G18及びG30ではそれぞれ20.43±6.50ml/kg、19.48±4.83ml/kg及び21.26±4.83ml/kgであった。水分保持率は各配合間で異なり(Wで62.94±9.05%、Pで74.25±11.15%、G18で76.52±10.32%、及びG30で81.45±10.34%)、Wでは180及び240分の時点でP、G18及びG30と比較して有意に低かった。水分保持量は回復期間の終了時点(240分)ではW及びPと比較してG30で有意に大きかった。G18とPまたはG30との間には差は認められなかった。図15を参照。
【0106】
回復期間中に排出された尿量は各配合間で異なった。図16に示すようにW(x=134.97ml)と、P(x=98.99ml)、G18(x=91.64ml)またはG30(x=86.38ml)との間には有意差が認められた(尿量はより多かった)。G30では、W及びPと比較して尿量は有意に低い値であった。G18とPまたはG30との間には差は認められなかった。図16を参照。
【0107】
平均の尿浸透圧は各配合間で異なった。Wでは尿浸透圧は最も低く(348.33mOsm)、P(400.66mOsm)との間に差は認められなかったが、G18(431.74mOsm)及びG30(500.42mOsm)との間には有意差が認められた。G18とPまたはG30との間に差は見られなかった。PはG30よりも有意に低かった。図17を参照。
【0108】
平均の尿中のナトリウム濃度は、G30による試験(65.19±45.68mEq/L)で他の試験(W=49.73±39.78、P=50.14±41.93、G18=52.48±40.44)と比較して有意に高かった。他の試験では互いに差は認められなかった。図18を参照。
【0109】
G30による試験では、他の試験(W=39.67±38.15、P=41.82±40.42、G18=41.58±33.97mEq/L)と比較してカリウム損失は有意に高い値を示した(52.25±36.56mEq/L)。他の試験では互いに差は認められなかった。図19を参照。
【0110】
被験者は充分に水分補給がなされた状態で各運動セッションに臨んだ(USG=1.008±0.005)。尿の比重は運動前では各配合間で差は見られなかった。Wによる処置における平均のUSG値は、120分ではPよりも有意に低い値であった。更に、Wは180分ではG18及びG30よりも低い値であった。PのUSG値は、180分及び240分でG30よりも有意に低かった。G18とPではすべての時点で互いに差は見られなかった。図20を参照。
【0111】
急性ナトリウムバランスの推定値を表IIに示す。
【表2】
【0112】
尿中のタンパク質を試薬片(Uristix)によって測定して脱水症状がタンパク質の排出に影響を及ぼすかを調べた。表IIIは4つの配合のそれぞれについて各時点で尿中に検出されたタンパク質の頻度及び量を示すチャートである。
【表3】
【0113】
感覚的許容度に関し、G30とG18との間のサンプルはほとんど見られずむしろランダムであった。G30配合は、全体の許容度、風味、甘み及び酸味について初期にはG18よりも初期の感覚的性質の指示値に示される許容度が低かったが(回復期間に入って32分の時点)、これら2飲料間の差は時間とともに急速に減少した。G18はこれらのカテゴリーで42、62、及び82分では数値的スコアは高かったが、その差は統計的に有意ではなかった。62分ではG30配合は酸味についてG18よりも低いスコアを示した。
【0114】
Wは全体の許容度及び風味についてすべての評価時点においてG18よりも低いスコアを示した。また、後味の点でも初期評価において(32分の時点)G18よりも低いスコアを示した。
【0115】
G18配合は、全ての評価時点において理想よりも塩味が低い結果となった。G18は32、42及び82分において理想よりも酸味が強いという評価であった。G18とG30とでは知覚される塩味に差は認められなかった。G18と比較してG30は42及び62分でより酸味が弱く、82分でより甘みが強く、62分で差は小さくなった。G30配合はすべての評価時点において理想よりも塩味が弱いという評価であった。
【実施例6】
【0116】
この実験では、運動によって脱水状態を引き起こした後に発汗による全水分損失を補充し、その後3時間でどの程度の速さで水分が失われ、どの程度の量が保持されるかを下記に示した電解質の各配合を比較して検討した。
【0117】
更にこの実験では、ナトリウム濃度を25mEq/Lにまで低下させる一方で全細胞外イオン(ナトリウムと塩化物)の総量はG30配合よりも増大させて、その影響を調べた。
【0118】
この実験では被験者を2つの群に分けて実験前(24時間)の食事制限の生理学的測定値に与える影響を評価した。前記の実験フェーズと同様、被験者に試験前夜の夕食、及び試験当日の朝食と昼食で標準的食餌を与えた。
【0119】
食餌制限を行った群では、全カロリー摂取量は2200カロリーでありナトリウム摂取量は2400mgであった。体重が150ポンド(68kg)を上回る被験者にはやや多めのカロリー(+200)とナトリウム(+100mg)を与えた。すべての被験者に食餌内容と運動のガイドラインを書き記したコピーを配布し、ガイドラインに記載された以外の食物は摂らないように指示した。実験の3時間前までは水分の摂取を認めた(ガイドラインの範囲内で)。
【0120】
実験参加前にすべての被験者を食餌及び運動のガイドラインに従わせた。実験前の水分補給を充分に行うため、各被験者に適宜水分を摂取させた。試験の直前に採取した実験前尿サンプルの導電度を調べて実験前の水分補給が確実に行われていることを確認した。実験に入って最初の尿サンプルが21ミリシーメンス(mS−cm)を上回った被験者は実験から除外し、別日程で試験を行った。
【0121】
36人の被験者(男性31人、女性5人)で実験を行った。被験者を個別に高温環境下(80°F(27℃)、40%RH)で1.5時間運動させて平均で1.8±0.6%脱水させ、3つのナトリウム濃度(18、25または35mEq/L)の飲料のいずれかで発汗損失量の100%を補充した。すべての試験における群全体の平均発汗速度は0.885±0.32L/時間であった。
【0122】
この実験では女性の被験者にも参加してもらい、月経周期、体液平衡、及びホルモン作用における変化にともなう影響をすべての試験で同様のフェーズにおける女性被験者を調べることによってコントロールした。この実験は高温環境下での運動によって脱水症状を引き起こし、次いでミネラル含量の異なる飲料を摂取させた後の水分損失速度を調べるために計画されたものである。試験のプロトコル及び手順を図21に示す。
【0123】
次に被験者のベースライン体重を測定し、感覚的性質(消化管症状、エネルギーレベル)に関する質問票に回答してもらった。被験者に高温環境下(80°F(27℃)、40%RH)で1.5時間サイクリング運動を行わせて、初期体重の約2%に相当する水分を運動によって脱水させた。事前に高強度トレッドミル試験で求めた最高心拍数の70〜75%に相当する運動強度を与えるような運動負荷を与えた。遠隔心拍モニター(Polar)を使用して10分毎に心拍数を計って充分な運動強度が与えられていることを確認した。
【0124】
1時間経過後、被験者に5分間サイクリング運動を休憩させた。運動による脱水期間の終了時点で被験者に感覚的性質に関する質問票を渡し、再び体重を測定して最終的な発汗損失量を求めた。運動後の尿サンプルを運動後体重の測定直後に測定した。残りの回復期間中被験者を横になった姿勢で回復させた。
【0125】
実験に先だって1Lまたは2Lの容量フラスコ、及び飲料に電解質を与えない飲料グレードの水を用いて飲料を混合した。各飲料は冷蔵庫で冷やしてから被験者に与えた(約40°F(約4.5℃))が、最後の2つの飲料は被験者に与える時点で室温に近くなっていた。各飲料は、特定の回数で所定量を投与する水分補給スキームにしたがって配分した。30分の回復時間後、被験者に6カップの飲料のうちの最初の1カップを与え、その後10分毎に1カップずつを与えた。飲料の全量は全発汗損失量に等しい量を与え、全量の50%が最初の20分で、残りの50%が残りの40分で10分毎に12.5%ずつ被験者に与えられるように分けた。飲料の全量を1時間以内で摂取させた。
【0126】
3.5時間の回復期において30分毎に被験者に感覚的性質に関する質問票を記入してもらい、尿サンプルを採取した。尿量を質量で求め、尿の導電度を導電計(WTW LF340、型番19706−20)を用いることで直ちに求めた。尿は少量ずつに分け、後の[Na+]及び[K+]についての分析用に−20°F(−6.7℃)で保存した。尿中の[Na+]、[K+]を、15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、炎光光度法によって求めた(IL943、自動炎光光度計)。
【0127】
データの分析にはコンピュータ統計パッケージ(SPSS、v.10)を用いた。すべての従属測定値について記述統計及び要約表を生成した。反復計測ANOVAを用いて処置の主要効果、及び必要に応じて時間依存的効果について試験した。主要効果が存在する場合、Duncan post hoc試験によって平均値間の統計的差を判定した。比較の結果はα値=0.05にて試験した。各処置間での全尿損失の比較を行うために効果量を推定した。
【0128】
実験結果は個別の群に分けた。実験群全体の結果を最初に示し、次いで食餌制限をした男性、次いで男性のみの順で結果を示した。
【0129】
36人の男性(N=36)で3つの試験すべてを行った。4人の被験者が病気あるいは食事制限(カフェイン摂取の禁止)に耐えられなかったことから実験を辞退、または実験から除外された。運動による脱水時の体重減少の平均は1.5時間で1.8±0.6%であった。被験者の平均発汗速度は0.89±0.32リットル/時であり、被験者は脱水期間中に平均で1.3±0.5リットルの汗を失った。脱水量及び発汗損失量は各処置間で差は見られなかった。
【0130】
摂取した水分の保持率には大きな差が見られた。G25(79.6%)ではG18(73.5%)及びG30(75.1%)と比較して水分保持率は有意に高かった。体重について補正し(ml/kg)、絶対量(kg)で検討すると有意な効果は消失した。プロジェクトFR−1のフェーズ2、3、4から得られた結果に反し、この実験ではG30とG18との間に差は認められなかった。水分保持率の効果量(ES)の推定値は、18に対する25ではES=0.55(中程度の効果量);18に対する30ではES=0.15(効果なし);25に対する30では0.47(中程度の効果量)であった。
【0131】
回復期の2.5時間における全尿排出量の平均は、G25(0.252L)でG30(0.322L)及びG18(0.349L)と比較して有意に低かった。体重について補正(ml/kg)後も有意差は認められた。全尿損失量について以下の比較を行うために効果量の推定値を求めた。すなわち、18に対する25ではES=0.57(中程度の効果量、有意);18に対する30ではES=0.14(効果なし);25に対する30ではES=0.49(中程度の効果量、有意ではない)。各配合間で回復期の150分(飲料摂取終了1時間後)から差が現れた。
【0132】
回復期の終了時点でのベースラインからの体重の絶対的変化量は、G18、G25及びG30でそれぞれ−0.72、−0.62、及び−0.71kgであった。初期体重に対する割合で表した場合、これらの値はG18、G25及びG30でそれぞれ−0.98%、−0.84%、及び−0.96%となる。被験者のばらつきについて統計学的モデルで調整すると絶対量及び割合のいずれの変量においてもG25とG18及びG30では有意差が認められた。G18とG30の間には差は認められなかった。
【0133】
ベースライン尿サンプルの平均の比導電率(SEC)は各処置で17〜18mS−cmの範囲であった。ベースライン尿量の平均は、G18、G25及びG30でそれぞれ111.4、117.1及び121.8グラムであった。この結果は平均的に見て被験者がある程度水分補給がなされた状態でプロトコルを開始したことを示すものである。
【0134】
時間と独立した平均の尿排出量は、G18、G25及びG30でそれぞれ58.2、42.0及び53.7グラムであった。興味深いことに、時間と独立した平均のSECは、G18、G25及びG30でそれぞれ13.1、16及び14.5mS−cmであった。
【0135】
各処置の感覚的(味覚的)及び知覚的性質の変化を調べるため、実験の全体を通じて被験者に異なる精神生理学的特性について異なるスケール(例、カテゴリー別、100点満点)で評価を行ってもらった。消化管症状及び感覚(味覚)に関する質問票を試験期間を通じて定期的に使用して被験者の感覚を調べた。
【0136】
消化管症状に関する質問票での評価では各製品間で差は認められなかった。質問項目としては、エネルギー、注意喚起性、口渇感、空腹感、満腹感、吐き気、催尿感などである。
【0137】
各製品の感覚的性質のなかには製品間で大きく評価が異なるものがあった。最初の飲料を与えた時点では全体の許容度は各製品間で同様のスコアであったが、最後の飲料(82分)では大きく異なった。G25(6.4)はG18(7.0)と比較して評価が低かったが、G30(6.8)とは差が見られなかった。塩味の好みは、G18及びG30と比較してG25で試験を行ったすべての時点で評価が低かった。これはG25に多く含まれる塩化物の影響であると思われる。顕著な差ではないが、G25はG18及びG30と比較して指向的により塩味が強いと知覚された。風味の好みに関するスコアは各時間及び各製品で同様であった。消化管症状に関する性質の評価は時間とともに変化し、一日のうちの時間とプロトコルと一致した。報告すべき顕著な差は認められなかった。各製品の味覚及び風味に関する評価は飲料が摂取された短時間(1時間)では変化は見られなかった。
【0138】
下記に示すサブグループでデータの更なる分析を行った。これは、結果は多くの因子によって大きく影響されるという経験から行ったものである。下記の結果は、食事制限を行った(男性のみの群)及び男性のみの群のサブグループにおける分析から得られたものである。女性被験者が少数であったことから、食事制限を行って試験した群には結果的に男性しか含まれていなかった。
【0139】
36人の被験者のうち17人(n=17)を食事制限を行う男性の群とした。この被験者のサブセットでは、運動による脱水時の平均の体重減少率は1.5時間で1.8±0.5%であった。これらの被験者の平均の発汗速度は0.95±0.28リットル/時であり、脱水期間に平均で1.4±0.4リットルの汗を失った。各処置間で脱水量及び発汗損失量の差は見られなかった。
【0140】
このサブグループでの摂取水分の保持率には有意差は認められなかった(p=0.089)。G25(80.7%)ではG18(74.9%)及びG30(74.2%)と比較して水分保持率は有意に高かったが、このサブセットでは差は統計学的に有意な差ではなかった。
【0141】
ナトリウム濃度によって全尿損失量は変化した(p=0.029)。2.5時間の回復期間における全尿排出量の平均は、G25(0.255L)でG30(0.374L)及びG18(0.367L)と比較して有意に低かった。効果量は次のとおりであった。すなわち、18に対する25ではES=0.58(中程度の効果量);18に対する30ではES=0.04(効果なし);25に対する30では0.71(効果量大)であった。
【0142】
回復期の終了時点でのベースラインからの体重の絶対的変化量は、G18、G25及びG30でそれぞれ−0.70、−0.59、及び−0.75kgであった(p=0.015)。初期体重に対する割合で表した場合、これらの値はG18、G25及びG30でそれぞれ−0.94%、−0.79%、及び−0.99%となる。被験者のばらつきについて統計学的モデルで調整すると絶対量及び割合のいずれの変量においてもG25とG18及びG30では有意差が認められた。G18とG30の間には差は認められなかった。
【0143】
36人の被験者のうち31人(n=31)を、食事制限を行った群とは独立した男性の群とした。群全体のうち、このサブセットでは最大の差が認められたが、この差は、標本数が大きかったことと(n=31)、試験を行った少人数の女性の群による影響を統計的に除外したことによるものと思われる。実験参加者のこのサブセットでは、運動による脱水時の平均の体重減少率は1.5時間で1.9±0.6%であった。これらの被験者の平均の発汗速度は0.94±0.31リットル/時であり、脱水期間に平均で1.4±0.5リットルの汗を失った。各処置間で脱水量及び発汗損失量の差は見られなかった。
【0144】
摂取水分の保持率には有意差が認められた(p=0.016)。G25(79.6%)ではG18(73.1%)及びG30(75.0%)と比較して水分保持率は有意に高かった。この処置による効果は回復期に入って150分の時点で明確となった(図22を参照)。体重について補正するか(ml/kg)、絶対量(kg)で検討すると有意な効果は消失した。
【0145】
回復期の2.5時間における全尿排出量の平均は、G25(0.267L)でG30(0.346L)及びG18(0.374L)と比較して有意に低かった。体重について補正(ml/kg)後も効果は有意であった(p=0.005)。各製品間で回復期の150分(飲料摂取終了1時間後)から差が現れた(図23参照)。効果量の推定値は次のとおりであった。すなわち、18に対する25ではES=0.62(中程度の効果量);18に対する30ではES=0.15(効果なし);25に対する30ではES=0.56(中程度の効果量)。
【0146】
回復期の終了時点でのベースラインからの体重の絶対的変化量は、G18、G25及びG30でそれぞれ−0.76、−0.65、及び−0.75kgであった。初期体重に対する割合で表した場合、これらの値はG18、G25及びG30でそれぞれ−1.01%、−0.85%、及び−0.99%となる。被験者のばらつきについて統計学的モデルで調整すると絶対量(p=0.006)及び割合(p=0.010)のいずれの変量においてもG25とG18及びG30との間に有意差が認められた。G18とG30の間には差は認められなかった。
【0147】
データは群全体について報告された知見に一致するものである。各飲料間には散発的な差が認められた。観察された最も顕著な効果としては、G25ではG18と比較して「塩味の好み」が最も低く、知覚される塩味が最も高かった点である。この効果は飲料摂取期間の全体を通じて大体一貫していた。この男性のサブグループでは各飲料間で消化管症状に関する顕著な効果は認められなかった。
【実施例7】
【0148】
この実験は前述の実験と同様の実験である。しかしながらこの実験では、25mEq/L配合中の塩化物イオンとナトリウムイオンの合計を、G30配合中のナトリウムと塩化物の合計により近い値とし、18mEq/L配合は使用しなかった。各電解質の具体的な配合を下記に示す。
【0149】
水分損失及び水分保持に対する効果についてこれらの配合の比較を行った。更に各配合の感覚的品質について測定を行った。
【0150】
被験者に実験室に来てもらい、バイク、トレッドミルについて被験者の最大心拍数(毎年のストレス試験で測定)の75〜80%の強度となるような運動負荷を設定した。更にこのオリエンテーション運動セッションの前後で体重を計って発汗速度を予測した。
【0151】
被験者には標準化した食事を与えて2つの試験のそれぞれに先立ってナトリウム摂取量が一定となるようにした(〜2700mg)。食事として、夕食(試験前夜)及び試験当日の朝食と昼食を与えた。被験者は与えられた食物をすべて食べなくともよいが、食べ残した品目と食べ残した量を記録してもらった。これらの品目は次の試験ではフードバッグから除外した。更に被験者にボトルに入った飲料水を試験前夜及び試験当日に与えて水分補給を行った。実験の24時間前から被験者にはカフェイン及びアルコールの摂取を控えさせた。
【0152】
被験者として普段からトレーニングを行っている男性を採用した(25〜49歳)。17人が双方の試験を最後まで行った。1人の被験者が病気のため試験から除外された。3時間の絶食期間(飲料、食物について)の後、被験者に実験室に来てもらい尿サンプルを採取して運動前の水分補給状態を評価し、更に体重を測定した。
【0153】
運動前のアンケート(GI評価)を終えた後、運動を開始してもらった。運動セッションはサイクリングとランニングを15分間隔で交互に、最大心拍数の75〜80%で60分間行ってもらった。15分間隔で心拍数を計測して被験者が適当な運動強度を維持していることを確認した。被験者には運動期間の全体を通じて水分摂取を控えさせて1.5〜2%の脱水状態とした。
【0154】
運動後、被験者の体重を測定し、運動後尿サンプルを採取した。その後、3.5時間の回復期間をおいた。回復期に入って30分の時点で被験者に全発汗損失量(運動前の体重から運動後の体重を差し引いて求めた)の25%に相当する量の最初の飲料を与え、感覚的性質に関する質問票を記入してもらった。回復期間に入って40分の時点で更なる質問票と飲料(損失量の25%)を与えた。50分の時点で発汗損失量の12.5%に当たる3番目の飲料を与えた。58分の時点でGIスケールによって消化管反応を評価し、トイレで尿サンプルを採取してもらった。尿採取から戻った被験者に質問票を記入してもらい、4番目の飲料(12.5%)を与えた。5番目の飲料(12.5%)を70分の時点で与え、最後の6番目の飲料(12.5%)を80分の時点で与えて、質問票を記入してもらった。90、120、180及び240分にGIスケールを与えて尿サンプルを採取した。最後の尿サンプルの採取後、被験者に2階に行ってもらい最終的な裸体質量を測定した。(必要に応じ)次回の試験の食事を与え、被験者を解放した。
【0155】
尿量を重さで求め、尿の比重を測定した(A300臨床屈折計)。更なる分析用に尿を4mlの冷凍容器に移した。尿中の[Na+]、[K+]を、15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、炎光光度法によって求めた(IL943、自動炎光光度計)。各サンプルの浸透圧を測定した(Fiske2400浸透圧計)。
【0156】
各被験者に2428kcal分の食物と2694mgのナトリウムを与えた。被験者には食べたい分だけ食べてもらったが、各処置間では一貫した量を食べてもらった。ほとんどの被験者が与えられた食物を残さず食べたが、摂取量は1851〜2428kcal及び1831〜2694mgのナトリウムと幅があった。すべての被験者が与えられた食物のみを食べた。
【0157】
60分間の運動セッションによって各処置での脱水症状の程度は同程度であった(G25及びG30でそれぞれ1.75%±0.29%及び1.78±0.33%)。更に各処置で発汗速度はほぼ同じであった(G25で1.39±0.32L/時、G30で1.40±0.32L/時)。
【0158】
各処置の全飲料摂取量は、G25処置では1.39±0.32L、G30処置では1.40±0.32Lであり、全発汗損失量の値と一致していた。
【0159】
全累積水分排出量は各処置で差は見られなかった(G25では0.35±0.13L、G30では0.35±0.15L)。更に、各データ収集時点での尿排出量にも各処置間で有意差は認められなかった(下表)。
【0160】
水分保持量、すなわち摂取された水分のうち尿として排出されなかった水分の量については、各処置で差は認められなかった。水分保持量は相対的な量(ml/kg)及び(摂取量−排出量)/排出量で表される割合として求めた。相対的水分保持量は、G25及びG30でそれぞれ13.11±3.04ml/kg及び13.32±3.52ml/kgであった。水分保持率も両処置で同じであった(G25で74.29±9.76%、G30で74.20±10.14%)。予想できるように時間による水分保持率も各処理で同じ値を示した(下表参照)。
【0161】
各処置の感覚的及び知覚的性質の変化を調べるため、実験の全体を通じて被験者に異なる精神生理学的特性について異なるスケール(例、カテゴリー別、100点満点)で評価を行ってもらった。消化管症状及び感覚(味覚)に関する質問票を試験期間を通じて定期的に使用して被験者による知覚を調べた。知覚される生理学的及び心理学的満足度の評価については2つの飲料間で差は認められなかった。飲料の許容度については以下のような差が認められた。G30は、G25と比較して、許容度、甘さ、酸味、風味および塩味の好みに関して有意に高いスコアを示し、32分における後味で高い効果量を示した(0.7)。全体の許容度については図24を参照されたい。42分ではG30は、G25と比較して後味に関して有意に高いスコアを示し、酸味に関して中程度の効果量を示した。G25は全ての時点でG30よりもより酸味を示した。図25を参照。G25は32分でG30よりも有意に強い塩味を示し、他のすべての時点では差は認められなかった。G25の塩味ははじめは理想的という評価であったが、他のすべての時点では理想よりも低い評価となった。G30の塩味はすべての時点で理想よりも低い評価であった。図26を参照。
【実施例8】
【0162】
この実験ではG30配合を改変してカルシウム、マグネシウム及び高濃度のカリウムを添加し、水分補給への影響を調べた。実施例5と同様、G18配合及びPOWERade配合を使用し、これらと共にG30の改変版であるK10及びK20配合を使用した。他のすべての実施例と同様、各飲料処置は被験者にも実験者にも区別がつかないようにした。電解質の具体的な配合を下表に示す。
【0163】
被験者には標準化した食事を与えて各試験に先立ってナトリウム摂取量が一定となるようにした(〜3000mg)。食事として、夕食(試験前夜)及び試験当日の朝食と昼食を与えた。被験者は与えられた食物をすべて食べなくともよいものとした。被験者には更に食べ残した品目を記録してもらった。これらの品目は次の試験ではフードバッグから除外した。更に被験者にボトルに入った飲料水を試験前夜(500ml)及び試験当日(1000ml)に与えて水分補給を行った。実験の24時間前から被験者にはカフェイン及びアルコールの摂取を控えさせた。
【0164】
被験者として普段からトレーニングを行っている男性を採用した(30〜50歳)。17人が双方の試験を最後まで行った。試験後に3時間の絶食期間(飲料、食物について)をおいた。運動セッションの前後に体重を測定した。更に尿サンプルを採取して運動前の水分補給状態を評価した。被験者には運動前のアンケート(GI評価)にも答えてもらった。
【0165】
運動セッションは、最大心拍数の70〜75%でクロストレーナー、ステーショナリーバイク、及びトレッドミルで30分間ずつ、合計90分間行った。15分間隔で心拍数を計って被験者が適当な運動強度を維持していることを確認した。被験者には運動時間の全体を通じて水分の摂取は控えさせ、2〜2.5%を脱水させた。
【0166】
運動後、被験者の体重を測定し、運動後尿サンプルを採取した。その後、3.5時間の回復期間をおいた。回復期に入って30分の時点で被験者に全発汗損失量(運動前の体重から運動後の体重を差し引いて求めた)の25%に相当する量の最初の飲料を与え、感覚的性質に関する質問票を記入してもらった。回復期間に入って40分の時点で更なる質問票と飲料(損失量の25%)を与えた。50分の時点で発汗損失量の12.5%に当たる3番目の分量を与えた。58分の時点でGIスケールによって消化管反応を評価し、尿サンプルを採取した。次いで被験者に感覚的性質に関する質問票を記入してもらい、4番目の分量(12.5%)を与えた。5番目の分量(12.5%)を70分の時点で与え、最後の6番目の分量(12.5%)を80分の時点で与えて、質問票を記入してもらった。90、120、180及び240分にGIスケールを与えて尿サンプルを採取した。最後の尿サンプルの採取後、被験者の最終的な裸体質量を測定した。
【0167】
尿量を重さで求め、尿の比重を測定した(A300臨床屈折計)。更なる分析用に尿を4mlの冷凍容器に移した。尿中のナトリウム及びカリウム濃度を、15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、炎光光度法によって求めた(IL943、自動炎光光度計)。各サンプルの浸透圧を測定した(Fiske2400浸透圧計)。
【0168】
SPSSバージョン11.0を使用してデータを分析した。一般的線形モデルを用いたANOVAによって平均値間の差を求めた。データを平均値±標準偏差として表した。
【0169】
運動によって各処置で同様の脱水率が見られた(P、G18、K10及びK20に対してそれぞれ2.56±0.56%、2.53±0.55%、2.57±0.51%及び2.50±0.44%)。各処理間で発汗速度もほぼ同じ値であった(P、G18、K10及びK20に対してそれぞれ1.29±0.29L/hr、1.27±0.32L/hr、1.29±0.31L/hr及び1.26±0.26L/hr)。
【0170】
各処置での全飲料摂取量はやはり各試験間で同様の値であった(Pで1.92±0.44L、G18で1.92±0.48L、K10で1.93±0.46、及びK20で1.87±0.39)。発汗速度にある程度の変動があることと全発汗損失の100%を補充するというプロトコルのために摂取量の平均値には若干の変動が見られた。
【0171】
初期体重に対する最終的な体重の割合は各配合間で差は認められなかった。被験者の体重は、Pによる試験後では初期体重の98.68±0.53%に、G18による試験後では98.85%±0.27%、K10及びK20による試験後ではそれぞれ98.84±0.47%及び98.89±0.33%に回復した。
【0172】
全累積水分排出量については、各処置間で統計的な有意差に達しなかった(図32)。累積水分排出量は、P、G18、K10及びK20でそれぞれ501.03±303.93ml、444.63±210.19ml、434.05±276.62ml及び353.08±183.47mlであった。各データ収集時点での尿排出量については60、90及び120分の時点で各処置間で有意差は認められなかったが、180及び240分の時点ではK20での尿損失量はPと比較して有意に低かった。
【0173】
水分保持量、すなわち摂取された水分のうち尿として排出されなかった水分の量については、各処置で差は認められなかった。水分保持量は相対的な量(ml/kg)及び(摂取量−排出量)/排出量で表される割合として求めた。相対的水分保持量は、P、G18、K10及びK20でそれぞれ18.62±7.81ml/kg、19.40±5.65ml/kg、19.66±5.99ml/kg、及び20.17±5.07ml/kgであった。水分保持率については各処置間で統計学的有意差は認められなかった(Pで73.70±13.85%、G18で75.74±12.56%、K10で76.39±14.23%、及びG30で80.53±9.69%)が、K20とPの間には0.58の効果量が認められた(p=0.09)。図27を参照。
【0174】
回復期間における全尿産生量は、各処理間で有意差は認められなかったが、K20処置とPの間には0.61の効果量が認められた(p=0.07)。更に180及び240分の時点ではK20とPの間には有意差が認められた(K20のほうが尿産生量が少なかった)。
【0175】
平均の尿浸透圧は各処置で異なった。Pは最も尿浸透圧が低く(379.70±222.96mOsm)、G18(415.51±217.89mOsm)またはK10(413.53±232.11mOsm)との間に差は見られなかったが、K20(462.42±226.70mOsm)との間には有意差が認められた。K20とK10またはG18との間に差は認められなかった。図28を参照。
【0176】
P(40.74±28.58mEq/L)及びG18(43.81±27.98mEq/L)と比較してK20(52.59±31.38mEq/L)による試験では平均の尿中のナトリウム濃度は有意に高かった。K10(47.87±35.18mEq/L)はいずれの試験結果とも有意差は認められなかった。全ナトリウム排出量(尿量×尿中のナトリウム濃度)は各試験間で差は認められなかった(P=16.62±8.32、G18=17.68±10.80、K10=19.46±10.17、K20=20.27±8.77)。図29を参照。
【0177】
平均の尿中のカリウム濃度は、K20(58.44±32.59mEq/L)による試験でP(42.24±40.19mEq/L)と比較して有意に高かった。G18(47.26±37.05)及びK10(51.99±39.33)は他のいずれの処置とも有意差は認められなかった。
【0178】
被験者には充分に水分補給を行ったうえで運動セッションを開始させた(USG=1.008±0.005)。運動前には各処置間で尿の比重に差は見られなかった。Wによる処置での平均のUSGはPと比較して120分で有意に低かった。Wは180分ではG18及びG30よりも低い値を示した。PのUSGは180分及び240分でG30よりも有意に低い値を示した。G18とPの間にはすべての時点で差は認められなかった。図30を参照。
【0179】
4つの評価時点で行った感覚的性質に関するアンケートによれば、全体の許容度について各飲料間で差は見られなかった。K20配合及びPOWERadeは32分で塩味の許容度に関してG18よりも有意に高いスコアを示した。これはすべての時点で製品間で有意差が見られた唯一のケースであった。Pでは全体の許容度は時間とともに大幅に低下した。Pは初めこそ数値的に最も高い全体の許容度のスコアを得たが、全体として許容度は最も低かった。Pでは、後味を除いたすべての許容度のスケールにおいて時間とともに評価は低くなった。G18配合では、後味、塩味及び酸味の好みに関して初期(32分)には比較的スコアは低かった。これらのスコアは時間とともにより一般的な範囲に復帰した。
【0180】
消化管症状については各飲料間で有意差は基本的に認められなかった。60分では、K20はG18及びK10と比較してより吐き気を催させる効果が高いという評価であった。しかしながら、吐き気は運動プロトコルの後で飲料摂取の直前では普通に観察されたことから、この結果は30分における結果と一致している。経時的にみて多くの差が観察された。これらの差はプロトコルから予想されるものと符合していた。異常な消化管症状は観察されなかった。
【実施例9】
【0181】
前述の実施例におけるようにカリウム濃度を変え、カルシウム及びマグネシウムを添加することに加え、ナトリウム以外のすべての電解質の濃度を変化させて水分補給に与える複合的効果を調べた。G30以外に3つの配合について試験を行った。各配合は6%の炭水化物、30mEq/Lのナトリウム及び0.103%の香料を含有するものである。他の実施例と同様、炭水化物としてはスクロース(〜3%)、グルコース(〜1.7%)及びフルクトース(〜1.3%)の混合物を使用した。電解質の具体的配合を下表に示す。
【0182】
被験者として普段からトレーニングを行っている男性を採用した(19〜50歳)。18人が4つの試験のすべてを最後まで行った。前述の実施例とほぼ同様に被験者に実験前に毎日標準化した食事を与えた。試験後に3時間の絶食期間(飲料、食物について)をおいた。運動を開始する前に尿サンプルを採取して運動前の水分補給状態を評価し、被験者の体重を測定した。
【0183】
被験者には水分を一切与えずに90分間運動させた。運動セッションは、最大心拍数の70〜75%でクロストレーナー、ステーショナリーバイク、及びトレッドミルで30分間づつ、合計90分間行った。この運動により被験者は2.5〜3%の水分を失った。運動後、被験者の体重を測定し、尿サンプルを採取した後、3.5時間の回復時間を与えた。
【0184】
回復期に入って30分の時点で被験者に全発汗損失量(運動前の体重から運動後の体重を差し引いて求めた)の25%に相当する量の最初の飲料を与え、感覚的性質に関する質問票を記入してもらった。回復期間に入って40分の時点で更なる質問票と飲料(損失量の25%)を与えた。50分の時点で発汗損失量の12.5%に当たる3番目の分量を与えた。58分の時点でGIスケールによって消化管反応及び感覚を評価してもらい、トイレで尿サンプルを採取してもらった。次いで被験者に質問票を記入してもらい、4番目の分量(12.5%)を与えた。5番目の分量(12.5%)を70分の時点で与え、最後の6番目の分量(12.5%)を80分の時点で与えて、感覚的性質に関する質問票を記入してもらった。90、120、180及び240分に再び消化管反応について被験者を評価し、尿サンプルを採取した。最後の尿サンプルの採取後、被験者の最終的な裸体質量を測定した。
【0185】
尿サンプルはすべて使い捨ての検体容器に採取し、質量を測定して尿排出量を求め、尿比重を計った(A300臨床屈折計)。次いで後の炎光光度法(IL943、自動炎光光度計)による尿中のナトリウム及びカリウム濃度の分析用に尿を4mlの冷凍容器に移した。15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、分析を行った。各サンプルの浸透圧を測定した(Fiske2400浸透圧計)。
【0186】
冬季に行われた実験中に室内を暖房することが困難であったことから過去の実験と比較して全発汗速度は低いものとなった。しかしながら発汗速度は2〜2.5%の脱水を引き起こすのに充分であった。運動セッションによって各処置で同程度の脱水が見られた(G30、K5、K10及びK20でそれぞれ2.10±0.50%、2.18±0.51%、2.14±0.53%及び2.15±0.50%)。さらに各処置間で発汗損失量はほぼ同じであった(G30、K5、K10及びK20でそれぞれ1.12±0.25L/時、1.16±0.27L/時、1.14±0.26L/時及び1.14±0.25L/時)。
【0187】
各処置の間の全水分摂取量も各試験間で同様の値であった(G30で1.68±0.38L、K5で1.75±0.40L、K10で1.71±0.39L、
K20で1.72±0.37L)。発汗速度にある程度の変動があることと全発汗損失の100%を補充するというプロトコルのために摂取量の平均値には若干の変動が見られた。
【0188】
初期体重に対する最終的な体重の割合は各配合間で差は認められなかった。被験者の体重は、G30による試験後では初期体重の98.96±0.21%に、K5による試験後では98.96%±0.29%、K10及びK20による試験後ではそれぞれ98.90±0.37%及び98.95±0.31%に回復した。
【0189】
全累積水分排出量については各処置間で統計的な有意差は認められなかった。累積水分排出量は、G30、K5、K10及びK20でそれぞれ353.99±161.73ml、369.13±167.35ml、380.93±240.35ml及び386.93±205.07mlであった。各データ収集点における尿排出量についてもすべての時点で各処置間で差は認められなかった。各配合で水分保持率に差は認められなかった(G30で78.17±11.45%、K5で76.60±16.84%、K10で78.28±10.83%、K2で76.62±12.87%)。図31を参照。体重に対する水分保持率にも差は認められなかった(G30、K5、K10及びK20でそれぞれ16.59±5.09ml/kg、17.29±5.04ml/kg、16.69±6.06ml/kg及び16.66±5.31ml/kg)。
【0190】
平均の尿浸透圧についても各処置間で差は認められなかった(G30=488±228mOSm、K5=484±250mOsm、K10=456±215mOsm、K20=492±215mOsm)。尿浸透圧に関しては回復期間中のすべての時点で差は認められなかった。図32を参照。被験者は充分に水分補給がされた状態で各運動セッションを開始した(USG=1.008±0.005)。尿比重(USG)については運動前または回復期間中のすべての時点において各処置間で差は見られなかった。同様に尿比重の変化についても各処置間で差は認められなかった。図33を参照。
【0191】
平均の尿中のナトリウム濃度については各試験で差は認められなかった(G30、K5、K10及びK20でそれぞれ54.73±34.53mEq/L、60.34±38.44mEq/L、53.31±32.56mEq/L、60.99±35.99mEq/L)。全ナトリウム排出量(尿量×尿中のナトリウム濃度)は各試験間で差は認められなかった(G30=20.61±10.12mEq、K5=24.66±12.86mEq、K10=21.65±10.28mEq、K20=24.97±12.49mEq)。
【0192】
平均の尿中のカリウム濃度は、K20(56.59±33.43mEq/L)による試験でG30(49.79±32.87mEq/L)、K5(47.24±36.11)、及びK10(46.87±28.96)と比較して有意に高かった。G30、K5、及びK10では互いに差は見られなかった。図34を参照。
【0193】
脱水期間における感覚的性質の評価から求めた全体の許容度に関しては各飲料間で差は見られなかった。図35を参照。
【0194】
以上、本発明を特定の好ましい組成及び特定の個別の方法に関して説明したが、当業者には自明の他の実施形態も本発明の範囲に包含されるものである。したがって本発明の範囲は特許請求の範囲によって定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】図1は、異なる配合を運動中に摂取した場合の、塩味の全体の許容度及び好みに関する各配合の嗜好スコアを示す図。
【図2】図2は、異なる配合について、随意の飲水特性、知覚性、水分補給特性、ならびに自発的水分摂取性を求めるために使用した実験手法を示す図。
【図3】図3は、異なる配合のそれぞれについて全水分摂取量を示す図。
【図4】図4は、各配合について尿量をプロットすることによって尿損失の傾向を示す図。
【図5】図5は、各配合が投与された被験者の初期体重に対する脱水率を示す図。
【図6】図6は、運動中及び座った状態での塩味強度の評価と知覚される理想的な塩味を示す図。
【図7】図7は、異なる配合について運動中及び座った状態での塩味の全体の許容度及び好みに関する嗜好スコアを示す図。
【図8】図8は、運動による脱水後、全発汗損失を補充してから3時間後までの水分保持量を求めるために用いた実験プロトコルを示す図。
【図9】図9は、異なる配合について回復期の累積尿損失を経時的に示す図。
【図10】図10は、異なる配合について、回復期に摂取された飲料の量のパーセントとして水分保持率を示す図。
【図11】図11は、運動による脱水後、全発汗損失を補充してから3時間後までの水分保持量を求めるために用いた実験プロトコルを示す図。
【図12】図12は、異なる配合について回復期の累積尿損失を経時的に示す図。
【図13】図13は、異なる配合について、回復期に摂取された飲料の量のパーセントとして水分保持率を示す図。
【図14】図14は、異なる配合について血漿量の経時的変化を示す図。
【図15】図15は、異なる配合について、回復期に摂取された飲料の量のパーセントとして水分保持率を示す図。
【図16】図16は、異なる配合について回復期の尿産生量を経時的に示す図。
【図17】図17は、異なる配合について、運動前と回復期の尿浸透圧を示す図。
【図18】図18は、異なる配合について尿中のナトリウム損失を経時的に示す図。
【図19】図19は、異なる配合について尿中のカリウム損失を経時的に示す図。
【図20】図20は、異なる配合について尿の比重を経時的に示す図。
【図21】図21は、運動による脱水後、全発汗損失を補充してから3時間後までの水分保持量を求めるために用いた実験プロトコルを示す図。
【図22】図22は、異なる配合について水分保持率を経時的に示す図。
【図23】図23は、異なる配合について累積尿損失(g)を経時的に示す図。
【図24】図24は、水分保持率の測定に先立つ水分補給期における異なる配合の全体の許容度を示す図。
【図25】図25は、水分保持率の測定に先立つ水分補給期における異なる配合の酸味スコアを示す図。
【図26】図26は、水分保持率の測定に先立つ水分補給期における異なる配合の知覚された塩味を示す図。
【図27】図27は、異なる配合について回復期に摂取された飲料の量のパーセンテージとしての水分保持率、ならびに水分保持率の履歴範囲を示す図。
【図28】図28は、異なる配合について(運動前及び回復時の)尿浸透圧を経時的に示す図。
【図29】図29は、異なる配合について回復期の尿中のナトリウム濃度を示す図。
【図30】図30は、異なる配合について(運動の前後及び回復時の)尿の比重を経時的に示す図。
【図31】図31は、異なる配合について回復期の終了時の全水分保持率を示す図。
【図32】図32は、異なる配合について(運動前及び回復時の)尿浸透圧を経時的に示す図。
【図33】図33は、異なる配合について(運動の前後及び回復時の)尿の比重を経時的に示す図。
【図34】図34は、異なる配合について回復期の尿中のカリウム濃度を示す図。
【図35】図35は、異なる配合について知覚性評価からからの全体の許容度を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分、炭水化物、及び電解質を補充する改良された水分補給飲料に関する。本飲料は新規なミネラル配合を有し、高い自発的水分摂取性、水分保持力を有することによって水分補給を促すものである。本飲料の組成の内、液体以外の成分は飲料以外の形態で補給することが可能である。
【背景技術】
【0002】
運動や激しい活動で失われた水分を補給する目的で使用される、飲料ならびに使用者によって飲用可能な形態に調製される濃縮飲料組成物(液体、粉末、錠剤型の濃縮物)が現在、多く流通している。こうした水分補給飲料(スポーツドリンクとも呼ばれる)は、直ぐに飲める形態のものであっても、使用者が飲用可能に調製する形態のものであっても、いずれも運動前、運動中、または運動後に摂取することができるものである。これらのスポーツドリンクはただの水と比較して効率的に水分補給が行えるものの、自発的水分摂取性や水分保持力といった水分補給に関する多くの側面において優れた性能を有する水分補給飲料が依然求められている。
【0003】
水分補給を行うには多くの方法がある。最も基本的なものとして、やはり水は、発汗により失われた水分の一部を補充し、体温や重要な心血管機能の維持を図ることができるものである。スポーツドリンクが開発されたことにより、発汗によって失われる水分や電解質を補充することができるようになった。スポーツドリンクはただの水と比較して、汗で失われるミネラルの一部を補充できるばかりでなく、エネルギー源として炭水化物の補充も可能である点で優れている。しかしながらこうした飲料が更に、水分保持力が高く、尿からの水分損失を低減し、自発的吸収を促進し、知覚的にも優れ、生理的応答を促すことで継続的摂取を可能とするようなものであるならば、水分補給を更に効果的に行うことができよう。
【0004】
従来のスポーツドリンクには一般的に、水、少量のミネラル/電解質、及び炭水化物化合物としてのエネルギー源が含まれている。ナトリウムやカリウムなどの電解質を添加することの科学的な根拠は、汗で失われる電解質の一部を補充することは理にかなっているであろうという直観的にもわかりやすい概念に基づいたものであった。自発的水分摂取の促進や水分保持の促進といった問題は副次的な問題として考慮されていたか、あるいはまったく考慮されていなかった。
【0005】
更にスポーツドリンクのミネラル含量は製品によって大きく異なる。例えば、5mEq/Lのナトリウムを含む飲料もあればその4倍の量を含む飲料もある。同様に、カリウム、マグネシウム、塩化物などの他のミネラルの含量も大きく異なる。
【0006】
水分補給飲料中のナトリウム含量が運動後の水分保持に大きく影響することを示す研究もある。この研究は基本的に、40〜100mEq/Lのナトリウムを含有する基準量の溶液を被験者が摂取した場合、水分保持力が向上し正の体液平衡が維持されることによって水分補給が促されることを示したものである。しかしながら、大量のナトリウムを含有した水分補給飲料の嗜好性については考慮はなされていない(非特許文献1−3)。これらの文献をここに参照して援用する。
【0007】
顕著な脱水後の水分補給は様々な生理学的変化によって促進される。自発的水分摂取を促す2つの主要な生理学的促進因子は、血漿浸透圧と血漿量である。運動中、発汗による水分の損失によって血漿量が低下し、血漿浸透圧が上昇する。これらの生理学的変化によって口渇感がもたらされ、自発的水分摂取が促される。科学的実験によって血漿量及び血漿浸透圧の調節にはナトリウムも重要な役割を担っていることが示された。ナトリウムを含有する飲料を摂取することにより、血漿量及び血漿浸透圧が正常値に戻る速度が増大する。しかしながら、高すぎる濃度のナトリウムを摂取すると血漿量が急速に回復し、このため飲水反応が低下して適当な水分補給が妨げられる。更に、ナトリウム濃度が高すぎる飲料の知覚的性質は好ましいものとはいえず、飲水衝動を更に低下させるものである。(非特許文献4)本文献をここに参照して援用する。
【0008】
更に、他の電解質やミネラルも恐らくは水分補充ならびに水分保持に影響を及ぼすことによって水分補給の重要な役割を担っていると考えられる。脱水時に水分が失われると、細胞外区画と細胞内区画で水分欠乏量が分割されるように各体液区画間で水が分配される。これらの体液区画の充填に関与する重要な電解質/ミネラルとしてナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及び塩化物があるが、特にナトリウム、塩化物、カリウム及びマグネシウムが重要である。ナトリウム及び塩化物を供給する飲料が細胞外区画の充填を促進するのに対して、カリウム、マグネシウム及びカルシウムを供給する飲料は細胞内区画の充填を促進する。ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及び塩化物の濃度を適宜調整することによってこうした飲料の水分補給性能が更に向上する。
【0009】
これらの電解質イオンの働きによって体液区画はより迅速に充填され、水分は尿として排出されるかわりに体内に保持される。ナトリウム及び塩化物イオンはいずれも細胞外区画の充填を促すため、これらの一方を他方で置換しても全体の結果には影響はない。細胞内水分補給に関し、カリウムとマグネシウムについても同様のことがいえるかもしれない。
【0010】
ここに援用するフレグリー等(Fregly)に付与された特許文献1には、水、糖、及び電解質を含む飲料であって、更にグリセロール、ピルビン酸塩、及び/またはカフェインを含むことを改良点とする飲料が開示されている。当該特許が請求する飲料に含有される糖としては、グルコース、スクロースや他の適当な糖化合物が挙げられ、グルコースの濃度として、約2%〜約8%の範囲が特に開示され、約4%のグルコース濃度が好ましいとされている。当該特許に開示される電解質の例としては、15〜30mEq/Lのナトリウム、1〜5mEq/Lのカリウム、2〜8mEq/Lのリン酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、塩化物、カルシウム及びマグネシウムが挙げられている。
【0011】
上記に開示された飲料は労作や高温による生理学的悪影響を軽減するものであるとしている。本発明もやはり労作による生理学的悪影響の問題の解決を図ったものであるが、刺激物質や急性作用(例、グリセロールやピルビン酸塩による消化管障害)及び未知の長期的作用を有する可能性がある他の化合物は使用することなくこの問題の解決を図っている。
【特許文献1】米国特許第4,981,687号明細書
【非特許文献1】Nadel E., Mack G., and Takamata, A., Thermoregulation, Exercise, and Thirst; Interrelationships in Humans. In Perspectives in Exercise Science and Sports Medicine: Exercise, Heat, and Thermoregulation, vol.6, pp.225-251, (Gisolfi, Lamb and Nadel eds., Indianapolis IN, Brown and Benchmark, 1993);
【非特許文献2】Maughan, R. J. and J. B. Leiper, Sodium Intake and Post- Exercise Rehydration in Man, Eur. J. Appl. Physiol. 71: 311-319, (1995);
【非特許文献3】Shirreffs, S. M. and R. J. Maughan, Volume Repletion after Exercise Induced Volume Depletion in Humans: Replacement of Water and Sodium Losses, Am. J. Physiol. 43: F868-F875, (1998).
【非特許文献4】Wemple, Richard D., Morrocco, Tamara S., Mack, Gary W., Influence of Sodium Replacement on Fluid Ingestion Following-Exercised-Induced Dehydration, Int'l J. Sport Nutrition & Exerc. Metabolism 7:1 04-116(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、必要な電解質及びエネルギー源を供給し、一般のスポーツドリンクとほぼ同等もしくはこれよりも優れた感覚刺激性を有するとともに、水分保持力や自発的水分摂取性といった水分補給に関わる幾つかの機構に着目することにより優れた水分補給性能を発揮する水分補給飲料が求められている。更に、脱水症状を緩和し、水分補給を促す方法であって、水分保持や尿による水分損失といった機構に着目した方法が求められている。
【0013】
本発明はこうした要請に応えたものである。本発明の飲料は、水分補給を促し、必要な電解質及びエネルギー源を供給するとともに、他のスポーツドリンクと少なくともほぼ同等の感覚刺激性を有し、水分保持力ならびに自発的水分摂取性に優れたものである。本発明の方法もまた、本発明の組成物の投与によって上記課題を解決するものである。本組成物は経口投与することが可能である。更に本組成物はこれらに限定されるものではないが、液体、ゲル、乾燥粉末、錠剤やカプセルなどの多くの形態で摂取することが可能である。本組成物を濃縮した粉末などを、水や、場合によってはGatorade(登録商標)などのスポーツドリンクのような、電解質及び/または炭水化物を含有する他の液体に加えて本発明の飲料とすることが可能である。
【0014】
本発明の実施例2に示されるように、本発明の一実施形態を運動中に摂取した場合、尿損失が低減されることによって脱水症状が緩和され、水分保持力が向上する。実施例3〜7では更に、本発明が脱水症状を軽減し、水分保持力を向上させ、尿による水分損失を減少させるばかりでなく、運動による水分損失後に摂取される場合に自発的な水分摂取を促す優れた知覚的性質を有するものであることが示される。本発明の飲料を運動による水分損失の前に摂取することによっても同様の結果が得られるものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、経口摂取用の飲料組成物であって、約4質量%〜約10質量%の炭水化物と、少なくとも約30mEq/L(飲料)のナトリウムと、少なくとも約7mEq/L(飲料)のカリウムと、約10〜約20mEq/L(飲料)の塩化物と、必要に応じて約0%〜約0.4%の香料と、必要に応じて約0〜約100ppmの不透明化剤(clouding agent)と、必要に応じて約0.24質量%〜約0.38質量%のクエン酸と、通常残部を構成する水とからなる。更に、飲料の約40〜約78mEq/Lの濃度で細胞外液に多く含まれるイオン(特にナトリウム及び塩化物イオン)の2種以上を含有していても良い。これらの量は最終的に調製される完全な飲料の全量に対する量である。完全な飲料とは、上記に述べたようにその全体が調合されたものでもよく、あるいは、添加物が添加された液体によってその成分の一部または全体を与えることによって調製したものでもよい点は了承されるであろう。この場合の液体とは、水、または飲料の最終製品を調製するうえで適当な成分を予め含有した水のことである。後者の場合、液体に添加される添加物は、添加物と液体とが混合されて完全な飲料となった際に飲料が最終的な組成を有するように必要な成分を有するものである。
【0016】
本発明の飲料の浸透圧(osmolality)は、約250〜約350mOsm/kgの範囲である。飲料は更に約1〜約6mEq/Lのカルシウムと、必要に応じて約1〜約6mEq/Lのマグネシウムを含有してもよい。
【0017】
本発明は更に、消費者が自分で調製することで上述の飲料となるように調合された飲料濃縮物に関する。本濃縮物はこれらに限定されるものではないが、ゲル、乾燥粉末、錠剤、カプセル及び液体濃縮物など異なる形態をとりうる。本濃縮物を、水や、水と炭水化物及び/または電解質からなる例えばGatoradeのような他の液体に添加することが可能である。濃縮物は経口投与、静脈内投与や他の適当な手段によって投与することが可能である。
【0018】
以下の図面を参照することによって本発明の利点を理解するうえでの一助となろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の飲料は、水分保持力を高め、尿による水分損失を低減することにより優れた水分補給効果をもたらすものである。更に、本飲料は自発的な水分摂取を促すことによっても水分補給効果を高めるものである。更に本飲料は、他のスポーツドリンクと比較して少なくとも同等の好ましい感覚刺激的すなわち知覚的性質を有する。
【0020】
本発明の飲料は、飲料の知覚的性質を損なうことなく最大の水分補給効果を得るべく、ナトリウム濃度が最適化され、一般的に塩化物及びカリウム濃度も最適化されたものである。更に、カリウム、マグネシウム及び塩化物を特に好ましい濃度で含有することにより飲料の嗜好性を変化させることなく更なる水分補給効果を得ることができる。更に、細胞外液に多く含まれるイオンの2種以上を約20〜78mEq/Lの濃度で含有することにより、水分補給効果ならびに知覚的性質が向上する。
【0021】
上記に述べた効果は多くの実験によって実証されたものである。配合の異なる飲料を用い、異なる知覚的性質について試験を行った。更にこれらの配合で、自発的水分摂取の促進、水分保持率の増大、及び尿損失の減少といった機構の面から水分補給能についての試験も行った。本飲料の味覚特性を検討すべく、休息状態の50名の運動選手を被験者として最初の実験を行った。試験を行った実験的配合のうち、好ましいものはナトリウム含量が30mEq/Lのものであり、米国内で販売されている主要なスポーツドリンクと同等の極めて高い嗜好評価(hedonic ratings)を得た。
【0022】
この配合の自発的水分摂取の促進効果についても実証された。50名の運動選手を被験者として実験を行い、所定の運動を行わせ、その間に随意に飲料を摂取させた。この配合は、ナトリウム濃度の異なる本飲料用の他の配合と比較して自発的水分摂取の点で指向的により好まれる傾向にあった。「塩気のある」飲料が休息時と比較して運動中及び運動後により摂取しやすい傾向にあることが別の知見として明らかとなった。この配合によって脱水症状が更に軽減されることも示された。
【0023】
水分保持ならびに尿損失効果について別の試験を行った。被験者を所定時間運動させ、体重が2.5〜3.0%減少するような脱水症状下においた。運動により脱水症状とした被験者に、配合の異なる本飲料を、発汗によって失われた水分を補充するだけの充分な量摂取させた。実験の結果、ナトリウム濃度が30mEq/Lである実験的配合で水分保持力が極めて高いことが示された。同様にこの配合では、他の実験的配合と比較して尿として失われる水分量が低減することが示された。更に、この配合では嗜好評価が指向的に高くなる傾向がみられた。この配合はナトリウム濃度が18mEq/Lである別の配合と同程度に好まれる傾向にあったが、甘さ、風味、酸味、塩味及び全体の許容度において、ナトリウム濃度の異なる他のすべての実験的配合と比較して指向的により好まれる傾向がみられた。
【0024】
同様の目的で2つの実験を同様の方法で更に行った。ナトリウム濃度が30mEq/Lである実験的配合はそのままとした。この配合を異なる実験的配合と比較した。更に血液と尿の化学的分析を行った。ナトリウム濃度が30mEq/Lである実験的配合は、次の点で高い水分補給性能を示した。すなわち、尿による水分損失が低下し、水分保持率が向上し、全体の体重変化が大きかった。
【0025】
更に、所定濃度のナトリウムと塩化物の組み合わせを用いて同様の方法で2つの実験をおこなって水分補給性能への影響を調べた。これらのうち、第1の実験では、ナトリウム濃度が30mEq/Lである上述の配合と、ナトリウム濃度が18及び25mEq/Lである実験的配合とを比較した。ナトリウム濃度が25mEq/Lである配合には、所定量の塩化物を添加した。この場合、細胞外液に多く含まれるこれらのイオンの全体の濃度が、ナトリウム濃度が30または18mEq/Lである配合のいずれよりも大幅に高くなるような量の塩化物を添加した(実施例6の表を参照)。ナトリウム濃度が25mEq/Lである配合は、他の2つの配合と比較して高い水分保持力を示した。
【0026】
第2の実験では、ナトリウム濃度が30mEq/Lである配合とナトリウム濃度が25mEq/Lである配合とを比較したが、この実験ではナトリウムと塩化物の全体濃度が2つの配合間でより近い値となるようにした(実施例7の表を参照)。実験の結果、2つの配合間で水分保持力の差は見られなかったが、ナトリウム濃度が25mEq/Lである配合では、ナトリウム濃度が30mEq/Lであるが塩化物濃度はより低い配合に対して、知覚的性質の評価が初期の段階で低かった。
【0027】
本発明の飲料は、通常約4質量%〜約10質量%、好ましくは約5.5質量%〜約6.5質量%、より好ましくは約6質量%の炭水化物源を含有する。炭水化物源としては、これらに限定されるものではないが、スクロース、マルトース、マルトデキストリン、グルコース、ガラクトース、トレハロース、フルクトース、フルクト−オリゴ糖、ベータグルカン、及びピルビン酸塩や乳酸塩などの三炭糖が挙げられる。これらのうちの少なくとも3種類の混合物が好ましく、その場合、フルクトースの量はすべての炭水化物源のグルコースの全量よりも少ないことが好ましい。炭水化物の好ましい組成としては、全体で炭水化物が6%となるような約1%〜約5%のスクロース、約1%〜約2.5%のグルコース、及び約0.8%〜約1.8%のフルクトース、より好ましくは全体で炭水化物が6%となるような約2%〜約4%のスクロース、約1.4%〜約2%のグルコース、及び約1.1%〜約1.5%のフルクトースからなる組成である。
【0028】
本発明の飲料のナトリウム含量は、少なくとも30mEq/L(飲料)であり、好ましくは約30〜約100mEq/L(飲料)であり、より好ましくは約30〜約60mEq/L(飲料)であり、さらにより好ましくは約33〜約40mEq/Lである。このナトリウム濃度は、炭水化物源、(知られる範囲の)香料及び不透明化剤に含まれるナトリウムを含む、飲料中に存在するナトリウムの全量を示すものである。例えば炭水化物源としてのマルトデキストリンにはナトリウムが含まれる場合がある。しかしながらこれらのナトリウム源のみでは飲料のナトリウム濃度を必要な濃度にまで高めることはできず、したがって別のナトリウムイオン源から更なるナトリウムを添加する必要がある。
【0029】
本発明では、当業者にはその有用性が周知であるナトリウム源のいずれを用いることも可能である。有用なナトリウム源の例としては、これらに限定されるものではないが、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及びこれらの混合物が挙げられる。塩化ナトリウムとクエン酸ナトリウムの混合物が好ましいが、約10〜約50mEq/L、好ましくは約10〜約30mEq/L、より好ましくは約10〜約20mEq/Lのナトリウムが塩化ナトリウムから、約10〜約50mEq/L、好ましくは約10〜約30mEq/L、より好ましくは約10〜約20mEq/Lのナトリウムがクエン酸ナトリウムから得られることが好ましい。
【0030】
本発明の飲料は更に塩化物を含有する。塩化物イオンは当業者に周知の異なる塩化物イオン源から得ることができる。塩化物イオン源の例としては、これらに限定されるものではないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム及びこれらの混合物が挙げられる。塩化物の濃度としては、少なくとも約10mEq/L、好ましくは約10〜約20mEq/L、より好ましくは約11〜約18mEq/Lの塩化物が塩化ナトリウムから得られることが望ましい。
【0031】
更に本発明の飲料は2種以上の細胞外液に多く存在するイオンを含むことが好ましく、その場合、これらのイオンの総量は約40〜約78mEq/Lであることが好ましい。この範囲は、約42〜約70mEq/Lまたは約46〜約60mEq/Lであってもよい。細胞外体液区画に選択的に存在するイオンとしてはナトリウムイオン及び塩化物イオンがある。
【0032】
本発明の飲料は更にカリウムを含有する。カリウムイオン源としては、当業者には本発明における有用性が認識される多くのカリウムイオン源を用いることが可能である。本発明において有用であるカリウム源の例としては、これらに限定されるものではないが、モノリン酸カリウム、ジリン酸カリウム、塩化カリウム、及びこれらの混合物が挙げられ、このうち第一リン酸カリウムが好ましい。カリウムの含量は、少なくとも8mEq/L、好ましくは約8〜約20mEq/L、より好ましくは約10〜約19mEq/Lである。
【0033】
本発明の飲料は更にマグネシウムを含有することが好ましい。マグネシウムイオン源としては、やはり当業者には周知の多くのマグネシウムイオン源を用いることが可能である。マグネシウムイオン源の例としてはこれらに限定されるものではないが、酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ジリン酸マグネシウム、トリリン酸マグネシウム、アミノ酸の形態で含まれるマグネシウム、及びこれらの混合物が挙げられ、これらのうち酸化マグネシウムが好ましい。マグネシウムの濃度は、少なくとも0.1mEq/L、好ましくは約0.5〜約6mEq/L、より好ましくは1〜3mEq/Lである。
【0034】
本発明の飲料は更にカルシウムを含有することが好ましい。カルシウムムイオン源としては、当業者には周知の多くのカルシウムイオン源を用いることが可能である。その例としてはこれらに限定されるものではないが、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム塩、クエン酸カルシウム及びこれらの混合物が挙げられ、これらのうち乳酸カルシウムが好ましい。カルシウムの濃度は、少なくとも0.1mEq/L、好ましくは約0.5〜約6mEq/L、より好ましくは1〜3mEq/Lである。
【0035】
本発明の飲料に香料を使用することも可能である。本発明の飲料に使用する香料は飲料の全体の許容度にも影響するものである。この全体の許容度を達成するためには飲料の風味が強すぎてはならない。云うまでもなく、飲料の風味の強さは使用される特定の香料の量や種類によって決まるものである。更に、異なる製造業者から提供される同種の香料は風味の強さが異なる場合がある。したがって、本発明で必要な香料の濃度を決定することは困難である。しかしながら、本発明における香料の濃度は、約0質量%〜約0.400質量%であれば有用であることが一般的に示されている。更に、香料はそれ自体がアラビアガム、エステルガムや、デキストリン、「加工食用デンプン」などのデンプン、プロピレングリコールやアルコールなどを含んでいる場合がある。これらの更なる成分は担体や安定化剤として作用する場合がある。
【0036】
更に本発明では、上記の基準を満たし当業者にはその有用性が周知である香料であればそのいずれも用いることができる。特に有用な香料の例としては、これらに限定されるものではないが、レモンライム、オレンジ、及びフルーツパンチが挙げられる。例としてレモンライム香料は約0.050質量%〜約0.200質量%、好ましくは約0.080質量%〜約0.150質量%、更に好ましくは約0.090質量%〜約0.120質量%の範囲の濃度で使用することができる。
【0037】
本発明の飲料は所定の浸透圧を有するように調合される。この浸透圧は、飲料が最初に調合された時点で約220〜約350mOsm/Kg(飲料)の範囲であり、好ましくは約250〜約330mOsm/Kg(飲料)、より好ましくは約260〜約320mOsm/Kg(飲料)の範囲である。本発明の飲料は調製時には等張である。「等張」なる用語の科学的かつ厳密な定義は、別の溶液、一般にヒトの血液と同じもしくはほぼ同じ浸透圧を有する溶液である。本発明の飲料は調製時には「等張」なる用語の厳密な定義にしたがって等張であるかもしれないが、ここで云う「等張」なる用語はそのような狭い意味で用いられていない。本明細書では「等張」なる用語を、本発明の飲料が所定量の炭水化物及び電解質を含有したスポーツタイプの飲料であるという意味合いで用いている。
【0038】
本発明の飲料は、更に不透明化剤を約0〜約100ppmの範囲の濃度で含有してもよい。不透明化剤の例としては、これらに限定されるものではないが、エステルガム、SAIB、デンプン成分及びこれらの混合物を挙げることができる。これらのうちエステルガムが好ましく、その濃度は約10〜約50ppm、より好ましくは約15〜約35ppmの範囲である。
【0039】
本発明の飲料は更に約0.24質量%〜約0.45質量%の濃度のクエン酸を含有してもよい。クエン酸はpHを低下させ、本飲料を高酸性飲料とする作用を有する。高酸性飲料は低酸性飲料と比較して低温殺菌にそれほど過酷な条件を必要としない。本発明の飲料は好ましくは約2.5〜約4.5のpH、より好ましくは約2.75〜約4.25のpH、更に好ましくは約2.9〜約4.0のpHを有する。クエン酸は更に飲料に酸味を与える。
【0040】
本発明は更に、上記に述べた本発明の飲料を調製するための飲料濃縮物に関するものである。本明細書で用いる「飲料濃縮物」なる用語は、液体またはゲルの形態で与えられるか、もしくは実質的な乾燥混合物の形態で与えられる濃縮物を指して云うものである。実質的な乾燥混合物とは一般的には粉末であるが、一回使用分の錠剤や他の利便性のよい形態であってもよい。本濃縮物は、水や他の液体と混合もしくはこれらの液体で希釈することによって上記に述べたような最終的かつ完全な飲料となるように配合されたものである。
【0041】
本発明の飲料濃縮物の好ましい一例は、水と混合もしくは水で希釈することによって以下からなる飲料を提供するものである。すなわち、
約4質量%〜約10質量%の炭水化物と、
少なくとも約30mEq/L(飲料)、好ましくは30〜60mEq/L(飲料)のナトリウムと、
少なくとも8mEq/L(飲料)、好ましくは8〜20mEq/L(飲料)のカリウムと、
約10〜約20mEq/L(飲料)の塩化物と、
約0%〜約0.4%の香料と、
約0〜約100ppmの不透明化剤と、
水とからなり、浸透圧が約250〜約350mOsm/Kgである飲料。前記炭水化物は、スクロース、マルトース、マルトデキストリン、グルコース、ガラクトース、トレハロース、フルクトース、フルクト−オリゴ糖、ベータグルカン、及びピルビン酸塩や乳酸塩などの三炭糖から選択され、好ましくはこれらの少なくとも3種の混合物である。フルクトースの量はすべての炭水化物源のグルコースの全量よりも少ないことが好ましい。
【0042】
本発明を更に実施例により以下に述べるが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0043】
所定の配合をG30と呼ぶものとし、この配合と市販のスポーツドリンクで見られる一般的な成分を含んだ4つの他の配合と知覚的性質について比較を行った。G30配合は、6%炭水化物水溶液、30mEq/Lのナトリウム、3mEq/Lのカリウム、約10mEq/Lの塩化物、25ppmの不透明化剤、及び0.103質量%の香料からなる。炭水化物溶液は、3%スクロース、1.7%グルコース及び1.3%フルクトースの混合物を用いて調製した。更に塩化ナトリウムとクエン酸ナトリウムをナトリウムイオン源として用いた。比較用の配合は、第1の配合(G0と呼ぶ)で0mEq/Lのナトリウム含量、第2の配合(G18と呼ぶ)で18mEq/Lのナトリウム含量、第3の配合(G40と呼ぶ)で40mEq/Lのナトリウム含量、第4の配合(G60と呼ぶ)で60mEq/Lのナトリウム含量と、各飲料でナトリウム濃度が異なる点を除き同じ成分を含有するものを用いた。
【0044】
試験のこのフェーズは約50人のトライアスロン選手及びランナーを被験者として行い、テイスティングを知覚性実験室内で休息状態で行った。休息状態では、塩味の好み及び飲料の全体の好みは18mEq/Lが最も高い値を示したが、G18とG30の評価の差は統計的に有意なものではなかった。図1に示されるように、G30配合はG18配合を除くすべての配合よりも高い嗜好評価を示した。
【実施例2】
【0045】
同じ配合を用い、各配合について随意の飲水特性、知覚特性、水分補給特性、及び自発的水分摂取を調べた。50人の被験者でほぼすべての試験項目を行い、被験者プールとして分析に用いた。50人の内、28人は男性(平均年齢39.7±8.0)、22人は女性(平均年齢37.2±9.2)であった。プール全体で週当たりの平均トレーニング時間は11.25±6.8時間(1〜35時間の範囲)であり、年間の参加レースの平均は11.0±8.4回(0〜35回)であった。すべての被験者に以下の食餌及び運動のガイドラインを与えた。すなわち、試験前日に過激な運動を行わない。各トレーニングセッション間で少なくとも丸一日の回復期間をおく。試験当日にはカフェインを摂らない。試験前夜及び当日は高塩分高脂肪の食事は避ける。試験前3時間は食事を摂らない。試験の3時間前に水1リットルを飲む。試験前に排尿を済ませておく。
【0046】
被験者はすべて、実験への参加に先立ちこの食餌/運動ガイドラインにしたがて摂食、運動を行わせた。実験前の水分補給を確実に行うため、各被験者に水1リットルを与え、実験プロトコルの開始1.5〜2時間前までに摂取を完了させた。実験のプロトコルでは、高温環境下(80°F(27℃)、36%RH、21℃ WBGT)で、年齢から予測した最高心拍数の70〜75%で中程度の有酸素運動を2時間行わせた。被験者にボトル一本当たり約700mlの飲料を与え、2時間の全体を通じて20分毎に新鮮な冷たいボトルを与えた。被験者には運動の終了時点まで飲料を自由摂取させ、運動終了時で飲料の供給を停止した。すべての尿サンプルは20分間の各区分ごと、及び運動セッション終了15分後に採取した。被験者にはプロトコルの間、必要と感じる範囲でできるだけ頻繁に排尿させた。図2に実験手法を示す。
【0047】
図3のチャートに示されるように、飲料の全摂取量はG30で最も高く、G0で最も低かった。しかしながら(製品中の)ナトリウム濃度の影響にはわずかな有意性が見られただけであった(p=0.058)。各飲料間で全体の自発的飲料摂取量には優位な差は見られなかった。これは被験者が運動選手であるために飲料の摂取の仕方に熟練していることに一部起因するものと考えられる。
【0048】
運動後の尿量の結果では、図4に示されるようにナトリウム濃度と尿量の間に反比例する相関が示された。尿量はナトリウム濃度が0〜60mEq/Lへと上昇するにしたがって減少し、G60では他の飲料と比較して運動後15分で最低であった。運動後の尿排出量に関しデータの傾向(傾き)を分析した結果、0とは有意に異なった。すなわち、データに見られる減少傾向は偶然のみによるものではないということが95%の信頼度でいえることになる。全般的には、運動後の尿量と全尿量は各飲料間で同様の値であった。
【0049】
脱水度は各飲料間で同様の値を示した(p=0.354)が、これは各飲料の自発的摂取量がほぼ同じであったことによるものである。図5に示すように、脱水度は、G30で1.06%と指向的に最低であり、G0で1.23%と最高であった。平均で見るとHRとRPEは各飲料間で差は見られなかったが運動時間とともに増大した。
【0050】
飲料の全体の許容度(Overall Acceptance=OA)はG18及びG30で最も高く、他の飲料と比較して有意差が認められた(p<0.05)。G18とG30の飲料はOAに関しては互いに差が見られなかった。塩味の好みについてはG18及びG30で最高の値であり、0、40、及び60mEq/Lの飲料とは有意差が認められた(p<0.05)。G18とG30では塩味の好みに差が見られなかった。更にナトリウム濃度と時間の間には有意な相互作用効果が認められた。塩味の好みはG0及びG18では時間の経過とともに減少したが、G30、G40及びG60では時間とともに増大した。各ナトリウム濃度は異なる味として知覚され(p<0.05)、知覚される塩分強度はナトリウム濃度の上昇とともに増大した。
【0051】
理想的な塩味評価は各飲料で同様であり、39〜43.5mm(0〜100mmのスケール)の範囲であった。これはG18(38±1.5)とG30(47±1.7)の間の塩分濃度に相当する。図6に示されるようにこのデータをプロットすると、知覚される理想的な塩味は24mEq/Lの塩分濃度に相当する。
【0052】
休息状態から運動状態までの全体の許容度ならびに塩味の好みを比較した結果、OAの曲線の低下率はナトリウム濃度の上昇とともに低下した。すなわち、高ナトリウム濃度(30、40、60mEq/L)では運動開始60分後に記録された嗜好スコア(hedonic scores)は休息状態に記録されたスコアと比較して高い値であった。塩味の好み(Liking of saltiness=LOS)についても同様の反応が見られ、曲線のピークは18mEq/L〜30mEq/Lに移動した。これらの結果を図7に示した。
【0053】
運動時では、OA及びLOSの両方について60mEq/Lのナトリウム濃度まで嗜好スコアが「嫌い」の範囲に入ることはなかった。理想の塩味及び知覚される塩味については休息状態と運動状態の間で有意差は認められなかった。運動状態では知覚される塩味に増大方向の変化が認められた。
【0054】
休息及び運動状態での試験から導かれたこれらの結果は、G30における中程度〜高いナトリウム濃度は、高温環境下での比較的強度の高い2時間の運動によって引き起こされる消化管障害や関連する症状にともなうものではないことを示すものである。高度に訓練されたアスリートは、パフォーマンスを維持し水分を保持する目的で嗜好性が最適ではない飲料であっても飲むものと考えられる。G30飲料はG18よりも塩味が強いと感じられたにも関わらず、嗜好の観点からは30mEq/Lのナトリウム濃度は、他の配合のより高いナトリウム濃度または濃度0のいずれと比較してもより好まれ、許容度が高く、指向的に好まれる傾向が見られた。運動時では休息時と比較してより高濃度のナトリウム(30〜60mEq/L)を含有する飲料で許容度が広くなりナトリウムの好みが高くなった。
【実施例3】
【0055】
この実験では、運動によって脱水状態を引き起こした後に発汗による全水分損失を補充し、その後3時間でどの程度の速さで水分が失われ、どの程度の量が保持されるかをG40配合以外のすべての配合を比較して検討した。実験は二重盲検法で行い、各実験群間で各配合を平衡させた。
【0056】
被験者に夕食(試験前夜)、朝食及び昼食として標準的食餌内容を与えた。全カロリー摂取量は2440カロリー及びナトリウム2592mgであった。食事とともに水500mlを与えた。
【0057】
各被験者は試験への参加に先立って食餌内容及び運動内容のガイドラインにしたがわせた。実験前の水分補給として、各被験者に適宜水分を摂取させた。試験に先立ってベースラインとなる尿サンプルの導電度/浸透圧を調べ、試験前の水分補給が確実に行われていることを確認した。尿サンプルが21ミリシーメンス(mS)を上回った被験者は実験対象から除外し、別日程で試験を行った。
【0058】
被験者に高温環境下(80°F(27℃)、40%RH)で中程度の強度のサイクリング運動(または約2.5〜3.0%の体重が減少するだけの運動)を90分間行わせた。運動後に被験者を3.5時間静かに休息させた。回復期の最初の90分間に被験者に運動による脱水で失われた全発汗量の100%に相当する量の飲料を与えた。5時間の全体を通じ、プロトコルにしたがって尿サンプル及び知覚的データを一定間隔で集めた。このプロトコルを図8にまとめた。
【0059】
10人の被験者に4回の試験を行った。運動による脱水の際の平均的体重の損失は1.5時間で2.6±0.6%であった。脱水率には各配合で差は見られなかった。
【0060】
図9に示されるように実験の終了時点で平均の全尿損失は、0、18、30及び60mEq/Lの飲料でそれぞれ0.546、0.430、0.322及び0.287リットルであった。0及び18の飲料と30及び60の飲料では有意差が見られた(p<0.05)。30と60の飲料の間には差は認められなかった。尿損失の差は飲料摂取終了後1時間までは著明ではなかった。飲料摂取終了後2時間(運動後3.5時間)で0、18及び他の飲料間の差は最大となった。平均の飲料摂取量は1.8〜1.95リットルの範囲であったが、各配合間で差は認められなかった。図10に示されるように全発汗損失の100%に相当する量の水分補給後2時間における全水分保持率は、0、18、30及び60mEq/Lの飲料でそれぞれ69%、75%、82%及び83%であった。
【0061】
G30飲料は他の飲料と比較して高い値を指向的に示した。知覚性の評価では、30mEq/Lの飲料はG18と同程度に好まれたが、甘さ、風味、酸味、塩味及び全体の許容度の特性については他のすべての飲料よりも指向的に好まれた。G18とG30の飲料では、知覚される塩味の評価は飲料摂取期を通じて理想的な塩味の評価に極めて近い値を示した。一般的に水分補給期では嗜好スコアは時間の経過とともに低下した(30〜90分)。
【0062】
理想の塩味の評価は実施例2で示された結果(n=50)と一致していたが、若干高い値であった(43〜50に対し40〜42)。多くの場合、G30飲料の知覚される塩味は同飲料の理想の塩味の評価に近いものであった。60分の飲料摂取継続以降では、各飲料の知覚される塩味のレベルは理想値よりも低くなった。知覚される塩味と理想の塩味との差は、コントロールとしてのG18やG30よりもG0及びG60で大きかった。
【0063】
知覚される注意喚起性、エネルギー、消化管アセスメントや満足度では4つの飲料の間で顕著な差は認められなかった。
【0064】
G30配合は多くの嗜好評価でG18よりも指向的に高い値を得、他の飲料と比較して水分補給時の水分保持反応が良好であった。G60配合の最も高いナトリウム濃度は、尿で失われる水分の損失量を低減させるという点ではG30配合と比較して更なる効果は認められなかった。
【0065】
これらの結果によって、G30はG0、G18、G60と比較して次のような利点を有することが示された。すなわち、(1)高温環境下で運動を行う運動選手において指向的に高い嗜好評価を与える。(2)発汗損失の100%に相当する量の水分補給後の尿からの水分損失の低減。
【実施例4】
【0066】
G5配合を加え、G0及びG60配合を除いた以外は実施例3と同様の配合を使用した。G5配合は、ナトリウム濃度が5mEq/Lに調整されている以外は他の配合と同様である。
【0067】
この試験では、運動によって脱水状態を引き起こした後に発汗による全水分損失を補充し、その後3時間でどの程度の速さで水分が失われ、どの程度の量が保持されるかを各配合を比較して検討した。特定の生化学的パラメータを測定して生理学的な変化を調べた。測定したパラメータは、血液に関し、[Na+]、[K+]、[Ca++]、浸透圧、Hb、Hct、ΔPV、グルコース、pHの変化、及び尿に関し、尿量、浸透圧、[Na+]、[K+]、SEC、FWC、クレアチニン及びGFRの変化である。この実験も二重盲検法で行い、各実験群間で各配合を平衡させた。
【0068】
17人(n=17)の男性被験者に、高温環境下(80°F(27℃)、40%RH)で最大心拍数の70%で1.5時間のサイクリング運動を行わせ、体重の2.25±0.61%を脱水させた。被験者には試験前夜、及び試験当日の朝食と昼食に標準的食餌を与えた。全カロリー摂取量は2440カロリーであり全ナトリウム摂取量は2592mgであった。(ガイドラインにしたがって)更なる水を試験開始3時間前までに与えた。
【0069】
実験前の水分補給を確実に行うため、体水分正常状態が確立されるだけの適量の水を各被験者に摂取させた。この水分補給として、試験前夜に少なくとも500mlの水を摂取させ、更に試験当日に1リットルの水を摂取させた。実験に先立って実験前尿サンプルの導電度を調べ、試験前の水分補給が確実に行われていることを確認した。実験開始後最初の尿サンプルの導電度が21mS−cmを上回った被験者は実験から除外し、別日程で試験を行った。実験を通じて繰り返し血液サンプルを採取するため前腕静脈に静脈内留置カテーテルを挿入した。
【0070】
高温環境下(80°F(27℃)、40%RH)で1.5時間サイクリング運動をさせた被験者は、初期体重の2%に近い水分を運動による脱水で失った。事前に高強度トレッドミル試験で求めた最高心拍数の70〜75%に相当する運動強度を与えるような運動負荷を与えた。遠隔心拍モニター(Polar)を使用して10分毎に心拍数を計って充分な運動強度が与えられていることを確認した。
【0071】
1時間経過後、被験者に5分間の休憩を与え、乾燥質量を測定して発汗による水分損失の進行状況を調べた。運動による脱水の終了時点で自転車に乗った状態で回復前の血液サンプルを15cc採取し、更に被験者に排尿させて体重を再び測定し最終的な発汗損失を求めた。残りの回復期間中被験者は横になった姿勢で回復させた。必要に応じ、留置カテーテルが留置された被験者の腕を温熱パッドで巻くことで、脱水状態での血液サンプルの採取が適切に行われるよう血流を確保し、血管の拡張状態を維持した。
【0072】
実験に先だって1Lまたは2Lの容量フラスコ、及び飲料に電解質を与えない飲料グレードの水を用いて飲料を混合した。各飲料は冷蔵庫で冷やしてから被験者に与えた(約40°F(約4.5℃))が、最後の2つの飲料は被験者に与える時点で室温に近くなっていた。
【0073】
30分の回復時間後、被験者に6カップの飲料のうちの最初の1カップを与え、その後10分毎に1カップずつを与えた。飲料の全量は全発汗損失量に等しい量を与え、全量の50%が最初の20分で、残りの50%が残りの40分で10分毎に12.5%づつ被験者に与えられるように分けた。飲料の全量を1時間以内で摂取させた。
【0074】
3.5時間の回復期において30分毎に血液及び尿サンプルを採取した。試験のプロトコル及び手順を図11に示した。
【0075】
全血臨床分析器(Instrumentation Laboratories,Synthesis IL1735)を使用して血中のナトリウム、カリウム、イオン化カルシウム、グルコース、ヘマトクリット、ヘモグロビン、及びpH値を測定した。3mLヘパリン塗布動脈血/ガスシリンジ(Marquest,Gaslyte)に約1mlの全静脈血を採取し、臨床分析器用に特に使用した。動脈血/ガスシリンジは、サンプルの凝固が防止できるのと、臨床分析器へのサンプルの供給が容易に行えることから選択した。
【0076】
血漿量の変化を、ヘマトクリット値とヘモグロビン値の変化を関連づける公知の式(Dill/Costill)を用いて推定した。血漿浸透圧を、FISKE2400型多試料浸透圧計を用い、氷点降下法によって測定した。
【0077】
尿量は質量で求め、尿の導電度は導電計(WTW LF340、型番19706−20)を用いることで直ちに求めた。尿は少量づつに分け、後の[Na+]、[K+]、浸透圧及びクレアチニン値についての分析用に−20°F(−6.7℃)で保存した。尿中の[Na+]、[K+]を、15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、炎光光度法によって求めた(IL943、自動炎光光度計)。尿のクレアチニン値は、シグマ・クレアチニンキット(シグマ・ダイアグノスティクス、No.555)を用い、分光光度計で測定した。尿浸透圧は、凍結したサンプルを室温に解凍した後に浸透圧計を用いて氷点降下法で測定した。
【0078】
データの分析にはコンピュータ統計パッケージ(SPSS、v.10)を用いた。すべての従属測定値について記述統計及び要約表を生成した。反復計測ANOVAを用いて処置の主要効果、及び必要に応じて時間依存的効果について試験した。主要効果が存在する場合、Duncan post hoc試験を用いて平均値間の統計的差を判定した。比較の結果はα値=0.05にて試験した。各配合間での全尿損失の比較を行うために効果量を推定した。
【0079】
途中で病気(実験とは無関係)になり既に2つの試験を終えた時点で実験の中断を余儀なくされた1人の被験者を除き、17人(N=17)の被験者で3つの試験すべてを行った。運動による脱水時の体重の減少率の平均値は、1.5時間で2.25±0.61%であった。脱水期間中の被験者の平均発汗速度は1.2±0.3リットル/時であり、平均で1.7±0.5リットルの発汗量であった。脱水量と発汗量について各配合間で差は認められなかった。
【0080】
回復期間中、全尿損失量は、G5(479±209g)及びG18(408±151g)と比較してG30(298±161g)では有意に低かったが、この効果は時間依存的であった。G30の効果とG5及びG18の効果に差が現れたのは回復期間に入ってから120分経過してからであった(飲料摂取30分後)。図12は回復期間における3つの配合の累積尿損失量を示したものである。全尿損失の効果量の推定値は、0.39(G5に対するG18)、0.97(G5に対するG30)及び0.70(G18に対するG30)であった。
【0081】
回復期間の150分〜210分にかけては水分保持率はG5及びG18と比較してG30で有意に高い値を示した(P<0.05)。回復期間の終了時点(飲料摂取2時間後)での水分保持率は、G5、G18及びG30でそれぞれ72.6%、75.2%及び81.6%であった。図13に試験を行った3つの配合での回復期間における水分保持率を示す。
【0082】
ベースライン体重からの体重変化の絶対値はG18及びG30と比較してG5で有意に大きい値であった(P<0.05)。回復期間中の摂取水分について補正した体重の減少量はそれぞれ0.93、0.80、及び0.74kgであった。
【0083】
血漿の[Na+]、[K+]、[Ca++]またはグルコースに対する処置の影響は見られなかった。更にヘマトクリット値とヘモグロビン値から計算した血漿量の変化(DPV)については3つの配合間で差は認められなかった。3つの配合での血漿量の変化を図14に示す。
【0084】
ANOVA分析の結果、ナトリウム(P<0.001)及び時間(P<0.0001)の主要効果が示され、個別の排出尿量に関してナトリウムと時間との相関が示された。時間とは独立して(各時点のものを合計)、平均の尿量はG5、G18及びG30に対してそれぞれ79.8、68.0及び49.7gであった。
【0085】
尿の導電性はナトリウム濃度と時間によって変化し、ナトリウムと時間との間に相関が見られた(P<0.01)。時間とは独立して(各時点のものを合計)、平均の尿導電性はG5、G18及びG30に対してそれぞれ12.3、12.8及び14.8mS−cmであった。導電性はG5及びG18と比較してG30で有意に高い値を示した。
【0086】
尿中のナトリウム及びカリウム濃度は各飲料のナトリウム濃度による差は見られなかったが、時間による差が認められた。体積について補正した尿中のナトリウム及びカリウムの排出量は各配合間で差は見られなかったが、回復時間による差が認められた。各配合のものを合計すると、平均の[Na+]排出量は回復期間0分目で有意に高い値を示し(7mEq)、飲料摂取期間の30分経過後で4.4mEqに低下し、回復期間の90〜210分にかけて2.2〜2.4mEqの値に維持された。
【0087】
異なる配合の感覚的(味覚的)及び知覚的変化を調べるため、被験者に実験全体を通じ、異なる精神生理学的特性について異なるスケール(例、カテゴリー別、100点満点)で評価を行ってもらった。
【0088】
飲料の全体の許容度については各配合間で有意差は見られなかった。G30飲料では特に1時間の飲料摂取期間の終了時において、全体の許容度、風味の好み、塩味、甘さ、及び後味の評価が有意に低下した。G5及びG18製品の許容度は時間によって低下することはなかった。G5とG18の間で知覚される塩味に差は認められなかったが、G30は4点の評価時間のうち2点(32分と62分)においてより塩味が強いと知覚された。この効果は一定ではなかった。
【0089】
理想の塩味は100点満点のスケールで47〜51点の範囲の一貫した値であるが飲料摂取による処置によって理想の塩味に影響は認められなかった。知覚される塩味はG5及びG30では理想の塩味の評価との差は見られなかったが、G18では32分と62分において理想よりも塩味がかなり弱いという評価であった。ここでもやはり効果は時間によって一定ではなかった。
【0090】
知覚される生理学的または心理学的な満足度については各配合間で差は見られなかった。知覚されるエネルギー、注意喚起性、及び満足感は各配合間で同様の値であったが、実験のプロトコルと一致して時間の経過とともに変化した。実験の終了時点でG30製品ではG5及びG18と比較して空腹感の評価が有意に低くなった。知覚される消化管ストレス(膨満感、満腹感、吐き気、催尿感)の評価のいずれに対しても処置による他の影響は認められなかった。
【0091】
各製品間で知覚される口渇感については差が認められなかったが、G18製品を摂取した被験者ではG5またはG30を摂取した被験者と比較して高い口渇感が指向的に見られた。
【実施例5】
【0092】
実施例4と同様の目的でG30配合を、水(W)、市販製品であるPOWERade(登録商標)(P)、及びナトリウム濃度が18mEq/Lに調整してある点を除いてG30配合と同じG18配合と比較した。具体的な電解質配合を下記に示す。
【0093】
飲料の温度は41〜45°F(5.0℃〜7.2℃)で維持し、その温度で被験者に与えた。各飲料は被験者及び実験者のいずれも区別がつかないようにした。
【0094】
被験者として普段からトレーニングを行っている男性を採用した(25〜50歳)。17人が双方の試験を最後まで行った。試験後に3時間の絶食期間(飲料、食物について)をおいた。
【0095】
クロストレーナー、ステーショナリーバイク、トレッドミルについて被験者の最大心拍数(毎年のストレス試験で測定)の70〜75%の強度となるような運動負荷を設定した。更にこのオリエンテーション運動セッションの前後で体重を計って発汗速度を予測した。
【0096】
被験者には標準化した食事を与えて2つの試験に先立ってナトリウム摂取量が一定となるようにした(〜2900mg)。食事として、夕食(試験前夜)及び試験当日の朝食と昼食を与えた。被験者は与えられた食物をすべて食べなくともよいが、食べ残した品目と食べ残した量を記録してもらった。これらの品目は次の試験ではフードバッグから除外した。更に被験者にボトルに入った飲料水を試験前夜(500ml)及び試験当日(1000ml)に与えて水分補給を行った。実験の24時間前から被験者にはカフェイン及びアルコールの摂取を控えさせた。ほとんどの被験者が与えられた食物をすべて食べたが、摂取量は2109〜2278kcal、ナトリウム摂取量は2849〜2960mgの範囲で異なった。被験者はすべて与えられた食物だけを食べた。
【0097】
運動セッションは、最大心拍数の75〜80%でクロストレーナー、ステーショナリーバイク、及びトレッドミルで30分間づつ、合計90分間行った。15分間隔で心拍数を計って被験者が適当な運動強度を維持していることを確認した。被験者には運動時間の全体を通じて水分の摂取は控えさせ、2〜2.5%を脱水させた。
【0098】
運動後、被験者の体重を測定し、運動後の尿サンプルを採取した後、3.5時間の回復時間を与えた。回復時間に入って30分の時点で全発汗損失量(運動前の体重から運動後の体重を差し引いて求めた)の25%に相当する量の最初の飲料を与えた。回復時間に入って40分の時点で次の飲料(損失量の25%)を与えた。50分の時点で発汗損失の12.5%に相当する第3の分量を与えた。58分の時点でGIスケールによって消化管反応を評価し、尿サンプルを採取した。次いで被験者に第4の分量(12.5%)を与えた。70分で第5の分量(12.5%)を与え、80分で第6の最後の分量(12.5%)を与えた。感覚的性質に関する質問票を一定間隔で記入してもらった。90、120、180及び240分にGIスケールを与えて尿サンプルを採取した。最後の尿サンプル採取後に最終的な体重を測定した。
【0099】
尿量を重さで求め、尿の比重を測定した(A300臨床屈折計)。更なる分析用に尿を4mlの冷凍容器に移した。尿中の[Na+]、[K+]を、15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、炎光光度法によって求めた(IL943、自動炎光光度計)。各サンプルの浸透圧を測定した(Fiske2400浸透圧計)。
【0100】
SPSSバージョン10.0を使用してデータを分析した。一般的線形モデルを用いたANOVAによって平均値間の差を求めた。データを平均値±標準偏差として表した。
【0101】
90分間の運動セッションによって各配合で同様の脱水率が見られた(W、P、G18、及びG30に対してそれぞれ2.67±0.63%、2.71±0.64%、2.61±0.43%及び2.61±0.54%)。各配合間で発汗速度もほぼ同じ値であった(W、P、G18、及びG30に対してそれぞれ1.34±0.40L/hr、1.36±0.38L/hr、1.25±0.28L/hr及び1.30±0.33L/hr)。
【0102】
各配合での全飲料摂取量はやはり各試験間で同様の値であった(Wで2.01±0.60L、Pで2.03±0.57L、G18で1.88±0.41L、及びG30で1.95±0.50)。発汗速度にある程度の変動があることと全発汗損失の100%を補充するというプロトコルのために摂取量の平均値には若干の変動が見られた。
【0103】
初期体重に対する最終的な体重の割合は各配合間で異なった。水を与えた場合では被験者の体重は初期体重の98.45±0.29%に回復したがこれは他の3つの配合と比較すると大幅に低い値であった。POWERade(98.72±0.37%)とG18(98.87±0.28%)の間に差は見られなかった。G18とG30(98.97±0.39%)の間にも差は認められなかった。G30と水及びPOWERadeとの間には有意差が認められた。
【0104】
全累積水分排出量は各配合間で大幅に異なった。Wでは、他の3つの配合と比較して尿損失は有意に大きかった(0.726±0.225L)。P及びG18はそれぞれ0.496±0.184L、0.428±0.196Lと互いに有意差は認められなかった。G30はW及びPとの間には差が認められたが、G18(0.367±0.263L)との間には差が見られなかった。各データ収集時点における尿排出量は、60、90及び120分の時点については各配合間で有意差は認められなかった。しかし180分の時点ではWで他の3つの配合と比較して大きな尿損失が認められた。更に、240分の時点ではW及びPでG18及びG30と比較して大きな尿損失が認められた(表1を参照。各時点で収集されたデータの値をミリリットルで示してある)。
【表1】
【0105】
水分保持量、すなわち摂取された水分のうち尿として排出されなかった水分の量は、各配合間で異なった。水分保持量は相対的な量(ml/kg)及び(摂取量−排出量)/排出量で表される割合として求めた。Wの相対的水分保持量は17.07±5.22ml/kgであり、他の配合と比較して有意に小さかった。P、G18及びG30ではそれぞれ20.43±6.50ml/kg、19.48±4.83ml/kg及び21.26±4.83ml/kgであった。水分保持率は各配合間で異なり(Wで62.94±9.05%、Pで74.25±11.15%、G18で76.52±10.32%、及びG30で81.45±10.34%)、Wでは180及び240分の時点でP、G18及びG30と比較して有意に低かった。水分保持量は回復期間の終了時点(240分)ではW及びPと比較してG30で有意に大きかった。G18とPまたはG30との間には差は認められなかった。図15を参照。
【0106】
回復期間中に排出された尿量は各配合間で異なった。図16に示すようにW(x=134.97ml)と、P(x=98.99ml)、G18(x=91.64ml)またはG30(x=86.38ml)との間には有意差が認められた(尿量はより多かった)。G30では、W及びPと比較して尿量は有意に低い値であった。G18とPまたはG30との間には差は認められなかった。図16を参照。
【0107】
平均の尿浸透圧は各配合間で異なった。Wでは尿浸透圧は最も低く(348.33mOsm)、P(400.66mOsm)との間に差は認められなかったが、G18(431.74mOsm)及びG30(500.42mOsm)との間には有意差が認められた。G18とPまたはG30との間に差は見られなかった。PはG30よりも有意に低かった。図17を参照。
【0108】
平均の尿中のナトリウム濃度は、G30による試験(65.19±45.68mEq/L)で他の試験(W=49.73±39.78、P=50.14±41.93、G18=52.48±40.44)と比較して有意に高かった。他の試験では互いに差は認められなかった。図18を参照。
【0109】
G30による試験では、他の試験(W=39.67±38.15、P=41.82±40.42、G18=41.58±33.97mEq/L)と比較してカリウム損失は有意に高い値を示した(52.25±36.56mEq/L)。他の試験では互いに差は認められなかった。図19を参照。
【0110】
被験者は充分に水分補給がなされた状態で各運動セッションに臨んだ(USG=1.008±0.005)。尿の比重は運動前では各配合間で差は見られなかった。Wによる処置における平均のUSG値は、120分ではPよりも有意に低い値であった。更に、Wは180分ではG18及びG30よりも低い値であった。PのUSG値は、180分及び240分でG30よりも有意に低かった。G18とPではすべての時点で互いに差は見られなかった。図20を参照。
【0111】
急性ナトリウムバランスの推定値を表IIに示す。
【表2】
【0112】
尿中のタンパク質を試薬片(Uristix)によって測定して脱水症状がタンパク質の排出に影響を及ぼすかを調べた。表IIIは4つの配合のそれぞれについて各時点で尿中に検出されたタンパク質の頻度及び量を示すチャートである。
【表3】
【0113】
感覚的許容度に関し、G30とG18との間のサンプルはほとんど見られずむしろランダムであった。G30配合は、全体の許容度、風味、甘み及び酸味について初期にはG18よりも初期の感覚的性質の指示値に示される許容度が低かったが(回復期間に入って32分の時点)、これら2飲料間の差は時間とともに急速に減少した。G18はこれらのカテゴリーで42、62、及び82分では数値的スコアは高かったが、その差は統計的に有意ではなかった。62分ではG30配合は酸味についてG18よりも低いスコアを示した。
【0114】
Wは全体の許容度及び風味についてすべての評価時点においてG18よりも低いスコアを示した。また、後味の点でも初期評価において(32分の時点)G18よりも低いスコアを示した。
【0115】
G18配合は、全ての評価時点において理想よりも塩味が低い結果となった。G18は32、42及び82分において理想よりも酸味が強いという評価であった。G18とG30とでは知覚される塩味に差は認められなかった。G18と比較してG30は42及び62分でより酸味が弱く、82分でより甘みが強く、62分で差は小さくなった。G30配合はすべての評価時点において理想よりも塩味が弱いという評価であった。
【実施例6】
【0116】
この実験では、運動によって脱水状態を引き起こした後に発汗による全水分損失を補充し、その後3時間でどの程度の速さで水分が失われ、どの程度の量が保持されるかを下記に示した電解質の各配合を比較して検討した。
【0117】
更にこの実験では、ナトリウム濃度を25mEq/Lにまで低下させる一方で全細胞外イオン(ナトリウムと塩化物)の総量はG30配合よりも増大させて、その影響を調べた。
【0118】
この実験では被験者を2つの群に分けて実験前(24時間)の食事制限の生理学的測定値に与える影響を評価した。前記の実験フェーズと同様、被験者に試験前夜の夕食、及び試験当日の朝食と昼食で標準的食餌を与えた。
【0119】
食餌制限を行った群では、全カロリー摂取量は2200カロリーでありナトリウム摂取量は2400mgであった。体重が150ポンド(68kg)を上回る被験者にはやや多めのカロリー(+200)とナトリウム(+100mg)を与えた。すべての被験者に食餌内容と運動のガイドラインを書き記したコピーを配布し、ガイドラインに記載された以外の食物は摂らないように指示した。実験の3時間前までは水分の摂取を認めた(ガイドラインの範囲内で)。
【0120】
実験参加前にすべての被験者を食餌及び運動のガイドラインに従わせた。実験前の水分補給を充分に行うため、各被験者に適宜水分を摂取させた。試験の直前に採取した実験前尿サンプルの導電度を調べて実験前の水分補給が確実に行われていることを確認した。実験に入って最初の尿サンプルが21ミリシーメンス(mS−cm)を上回った被験者は実験から除外し、別日程で試験を行った。
【0121】
36人の被験者(男性31人、女性5人)で実験を行った。被験者を個別に高温環境下(80°F(27℃)、40%RH)で1.5時間運動させて平均で1.8±0.6%脱水させ、3つのナトリウム濃度(18、25または35mEq/L)の飲料のいずれかで発汗損失量の100%を補充した。すべての試験における群全体の平均発汗速度は0.885±0.32L/時間であった。
【0122】
この実験では女性の被験者にも参加してもらい、月経周期、体液平衡、及びホルモン作用における変化にともなう影響をすべての試験で同様のフェーズにおける女性被験者を調べることによってコントロールした。この実験は高温環境下での運動によって脱水症状を引き起こし、次いでミネラル含量の異なる飲料を摂取させた後の水分損失速度を調べるために計画されたものである。試験のプロトコル及び手順を図21に示す。
【0123】
次に被験者のベースライン体重を測定し、感覚的性質(消化管症状、エネルギーレベル)に関する質問票に回答してもらった。被験者に高温環境下(80°F(27℃)、40%RH)で1.5時間サイクリング運動を行わせて、初期体重の約2%に相当する水分を運動によって脱水させた。事前に高強度トレッドミル試験で求めた最高心拍数の70〜75%に相当する運動強度を与えるような運動負荷を与えた。遠隔心拍モニター(Polar)を使用して10分毎に心拍数を計って充分な運動強度が与えられていることを確認した。
【0124】
1時間経過後、被験者に5分間サイクリング運動を休憩させた。運動による脱水期間の終了時点で被験者に感覚的性質に関する質問票を渡し、再び体重を測定して最終的な発汗損失量を求めた。運動後の尿サンプルを運動後体重の測定直後に測定した。残りの回復期間中被験者を横になった姿勢で回復させた。
【0125】
実験に先だって1Lまたは2Lの容量フラスコ、及び飲料に電解質を与えない飲料グレードの水を用いて飲料を混合した。各飲料は冷蔵庫で冷やしてから被験者に与えた(約40°F(約4.5℃))が、最後の2つの飲料は被験者に与える時点で室温に近くなっていた。各飲料は、特定の回数で所定量を投与する水分補給スキームにしたがって配分した。30分の回復時間後、被験者に6カップの飲料のうちの最初の1カップを与え、その後10分毎に1カップずつを与えた。飲料の全量は全発汗損失量に等しい量を与え、全量の50%が最初の20分で、残りの50%が残りの40分で10分毎に12.5%ずつ被験者に与えられるように分けた。飲料の全量を1時間以内で摂取させた。
【0126】
3.5時間の回復期において30分毎に被験者に感覚的性質に関する質問票を記入してもらい、尿サンプルを採取した。尿量を質量で求め、尿の導電度を導電計(WTW LF340、型番19706−20)を用いることで直ちに求めた。尿は少量ずつに分け、後の[Na+]及び[K+]についての分析用に−20°F(−6.7℃)で保存した。尿中の[Na+]、[K+]を、15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、炎光光度法によって求めた(IL943、自動炎光光度計)。
【0127】
データの分析にはコンピュータ統計パッケージ(SPSS、v.10)を用いた。すべての従属測定値について記述統計及び要約表を生成した。反復計測ANOVAを用いて処置の主要効果、及び必要に応じて時間依存的効果について試験した。主要効果が存在する場合、Duncan post hoc試験によって平均値間の統計的差を判定した。比較の結果はα値=0.05にて試験した。各処置間での全尿損失の比較を行うために効果量を推定した。
【0128】
実験結果は個別の群に分けた。実験群全体の結果を最初に示し、次いで食餌制限をした男性、次いで男性のみの順で結果を示した。
【0129】
36人の男性(N=36)で3つの試験すべてを行った。4人の被験者が病気あるいは食事制限(カフェイン摂取の禁止)に耐えられなかったことから実験を辞退、または実験から除外された。運動による脱水時の体重減少の平均は1.5時間で1.8±0.6%であった。被験者の平均発汗速度は0.89±0.32リットル/時であり、被験者は脱水期間中に平均で1.3±0.5リットルの汗を失った。脱水量及び発汗損失量は各処置間で差は見られなかった。
【0130】
摂取した水分の保持率には大きな差が見られた。G25(79.6%)ではG18(73.5%)及びG30(75.1%)と比較して水分保持率は有意に高かった。体重について補正し(ml/kg)、絶対量(kg)で検討すると有意な効果は消失した。プロジェクトFR−1のフェーズ2、3、4から得られた結果に反し、この実験ではG30とG18との間に差は認められなかった。水分保持率の効果量(ES)の推定値は、18に対する25ではES=0.55(中程度の効果量);18に対する30ではES=0.15(効果なし);25に対する30では0.47(中程度の効果量)であった。
【0131】
回復期の2.5時間における全尿排出量の平均は、G25(0.252L)でG30(0.322L)及びG18(0.349L)と比較して有意に低かった。体重について補正(ml/kg)後も有意差は認められた。全尿損失量について以下の比較を行うために効果量の推定値を求めた。すなわち、18に対する25ではES=0.57(中程度の効果量、有意);18に対する30ではES=0.14(効果なし);25に対する30ではES=0.49(中程度の効果量、有意ではない)。各配合間で回復期の150分(飲料摂取終了1時間後)から差が現れた。
【0132】
回復期の終了時点でのベースラインからの体重の絶対的変化量は、G18、G25及びG30でそれぞれ−0.72、−0.62、及び−0.71kgであった。初期体重に対する割合で表した場合、これらの値はG18、G25及びG30でそれぞれ−0.98%、−0.84%、及び−0.96%となる。被験者のばらつきについて統計学的モデルで調整すると絶対量及び割合のいずれの変量においてもG25とG18及びG30では有意差が認められた。G18とG30の間には差は認められなかった。
【0133】
ベースライン尿サンプルの平均の比導電率(SEC)は各処置で17〜18mS−cmの範囲であった。ベースライン尿量の平均は、G18、G25及びG30でそれぞれ111.4、117.1及び121.8グラムであった。この結果は平均的に見て被験者がある程度水分補給がなされた状態でプロトコルを開始したことを示すものである。
【0134】
時間と独立した平均の尿排出量は、G18、G25及びG30でそれぞれ58.2、42.0及び53.7グラムであった。興味深いことに、時間と独立した平均のSECは、G18、G25及びG30でそれぞれ13.1、16及び14.5mS−cmであった。
【0135】
各処置の感覚的(味覚的)及び知覚的性質の変化を調べるため、実験の全体を通じて被験者に異なる精神生理学的特性について異なるスケール(例、カテゴリー別、100点満点)で評価を行ってもらった。消化管症状及び感覚(味覚)に関する質問票を試験期間を通じて定期的に使用して被験者の感覚を調べた。
【0136】
消化管症状に関する質問票での評価では各製品間で差は認められなかった。質問項目としては、エネルギー、注意喚起性、口渇感、空腹感、満腹感、吐き気、催尿感などである。
【0137】
各製品の感覚的性質のなかには製品間で大きく評価が異なるものがあった。最初の飲料を与えた時点では全体の許容度は各製品間で同様のスコアであったが、最後の飲料(82分)では大きく異なった。G25(6.4)はG18(7.0)と比較して評価が低かったが、G30(6.8)とは差が見られなかった。塩味の好みは、G18及びG30と比較してG25で試験を行ったすべての時点で評価が低かった。これはG25に多く含まれる塩化物の影響であると思われる。顕著な差ではないが、G25はG18及びG30と比較して指向的により塩味が強いと知覚された。風味の好みに関するスコアは各時間及び各製品で同様であった。消化管症状に関する性質の評価は時間とともに変化し、一日のうちの時間とプロトコルと一致した。報告すべき顕著な差は認められなかった。各製品の味覚及び風味に関する評価は飲料が摂取された短時間(1時間)では変化は見られなかった。
【0138】
下記に示すサブグループでデータの更なる分析を行った。これは、結果は多くの因子によって大きく影響されるという経験から行ったものである。下記の結果は、食事制限を行った(男性のみの群)及び男性のみの群のサブグループにおける分析から得られたものである。女性被験者が少数であったことから、食事制限を行って試験した群には結果的に男性しか含まれていなかった。
【0139】
36人の被験者のうち17人(n=17)を食事制限を行う男性の群とした。この被験者のサブセットでは、運動による脱水時の平均の体重減少率は1.5時間で1.8±0.5%であった。これらの被験者の平均の発汗速度は0.95±0.28リットル/時であり、脱水期間に平均で1.4±0.4リットルの汗を失った。各処置間で脱水量及び発汗損失量の差は見られなかった。
【0140】
このサブグループでの摂取水分の保持率には有意差は認められなかった(p=0.089)。G25(80.7%)ではG18(74.9%)及びG30(74.2%)と比較して水分保持率は有意に高かったが、このサブセットでは差は統計学的に有意な差ではなかった。
【0141】
ナトリウム濃度によって全尿損失量は変化した(p=0.029)。2.5時間の回復期間における全尿排出量の平均は、G25(0.255L)でG30(0.374L)及びG18(0.367L)と比較して有意に低かった。効果量は次のとおりであった。すなわち、18に対する25ではES=0.58(中程度の効果量);18に対する30ではES=0.04(効果なし);25に対する30では0.71(効果量大)であった。
【0142】
回復期の終了時点でのベースラインからの体重の絶対的変化量は、G18、G25及びG30でそれぞれ−0.70、−0.59、及び−0.75kgであった(p=0.015)。初期体重に対する割合で表した場合、これらの値はG18、G25及びG30でそれぞれ−0.94%、−0.79%、及び−0.99%となる。被験者のばらつきについて統計学的モデルで調整すると絶対量及び割合のいずれの変量においてもG25とG18及びG30では有意差が認められた。G18とG30の間には差は認められなかった。
【0143】
36人の被験者のうち31人(n=31)を、食事制限を行った群とは独立した男性の群とした。群全体のうち、このサブセットでは最大の差が認められたが、この差は、標本数が大きかったことと(n=31)、試験を行った少人数の女性の群による影響を統計的に除外したことによるものと思われる。実験参加者のこのサブセットでは、運動による脱水時の平均の体重減少率は1.5時間で1.9±0.6%であった。これらの被験者の平均の発汗速度は0.94±0.31リットル/時であり、脱水期間に平均で1.4±0.5リットルの汗を失った。各処置間で脱水量及び発汗損失量の差は見られなかった。
【0144】
摂取水分の保持率には有意差が認められた(p=0.016)。G25(79.6%)ではG18(73.1%)及びG30(75.0%)と比較して水分保持率は有意に高かった。この処置による効果は回復期に入って150分の時点で明確となった(図22を参照)。体重について補正するか(ml/kg)、絶対量(kg)で検討すると有意な効果は消失した。
【0145】
回復期の2.5時間における全尿排出量の平均は、G25(0.267L)でG30(0.346L)及びG18(0.374L)と比較して有意に低かった。体重について補正(ml/kg)後も効果は有意であった(p=0.005)。各製品間で回復期の150分(飲料摂取終了1時間後)から差が現れた(図23参照)。効果量の推定値は次のとおりであった。すなわち、18に対する25ではES=0.62(中程度の効果量);18に対する30ではES=0.15(効果なし);25に対する30ではES=0.56(中程度の効果量)。
【0146】
回復期の終了時点でのベースラインからの体重の絶対的変化量は、G18、G25及びG30でそれぞれ−0.76、−0.65、及び−0.75kgであった。初期体重に対する割合で表した場合、これらの値はG18、G25及びG30でそれぞれ−1.01%、−0.85%、及び−0.99%となる。被験者のばらつきについて統計学的モデルで調整すると絶対量(p=0.006)及び割合(p=0.010)のいずれの変量においてもG25とG18及びG30との間に有意差が認められた。G18とG30の間には差は認められなかった。
【0147】
データは群全体について報告された知見に一致するものである。各飲料間には散発的な差が認められた。観察された最も顕著な効果としては、G25ではG18と比較して「塩味の好み」が最も低く、知覚される塩味が最も高かった点である。この効果は飲料摂取期間の全体を通じて大体一貫していた。この男性のサブグループでは各飲料間で消化管症状に関する顕著な効果は認められなかった。
【実施例7】
【0148】
この実験は前述の実験と同様の実験である。しかしながらこの実験では、25mEq/L配合中の塩化物イオンとナトリウムイオンの合計を、G30配合中のナトリウムと塩化物の合計により近い値とし、18mEq/L配合は使用しなかった。各電解質の具体的な配合を下記に示す。
【0149】
水分損失及び水分保持に対する効果についてこれらの配合の比較を行った。更に各配合の感覚的品質について測定を行った。
【0150】
被験者に実験室に来てもらい、バイク、トレッドミルについて被験者の最大心拍数(毎年のストレス試験で測定)の75〜80%の強度となるような運動負荷を設定した。更にこのオリエンテーション運動セッションの前後で体重を計って発汗速度を予測した。
【0151】
被験者には標準化した食事を与えて2つの試験のそれぞれに先立ってナトリウム摂取量が一定となるようにした(〜2700mg)。食事として、夕食(試験前夜)及び試験当日の朝食と昼食を与えた。被験者は与えられた食物をすべて食べなくともよいが、食べ残した品目と食べ残した量を記録してもらった。これらの品目は次の試験ではフードバッグから除外した。更に被験者にボトルに入った飲料水を試験前夜及び試験当日に与えて水分補給を行った。実験の24時間前から被験者にはカフェイン及びアルコールの摂取を控えさせた。
【0152】
被験者として普段からトレーニングを行っている男性を採用した(25〜49歳)。17人が双方の試験を最後まで行った。1人の被験者が病気のため試験から除外された。3時間の絶食期間(飲料、食物について)の後、被験者に実験室に来てもらい尿サンプルを採取して運動前の水分補給状態を評価し、更に体重を測定した。
【0153】
運動前のアンケート(GI評価)を終えた後、運動を開始してもらった。運動セッションはサイクリングとランニングを15分間隔で交互に、最大心拍数の75〜80%で60分間行ってもらった。15分間隔で心拍数を計測して被験者が適当な運動強度を維持していることを確認した。被験者には運動期間の全体を通じて水分摂取を控えさせて1.5〜2%の脱水状態とした。
【0154】
運動後、被験者の体重を測定し、運動後尿サンプルを採取した。その後、3.5時間の回復期間をおいた。回復期に入って30分の時点で被験者に全発汗損失量(運動前の体重から運動後の体重を差し引いて求めた)の25%に相当する量の最初の飲料を与え、感覚的性質に関する質問票を記入してもらった。回復期間に入って40分の時点で更なる質問票と飲料(損失量の25%)を与えた。50分の時点で発汗損失量の12.5%に当たる3番目の飲料を与えた。58分の時点でGIスケールによって消化管反応を評価し、トイレで尿サンプルを採取してもらった。尿採取から戻った被験者に質問票を記入してもらい、4番目の飲料(12.5%)を与えた。5番目の飲料(12.5%)を70分の時点で与え、最後の6番目の飲料(12.5%)を80分の時点で与えて、質問票を記入してもらった。90、120、180及び240分にGIスケールを与えて尿サンプルを採取した。最後の尿サンプルの採取後、被験者に2階に行ってもらい最終的な裸体質量を測定した。(必要に応じ)次回の試験の食事を与え、被験者を解放した。
【0155】
尿量を重さで求め、尿の比重を測定した(A300臨床屈折計)。更なる分析用に尿を4mlの冷凍容器に移した。尿中の[Na+]、[K+]を、15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、炎光光度法によって求めた(IL943、自動炎光光度計)。各サンプルの浸透圧を測定した(Fiske2400浸透圧計)。
【0156】
各被験者に2428kcal分の食物と2694mgのナトリウムを与えた。被験者には食べたい分だけ食べてもらったが、各処置間では一貫した量を食べてもらった。ほとんどの被験者が与えられた食物を残さず食べたが、摂取量は1851〜2428kcal及び1831〜2694mgのナトリウムと幅があった。すべての被験者が与えられた食物のみを食べた。
【0157】
60分間の運動セッションによって各処置での脱水症状の程度は同程度であった(G25及びG30でそれぞれ1.75%±0.29%及び1.78±0.33%)。更に各処置で発汗速度はほぼ同じであった(G25で1.39±0.32L/時、G30で1.40±0.32L/時)。
【0158】
各処置の全飲料摂取量は、G25処置では1.39±0.32L、G30処置では1.40±0.32Lであり、全発汗損失量の値と一致していた。
【0159】
全累積水分排出量は各処置で差は見られなかった(G25では0.35±0.13L、G30では0.35±0.15L)。更に、各データ収集時点での尿排出量にも各処置間で有意差は認められなかった(下表)。
【0160】
水分保持量、すなわち摂取された水分のうち尿として排出されなかった水分の量については、各処置で差は認められなかった。水分保持量は相対的な量(ml/kg)及び(摂取量−排出量)/排出量で表される割合として求めた。相対的水分保持量は、G25及びG30でそれぞれ13.11±3.04ml/kg及び13.32±3.52ml/kgであった。水分保持率も両処置で同じであった(G25で74.29±9.76%、G30で74.20±10.14%)。予想できるように時間による水分保持率も各処理で同じ値を示した(下表参照)。
【0161】
各処置の感覚的及び知覚的性質の変化を調べるため、実験の全体を通じて被験者に異なる精神生理学的特性について異なるスケール(例、カテゴリー別、100点満点)で評価を行ってもらった。消化管症状及び感覚(味覚)に関する質問票を試験期間を通じて定期的に使用して被験者による知覚を調べた。知覚される生理学的及び心理学的満足度の評価については2つの飲料間で差は認められなかった。飲料の許容度については以下のような差が認められた。G30は、G25と比較して、許容度、甘さ、酸味、風味および塩味の好みに関して有意に高いスコアを示し、32分における後味で高い効果量を示した(0.7)。全体の許容度については図24を参照されたい。42分ではG30は、G25と比較して後味に関して有意に高いスコアを示し、酸味に関して中程度の効果量を示した。G25は全ての時点でG30よりもより酸味を示した。図25を参照。G25は32分でG30よりも有意に強い塩味を示し、他のすべての時点では差は認められなかった。G25の塩味ははじめは理想的という評価であったが、他のすべての時点では理想よりも低い評価となった。G30の塩味はすべての時点で理想よりも低い評価であった。図26を参照。
【実施例8】
【0162】
この実験ではG30配合を改変してカルシウム、マグネシウム及び高濃度のカリウムを添加し、水分補給への影響を調べた。実施例5と同様、G18配合及びPOWERade配合を使用し、これらと共にG30の改変版であるK10及びK20配合を使用した。他のすべての実施例と同様、各飲料処置は被験者にも実験者にも区別がつかないようにした。電解質の具体的な配合を下表に示す。
【0163】
被験者には標準化した食事を与えて各試験に先立ってナトリウム摂取量が一定となるようにした(〜3000mg)。食事として、夕食(試験前夜)及び試験当日の朝食と昼食を与えた。被験者は与えられた食物をすべて食べなくともよいものとした。被験者には更に食べ残した品目を記録してもらった。これらの品目は次の試験ではフードバッグから除外した。更に被験者にボトルに入った飲料水を試験前夜(500ml)及び試験当日(1000ml)に与えて水分補給を行った。実験の24時間前から被験者にはカフェイン及びアルコールの摂取を控えさせた。
【0164】
被験者として普段からトレーニングを行っている男性を採用した(30〜50歳)。17人が双方の試験を最後まで行った。試験後に3時間の絶食期間(飲料、食物について)をおいた。運動セッションの前後に体重を測定した。更に尿サンプルを採取して運動前の水分補給状態を評価した。被験者には運動前のアンケート(GI評価)にも答えてもらった。
【0165】
運動セッションは、最大心拍数の70〜75%でクロストレーナー、ステーショナリーバイク、及びトレッドミルで30分間ずつ、合計90分間行った。15分間隔で心拍数を計って被験者が適当な運動強度を維持していることを確認した。被験者には運動時間の全体を通じて水分の摂取は控えさせ、2〜2.5%を脱水させた。
【0166】
運動後、被験者の体重を測定し、運動後尿サンプルを採取した。その後、3.5時間の回復期間をおいた。回復期に入って30分の時点で被験者に全発汗損失量(運動前の体重から運動後の体重を差し引いて求めた)の25%に相当する量の最初の飲料を与え、感覚的性質に関する質問票を記入してもらった。回復期間に入って40分の時点で更なる質問票と飲料(損失量の25%)を与えた。50分の時点で発汗損失量の12.5%に当たる3番目の分量を与えた。58分の時点でGIスケールによって消化管反応を評価し、尿サンプルを採取した。次いで被験者に感覚的性質に関する質問票を記入してもらい、4番目の分量(12.5%)を与えた。5番目の分量(12.5%)を70分の時点で与え、最後の6番目の分量(12.5%)を80分の時点で与えて、質問票を記入してもらった。90、120、180及び240分にGIスケールを与えて尿サンプルを採取した。最後の尿サンプルの採取後、被験者の最終的な裸体質量を測定した。
【0167】
尿量を重さで求め、尿の比重を測定した(A300臨床屈折計)。更なる分析用に尿を4mlの冷凍容器に移した。尿中のナトリウム及びカリウム濃度を、15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、炎光光度法によって求めた(IL943、自動炎光光度計)。各サンプルの浸透圧を測定した(Fiske2400浸透圧計)。
【0168】
SPSSバージョン11.0を使用してデータを分析した。一般的線形モデルを用いたANOVAによって平均値間の差を求めた。データを平均値±標準偏差として表した。
【0169】
運動によって各処置で同様の脱水率が見られた(P、G18、K10及びK20に対してそれぞれ2.56±0.56%、2.53±0.55%、2.57±0.51%及び2.50±0.44%)。各処理間で発汗速度もほぼ同じ値であった(P、G18、K10及びK20に対してそれぞれ1.29±0.29L/hr、1.27±0.32L/hr、1.29±0.31L/hr及び1.26±0.26L/hr)。
【0170】
各処置での全飲料摂取量はやはり各試験間で同様の値であった(Pで1.92±0.44L、G18で1.92±0.48L、K10で1.93±0.46、及びK20で1.87±0.39)。発汗速度にある程度の変動があることと全発汗損失の100%を補充するというプロトコルのために摂取量の平均値には若干の変動が見られた。
【0171】
初期体重に対する最終的な体重の割合は各配合間で差は認められなかった。被験者の体重は、Pによる試験後では初期体重の98.68±0.53%に、G18による試験後では98.85%±0.27%、K10及びK20による試験後ではそれぞれ98.84±0.47%及び98.89±0.33%に回復した。
【0172】
全累積水分排出量については、各処置間で統計的な有意差に達しなかった(図32)。累積水分排出量は、P、G18、K10及びK20でそれぞれ501.03±303.93ml、444.63±210.19ml、434.05±276.62ml及び353.08±183.47mlであった。各データ収集時点での尿排出量については60、90及び120分の時点で各処置間で有意差は認められなかったが、180及び240分の時点ではK20での尿損失量はPと比較して有意に低かった。
【0173】
水分保持量、すなわち摂取された水分のうち尿として排出されなかった水分の量については、各処置で差は認められなかった。水分保持量は相対的な量(ml/kg)及び(摂取量−排出量)/排出量で表される割合として求めた。相対的水分保持量は、P、G18、K10及びK20でそれぞれ18.62±7.81ml/kg、19.40±5.65ml/kg、19.66±5.99ml/kg、及び20.17±5.07ml/kgであった。水分保持率については各処置間で統計学的有意差は認められなかった(Pで73.70±13.85%、G18で75.74±12.56%、K10で76.39±14.23%、及びG30で80.53±9.69%)が、K20とPの間には0.58の効果量が認められた(p=0.09)。図27を参照。
【0174】
回復期間における全尿産生量は、各処理間で有意差は認められなかったが、K20処置とPの間には0.61の効果量が認められた(p=0.07)。更に180及び240分の時点ではK20とPの間には有意差が認められた(K20のほうが尿産生量が少なかった)。
【0175】
平均の尿浸透圧は各処置で異なった。Pは最も尿浸透圧が低く(379.70±222.96mOsm)、G18(415.51±217.89mOsm)またはK10(413.53±232.11mOsm)との間に差は見られなかったが、K20(462.42±226.70mOsm)との間には有意差が認められた。K20とK10またはG18との間に差は認められなかった。図28を参照。
【0176】
P(40.74±28.58mEq/L)及びG18(43.81±27.98mEq/L)と比較してK20(52.59±31.38mEq/L)による試験では平均の尿中のナトリウム濃度は有意に高かった。K10(47.87±35.18mEq/L)はいずれの試験結果とも有意差は認められなかった。全ナトリウム排出量(尿量×尿中のナトリウム濃度)は各試験間で差は認められなかった(P=16.62±8.32、G18=17.68±10.80、K10=19.46±10.17、K20=20.27±8.77)。図29を参照。
【0177】
平均の尿中のカリウム濃度は、K20(58.44±32.59mEq/L)による試験でP(42.24±40.19mEq/L)と比較して有意に高かった。G18(47.26±37.05)及びK10(51.99±39.33)は他のいずれの処置とも有意差は認められなかった。
【0178】
被験者には充分に水分補給を行ったうえで運動セッションを開始させた(USG=1.008±0.005)。運動前には各処置間で尿の比重に差は見られなかった。Wによる処置での平均のUSGはPと比較して120分で有意に低かった。Wは180分ではG18及びG30よりも低い値を示した。PのUSGは180分及び240分でG30よりも有意に低い値を示した。G18とPの間にはすべての時点で差は認められなかった。図30を参照。
【0179】
4つの評価時点で行った感覚的性質に関するアンケートによれば、全体の許容度について各飲料間で差は見られなかった。K20配合及びPOWERadeは32分で塩味の許容度に関してG18よりも有意に高いスコアを示した。これはすべての時点で製品間で有意差が見られた唯一のケースであった。Pでは全体の許容度は時間とともに大幅に低下した。Pは初めこそ数値的に最も高い全体の許容度のスコアを得たが、全体として許容度は最も低かった。Pでは、後味を除いたすべての許容度のスケールにおいて時間とともに評価は低くなった。G18配合では、後味、塩味及び酸味の好みに関して初期(32分)には比較的スコアは低かった。これらのスコアは時間とともにより一般的な範囲に復帰した。
【0180】
消化管症状については各飲料間で有意差は基本的に認められなかった。60分では、K20はG18及びK10と比較してより吐き気を催させる効果が高いという評価であった。しかしながら、吐き気は運動プロトコルの後で飲料摂取の直前では普通に観察されたことから、この結果は30分における結果と一致している。経時的にみて多くの差が観察された。これらの差はプロトコルから予想されるものと符合していた。異常な消化管症状は観察されなかった。
【実施例9】
【0181】
前述の実施例におけるようにカリウム濃度を変え、カルシウム及びマグネシウムを添加することに加え、ナトリウム以外のすべての電解質の濃度を変化させて水分補給に与える複合的効果を調べた。G30以外に3つの配合について試験を行った。各配合は6%の炭水化物、30mEq/Lのナトリウム及び0.103%の香料を含有するものである。他の実施例と同様、炭水化物としてはスクロース(〜3%)、グルコース(〜1.7%)及びフルクトース(〜1.3%)の混合物を使用した。電解質の具体的配合を下表に示す。
【0182】
被験者として普段からトレーニングを行っている男性を採用した(19〜50歳)。18人が4つの試験のすべてを最後まで行った。前述の実施例とほぼ同様に被験者に実験前に毎日標準化した食事を与えた。試験後に3時間の絶食期間(飲料、食物について)をおいた。運動を開始する前に尿サンプルを採取して運動前の水分補給状態を評価し、被験者の体重を測定した。
【0183】
被験者には水分を一切与えずに90分間運動させた。運動セッションは、最大心拍数の70〜75%でクロストレーナー、ステーショナリーバイク、及びトレッドミルで30分間づつ、合計90分間行った。この運動により被験者は2.5〜3%の水分を失った。運動後、被験者の体重を測定し、尿サンプルを採取した後、3.5時間の回復時間を与えた。
【0184】
回復期に入って30分の時点で被験者に全発汗損失量(運動前の体重から運動後の体重を差し引いて求めた)の25%に相当する量の最初の飲料を与え、感覚的性質に関する質問票を記入してもらった。回復期間に入って40分の時点で更なる質問票と飲料(損失量の25%)を与えた。50分の時点で発汗損失量の12.5%に当たる3番目の分量を与えた。58分の時点でGIスケールによって消化管反応及び感覚を評価してもらい、トイレで尿サンプルを採取してもらった。次いで被験者に質問票を記入してもらい、4番目の分量(12.5%)を与えた。5番目の分量(12.5%)を70分の時点で与え、最後の6番目の分量(12.5%)を80分の時点で与えて、感覚的性質に関する質問票を記入してもらった。90、120、180及び240分に再び消化管反応について被験者を評価し、尿サンプルを採取した。最後の尿サンプルの採取後、被験者の最終的な裸体質量を測定した。
【0185】
尿サンプルはすべて使い捨ての検体容器に採取し、質量を測定して尿排出量を求め、尿比重を計った(A300臨床屈折計)。次いで後の炎光光度法(IL943、自動炎光光度計)による尿中のナトリウム及びカリウム濃度の分析用に尿を4mlの冷凍容器に移した。15分間遠心して分析サンプルから不溶性粒子を除去した後、分析を行った。各サンプルの浸透圧を測定した(Fiske2400浸透圧計)。
【0186】
冬季に行われた実験中に室内を暖房することが困難であったことから過去の実験と比較して全発汗速度は低いものとなった。しかしながら発汗速度は2〜2.5%の脱水を引き起こすのに充分であった。運動セッションによって各処置で同程度の脱水が見られた(G30、K5、K10及びK20でそれぞれ2.10±0.50%、2.18±0.51%、2.14±0.53%及び2.15±0.50%)。さらに各処置間で発汗損失量はほぼ同じであった(G30、K5、K10及びK20でそれぞれ1.12±0.25L/時、1.16±0.27L/時、1.14±0.26L/時及び1.14±0.25L/時)。
【0187】
各処置の間の全水分摂取量も各試験間で同様の値であった(G30で1.68±0.38L、K5で1.75±0.40L、K10で1.71±0.39L、
K20で1.72±0.37L)。発汗速度にある程度の変動があることと全発汗損失の100%を補充するというプロトコルのために摂取量の平均値には若干の変動が見られた。
【0188】
初期体重に対する最終的な体重の割合は各配合間で差は認められなかった。被験者の体重は、G30による試験後では初期体重の98.96±0.21%に、K5による試験後では98.96%±0.29%、K10及びK20による試験後ではそれぞれ98.90±0.37%及び98.95±0.31%に回復した。
【0189】
全累積水分排出量については各処置間で統計的な有意差は認められなかった。累積水分排出量は、G30、K5、K10及びK20でそれぞれ353.99±161.73ml、369.13±167.35ml、380.93±240.35ml及び386.93±205.07mlであった。各データ収集点における尿排出量についてもすべての時点で各処置間で差は認められなかった。各配合で水分保持率に差は認められなかった(G30で78.17±11.45%、K5で76.60±16.84%、K10で78.28±10.83%、K2で76.62±12.87%)。図31を参照。体重に対する水分保持率にも差は認められなかった(G30、K5、K10及びK20でそれぞれ16.59±5.09ml/kg、17.29±5.04ml/kg、16.69±6.06ml/kg及び16.66±5.31ml/kg)。
【0190】
平均の尿浸透圧についても各処置間で差は認められなかった(G30=488±228mOSm、K5=484±250mOsm、K10=456±215mOsm、K20=492±215mOsm)。尿浸透圧に関しては回復期間中のすべての時点で差は認められなかった。図32を参照。被験者は充分に水分補給がされた状態で各運動セッションを開始した(USG=1.008±0.005)。尿比重(USG)については運動前または回復期間中のすべての時点において各処置間で差は見られなかった。同様に尿比重の変化についても各処置間で差は認められなかった。図33を参照。
【0191】
平均の尿中のナトリウム濃度については各試験で差は認められなかった(G30、K5、K10及びK20でそれぞれ54.73±34.53mEq/L、60.34±38.44mEq/L、53.31±32.56mEq/L、60.99±35.99mEq/L)。全ナトリウム排出量(尿量×尿中のナトリウム濃度)は各試験間で差は認められなかった(G30=20.61±10.12mEq、K5=24.66±12.86mEq、K10=21.65±10.28mEq、K20=24.97±12.49mEq)。
【0192】
平均の尿中のカリウム濃度は、K20(56.59±33.43mEq/L)による試験でG30(49.79±32.87mEq/L)、K5(47.24±36.11)、及びK10(46.87±28.96)と比較して有意に高かった。G30、K5、及びK10では互いに差は見られなかった。図34を参照。
【0193】
脱水期間における感覚的性質の評価から求めた全体の許容度に関しては各飲料間で差は見られなかった。図35を参照。
【0194】
以上、本発明を特定の好ましい組成及び特定の個別の方法に関して説明したが、当業者には自明の他の実施形態も本発明の範囲に包含されるものである。したがって本発明の範囲は特許請求の範囲によって定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】図1は、異なる配合を運動中に摂取した場合の、塩味の全体の許容度及び好みに関する各配合の嗜好スコアを示す図。
【図2】図2は、異なる配合について、随意の飲水特性、知覚性、水分補給特性、ならびに自発的水分摂取性を求めるために使用した実験手法を示す図。
【図3】図3は、異なる配合のそれぞれについて全水分摂取量を示す図。
【図4】図4は、各配合について尿量をプロットすることによって尿損失の傾向を示す図。
【図5】図5は、各配合が投与された被験者の初期体重に対する脱水率を示す図。
【図6】図6は、運動中及び座った状態での塩味強度の評価と知覚される理想的な塩味を示す図。
【図7】図7は、異なる配合について運動中及び座った状態での塩味の全体の許容度及び好みに関する嗜好スコアを示す図。
【図8】図8は、運動による脱水後、全発汗損失を補充してから3時間後までの水分保持量を求めるために用いた実験プロトコルを示す図。
【図9】図9は、異なる配合について回復期の累積尿損失を経時的に示す図。
【図10】図10は、異なる配合について、回復期に摂取された飲料の量のパーセントとして水分保持率を示す図。
【図11】図11は、運動による脱水後、全発汗損失を補充してから3時間後までの水分保持量を求めるために用いた実験プロトコルを示す図。
【図12】図12は、異なる配合について回復期の累積尿損失を経時的に示す図。
【図13】図13は、異なる配合について、回復期に摂取された飲料の量のパーセントとして水分保持率を示す図。
【図14】図14は、異なる配合について血漿量の経時的変化を示す図。
【図15】図15は、異なる配合について、回復期に摂取された飲料の量のパーセントとして水分保持率を示す図。
【図16】図16は、異なる配合について回復期の尿産生量を経時的に示す図。
【図17】図17は、異なる配合について、運動前と回復期の尿浸透圧を示す図。
【図18】図18は、異なる配合について尿中のナトリウム損失を経時的に示す図。
【図19】図19は、異なる配合について尿中のカリウム損失を経時的に示す図。
【図20】図20は、異なる配合について尿の比重を経時的に示す図。
【図21】図21は、運動による脱水後、全発汗損失を補充してから3時間後までの水分保持量を求めるために用いた実験プロトコルを示す図。
【図22】図22は、異なる配合について水分保持率を経時的に示す図。
【図23】図23は、異なる配合について累積尿損失(g)を経時的に示す図。
【図24】図24は、水分保持率の測定に先立つ水分補給期における異なる配合の全体の許容度を示す図。
【図25】図25は、水分保持率の測定に先立つ水分補給期における異なる配合の酸味スコアを示す図。
【図26】図26は、水分保持率の測定に先立つ水分補給期における異なる配合の知覚された塩味を示す図。
【図27】図27は、異なる配合について回復期に摂取された飲料の量のパーセンテージとしての水分保持率、ならびに水分保持率の履歴範囲を示す図。
【図28】図28は、異なる配合について(運動前及び回復時の)尿浸透圧を経時的に示す図。
【図29】図29は、異なる配合について回復期の尿中のナトリウム濃度を示す図。
【図30】図30は、異なる配合について(運動の前後及び回復時の)尿の比重を経時的に示す図。
【図31】図31は、異なる配合について回復期の終了時の全水分保持率を示す図。
【図32】図32は、異なる配合について(運動前及び回復時の)尿浸透圧を経時的に示す図。
【図33】図33は、異なる配合について(運動の前後及び回復時の)尿の比重を経時的に示す図。
【図34】図34は、異なる配合について回復期の尿中のカリウム濃度を示す図。
【図35】図35は、異なる配合について知覚性評価からからの全体の許容度を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)該組成物の全質量に対して約4〜約10質量%の炭水化物と、
(b)少なくとも約30mEq/Lのナトリウムと、
(c)少なくとも約10mEq/Lの塩化物と、
(d)少なくとも約3mEq/Lのカリウムと、
(e)水と、を含有し、
溶液での該組成物の浸透圧は約250〜350mOsm/Kgであることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記炭水化物は、スクロース、マルトース、マルトデキストリン、グルコース、ガラクトース、トレハロース、フルクトース、フルクト−オリゴ糖、ベータグルカン、三炭糖及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
約33〜約40mEq/Lのナトリウムを含有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ナトリウムは、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
約11〜約18mEq/Lの塩化物を含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項6】
約8〜約20mEq/Lのカリウムを含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項7】
約0.1〜約6.0mEq/Lのカルシウムを更に含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項8】
約1〜約6mEq/Lのマグネシウムを更に含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項9】
組成物の全質量に対して約0〜約0.4質量%の香料を更に含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項10】
約0〜約100ppmの不透明化剤を更に含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項11】
組成物の全質量に対して約0.24〜約0.45質量%のクエン酸を更に含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項12】
更に電解質を含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項13】
液体、ゲル、乾燥粉末、錠剤、カプセルまたは濃縮物であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項14】
pHが約2.5〜約4.5の範囲であることを特徴とする請求項13記載の組成物。
【請求項15】
ヒトに投与した場合にナトリウムが細胞外液区画を満たすことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項16】
ヒトに投与した場合に塩化物が細胞外液区画を満たすことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項17】
組成物を投与する工程を含むヒトの脱水症状を緩和する方法であって、該組成物が、
(a)該組成物の全質量に対して約4〜約10質量%の炭水化物と、
(b)少なくとも約30mEq/Lのナトリウムと、
(c)少なくとも約10mEq/Lの塩化物と、
(d)少なくとも約3mEq/Lのカリウムと、
(e)水と、を含有し、
溶液での該組成物の浸透圧は約250〜350mOsm/Kgであることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記組成物は、約33〜約40mEq/Lのナトリウムを含有することを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
ナトリウムは、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記組成物は、約11〜約18mEq/Lの塩化物を含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記組成物は、約8〜約20mEq/Lのカリウムを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記組成物は、更に約0.1〜約6.0mEq/Lのカルシウムを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項23】
前記組成物は、更に約1〜約6mEq/Lのマグネシウムを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項24】
前記組成物は、該組成物の全質量に対して約0〜約0.4質量%の香料を更に含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項25】
前記組成物は、約0〜約100ppmの不透明化剤を更に含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項26】
前記組成物は、組成物の全質量に対して約0.24〜約0.45質量%のクエン酸を更に含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項27】
前記組成物は更に電解質を含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項28】
前記組成物は、液体、ゲルまたは濃縮物であることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項29】
前記組成物のpHは約2.5〜約4.5の範囲であることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記組成物をヒトに投与した場合に、ナトリウムが細胞外液区画を満たすことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項31】
前記組成物をヒトに投与した場合に、塩化物が細胞外液区画を満たすことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項32】
前記組成物を経口投与または静脈内投与することを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項1】
組成物であって、
(a)該組成物の全質量に対して約4〜約10質量%の炭水化物と、
(b)少なくとも約30mEq/Lのナトリウムと、
(c)少なくとも約10mEq/Lの塩化物と、
(d)少なくとも約3mEq/Lのカリウムと、
(e)水と、を含有し、
溶液での該組成物の浸透圧は約250〜350mOsm/Kgであることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記炭水化物は、スクロース、マルトース、マルトデキストリン、グルコース、ガラクトース、トレハロース、フルクトース、フルクト−オリゴ糖、ベータグルカン、三炭糖及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
約33〜約40mEq/Lのナトリウムを含有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ナトリウムは、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
約11〜約18mEq/Lの塩化物を含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項6】
約8〜約20mEq/Lのカリウムを含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項7】
約0.1〜約6.0mEq/Lのカルシウムを更に含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項8】
約1〜約6mEq/Lのマグネシウムを更に含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項9】
組成物の全質量に対して約0〜約0.4質量%の香料を更に含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項10】
約0〜約100ppmの不透明化剤を更に含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項11】
組成物の全質量に対して約0.24〜約0.45質量%のクエン酸を更に含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項12】
更に電解質を含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項13】
液体、ゲル、乾燥粉末、錠剤、カプセルまたは濃縮物であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項14】
pHが約2.5〜約4.5の範囲であることを特徴とする請求項13記載の組成物。
【請求項15】
ヒトに投与した場合にナトリウムが細胞外液区画を満たすことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項16】
ヒトに投与した場合に塩化物が細胞外液区画を満たすことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項17】
組成物を投与する工程を含むヒトの脱水症状を緩和する方法であって、該組成物が、
(a)該組成物の全質量に対して約4〜約10質量%の炭水化物と、
(b)少なくとも約30mEq/Lのナトリウムと、
(c)少なくとも約10mEq/Lの塩化物と、
(d)少なくとも約3mEq/Lのカリウムと、
(e)水と、を含有し、
溶液での該組成物の浸透圧は約250〜350mOsm/Kgであることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記組成物は、約33〜約40mEq/Lのナトリウムを含有することを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
ナトリウムは、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記組成物は、約11〜約18mEq/Lの塩化物を含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記組成物は、約8〜約20mEq/Lのカリウムを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記組成物は、更に約0.1〜約6.0mEq/Lのカルシウムを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項23】
前記組成物は、更に約1〜約6mEq/Lのマグネシウムを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項24】
前記組成物は、該組成物の全質量に対して約0〜約0.4質量%の香料を更に含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項25】
前記組成物は、約0〜約100ppmの不透明化剤を更に含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項26】
前記組成物は、組成物の全質量に対して約0.24〜約0.45質量%のクエン酸を更に含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項27】
前記組成物は更に電解質を含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項28】
前記組成物は、液体、ゲルまたは濃縮物であることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項29】
前記組成物のpHは約2.5〜約4.5の範囲であることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記組成物をヒトに投与した場合に、ナトリウムが細胞外液区画を満たすことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項31】
前記組成物をヒトに投与した場合に、塩化物が細胞外液区画を満たすことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項32】
前記組成物を経口投与または静脈内投与することを特徴とする請求項17記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
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【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公表番号】特表2007−510758(P2007−510758A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539978(P2006−539978)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/038155
【国際公開番号】WO2005/046360
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506055911)ストークリー−ヴァン キャンプ インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Stokely−Van Camp, Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/038155
【国際公開番号】WO2005/046360
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506055911)ストークリー−ヴァン キャンプ インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Stokely−Van Camp, Inc.
【Fターム(参考)】
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