説明

炭素−炭素結合形成反応の水系触媒

【課題】水溶性媒質中、とりわけ水中で、求核試薬と求電子試薬とによる炭素−炭素結合形成反応を促進させて目的物へ誘導する水系触媒を提供する。
【解決手段】炭素−炭素結合形成反応の水系触媒は、電子吸引基が結合して共役しているアルケン化合物の求核試薬とそれに反応する求電子試薬とによる炭素−炭素結合形成反応、又は電子吸引基が結合して共役しているアルケン化合物の求電子試薬とそれに反応する求核試薬とによる炭素−炭素結合形成反応を、水溶性媒質中で促進させる(ジアルキルアミノ)ピリジンが、含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性媒質中で炭素−炭素結合形成反応を促進させる水系触媒、及びそれを用いた炭素−炭素結合形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機求核試薬を有機求電子試薬に反応させて炭素−炭素結合を形成するような有機反応は、それらを溶解させて活発に分子運動させ、分子同士が近づき易くなるように、有機溶媒、とりわけ非水溶性有機溶媒中で行われることが多い。非水溶性有機溶媒は、揮発性であり可燃性であるので危険なうえ、工業的に有機反応を行うために大量に用いるには高価であり、揮発蒸気の吸引によって作業者の健康が害されたり、環境を汚染しないように面倒な後処理が必要であったりすることから、次第に敬遠されるようになってきている。
【0003】
それに対し、水溶性有機溶媒や水のような水系媒質、とりわけ水は、有機溶媒と異なり不燃性で、安価であり、人体や環境に無害であるという特長を有している。そのため近年、水を媒質として用いた環境調和型の化学プロセスの開発が、盛んに行われている。
【0004】
例えば、非特許文献1に、シクロヘキサノンやシクロペンタノン等のシクロアクカノン類とベンズアルデヒド類とを水中で、光学活性2−(ジデシルアミノメチル)ピロリジンとトリフルオロ酢酸存在下、不斉アルドール反応を行い、ジアステレオ選択的かつエナンチオ選択的にβ−ヒドロキシケトンを得る方法が、記載されている。
【0005】
アルドール反応を始めとする様々な炭素−炭素結合形成反応を水溶性媒質中で行う際に用いることができ、汎用性である水系触媒が望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】エヌ.マセ(N.Mase)ら、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)、2006年、第128巻、p.734-735
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、水溶性媒質中、とりわけ水中で、求核試薬と求電子試薬とによる炭素−炭素結合形成反応を促進させて目的物へ誘導する水系触媒、及びそれを用いて、簡便かつ安全に、短い反応時間でその目的物を高収率で得ることができる炭素−炭素結合形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の炭素−炭素結合形成反応の水系触媒は、電子吸引基が結合して共役しているアルケン化合物又はアルキン化合物の求核試薬とそれに反応する求電子試薬とによる炭素−炭素結合形成反応、又は電子吸引基が結合して共役しているアルケン化合物の求電子試薬とそれに反応する求核試薬とによる炭素−炭素結合形成反応を、水溶性媒質中で促進させる(ジアルキルアミノ)ピリジンが、含有されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の水系触媒は、請求項1に記載されたもので、前記(ジアルキルアミノ)ピリジンが、4−(ジアルキルアミノ)ピリジンであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の水系触媒は、請求項2に記載されたもので、前記4−(ジアルキルアミノ)ピリジン中のジアルキルアミノ基の両方のアルキルの炭素数が、1〜18であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の水系触媒は、請求項3に記載されたもので、前記4−(ジアルキルアミノ)ピリジン中のジアルキルアミノ基の少なくとも片方のアルキルの炭素数が、最低でも5であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の水系触媒は、請求項3に記載されたもので、前記4−(ジアルキルアミノ)ピリジン中のジアルキルアミノ基の両方のアルキルの炭素数が、5〜18であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の(ジアルキルアミノ)ピリジンは、下記化学式
【化1】

(式中、alkylは炭素数5〜18のアルキル基)で表されることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の(ジアルキルアミノ)ピリジンは、4−(ジアルキルアミノ)ピリジンであることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の炭素−炭素結合形成方法は、電子吸引基が結合して共役しているアルケン化合物の求核試薬とそれに反応する求電子試薬とを、又は電子吸引基が結合して共役しているアルケン化合物又はアルキン化合物の求電子試薬とそれに反応する求核試薬とを、水溶性媒質中で、(ジアルキルアミノ)ピリジン含有水系触媒存在下、炭素−炭素結合形成反応させることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の炭素−炭素結合形成方法は、請求項8に記載されたもので、前記(ジアルキルアミノ)ピリジンが、4−(ジアルキルアミノ)ピリジンであることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の炭素−炭素結合形成方法は、請求項8に記載されたもので、前記水溶性媒質が、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、及び/又は水であることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の炭素−炭素結合形成方法は、請求項8に記載されたもので、前記水溶性媒質が、水のみからなることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の炭素−炭素結合形成方法は、請求項8に記載されたもので、前記アルケン化合物の求核試薬がアクリル酸エステル、ケイ皮酸エステル、アクリル酸アミド、β−ニトロスチレン、アクリロニトリル、アクロレイン、ケイ皮アルデヒド、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、及び/又は塩化ビニルであり、それに反応する前記求電子試薬がアルデヒド、及び/又はそれのイミンであり、前記(ジアルキルアミノ)ピリジン含有水系触媒のアルキルの両方のアルキルの炭素数が5〜18であることを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の炭素−炭素結合形成方法は、請求項8に記載されたもので、前記アルケン化合物又はアルキン化合物の求電子試薬が(メタ)アクリル酸エステル、ケイ皮酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、β−ニトロスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、ケイ皮アルデヒド、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、ベンジリデンマロン酸エステル、プロピオル酸エステル、フェニルプロピオル酸エステル、及び/又は塩化ビニルであり、それに反応する前記求核試薬が脂肪族モノアルデヒド、脂肪族モノケトン、脂肪族モノエステル、脂肪族β−ジケトン、脂肪族β−ジエステル、脂肪族β−ケトエステル、脂肪族β−ケトニトリル、脂肪族β−ニトロケトン、及び/又は脂肪族β−ニトロエステルであり、前記(ジアルキルアミノ)ピリジン含有水系触媒のアルキルの両方のアルキルの炭素数が1〜18であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の炭素−炭素結合形成反応の水系触媒によれば、水溶性媒質中、とりわけ水溶性有機溶媒中や水中で、求核試薬と求電子試薬とによる炭素−炭素結合形成反応を促進させて、目的物へ誘導することができる。
【0022】
この水溶性触媒を用いた炭素−炭素結合形成方法によれば、簡便かつ安全に環境を汚染することなく、短い反応時間で、その目的物を位置選択的に高収率で得ることができる。
【0023】
しかも、この水系触媒を用いると、共通するアルケン化合物に、求核反応させたり求電子反応させたりすることができるので、汎用性に優れている。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明の好ましい形態の炭素−炭素結合形成反応の水系触媒は、4−(ジアルキルアミノ)ピリジンが、含有されたものである。例えば、4−(ジデシルアミノ)ピリジンは下記化学反応式(I)のようにして合成される。
【0026】
4−アミノピリジン(1)にデカン酸塩化物(2)を反応させ、デカン酸アミド体(3)にする。それをLiAlHのような還元剤で還元してデシルアミン体(4)にしてから、再びデカン酸塩化物(2)を反応させ、N−デシル−デカン酸アミド体(5)にする。それを、BHのような還元剤で還元すると、4−(ジデシルアミノ)ピリジン(5)が得られる。
【0027】
【化2】

【0028】
4−(ジアルキルアミノピリジン)を、そのジアルキルアミノ基中の二つのアルキルが共にデシルであるものの例で示したが、ペンチルやオクチルのように炭素数が異なるその他のアルキルであっても、同様にして合成できる。その二つのアルキルは、炭素数1〜18であれば、互いに同一又は異なっていてもよく、飽和、不飽和何れであっても、直鎖、分岐鎖、環状鎖の何れであってもよい。アルキルは直鎖であることが好ましい。ジアルキルアミノ基は、別なピリジン環の位置に置換していてもよいが、4位に置換していることが好ましい。
【0029】
この水系触媒は、水溶性有機溶媒、水、又はそれらの混合物である水溶性媒質中で、用いられることが好ましい。
【0030】
水系触媒は、例えば電子吸引基が不飽和基に結合して共役しているアルケン化合物である求核試薬とそれに反応する求電子試薬とによる炭素−炭素結合形成反応に用いられる。
【0031】
このような求核試薬となるアルケン化合物は、電子吸引基、例えばエステル基、酸アミド基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、ハロゲン基が、不飽和基、例えばエチレン性不飽和基に結合して、共役しα,β−不飽和化合物となった電子不足活性アルケン化合物である。そのアルケン化合物のα位が、電子吸引基の所為でβ位よりも電子密度が高くなっているから、求電子試薬、例えばアルデヒド類、それのイミン類へ、求核攻撃する。その結果、新たな炭素−炭素結合が形成される。このような炭素−炭素結合形成反応は、例えば、バイリス−ヒルマン(Baylis-Hillman)反応が挙げられる。
【0032】
バイリス−ヒルマン反応では、アルケン化合物のβ位に水系触媒の窒素が付加し、それのα位の電子密度を高め、求電子試薬に求核攻撃した後、水系触媒が脱離することによって、反応が進行する。
【0033】
求核試薬であるアルケン化合物は、より具体的には、アクリル酸エステル、ケイ皮酸エステル、アクリル酸アミド、β−ニトロスチレン、アクリロニトリル、アクロレイン、ケイ皮アルデヒド、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、塩化ビニル挙げられる。これらのエステルは、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、メンチルエステルが挙げられる。
【0034】
求核試薬であるアルケン化合物に反応する求電子試薬は、アルデヒド類、例えばニトロ基、シアノ基、ハロゲン基のような電子吸引基やアルキル基等で置換されていても置換されていなくてもよいもので、ベンズアルデヒドで例示される芳香族アルデヒド、脂肪族アルデヒドが挙げられ、またそのアルデヒド類をイミノ化したイミン類が挙げられる。
【0035】
このようなバイリス−ヒルマン反応は、アルケン化合物とそれに反応する求電子試薬である各基質、触媒、媒質が適切でなければ、特異性に欠け、また進行し難いものである。この水系触媒を用いると、水溶性媒質中、とりわけ水中で、バイリス−ヒルマン反応が、効率よく進行する。
【0036】
水系触媒である4−(ジアルキルアミノ)ピリジンは、バイリス−ヒルマン反応に用いられる場合、媒質が水溶性有機溶媒のみ、例えばテトラヒドロフランであれば、ジアルキルアミノ基が長鎖アルキルを有したジペンチルアミノ基やジオクチルアミノ基やジデシルアミノ基よりも炭素数の少ないジメチルアミノ基である化合物の方が好ましい。一方、媒質が水のみであれば、ジアルキルアミノ基がジメチルアミノ基よりも炭素数の多い長鎖アルキルを有したジペンチルアミノ基やジオクチルアミノ基やジデシルアミノ基であるように少なくとも片方のアルキルが炭素数5以上である化合物の方が好ましい。その理由の詳細は必ずしも明らかでないが、4−(ジアルキルアミノ)ピリジンが、水中で、それの長鎖のアルキルによる優れた脂溶性と二つの窒素原子による親水性とを示す結果、反応系で懸濁しエマルジョンを形成し、バイリス−ヒルマン反応がこのエマルジョン部位で速やかに進行するからであると推察される。
【0037】
この水系触媒は、例えば電子吸引基が結合して共役しているアルケン化合物である求電子試薬とそれに反応する求核試薬とによる炭素−炭素結合形成反応にも、用いられる。
【0038】
求電子試薬であるアルケン化合物又はアルキン化合物も、電子吸引基が、不飽和基に結合して、共役しα,β−不飽和化合物となった電子不足活性のアルケン化合物又はアルキン化合物であり、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルのような(メタ)アクリル酸エステル、ケイ皮酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、β−ニトロスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、ケイ皮アルデヒド、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、ベンジリデンマロン酸エステル、プロピオル酸エステル、フェニルプロピオル酸エステル、塩化ビニルが挙げられる。これらのエステルは、前記の求核試薬と同様なエステルが挙げられる。そのアルケン化合物のβ位が、電子吸引基の所為でα位よりも電子密度が低くなっているから、求核試薬、例えば活性水素化合物、より具体的には脂肪族モノアルデヒド類、脂肪族モノケトン類、脂肪族モノエステル類、脂肪族β−ジケトン類、脂肪族β−ジエステル類、脂肪族β−ケトエステル類、脂肪族β−ケトニトリル類、脂肪族β−ニトロケトン類、脂肪族β−ニトロエステル類から生じるα位−活性水素含有炭素により、求核攻撃される。その結果、新たな炭素−炭素結合が形成される。このような炭素−炭素結合形成反応は、例えば、マイケル(Michael)反応が挙げられる。
【0039】
求電子試薬であるアルケン化合物に反応する求核試薬は、好ましい具体例として、
-(CO)-CHR-(CO)R(但し、R-(CO)-及び-(CO)Rは、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基を示し、R-は、水素原子、アルキル基、芳香族基を示す。又は、R-(CO)-CHR-は、シクロアルカノン、ラクトン、ラクタムのような環を形成した基、-(CO)Rは、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基を示す。)が挙げられる。
【0040】
水系触媒である4−(ジアルキルアミノ)ピリジンをマイケル反応に用いる場合、媒質が、水溶性有機溶媒のみ、例えばテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノールであっても、水のみであっても、それらの混合物であっても、マイケル反応の収率は、高い。その場合、4−(ジアルキルアミノ)ピリジンのジアルキルアミノ基の両アルキルは、炭素数1〜18で同一又は異なっていてもよい。
【0041】
このようなマイケル反応は、アルケン化合物とそれに反応する求核試薬である各基質、触媒、媒質が適切でなければ、特異性に欠け、また進行し難かったり副反応を生じ易かったりするものである。この水系触媒を用いると、水溶性媒質、とりわけ水中で、マイケル反応が、効率よく、きれいに進行する。
【0042】
特に、α位未置換のβ−ケトエステルへのアクリル酸メチルのマイケル付加反応の場合、4−(ジ−短鎖アルキルアミノ)ピリジン例えば4−ジメチルアミノピリジンを用いるとα位へマイケル付加反応が1回しか起こらないのに対し、4−(ジ−長鎖アルキルアミノ)ピリジン例えば4−ジオクチルアミノピリジンを用いるとα位へマイケル付加反応が2回繰返して速やかに起こる。このように水性触媒を変えるだけで、同じ基質から構造の異なる生成物の合成を制御できる。またα位一置換や環状のβ−ケトエステルへのアクリル酸メチルやアクリロニトリルのマイケル付加反応の場合、4−(ジ−長鎖アルキルアミノ)ピリジン例えば4−ジオクチルアミノピリジンを用いる方が4−(ジ−短鎖アルキルアミノ)ピリジン例えば4−ジメチルアミノピリジンを用いるよりも反応速度が速い。
【0043】
さらに、求核試薬R-(CO)-CHR-(CO)Rに、求電子試薬であるプロピオル酸エステル類縁体がマイケル付加反応する場合には、瞬時〜10分間程度の極めて短時間で反応が完結する。
【0044】
炭素−炭素結合形成反応は、0℃〜常温で行ってもよく、加熱下で行ってもよい。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の水系触媒を用いて、炭素−炭素結合を形成させた具体例を示す。
【0046】
先ず、水系触媒となる4−(ジアルキルアミノ)ピリジンを、前記化学反応式(I)に従い、合成した。
【0047】
(合成実施例1 4−(ジデシルアミノ)ピリジンの合成)
(工程1-1 4−アミノピリジンへのデカン酸塩化物の付加)
デカン酸塩化物(4.77mL、23mmol)の塩化メチレン(5mL)溶液を、0℃で4−アミノピリジン(2.00g、21mmol)とジイソプロピルエチルアミン(10.973mL、63mmol)との塩化メチレン(15mL)溶液に撹拌しながら加えてから、終夜、撹拌した。その後、その反応混合物を、80℃に加熱して2時間還流してから、室温まで放冷した。それに塩化メチレンを加えてから、分液漏斗へ移し替え、水で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、その溶媒を減圧下で留去すると、淡黄色結晶のN−(4−ピリジル)デカン酸アミドが、75%の収率で得られた。
【0048】
(工程1-2 N−(4−ピリジル)デカン酸アミドの還元)
窒素ガス雰囲気下、LiAlH(0.594g、14.4mmol)の無水テトラヒドロフラン(THF)の12mL懸濁液に、N−(4−ピリジル)デカン酸アミド(2.98g、9.26mmol)の無水THF(12mL)の溶液を、穏やかに還流する程度の速度で1.5時間かけて、加えた。その反応混合物を、60℃の水浴で終夜、還流させた後、窒素ガス雰囲気を開放して0℃に冷却しながら、水を加えて、過剰のLiAlHを分解した。その溶液を1M硫酸水溶液に投入した後、THFを減圧下で留去し、その水溶液を分液漏斗へ移し替え、エーテルで洗浄した。その水相をNaOH錠剤の添加によりアルカリ性にした。このアルカリ性水溶液からエーテルで抽出を繰り返し、エーテル抽出物を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥し、その溶媒を減圧下で留去すると、4−(デシルアミノ)ピリジンが、64%の収率で得られた。
【0049】
(工程1-3 4−(デシルアミノ)ピリジンへのデカン酸塩化物の付加)
デカン酸塩化物(1.66mL、8mmol)の塩化メチレン(3.5mL)溶液を、0℃で4−(デシルアミノ)ピリジン(1.64g、7mmol)とジイソプロピルエチルアミンとの塩化メチレン(3.66mL)溶液に撹拌しながら加えてから、終夜、撹拌した。その後、その反応混合物を、80℃に加熱して2時間還流してから、室温まで放冷した。それに塩化メチレンを加えてから、分液漏斗へ移し替え、水で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、その溶媒を減圧下で留去すると、N−デシル−N−ピリジン−4−イルデカン酸アミドを、68%の収率で得た。
【0050】
(工程1-4 N−デシル−N−ピリジン−4−イルデカン酸アミドの還元)
アルゴンガス雰囲気下、BH−THF溶液(1M、6.5mL、6.5mmol)に、室温で撹拌しながら、N−デシル−N−ピリジン−4−イルデカン酸アミド(500mg、1.3mmol)の無水THF(2mL)の溶液を、加えた。その反応混合物を、70℃の水浴で終夜、還流させた。放冷してから、水を加えた。その後、その溶液を1M硫酸水溶液に投入し、THFを減圧下で留去し、その水溶液を分液漏斗へ移し替え、クロロホルムで洗浄した。その水相をNaOH錠剤の添加によりアルカリ性にした。このアルカリ性水溶液からクロロホルムで2回抽出を繰り返し、得られた有機層を合わせて無水炭酸カリウムで乾燥し、その溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を、クロロホルム:メタノール(体積比で15:1)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、塩化メチレン/酢酸エチルから再結晶すると、白色結晶の4−(ジデシルアミノ)ピリジンの282.6mgが、58%の収率で得られた。
【0051】
この4−(ジデシルアミノ)ピリジンの理化学分析データは、以下の通りである。
融点 142.0-150.0℃(塩化メチレン/酢酸エチルから再結晶)
IR(KBr) ν 2952, 2922, 2850, 1602, 1537, 1517, 1489 cm-1
1H-NMR(CDCl3,400MHz) d 0.88(6H, t, J=6.7Hz), 1.27-1.31(28H, m), 1.56(4H, m), 3.25(4H, t, J=7.7Hz), 6.41(2H, dd, J=5.1, 1.5Hz), 8.16(2H, dd, J=5.1, 1.5Hz).
13C-NMR(CDCl3,100MHz) d 14.09(x2), 22.64(x2), 26.92(x2), 26.99(x2), 29.27(x2), 29.42(x2), 29.51(x2), 29.59(x2), 31.85(x2), 50.14(x2), 106.27(x2), 149.83(x2), 152.34.
元素分析 理論値(C25H46N2・2H2O):C,73.12; H,12.27; N,6.82. 実測値:C,73.26; H,12.16; N,6.66.
【0052】
この理化学分析データは、4−(ジデシルアミノ)ピリジンであることを支持する。
【0053】
(合成実施例2〜3 4−(ジオクチルアミノ)ピリジン及び4−(ジペンチルアミノ)ピリジンの合成)
合成実施例1のデカン酸塩化物に代えて、オクタン酸塩化物とペンタン酸塩化物とを夫々用いたこと以外は、合成実施例1と同様にして、4−(ジオクチルアミノ)ピリジン及び4−(ジペンチルアミノ)ピリジンを得た。
【0054】
前記と同様、理化学分析を行ったところ、その分析データは、これらの構造を支持する。
【0055】
市販の4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)と、得られた4−(ジアルキルアミノ)ピリジンとを水系触媒として用いて、炭素−炭素結合を形成させた。
【0056】
求核試薬であるアルケン化合物に求電子試薬を反応させて炭素−炭素結合を形成させる反応として、バイリス−ヒルマン反応を行った。
【0057】
実施例1〜14に、水系触媒としてDMAP又は4−(ジデシルアミノ)ピリジンを用い様々な水溶性媒質中でバイリス−ヒルマン反応を行った例を、示す。
【0058】
(実施例1)
求電子試薬である4−ニトロベンズアルデヒド(151.12mg、1mmol)と、水系触媒であるDMAP(12.217mg、0.1mmol)とを、媒質である水2mLに加えて撹拌し、求核試薬としてアルケン化合物であるアクリル酸メチル(0.27mL、3mmol)を、室温で加え、66時間反応させた。反応後、抽出して溶媒を減圧下で留去し、その非精製物のH−核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)法で測定した。別途単離したバイリス−ヒルマン反応生成物のベンジル位のHのピークの積分値と4−ニトロベンズアルデヒドのアルデヒドのHのピークの積分値との比から算出することにより、変換収率を求めた。その結果を、表1に示す。
【0059】
(実施例2〜12、比較例1〜4)
実施例1中の水系触媒、媒質、反応時間、反応温度を表1に示した条件に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、変換収率を求めた。その結果を、まとめて表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から明らかな通り、実施例1〜4のように、水中、室温〜40℃でDMAPを用いて反応させた場合、数%の変換収率で反応が進行したが、水中、同温で4−(ジデシルアミノ)ピリジンを用いて反応させた場合、約60〜70%という劇的に高い変換効率で反応が進行した。その結果の違いは、DMAPを用いた場合、この基質が溶けず固体のままで十分に分散していない状態であったため反応が進行し難いのに対し、4−(ジデシルアミノ)ピリジンを用いた場合、基質や水系触媒が水に完全に溶解していないが撹拌によって速やかに分散することに、起因しているものと推察される。
【0062】
実施例5〜6のように、アセトニトリル中、室温でDMAPを用いて反応させた場合、比較的高い変換収率で反応が進行したが、4−(ジデシルアミノ)ピリジンを用いた場合、水中での場合と同等の約70%という劇的に高い変換効率で反応が進行した。
【0063】
実施例7〜12のように、媒質が、水/1,4-ジオキサン混合溶媒、テトラヒドロフラン、水/メタノール混合溶媒、水/2-プロパノール混合溶媒である場合も、水やアセトニトリルの場合ほどではないが比較的速やかに反応が進行した。
【0064】
これらDMAPや4−(ジデシルアミノ)ピリジンは、水中や水溶性媒質中、とりわけ水中で、通常反応し難いバイリス−ヒルマン反応を促進させる触媒として機能する。このような水や水溶性溶媒は、水不溶性有機溶媒よりも、廃棄処理が簡便で済むので、工業的な大量生産に向いている。
【0065】
一方、比較例1〜4のように難燃性有機溶媒の塩化メチレンや、二層に分離している水/トルエンのような媒質でも、少なからず反応は進行するが、媒質分離処理や廃棄処理が面倒であるから、工業的な大量生産には向かない。
【0066】
次いで、実施例13〜19に、水系触媒として、アルキルの鎖長が異なる、DMAP、4−(ジペンチルアミノ)ピリジン、4−(ジオクチルアミノ)ピリジン、4−(ジデシルアミノ)ピリジンを夫々0.1又は0.2当量用いて、水中でバイリス−ヒルマン反応を行った例を示す。
【0067】
(実施例13〜19)
実施例1中の水系触媒、反応時間を表2に示した条件に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、変換収率を求めた。その結果を、まとめて表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
表2から明らかな通り、4−(ジアルキルアミノ)ピリジンは、そのアルキルの鎖長によって触媒効果が異なっており、これらの基質でバイリス−ヒルマン反応させる場合には、アルキルが鎖長1のメチル又は鎖長8のオクチルである場合よりも鎖長5のペンチル又は鎖長10のデシルである場合の方が、またそれの濃度の高い方が、速やかに反応を進行させ、高い変換収率を示した。その結果の違いは、DMAPや4−(ジオクチルアミノ)ピリジンを用いた場合、この基質又はこの水系触媒が溶けず固体のままで浮遊したり反応容器壁に付着したりして十分に分散していない状態であったため反応が進行し難いのに対し、4−(ジペンチルアミノ)ピリジンや4−(ジデシルアミノ)ピリジンを用いた場合、基質や水系触媒が水に完全に溶解していないが撹拌によって速やかに分散することに、起因しているものと推察される。4−(ジアルキルアミノ)ピリジンのアルキルの鎖長に比例した変換収率とならないことから、基質の種類や濃度、水系触媒の種類や濃度がエマルジョン形成及びそれに起因する高い変換効率のための重要な因子となっていることが、示唆された。
【0070】
次いで、実施例20〜22に、基質として様々なアルケン化合物を用いて、4−(ジデシルアミノ)ピリジン存在下、水中でバイリス−ヒルマン反応を行った例を、示す。
【0071】
(実施例20〜22)
実施例1中の水系触媒、アルケン化合物、反応時間、反応温度を表3に示した条件に代えたことと、後処理したこと以外は、実施例1と同様にして、バイリス−ヒルマン反応を行った。後処理は、反応混合物をクロロホルムで繰り返して抽出し、その有機層を合わせて、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した後、得られた粗生成物を、クロロホルム:メタノール(体積比で50:1)を流出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したというものである。単離収率を求めた結果を、まとめて表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
表3から明らかな通り、アルケン化合物がアクリル酸エステルである場合、エステル基の脂溶性が低い程、その収率が高い。
【0074】
次いで、実施例23〜26に、基質として様々なベンズアルデヒド類を用いて、4−(ジデシルアミノ)ピリジン存在下、水中でバイリス−ヒルマン反応を行った例を、示す。
【0075】
(実施例23〜26)
実施例1中の水系触媒、ベンズアルデヒド類、アルケン化合物の量、反応時間、反応温度を表4に示した条件に代えたことと、後処理したこと以外は、実施例1と同様にして、バイリス−ヒルマン反応を行った。後処理は、反応混合物をクロロホルムで繰り返して抽出し、その有機層を合わせて、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した後、得られた粗生成物を、クロロホルム:メタノール(体積比で50:1)を流出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したというものである。単離収率を求めた結果を、まとめて表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
表4から明らかな通り、何れのベンズアルデヒド類でもバイリス−ヒルマン反応が進行し、特に3−又は4−ニトロベンズアルデヒド類の場合、その収率が高い。
【0078】
また、求電子試薬であるアルケン化合物に、求核試薬の基質を反応させて炭素−炭素結合を形成させる反応として、マイケル反応を行った。
【0079】
求核試薬として様々なβ−ケトエステルを用いたが、先ず実施例27に、環状のβケトカルボン酸エステルである2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチルを用いた例を、示す。
【0080】
(実施例27)
求核試薬である2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチル(0.127mL,1mmol)と、4−(ジデシルアミノ)ピリジン(37.427mg、0.1mmol)とを、媒質である水2mLに加えて、撹拌し、求電子試薬としてアルケン化合物であるアクリル酸メチル(0.18mL、2mmol)を、室温で加え、1.5時間撹拌させた。反応混合物を酢酸エチルで繰り返して抽出し、その有機層を合わせて、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した後、得られた粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル(体積比で4:1〜2:1)を流出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。生成物としてマイケル反応付加物を、表5で示すように、>99%の単離収率で得た。
【0081】
【表5】

【0082】
なお、水系触媒が4−デシルアミノピリジンであってもDMAPであっても、マイケル反応が進行するが、特に4−デシルアミノピリジンであると高収率で目的とする生成物が得られた。水系触媒として4−(ジデシルアミノ)ピリジンを用いた場合、テトラヒドロフランやアセトニロリルやメタノールのような水溶性有機溶媒中や塩化メチレンのような水不溶性有機溶媒中で反応を行うよりも、水中で反応を行った方が、遥かに速やかできれいに反応が進行し、しかも副反応がなかった。求核試薬として2−オキソシクロヘキサンカルボン酸メチルを用いた場合、2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチルを用いた場合にほぼ定量的に生成物が得られたほどの収率には、遥かに及ばなかった。
【0083】
次いで、求核試薬として2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチルを用い、別な求電子試薬であるアクリロニトリルによるマイケル反応を行った。その例を、実施例28〜29に示す。
【0084】
(実施例28〜29)
実施例27中のアクリル酸メチルに代えてアクリロニトリルを用いたことと、水系触媒及び反応時間を表6に示した条件に代えたこと以外は、実施例27と同様にして、マイケル反応を行い、生成物を単離して、収率を求めた。その結果を、まとめて表6に示す。
【0085】
【表6】

【0086】
表6から明らかな通り、DMAPを用いた場合よりも、4−ジ−n−デシルアミノピリジンを用いた場合の方が、反応速度が速く、複雑で立体障害の大きな4級炭素を有する付加生成物が、短時間に高収率で得られた。
【0087】
次に求核試薬として鎖状であってα位未置換のβケトカルボン酸エステルであるアセト酢酸エチルを用い、求電子試薬としてアクリル酸メチルを用いた例を、示す。
【0088】
(実施例30〜33)
実施例27中の2−オキソシクロヘキサンカルボン酸メチルに代えてアセト酢酸エチルを用いたことと、アクリル酸メチル4当量を用いたことと、水系触媒及び反応時間を表7に示した条件に代えたこと以外は、実施例27と同様にして、マイケル反応を行い、生成物を単離して、収率を求めた。その結果を、まとめて表7に示す。
【0089】
【表7】

【0090】
表7から明らかな通り、α位未置換のβ−ケトエステルへのアクリル酸メチルのマイケル付加反応の場合、DMAPを用いるとアクリル酸メチル1分子によるマイケル付加反応が主として起こり生成物Aが得られるのに対し、4−ジ−n−デシルアミノピリジンを用いるとアクリル酸メチル2分子によるマイケル付加反応が繰返して速やかに起こる結果、複雑で立体障害の大きな4級炭素を有する生成物Bが、短時間に高収率で得られた。従って、同じ基質を用いても、触媒を変えるだけで、生成物を制御できる。
【0091】
次に求核試薬として鎖状であってα位置換のβケトカルボン酸エステルである3-ケト−2−メチル酪酸エチルを用い、求電子試薬としてアクリル酸メチルを用いた例を、示す。
【0092】
(実施例34〜35)
実施例27中の2−オキソシクロヘキサンカルボン酸メチルに代えて3−ケト−2−メチル酪酸エチルを用いたことと、水系触媒及び反応時間を表8に示した条件に代えたこと以外は、実施例27と同様にして、マイケル反応を行い、生成物を単離して、収率を求めた。その結果を、まとめて表8に示す。
【0093】
【表8】

【0094】
表8から明らかな通り、α位一置換のβ−ケトエステルへのアクリル酸メチルのマイケル付加反応の場合、DMAPを用いた場合よりも、4−ジ−n−デシルアミノピリジンを用いた場合の方が、反応速度が速く、複雑で立体障害の大きな4級炭素を有する付加生成物を、短時間に高収率で得ることができた。
【0095】
次に求電子試薬として三重結合を有するプロピオル酸メチルを用い、求核試薬として2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチルを用いた例を、示す。
【0096】
(実施例36)
実施例27中のアクリル酸メチルに代えてプロピオル酸メチルを用いたことと、水系触媒として4−(ジ-n-デシルアミノ)ピリジンを用いたことと、反応時間を表8に示した条件に代えたこと以外は、実施例27と同様にして、マイケル反応を行い、生成物を単離して、収率を求めた。その結果を、表9に示す。
【0097】
【表9】

【0098】
表9から明らかな通り、ほぼ瞬時に反応が完結し、プロピオル酸メチルが付加したアクリル酸誘導体が、E/Z混合物として高収率で得られた。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の水系触媒は、水溶性媒質中、特に水溶性有機溶媒中や水中で、アルケン化合物と求核試薬又は求電子試薬とを反応させて炭素−炭素結合を形成する反応の触媒として、有用である。
【0100】
この水系触媒を用いた炭素−炭素結合形成方法は、化成品・医薬品の中間体として有用な化合物を選択的に高い純度で製造するのに、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子吸引基が結合して共役しているアルケン化合物の求核試薬とそれに反応する求電子試薬とによる炭素−炭素結合形成反応、又は電子吸引基が結合して共役しているアルケン化合物又はアルキン化合物の求電子試薬とそれに反応する求核試薬とによる炭素−炭素結合形成反応を、水溶性媒質中で促進させる(ジアルキルアミノ)ピリジンが、含有されていることを特徴とする炭素−炭素結合形成反応の水系触媒。
【請求項2】
前記(ジアルキルアミノ)ピリジンが、4−(ジアルキルアミノ)ピリジンであることを特徴とする請求項1に記載の水系触媒。
【請求項3】
前記4−(ジアルキルアミノ)ピリジン中のジアルキルアミノ基の両方のアルキルの炭素数が、1〜18であることを特徴とする請求項2に記載の水系触媒。
【請求項4】
前記4−(ジアルキルアミノ)ピリジン中のジアルキルアミノ基の少なくとも片方のアルキルの炭素数が、最低でも5であることを特徴とする請求項3に記載の水系触媒。
【請求項5】
前記4−(ジアルキルアミノ)ピリジン中のジアルキルアミノ基の両方のアルキルの炭素数が、5〜18であることを特徴とする請求項3に記載の水系触媒。
【請求項6】
下記化学式
【化1】

(式中、alkylは炭素数5〜18のアルキル基)で表されることを特徴とする(ジアルキルアミノ)ピリジン。
【請求項7】
4−(ジアルキルアミノ)ピリジンであることを特徴とする請求項6に記載の(ジアルキルアミノ)ピリジン。
【請求項8】
電子吸引基が結合して共役しているアルケン化合物の求核試薬とそれに反応する求電子試薬とを、又は電子吸引基が結合して共役しているアルケン化合物又はアルキン化合物の求電子試薬とそれに反応する求核試薬とを、水溶性媒質中で、(ジアルキルアミノ)ピリジン含有水系触媒存在下、炭素−炭素結合形成反応させることを特徴とする炭素−炭素結合形成方法。
【請求項9】
前記(ジアルキルアミノ)ピリジンが、4−(ジアルキルアミノ)ピリジンであることを特徴とする請求項8に記載の炭素−炭素結合形成方法。
【請求項10】
前記水溶性媒質が、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、及び/又は水であることを特徴とする請求項8に記載の炭素−炭素結合形成方法。
【請求項11】
前記水溶性媒質が、水のみからなることを特徴とする請求項8に記載の炭素−炭素結合形成方法。
【請求項12】
前記アルケン化合物の求核試薬がアクリル酸エステル、ケイ皮酸エステル、アクリル酸アミド、β−ニトロスチレン、アクリロニトリル、アクロレイン、ケイ皮アルデヒド、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、及び/又は塩化ビニルであり、それに反応する前記求電子試薬がアルデヒド、及び/又はそれのイミンであり、前記(ジアルキルアミノ)ピリジン含有水系触媒のアルキルの両方のアルキルの炭素数が5〜18であることを特徴とする請求項8に記載の炭素−炭素結合形成方法。
【請求項13】
前記アルケン化合物又はアルキン化合物の求電子試薬が(メタ)アクリル酸エステル、ケイ皮酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、β−ニトロスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、ケイ皮アルデヒド、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、ベンジリデンマロン酸エステル、プロピオル酸エステル、フェニルプロピオル酸エステル、及び/又は塩化ビニルであり、それに反応する前記求核試薬が脂肪族モノアルデヒド、脂肪族モノケトン、脂肪族モノエステル、脂肪族β−ジケトン、脂肪族β−ジエステル、脂肪族β−ケトエステル、脂肪族β−ケトニトリル、脂肪族β−ニトロケトン、及び/又は脂肪族β−ニトロエステルであり、前記(ジアルキルアミノ)ピリジン含有水系触媒のアルキルの両方のアルキルの炭素数が1〜18であることを特徴とする請求項8に記載の炭素−炭素結合形成方法。

【公開番号】特開2009−136856(P2009−136856A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21020(P2008−21020)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(504174180)国立大学法人高知大学 (174)
【Fターム(参考)】