説明

炭素アルミニウム複合化合物及び炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物

【課題】耐熱性;耐燃性;酸、アルカリ、有機溶媒等に対する耐薬品性;導電性;軽量性等に優れた化合物やそれを含有する組成物を比較的安価に得ること、化学的に有害な物質や形状的に有害な物質を、安全な操作によって無害な物質へと変換させる資源リサイクルにも貢献する廃棄物処理方法を提供すること。
【解決手段】無機化合物粒子又は無機化合物粒子を含有する複合物に、ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する水溶液を含浸させ、260℃〜2800℃で焼成してなるものであることを特徴とする炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体であり、また、針状無機化合物を含有する廃棄物を、ポリ塩化アルミニウム水溶液を吹き付けながら剥離してから水溶性有機物を含有させ、焼成して該炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を形成しつつ廃棄物を処理する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素アルミニウム複合化合物、及び炭素アルミニウム複合化合物が被覆された無機化合物、並びに結果的にかかる化合物が生成されるような廃棄物の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐熱性を有する組成物は種々知られているが、その耐熱性については未だ十分ではなかった。更に、耐熱性に加えて難燃性や導電性が付与され、コスト的にも有利な組成物は殆ど知られていない。例えば、炭素化合物の一種であるグラファイトは、高い耐熱性を有しているが、空気中で500℃〜700℃以上に加熱すると燃焼し、耐熱性と難燃性を併せ持つものではなかった。また、一般に金属や合金は、難燃性は有するが耐熱性に劣り、白金、タングステン等の金属は、耐熱性を併せ持つが、密度が大きく軽量化が望めず、また、コスト的にも極めて不利であった。
【0003】
一方、近年、廃棄物を無害化して処理することの重要性が高まってきている。特に、悪魔の鉱物、静かな時限爆弾と呼ばれて恐れられているアスベスト(クリソタイル、クロシドライト等の各種石綿類)、合成ゾノトライト、ガラス繊維等の針状無機化合物(無機ファイバー)の処理は、廃棄処理中に飛散し易いこと、毒性を発揮する針状形状を毒性を発揮しないような形状に変形することが難しいこと等から、その廃棄処理に関して更なる進展が望まれている。
【0004】
特に、アスベスト廃棄物は地球規模の問題であり、早急に解決しなければ後世に禍根を残すことになるといわれており、日本においても、年間100万トンの廃棄処理量が予測されている。しかしながら、飛散性のアスベスト廃棄物の処理に関し現在知られているものとして、1500℃以上の高温でプラズマ溶融スラグ化技術、ハロゲン化合物を使用した700℃での無害化技術等があるが、膨大なエネルギーを必要とするか、従前の有害物反応を単に転用しているに過ぎず、コストパフォーマンスや安全性に優れたものはなかった。
【0005】
また、アスベストのように中皮腫等の要因とはならないが、アスベストの代替品である合成ゾノトライトも、結合性に劣り、表面層繊維が容易に離脱し、離脱したものが浮遊し、それを吸引する恐れが高く、近い将来に健康被害が発生していることが発覚する可能性が高い。そのため、廃棄処理の問題に関しても改良技術が今から望まれている。
【0006】
また、ガラス繊維はあまり浮遊しないが、チクチクとした痒み等、廃棄物処理の作業に悪影響を及ぼすものである。すなわち、例えば、船舶、浄化槽、浴槽等の材料に頻繁に用いられている「不飽和ポリエステルにガラス繊維を分散させた複合材料であるGFRP」についても、その廃棄物処理に優れたものがなく、ガラス繊維の廃棄処理の問題に関しても早期解決が望まれている。
【0007】
一方、ポリ塩化アルミニウムは、主に水質浄化剤として用いられており、焼成して耐熱性組成物や難燃性組成物を生成させる用途にはそもそも殆ど用いられていない。特許文献1及び特許文献2には、ポリ塩化アルミニウムと土壌とを含有する混練物を焼成してなる水質浄化材が記載されているが、炭素を含有する耐熱性組成物等、有用な物が得られるというものではなく、また、廃棄物の処理とは関係がなかった。
【0008】
ポリ塩化アルミニウムを用いた廃棄物の処理で、かつ焼成を伴う技術としては、特許文献3ないし特許文献5記載のものが知られているが、それらは何れも、ポリ塩化アルミニウムを凝集剤として用い、その凝集により生じたスラッジ(汚泥)を焼成する汚泥廃棄物の乾燥処理方法等であって、一般廃棄物の処理方法ではなく、毒性のある針状無機化合物の処理方法ではなかった。しかも、それらの処理によって生成されるものは炭素を含むものではなく、耐熱性、難燃性、導電性等に優れた有用な組成物を得て、資源の再利用を図るものでもなかった。
【0009】
近年、毒性のある廃棄物の処理に関して優れた技術が望まれており、更に資源リサイクルの観点からも、処理のコストダウンの観点からも、かかる処理によって生じた物質を有効に利用できる技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−304472号公報
【特許文献2】特開2000−325781号公報
【特許文献3】特開平6−090616号公報
【特許文献4】特開2003−019500号公報
【特許文献5】特開2005−254195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、耐熱性;耐燃性;酸、アルカリ、有機溶媒等に対する耐薬品性;導電性;軽量性等に優れた化合物やそれを含有する組成物を比較的安価に得ることにある。更に、化学的に有害な物質や形状的に有害な物質を、安全な操作によって無害な物質へと変換させる処理方法を提供することにある。また、資源リサイクルにも貢献する廃棄物処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の水溶性アルミニウム化合物と炭素源として有機化合物を用い、それらを焼成することによって、耐熱性、耐燃性、耐薬品性、導電性、軽量性、コストパフォーマンス等に優れた複合化合物やそれら含有する組成が得られることを見出して本発明を完成するに至った。また、特定の水溶性アルミニウム化合物と炭素源として有機化合物を用い、それらを有害物質に浸透させて焼成することによって容易に無害化できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する水溶液を260℃〜2800℃で焼成してなるものであることを特徴とする炭素アルミニウム複合化合物を提供するものであり、また、かかる炭素アルミニウム複合化合物を含有することを特徴とする耐熱性組成物を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、無機化合物粒子又は無機化合物粒子を含有する複合物に、ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する水溶液を含浸させ、260℃〜2800℃で焼成してなるものであることを特徴とする炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を提供するものであり、また、かかる炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物を含有することを特徴とする耐熱性組成物を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、針状無機化合物を含有する廃棄物を、ポリ塩化アルミニウムを含有する水溶液を吹き付けながら剥離し、そこに有機物を含有させた後、260℃〜2800℃で焼成することを特徴とする廃棄物の処理方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、ポリ塩化アルミニウム及び有機物を浸透定着させ焼成することを特徴とするミネラルファイバー炭化法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、無機粒子に対し糖成分等の有機炭素化合物に加えPAC、ホウ砂等の不燃剤をブレンドし浸透定着させ焼成炭化させることを特徴とする無機化合物炭化法を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、高粘性炭水化合物水溶液に難燃剤、不燃剤を複合させた処理剤を疎水性プラスチック素材表面層に被覆して酸素遮断し焼成炭化させることを特徴するプラスチック等の炭化水素化合物炭化法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐熱性、軽量性等に優れた新規な複合化合物やそれを含有する新規な組成物を極めて安価に得ることができる。また、耐燃性、耐薬品性、導電性等にも優れた新規な複合化合物を得ることができる。
【0020】
また、化学的又は形状的に有害な物質に対して、安全な操作によって無害な物質へと変換させる方法を提供することができる。更にその際、該無害化された無機化合物の少なくとも表面を上記複合化合物が被覆することによって、更に優れた構造体を得ることができる。また、上記方法を廃棄物の処理に適用することによって、上記化合物、組成物又は構造体が得られるので、資源リサイクルにも貢献することができる。
【0021】
本発明によれば、静かな時限爆弾と言われる飛散性アスベスト繊維を高温耐酸化性炭素粒子として再生することで有価物となる。また、健康上の障害も解消される。従って、特別管理型埋め立て処分場の低減化可能である。また、熱に極めて優れた特性をもつアスベスト繊維組織内に有機炭素化合物を浸透拡散する技術であり、無害な炭化処理方法である。また、省エネルギー化を考慮し熱分解を補助する、安全、適切な薬剤の選定をすることができる。この基本的な炭化技術操作を駆使することで、飛散性ファイバーのみならず、産業廃棄物の多くを有価物として炭素化できる。
【0022】
また、GFRP(マトリクス・不飽和ポリエステル/ガラス繊維)廃棄物等も、本発明に含まれる炭素化処理方法で、有効な炭素素材として再利用が可能となる。本発明に含まれる産業廃棄物炭化法は、省エネルギーで飛散性アスベストを炭素粒子化して無害化することができる。その他、魚網、スチロール等のプラスチックや液状ゴム等を再資源化し、その炭素化組成物を資源再生化して、有価物として有効利用が可能である。本発明の炭素アルミニウム複合化合物は、従来のカーボンの常識を覆すほど不燃性であり、特異な構造の軽量高温耐酸化性断熱カーボンである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例9で得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を、屈折率n25℃=1.550とした位相差顕微鏡で、100倍で測定した写真である。
【図2】実施例14で得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を、屈折率n25℃=1.550とした位相差顕微鏡で、100倍で測定した写真である。
【図3】実施例9で得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体の、CuKα線を用いた粉末X線回折パターンである。
【図4】実施例14で得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体の、CuKα線を用いた粉末X線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0025】
<炭素アルミニウム複合化合物>
本発明は、ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する水溶液を焼成してなる炭素アルミニウム複合化合物に係るものである。ここで「水溶液」中には、水に不溶なものが含まれていて水系分散液となっていてもよい。
【0026】
ここで、「ポリ塩化アルミニウム」とは、[Al(OH)Cl6−n (1<n<5)で表わされる物質で、OHが橋かけしたアルミニウムの多核錯体を主成分とするものの水溶液をいう。製造方法は特に限定はないが、水酸化アルミニウムを塩酸に溶解させ、加圧下又は要すれば溶解助剤を加え、これに重合促進剤として硫酸基を添加して反応させたものが好ましい。溶解助剤や重合促進剤は、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定はされない。上記式中、mは10以下が好ましい。なお、以下、上記水溶液を「PAC」と略記する場合がある。本発明には、「ポリ塩化アルミニウム」又は「PAC」として、水の浄化用又は廃水処理用に一般に市販されているものが好適に使用できる。使用されるPAC中のアルミニウム含有量は特に限定はないが、3〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、8〜15質量%が特に好ましい。なお、適宜、更に水を追加して使用することもできる。
【0027】
上記「有機物」は、本発明の炭素アルミニウム複合化合物の炭素源として必須である。「有機物」は特に限定はないが、常温で液体の有機物又は後述する水溶性有機物が、ポリ塩化アルミニウムを含有する水系分散液に分散又は溶解し易い点で好ましい。「有機物」としては固体の有機物も使用できる。例えば、本発明を後述する「針状無機化合物を含有する廃棄物の処理方法」に適用するときには、該針状無機化合物を分散させている樹脂も上記「有機物」として好適である。かかる樹脂としては、例えば、アスベスト、ガラス繊維等を分散させている(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。
【0028】
常温で液体の有機物中、水溶性有機物でない有機物であっても、炭素粒子、粘土鉱物粒子、ホウ砂及び木質粒子からなる群より選ばれた1種以上の粒子、又は、アスベスト等の無機化合物粒子存在下に、容易にPAC中に溶解又は分散する。極めて撥水性が高い非極性系有機物であっても、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、エタノール等のアルコール類と水との混合液に、容易に溶解又は分散させることが可能である。従って、水酸化ナトリウム等のアルカリ化合物、エタノール等のアルコール類等を配合することも好ましい。
【0029】
「常温で液体の有機物」としては、以下の「水溶性有機物」のうち常温で液体のものの他、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル等のエステル類;ラウリン酸エステル、リノール酸エステル等の長鎖脂肪酸エステル類;植物油;動物油;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等の塩素含有炭化水素類;臭素又はヨウ素含有炭化水素類;トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;石油、石炭、コールタール等の埋蔵物又はその留分;等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いられる。
【0030】
純水には不溶の有機物であっても、意外にもポリ塩化アルミニウム水溶液には、溶解したり、また均一に分散したりする場合がある。従って、「有機物」としては、焼成して得られる「炭素アルミニウム複合化合物」や「炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体」の、難燃性、耐熱性等の物性を優先的に考慮して選択することができる。焼成により得られたものの難燃性を向上させるには、特に、塩素、臭素及び/又はヨウ素含有炭化水素類が好ましい。塩素含有炭化水素類としては、特にポリ塩化アルミニウム水溶液に溶解したり均一に分散したりするものが好ましい。
【0031】
「固体の有機物」としては、本発明においては特に限定はない。細片や粒子形状のものが特に好適に用いられる。
【0032】
「有機物」としては、ポリ塩化アルミニウム水溶液に対する溶解性、環境特性等の点で、水溶性有機物が好ましい。ここで、「水溶性」とは、水に易溶性である必要はなく、僅かでも最適温度で水に実質的に溶解すればよい。従って、「水溶性有機物を含有する水系分散液」には、水溶性有機物が溶解と共に一部分散されていてもよい。有機物は常に炭素を有するので、「水溶性有機物」としては特に限定はないが、グルコース、フルクトース等の単糖類;シュクロース等の二糖類;でんぷん等の多糖類;配糖体;ソルビット、マンニット等の糖アルコール;メタノール、エタノール、プロパノール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール;アセトン、テトラヒドロフラン等の水溶性溶媒;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマー;等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いられる。
【0033】
中でも、グルコース、フルクトース、シュクロース、でんぷん等の糖類又は糖類の誘導体等が、沸点が高く扱い易いこと、水に対する溶解性が高いこと、安全性が高いこと、安価なこと、焼成により比重の小さい良好な炭素アルミニウム複合化合物を与えること等の点で好ましい。糖類又はその誘導体の形態としては特に限定はないが、上白糖、三温糖等の砂糖;イモ、トウモロコシ等の植物由来のでんぷん若しくはでんぷん系の糊;米粉、餅米粉、小麦粉、トウモロコシ粉等の粉;片栗粉等が上記点から特に好ましい。
【0034】
PACと有機物との配合比率は、良好な炭素アルミニウム複合化合物が生成するように配合すれば特に限定はないが、アルミニウム含有量が10質量%のPACの場合、該PAC100質量部に対して、有機物が10〜400質量部が好ましく、20〜200質量部がより好ましく、30〜100質量部が特に好ましい。アルミニウム含有量が10質量%でないPACの場合には、上記配合比率はアルミニウム換算で比例増減した範囲が好ましい範囲である。
【0035】
PACと水溶性有機物を含有する水系分散液の製造方法は特に限定はされないが、糖類等の水溶性有機物が冷水に難溶の場合は、それを温水に溶解した後に、PACと混合することが好ましい。また、後述する廃棄物の処理方法の場合には、該廃棄物及び「PAC又はPACの水による希釈物」の混合物に対して、後から水溶性有機物の水溶液を加えることが、作業性がよい、廃棄物が存在する場所の有機物による汚染がない、コスト低減等の点で好ましい。「PAC又はPACの水希釈物」の混合物を廃棄物に、かかる溶液を吹き付け等の処理をすることによって、該廃棄物の飛散が抑制されるからであり、該廃棄物に毒性や飛散性がある場合には、特にこの順番で混合する方法が好ましい。
【0036】
PACと有機物を含有する水溶液には、更に、炭素粒子、炭素源粒子、粘土鉱物粒子及びホウ砂からなる群より選ばれた1種以上を含有させることが好ましい。炭素源粒子としては、セルロース系粒子等が特に好ましい。炭素粒子又は炭素源粒子を含有させると、耐熱性、軽量性、耐薬品性、導電性等が極めて上昇し、粘土鉱物粒子やホウ砂を含有させると、耐燃性、耐薬品性等が極めて上昇する。
【0037】
炭素粒子としては、例えば、木炭、竹炭等が挙げられ、炭素源粒子としては、木くず、カンナくず等の木質粒子;廃紙、段ボール、シュレッダー紙等の紙類;オカラ残渣;トウモロコシ、麦、稲等の残渣;籾殻、蕎麦殻等の穀類殻;等が挙げられる。また、粘土鉱物粒子としては、ケイソウ土、ジルコンフラワー、ベントナイト、陶土等が好ましいものとして挙げられる。特に、粘土鉱物粒子中の、Mg、Si、Al、Zr等の元素は、本発明の炭素アルミニウム複合化合物中に含有されることによって、耐熱性、耐薬品性等を更に向上させることができるため好ましい。
【0038】
ホウ砂を含有させると、低温領域で融合してガラス化した成分が酸素を遮断して炭素化が容易となり、また更に、難燃性の極めて高い炭素アルミニウム複合化合物を与えることができる。
【0039】
上記炭素源粒子、粘土鉱物粒子等は、廃棄物に含有されることが多く、かかる廃棄物中の成分によって、得られた炭素アルミニウム複合化合物の上記物性を向上させることが可能となる。従って、性能向上効果と廃棄物処理によるコスト抑制効果の相乗効果を得ることができる。
【0040】
PACと有機物を含有する水溶液の合計量に対する、「炭素粒子、炭素源粒子、粘土鉱物粒子及びホウ砂からなる群より選ばれた1種以上の粒子」の含有量は特に限定はないが、PAC(アルミニウム含有量10質量%)と有機物の合計量100質量部に対し、炭素源粒子の場合は、10〜50質量部が好ましく、25〜35質量部がより好ましく、27〜32質量部が特に好ましい。また、粘土鉱物粒子の場合は、100〜400質量部が好ましく、200〜300質量部が特に好ましい。また、ホウ砂の場合は、1〜20質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましく、5〜6質量部が特に好ましい。PAC中のアルミニウムの含有量に応じて、上記好ましい範囲は比例増減される。
【0041】
PACと有機物を含有する水溶液には、更に、上記以外のその他の物質を配合させることもできる。かかるその他の物質としては、リン酸水素2アンモニウム、リン酸水素ナトリウム等のリン酸(水素)塩;重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の(重)炭酸塩等が挙げられる。これらは、ポリ塩化アルミニウムと有機物と共に焼成されて、炭化を促進したり、炭素アルミニウム複合化合物の耐熱性を更に向上させたりすることができ、pH値の調整剤としても極めて有効である。
【0042】
リン酸(水素)塩又は(重)炭酸塩の配合量は、PAC(アルミニウム含有量10質量%)と有機物を含有する水溶液100質量部に対して、10〜200質量部が好ましい。25〜100質量部が好ましい。30〜70質量部が好ましい。
【0043】
後述する廃棄物の処理方法においては、上記「ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する分散液」には、廃棄物中に含まれる他の成分が含有されていてもよい。これら「他の成分」は、炭素アルミニウム複合化合物の物性を大きく損なわない程度に含有される。「他の成分」としては特に限定はないが、具体的には、例えば、アスベスト、合成ゾノトライト、ガラス繊維等の針状無機化合物をフィラーとして用いたときの、バインダー樹脂が挙げられる。かかるバインダー樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂等の熱可塑性樹脂等の有機樹脂が挙げられる。これらの有機樹脂は、焼成中に一体となって炭素源となるため、含有されることがむしろ好ましい場合がある。
【0044】
本発明の炭素アルミニウム複合化合物は、上記「ポリ塩化アルミニウム及び水溶性有機物を含有する水系分散液」を原料にして焼成工程を経て得られる。水の留去は焼成工程中で行ってもよいが、焼成に先立って、常法に従って水を留去することも好ましい。
【0045】
焼成の方法としては、加熱炉中に静置して焼成する方法、火炎を直接接炎する方法、連続焼成炉に供給する方法、スライダー落下方式による方法等が挙げられる。このうち、カップバーナ等によって、火炎を直接接炎する方法が熱効率の点で好ましい。火炎を直接接炎する方法における燃焼ガスは特に限定はないが、水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、一酸化炭素、都市ガス等が好ましい。
【0046】
焼成は260℃〜2800℃の範囲で行われることが必須である。焼成温度は400℃〜2000℃の範囲が好ましく、600℃〜1800℃の範囲がより好ましく、700℃〜1500℃の範囲が特に好ましく、800℃〜1000℃の範囲が更に好ましい。また、焼成雰囲気は特に限定はなく、真空中;窒素、アルゴン等の不活性気体中;空気、酸素等の活性気体中等の何れでもよい。本発明においては、焼成を空気中で行っても、炭素アルミニウム複合化合物中の炭素が燃えてしまうことがないので、操作の容易さの点からは空気中で焼成を行うことが好ましい。火炎を直接接炎する方法における焼成温度は、熱電対放射温度計センサープローブ(シースサイズは、例えばφ8×500mm)を被対象物の中に差し込むことにより測定し、本発明における上記焼成温度はそのように測定したものとして定義される。
【0047】
焼成の時間としては、特に限定はないが、加熱炉中に静置して焼成する方法においては、10〜60分が好ましく、15〜40分がより好ましく、20〜25分が特に好ましい。また、火炎を直接接炎する方法においては、2分〜30分が好ましく、3分〜20分が好ましく、5〜10分が特に好ましい。
【0048】
なお、焼成は酸素存在下等の酸化雰囲気中で行われてもよいし、非酸化雰囲気中で行われてもよい。酸化雰囲気中で焼成する場合、焼成温度800℃以下では、黒色の炭素アルミニウム複合化合物が生成される。また、非酸化雰囲気中で焼成の場合、焼成温度300〜1200℃では、白色の炭素アルミニウム複合化合物が生成される。酸化雰囲気中、非酸化雰囲気中で、それぞれ上記温度範囲で焼成することが最も好ましい。
【0049】
焼成して得られた炭素アルミニウム複合化合物は、必要に応じて解砕又は粉砕して粒子状又は粉末状のものにすることが、取り扱いの容易さの点で好ましい。得られた「粒子状又は粉末状の炭素アルミニウム複合化合物」は通常黒色であるが、灰色又は無色(白色を含む)であっても本発明の範囲に含まれる。黒色の要因は、炭素化により生成される縮合多環構造によるものと推察されるが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0050】
本発明の「炭素アルミニウム複合化合物」の具体的組成や具体的構造は特に限定されない。炭素部分は、炭素化により黒鉛(グラファイト)構造ができていても、その中間段階である炭素前駆体でもよい。アルミニウムの化学結合状態や物理的配合状態については明らかではなく、従って特に限定はない。なお、本発明の炭素アルミニウム複合化合物は構造が明らかではないため、製造方法によってしか特定できないため製造方法で物を特定したが、本発明の炭素アルミニウム複合化合物には、上記方法で製造され得る物質であれば、如何なる製造方法で製造されたものであっても含まれる。ただし、本発明の炭素アルミニウム複合化合物は、上記方法で製造されることが、製造方法が容易である点、後述する廃棄物の処理方法に適用できる点から好ましい。
【0051】
<炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体>
上記した「ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する水溶液」を、無機化合物粒子又は無機化合物粒子を含有する複合物に含浸させて、それを上記方法で焼成してなるものも、耐熱性、軽量性、難燃性、耐薬品性、導電性等に優れている。この「炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体」の構造は、「無機化合物粒子又は無機化合物粒子を含有する複合物」が焼成を経て、化学的及び/形状的に変化した「無機化合物」の周囲に、上記した炭素アルミニウム複合化合物が被覆した構造のものであってもよいし、該無機化合物粒子中に「ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する水溶液」が浸透し、その状態で同時に焼成されることによって、独自の「無機化合物」を生成していてもよい。また、両者の組合せ、すなわち、芯となる無機化合物粒子が変性し、かつ被覆構造を有するものであってもよい。
【0052】
上記無機化合物粒子としては、種類、形状共に特に限定はない。種類としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、無機着色顔料、アスベスト、合成ゾノトライト、ガラス繊維(ガラスウールも含まれる)等が挙げられる。本発明を廃棄物の処理方法に適用した場合には、上記無機化合物粒子としては、樹脂に一般的に含有されている上記の汎用フィラーが特に好ましい。
【0053】
また、粒子の形状は針状のものであっても非針状のものであってもよいが、針状のものが、廃棄物の処理方法に適用した時に、本発明の前記効果(毒性のある粒子の飛散を抑えての無害化)が有効に奏されるために好ましい。上記無機化合物粒子は針状無機化合物であることが好ましいが、上記針状無機化合物は、アスベスト、合成ゾノトライト又はガラス繊維(ガラスウールも含まれる)であることがより好ましい。アスベストの種類は特に限定はないが、クリソタイル(温石綿、白石綿)等の蛇紋石系;クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライト等の角閃石系のアスベストに適用させることが好ましい。
【0054】
上記した「ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する水溶液」に針状無機化合物を含浸させて焼成した時には、針状の長手方向が何箇所か切れて針状でなくなる。また、針状無機化合物の繊維組織が脆弱となり、先端が尖った粒子形状が焼成後には先端が丸まった形状になる。それら2種の現象の一方又は両方が起こるために、針状無機化合物の先端形状等の形状に起因する毒性がなくなる。
【0055】
切れたり丸まったりする作用原理は明らかではないが、「ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する水溶液」が、針状無機化合物の1本1本の内部まで浸透して、それらが同時に酸素雰囲気で焼成されることによって、吸湿性の針状粒子が切断するものと推察している。
【0056】
上記無機化合物粒子に含有されるマグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)等は、炭素アルミニウム複合化合物中に取り込まれて、耐熱性を向上させる。アスベストにはマグネシウム(Mg)とケイ素(Si)が含有されているので、アスベストの廃棄処理に適用した時には、毒性粒子の無毒化処理と同時に、それらの元素が含有されて耐熱性がより向上した炭素アルミニウム複合化合物や炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体が得られるので、二重の意味で好ましい。
【0057】
「無機化合物粒子を含有する複合物」としては、種々の目的を持った無機フィラーとバインダー樹脂を含有する複合物;腐葉土等の植物由来の有機物と無機化合物粒子を含む土を含有する土壌等が挙げられる。具体的には、例えば、船舶、浄化槽、浴槽等の材料に汎用されている「硬化性樹脂にガラス繊維を分散させた複合物(以下、「GFRP」と略記する);建材、石綿スレート、高温配管等の材料に用いられている「モルタル等にアスベストを分散させた複合物」;塗料、接着剤等の白色化や着色に汎用されている「樹脂に、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、無機着色顔料、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の粒子が分散された複合物」;配線板材料等の「樹脂に、硫酸バリウム、タルク、無機着色顔料等の粒子が分散された複合物」;等が挙げられる。
【0058】
上記「無機化合物粒子を含有する複合物」が廃棄物に含有されているものである場合には、廃棄物が処理されることと、その結果として炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体が得られることが同時に達成させるので特に好ましい。
【0059】
炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体の製造工程において、複合物中に含有されるバインダー樹脂は、存在しても悪影響を殆ど及ぼさないばかりか、炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体が製造される過程において炭素源として有効に用いられる。すなわち、後述する廃棄物の処理方法において、複合物中に含有されるバインダー樹脂は、予め別途除去する必要は通常はない。
【0060】
ポリ塩化アルミニウム及び有機物の合計量に対する無機化合物粒子の含有量は特に限定はないが、上記合計量100質量部に対して、無機化合物粒子10〜400質量部が好ましく、20〜200質量部がより好ましく、30〜100質量部が特に好ましい。無機化合物粒子の含有量が多過ぎると、ポリ塩化アルミニウムと水溶性有機物が充分な量で浸透しない場合があり、被覆が不充分になる場合がある。一方、無機化合物粒子の含有量が少な過ぎると、炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体の特性が発揮されない場合がある。
【0061】
本発明において「無機化合物粒子」として針状無機化合物を用いることが好ましいが、この内、針状無機化合物としてアスベストを用いる場合、PACと水溶性有機物の合計量に対するアスベストの含有量は、PAC(アルミニウム含有量10質量%)と有機物の合計100質量部に対し、10〜200質量部が好ましく、15〜100質量部がより好ましく、20〜50質量部が特に好ましい。以上の範囲は、PACのアルミニウム含有量によって比例増減される。
【0062】
<廃棄物の処理方法>
本発明の態様には、針状無機化合物を含有する廃棄物を、ポリ塩化アルミニウムを含有する水溶液を吹き付けながら剥離し、そこに水溶性有機物を含有させて水系分散液とし、そこから水を留去後、300℃以上で焼成することを特徴とする廃棄物の処理方法が含まれる。
【0063】
針状無機化合物は、有害であったり、飛散性があったりするので、ポリ塩化アルミニウムを含有する水溶液を吹き付けることによって、有害物の飛散が抑制され、作業者の健康に害を与えることがない。常温環境下において乾燥しない特性を持つポリ塩化アルミニウムの特性を最大限に発揮させることができる。かかる水溶液には、ポリ塩化アルミニウム以外に、前記した物質が含有されていることも好ましい。水溶液に糖類を含有させる場合、飛散防止除去作業時に塗布させる必要はなく、低温短時間無害化処理時に添加し焼成することが、作業簡略化の上で好ましい。また、水溶性有機物は、廃棄物に吹き付ける水溶液中に含有させておいてもよいが、廃棄物に吹き付けて廃棄物が含有された水溶液中に、後から添加することが、完全無害化、作業上の観点から好ましい。
【0064】
上記水溶液の粘度は、吹き付け除去が好適にできるように水で適宜希釈することが好ましい。吹き付ける水溶液は、市販のPAC(アルミニウム含有量10質量%)100質量部に対し、水を5〜30質量部加えて調製することが好ましく、水を10〜15質量部加えて調製することが特に好ましい。以上の範囲は、PACのアルミニウム含有量によって比例増減される。
【0065】
現在まだ撤去されていない飛散性アスベストの浸透固定化処理剤も後述するXSPと後述する分散液Xの複合処理剤で飛散防止浸透固定処理剤として吹き付け可能。この浸透吹き付け操作によって固定化され撤去されたアスベストは焼成する操作で容易に炭素化合物に変化する。
【0066】
すなわち、本発明の一形態は、ポリ塩化アルミニウム、糖質液等の有機炭素化合物を浸透定着させ焼成することを特徴とするミネラルファイバー炭化法である。
【0067】
炭化処理剤は安全性の高い原料であり且つ安価。コスト優位性は高く、従来方式に比べ資源再生再利用という特長から原料の節約に加え、廃棄物発生を最小限に抑えその結果、環境負荷、廃棄物処理埋め立て処理費用を著しく下げる。
【0068】
最近プラスチック製品の再生利用について多くの関心が寄せられている。製造過程で廃棄物の再生利用に比べ最終消費廃棄物は、更に多くの困難があり、回収、分類、分離の過程において廃棄物は様々な物質で汚染されている簡単容易な方法では防げず問題は未解決である。本発明の一態様の炭化処理方法を組み込んだ炭化炉プラントシステムが稼動すれば、炭化炉の損傷もなく焼成によって炭化物になったものは総て熱分解耐熱カーボン素材として再生資源となる。また、従来システムで焼却炉、溶融炉等から埋め立て処分される焼却灰等も、例えば、本発明の後述するXSPによる処理によって炭素が注入されてカーボン担持セラミックスとして耐熱素材として多彩な応用化が期待できる。
【0069】
アスベスト炭素化、合成ゾノトライト、ガラス繊維、グラスウール等に適した処理方法として極めて有効な核となりうる可能性の炭素成分が多い砂糖が見出された。砂糖はブドウ糖と果糖が結合したものであり日常我々が常用する食品でもあり、素材組織内に良く浸透する浸透圧作用に極めて優れている素材である。また、助剤としてポリ塩化アルミニウムやホウ砂との複合化が早期炭化法にとって有効であることが実験により確認された。ポリ塩化アルミニウムは凝集性浄水剤であり、JIS K1475−1978水道用ポリ塩化アルミニウムである。また、澱粉系の糊、ホウ砂、PAC、糖分を複合した化合物を処理剤としても極めて有効である。
【0070】
すなわち、本発明の一形態は、無機粒子に対し糖成分等の有機炭素化合物に加えPAC、ホウ砂等の不燃剤をブレンドし浸透定着させ焼成炭化させることを特徴とする無機化合物炭化法である。
【0071】
1:PACと高濃度のガムシロップは相互とも分離することなく容易に相溶する。
浸透定着するメカニズムは、主に糖の浸透圧作用によるブドウ糖、果糖溶媒とPAC成分による浸透膨潤効果によってミネラルファイバー組織内部に無機高分子であるPAC成分が糖溶媒と共に浸透して定着するすなわち有機炭素成分が吸湿性無機ファイバー成分中に定着固定する。
また、燃焼性炭素を多く含有する糖成分は不燃性無機高分子PACと相溶している。その効果で1次的に発火燃焼するが過大に燃焼せず、高熱によって速やかに有機炭素を含むアスベスト繊維と共にチャー化過程をたどり強固な繊維組織を分断し全て炭素状粒子に変化する。
【0072】
PACは、主成分として酸化アルミニウム、硫酸イオンを含む塩基性で有り可燃性物質を含まず短時間高温焼成時、酸化アルミニウムも複合された状態の炭素石綿と共に融合固定化する。
熱分解した炭素は、生体内不活性であり、ファイバー形状とは異なる炭素化アスベスト粒子として無害化する。したがって、ファイバー飛散による健康被害、環境汚染は皆無となる。
炭素成分を浸透させる操作から生まれる無機鉱物中の珪素、マグネシウム化合物等と共にパイロ化した炭素と融合した特異な構造の酸化ケイ素、酸化マグネシウム等とカーボン化した新素材は、高温耐酸化特性に極めて優れた高性能のカーボン素材に構造変化したものと推察される。また、分散液Xの反応においては、ホウ砂成分が約760℃前後でガラス化する工程を経る過程において低分子糖成分、炭水化物・ホウ砂等を注入された状態のアスベストも共に760℃前後の低温度領域の短時間で熱溶融し、炭化後の温度低下と共に繊維組織が硬質化し破壊され全て炭素粒子に変化する。但しホウ砂成分濃度が余り高いと得られる炭化物の耐熱性は劣ることは避けられない。
【0073】
2:ガラス繊維単独の表面層炭化方法もXSPの浸透によって酸性のPAC成分と糖質の浸透効果によって繊維組織が解繊する事例からも判断可能な様に、繊維組織表面層近傍に炭素成分が定着する。したがってガラスの溶融温度以下で焼成する操作で表面層のみに炭素が定着する。この時、炭化水素化合物液状物質が存在すると更に解繊して炭素定着が増す。
【0074】
3:GFRPにおける炭化は、炭化水素化合物である為、前処理として糖成分等の炭素成分の浸透注入は基本的に必要とせず、難燃性化合物ホウ砂等とレジン表面層に簡易な酸素遮断層ホウ砂、PAC含有澱粉層を形成し、酸化性雰囲気において焼成する操作で灰化させずガラス繊維以外は全て炭化する。無機難燃剤、無機不燃性物質を含む炭水化物で空気遮断被覆された状態のGFRPに接炎しても、直ぐには燃焼せず初期段階では、レジンは熱伝播のみで熱溶融する。この熱溶融と同時に2種の難燃剤もレジン中に融合された状態となり、融合したホウ砂成分のみはガラス化によって酸素を部分的に遮断し酸素濃度が希薄状態の雰囲気下においてレジンは炭化する。
一方複合されているマトリクス中のガラス繊維表面層にも炭素化したレジン、シランカップリング剤が表面層近傍に炭素として定着する。
【0075】
すなわち、本発明の1つの形態は、高粘性炭水化合物水溶液に難燃剤、不燃剤を複合させた処理剤を疎水性プラスチック素材表面層に被覆して酸素遮断し焼成炭化させることを特徴するプラスチック等の炭化水素化合物炭化法である。
【0076】
上記した「ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する水溶液」に針状無機化合物を含浸させて焼成した時に、針状の長手方向が切れて針状でなくなり、針状無機化合物の繊維組織が脆弱となり、先端が尖った粒子形状が焼成後には先端が丸まった形状になる作用原理は明らかではなく、また、本発明は以下の作用原理に限定されるものではないが、以下のように考えられる。
【0077】
「ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する水溶液」が、針状無機化合物の1本1本の内部まで浸透して、それらが同時に焼成されることによって、針状粒子が切断するものと推察している。
【0078】
針状無機化合物は、PAC水溶液に含浸されると、徐々に繊維組織内に浸透する。例えば、針状無機化合物としてクリソタイルを用いる場合、含浸期間が10日間で、その含有率が10.3質量%になる。針状無機化合物の場合、焼成中に更に分解する。
【0079】
針状無機化合物の焼成による分解の作用・原理を以下に示す。
1.極めて低温で溶融固化する糖質・澱粉類が繊維組織内で発生する。
2.ホウ砂は通常760℃の温度領域でガラス質として溶融固化するか、これよりも更に低温で、溶融固化炭素化する糖質・澱粉を含むことで、約500℃近傍で溶融する(低温溶融化)。
3.PAC中の含有アルミニウム成分(10〜11%)及び微量のホウ砂成分は、前記の有機物を灰化もさせることなく炭素化させ不燃効果を発揮する。
【0080】
酸化雰囲気焼成中(時間の経過)に以下の化学反応が進行する。
4.多量のPAC、糖質と微量のホウ砂を含有するアスベスト鉱物は、炉内300〜500℃近傍から有機物とホウ砂成分の溶解が進行すると、赤熱状況と共に熱分解ガスが発生し、熱分解ガスのみが完全燃焼する(無煙)。
5.熱分解ガスの燃焼は、2〜5分で終束し、その後コロナ状のパイロフレームが発生する。このパイロフレーム温度950〜1050℃に達する。(フレーム発生時間2〜3分間)
6.パイロフレームが終束すると被対象物は赤熱光から黄色光、さらに白色光へと変化して焼成を完了する。徐熱後の炭化物は微粒子と果粒状の炭素であるが、すべてわずかな応力で容易に微粒子として崩壊する。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
実施例1
<炭素アルミニウム複合化合物>
ショ糖25質量部を水25質量部に50℃で加熱溶解し、そこにPAC(王子製紙社製、「PAC」(アルミニウム量として10〜11質量%))50質量部を加え攪拌して均一に混合した。以下、このようにして得られた水溶液を「XSP」と略記する。
【0083】
XSP100gをバットに厚さ2mmとなるように入れ、20℃で5時間静置した後、試料表面に1300℃の炎を、バーナーから直接当てて焼成した。焼成は空気中で行った。K熱電対温度計シースを試料の表面層近傍に入れて測定した温度は750〜880℃であった。バーナー接炎開始後20分間で、全て均一な黒色で粒子状の炭素アルミニウム複合化合物を得た。
【0084】
実施例2
<炭素アルミニウム複合化合物>
実施例1において、ショ糖25質量部に代えて、米粉25質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、炭素アルミニウム複合化合物を得た。
【0085】
実施例3
<炭素アルミニウム複合化合物>
XSP50質量部、ホウ砂45質量部及び水55質量部を均一に攪拌混合した。この液50gをバットに厚さ20mmとなるように入れ、20℃で28時間静置した。表面にホウ砂の微結晶体が析出したが、そのまま、実施例1と同様にバーナー接炎を開始した。1500℃で5分間焼成して炭素アルミニウム複合化合物を得た。
【0086】
実施例4
<炭素アルミニウム複合化合物>
実施例3と同様に、XSP50質量部、ホウ砂45質量部及び水55質量部を均一に攪拌混合した。そこに更に、炭素粒子として竹炭粒子13質量部、粘土鉱物粒子として陶土12質量部を配合し均一に分散させた。その液を用いて実施例3と同様にして、炭素アルミニウム複合化合物を得た。
【0087】
実施例5
<炭素アルミニウム複合化合物>
XSP50質量部と、木質粒子として木屑30質量部を均一に混合し、その分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、炭素アルミニウム複合化合物を得た。
【0088】
実施例6
<炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体>
ステンレス容器中に、XSP100gを入れ、そこに厚さ3mmのアスベスト織物100gを浸漬させた。20℃で10時間浸漬させた後、引き上げて、付着した余分な液を重力で下に落とした後、XSPが浸透したアスベスト織物を不燃性シートの上に水平に置いた。アスベスト織物の表面に、炎をバーナーから直接当てて焼成した。焼成は空気中で行った。温度計をアスベスト織物の下5mmの部分に入れて、接炎直下の温度を測定した。1200℃で10分間焼成したところ、熱溶融せずに、炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体が得られた。
【0089】
アスベスト粒子は、この焼成によって、粒状に変化していた。また、尖った部分がなくなり先端が丸くなっていた。得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体には、アルミニウムと炭素に加えて、ケイ素とマグネシウムが含有されていた。
【0090】
実施例7
実施例6において、炎をバーナーから直接試料に当てて焼成する代わりに、試料を加熱装置の中に入れて、加熱装置中の温度を800℃に設定し、60分間焼成した以外は、実施例6と同様に炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を調製した。この焼成によって、アスベスト由来の無機化合物は粒状に変化していた。また、尖った部分がなくなり先端が丸くなっていた。
【0091】
実施例8
<炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体>
ホウ砂100質量部、水300部を混合後、加熱沸騰させながら攪拌して均一溶液を得た。この液に水溶きした米粉5質量部を攪拌しながら添加し、更に、PAC120質量部を加え攪拌して分散液Xを得た。PAC添加によって粘度が上がり、温度低下と共に糊化した。
【0092】
飛散性アスベスト(クリソタイル10質量%含有)40質量部に対して、上記分散液Xを10質量部混合し、湿潤状態のまま接炎した。焼成時間以外は実施例6と同様に焼成したところ、バーナー接炎20分間で炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体が得られた。
【0093】
得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体中の無機化合物の平均長さは焼成前よりはるかに短くなり、アスベストが粒状に変化して無害化していた。また、尖った部分がなくなり先端が丸くなっていた。得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体には、アルミニウムと炭素に加えて、ケイ素とマグネシウムが含有されていた。
【0094】
実施例9
<炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体>
実施例8において、分散液Xの代わりにXSPを用いた以外は実施例8と同様にして炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を得た。得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体においては、アスベストが切断されており無害化されていた。また、尖った部分がなくなり先端が丸くなっていた。得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体には、酸素が多く、アルミニウムと炭素に加えて、ケイ素とマグネシウムが含有されていた。
【0095】
実施例10
ガラス繊維を不飽和ポリエステル中に分散させて硬化させて得られた廃棄物(ユニットバス等に用いられていたものであり、以下、「GFRP」と略記する)を、約30〜40mmの大きさに粗粉砕したもの40gを、浸漬に充分な量のXSPに3分間浸漬した。引き上げて、付着した余分な液を重力で下に落とした後、XSPが浸透したGFRPを不燃性シートの上に置いた。表面に炎をバーナーから直接当てて焼成した。焼成は空気中で行った。温度計をGFRP内に入れて、接炎直下の温度を測定した。1000℃で20分間焼成して、炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を得た。
【0096】
GFRP中のガラス繊維は、焼成によって平均長さ2mm以下に切断されており、その周囲に炭素アルミニウム複合化合物が覆っていた。不飽和ポリエステルは全て炭素化していた。得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体には、アルミニウムと炭素に加えてナトリウムが含有されていた。
【0097】
実施例11
不燃板上に、ガラス繊維50gを載せ、XSP100gを添加し、ヘラで攪拌した。実施例10と同様に、バーナーを用いて接炎した。更に、1000℃で20分間、焼成を行って、炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を得た。この焼成中、ガラス繊維は溶融しなかった。炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体は、ガラス繊維特有のチクチクとした皮膚の痒みを与えないものであった。
【0098】
実施例12
不燃板上に、合成ゾノトライト20gを載せ、XSP50gを添加し、ヘラで攪拌混合した。XSPは合成ゾノトライト中に浸透した。実施例10と同様に、バーナーを用いて接炎した。接炎直後に水が沸騰した。更に、1000℃で7分間、焼成を行って、炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体26.3gを得た。
【0099】
得られたアルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体中の合成ゾノトライト由来の無機物は針状形状を失い、平均粒径100μmの球状に近い粒子と、平均粒径1mm〜1.5mmの粗粒子が混在している状態となった。
【0100】
実施例13
本発明ミネラルファイバー炭化法の場合の主要材料を示す。
砂糖(上白糖、三温糖等)、実施例1で用いたものと同じポリ塩化アルミニウム(PAC)、ホウ砂、澱粉
ミネラルファイバー無害化炭化法に用いる代表的な処理剤の成分重量比組成を以下に示す。
(A)基本重量比組成(以下、炭素化A剤と略称する)
炭素化A剤シロップの作成。
砂糖1kg:水1kgを熱溶解して50%濃度シロップを得る。
(B)前記、炭素化A剤シロップ100質量部:PAC100質量部をブレンドする。
(これを「XSP」と呼称する)
【0101】
実験1−A:炭化する素材として、厚さ3mmのアスベスト織物を選定した。
A−1、XSPを適度な非極性容器或いはステンレス容器に適量投入する。
A−2、無害化する試料を前記の容器に入れ12時間程度浸漬する。
A−3、時間の経過と共に浸漬膨潤した試料を10時間後、引き上げる。
1200℃火焔照射8分間連続(酸化雰囲気)。熱溶融せず速やかに炭化する。
この炭化物は、固形体であるが、追加加熱2分間継続させると容易に崩壊し粒子長さ2〜3mm以内の顆粒状炭素に変化する。
本発明の1つの形態はミネラルファイバー成分中にPAC、有機炭素化合物を注入してなる無機無害化カーボン化技術である。
この操作で得られた無害なカーボン化セラミックは、酸化ケイ素・酸化マグネシウム・酸化アルミニウム・炭素を含む1500℃±に充分に耐える超高温耐酸化性パイロカーボンと言える。
【0102】
実施例14
実験1−B:炭素化する素材として、飛散性アスベスト繊維を選定した。
炭素化処理剤Bの作成。
1、ホウ砂100部に熱湯300部を注ぎ加熱沸騰させる。2、前記25%濃度のホウ砂水の温かい内に水溶きした米粉5部を攪拌しながら添加する。
2、前記1に対しPAC120部を加え攪拌、徐々に粘度が上がり温度低下と共に糊化する。
(この組成物を「分散液X」と呼称する)
飛散性アスベスト(クリソタイル10.3%含有)40部:XSP10部:炭化処理剤B50部を全て混合して湿潤状態時に1200℃バーナー接炎20分間で全て粒子状の炭化物とした。
処理剤をブレンドした状態で乾燥固定化し接炎炭化させると処理時間は約10分間短縮される。
【0103】
実施例15
実験2:炭化する素材として、GFRPカット素材を約30〜40mm粗粉砕したもの6片約40g。
実験1同様に試料をXSPに浸し、2〜3分後、引き上げ前記使用のバーナーで燃焼炭化させた。バーナー直照射時間は試料の容積によって異なるが、試料40gの場合3分間で熱分解(パイロ)したガラス光沢のある長さ2〜5mm±の短繊維短冊状態の表面層近傍が炭素化されたガラス繊維も得られる。
炭化GFRPを粗粉砕した断面ガラス繊維(ロービングクロス・チョプドストランドマット)組織は、表面層近傍に糖成分と金属水和物が浸透し加熱によってガラス繊維表面層に炭素が固定化されたものと推察される。このガラス繊維表面層には、熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂のガラス化炭素が定着融合している。
この実験で明白である様に廃棄処分方法に有効な手立てのないGFRP素材の廃船や浄化槽、ユニットバス等の適性処分法として極めて有効な方法であると考えられる。
また、この炭素化法で得られる特異な構造の熱硬化性カーボン素材は、酸素雰囲気ではグラファイト素材を超える高温耐酸化性ガラス質カーボンである。
【0104】
実施例16
実験3:炭素化する素材としてガラス短繊維単体を試料とした。
アルミ板上に、ガラス繊維を適量のせ、XSPを適量添加して、ヘラで攪拌し馴染ませる。
このガラス繊維を攪拌する操作で繊維組織が解繊され少し膨潤してくる、この間約20秒位である。
前記同様に直にバーナーを照射する操作で液体が即沸騰し僅か4秒程度から表面層が接炎した部位から順次表面炭化層を形成する。
この操作で得られたガラス繊維炭素化物は、僅かに表面光沢が観察される繊維状形態を保持した状態のカーボンであり、表面層に炭素が定着したガラス繊維に変化している。この炭素化の過程においてガラス繊維は溶融することはない。
また、この操作で得られたガラス繊維は、ガラス繊維固有のチクチクとした皮膚の痒み等の皮膚障害も解消される。
【0105】
実施例17
実験4:炭素化する試料としてファイバー飛散が問題となる合成ゾノトライトを選定した。
アルミ板上に粗小片合成ゾノトライト20g:XSP50gを添加して混合する。
ゾノトライト中に良く浸透し定着する。
前記同様に直にバーナーを照射する操作で約7分間の短時間照射で全て炭化する。
得られた炭化物の重量は、26,3g(炭化収率37,57+%)
この焼成直後の炭化物は繊維形状を失い球状に近い微粒子100μm±と粗粒子1〜1,5mmが混在している状態であるが、ロール転圧等で容易に50μm程度に粒子化可能である。
【0106】
実施例18
以下、本発明の実施例、飛散性アスベストの場合を以下に説明する。
飛散性アスベスト50部:XSP15部:分散液X35部を全て良く混合する。
湿潤状態のまま平らに薄く広げ、簡易バーナー1200℃火焔を照射。時々処理体を混ぜ合わせながら約20分間で全て炭素化した。この炭素の形状は3〜5mm±の粗粒子である。照射を継続して行うと徐々に細い粒子となる。
【0107】
実施例19
以下、本発明の実施例、飛散性アスベストの場合を以下に説明する。
飛散性アスベスト45部:分散液X35部:炭素化A剤20部を全て良く混合後、乾燥させる。
含水率15%±時に前記同様な攪拌操作を加えながら火焔を照射。平らに広げる程炭化する速度が速くなる傾向があり、カーボン化に到るまでの照射時間は、前期より短縮され約12分間である。
【0108】
アスベスト織物の場合は、緻密で強固な結合である為、処理剤を事前に良く浸透させておく必要性があるが、飛散性ファイバーの場合は、容易に処理剤が速やかに浸透定着する。浸透定着後は適度に乾燥させることで炭化する処理時間も短縮される。また、乾燥してもアスベストファイバーは固定されている為、飛散することはなく安全である。
【0109】
実施例20
以下、本発明の実施例、GFRPの場合を以下に説明する。
GFRP粗粉砕物40部:分散液X55部:XSP5部を全て良く攪拌し、GFRP試料全体を処理液で濡らす。
攪拌処理後、約20分後前記同様火焔照射。試料は作業終了間際一次的に着火するが、灰化せず全て炭化した。炭化収率33%±(飛散ロス有り)得られた初期カ−ボンは短冊状であるが、ローラー転圧する操作で、1mm±カーボン粒子と炭素を表面層に定着したガラス繊維が得られる。
【0110】
実施例21
以下、本発明の実施例、短ガラス繊維(Eガラス短繊維)の場合を説明する。
短ガラス繊維50部:XSP50部を全て良く攪拌し鍋底に薄く塗り広げる。
火焔照射約4分間でガラス繊維表面層にカーボンが定着する。炭素化した収率は57,5%と高い。
従来のガラス繊維は、チクチクとした痒みがあるがこの得られた表面カーボン層を形成したガラス繊維は皮膚を刺激せず取り扱い容易が容易であり、本来固有の耐熱性も保持している。
【0111】
実施例22
以下、本発明の実施例、合成ゾノトライトの場合を説明する。
合成ゾノトライト砕片15,5部:XSP85,5部を添加するが、非常に良く吸収された為、更に砕片し火焔照射する。接炎途中は火の粉が舞い上がるが約15分間程度で炭化する。炭化収率23%±。
【0112】
数多くの実験結果から得た知見として炭素を持たない無機系化合物は有機炭素化合物を吸収させる操作と焼成によって炭素化させることが可能であることが判明した。
有機炭素を持つ廃棄物は様々あり、果実の選果によって廃棄される果物やジュースの絞りかす、白ワインの絞りかす等や澱粉系炭水化物として炊飯における残飯等を利用することで更なるコストダウンと廃棄資源の有効活用が期待できる(試験実施済み)。
【0113】
可燃性である炭化水素化合物中の疎水性物質は難燃性ないし不燃性の無機物を相溶した高粘性の被覆層(酸素遮断効果と難燃性)を表面形成させることで炭素化可能。具体的には、澱粉水溶液に不燃性無機化合物(鉱物粉体や無機難燃剤)をブレンドし、疎水性表面に粘着させても良い。砕石によって選鉱水洗いされた後に残土としての沈殿廃土も有効利用可能。(試験実施済み)この様な鉱物粉末は、不燃性、蓄熱性にも優れている為、焼成時の早期炭化促進材としても有効である。
【0114】
吸湿性炭化水素化合物や炭水化物類は、不燃性物質をその素地中に担持させる操作と焼成によって炭素化可能である。
例えば、スポンジと言われる連続気泡体のフォーム材等も高濃度30%のホウ砂水や燐酸水素2アンモニウム20%溶液と適当な粘土や廃土との組み合わせやPAC水溶液等の浸透や担持操作によって灰分を出すことなく炭化可能である。
籾殻、米糠脱脂粉、かんな屑等も同様な方法で熱分解オールドカーボンとして耐熱性に優れた素材となる。
【0115】
実施例23
<廃棄物の処理方法>
クリソタイル(白石綿)であるアスベストが断熱材として厚さ50mmに貼り付けられている天井面に対し、PAC(王子製紙社製、「PAC」)85kgと水15kgよりなる水溶液を吹き付けながら剥離した。剥離された断熱材は約5500kgであった。アスベストは一切飛散せず、養生も容易であり、作業者の安全上の問題は全くなかった。
【0116】
その後、PAC水溶液が浸透した撤去アスベスト40kgに対し、ショ糖10kgを水10kgに溶解した水溶液を加えてよく混合した。水溶性有機物(ショ糖)を配合する上記操作は、アスベストがあった現場ではなく、廃棄物処理場に運搬してからそこで行った。
【0117】
得られたものを、ステンレス容器の中に厚さ約15mmになるように均一に入れ、可搬式簡易焼成炉内(赤外線バーナー、設定温度800℃、プロパンガス使用)で焼成した。焼成は空気中で行った。炉内温度計は800〜870℃であり、試料の表面温度は焼成開始から3〜5分後からは常に1040〜1080℃であった。炉内投入開始後18分で全て黒色粒子状の炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体が得られた。
【0118】
アスベスト繊維は、この焼成によって粒状に変化していた。また、尖った部分がなくなり先端が丸くなって、形状に起因するアスベストの毒性が完全になくなっていた。得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体には、多くの酸素とアルミニウムに加えて、ケイ素とマグネシウムが含有されるため、更に耐熱性が向上した。
【0119】
評価例
<粒子形状の評価>
実施例9及び実施例14で得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を、屈折率n25℃=1.550とした位相差顕微鏡で100倍と400倍で観察した。結果を、それぞれ図1及び図2に示す。アスベスト特有の針状形態は全く見られなかった。
【0120】
<結晶構造の評価>
実施例9及び実施例14で得られた炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を、CuKα線を用いた粉末X線回折装置を用い、そのX線回折パターンを測定した。結果を、それぞれ図3及び図4に示す。クリソタイル結晶、アモサイト結晶、クロシドライト結晶に特有のX線回折ピークが何れも見られなかった。
【0121】
<耐熱性の評価>
評価方法−1
上記全ての実施例で得られた、炭素アルミニウム複合化合物の粉末20g、又は、20gのほぼ立方体に成型された炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を、実質的に空気を遮蔽したマッフル炉中に入れ、1300℃で24時間加熱したが、外観、質量ともに全く変化が見られなかった。
【0122】
評価方法−2
上記全ての実施例で得られた、炭素アルミニウム複合化合物の粉末20g、又は、20gのほぼ立方体に成型された炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を、電気炉中で空気中の存在下で、1350℃で1時間加熱したが、外観、質量ともに全く変化が見られなかった。
【0123】
評価方法−3
上記全ての実施例で得られた、炭素アルミニウム複合化合物の粉末20g、又は、20gのほぼ立方体に成型された炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を、GOXで、1800℃で30分加熱したが、外観、質量ともに全く変化が見られなかった。
【0124】
<難燃性の評価>
評価方法−1
上記全ての実施例で得られた、炭素アルミニウム複合化合物又は炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を、5mm×5mm×50mmに、常法に従って加圧成形し、燃焼ガスとしてブタンを用いた炎を成型体の先端に60秒間接炎したが着火しなかった。また、溶融もせず、無煙性であった。
【0125】
評価方法−2
上記全ての実施例で得られた、炭素アルミニウム複合化合物又は炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を、5mm×5mm×50mmに、常法に従って加圧成形し、難燃性試験UL94を行ったが、全て燃焼認定垂直試験UL94 V−0を満たした。
【0126】
<導電性の評価>
上記全ての実施例で得られた、炭素アルミニウム複合化合物又は炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を、粉末のまま、φ7mm、長さ200mmのアクリル樹脂製パイプの中に詰めた。2cmの高さから5回タッピングした後、直流電圧をパイプに詰めた試料の上と下から印可して、20℃での電流値を測定した。このように軽く詰めただけの棒状の試験体の比抵抗は、何れも10−6Ω・cm以下であった。
【0127】
<耐薬品性の評価>
上記全ての実施例で得られた、炭素アルミニウム複合化合物又は炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体10gをフラスコにとり、それぞれ、1N(規定)希硫酸、5質量%水酸化ナトリウム、アセトンを、それぞれ100g添加して、20℃に静置して化学反応の有無を目視で観察した。何れも外観に変化が見られず化学反応は進行していなかった。
【0128】
以上の結果より分かるように、上記実施例で得られた、本発明の「炭素アルミニウム複合化合物」又は「炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体」は、耐熱性、難燃性、導電性、耐薬品性が、共に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の「炭素アルミニウム複合化合物」、「炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体」は、耐熱性、難燃性、導電性、耐薬品性に優れているため、電磁波シールド、導電性フィラー、不燃カーボン、不燃カーボンブラック、不燃耐火建材、有機金属代替、活性炭、有害物質吸着材、分子ふるい、耐摩擦材、紫外線防止剤、顔料、C/Cコンポジット超耐熱フィラー、ゴム補強材、アスファルト耐熱向上剤、土壌改良材等に広く利用されるものである。また、本発明の廃棄物の処理方法は、処理中に有毒粒子の飛散がなく、得られたものも有効に活用できるので、廃棄物処理のトータルのコストも削減され、上記分野に広く利用されるものである。
【0130】
本願は、2007年5月14日に出願した日本の特許出願である「特願2007−153344」に基づくものであり、この出願の全ての内容はここに引用し、本発明の明細書の開示として取り込まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機化合物粒子又は無機化合物粒子を含有する複合物に、ポリ塩化アルミニウム及び有機物を含有する水溶液を含浸させ、260℃〜2800℃で焼成してなるものであることを特徴とする炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体。
【請求項2】
上記無機化合物粒子が針状無機化合物である請求項1記載の炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体。
【請求項3】
上記針状無機化合物がアスベスト、合成ゾノトライト又はガラス繊維である請求項2記載の炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体。
【請求項4】
上記複合物が廃棄物に含有されているものである請求項1記載の炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体。
【請求項5】
上記有機物が水溶性有機物である請求項1記載の炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体。
【請求項6】
上記水溶性有機物が糖類である請求項5記載の炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体。
【請求項7】
上記水溶液が、更に、リン酸(水素)塩又は(重)炭酸塩を含有するものである請求項1記載の炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体。
【請求項8】
針状無機化合物を含有する廃棄物を、ポリ塩化アルミニウムを含有する水溶液を吹き付けながら剥離し、そこに有機物を含有させた後、260℃〜2800℃で焼成することによって請求項1ないし請求項7記載の炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物構造体を形成させつつ廃棄物を処理することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7の何れかの請求項記載の炭素アルミニウム複合化合物被覆無機化合物を含有することを特徴とする耐熱性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−140322(P2012−140322A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−5857(P2012−5857)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【分割の表示】特願2008−532516(P2008−532516)の分割
【原出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(591095214)株式会社HI−VAN (11)
【Fターム(参考)】