炭素系物質燃焼触媒及びその製造方法、触媒担持体及びその製造方法
【課題】低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる炭素系物質燃焼触媒、及びその製造方法、並びに触媒担持体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼除去するために用いられる炭素系物質燃焼触媒及びその製造方法、並びに該炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持してなる触媒担持体及びその製造方法である。炭素系物質燃焼触媒は、ソーダライトを温度600℃以上で焼成する焼成工程を行って得られる。また、炭素系物質燃焼触媒は、下記の混合工程と乾燥工程と焼成工程とを行って得られる。混合工程においては、アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合して混合液を得る。乾燥工程においては、混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る。また、焼成工程においては、固形分を温度600℃以上で焼成する。
【解決手段】内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼除去するために用いられる炭素系物質燃焼触媒及びその製造方法、並びに該炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持してなる触媒担持体及びその製造方法である。炭素系物質燃焼触媒は、ソーダライトを温度600℃以上で焼成する焼成工程を行って得られる。また、炭素系物質燃焼触媒は、下記の混合工程と乾燥工程と焼成工程とを行って得られる。混合工程においては、アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合して混合液を得る。乾燥工程においては、混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る。また、焼成工程においては、固形分を温度600℃以上で焼成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中に含まれる炭素微粒子(PM)等の炭素系物質を燃焼除去するために用いられる炭素系物質燃焼触媒及びその製造方法、並びに上記炭素系物質燃焼触媒をセラミックス基材に担持した触媒担持体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス中に含まれる炭素微粒子(粒子状浮遊物、PM)は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)等により燃焼除去されていた。低コストでかつ多くのPMを除去するために、燃焼除去は比較的低温で行われることが望まれていた。そのため、排ガス中のPMを燃焼除去する際には、PM等の炭素系物質の燃焼を促進する触媒を担持したDPFが用いられていた。
【0003】
このような炭素系物質燃焼触媒としては、例えばPt、Pd、Rh等の貴金属又はその酸化物が一般的に用いられていた。しかし、高価な貴金属を用いた触媒はコストが高くなると共に、資源の枯渇という問題に対する懸念もある。また、PMの燃焼活性が不十分であり、通常の稼働条件では、徐々に未処理のPMが蓄積してしまうという問題があった。蓄積したPMを除去するためには、燃料を用いて排ガスの温度を上昇させるか、又は電気的に加熱することによって、触媒の温度を600℃以上にする必要があった。その結果、排ガス中に含まれる二酸化硫黄が三酸化硫黄や硫酸ミストに転化し、PMの除去は可能でも排ガスの浄化が不完全になるおそれがあった。
【0004】
そこで、酸化物セラミック系粒子にカリウム等のアルカリ金属の酸化物よりなる触媒粒子を担持させた触媒が開発されている(特許文献1〜4参照)。このようなアルカリ金属を担持させることにより、400℃前後という低温で排ガス中の粒子状浮遊物(PM)を燃焼除去することができる。
【0005】
しかしながら、アルカリ金属を用いた触媒においては、水分の存在下で触媒成分であるアルカリ金属が溶出するおそれがある。したがって、エンジンの排ガスのように多くの水蒸気を含む環境下で用いると、長期間安定的に排ガスの浄化を行うことができなくなるおそれがあった。また、触媒活性の低下を防止するために、アルカリ金属の溶出を見越して過剰量のアルカリ金属を用いると、該アルカリ金属を担持させるセラミックス等からなる基材を損傷させてしまうおそれがあった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−170483号公報
【特許文献2】特開2005−230724号公報
【特許文献3】特開2005−296871号公報
【特許文献4】特開2005−342604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる炭素系物質燃焼触媒及びその製造方法、並びに触媒担持体及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられると共に、セラミック基材に担持して用いられる炭素系物質燃焼触媒の製造方法において、
原子当量比Si/Al≧1のアルミノケイ酸塩と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合する混合工程と、
該混合工程後の混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る乾燥工程と、
上記固形分を温度600℃以上で焼成することにより上記炭素系物質燃焼触媒を得る焼成工程とを有し、
上記アルミノケイ酸塩は、ソーダライトであることを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法にある(請求項1)。
【0009】
また、第2の発明は、上記第1の発明の製造方法によって得られたことを特徴とす炭素系物質燃焼触媒にある(請求項10)。
【0010】
第1の発明の製造方法においては、上記混合工程と、上記乾燥工程と、上記焼成工程とを行うことにより、上記炭素系物質燃焼触媒を作製する。
即ち、上記混合工程においては、原子当量比Si/Al≧1のアルミノケイ酸塩(ソーダライト)と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合する。次いで、上記乾燥工程においては、上記混合工程後の混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る。これにより、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素と上記アルミノケイ酸塩との混合物からなる上記固形分を得ることができる。次いで、上記焼成工程においては、上記固形分を温度600℃以上で焼成する。これにより、上記炭素系物質燃焼触媒(第2の発明)を得ることができる。
【0011】
上記炭素系物質燃焼触媒は、上記アルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素を含有する。上記アルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素は、例えば排ガス中の粒子状浮遊物(PM)等の炭素系物質に対する燃焼促進作用を有する。そのため、上記炭素系物質燃焼触媒は、低温で上記炭素系物質を燃焼させることができる。
【0012】
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、上記アルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素を保持することができる。そのため、水分存在下においても上記アルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素が溶出することを防止することができる。
このように、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下においても溶出され難く、例えばセラミックス等の基材に担持させて用いる場合にも過剰量を担持させる必要がなくなり、基材の劣化を防止できる。そのため、上記炭素系物質燃焼触媒は、長期間安定的に炭素系物質の燃焼を促進することができる。
【0013】
上記第1の発明の製造方法によって得られた上記炭素系物質燃焼触媒(第2の発明)は、上述のごとく、内燃機関の排ガス中に含まれる粒子状浮遊物(PM)等の炭素系物質に対する燃焼促進特性を有する。上記炭素系物質燃焼触媒は、従来の貴金属触媒と同等又はそれよりも低い温度で上記炭素系物質を燃焼させることができる。
【0014】
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、上述のごとく、水分存在下においても、その触媒活性が低下し難い。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持して用いたときに、従来のアルカリ金属触媒のように水分存在下でセラミック基材を腐食させてしまうことがほとんどなく、上記セラミック基材の劣化を防止することができる。
そのため、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下においても長期間安定に炭素系物質の燃焼を促進させることができる。
【0015】
上記炭素系物質燃焼触媒が上記のごとく優れた触媒活性を発揮する理由は定かではないが、原料であるアルミノケイ酸塩(ソーダライト)中のNa、上記アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素、上記アルカリ土類金属元素中のアルカリ土類金属元素が触媒活性に寄与していると考えられる。
即ち、上記炭素系物質燃焼触媒においては、ソーダライト中のNaと、上記アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素とが炭素系物質の燃焼促進特性を発揮していると考えられる。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、その構造中に比較的強い結合力でアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を保持しており、水分の存在下においてもこれらの元素が溶出し難くなっているため、上記のごとく触媒活性の低下を抑制できると共に、セラミック基材の腐食を防止することができると考えられる。
【0016】
また、上記第1の発明においては、上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合物(上記固形分)を温度600℃以上で焼成するという上記焼成工程を行って上記炭素系物質燃焼触媒を得る。そして、上記焼成工程を経て得られた上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて用いられる。即ち、上記焼成工程は、上記混合物を上記セラミック基材に担持することなく行われ、上記セラミック基材への担持は上記焼成工程後に行われる。
【0017】
仮に、ソーダライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物をセラミック基材に担持した後に、温度600℃以上で焼成すると、ソーダライト中に含まれていたNa、上記アルカリ金属元素源中のアルカリ金属、上記アルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属等が溶出し、溶出したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が例えばコージェライト等からなるセラミック基材の構造を部分的に変化させ、熱膨張係数や強度が低下してセラミック基材に割れ等が発生するおそれがある。
本発明においては、上記のごとく、上記焼成工程を経た上記炭素系物質燃焼触媒が上記セラミック基材の担持に用いられており、このような炭素系物質燃焼触媒においては、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素が強固に保持されている。そのため、上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させたときに、担持時の加熱又はその後の加熱により、上記炭素系物質燃焼触媒からアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が溶出することを防止することができる。その結果、上記セラミック基材に割れ等が発生することを防止することができる。
【0018】
また、上記第1の発明においては、上記混合工程と上記乾燥工程と上記焼成工程とにより上記炭素系物質燃焼触媒を簡単に製造することができる。即ち、上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ金属元素源とを水中で混合し、乾燥して得られる混合物(上記固形分)を温度600℃以上で焼成することにより、簡単に上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。
【0019】
このように、上記第1の発明及び上記第2の発明によれば、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる炭素系物質燃焼触媒及びその製造方法を提供することができる。
【0020】
第3の発明は、内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられる炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持させてなる触媒担持体を製造する方法において、
上記第1の発明の製造方法によって得られる上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を有することを特徴とする触媒担持体の製造方法にある(請求項11)。
【0021】
また、第4の発明は、上記第3の発明の製造方法によって得られたことを特徴とする触媒担持体にある(請求項16)。
【0022】
上記第3の発明の製造方法によって得られる上記触媒担持体(第4の発明)は、上記第1の発明の製造方法によって得られる炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持してなる。
そのため、上記触媒担持体は、上記炭素系物質燃焼触媒の上述の優れた作用効果を発揮することができる。即ち、上記触媒担持体は、低温でかつ長期間安定的に炭素系物質を燃焼除去することができる。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下において上記セラミック基材を腐食させうるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の溶出を抑制することができる。そのため、上記触媒担持体においては、水分存在下においても、上記セラミック基材をほとんど腐食させることがなく、長期期間安定に炭素系物質を燃焼させることができる。
【0023】
また、上記第3の発明においては上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合物(上記固形分)を温度600℃以上で焼成するという上記第1の発明における上記焼成工程を経て得られた上記炭素系物質燃焼触媒を、上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を行う。上述のごとく、上記焼成工程を経て得られた上記炭素系物質燃焼触媒は、その構造中にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を強固に保持している。そのため、上記担持工程においては、上記炭素系物質燃焼触媒からのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の溶出が抑制される。その結果、溶出したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が上記セラミック基材に割れ等を発生させることを防止することができる。また、担持後に得られた上記触媒担持体を加熱しても、上記炭素系物質燃焼触媒からはアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素は溶出し難い。そのため、上記触媒担持体は長期間安定に使用することができる。
【0024】
このように、上記第3の発明及び上記第4の発明によれば、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる触媒担持体及びその製造方法を提供することができる。
【0025】
第5の発明は、内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられると共に、セラミック基材に担持して用いられる炭素系物質燃焼触媒を製造する方法において、
ソーダライトを温度600℃以上で焼成して上記炭素系物質燃焼触媒を得る焼成工程を有することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法にある(請求項17)。
【0026】
また、第6の発明は、上記第5の発明の製造方法によって得られたことを特徴とする炭素系物質燃焼触媒にある(請求項20)。
【0027】
上記第5の発明の製造方法によって得られる上記炭素系物質燃焼触媒(第6の発明)は、内燃機関の排ガス中に含まれる例えば粒子状浮遊物(PM)等の炭素系物質に対する燃焼促進特性を有する。上記炭素系物質燃焼触媒は、従来の貴金属触媒と同等又はそれよりも低い温度で上記炭素系物質を燃焼させることができる。
【0028】
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下においても、その触媒活性が低下し難い。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持して用いたときに、従来のアルカリ金属触媒のように水分存在下でセラミック基材を腐食させてしまうことがほとんどなく、上記セラミック基材の劣化を防止することができる。
そのため、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下においても長期間安定に炭素系物質の燃焼を促進させることができる。
【0029】
上記炭素系物質燃焼触媒が上記のごとく優れた触媒活性を発揮する理由は定かではないが、原料であるソーダライト中のNaが触媒活性に寄与していると考えられる。
即ち、ソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られる上記炭素系物質燃焼触媒においては、ソーダライト中に含有されていたNaが炭素系物質の燃焼促進特性を発揮していると考えられる。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、その構造中に比較的強い結合力でNaを保持しており、水分の存在下においてもNaが溶出し難くなっているため、上記のごとく触媒活性の低下を抑制できると共に、セラミック基材の腐食を防止することができると考えられる。
【0030】
また、上記第5の発明においては、ソーダライトを温度600℃以上で焼成するという上記焼成工程を行って上記炭素系物質燃焼触媒を得る。そして、上記焼成工程を経て得られた上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて用いられる。即ち、上記焼成工程は、上記ソーダライトを上記セラミック基材に担持することなく行われ、上記セラミック基材への担持は上記焼成工程後に行われる。
【0031】
仮に、ソーダライトをセラミック基材に担持した後に、温度600℃以上で焼成すると、ソーダライト中のNaが溶出し、溶出したNaが例えばコージェライト等からなるセラミック基材の構造を部分的に変化させ、熱膨張係数や強度が低下してセラミック基材に割れ等が発生するおそれがある。
本発明においては、上記のごとく、上記焼成工程を経た上記炭素系物質燃焼触媒が上記セラミック基材の担持に用いられており、このような炭素系物質燃焼触媒においては、上記ソーダライト中に含まれていたアルカリ金属(Na)が強固に保持されている。そのため、上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させたときに、担持時の加熱又はその後の加熱により、上記炭素系物質燃焼触媒からアルカリ金属が溶出することを防止することができる。その結果、上記セラミック基材に割れ等が発生することを防止することができる。
【0032】
また、上記第5の発明においては、上記焼成工程により上記炭素系物質燃焼触媒を簡単に製造することができる。即ち、ソーダライトを温度600℃以上で焼成することにより、簡単に上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。
【0033】
このように、上記第5の発明及び上記第6の発明によれば、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる炭素系物質燃焼触媒及びその製造方法を提供することができる。
【0034】
第7の発明は、内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられる炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持させてなる触媒担持体を製造する方法において、
上記第5の発明の製造方法によって得られる上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を有することを特徴とする触媒担持体の製造方法にある(請求項21)。
【0035】
また、第8の発明は、上記第7の発明の製造方法によって得られたことを特徴とする触媒担持体にある(請求項26)。
【0036】
上記第7の発明の製造方法によって得られる上記触媒担持体(第8の発明)は、上記第5の発明の製造方法によって得られる炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持してなる。
そのため、上記触媒担持体は、上記炭素系物質燃焼触媒の上述の優れた作用効果を発揮することができる。即ち、上記触媒担持体は、低温でかつ長期間安定的に炭素系物質を燃焼除去することができる。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下において上記セラミック基材を腐食させうるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の溶出を抑制することができる。そのため、上記触媒担持体においては、水分存在下においても、上記セラミック基材をほとんど腐食させることがなく、長期期間安定に炭素系物質を燃焼させることができる。
【0037】
また、上記第7の発明においては、ソーダライトを温度600℃以上で焼成するという上記第5の発明における上記焼成工程を行うことにより得られた上記炭素系物質燃焼触媒を、上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を行う。上述のごとく、上記焼成工程を経て得られた上記炭素系物質燃焼触媒は、ソーダライト中に含まれていたアルカリ金属(Na)を強固に保持している。そのため、上記担持工程においては、上記炭素系物質燃焼触媒からのアルカリ金属の溶出が抑制される。その結果、溶出したアルカリ金属が上記セラミック基材に割れ等を発生させることを防止することができる。
【0038】
このように、上記第7の発明及び第8の発明によれば、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる触媒担持体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、上記第1の発明について説明する。
上記炭素系物質燃焼触媒は、炭素系物質の燃焼除去等に用いられる。上記炭素系物質としては、例えばディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる炭素微粒子(PM)等がある。
【0040】
上記第1の発明における製造方法にあたっては、上記混合工程と、上記乾燥工程と、上記焼成工程とを行う。
上記第1の発明における上記混合工程においては、原子当量比Si/Al≧1アルミノケイ酸塩と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合する。このとき、アルミノケイ酸塩と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とが均一に分散されるまで混合することが好ましい。
【0041】
また、原子当量比Si/Al<1の場合には、得られる炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下でアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素が溶出し易くなるおそれがある。その結果、上記炭素系物質燃焼触媒は、長期間安定して触媒活性を維持することが困難になるおそれがある。
具体的には、上記第1の発明においては、上記アルミノケイ酸塩としては、ソーダライトを用いる。ソーダライトは、一般式3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaXで表される。Xは、一価の陰イオンとなる原子又は原子団であり、例えばF、Cl、Br、I等のハロゲン、又はOH等である。
【0042】
上記混合工程においては、上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合して混合液を得る。
上記アルカリ金属元素源としては、例えばアルカリ金属の化合物等がある。また、上記アルカリ土類金属元素源は、例えばアルカリ土類金属の化合物等がある。
【0043】
上記アルカリ金属元素源は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上を含有し、上記アルカリ土類金属元素は、Ca、Sr、及びBaから選ばれる1種以上を含有することが好ましい(請求項2)。
この場合には、炭素系物質をより低温で燃焼させることができる上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。
即ち、上記混合工程においては、上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と、上記アルカリ金属元素源及び/又はMg源を除く上記アルカリ土類金属元素源を少なくとも混合することが好ましい。Mg源は、ソーダライトとの混合に単独で用いずに、他のアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源と併用することができる。
【0044】
上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源は、それぞれ炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、酸化物、又は水酸化物であることが好ましい(請求項3)。
この場合には、容易に水等の極性溶媒に混合させることができるため、上記混合工程において、均一に混合させることができる。
【0045】
より好ましくは、上記アルカリ金属元素源としてはアルカリ金属元素の塩を用い、上記アルカリ土類金属元素源としてはアルカリ土類金属元素の塩を用いることがよい。
この場合には、上記アルカリ金属元素源及び上記アルカリ土類金属元素源は、水等の極性溶媒に対して優れた溶解性で溶解できるため、上記混合工程を水等の極性溶媒中で行う場合に、上記アルミノケイ酸塩と、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを簡単かつ均一に混合させることができる。
【0046】
また、上記混合工程においては、水の代わりに水以外の極性溶媒を用い、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを上記極性溶媒中で混合し、上記乾燥工程においては、上記極性溶媒を蒸発させて上記固形分を得ることができる(請求項5)。
具体的には、上記極性溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコールを用いることができる。
上記極性溶媒としては、水よりも揮発し易い溶媒を用いることが好ましい。
この場合には、上記乾燥工程において上記極性溶媒をより簡単に蒸発させることができる。
【0047】
また、上記混合工程においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することが好ましい(請求項6)。
【0048】
上記アルカリ金属元素と上記アルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)中のSi元素1モルに対して2.25モルを超える場合には、上記焼成工程中に上記固形分が溶融し易くなる。そのため、上記焼成工程後に得られる上記炭素系物質燃焼触媒は、一旦溶融状態を経るため、硬度が高くなってしまうおそれがある。その結果この場合には、後述のごとく上記焼成工程後に粉砕工程を行って上記炭素系物質燃焼触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。また、この場合には、得られる上記炭素系物質燃焼触媒自体の触媒活性は優れていても、水分による影響を受けやすくなるおそれがある。即ち、水分による触媒活性の低下幅が大きくなるおそれがある。そのため、所定の触媒活性を長期間維持させることが困難になるおそれがある。
【0049】
より好ましくは、上記混合工程においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して1モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することがよい(請求項7)。
さらに好ましくは、上記混合工程においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して0.5モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することがよい(請求項8)。
【0050】
また、上述のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量は、上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)に混合するアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素との合計量であり、アルカリ金属元素源及びアルカリ土類金属元素源のうちいずれか一方だけを用いた場合には、もう一方の元素の量は0モルとして算出できる。また、複数のアルカリ金属元素源、複数のアルカリ土類金属元素源を用いた場合には、それらのすべての合計量として算出できる。
【0051】
次に、上記乾燥工程においては、上記混合工程後の混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る。上記第1の発明において、上記固形分は、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源と上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)との混合物からなる。
【0052】
次に、上記焼成工程においては、上記固形分を温度600℃以上で焼成する。これにより上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。
上記焼成工程における焼成温度(加熱時の最高温度)が600℃未満の場合には、水分の存在下で、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素が溶出し易くなり、上記炭素系物質燃焼触媒は、炭素系物質の燃焼活性を長期間安定的に発揮することが困難になるおそれがある。また、上記焼成工程においては、焼成温度700℃以上で加熱することが好ましく、より好ましくは焼成温度800℃以上で加熱することがよい。
【0053】
また、焼成温度が1200℃を越える場合には、上記炭素系物質燃焼触媒は、上記焼成工程において一旦溶融状態を経るため、硬度の高い塊状になってしまうおそれがある。その結果この場合には、後述のごとく上記焼成工程後に粉砕工程を行って上記炭素系物質燃焼触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。
したがって、好ましくは、上記焼成工程においては、上記固形分を温度700℃〜1200℃で焼成することがよい(請求項9)。
なお、上記焼成工程における焼成温度は、上記固形分自体の温度のことであり、雰囲気温度ではない。したがって、上記焼成工程においては、上記固形分自体の温度が600℃以上になるように焼成を行う。上記焼成工程においては、上記焼成温度の焼成を好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上行うことがよい。
【0054】
次に、上記焼成工程後に、上記炭素系物質燃焼触媒を粉砕する粉砕工程を行うことが好ましい(請求項4)。
この場合には、粒子状の上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。かかる炭素系物質燃焼触媒は、例えばハニカム構造のセラミック基板等に担持させやすくなる。また、表面積が大きくなるため、より優れた触媒活性を発揮させることができる。
また、上記粉砕工程においては、粉砕条件を調整することにより、所望の粒径の炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。
好ましくは、上記粉砕工程においては、上記炭素系物質燃焼触媒のメジアン径を50μm以下に調整することがよい。メジアン径が50μmを超える場合には、上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材にコートする際に、目詰まりが起こったり、担持量にばらつきが生じ易くなるおそれがある。より好ましくは、メジアン径は10μm以下であることがよい。
上記炭素系物質燃焼触媒のメジアン径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置あるいは走査電子顕微鏡等により測定することができる。
【0055】
上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持して用いられる。
上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合物(上記固形分)を温度600℃以上で焼成するという上記記焼成工程を経て得られる上記炭素系物質燃焼触媒は、その構造中にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を比較的強い結合力で保持している。そのため、上記炭素系物質燃焼触媒においては、上記セラミック基材に担持させる際にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が溶出し難く、溶出したアルカリ金属及びアルカリ土類金属によりセラミック基材が劣化してしまうことを防止することができる。
これに対し、仮に焼成を行っていない上記混合物をセラミック基材に担持させると、担持の際の加熱又は担持後の加熱時に、ソーダライト中のNa、上記アルカリ金属元素源中のアルカリ金属、上記アルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素がセラミック基材を劣化させてしまうおそれがある。
即ち、上記第1の発明において、上記焼成工程は、上記セラミック基材への担持前に行われ、上記混合物を上記セラミック基材に担持することなく行われる。
【0056】
上記第1の発明の製造方法によって得られた上記炭素系物質燃焼触媒(第2の発明)は、例えばガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス中に含まれる炭素微粒子(PM)等の炭素系物質を燃焼して除去するために用いられる。
【0057】
次に、上記第5の発明について説明する。
上記第5の発明の上記焼成工程においては、ソーダライトを温度600℃以上で焼成する。
ソーダライトは、一般式3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaXで表される。Xは、一価の陰イオンとなる原子又は原子団であり、例えばF、Cl、Br、I等のハロゲン、又はOH等である。
【0058】
上記焼成工程における焼成温度が600℃未満の場合には、所望の効果を有する上記炭素系物質燃焼触媒を得ることが困難になる。即ち、この場合には、得られる上記炭素系物質燃焼触媒の炭素系物質の燃焼に対する触媒活性が低下するおそれがある。好ましくは、焼成温度は700℃以上がよい。
また、焼成温度が1200℃を越える場合には、上記焼成工程中に上記ソーダライトが溶融し易くなる。そのため、上記焼成工程後に得られる上記炭素系物質燃焼触媒は、一旦溶融状態を経るため、硬度が高くなってしまうおそれがある。その結果この場合には、後述のごとく上記焼成工程後に粉砕工程を行って上記炭素系物質燃焼触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。
したがって、好ましくは、上記焼成工程においては、上記ソーダライトを温度700℃〜1200℃で焼成することがよい(請求項18)。
なお、上記焼成工程における焼成温度は、上記ソーダライト自体の温度のことであり、雰囲気温度ではない。したがって、上記焼成工程においては、ソーダライト自体の温度が600℃以上になるように焼成を行う。上記焼成工程においては、上記焼成温度の焼成を好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上行うことがよい。
【0059】
また、上記焼成工程後に得られる上記炭素系物質燃焼触媒を粉砕する粉砕工程を有することが好ましい(請求項19)。
この場合には、粉末状の上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。かかる炭素系物質燃焼触媒は、例えばハニカム構造のセラミック基板等に担持させやすくなる。また、表面積が大きくなるため、より優れた触媒活性を発揮させることができる。
【0060】
上記粉砕工程においては、粉砕条件を適宜調整することにより、所望の粒径の炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。具体的には、上記第1の発明と同様に、上記炭素系物質燃焼触媒のメジアン径を例えば50μm以下に調整することが好ましい。より好ましくは、メジアン径は10μm以下がよい。
【0061】
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持して用いられる。
上記焼成工程を行って得られる上記炭素系物質燃焼触媒は、その構造中にアルカリ金属(Na)を比較的強い結合力で保持しているため、上記セラミック基材に担持させる際にアルカリ金属が溶出し難く、溶出したアルカリ金属によってセラミック基材が劣化してしまうことを防止することができる。
これに対し、仮に焼成していないソーダライトをセラミック基材に担持させると、担持の際の加熱又は担持後の加熱時に、ソーダライト中のアルカリ金属(Na)が溶出し、セラミック基材を劣化させてしまうおそれがある。
即ち、上記第5の発明において、上記焼成工程は、上記セラミック基材への担持前に行われ、ソーダライトを上記セラミック基材に担持することなく行われる。
【0062】
上記第5の発明の製造方法によって得られる上記炭素系物質燃焼触媒(第6の発明)は、例えばガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス中に含まれる炭素微粒子(PM)等の炭素系物質を燃焼して除去するために用いられる。
【0063】
次に、上記第3の発明及び上記第7の発明の触媒担持体の製造方法、並びに上記第4の発明及び上記第8の発明の触媒担持体の好ましい実施形態について、図面を用いて説明する。
上記第3の発明及び上記第7の発明の製造方法、並びに上記第4の発明及び上記第8の発明の触媒担持体においては、上記炭素系物質燃焼触媒が異なる点を除いては、同様の形態を採用しうる。
即ち、上記第3の発明の製造方法においては、上記第1の発明の製造方法によって得られた炭素系物質燃焼触媒を採用し、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させるという担持工程を行って上記触媒担持体(第4の発明)を得る。また、上記第7の発明の製造方法においては、上記第5の発明の製造方法によって得られる炭素系物質燃焼触媒を採用し、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させるという担持工程を行って上記触媒担持体(第8の発明)を得る。
【0064】
上記担持工程においては、少なくとも上記炭素系物質燃焼触媒とゾル状又はスラリー状の酸化物系セラミック粒子とを混合して複合材料を作製し、該複合材料を上記セラミック基材にコートして加熱することが好ましい(請求項12及び請求項22)。
具体的には、まず、上記炭素系物質燃焼触媒と、例えばゾル状等の酸化物系セラミックス粒子とを混合し複合材料を得る。該複合材料に必要に応じてさらに水等の溶媒を加えて、適当な粘度に調整する。得られたスラリー状の複合材料を上記セラミック基材にコートして加熱する。
この場合には、図18に示すごとく、上記炭素系物質燃焼触媒1と、酸化物系セラミックス粒子15とが上記基材22上に焼き付けられ、上記炭素系物質燃焼触媒1をセラミック基材22に担持してなる上記触媒担持体2を簡単に得ることができる。また、上記セラミック基材22上に、酸化物系セラミックス粒子15が結合してなる接着層155が形成されると共に、該接着層155中に上記炭素系物質燃焼触媒1が分散して保持された触媒担持体2を得ることができる。
かかる構造の上記触媒担持体2は、上記接着層155により上記炭素系物質燃焼触媒1が強固に保持されている。そのため、使用中に上記炭素系物質燃焼触媒1が脱落し難く、安定に触媒活性を維持することができる。
【0065】
上記酸化物系セラミックス粒子は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びジルコニアから選ばれる1種以上を主成分とすることが好ましい(請求項13、請求項23)。
この場合には、比表面積の大きな接着層が形成されやすくなり、上記触媒担持体の表面積を大きくすることができる。その結果、上記炭素系物質燃焼触媒と炭素系物質とが接触し易くなり、上記触媒担持体はより効率よく炭素系物質の燃焼を行うことができる。
【0066】
また、上記セラミック基材としては、例えばコージェライト、アルミナ、チタン酸アルミ、SiC、又はチタニア等を主成分とする基材を用いることができる。
また、上記セラミック基材としては、例えばペレット形状、フィルタ形状、フォーム形状、フロースルー型のモノリス形状等の基材を用いることができる。
【0067】
好ましくは、上記セラミック基材はコージェライト、SiC、又はチタン酸アルミニウムよりなることがよい(請求項14、請求項24)。
また、好ましくは、上記セラミック基材はハニカム構造体であることがよい(請求項15、請求項25)。
これらの場合には、上記触媒担持体を排ガス浄化用としてより好適なものにすることができる。
上記ハニカム構造体としては、外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に両端面に貫通してなる複数のセルとを有する構造体がある。ハニカム構造体としては、全てのセルが両端面に開口した構造体を用いることもできるが、一部のセルがハニカム構造体の両端面に開口し、残りのセルは両端面に形成された栓部によって閉塞された構造体を用いることもできる。
【0068】
また、上記触媒担持体においては、上記炭素系物質燃焼触媒の他に、1種以上の希土類元素を上記セラミック基材に担持させることができる。希土類元素としては、例えばCe、La、Nd等を採用することができる。また、上記希土類元素としては、該希土類元素の酸化物粒子を採用することができる。
この場合には、希土類元素の状態変動により酸素の吸脱着が生じ、炭素系物質の燃焼をより促進させることができる。
【0069】
図19に、炭素系物質燃焼触媒1と共に希土類元素16を基材22に担持させてなる触媒担持体2の例を示す。このような触媒担持体2は、炭素系物質燃焼触媒1と、希土類元素1と、例えばゾル状等の酸化物系セラミックス粒子15とを混合し、さらに必要に応じて水を添加し、適当な粘度に調整し、得られたスラリー状の複合材料を上記セラミック基材22に焼き付けることによって得られる。この場合には、セラミック基材22上に酸化物セラミックス粒子15が結合してなる接着層155が形成されると共に、該接着層155中に炭素系物質燃焼触媒1と希土類元素16とが分散して担持された上記触媒担持体2を得ることができる。
【0070】
また、上記触媒担持体においては、炭素系物質燃焼触媒の他に、必要に応じて貴金属を担持させることも可能である。この場合には、上記触媒担持体の炭素系物質の燃焼に対する触媒活性をより向上させることができる。また、この場合には炭素系物質燃焼触媒が優れた触媒活性を有しているため、比較的高価な貴金属の担持量を従来よりも大幅に減らすことができる。貴金属としては、例えばPt、Pd、Rh等がある。
【0071】
図20に、酸化物セラミックス粒子15が結合してなる接着層155中に、炭素系物質燃焼触媒1と、希土類元素16と、貴金属17とが分散された触媒担持体2の例を示す。このような触媒担持体2は、炭素系物質燃焼触媒1と、希土類元素16と、例えばゾル状等の酸化物系セラミックス粒子15と、貴金属錯体とを混合し、さらに必要に応じて水を添加して適当な粘度に調整し、得られたスラリー状の複合材料を上記セラミック基材22に焼き付けることによって得ることができる。
【0072】
図21に示すごとく、上記貴金属17は上記酸化物系セラミックス粒子15に担持されていることが好ましい。また、上記希土類元素として希土類元素の酸化物粒子を含有する場合には、図22に示すごとく、上記希土類元素の酸化物粒子16に上記貴金属17が担持されていることが好ましい。
【0073】
また、上記触媒担持体には、図23及び図24に示すごとく、貴金属からなる貴金属層17を形成することができる。
図23に示すごとく、上記貴金属層17は、上記セラミック基材22上に担持された上記炭素系物質燃焼触媒1を含む上記接着層155上に形成することができる。即ち、セラミック基材22上に、炭素系物質燃焼触媒1を含む接着層155が形成され、該接着層155上に貴金属層17を形成させることができる。
この場合には、上記触媒担持体において、上記炭素系物質燃焼触媒1中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の被毒対策を図ることができる。
【0074】
また、図24に示すごとく、上記貴金属層17は、炭素系物質燃焼触媒1を含む上記接着層155とセラミック基材22との間に形成させることができる。即ち、セラミック基材22上に貴金属層17を形成し、該貴金属層17上に炭素系物質燃焼触媒1を含む上記接着層155を形成させることができる。
この場合には、上記炭素系物質燃焼触媒1中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素がセラミックスからなるセラミック基材22へ移動することを抑制することができる。これにより、セラミック基材22の腐食をより一層防止することができる。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき、説明する。
本例においては、内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼除去するために用いられる炭素系物質燃焼触媒を作製し、その炭素系物質(カーボン)に対する燃焼促進特性を調べる例である。
本例においては、ソーダライトを温度600℃以上で焼成するという焼成工程を行うことにより、炭素系物質燃焼触媒を作製する。
【0076】
具体的には、まず、ソーダライト(3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。
次いで、このソーダライトを温度1000℃で焼成した。具体的には、ソーダライトを昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、粉末状の炭素系物質燃焼触媒を得た。これを試料E1とする。
【0077】
次に、本例において作製した炭素系物質燃焼触媒(試料E1)について、炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0078】
具体的には、まず、触媒種(試料E1、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)200mgとカーボンブラック(CB)20mgとをそれぞれ電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する3種類の評価サンプルを得た。さらに、触媒種を用いずに、CBのみからなる評価サンプルを比較用として作製した。CB単独の評価サンプルについても、他のサンプルと同様にメノウ乳鉢を用いて一定時間混合したものを用いた。即ち、評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E1とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類のサンプルを作製した。
【0079】
次いで、熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置(理学電機社製のTG8120)用いて、各評価サンプル6mgを昇温速度10℃/minにて最高温度900℃まで加熱してCBを燃焼させると共に、このときのDTA発熱ピーク温度を測定した。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、0.5mgを用いてDTA発熱ピーク温度の測定を行った。また、加熱は、流束50mL//minで空気を評価サンプルに流通させながら行った。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の測定結果を図1に示す。
【0080】
また、触媒種(試料E1、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)1gを水500cc中に投入し、一昼夜撹拌することにより洗浄した。次に、水洗浄処理後の触媒種をろ過し、ろ過後の触媒種にさらに1500ccの水を流通させて充分に洗浄した後、乾燥させた。これらの水洗浄処理後の触媒種(試料E1及び貴金属系触媒)200mgとカーボンブラック(CB)20mgとを電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、他のサンプルと同様に洗浄及び乾燥を行い、その後メノウ乳鉢で混合したものを用いた。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗洗浄処理により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E1とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図1に併記する。
【0081】
図1より知られるごとく、水洗浄前において、試料E1を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度で炭素系物質(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図1から知られるごとく、試料E1は、約450℃付近に発熱ピークを有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば400℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
また、図1より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E1については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これに対して、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0082】
したがって、試料E1は、炭素系物質に対して優れた燃焼促進特性を有し、低温で炭素系物質を燃焼除去することができる。また、試料E1は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、長期間安定して炭素系物質の燃焼を行うことができる。
【0083】
また、本例においては、上記試料E1とは異なる焼成温度でソーダライトを焼成し、さらに3種類の触媒を作製した。
即ち、上記試料E1においては、焼成温度1000℃(保持時間10時間)でソーダライトの焼成を行ったが、これら2種類の触媒においては、それぞれ焼成温度700℃(保持時間10時間)、焼成温度600℃(保持時間10時間)又は焼成温度500℃(保持時間10時間)で焼成して作製した。そしてこれら3種類種類の炭素系物質燃焼触媒についても、上記試料E1と同様に炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用として炭素系物質燃焼触媒の作製に用いたソーダライト粉末についても炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。このソーダライトの粉末としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。燃焼促進特性の測定は、上記試料E1と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図2に示す。なお、同図には、試料E1、即ち焼成温度1000℃で焼成してなる炭素系物質燃焼触媒の結果を併記する。
【0084】
図2より知られるごとく、ソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られた炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、500℃以下という非常に低い値を示した。炭素系物質に対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図1参照)であることから、これらの炭素系物質燃焼触媒は、炭素系物質に対して充分に優れた触媒活性を有していることがわかる。
また、温度600℃以上で焼成してなる炭素系物質燃焼触媒は、水洗後においても、貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度と同程度又はそれより低い温度を示しており、水洗後においても優れた触媒活性を維持できることがわかる。
【0085】
これに対し、温度500℃で焼成して得られた触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒と同程度のDTA発熱ピーク温度(約520℃)を示したが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は約540℃まで上昇し、貴金属触媒よりも触媒活性が低下していた。また、焼成を行っていないソーダライトにおいては、水洗前後にかかわらず炭素系物質の燃焼に対する触媒活性が不十分であった。
【0086】
また、本例においては、上記試料E1の比較用として、ソーダライト(SOD)以外の各種ゼオライトを焼成し、これを触媒として用いて燃焼促進特性を調べた。
具体的には、まず、ソーダライト以外のゼオライトとして、ゼオライト構造(BEA型、FAU(フォージャサイト)型、FER型、LTA型、LTL型、MFI型、及びMOR型)及び/又はゼオライト組成中のSiO2/Al2O3比が異なる12種類のゼオライトを準備した(表1参照)。これらは、いずれも東ソー(株)製のゼオライトである。これらのゼオライトの製品名、ゼオライト構造の型の種類、及びSiO2/Al2O3比を表1に示す。なお、表1及び後述の図3におけるゼオライト種の名称は、東ソー(株)製のゼオライトの製品名である。また、表1には試料E1の作製に用いたソーダライト(SOD)についても併記してある。
【0087】
【表1】
【0088】
次に、表1に示す各種ゼオライトを上記試料E1と同様に焼成した。具体的には、各種ゼオライトをそれぞれ昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、粉末状の触媒を得た。そしてこれらの触媒についても、上記試料E1と同様に炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。なお、これらの触媒については、水洗後の燃焼促進特性の測定は行っていない。その結果を図3に示す。また、図3には、ソーダライトを焼成して得られた上記試料E1の結果「SOD」として併記してある。
【0089】
図3より知られるごとく、ソーダライト以外のゼオライトを焼成してなる物質を触媒として用いた場合には、DTA発熱ピーク温度が非常に高く、炭素系物質の燃焼促進特性が不十分であった。これに対し、SODを焼成してなる触媒(試料E1)は、約450℃という非常に低いDTA発熱ピーク温度を示しており、炭素系物質を低温で燃焼できる。よって、上記焼成工程においては、ゼオライトの中でもソーダライトを採用することが必要であることがわかる。
【0090】
以上のように、本例によれば、ソーダライトを温度600℃以上で焼成することにより、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる炭素系物質燃焼触媒が得られることがわかる。
【0091】
(実施例2)
本例は、混合工程と乾燥工程と焼成工程とを行うことにより炭素系物質燃焼触媒を作製する例である。
混合工程においては、原子当量比Si/Al≧1のアルミノケイ酸塩と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合する。乾燥工程においては、混合工程後の混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る。また、焼成工程においては、固形分を温度600℃以上で焼成することにより上記炭素系物質燃焼触媒を得る。
【0092】
具体的には、まず、原子当量比Si/Al≧1のアルミノケイ酸塩として、ソーダライト(3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。このソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部とを水に投入し、水中で混合した。
次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させた。これにより、固形分(ソーダライトと炭酸カリウムとの混合物)を得た。
次に、この固形分を温度800℃で焼成した。具体的には、固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度800℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、炭素系物質燃焼触媒を得た。これを試料E2とする。
【0093】
次に、本例において作製した炭素系物質燃焼触媒(試料E2)について、炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0094】
具体的には、まず、実施例1と同様にして、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E2とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類の評価サンプルを作製した。
次いで、熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置(理学電機社製のTG8120)用いて、各評価サンプル6mgを昇温速度10℃/minにて最高温度900℃まで加熱してCBを燃焼させると共に、このときのDTA発熱ピーク温度、及び温度とTGとの関係を測定した。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、0.5mgを用いてDTA発熱ピーク温度の測定を行った。また、加熱は、流束50mL//minで空気を評価サンプルに流通させながら行った。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の結果を図4に示す。また、温度とTGとの測定結果については、CB単独を用いた結果を図5に示し、触媒種として貴金属系触媒を用いた結果を図6に示し、K2CO3を用いた結果を図7に示し、試料E2を用いた結果を図8に示す。図5〜図8の縦軸は、カーボンブラックの最大燃焼速度を示すDTA発熱ピークを用いている。
【0095】
また、触媒種(試料E2、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)1gを水500cc中に投入し、一昼夜撹拌することにより洗浄した。次に、水洗浄処理後の触媒種をろ過し、ろ過後の触媒種にさらに1500ccの水を流通させて充分に洗浄した後、温度120℃にて乾燥させた。これらの水洗浄処理後の触媒種(試料E2及び貴金属系触媒)200mgとカーボンブラック(CB)20mgとを電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、他のサンプルと同様に洗浄及び乾燥を行い、その後メノウ乳鉢で混合したものを用いた。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗洗浄処理により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E2とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図4に併記する。
【0096】
図4〜図8より知られるごとく、水洗浄前において、試料E2を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度で炭素系物質(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図4及び図8から知られるごとく、試料E2は、約400℃付近に発熱ピークを有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば350℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
【0097】
図4より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E2については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これに対して、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0098】
したがって、試料E2は、炭素系物質に対して優れた燃焼促進特性を有し、低温で炭素系物質を燃焼除去することができる。また、試料E2は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、長期間安定して炭素系物質の燃焼を行うことができる。
【0099】
上記試料E2は、ソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部との混合物を温度800℃で10時間焼成することにより作製した触媒である。次に、本例においては、焼成温度による触媒活性への影響を調べるために、異なる温度でソーダライトと炭酸カリウムとの混合物(上記固形分)を焼成して複数の触媒を作製した。
具体的には、まず、ソーダライト100重量部と炭酸カリウム10重量部とを水中で混合し混合液を得た。次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させ、固形分(混合物)を得た。次に、この混合物を温度500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃で焼成して9種類の触媒を作製した。これらの触媒は、焼成温度を変更した点を除いては同様にして作製した触媒であり、ソーダライトに対する炭酸カリウムの混合割合及び焼成温度を変更した点を除いては、上記試料E2と同様にして作製した。さらに、温度600℃での焼成については焼成時間の影響を調べるため、上記試料E2と同様に10時間の焼成を行って作製した触媒の他に、焼成時間を5時間にして作製した触媒も準備した。その他の焼成温度で作製した触媒は、上記試料E2と同様にいずれも10時間焼成を行って作製した。
【0100】
そしてこれらの触媒についても、上記試料E2と同様に炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用としてソーダライトと炭酸カリウムとの混合物についても炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。このソーダライトと炭酸カリウムとの混合物としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。
燃焼促進特性の測定は、上記試料E2と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図9に示す。
【0101】
図9より知られるごとく、温度600℃以上で焼成を行って作製した炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、水洗前及び水洗後においても約460℃以下という非常に低い値を示した。炭素系物質に対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図4参照)であることから、これらの炭素系物質燃焼触媒は、炭素系物質に対して充分に優れた触媒活性を有していることがわかる。
【0102】
これに対し、温度600℃未満で焼成した触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒に比べて充分に低いDTA発熱ピーク温度を示し、優れた触媒活性を示していたが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は著しく上昇し、貴金属触媒よりも触媒活性が低下していた。また、焼成を行っていないソーダライトと炭酸カリウムとの混合物についても、水洗前には優れた触媒活性を示していたが、水洗後には触媒活性が著しく低下していた。
温度600℃未満で焼成して得られる触媒、及び焼成を行なわずに作製した触媒において、上記のごとく水洗後において触媒活性が著しく低下していた原因は、水洗後にカリウムが溶出したためであると考えられる。
【0103】
したがって、上記焼成工程における焼成温度は600℃以上で行う必要があることがわかる。また、図9より知られるごとく、特に温度700℃〜1200℃で焼成を行うことにより、よりDTA発熱ピーク温度の低い炭素系物質燃焼触媒、即ち触媒活性に優れた炭素系物質燃焼触媒が得られることがわかる。さらに、同図より知られるごとく、5時間で焼成を行った場合に比べて10時間焼成を行った場合の方が、水洗後の触媒活性の低下が抑制されていた。
【0104】
上述の例においては、上記混合工程においてソーダライトにK源として炭酸カリウムを混合して炭素系物質燃焼触媒を作製した。本例においては、次に、ソーダライトに混合するカリウム塩の種類を変えて複数の炭素系物質燃焼触媒を作製し、そのDTA発熱ピークトップ温度を調べた。
【0105】
具体的には、ソーダライトに、各カリウム塩(炭酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム、又は水酸化カリウム)を混合して混合物を得た。各カリウム塩は、カリウム塩中のカリウム元素量がソーダライト中のSi元素1モルに対して0.225モル又は0.00225モルとなるように混合を行った。また、混合は、上記試料E2と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0106】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、炭素系物質燃焼触媒を得た。
このようにして得られた各炭素系物質燃焼触媒について、上記試料E2と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図10に示す。
【0107】
図10より知られるごとく、いずれのカリウム塩を用いて作製しても、炭素系物質燃焼触媒は、水洗前後において優れた触媒活性を示した。また、カリウム塩の量を減らすと若干触媒活性は低下するものの、この場合においても水洗前後において450℃以下という非常にDTAピーク発熱トップ温度を維持しており、優れた触媒活性を示していた。
【0108】
上述の例においては、上記混合工程においてソーダライトにアルカリ金属元素源(アルカリ金属塩)としてカリウム塩を混合し、炭素系物質燃焼触媒を作製した。次に、本例においては、混合工程においてソーダライトにカリウム塩の他にも各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を混合して複数の炭素系物質燃焼触媒を作製し、これらのDTA発熱ピークトップ温度を調べた。
【0109】
具体的には、まず、ソーダライトに、各種アルカリ金属塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)、又はアルカリ土類金属塩(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム)を混合して混合物を得た。各アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、ソーダライト中のSi元素1モルに対する各アルカリ金属塩中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属塩中のアルカリ土類金属元素量が0.225モル又は0.00225モルとなるように混合した。また、混合は、上記試料E2と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0110】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、炭素系物質燃焼触媒を得た。
このようにして得られた各炭素系物質燃焼触媒について、上記試料E2と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図11に示す。図11において、横軸は、混合工程において添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ元素種、及びアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属種を示し、縦軸は、DTA発熱ピーク温度を示す。
【0111】
図11より知られるごとく、上記混合工程においてソーダライトに各種アルカリ金属元素(Na、K、Rb、Cs)を混合して作製した炭素系物質燃焼触媒は、いずれのアルカリ金属元素を用いた場合でも、水洗前後において優れた触媒活性を示した。
これに対し、上記混合工程においてソーダライトに各種アルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)を混合して作製した炭素系物質燃焼触媒においては、アルカリ土類金属元素としてMgを選択した場合に、若干触媒活性が不十分である場合が認められるものの、いずれの場合においても、実用上問題ないレベルの触媒活性を示した。
このように、K以外にも、その他のアルカリ金属、又はアルカリ土類金属をソーダライトに混合して焼成しても、優れた触媒活性を有する炭素系物質燃焼触媒が得られることがわかる。
【0112】
また、アルカリ土類金属元素源としてMg源を用いた場合について、さらに詳細に説明すると、図11より知られるごとく、Mgをソーダライト中のSi元素1モルに対して0.00225モル加えて得られた触媒は優れた触媒活性を示した。しかし、Mgを0.225モル加えて作製した触媒は、実用に供することは可能であるものの、触媒活性が低下していた。一方、その他のアルカリ土類金属元素(Ca、Sr、Ba)を用いて得られた触媒は、いずれの場合においても優れた触媒活性を示した。
したがって、アルカリ土類金属元素源を選択する場合には、Mg以外のアルカリ土類金属元素源を採用することが好ましい。また、Mg源を採用する場合には、Mg源中のMg量がソーダライト中のSi元素1モルに対して0.225モル未満となるように、Mg源とソーダライトとの混合を行うことが好ましい。より好ましくは、0.00225モル以下がよい。
【0113】
上記の例においては、上記混合工程において、ソーダライトに1種類のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を混合して炭素系物質燃焼触媒を作製した。次に、本例においては、上記混合工程において、ソーダライトに複数のアルカリ金属元素、アルカリ土類金属を混合して炭素系物質燃焼触媒を作製し、そのDTA発熱ピーク温度を測定した。
【0114】
具体的には、まず、ソーダライトに、炭酸カリウムを加え、さらにアルカリ金属元素源(炭酸ナトリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)又はアルカリ土類金属元素源(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、又は炭酸バリウム)を加えて混合し混合物を得た。このようにして得られた各混合物は、ソーダライトと、炭酸カリウムと、炭酸カリウム以外のアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源とを含有する。
各混合物は、ソーダライト中のSi元素1モルに対して炭酸カリウム中のカリウム量が0.1125モルとなるようにソーダライトに炭酸カリウム(カリウム源)を加え、さらにソーダライト中のSi元素1モルに対して各アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素量が0.1125モルとなるようにソーダライトに各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を加えて作製した。
したがって、各混合物においては、ソーダライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のカリウム量と、その他のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素量との合計量は、いずれも0.225モルとなっている。
また、混合は、上記試料E2と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0115】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持した。これにより混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、炭素系物質燃焼触媒を得た。
【0116】
このようにして得られた各炭素系物質燃焼触媒について、上記試料E2と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図12に示す。同図において、縦軸はDTA発熱ピーク温度を示し、横軸は、炭酸カリウム以外に添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素種又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素種を示す。また、同図には、ソーダライトに炭酸カリウムだけを混合し焼成して作製した炭素系物質燃焼触媒(図12において横軸がKで示されたサンプル)についての水洗前後のDTA発熱ピーク温度を併記する。
【0117】
図12より知られるごとく、上記混合工程において、ソーダライトにK(カリウム)の他に、さらに各種アルカリ金属元素(Na、Rb、Cs)又はアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)を混合した場合においても、Kを単独で混合した場合と同様に、優れた触媒活性を有する炭素系物質燃焼触媒が得られた。
このように、混合工程において複数のアルカリ金属元素源及びアルカリ土類金属源を用いても、優れた触媒活性を有する炭素系物質燃焼触媒が得られることがわかる。
【0118】
次に、本例においては、アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源の添加量が炭素系物質燃焼触媒の触媒活性に与える影響を調べるために、上記混合工程において、ソーダライトに混合するアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源の添加割合を変えて炭素系物質燃焼触媒を作製し、そのDTA発熱ピーク温度を測定した。
【0119】
まず、ソーダライト100重量部に、炭酸カリウム又は炭酸バリウムを0〜100重量部の添加量で混合し、混合物を得た。
具体的には、後述の表2及び図13に示すごとく、ソーダライト(SOD)100重量部に対して、炭酸カリウムをそれぞれ0重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、3重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、40重量部、及び100重量部混合して混合物を作製した。
また、後述の表3及び図14に示すごとく、ソーダライト(SOD)100重量部に対して、炭酸バリウムをそれぞれ0重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、40重量部、70重量部、100重量部、150重量部、200重量部、及び300重量部混合して混合物を作製した。
これらの混合は、上記試料E2と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより複数の混合物を得た。
【0120】
次に、これらの混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃に達したところで10時間保持した。これにより、混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、炭素系物質燃焼触媒を得た。
【0121】
このようにして得られた各炭素系物質燃焼触媒について、上記試料E2と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。
炭酸カリウムを用いて作製した炭素系物質燃焼触媒の水洗前後のDTA発熱ピーク温度の結果を表2及び図13に示し、炭酸バリウムを用いて作製した炭素系物質燃焼触媒の水洗前後のDTA発熱ピーク温度の結果を表3及び図14に示す。
なお、表2には、ソーダライト100重量部に対するKの混合量(重量部)をソーダライト中のSi量(mol)に対するKの混合量(mol)に換算した値を示してある(表2参照)。同様に、表3には、ソーダライト100重量部に対するBaの混合量(重量部)をソーダライト中のSi量(mol)に対するBaの混合量(mol)に換算した値を示してある(表3参照)。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
表2、表3、図13、及び図14より知られるごとく、上記混合工程におけるアルカリ金属元素量及びアルカリ土類金属元素量を変えても、得られる炭素系物質燃焼触媒は優れた触媒活性を示していた。
その一方で、アルカリ金属量又はアルカリ土類金属量を増やすと、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度の差が大きくなっていた。表2及び表3より知られるごとく、上記混合工程においては、アルカリ金属元素源(K2CO3)中に含まれるアルカリ金属元素(K)量、アルカリ土類金属元素源(BaCO3)中に含まれるアルカリ土類金属元素(Ba)量がソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となるように、ソーダライトとアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源とを混合すれば、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度の差が比較的小さな炭素系物質燃焼触媒、即ち水分に対する耐久性に優れた炭素系物質燃焼触媒を作製できることがわかる。また、上述のアルカリ金属元素量とアルカリ土類金属元素量が2.25モルを超える場合には、混合物が焼成時に一旦溶融し易くなり、焼成後に得られる炭素系物質燃焼触媒の粉砕が困難になる。
同様の観点から、より好ましくは、上記混合工程において、ソーダライト中のSi元素1モルに対してアルカリ金属元素量(モル)、アルカリ土類金属元素量(モル)は1モル以下がよく、さらにより好ましくは0.5モル以下がよい。
【0125】
以上のように、本例によれば、上記混合工程と上記焼成工程とを行うことにより、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去できる炭素系物質燃焼触媒を製造することができる。
【0126】
(実施例3)
本例は、実施例2で作製した炭素系物質燃焼触媒(試料E2)をハニカム構造のセラミック基材(セラミックハニカム構造体)22に担持させた触媒担持体2を作製する例である。
図15〜図17に示すごとく、本例のセラミック基材22は、外周壁21と、該外周壁21の内側においてハニカム状に設けられた隔壁25と、該隔壁25により仕切られた複数のセル3とを有する。セル3は、セラミック基材22の両端面23、24に部分的に開口している。即ち、一部のセル3は、セラミック基材22の両端面23、24に開口し、残りのセル3は、両端面23、24に形成された栓部32によって閉塞している。図15及び図16に示すように、本例においては、セル3の端部を開口する開口部31と、セル3の端部を閉塞する栓部32とは交互に配置されており、所謂市松模様を形成している。そして、セラミック基材22の隔壁25には、実施例2で作製した炭素系物質燃焼触媒1(試料E2)が担持されている。また、図18に示すごとく、隔壁25上には、アルミナゾルを焼き付けてなる接着層155が形成され、該接着層155中に炭素系物質燃焼触媒1が担持されている。接着層155は、アルミナからなる酸化物系セラミックス粒子15が結合してなり、接着層155には、炭素系物質燃焼触媒1が分散されている。
【0127】
また、図17に示すごとく、本例の触媒担持体2においては、排ガス10の入口側となる上流側端面23及び排ガス10の出口となる下流側端面24に位置するセルの端部は、栓部32が配置された部分と配置されていない部分とをそれぞれ交互に有している。隔壁2には多数の空孔が形成され、排ガス10が通過できるようになっている。
【0128】
また、本例の触媒担持体2の全体サイズは、直径160mm、長さ100mmであり、セルサイズは、セル厚さ3mm、セルピッチ1.47mmである。
また、セラミック基材22はコーディエライトからなり、そのセル3は、断面が四角形状のものを採用した。セル3は、その他にも例えば、三角形、六角形等の様々な断面形状を採用することができる。
また、本例においては、セル3の端部を開口する開口部31と、セル3の端部を閉塞する栓部32とは交互に配置されており、所謂市松模様を形成している。
【0129】
次に、本例のセラミックハニカム構造体の製造方法につき、説明する。
まず、タルク、溶融シリカ、及び水酸化アルミニウムを所望のコーディエライト組成となるように秤量し、造孔剤、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌した。そして、得られた粘土質のセラミック材料を成形機にて押出成形し、ハニカム状の成形体を得た。これを乾燥した後、所望の長さに切断し、外周壁と、その内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、隔壁により仕切られていると共に両端面に貫通してなる複数のセルとを有する成形体を作製した。次いで、この成形体を温度1400〜1450℃で2〜10時間加熱することにより仮焼して仮焼体(ハニカム構造体)を得た。
【0130】
次に、ハニカム構造体の両端面全体を覆うようにマスキングテープを貼り付けた。そして、セラミックハニカム構造体の両端面の栓詰めすべき位置に対応するマスキングテープにレーザ光を順次照射し、マスキングテープを溶融又は焼却除去して貫通穴を形成した。これにより、セルの端部における栓部により栓詰めすべき部分に貫通穴を形成した。セルの端部のその他の部分はマスキングテープで覆われている。本例においては、セルの両端面に貫通穴とマスキングテープで覆われた部分とが交互に配置するように、マスキングテープに貫通穴を形成した。本例では、マスキングテープとしては、厚さ0.1mmの樹脂フィルムを用いた。
【0131】
次に、栓部の材料である栓材の主原料となるタルク、溶融シリカ、アルミナ、及び水酸化アルミニウムを所望の組成となるように秤量し、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌し、スラリー状の栓材を作製した。このとき、必要に応じて造孔材を添加することもできる。そして、スラリー状の栓材を入れた容器を準備した後、貫通孔を部分的に形成したハニカム構造体の端面を浸漬した。これにより、マスキングテープの貫通穴からセルの端部に栓材を適量浸入させた。また、ハニカム構造体のもう一方の端面についても同様の工程を行った。このようにして、栓詰めすべきセルの開口部内に栓材が配置されたハニカム構造体を得た。
【0132】
次に、ハニカム構造体とその栓詰めすべき部分に配置した栓材とを同時に約1400〜1450℃で焼成した。これにより、マスキングテープは焼却除去され、図15に示すごとく、セル3の両端に、その端部を開口する複数の開口部31と、セル3の端部を閉塞する複数の栓部32とが形成されたセラミックハニカム構造体(セラミック基材)22を作製した。
【0133】
次に、実施例2で作製した炭素系物質燃焼触媒(試料E2)をアルミナゾルを3wt%配合したアルミナスラリーに混合した。さらに水分を加えて所望の粘度に調整し、スラリー状の複合材料を得た。次に、この複合材料をセラミック基材22の隔壁25にコートした。その後、温度500℃で加熱することにより、焼き付けを行った。なお、スラリー状の複合材料のコート量は、基材(ハニカム構造体)1L当りに60gとした。このようにして、図15、図16、及び図18に示すごとく、炭素系物質燃焼触媒1をセラミック基材22に担持した触媒担持体2を得た。
【0134】
本例の触媒担持体2は、実施例2の炭素系物質燃焼触媒1(試料E2)をセル壁22に担持している。そのため、炭素系物質燃焼触媒1の優れた特徴を生かして、ハニカム構造体2においては、基材を腐食させることなく、低温で炭素系物質を燃焼させることができる。また、水分によって、炭素系物質に対する触媒活性が低下することもほとんどない。
また、炭素系物質燃焼触媒(試料E2)は、ソーダライトとアルカリ金属元素源(炭酸カリウム)との混合物を焼成してなる。かかる炭素系物質燃焼触媒は、その構造中に比較的強固にアルカリ金属元素を保持しているため、アルカリ金属の溶出が起こり難い。したがって、炭素系物質燃焼触媒をハニカム構造体に担持させる際においても、アルカリ金属が溶出し、セラミック基材を腐食してしまうことを防止することができる。
【0135】
本例においては、コージェライトからなるセラミック基材(セラミックハニカム構造体)を用いて触媒担持体を作製したが、上記セラミック基材として、例えばSiC、チタン酸アルミニウム等の多孔質の高耐熱性セラミックスを用いても同様の触媒担持体を作製することができる。また、本例においては、上記セラミック基材として、セルの端部を閉塞する栓部が形成されたセラミックハニカム構造体を用いたが、例えば圧力損失を抑えるために、栓部を形成していないセラミックハニカム構造体を用いることができる。
【0136】
また、複合酸化物粒子の他に、希土類元素を含有する炭素系物質燃焼触媒を担持させた触媒担持体を作製する場合には、アルミナゾルを3wt%配合したアルミナスラリーに炭素系物質燃焼触媒(試料E2)を混合する際に、例えばCeO2、ZrO2、CeO2−ZrO2固溶体等からなる酸化物粒子をさらに加えることにより作製することができる。
【0137】
また、炭素系物質燃焼触媒の他に貴金属を担持させた触媒担持体を作製する場合には、アルミナゾルを3wt%配合したアルミナスラリーに炭素系物質燃焼触媒(試料E2)を混合する際に、例えば硝酸白金水溶液をさらに所定量分散させることにより作製することができる。
【0138】
なお、本例においては、実施例2において作製した炭素系物質燃焼触媒(試料E2)をセラミック基材に担持させて触媒担持体を作製したが、上記試料E2の代わりに実施例1において作製した炭素系物質燃焼触媒(例えば試料E1)を用いて、本例と同様の操作を行うことにより、実施例1で作製した炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持させてなる触媒担持体を作製することができる。
【0139】
(比較例)
本例においては、実施例3の触媒担持体の比較用として、焼成を行っていないソーダライトとアルカリ金属元素源(炭酸カリウム)との混合物をセラミック基材に担持してなる触媒担持体を作製する。
本例において作製する触媒担持体は、担持させる触媒が異なる点を除いては、上記実施例3と同様のものである。
【0140】
本例の触媒担持体の作製にあたっては、まず、実施例3と同様のコージェライトからなるセラミック基材(セラミックハニカム構造体)を準備した。
次いで、ソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部とを水に混合した。混合液を加熱し、水分を蒸発させ、固形分(混合物)を得た。このようにして、ソーダライトと炭酸カリウムとの混合物を得た。
【0141】
次に、この混合物をアルミナゾルを3wt%配合したアルミナスラリーに混合し、さらに水分を加えて所望の粘度に調整してスラリー状の複合材料を得た。次いで、実施例3と同様に、この複合材料をセラミック基材の隔壁にコートし、温度500℃で加熱することにより、混合物をセラミック基材に焼付けた。このようにして、比較用の触媒担持体を得た。
【0142】
本例において得られた触媒担持体においては、セラミック基材に部分的な割れが生じていた。
即ち、焼成を行っていないソーダライトとアルカリ金属元素源(炭酸カリウム)との混合物をセラミック基材に担持すると、焼付け等の加熱時に、混合物からアルカリ金属(カリウム)が溶出し易い。この溶出したアルカリ金属は、セラミック基材のコージェライト成分を攻撃して、その結晶系を破壊してしまう。そのため、セラミック基材の熱膨張係数及び強度が部分的に変化し、上記のごとくセラミック基材に割れ等が発生し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】実施例1にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、炭素系物質を燃焼させたときのDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図2】実施例1にかかる、焼成温度と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図3】実施例1にかかる、ゼオライト種と触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図4】実施例2にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、炭素系物質を燃焼させたときのDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図5】実施例2にかかる、触媒を用いずにカーボンブラックを単独で燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図6】実施例2にかかる、触媒種として貴金属系触媒を用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図7】実施例2にかかる、触媒種として炭酸カリウムを用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図8】実施例2にかかる、触媒種として炭素系物質燃焼触媒(試料E1)を用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図9】実施例2にかかる、焼成温度と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図10】実施例2にかかる、カリウム塩種と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図11】実施例2にかかる、アルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図12】実施例2にかかる、カリウム以外のアルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図13】実施例2にかかる、混合工程において混合するカリウム量と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図14】実施例2にかかる、混合工程において混合するバリウム量と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図15】実施例3にかかる、触媒担持体(セラミックハニカム構造体)の斜視図。
【図16】実施例3にかかる、触媒担持体(セラミックハニカム構造体)の長手方向の断面図。
【図17】実施例3にかかる、触媒担持体(セラミックハニカム構造体)内を排ガスが通過する様子を示す触媒担持体の断面図。
【図18】酸化物系セラミックス粒子が結合してなる接着層中に炭素系物質燃焼触媒が分散された触媒担持体の構成を示す触媒担持体の断面図。
【図19】酸化物系セラミックス粒子が結合してなる接着層中に炭素系物質燃焼触媒と希土類元素とが分散された触媒担持体の構成を示す触媒担持体の断面図。
【図20】酸化物系セラミックス粒子が結合してなる接着層中に、炭素系物質燃焼触媒と希土類元素と貴金属とが分散された触媒担持体の構成を示す触媒担持体の断面図。
【図21】貴金属が酸化物粒子に担持された状態を示す説明図。
【図22】貴金属が希土類元素(希土類元素の酸化物粒子)に担持された状態を示す説明図。
【図23】基材上に形成された炭素系物質燃焼触媒を含有する接着層上にさらに貴金属層を形成した触媒担持体の構成を示す触媒担持体の断面図。
【図24】基材と炭素系物質燃焼触媒を含有する接着層との間に貴金属層を形成した触媒担持体の構成を示す触媒担持体の断面図。
【符号の説明】
【0144】
1 炭素系物質燃焼触媒
15 酸化物系セラミックス粒子
155 接着層
16 希土類元素
17 貴金属
2 触媒担持体
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中に含まれる炭素微粒子(PM)等の炭素系物質を燃焼除去するために用いられる炭素系物質燃焼触媒及びその製造方法、並びに上記炭素系物質燃焼触媒をセラミックス基材に担持した触媒担持体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス中に含まれる炭素微粒子(粒子状浮遊物、PM)は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)等により燃焼除去されていた。低コストでかつ多くのPMを除去するために、燃焼除去は比較的低温で行われることが望まれていた。そのため、排ガス中のPMを燃焼除去する際には、PM等の炭素系物質の燃焼を促進する触媒を担持したDPFが用いられていた。
【0003】
このような炭素系物質燃焼触媒としては、例えばPt、Pd、Rh等の貴金属又はその酸化物が一般的に用いられていた。しかし、高価な貴金属を用いた触媒はコストが高くなると共に、資源の枯渇という問題に対する懸念もある。また、PMの燃焼活性が不十分であり、通常の稼働条件では、徐々に未処理のPMが蓄積してしまうという問題があった。蓄積したPMを除去するためには、燃料を用いて排ガスの温度を上昇させるか、又は電気的に加熱することによって、触媒の温度を600℃以上にする必要があった。その結果、排ガス中に含まれる二酸化硫黄が三酸化硫黄や硫酸ミストに転化し、PMの除去は可能でも排ガスの浄化が不完全になるおそれがあった。
【0004】
そこで、酸化物セラミック系粒子にカリウム等のアルカリ金属の酸化物よりなる触媒粒子を担持させた触媒が開発されている(特許文献1〜4参照)。このようなアルカリ金属を担持させることにより、400℃前後という低温で排ガス中の粒子状浮遊物(PM)を燃焼除去することができる。
【0005】
しかしながら、アルカリ金属を用いた触媒においては、水分の存在下で触媒成分であるアルカリ金属が溶出するおそれがある。したがって、エンジンの排ガスのように多くの水蒸気を含む環境下で用いると、長期間安定的に排ガスの浄化を行うことができなくなるおそれがあった。また、触媒活性の低下を防止するために、アルカリ金属の溶出を見越して過剰量のアルカリ金属を用いると、該アルカリ金属を担持させるセラミックス等からなる基材を損傷させてしまうおそれがあった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−170483号公報
【特許文献2】特開2005−230724号公報
【特許文献3】特開2005−296871号公報
【特許文献4】特開2005−342604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる炭素系物質燃焼触媒及びその製造方法、並びに触媒担持体及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられると共に、セラミック基材に担持して用いられる炭素系物質燃焼触媒の製造方法において、
原子当量比Si/Al≧1のアルミノケイ酸塩と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合する混合工程と、
該混合工程後の混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る乾燥工程と、
上記固形分を温度600℃以上で焼成することにより上記炭素系物質燃焼触媒を得る焼成工程とを有し、
上記アルミノケイ酸塩は、ソーダライトであることを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法にある(請求項1)。
【0009】
また、第2の発明は、上記第1の発明の製造方法によって得られたことを特徴とす炭素系物質燃焼触媒にある(請求項10)。
【0010】
第1の発明の製造方法においては、上記混合工程と、上記乾燥工程と、上記焼成工程とを行うことにより、上記炭素系物質燃焼触媒を作製する。
即ち、上記混合工程においては、原子当量比Si/Al≧1のアルミノケイ酸塩(ソーダライト)と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合する。次いで、上記乾燥工程においては、上記混合工程後の混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る。これにより、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素と上記アルミノケイ酸塩との混合物からなる上記固形分を得ることができる。次いで、上記焼成工程においては、上記固形分を温度600℃以上で焼成する。これにより、上記炭素系物質燃焼触媒(第2の発明)を得ることができる。
【0011】
上記炭素系物質燃焼触媒は、上記アルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素を含有する。上記アルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素は、例えば排ガス中の粒子状浮遊物(PM)等の炭素系物質に対する燃焼促進作用を有する。そのため、上記炭素系物質燃焼触媒は、低温で上記炭素系物質を燃焼させることができる。
【0012】
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、上記アルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素を保持することができる。そのため、水分存在下においても上記アルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素が溶出することを防止することができる。
このように、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下においても溶出され難く、例えばセラミックス等の基材に担持させて用いる場合にも過剰量を担持させる必要がなくなり、基材の劣化を防止できる。そのため、上記炭素系物質燃焼触媒は、長期間安定的に炭素系物質の燃焼を促進することができる。
【0013】
上記第1の発明の製造方法によって得られた上記炭素系物質燃焼触媒(第2の発明)は、上述のごとく、内燃機関の排ガス中に含まれる粒子状浮遊物(PM)等の炭素系物質に対する燃焼促進特性を有する。上記炭素系物質燃焼触媒は、従来の貴金属触媒と同等又はそれよりも低い温度で上記炭素系物質を燃焼させることができる。
【0014】
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、上述のごとく、水分存在下においても、その触媒活性が低下し難い。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持して用いたときに、従来のアルカリ金属触媒のように水分存在下でセラミック基材を腐食させてしまうことがほとんどなく、上記セラミック基材の劣化を防止することができる。
そのため、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下においても長期間安定に炭素系物質の燃焼を促進させることができる。
【0015】
上記炭素系物質燃焼触媒が上記のごとく優れた触媒活性を発揮する理由は定かではないが、原料であるアルミノケイ酸塩(ソーダライト)中のNa、上記アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素、上記アルカリ土類金属元素中のアルカリ土類金属元素が触媒活性に寄与していると考えられる。
即ち、上記炭素系物質燃焼触媒においては、ソーダライト中のNaと、上記アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素とが炭素系物質の燃焼促進特性を発揮していると考えられる。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、その構造中に比較的強い結合力でアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を保持しており、水分の存在下においてもこれらの元素が溶出し難くなっているため、上記のごとく触媒活性の低下を抑制できると共に、セラミック基材の腐食を防止することができると考えられる。
【0016】
また、上記第1の発明においては、上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合物(上記固形分)を温度600℃以上で焼成するという上記焼成工程を行って上記炭素系物質燃焼触媒を得る。そして、上記焼成工程を経て得られた上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて用いられる。即ち、上記焼成工程は、上記混合物を上記セラミック基材に担持することなく行われ、上記セラミック基材への担持は上記焼成工程後に行われる。
【0017】
仮に、ソーダライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物をセラミック基材に担持した後に、温度600℃以上で焼成すると、ソーダライト中に含まれていたNa、上記アルカリ金属元素源中のアルカリ金属、上記アルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属等が溶出し、溶出したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が例えばコージェライト等からなるセラミック基材の構造を部分的に変化させ、熱膨張係数や強度が低下してセラミック基材に割れ等が発生するおそれがある。
本発明においては、上記のごとく、上記焼成工程を経た上記炭素系物質燃焼触媒が上記セラミック基材の担持に用いられており、このような炭素系物質燃焼触媒においては、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素が強固に保持されている。そのため、上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させたときに、担持時の加熱又はその後の加熱により、上記炭素系物質燃焼触媒からアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が溶出することを防止することができる。その結果、上記セラミック基材に割れ等が発生することを防止することができる。
【0018】
また、上記第1の発明においては、上記混合工程と上記乾燥工程と上記焼成工程とにより上記炭素系物質燃焼触媒を簡単に製造することができる。即ち、上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ金属元素源とを水中で混合し、乾燥して得られる混合物(上記固形分)を温度600℃以上で焼成することにより、簡単に上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。
【0019】
このように、上記第1の発明及び上記第2の発明によれば、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる炭素系物質燃焼触媒及びその製造方法を提供することができる。
【0020】
第3の発明は、内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられる炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持させてなる触媒担持体を製造する方法において、
上記第1の発明の製造方法によって得られる上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を有することを特徴とする触媒担持体の製造方法にある(請求項11)。
【0021】
また、第4の発明は、上記第3の発明の製造方法によって得られたことを特徴とする触媒担持体にある(請求項16)。
【0022】
上記第3の発明の製造方法によって得られる上記触媒担持体(第4の発明)は、上記第1の発明の製造方法によって得られる炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持してなる。
そのため、上記触媒担持体は、上記炭素系物質燃焼触媒の上述の優れた作用効果を発揮することができる。即ち、上記触媒担持体は、低温でかつ長期間安定的に炭素系物質を燃焼除去することができる。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下において上記セラミック基材を腐食させうるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の溶出を抑制することができる。そのため、上記触媒担持体においては、水分存在下においても、上記セラミック基材をほとんど腐食させることがなく、長期期間安定に炭素系物質を燃焼させることができる。
【0023】
また、上記第3の発明においては上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合物(上記固形分)を温度600℃以上で焼成するという上記第1の発明における上記焼成工程を経て得られた上記炭素系物質燃焼触媒を、上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を行う。上述のごとく、上記焼成工程を経て得られた上記炭素系物質燃焼触媒は、その構造中にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を強固に保持している。そのため、上記担持工程においては、上記炭素系物質燃焼触媒からのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の溶出が抑制される。その結果、溶出したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が上記セラミック基材に割れ等を発生させることを防止することができる。また、担持後に得られた上記触媒担持体を加熱しても、上記炭素系物質燃焼触媒からはアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素は溶出し難い。そのため、上記触媒担持体は長期間安定に使用することができる。
【0024】
このように、上記第3の発明及び上記第4の発明によれば、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる触媒担持体及びその製造方法を提供することができる。
【0025】
第5の発明は、内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられると共に、セラミック基材に担持して用いられる炭素系物質燃焼触媒を製造する方法において、
ソーダライトを温度600℃以上で焼成して上記炭素系物質燃焼触媒を得る焼成工程を有することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法にある(請求項17)。
【0026】
また、第6の発明は、上記第5の発明の製造方法によって得られたことを特徴とする炭素系物質燃焼触媒にある(請求項20)。
【0027】
上記第5の発明の製造方法によって得られる上記炭素系物質燃焼触媒(第6の発明)は、内燃機関の排ガス中に含まれる例えば粒子状浮遊物(PM)等の炭素系物質に対する燃焼促進特性を有する。上記炭素系物質燃焼触媒は、従来の貴金属触媒と同等又はそれよりも低い温度で上記炭素系物質を燃焼させることができる。
【0028】
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下においても、その触媒活性が低下し難い。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持して用いたときに、従来のアルカリ金属触媒のように水分存在下でセラミック基材を腐食させてしまうことがほとんどなく、上記セラミック基材の劣化を防止することができる。
そのため、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下においても長期間安定に炭素系物質の燃焼を促進させることができる。
【0029】
上記炭素系物質燃焼触媒が上記のごとく優れた触媒活性を発揮する理由は定かではないが、原料であるソーダライト中のNaが触媒活性に寄与していると考えられる。
即ち、ソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られる上記炭素系物質燃焼触媒においては、ソーダライト中に含有されていたNaが炭素系物質の燃焼促進特性を発揮していると考えられる。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、その構造中に比較的強い結合力でNaを保持しており、水分の存在下においてもNaが溶出し難くなっているため、上記のごとく触媒活性の低下を抑制できると共に、セラミック基材の腐食を防止することができると考えられる。
【0030】
また、上記第5の発明においては、ソーダライトを温度600℃以上で焼成するという上記焼成工程を行って上記炭素系物質燃焼触媒を得る。そして、上記焼成工程を経て得られた上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて用いられる。即ち、上記焼成工程は、上記ソーダライトを上記セラミック基材に担持することなく行われ、上記セラミック基材への担持は上記焼成工程後に行われる。
【0031】
仮に、ソーダライトをセラミック基材に担持した後に、温度600℃以上で焼成すると、ソーダライト中のNaが溶出し、溶出したNaが例えばコージェライト等からなるセラミック基材の構造を部分的に変化させ、熱膨張係数や強度が低下してセラミック基材に割れ等が発生するおそれがある。
本発明においては、上記のごとく、上記焼成工程を経た上記炭素系物質燃焼触媒が上記セラミック基材の担持に用いられており、このような炭素系物質燃焼触媒においては、上記ソーダライト中に含まれていたアルカリ金属(Na)が強固に保持されている。そのため、上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させたときに、担持時の加熱又はその後の加熱により、上記炭素系物質燃焼触媒からアルカリ金属が溶出することを防止することができる。その結果、上記セラミック基材に割れ等が発生することを防止することができる。
【0032】
また、上記第5の発明においては、上記焼成工程により上記炭素系物質燃焼触媒を簡単に製造することができる。即ち、ソーダライトを温度600℃以上で焼成することにより、簡単に上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。
【0033】
このように、上記第5の発明及び上記第6の発明によれば、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる炭素系物質燃焼触媒及びその製造方法を提供することができる。
【0034】
第7の発明は、内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられる炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持させてなる触媒担持体を製造する方法において、
上記第5の発明の製造方法によって得られる上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を有することを特徴とする触媒担持体の製造方法にある(請求項21)。
【0035】
また、第8の発明は、上記第7の発明の製造方法によって得られたことを特徴とする触媒担持体にある(請求項26)。
【0036】
上記第7の発明の製造方法によって得られる上記触媒担持体(第8の発明)は、上記第5の発明の製造方法によって得られる炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持してなる。
そのため、上記触媒担持体は、上記炭素系物質燃焼触媒の上述の優れた作用効果を発揮することができる。即ち、上記触媒担持体は、低温でかつ長期間安定的に炭素系物質を燃焼除去することができる。
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下において上記セラミック基材を腐食させうるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の溶出を抑制することができる。そのため、上記触媒担持体においては、水分存在下においても、上記セラミック基材をほとんど腐食させることがなく、長期期間安定に炭素系物質を燃焼させることができる。
【0037】
また、上記第7の発明においては、ソーダライトを温度600℃以上で焼成するという上記第5の発明における上記焼成工程を行うことにより得られた上記炭素系物質燃焼触媒を、上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を行う。上述のごとく、上記焼成工程を経て得られた上記炭素系物質燃焼触媒は、ソーダライト中に含まれていたアルカリ金属(Na)を強固に保持している。そのため、上記担持工程においては、上記炭素系物質燃焼触媒からのアルカリ金属の溶出が抑制される。その結果、溶出したアルカリ金属が上記セラミック基材に割れ等を発生させることを防止することができる。
【0038】
このように、上記第7の発明及び第8の発明によれば、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる触媒担持体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、上記第1の発明について説明する。
上記炭素系物質燃焼触媒は、炭素系物質の燃焼除去等に用いられる。上記炭素系物質としては、例えばディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる炭素微粒子(PM)等がある。
【0040】
上記第1の発明における製造方法にあたっては、上記混合工程と、上記乾燥工程と、上記焼成工程とを行う。
上記第1の発明における上記混合工程においては、原子当量比Si/Al≧1アルミノケイ酸塩と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合する。このとき、アルミノケイ酸塩と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とが均一に分散されるまで混合することが好ましい。
【0041】
また、原子当量比Si/Al<1の場合には、得られる炭素系物質燃焼触媒は、水分存在下でアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素が溶出し易くなるおそれがある。その結果、上記炭素系物質燃焼触媒は、長期間安定して触媒活性を維持することが困難になるおそれがある。
具体的には、上記第1の発明においては、上記アルミノケイ酸塩としては、ソーダライトを用いる。ソーダライトは、一般式3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaXで表される。Xは、一価の陰イオンとなる原子又は原子団であり、例えばF、Cl、Br、I等のハロゲン、又はOH等である。
【0042】
上記混合工程においては、上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合して混合液を得る。
上記アルカリ金属元素源としては、例えばアルカリ金属の化合物等がある。また、上記アルカリ土類金属元素源は、例えばアルカリ土類金属の化合物等がある。
【0043】
上記アルカリ金属元素源は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上を含有し、上記アルカリ土類金属元素は、Ca、Sr、及びBaから選ばれる1種以上を含有することが好ましい(請求項2)。
この場合には、炭素系物質をより低温で燃焼させることができる上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。
即ち、上記混合工程においては、上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と、上記アルカリ金属元素源及び/又はMg源を除く上記アルカリ土類金属元素源を少なくとも混合することが好ましい。Mg源は、ソーダライトとの混合に単独で用いずに、他のアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源と併用することができる。
【0044】
上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源は、それぞれ炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、酸化物、又は水酸化物であることが好ましい(請求項3)。
この場合には、容易に水等の極性溶媒に混合させることができるため、上記混合工程において、均一に混合させることができる。
【0045】
より好ましくは、上記アルカリ金属元素源としてはアルカリ金属元素の塩を用い、上記アルカリ土類金属元素源としてはアルカリ土類金属元素の塩を用いることがよい。
この場合には、上記アルカリ金属元素源及び上記アルカリ土類金属元素源は、水等の極性溶媒に対して優れた溶解性で溶解できるため、上記混合工程を水等の極性溶媒中で行う場合に、上記アルミノケイ酸塩と、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを簡単かつ均一に混合させることができる。
【0046】
また、上記混合工程においては、水の代わりに水以外の極性溶媒を用い、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを上記極性溶媒中で混合し、上記乾燥工程においては、上記極性溶媒を蒸発させて上記固形分を得ることができる(請求項5)。
具体的には、上記極性溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコールを用いることができる。
上記極性溶媒としては、水よりも揮発し易い溶媒を用いることが好ましい。
この場合には、上記乾燥工程において上記極性溶媒をより簡単に蒸発させることができる。
【0047】
また、上記混合工程においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することが好ましい(請求項6)。
【0048】
上記アルカリ金属元素と上記アルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)中のSi元素1モルに対して2.25モルを超える場合には、上記焼成工程中に上記固形分が溶融し易くなる。そのため、上記焼成工程後に得られる上記炭素系物質燃焼触媒は、一旦溶融状態を経るため、硬度が高くなってしまうおそれがある。その結果この場合には、後述のごとく上記焼成工程後に粉砕工程を行って上記炭素系物質燃焼触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。また、この場合には、得られる上記炭素系物質燃焼触媒自体の触媒活性は優れていても、水分による影響を受けやすくなるおそれがある。即ち、水分による触媒活性の低下幅が大きくなるおそれがある。そのため、所定の触媒活性を長期間維持させることが困難になるおそれがある。
【0049】
より好ましくは、上記混合工程においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して1モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することがよい(請求項7)。
さらに好ましくは、上記混合工程においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して0.5モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することがよい(請求項8)。
【0050】
また、上述のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量は、上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)に混合するアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素との合計量であり、アルカリ金属元素源及びアルカリ土類金属元素源のうちいずれか一方だけを用いた場合には、もう一方の元素の量は0モルとして算出できる。また、複数のアルカリ金属元素源、複数のアルカリ土類金属元素源を用いた場合には、それらのすべての合計量として算出できる。
【0051】
次に、上記乾燥工程においては、上記混合工程後の混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る。上記第1の発明において、上記固形分は、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源と上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)との混合物からなる。
【0052】
次に、上記焼成工程においては、上記固形分を温度600℃以上で焼成する。これにより上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。
上記焼成工程における焼成温度(加熱時の最高温度)が600℃未満の場合には、水分の存在下で、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素が溶出し易くなり、上記炭素系物質燃焼触媒は、炭素系物質の燃焼活性を長期間安定的に発揮することが困難になるおそれがある。また、上記焼成工程においては、焼成温度700℃以上で加熱することが好ましく、より好ましくは焼成温度800℃以上で加熱することがよい。
【0053】
また、焼成温度が1200℃を越える場合には、上記炭素系物質燃焼触媒は、上記焼成工程において一旦溶融状態を経るため、硬度の高い塊状になってしまうおそれがある。その結果この場合には、後述のごとく上記焼成工程後に粉砕工程を行って上記炭素系物質燃焼触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。
したがって、好ましくは、上記焼成工程においては、上記固形分を温度700℃〜1200℃で焼成することがよい(請求項9)。
なお、上記焼成工程における焼成温度は、上記固形分自体の温度のことであり、雰囲気温度ではない。したがって、上記焼成工程においては、上記固形分自体の温度が600℃以上になるように焼成を行う。上記焼成工程においては、上記焼成温度の焼成を好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上行うことがよい。
【0054】
次に、上記焼成工程後に、上記炭素系物質燃焼触媒を粉砕する粉砕工程を行うことが好ましい(請求項4)。
この場合には、粒子状の上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。かかる炭素系物質燃焼触媒は、例えばハニカム構造のセラミック基板等に担持させやすくなる。また、表面積が大きくなるため、より優れた触媒活性を発揮させることができる。
また、上記粉砕工程においては、粉砕条件を調整することにより、所望の粒径の炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。
好ましくは、上記粉砕工程においては、上記炭素系物質燃焼触媒のメジアン径を50μm以下に調整することがよい。メジアン径が50μmを超える場合には、上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材にコートする際に、目詰まりが起こったり、担持量にばらつきが生じ易くなるおそれがある。より好ましくは、メジアン径は10μm以下であることがよい。
上記炭素系物質燃焼触媒のメジアン径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置あるいは走査電子顕微鏡等により測定することができる。
【0055】
上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持して用いられる。
上記アルミノケイ酸塩(ソーダライト)と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合物(上記固形分)を温度600℃以上で焼成するという上記記焼成工程を経て得られる上記炭素系物質燃焼触媒は、その構造中にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を比較的強い結合力で保持している。そのため、上記炭素系物質燃焼触媒においては、上記セラミック基材に担持させる際にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が溶出し難く、溶出したアルカリ金属及びアルカリ土類金属によりセラミック基材が劣化してしまうことを防止することができる。
これに対し、仮に焼成を行っていない上記混合物をセラミック基材に担持させると、担持の際の加熱又は担持後の加熱時に、ソーダライト中のNa、上記アルカリ金属元素源中のアルカリ金属、上記アルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素がセラミック基材を劣化させてしまうおそれがある。
即ち、上記第1の発明において、上記焼成工程は、上記セラミック基材への担持前に行われ、上記混合物を上記セラミック基材に担持することなく行われる。
【0056】
上記第1の発明の製造方法によって得られた上記炭素系物質燃焼触媒(第2の発明)は、例えばガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス中に含まれる炭素微粒子(PM)等の炭素系物質を燃焼して除去するために用いられる。
【0057】
次に、上記第5の発明について説明する。
上記第5の発明の上記焼成工程においては、ソーダライトを温度600℃以上で焼成する。
ソーダライトは、一般式3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaXで表される。Xは、一価の陰イオンとなる原子又は原子団であり、例えばF、Cl、Br、I等のハロゲン、又はOH等である。
【0058】
上記焼成工程における焼成温度が600℃未満の場合には、所望の効果を有する上記炭素系物質燃焼触媒を得ることが困難になる。即ち、この場合には、得られる上記炭素系物質燃焼触媒の炭素系物質の燃焼に対する触媒活性が低下するおそれがある。好ましくは、焼成温度は700℃以上がよい。
また、焼成温度が1200℃を越える場合には、上記焼成工程中に上記ソーダライトが溶融し易くなる。そのため、上記焼成工程後に得られる上記炭素系物質燃焼触媒は、一旦溶融状態を経るため、硬度が高くなってしまうおそれがある。その結果この場合には、後述のごとく上記焼成工程後に粉砕工程を行って上記炭素系物質燃焼触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。
したがって、好ましくは、上記焼成工程においては、上記ソーダライトを温度700℃〜1200℃で焼成することがよい(請求項18)。
なお、上記焼成工程における焼成温度は、上記ソーダライト自体の温度のことであり、雰囲気温度ではない。したがって、上記焼成工程においては、ソーダライト自体の温度が600℃以上になるように焼成を行う。上記焼成工程においては、上記焼成温度の焼成を好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上行うことがよい。
【0059】
また、上記焼成工程後に得られる上記炭素系物質燃焼触媒を粉砕する粉砕工程を有することが好ましい(請求項19)。
この場合には、粉末状の上記炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。かかる炭素系物質燃焼触媒は、例えばハニカム構造のセラミック基板等に担持させやすくなる。また、表面積が大きくなるため、より優れた触媒活性を発揮させることができる。
【0060】
上記粉砕工程においては、粉砕条件を適宜調整することにより、所望の粒径の炭素系物質燃焼触媒を得ることができる。具体的には、上記第1の発明と同様に、上記炭素系物質燃焼触媒のメジアン径を例えば50μm以下に調整することが好ましい。より好ましくは、メジアン径は10μm以下がよい。
【0061】
また、上記炭素系物質燃焼触媒は、該炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持して用いられる。
上記焼成工程を行って得られる上記炭素系物質燃焼触媒は、その構造中にアルカリ金属(Na)を比較的強い結合力で保持しているため、上記セラミック基材に担持させる際にアルカリ金属が溶出し難く、溶出したアルカリ金属によってセラミック基材が劣化してしまうことを防止することができる。
これに対し、仮に焼成していないソーダライトをセラミック基材に担持させると、担持の際の加熱又は担持後の加熱時に、ソーダライト中のアルカリ金属(Na)が溶出し、セラミック基材を劣化させてしまうおそれがある。
即ち、上記第5の発明において、上記焼成工程は、上記セラミック基材への担持前に行われ、ソーダライトを上記セラミック基材に担持することなく行われる。
【0062】
上記第5の発明の製造方法によって得られる上記炭素系物質燃焼触媒(第6の発明)は、例えばガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス中に含まれる炭素微粒子(PM)等の炭素系物質を燃焼して除去するために用いられる。
【0063】
次に、上記第3の発明及び上記第7の発明の触媒担持体の製造方法、並びに上記第4の発明及び上記第8の発明の触媒担持体の好ましい実施形態について、図面を用いて説明する。
上記第3の発明及び上記第7の発明の製造方法、並びに上記第4の発明及び上記第8の発明の触媒担持体においては、上記炭素系物質燃焼触媒が異なる点を除いては、同様の形態を採用しうる。
即ち、上記第3の発明の製造方法においては、上記第1の発明の製造方法によって得られた炭素系物質燃焼触媒を採用し、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させるという担持工程を行って上記触媒担持体(第4の発明)を得る。また、上記第7の発明の製造方法においては、上記第5の発明の製造方法によって得られる炭素系物質燃焼触媒を採用し、該炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させるという担持工程を行って上記触媒担持体(第8の発明)を得る。
【0064】
上記担持工程においては、少なくとも上記炭素系物質燃焼触媒とゾル状又はスラリー状の酸化物系セラミック粒子とを混合して複合材料を作製し、該複合材料を上記セラミック基材にコートして加熱することが好ましい(請求項12及び請求項22)。
具体的には、まず、上記炭素系物質燃焼触媒と、例えばゾル状等の酸化物系セラミックス粒子とを混合し複合材料を得る。該複合材料に必要に応じてさらに水等の溶媒を加えて、適当な粘度に調整する。得られたスラリー状の複合材料を上記セラミック基材にコートして加熱する。
この場合には、図18に示すごとく、上記炭素系物質燃焼触媒1と、酸化物系セラミックス粒子15とが上記基材22上に焼き付けられ、上記炭素系物質燃焼触媒1をセラミック基材22に担持してなる上記触媒担持体2を簡単に得ることができる。また、上記セラミック基材22上に、酸化物系セラミックス粒子15が結合してなる接着層155が形成されると共に、該接着層155中に上記炭素系物質燃焼触媒1が分散して保持された触媒担持体2を得ることができる。
かかる構造の上記触媒担持体2は、上記接着層155により上記炭素系物質燃焼触媒1が強固に保持されている。そのため、使用中に上記炭素系物質燃焼触媒1が脱落し難く、安定に触媒活性を維持することができる。
【0065】
上記酸化物系セラミックス粒子は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びジルコニアから選ばれる1種以上を主成分とすることが好ましい(請求項13、請求項23)。
この場合には、比表面積の大きな接着層が形成されやすくなり、上記触媒担持体の表面積を大きくすることができる。その結果、上記炭素系物質燃焼触媒と炭素系物質とが接触し易くなり、上記触媒担持体はより効率よく炭素系物質の燃焼を行うことができる。
【0066】
また、上記セラミック基材としては、例えばコージェライト、アルミナ、チタン酸アルミ、SiC、又はチタニア等を主成分とする基材を用いることができる。
また、上記セラミック基材としては、例えばペレット形状、フィルタ形状、フォーム形状、フロースルー型のモノリス形状等の基材を用いることができる。
【0067】
好ましくは、上記セラミック基材はコージェライト、SiC、又はチタン酸アルミニウムよりなることがよい(請求項14、請求項24)。
また、好ましくは、上記セラミック基材はハニカム構造体であることがよい(請求項15、請求項25)。
これらの場合には、上記触媒担持体を排ガス浄化用としてより好適なものにすることができる。
上記ハニカム構造体としては、外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に両端面に貫通してなる複数のセルとを有する構造体がある。ハニカム構造体としては、全てのセルが両端面に開口した構造体を用いることもできるが、一部のセルがハニカム構造体の両端面に開口し、残りのセルは両端面に形成された栓部によって閉塞された構造体を用いることもできる。
【0068】
また、上記触媒担持体においては、上記炭素系物質燃焼触媒の他に、1種以上の希土類元素を上記セラミック基材に担持させることができる。希土類元素としては、例えばCe、La、Nd等を採用することができる。また、上記希土類元素としては、該希土類元素の酸化物粒子を採用することができる。
この場合には、希土類元素の状態変動により酸素の吸脱着が生じ、炭素系物質の燃焼をより促進させることができる。
【0069】
図19に、炭素系物質燃焼触媒1と共に希土類元素16を基材22に担持させてなる触媒担持体2の例を示す。このような触媒担持体2は、炭素系物質燃焼触媒1と、希土類元素1と、例えばゾル状等の酸化物系セラミックス粒子15とを混合し、さらに必要に応じて水を添加し、適当な粘度に調整し、得られたスラリー状の複合材料を上記セラミック基材22に焼き付けることによって得られる。この場合には、セラミック基材22上に酸化物セラミックス粒子15が結合してなる接着層155が形成されると共に、該接着層155中に炭素系物質燃焼触媒1と希土類元素16とが分散して担持された上記触媒担持体2を得ることができる。
【0070】
また、上記触媒担持体においては、炭素系物質燃焼触媒の他に、必要に応じて貴金属を担持させることも可能である。この場合には、上記触媒担持体の炭素系物質の燃焼に対する触媒活性をより向上させることができる。また、この場合には炭素系物質燃焼触媒が優れた触媒活性を有しているため、比較的高価な貴金属の担持量を従来よりも大幅に減らすことができる。貴金属としては、例えばPt、Pd、Rh等がある。
【0071】
図20に、酸化物セラミックス粒子15が結合してなる接着層155中に、炭素系物質燃焼触媒1と、希土類元素16と、貴金属17とが分散された触媒担持体2の例を示す。このような触媒担持体2は、炭素系物質燃焼触媒1と、希土類元素16と、例えばゾル状等の酸化物系セラミックス粒子15と、貴金属錯体とを混合し、さらに必要に応じて水を添加して適当な粘度に調整し、得られたスラリー状の複合材料を上記セラミック基材22に焼き付けることによって得ることができる。
【0072】
図21に示すごとく、上記貴金属17は上記酸化物系セラミックス粒子15に担持されていることが好ましい。また、上記希土類元素として希土類元素の酸化物粒子を含有する場合には、図22に示すごとく、上記希土類元素の酸化物粒子16に上記貴金属17が担持されていることが好ましい。
【0073】
また、上記触媒担持体には、図23及び図24に示すごとく、貴金属からなる貴金属層17を形成することができる。
図23に示すごとく、上記貴金属層17は、上記セラミック基材22上に担持された上記炭素系物質燃焼触媒1を含む上記接着層155上に形成することができる。即ち、セラミック基材22上に、炭素系物質燃焼触媒1を含む接着層155が形成され、該接着層155上に貴金属層17を形成させることができる。
この場合には、上記触媒担持体において、上記炭素系物質燃焼触媒1中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の被毒対策を図ることができる。
【0074】
また、図24に示すごとく、上記貴金属層17は、炭素系物質燃焼触媒1を含む上記接着層155とセラミック基材22との間に形成させることができる。即ち、セラミック基材22上に貴金属層17を形成し、該貴金属層17上に炭素系物質燃焼触媒1を含む上記接着層155を形成させることができる。
この場合には、上記炭素系物質燃焼触媒1中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素がセラミックスからなるセラミック基材22へ移動することを抑制することができる。これにより、セラミック基材22の腐食をより一層防止することができる。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき、説明する。
本例においては、内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼除去するために用いられる炭素系物質燃焼触媒を作製し、その炭素系物質(カーボン)に対する燃焼促進特性を調べる例である。
本例においては、ソーダライトを温度600℃以上で焼成するという焼成工程を行うことにより、炭素系物質燃焼触媒を作製する。
【0076】
具体的には、まず、ソーダライト(3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。
次いで、このソーダライトを温度1000℃で焼成した。具体的には、ソーダライトを昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、粉末状の炭素系物質燃焼触媒を得た。これを試料E1とする。
【0077】
次に、本例において作製した炭素系物質燃焼触媒(試料E1)について、炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0078】
具体的には、まず、触媒種(試料E1、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)200mgとカーボンブラック(CB)20mgとをそれぞれ電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する3種類の評価サンプルを得た。さらに、触媒種を用いずに、CBのみからなる評価サンプルを比較用として作製した。CB単独の評価サンプルについても、他のサンプルと同様にメノウ乳鉢を用いて一定時間混合したものを用いた。即ち、評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E1とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類のサンプルを作製した。
【0079】
次いで、熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置(理学電機社製のTG8120)用いて、各評価サンプル6mgを昇温速度10℃/minにて最高温度900℃まで加熱してCBを燃焼させると共に、このときのDTA発熱ピーク温度を測定した。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、0.5mgを用いてDTA発熱ピーク温度の測定を行った。また、加熱は、流束50mL//minで空気を評価サンプルに流通させながら行った。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の測定結果を図1に示す。
【0080】
また、触媒種(試料E1、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)1gを水500cc中に投入し、一昼夜撹拌することにより洗浄した。次に、水洗浄処理後の触媒種をろ過し、ろ過後の触媒種にさらに1500ccの水を流通させて充分に洗浄した後、乾燥させた。これらの水洗浄処理後の触媒種(試料E1及び貴金属系触媒)200mgとカーボンブラック(CB)20mgとを電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、他のサンプルと同様に洗浄及び乾燥を行い、その後メノウ乳鉢で混合したものを用いた。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗洗浄処理により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E1とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図1に併記する。
【0081】
図1より知られるごとく、水洗浄前において、試料E1を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度で炭素系物質(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図1から知られるごとく、試料E1は、約450℃付近に発熱ピークを有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば400℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
また、図1より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E1については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これに対して、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0082】
したがって、試料E1は、炭素系物質に対して優れた燃焼促進特性を有し、低温で炭素系物質を燃焼除去することができる。また、試料E1は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、長期間安定して炭素系物質の燃焼を行うことができる。
【0083】
また、本例においては、上記試料E1とは異なる焼成温度でソーダライトを焼成し、さらに3種類の触媒を作製した。
即ち、上記試料E1においては、焼成温度1000℃(保持時間10時間)でソーダライトの焼成を行ったが、これら2種類の触媒においては、それぞれ焼成温度700℃(保持時間10時間)、焼成温度600℃(保持時間10時間)又は焼成温度500℃(保持時間10時間)で焼成して作製した。そしてこれら3種類種類の炭素系物質燃焼触媒についても、上記試料E1と同様に炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用として炭素系物質燃焼触媒の作製に用いたソーダライト粉末についても炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。このソーダライトの粉末としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。燃焼促進特性の測定は、上記試料E1と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図2に示す。なお、同図には、試料E1、即ち焼成温度1000℃で焼成してなる炭素系物質燃焼触媒の結果を併記する。
【0084】
図2より知られるごとく、ソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られた炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、500℃以下という非常に低い値を示した。炭素系物質に対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図1参照)であることから、これらの炭素系物質燃焼触媒は、炭素系物質に対して充分に優れた触媒活性を有していることがわかる。
また、温度600℃以上で焼成してなる炭素系物質燃焼触媒は、水洗後においても、貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度と同程度又はそれより低い温度を示しており、水洗後においても優れた触媒活性を維持できることがわかる。
【0085】
これに対し、温度500℃で焼成して得られた触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒と同程度のDTA発熱ピーク温度(約520℃)を示したが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は約540℃まで上昇し、貴金属触媒よりも触媒活性が低下していた。また、焼成を行っていないソーダライトにおいては、水洗前後にかかわらず炭素系物質の燃焼に対する触媒活性が不十分であった。
【0086】
また、本例においては、上記試料E1の比較用として、ソーダライト(SOD)以外の各種ゼオライトを焼成し、これを触媒として用いて燃焼促進特性を調べた。
具体的には、まず、ソーダライト以外のゼオライトとして、ゼオライト構造(BEA型、FAU(フォージャサイト)型、FER型、LTA型、LTL型、MFI型、及びMOR型)及び/又はゼオライト組成中のSiO2/Al2O3比が異なる12種類のゼオライトを準備した(表1参照)。これらは、いずれも東ソー(株)製のゼオライトである。これらのゼオライトの製品名、ゼオライト構造の型の種類、及びSiO2/Al2O3比を表1に示す。なお、表1及び後述の図3におけるゼオライト種の名称は、東ソー(株)製のゼオライトの製品名である。また、表1には試料E1の作製に用いたソーダライト(SOD)についても併記してある。
【0087】
【表1】
【0088】
次に、表1に示す各種ゼオライトを上記試料E1と同様に焼成した。具体的には、各種ゼオライトをそれぞれ昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、粉末状の触媒を得た。そしてこれらの触媒についても、上記試料E1と同様に炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。なお、これらの触媒については、水洗後の燃焼促進特性の測定は行っていない。その結果を図3に示す。また、図3には、ソーダライトを焼成して得られた上記試料E1の結果「SOD」として併記してある。
【0089】
図3より知られるごとく、ソーダライト以外のゼオライトを焼成してなる物質を触媒として用いた場合には、DTA発熱ピーク温度が非常に高く、炭素系物質の燃焼促進特性が不十分であった。これに対し、SODを焼成してなる触媒(試料E1)は、約450℃という非常に低いDTA発熱ピーク温度を示しており、炭素系物質を低温で燃焼できる。よって、上記焼成工程においては、ゼオライトの中でもソーダライトを採用することが必要であることがわかる。
【0090】
以上のように、本例によれば、ソーダライトを温度600℃以上で焼成することにより、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去することができる炭素系物質燃焼触媒が得られることがわかる。
【0091】
(実施例2)
本例は、混合工程と乾燥工程と焼成工程とを行うことにより炭素系物質燃焼触媒を作製する例である。
混合工程においては、原子当量比Si/Al≧1のアルミノケイ酸塩と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合する。乾燥工程においては、混合工程後の混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る。また、焼成工程においては、固形分を温度600℃以上で焼成することにより上記炭素系物質燃焼触媒を得る。
【0092】
具体的には、まず、原子当量比Si/Al≧1のアルミノケイ酸塩として、ソーダライト(3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。このソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部とを水に投入し、水中で混合した。
次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させた。これにより、固形分(ソーダライトと炭酸カリウムとの混合物)を得た。
次に、この固形分を温度800℃で焼成した。具体的には、固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度800℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、炭素系物質燃焼触媒を得た。これを試料E2とする。
【0093】
次に、本例において作製した炭素系物質燃焼触媒(試料E2)について、炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0094】
具体的には、まず、実施例1と同様にして、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E2とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類の評価サンプルを作製した。
次いで、熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置(理学電機社製のTG8120)用いて、各評価サンプル6mgを昇温速度10℃/minにて最高温度900℃まで加熱してCBを燃焼させると共に、このときのDTA発熱ピーク温度、及び温度とTGとの関係を測定した。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、0.5mgを用いてDTA発熱ピーク温度の測定を行った。また、加熱は、流束50mL//minで空気を評価サンプルに流通させながら行った。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の結果を図4に示す。また、温度とTGとの測定結果については、CB単独を用いた結果を図5に示し、触媒種として貴金属系触媒を用いた結果を図6に示し、K2CO3を用いた結果を図7に示し、試料E2を用いた結果を図8に示す。図5〜図8の縦軸は、カーボンブラックの最大燃焼速度を示すDTA発熱ピークを用いている。
【0095】
また、触媒種(試料E2、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)1gを水500cc中に投入し、一昼夜撹拌することにより洗浄した。次に、水洗浄処理後の触媒種をろ過し、ろ過後の触媒種にさらに1500ccの水を流通させて充分に洗浄した後、温度120℃にて乾燥させた。これらの水洗浄処理後の触媒種(試料E2及び貴金属系触媒)200mgとカーボンブラック(CB)20mgとを電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、他のサンプルと同様に洗浄及び乾燥を行い、その後メノウ乳鉢で混合したものを用いた。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗洗浄処理により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E2とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図4に併記する。
【0096】
図4〜図8より知られるごとく、水洗浄前において、試料E2を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度で炭素系物質(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図4及び図8から知られるごとく、試料E2は、約400℃付近に発熱ピークを有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば350℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
【0097】
図4より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E2については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これに対して、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0098】
したがって、試料E2は、炭素系物質に対して優れた燃焼促進特性を有し、低温で炭素系物質を燃焼除去することができる。また、試料E2は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、長期間安定して炭素系物質の燃焼を行うことができる。
【0099】
上記試料E2は、ソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部との混合物を温度800℃で10時間焼成することにより作製した触媒である。次に、本例においては、焼成温度による触媒活性への影響を調べるために、異なる温度でソーダライトと炭酸カリウムとの混合物(上記固形分)を焼成して複数の触媒を作製した。
具体的には、まず、ソーダライト100重量部と炭酸カリウム10重量部とを水中で混合し混合液を得た。次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させ、固形分(混合物)を得た。次に、この混合物を温度500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃で焼成して9種類の触媒を作製した。これらの触媒は、焼成温度を変更した点を除いては同様にして作製した触媒であり、ソーダライトに対する炭酸カリウムの混合割合及び焼成温度を変更した点を除いては、上記試料E2と同様にして作製した。さらに、温度600℃での焼成については焼成時間の影響を調べるため、上記試料E2と同様に10時間の焼成を行って作製した触媒の他に、焼成時間を5時間にして作製した触媒も準備した。その他の焼成温度で作製した触媒は、上記試料E2と同様にいずれも10時間焼成を行って作製した。
【0100】
そしてこれらの触媒についても、上記試料E2と同様に炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用としてソーダライトと炭酸カリウムとの混合物についても炭素系物質に対する燃焼促進特性を調べた。このソーダライトと炭酸カリウムとの混合物としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。
燃焼促進特性の測定は、上記試料E2と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図9に示す。
【0101】
図9より知られるごとく、温度600℃以上で焼成を行って作製した炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、水洗前及び水洗後においても約460℃以下という非常に低い値を示した。炭素系物質に対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図4参照)であることから、これらの炭素系物質燃焼触媒は、炭素系物質に対して充分に優れた触媒活性を有していることがわかる。
【0102】
これに対し、温度600℃未満で焼成した触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒に比べて充分に低いDTA発熱ピーク温度を示し、優れた触媒活性を示していたが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は著しく上昇し、貴金属触媒よりも触媒活性が低下していた。また、焼成を行っていないソーダライトと炭酸カリウムとの混合物についても、水洗前には優れた触媒活性を示していたが、水洗後には触媒活性が著しく低下していた。
温度600℃未満で焼成して得られる触媒、及び焼成を行なわずに作製した触媒において、上記のごとく水洗後において触媒活性が著しく低下していた原因は、水洗後にカリウムが溶出したためであると考えられる。
【0103】
したがって、上記焼成工程における焼成温度は600℃以上で行う必要があることがわかる。また、図9より知られるごとく、特に温度700℃〜1200℃で焼成を行うことにより、よりDTA発熱ピーク温度の低い炭素系物質燃焼触媒、即ち触媒活性に優れた炭素系物質燃焼触媒が得られることがわかる。さらに、同図より知られるごとく、5時間で焼成を行った場合に比べて10時間焼成を行った場合の方が、水洗後の触媒活性の低下が抑制されていた。
【0104】
上述の例においては、上記混合工程においてソーダライトにK源として炭酸カリウムを混合して炭素系物質燃焼触媒を作製した。本例においては、次に、ソーダライトに混合するカリウム塩の種類を変えて複数の炭素系物質燃焼触媒を作製し、そのDTA発熱ピークトップ温度を調べた。
【0105】
具体的には、ソーダライトに、各カリウム塩(炭酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム、又は水酸化カリウム)を混合して混合物を得た。各カリウム塩は、カリウム塩中のカリウム元素量がソーダライト中のSi元素1モルに対して0.225モル又は0.00225モルとなるように混合を行った。また、混合は、上記試料E2と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0106】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、炭素系物質燃焼触媒を得た。
このようにして得られた各炭素系物質燃焼触媒について、上記試料E2と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図10に示す。
【0107】
図10より知られるごとく、いずれのカリウム塩を用いて作製しても、炭素系物質燃焼触媒は、水洗前後において優れた触媒活性を示した。また、カリウム塩の量を減らすと若干触媒活性は低下するものの、この場合においても水洗前後において450℃以下という非常にDTAピーク発熱トップ温度を維持しており、優れた触媒活性を示していた。
【0108】
上述の例においては、上記混合工程においてソーダライトにアルカリ金属元素源(アルカリ金属塩)としてカリウム塩を混合し、炭素系物質燃焼触媒を作製した。次に、本例においては、混合工程においてソーダライトにカリウム塩の他にも各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を混合して複数の炭素系物質燃焼触媒を作製し、これらのDTA発熱ピークトップ温度を調べた。
【0109】
具体的には、まず、ソーダライトに、各種アルカリ金属塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)、又はアルカリ土類金属塩(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム)を混合して混合物を得た。各アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、ソーダライト中のSi元素1モルに対する各アルカリ金属塩中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属塩中のアルカリ土類金属元素量が0.225モル又は0.00225モルとなるように混合した。また、混合は、上記試料E2と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0110】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、炭素系物質燃焼触媒を得た。
このようにして得られた各炭素系物質燃焼触媒について、上記試料E2と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図11に示す。図11において、横軸は、混合工程において添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ元素種、及びアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属種を示し、縦軸は、DTA発熱ピーク温度を示す。
【0111】
図11より知られるごとく、上記混合工程においてソーダライトに各種アルカリ金属元素(Na、K、Rb、Cs)を混合して作製した炭素系物質燃焼触媒は、いずれのアルカリ金属元素を用いた場合でも、水洗前後において優れた触媒活性を示した。
これに対し、上記混合工程においてソーダライトに各種アルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)を混合して作製した炭素系物質燃焼触媒においては、アルカリ土類金属元素としてMgを選択した場合に、若干触媒活性が不十分である場合が認められるものの、いずれの場合においても、実用上問題ないレベルの触媒活性を示した。
このように、K以外にも、その他のアルカリ金属、又はアルカリ土類金属をソーダライトに混合して焼成しても、優れた触媒活性を有する炭素系物質燃焼触媒が得られることがわかる。
【0112】
また、アルカリ土類金属元素源としてMg源を用いた場合について、さらに詳細に説明すると、図11より知られるごとく、Mgをソーダライト中のSi元素1モルに対して0.00225モル加えて得られた触媒は優れた触媒活性を示した。しかし、Mgを0.225モル加えて作製した触媒は、実用に供することは可能であるものの、触媒活性が低下していた。一方、その他のアルカリ土類金属元素(Ca、Sr、Ba)を用いて得られた触媒は、いずれの場合においても優れた触媒活性を示した。
したがって、アルカリ土類金属元素源を選択する場合には、Mg以外のアルカリ土類金属元素源を採用することが好ましい。また、Mg源を採用する場合には、Mg源中のMg量がソーダライト中のSi元素1モルに対して0.225モル未満となるように、Mg源とソーダライトとの混合を行うことが好ましい。より好ましくは、0.00225モル以下がよい。
【0113】
上記の例においては、上記混合工程において、ソーダライトに1種類のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を混合して炭素系物質燃焼触媒を作製した。次に、本例においては、上記混合工程において、ソーダライトに複数のアルカリ金属元素、アルカリ土類金属を混合して炭素系物質燃焼触媒を作製し、そのDTA発熱ピーク温度を測定した。
【0114】
具体的には、まず、ソーダライトに、炭酸カリウムを加え、さらにアルカリ金属元素源(炭酸ナトリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)又はアルカリ土類金属元素源(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、又は炭酸バリウム)を加えて混合し混合物を得た。このようにして得られた各混合物は、ソーダライトと、炭酸カリウムと、炭酸カリウム以外のアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源とを含有する。
各混合物は、ソーダライト中のSi元素1モルに対して炭酸カリウム中のカリウム量が0.1125モルとなるようにソーダライトに炭酸カリウム(カリウム源)を加え、さらにソーダライト中のSi元素1モルに対して各アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素量が0.1125モルとなるようにソーダライトに各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を加えて作製した。
したがって、各混合物においては、ソーダライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のカリウム量と、その他のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素量との合計量は、いずれも0.225モルとなっている。
また、混合は、上記試料E2と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0115】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持した。これにより混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、炭素系物質燃焼触媒を得た。
【0116】
このようにして得られた各炭素系物質燃焼触媒について、上記試料E2と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図12に示す。同図において、縦軸はDTA発熱ピーク温度を示し、横軸は、炭酸カリウム以外に添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素種又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素種を示す。また、同図には、ソーダライトに炭酸カリウムだけを混合し焼成して作製した炭素系物質燃焼触媒(図12において横軸がKで示されたサンプル)についての水洗前後のDTA発熱ピーク温度を併記する。
【0117】
図12より知られるごとく、上記混合工程において、ソーダライトにK(カリウム)の他に、さらに各種アルカリ金属元素(Na、Rb、Cs)又はアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)を混合した場合においても、Kを単独で混合した場合と同様に、優れた触媒活性を有する炭素系物質燃焼触媒が得られた。
このように、混合工程において複数のアルカリ金属元素源及びアルカリ土類金属源を用いても、優れた触媒活性を有する炭素系物質燃焼触媒が得られることがわかる。
【0118】
次に、本例においては、アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源の添加量が炭素系物質燃焼触媒の触媒活性に与える影響を調べるために、上記混合工程において、ソーダライトに混合するアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源の添加割合を変えて炭素系物質燃焼触媒を作製し、そのDTA発熱ピーク温度を測定した。
【0119】
まず、ソーダライト100重量部に、炭酸カリウム又は炭酸バリウムを0〜100重量部の添加量で混合し、混合物を得た。
具体的には、後述の表2及び図13に示すごとく、ソーダライト(SOD)100重量部に対して、炭酸カリウムをそれぞれ0重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、3重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、40重量部、及び100重量部混合して混合物を作製した。
また、後述の表3及び図14に示すごとく、ソーダライト(SOD)100重量部に対して、炭酸バリウムをそれぞれ0重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、40重量部、70重量部、100重量部、150重量部、200重量部、及び300重量部混合して混合物を作製した。
これらの混合は、上記試料E2と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより複数の混合物を得た。
【0120】
次に、これらの混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃に達したところで10時間保持した。これにより、混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、炭素系物質燃焼触媒を得た。
【0121】
このようにして得られた各炭素系物質燃焼触媒について、上記試料E2と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。
炭酸カリウムを用いて作製した炭素系物質燃焼触媒の水洗前後のDTA発熱ピーク温度の結果を表2及び図13に示し、炭酸バリウムを用いて作製した炭素系物質燃焼触媒の水洗前後のDTA発熱ピーク温度の結果を表3及び図14に示す。
なお、表2には、ソーダライト100重量部に対するKの混合量(重量部)をソーダライト中のSi量(mol)に対するKの混合量(mol)に換算した値を示してある(表2参照)。同様に、表3には、ソーダライト100重量部に対するBaの混合量(重量部)をソーダライト中のSi量(mol)に対するBaの混合量(mol)に換算した値を示してある(表3参照)。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
表2、表3、図13、及び図14より知られるごとく、上記混合工程におけるアルカリ金属元素量及びアルカリ土類金属元素量を変えても、得られる炭素系物質燃焼触媒は優れた触媒活性を示していた。
その一方で、アルカリ金属量又はアルカリ土類金属量を増やすと、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度の差が大きくなっていた。表2及び表3より知られるごとく、上記混合工程においては、アルカリ金属元素源(K2CO3)中に含まれるアルカリ金属元素(K)量、アルカリ土類金属元素源(BaCO3)中に含まれるアルカリ土類金属元素(Ba)量がソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となるように、ソーダライトとアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源とを混合すれば、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度の差が比較的小さな炭素系物質燃焼触媒、即ち水分に対する耐久性に優れた炭素系物質燃焼触媒を作製できることがわかる。また、上述のアルカリ金属元素量とアルカリ土類金属元素量が2.25モルを超える場合には、混合物が焼成時に一旦溶融し易くなり、焼成後に得られる炭素系物質燃焼触媒の粉砕が困難になる。
同様の観点から、より好ましくは、上記混合工程において、ソーダライト中のSi元素1モルに対してアルカリ金属元素量(モル)、アルカリ土類金属元素量(モル)は1モル以下がよく、さらにより好ましくは0.5モル以下がよい。
【0125】
以上のように、本例によれば、上記混合工程と上記焼成工程とを行うことにより、低温でかつ長期間安定に炭素系物質を燃焼除去できる炭素系物質燃焼触媒を製造することができる。
【0126】
(実施例3)
本例は、実施例2で作製した炭素系物質燃焼触媒(試料E2)をハニカム構造のセラミック基材(セラミックハニカム構造体)22に担持させた触媒担持体2を作製する例である。
図15〜図17に示すごとく、本例のセラミック基材22は、外周壁21と、該外周壁21の内側においてハニカム状に設けられた隔壁25と、該隔壁25により仕切られた複数のセル3とを有する。セル3は、セラミック基材22の両端面23、24に部分的に開口している。即ち、一部のセル3は、セラミック基材22の両端面23、24に開口し、残りのセル3は、両端面23、24に形成された栓部32によって閉塞している。図15及び図16に示すように、本例においては、セル3の端部を開口する開口部31と、セル3の端部を閉塞する栓部32とは交互に配置されており、所謂市松模様を形成している。そして、セラミック基材22の隔壁25には、実施例2で作製した炭素系物質燃焼触媒1(試料E2)が担持されている。また、図18に示すごとく、隔壁25上には、アルミナゾルを焼き付けてなる接着層155が形成され、該接着層155中に炭素系物質燃焼触媒1が担持されている。接着層155は、アルミナからなる酸化物系セラミックス粒子15が結合してなり、接着層155には、炭素系物質燃焼触媒1が分散されている。
【0127】
また、図17に示すごとく、本例の触媒担持体2においては、排ガス10の入口側となる上流側端面23及び排ガス10の出口となる下流側端面24に位置するセルの端部は、栓部32が配置された部分と配置されていない部分とをそれぞれ交互に有している。隔壁2には多数の空孔が形成され、排ガス10が通過できるようになっている。
【0128】
また、本例の触媒担持体2の全体サイズは、直径160mm、長さ100mmであり、セルサイズは、セル厚さ3mm、セルピッチ1.47mmである。
また、セラミック基材22はコーディエライトからなり、そのセル3は、断面が四角形状のものを採用した。セル3は、その他にも例えば、三角形、六角形等の様々な断面形状を採用することができる。
また、本例においては、セル3の端部を開口する開口部31と、セル3の端部を閉塞する栓部32とは交互に配置されており、所謂市松模様を形成している。
【0129】
次に、本例のセラミックハニカム構造体の製造方法につき、説明する。
まず、タルク、溶融シリカ、及び水酸化アルミニウムを所望のコーディエライト組成となるように秤量し、造孔剤、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌した。そして、得られた粘土質のセラミック材料を成形機にて押出成形し、ハニカム状の成形体を得た。これを乾燥した後、所望の長さに切断し、外周壁と、その内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、隔壁により仕切られていると共に両端面に貫通してなる複数のセルとを有する成形体を作製した。次いで、この成形体を温度1400〜1450℃で2〜10時間加熱することにより仮焼して仮焼体(ハニカム構造体)を得た。
【0130】
次に、ハニカム構造体の両端面全体を覆うようにマスキングテープを貼り付けた。そして、セラミックハニカム構造体の両端面の栓詰めすべき位置に対応するマスキングテープにレーザ光を順次照射し、マスキングテープを溶融又は焼却除去して貫通穴を形成した。これにより、セルの端部における栓部により栓詰めすべき部分に貫通穴を形成した。セルの端部のその他の部分はマスキングテープで覆われている。本例においては、セルの両端面に貫通穴とマスキングテープで覆われた部分とが交互に配置するように、マスキングテープに貫通穴を形成した。本例では、マスキングテープとしては、厚さ0.1mmの樹脂フィルムを用いた。
【0131】
次に、栓部の材料である栓材の主原料となるタルク、溶融シリカ、アルミナ、及び水酸化アルミニウムを所望の組成となるように秤量し、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌し、スラリー状の栓材を作製した。このとき、必要に応じて造孔材を添加することもできる。そして、スラリー状の栓材を入れた容器を準備した後、貫通孔を部分的に形成したハニカム構造体の端面を浸漬した。これにより、マスキングテープの貫通穴からセルの端部に栓材を適量浸入させた。また、ハニカム構造体のもう一方の端面についても同様の工程を行った。このようにして、栓詰めすべきセルの開口部内に栓材が配置されたハニカム構造体を得た。
【0132】
次に、ハニカム構造体とその栓詰めすべき部分に配置した栓材とを同時に約1400〜1450℃で焼成した。これにより、マスキングテープは焼却除去され、図15に示すごとく、セル3の両端に、その端部を開口する複数の開口部31と、セル3の端部を閉塞する複数の栓部32とが形成されたセラミックハニカム構造体(セラミック基材)22を作製した。
【0133】
次に、実施例2で作製した炭素系物質燃焼触媒(試料E2)をアルミナゾルを3wt%配合したアルミナスラリーに混合した。さらに水分を加えて所望の粘度に調整し、スラリー状の複合材料を得た。次に、この複合材料をセラミック基材22の隔壁25にコートした。その後、温度500℃で加熱することにより、焼き付けを行った。なお、スラリー状の複合材料のコート量は、基材(ハニカム構造体)1L当りに60gとした。このようにして、図15、図16、及び図18に示すごとく、炭素系物質燃焼触媒1をセラミック基材22に担持した触媒担持体2を得た。
【0134】
本例の触媒担持体2は、実施例2の炭素系物質燃焼触媒1(試料E2)をセル壁22に担持している。そのため、炭素系物質燃焼触媒1の優れた特徴を生かして、ハニカム構造体2においては、基材を腐食させることなく、低温で炭素系物質を燃焼させることができる。また、水分によって、炭素系物質に対する触媒活性が低下することもほとんどない。
また、炭素系物質燃焼触媒(試料E2)は、ソーダライトとアルカリ金属元素源(炭酸カリウム)との混合物を焼成してなる。かかる炭素系物質燃焼触媒は、その構造中に比較的強固にアルカリ金属元素を保持しているため、アルカリ金属の溶出が起こり難い。したがって、炭素系物質燃焼触媒をハニカム構造体に担持させる際においても、アルカリ金属が溶出し、セラミック基材を腐食してしまうことを防止することができる。
【0135】
本例においては、コージェライトからなるセラミック基材(セラミックハニカム構造体)を用いて触媒担持体を作製したが、上記セラミック基材として、例えばSiC、チタン酸アルミニウム等の多孔質の高耐熱性セラミックスを用いても同様の触媒担持体を作製することができる。また、本例においては、上記セラミック基材として、セルの端部を閉塞する栓部が形成されたセラミックハニカム構造体を用いたが、例えば圧力損失を抑えるために、栓部を形成していないセラミックハニカム構造体を用いることができる。
【0136】
また、複合酸化物粒子の他に、希土類元素を含有する炭素系物質燃焼触媒を担持させた触媒担持体を作製する場合には、アルミナゾルを3wt%配合したアルミナスラリーに炭素系物質燃焼触媒(試料E2)を混合する際に、例えばCeO2、ZrO2、CeO2−ZrO2固溶体等からなる酸化物粒子をさらに加えることにより作製することができる。
【0137】
また、炭素系物質燃焼触媒の他に貴金属を担持させた触媒担持体を作製する場合には、アルミナゾルを3wt%配合したアルミナスラリーに炭素系物質燃焼触媒(試料E2)を混合する際に、例えば硝酸白金水溶液をさらに所定量分散させることにより作製することができる。
【0138】
なお、本例においては、実施例2において作製した炭素系物質燃焼触媒(試料E2)をセラミック基材に担持させて触媒担持体を作製したが、上記試料E2の代わりに実施例1において作製した炭素系物質燃焼触媒(例えば試料E1)を用いて、本例と同様の操作を行うことにより、実施例1で作製した炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持させてなる触媒担持体を作製することができる。
【0139】
(比較例)
本例においては、実施例3の触媒担持体の比較用として、焼成を行っていないソーダライトとアルカリ金属元素源(炭酸カリウム)との混合物をセラミック基材に担持してなる触媒担持体を作製する。
本例において作製する触媒担持体は、担持させる触媒が異なる点を除いては、上記実施例3と同様のものである。
【0140】
本例の触媒担持体の作製にあたっては、まず、実施例3と同様のコージェライトからなるセラミック基材(セラミックハニカム構造体)を準備した。
次いで、ソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部とを水に混合した。混合液を加熱し、水分を蒸発させ、固形分(混合物)を得た。このようにして、ソーダライトと炭酸カリウムとの混合物を得た。
【0141】
次に、この混合物をアルミナゾルを3wt%配合したアルミナスラリーに混合し、さらに水分を加えて所望の粘度に調整してスラリー状の複合材料を得た。次いで、実施例3と同様に、この複合材料をセラミック基材の隔壁にコートし、温度500℃で加熱することにより、混合物をセラミック基材に焼付けた。このようにして、比較用の触媒担持体を得た。
【0142】
本例において得られた触媒担持体においては、セラミック基材に部分的な割れが生じていた。
即ち、焼成を行っていないソーダライトとアルカリ金属元素源(炭酸カリウム)との混合物をセラミック基材に担持すると、焼付け等の加熱時に、混合物からアルカリ金属(カリウム)が溶出し易い。この溶出したアルカリ金属は、セラミック基材のコージェライト成分を攻撃して、その結晶系を破壊してしまう。そのため、セラミック基材の熱膨張係数及び強度が部分的に変化し、上記のごとくセラミック基材に割れ等が発生し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】実施例1にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、炭素系物質を燃焼させたときのDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図2】実施例1にかかる、焼成温度と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図3】実施例1にかかる、ゼオライト種と触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図4】実施例2にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、炭素系物質を燃焼させたときのDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図5】実施例2にかかる、触媒を用いずにカーボンブラックを単独で燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図6】実施例2にかかる、触媒種として貴金属系触媒を用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図7】実施例2にかかる、触媒種として炭酸カリウムを用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図8】実施例2にかかる、触媒種として炭素系物質燃焼触媒(試料E1)を用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図9】実施例2にかかる、焼成温度と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図10】実施例2にかかる、カリウム塩種と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図11】実施例2にかかる、アルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図12】実施例2にかかる、カリウム以外のアルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図13】実施例2にかかる、混合工程において混合するカリウム量と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図14】実施例2にかかる、混合工程において混合するバリウム量と水洗前後における炭素系物質燃焼触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図15】実施例3にかかる、触媒担持体(セラミックハニカム構造体)の斜視図。
【図16】実施例3にかかる、触媒担持体(セラミックハニカム構造体)の長手方向の断面図。
【図17】実施例3にかかる、触媒担持体(セラミックハニカム構造体)内を排ガスが通過する様子を示す触媒担持体の断面図。
【図18】酸化物系セラミックス粒子が結合してなる接着層中に炭素系物質燃焼触媒が分散された触媒担持体の構成を示す触媒担持体の断面図。
【図19】酸化物系セラミックス粒子が結合してなる接着層中に炭素系物質燃焼触媒と希土類元素とが分散された触媒担持体の構成を示す触媒担持体の断面図。
【図20】酸化物系セラミックス粒子が結合してなる接着層中に、炭素系物質燃焼触媒と希土類元素と貴金属とが分散された触媒担持体の構成を示す触媒担持体の断面図。
【図21】貴金属が酸化物粒子に担持された状態を示す説明図。
【図22】貴金属が希土類元素(希土類元素の酸化物粒子)に担持された状態を示す説明図。
【図23】基材上に形成された炭素系物質燃焼触媒を含有する接着層上にさらに貴金属層を形成した触媒担持体の構成を示す触媒担持体の断面図。
【図24】基材と炭素系物質燃焼触媒を含有する接着層との間に貴金属層を形成した触媒担持体の構成を示す触媒担持体の断面図。
【符号の説明】
【0144】
1 炭素系物質燃焼触媒
15 酸化物系セラミックス粒子
155 接着層
16 希土類元素
17 貴金属
2 触媒担持体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられると共に、セラミック基材に担持して用いられる炭素系物質燃焼触媒の製造方法において、
原子当量比Si/Al≧1のアルミノケイ酸塩と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合する混合工程と、
該混合工程後の混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る乾燥工程と、
上記固形分を温度600℃以上で焼成することにより上記炭素系物質燃焼触媒を得る焼成工程とを有し、
上記アルミノケイ酸塩は、ソーダライトであることを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、上記アルカリ金属元素源は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上を含有し、上記アルカリ土類金属元素源は、Ca、Sr、及びBaから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源は、それぞれ炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、酸化物、又は水酸化物であることを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記焼成工程後に、上記炭素系物質燃焼触媒を粉砕する粉砕工程を行うことを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記混合工程においては、水の代わりに水以外の極性溶媒を用い、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを上記極性溶媒中で混合し、上記乾燥工程においては、上記極性溶媒を蒸発させて上記固形分を得ることを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、上記混合工程においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して1モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、上記混合工程においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して0.5モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記焼成工程においては、上記固形分を温度700℃〜1200℃で焼成することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする炭素系物質燃焼触媒。
【請求項11】
内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられる炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持させてなる触媒担持体を製造する方法において、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法によって得られた上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を有することを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項12】
請求項11おいて、上記担持工程においては、少なくとも上記炭素系物質燃焼触媒とゾル状又はスラリー状の酸化物系セラミック粒子とを混合して複合材料を作製し、該複合材料を上記セラミック基材にコートして加熱することを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、上記酸化物系セラミックス粒子は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びジルコニアから選ばれる1種以上を主成分とすることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項において、上記セラミック基材はコージェライト、SiC又はチタン酸アルミニウムよりなることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項において、上記セラミック基材はハニカム構造体であることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする触媒担持体。
【請求項17】
内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられると共に、セラミック基材に担持して用いられる炭素系物質燃焼触媒を製造する方法において、
ソーダライトを温度600℃以上で焼成して上記炭素系物質燃焼触媒を得る焼成工程を有することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項18】
請求項17において、上記焼成工程においては、上記ソーダライトを温度700℃〜1200℃で焼成することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項19】
請求項17又は18において、上記焼成工程後に得られる上記炭素系物質燃焼触媒を粉砕する粉砕工程を有することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする炭素系物質燃焼触媒。
【請求項21】
内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられる炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持させてなる触媒担持体を製造する方法において、
請求項17〜19のいずれか一項に記載の製造方法によって得られた上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を有することを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項22】
請求項21おいて、上記担持工程においては、少なくとも上記炭素系物質燃焼触媒とゾル状又はスラリー状の酸化物系セラミック粒子とを混合して複合材料を作製し、該複合材料を上記セラミック基材にコートして加熱することを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項23】
請求項22において、上記酸化物系セラミックス粒子は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びジルコニアから選ばれる1種以上を主成分とすることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれか一項において、上記セラミック基材はコージェライト、SiC、又はチタン酸アルミニウムよりなることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか一項において、上記セラミック基材はハニカム構造体であることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項26】
請求項21〜25のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする触媒担持体。
【請求項1】
内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられると共に、セラミック基材に担持して用いられる炭素系物質燃焼触媒の製造方法において、
原子当量比Si/Al≧1のアルミノケイ酸塩と、アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源とを水中で混合する混合工程と、
該混合工程後の混合液を加熱し、水分を蒸発させて固形分を得る乾燥工程と、
上記固形分を温度600℃以上で焼成することにより上記炭素系物質燃焼触媒を得る焼成工程とを有し、
上記アルミノケイ酸塩は、ソーダライトであることを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、上記アルカリ金属元素源は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上を含有し、上記アルカリ土類金属元素源は、Ca、Sr、及びBaから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源は、それぞれ炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、酸化物、又は水酸化物であることを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記焼成工程後に、上記炭素系物質燃焼触媒を粉砕する粉砕工程を行うことを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記混合工程においては、水の代わりに水以外の極性溶媒を用い、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを上記極性溶媒中で混合し、上記乾燥工程においては、上記極性溶媒を蒸発させて上記固形分を得ることを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、上記混合工程においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して1モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、上記混合工程においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して0.5モル以下となるように、上記アルミノケイ酸塩と上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを混合することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記焼成工程においては、上記固形分を温度700℃〜1200℃で焼成することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする炭素系物質燃焼触媒。
【請求項11】
内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられる炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持させてなる触媒担持体を製造する方法において、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法によって得られた上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を有することを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項12】
請求項11おいて、上記担持工程においては、少なくとも上記炭素系物質燃焼触媒とゾル状又はスラリー状の酸化物系セラミック粒子とを混合して複合材料を作製し、該複合材料を上記セラミック基材にコートして加熱することを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、上記酸化物系セラミックス粒子は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びジルコニアから選ばれる1種以上を主成分とすることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項において、上記セラミック基材はコージェライト、SiC又はチタン酸アルミニウムよりなることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項において、上記セラミック基材はハニカム構造体であることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする触媒担持体。
【請求項17】
内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられると共に、セラミック基材に担持して用いられる炭素系物質燃焼触媒を製造する方法において、
ソーダライトを温度600℃以上で焼成して上記炭素系物質燃焼触媒を得る焼成工程を有することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項18】
請求項17において、上記焼成工程においては、上記ソーダライトを温度700℃〜1200℃で焼成することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項19】
請求項17又は18において、上記焼成工程後に得られる上記炭素系物質燃焼触媒を粉砕する粉砕工程を有することを特徴とする炭素系物質燃焼触媒の製造方法。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする炭素系物質燃焼触媒。
【請求項21】
内燃機関の排ガス中に含まれる炭素系物質を燃焼させるために用いられる炭素系物質燃焼触媒をセラミック基材に担持させてなる触媒担持体を製造する方法において、
請求項17〜19のいずれか一項に記載の製造方法によって得られた上記炭素系物質燃焼触媒を上記セラミック基材に担持させて上記触媒担持体を得る担持工程を有することを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項22】
請求項21おいて、上記担持工程においては、少なくとも上記炭素系物質燃焼触媒とゾル状又はスラリー状の酸化物系セラミック粒子とを混合して複合材料を作製し、該複合材料を上記セラミック基材にコートして加熱することを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項23】
請求項22において、上記酸化物系セラミックス粒子は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びジルコニアから選ばれる1種以上を主成分とすることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれか一項において、上記セラミック基材はコージェライト、SiC、又はチタン酸アルミニウムよりなることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか一項において、上記セラミック基材はハニカム構造体であることを特徴とする触媒担持体の製造方法。
【請求項26】
請求項21〜25のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする触媒担持体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−100216(P2008−100216A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234748(P2007−234748)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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