説明

炭酸ガス吸収剤及び炭酸ガス回収方法

【課題】吸収した炭酸ガスを放出して回収する際に要するエネルギーを低減することができる炭酸ガス吸収剤及び回収方法を提供する。
【解決手段】(1)式に記載の含窒素化合物を繰り返し単位として有する、水溶性高分子化合物を含有する炭酸ガス吸収剤
【化1】


R1:−CsHt− (1≦s≦10、t=2s−1)(直鎖、分岐含む)
R2:−H, −CsHtOuNv (1≦s≦5、2s≦t≦2s+2、0≦u≦3、0≦v≦3) (直鎖、分岐含む)を含む水溶性高分子含有水溶液に対して炭酸ガスを含有する気体を接触させて前記炭酸ガスを吸収させ、その後、前記水溶性高分子含有水溶液を、疎水性の第1相と親水性の第2相とに分離する。次いで、前記水溶性高分子含有水溶液の、前記第1相から前記炭酸ガスを放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス吸収剤および回収方法に関する。より詳細には、石炭火力発電所等の炭化水素を主成分とする原料や燃料を利用するエネルギープラントや化学プラントから発生する排気ガス、自動車等から発生する排気ガス、原料ガスや燃料ガス中の炭酸ガスを回収するための炭酸ガス吸収剤及び回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の地球温暖化問題への関心および規制強化の背景を受けて、石炭火力発電所からの炭酸ガス排出量の削減は急務となっている。そこで、炭酸ガス排出量の削減方法として発電所の高効率化による排出量の低減と共に、化学吸収剤による炭酸ガスの回収が大きな注目を浴びている。
【0003】
具体的な吸収剤としては、アミンによる吸収が古くから研究されている(例えば、特許文献1)。この場合、例えば、炭酸ガスを含むガスを吸収塔内でアルカノールアミン水溶液と接触させて炭酸ガスを吸収させた後、その炭酸ガス吸収液を加熱して脱離塔で炭酸ガスを脱離回収させる。
【0004】
ここでアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、ジイソプロバノールアミン(DIPA)、ジグリコールアミン(DGA)などが知られているが、通常モノエタノールアミンが用いられている。
【0005】
しかしながら、例えばMEA等のアルカノールアミンの水溶液を吸収液として用いた場合、単位体積あたりの炭酸ガス吸収容量はすぐれているものの、装置の材質の腐食性が高いため、装置に高価な耐食鋼を用いる必要があったり、吸収液中のアミン濃度をさげる必要があったりした。また、吸収し炭酸ガスを脱離しにくいために、脱離の温度を120℃と高い温度に加熱して脱離、回収する必要がある。
【0006】
一方、このような高温による加熱処理による脱離には、多大のエネルギーを必要とするため、省エネルギー及び省資源が求められる時代においては適合せず、実用化を阻む大きな要因となっている。
【0007】
上記問題を解決すべく、アルカノールアミンに対してピペラジンを加えた多種のアミンの混合物を炭酸ガス吸収剤として用いたり(特許文献2)、同様にアルカノールアミンに対して低級アルキルピペラジンを加えた混合物を炭酸ガス吸収剤として用いたりすることが試みられている(特許文献3)。また、ビニルアミンとポリビニルアミンとの架橋重合体を炭酸ガス吸着剤として用いることが試みられている(特許文献4)。
【0008】
これらの方法によれば、炭酸ガス吸収剤に吸収された炭酸ガスを脱離する際の加熱処理温度を70℃〜90℃程度まで低減することができる。しかしながら、前記加熱処理は、炭酸ガスを吸収した吸収剤の全体に対して実施する必要があり、したがって、加熱処理温度を低減することはできても、前記加熱処理には依然として多大のエネルギーを必要としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−151015号
【特許文献2】特開2006−240966号
【特許文献3】WO99/51326号
【特許文献4】特開平6−190235号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題に鑑み、吸収した炭酸ガスを放出して回収する際に要するエネルギーを低減することができる炭酸ガス吸収剤及び回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、(1)式に記載の含窒素化合物を繰り返し単位として有する、水溶性高分子化合物を含有する炭酸ガス吸収剤
【化1】

R1:−CsHt− (1≦s≦10、t=2s−1)(直鎖、分岐含む)
R2:−H, −CsHtOuNv (1≦s≦5、2s≦t≦2s+2、0≦u≦3、0≦v≦3) (直鎖、分岐含む)に関する。
また、本発明の一態様は、(1)式に記載の含窒素化合物を繰り返し単位として有する、水溶性高分子化合物を含有する炭酸ガス吸収剤
【化2】

R1:−CsHt− (1≦s≦10、t=2s−1)(直鎖、分岐含む)
R2:−H, −CsHtOuNv (1≦s≦5、2s≦t≦2s+2、0≦u≦3、0≦v≦3) (直鎖、分岐含む)と、水とを混合して、水溶性高分子含有水溶液を調整するステップと、前記水溶性高分子含有水溶液に対して炭酸ガスを含有する気体を接触させ、前記炭酸ガスを吸収させるステップと、前記水溶性高分子含有水溶液を、疎水性の第1相と親水性の第2相とに分離するステップと、前記水溶性高分子含有水溶液の、前記第1相から前記炭酸ガスを放出するステップと、を具えることを特徴とする、炭酸ガス回収方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吸収した炭酸ガスを放出して回収する際に要するエネルギーを低減することができる炭酸ガス吸収剤及び回収方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の内容を詳細に示す。
【0014】
(炭酸ガス吸収剤)
最初に、本態様における炭酸ガス吸収剤について説明する。本態様における炭酸ガス吸収剤は、(1)式で示される含窒素化合物を繰り返し単位として有する水溶性高分子化合物である。R1は高分子の主鎖に相当し、−CsHt− (1≦s≦10、t=2s−1)の条件を満たした炭化水素より構成される。なお、その形態は直鎖状、分岐状のいずれの形態でも構わない。
【0015】
また、炭素数sを1以上10以下とするのは、一分子辺りのCO吸収効率及び、水溶性の観点からである。同様の理由から、炭素数sは8以下であることが好ましい。
【0016】
R1にはアミノ基が結合しており、前記水溶性高分子化合物の側鎖部分に相当する。前記アミノ基は官能基R2を有している。R2は、−H, −CsHtOuNv (1≦s≦5、2s≦t≦2s+2、0≦u≦3、0≦v≦3)で表される官能基である。前記アミノ基は、以下に説明する炭酸ガスの回収方法において、炭酸ガスの吸収に寄与する。
【0017】
R2としては、例えば、アルキル基、末端にヒドロキシル基を有する化合物、エーテル結合を有する化合物、アミンなどが挙げられる。
【0018】
入手の容易さ等を考慮すると、上記水溶性高分子化合物としては、以下に示すような化合物を例示することができる。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【0019】
特に上述した化合物の中でも、化合物8を一例とするポリアリルアミン、化合物20を一例とするポリアリールアミン、化合物23を一例とするポリアルカノールアミン、化合物24を一例とする、ポリビニルアミンの一種であるポリビニルピペリジンが好ましく用いることができる。この場合、上述したように、R1で表される炭化水素による効果と、上記アミノ基による効果とがより効果的に奏されるようになり、以下に説明する炭酸ガスの回収時間を短縮化することができ、回収効率を向上させることができる。
【0020】
また、上述した水溶性高分子化合物を実際に炭酸ガスの吸収剤として使用する場合は、水溶液とする必要があるが、この場合、前記水溶性高分子化合物の1重量部から80重量部に対して、水を20重量部から99重量部添加させて水溶性高分子含有水溶液とすることが好ましい。この場合、以下に示す炭酸ガスの回収方法において、疎水性の第1相と親水性の第2相とに容易に分離することができるようになる。
【0021】
さらに、前記水溶性高分子化合物の分子量が、500から100,000であることが好ましい。前記分子量が500未満であると、以下に示す炭酸ガスの回収方法において、疎水性の第1相と親水性の第2相とに分離できない場合がある。また、前記分子量が100,000を超えると、水に不溶となり、上記水溶性高分子含有水溶液を調整できない場合がある。
【0022】
また、前記水溶性高分子含有水溶液のpHが、7以上14以下であることが好ましい。これによって、前記水溶液における炭酸ガスの吸収量を増大させることができる。なお、かかる条件は、上述したポリアリルアミン、ポリアリールアミン、ポリアルカノールアミン、及びポリビニルアミンの場合は、必然的に満足する。
【0023】
なお、本態様の炭酸ガス吸収剤には、上記水溶性高分子含有水溶液中に、必要に応じて吸収性能を補足する含窒素化合物、酸化防止剤、pH調整剤等その他化合物を任意の割合で含有させることができる。
【0024】
(炭酸ガスの回収方法)
次に、本態様の炭酸ガスの回収方法について説明する。
最初に、(1)式に記載の含窒素化合物を繰り返し単位として有する、水溶性高分子化合物を含有する炭酸ガス吸収剤と、水とを混合して、水溶性高分子含有水溶液を調整する。この際、前記水溶性高分子化合物と前記水との混合比は、上述のように、前記水溶性高分子化合物の1重量部から80重量部に対して、水を20重量部から99重量部とすることが好ましい。
【0025】
また、前記水溶性高分子化合物の好ましい分子量は、上述したように500から100,000であり、前記水溶性高分子化合物の好ましい例としても、上記同様に、ポリアリルアミン、ポリアリールアミン、ポリビニルアミン、及びポリアルカノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種である。また、前記ポリビニルアミンにおいては、ポリビニルピペリジンがより好ましい。
【0026】
また、繰り返しになるが、上記水溶性高分子含有水溶液のpHは、7以上14以下であることが好ましい。これによって、前記水溶液における炭酸ガスの吸収量を増大させることができる。なお、かかる条件は、上述したポリアリルアミン、ポリアリールアミン、ポリアルカノールアミン、及びポリビニルアミンの場合は、必然的に満足するが、必要に応じてpH調整剤等を混合させることもできる。
【0027】
次いで、前記水溶性高分子含有水溶液に対して炭酸ガスを含有する気体を接触させ、前記炭酸ガスを吸収させる。この際、炭酸ガスを含有する前記気体と、前記水溶性高分子含有水溶液とが接触することができればよく、例えば、気泡攪拌槽、気泡塔によるガス分散型吸収装置、スプレー塔、噴霧室、スクラバー、濡れ壁塔、充填塔による液分散型吸収装置等、既存の炭酸ガス吸収設備を用いることができる。炭酸ガスの吸収効率の観点から、充填材を充填した炭酸ガス吸収塔を用いた吸収が好ましい。
【0028】
炭酸ガス回収時の反応温度は炭酸ガスを吸収することができればいかなる温度でも構わないが、吸収速度、及び吸収効率の観点から25℃以上、70℃以下であることが好ましい。
【0029】
次いで、上記炭酸ガスを吸収した前記水溶性高分子含有水溶液を、疎水性の第1相と親水性の第2相とに分離する。この相分離は、既存の液・液分離方法を用いることができる。液・液分離法の例としてデカンテーション、遠心分離が挙げられるが、これらに何ら限定されるものではない。
【0030】
また、相分離は以下に説明するように、前記水溶性高分子含有水溶液からの炭酸ガス放出時の再生エネルギー低減を目的として行うものであるため、完全に分離を行う必要は無く、前記第2相を減溶することができれば良い。相分離を行う際の温度は特に限定はされないが、25℃以上、70℃以下であることが好ましい。
【0031】
次いで、前記水溶性高分子含有水溶液の、前記第1相から前記炭酸ガスを放出する。前記炭酸ガスの放出方法としては、減圧、加熱、膜分離などが挙げられるが、これらに何ら限定されるものではない。但し、加熱処理による方法によれば、簡易に前記ガス放出を行うことができる。この際の温度は、前記炭酸ガスを放出することができればいかなる温度でも構わないが、40℃以上、150℃以下であることが好ましい。
【0032】
なお、本態様では、吸収した前記炭酸ガスは、前記水溶性高分子含有水溶液の前記第1相中に含まれるようになるので、上述した加熱処理は前記第1相に対してのみ行えば良い。したがって、従来技術で述べたような、炭酸ガスを吸収した吸収剤の全体、すなわち本態様では、前記水溶性高分子含有水溶液の全体に上述した加熱処理を行う必要がない。この結果、従来技術と異なり、前記加熱処理に伴うエネルギー消費を十分に低減することができる。
【0033】
なお、上記第1相が疎水性を示すのは、主として炭酸ガスを吸収したことによる。したがって、上述のようにして炭酸ガスを放出した後は親水性を呈するようになるので、上述した第1相及び第2相は再び混合して、上記水溶性高分子含有水溶液とすることができ、再度炭酸ガス吸収剤として用いることができる。混合時に含窒素化合物、水、もしくはその他化合物を添加し、吸収性能を補うことも可能である。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を示す。
【0035】
(実施例1)
化合物8に示すポリアミン(分子量約5000)20重量部を水80重量部に溶解させ、100mlの水溶液とした。水溶液のpHは11であった。得られた水溶液を40℃に加熱し、炭酸ガスを約10%含有するガスを流速1L/minで通気した。約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.28molであった。炭酸ガス吸収後のポリアリルアミン水溶液は2相に分離した。これをデカンテーションによって分離を行い、ポリアリルアミンを含む疎水性相を回収した。回収したポリアリルアミン含有疎水性相を約20分間90℃に加熱した。放出は飽和し、約0.25molの炭酸ガスが回収された。
【0036】
(実施例2)
化合物20に示すポリアリルアミン(分子量約5000)を用いて実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.21molであった。20分間90℃に加熱したところ、放出は飽和し、約0.17molの炭酸ガスが回収された。
【0037】
(実施例3)
化合物23に示すポリアルカノールアミン(分子量約5000)を用いて実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.14molであった。20分間90℃に加熱したところ、放出は飽和し、約0.11molの炭酸ガスが回収された。
【0038】
(実施例4)
化合物24に示すポリ環状アミン(分子量約5000)を用いて実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.11molであった。20分間90℃に加熱したところ、放出は飽和し、約0.08molの炭酸ガスが回収された。
【0039】
(実施例5)
化合物20に示すポリアリルアミン(分子量約5000)1重量部に対して、水を99重量部添加し、実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.02molであった。20分間90℃に加熱したところ、放出は飽和し、約0.017molの炭酸ガスが回収された。
【0040】
(実施例6)
化合物20に示すポリアリルアミン(分子量約5000)を80重量部に対して水20重量部添加し、実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.85molであった。20分間90℃に加熱したところ、放出は飽和し、約0.75molの炭酸ガスが回収された。
【0041】
(実施例7)
化合物20に示すポリアリルアミン(分子量約500)を用いて、実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.21molであった。炭酸ガス吸収後、ポリアリルアミン水溶液は2相に分離した。20分間90℃に加熱したところ、放出は飽和し、約0.15molの炭酸ガスが回収された。
【0042】
(実施例8)
化合物20に示すポリアリルアミン(分子量約20000)を用いて、実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.21molであった。20分間90℃に加熱したところ、放出は飽和し、約0.18molの炭酸ガスが回収された。
【0043】
(実施例9)
化合物20に示すポリアリルアミン(分子量約100,000)を用いて、実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.21molであった。20分間90℃に加熱したところ、放出は飽和し、約0.18molの炭酸ガスが回収された。
【0044】
(実施例10)
化合物20に示すポリアリルアミン(分子量約5000)を用いて、溶液のpHが7となるように調整し、実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.14molであった。炭酸ガス吸収後、ポリアリルアミン水溶液は2相に分離した。20分間90℃に加熱したところ、放出は飽和し、約0.10molの炭酸ガスが回収された。
【0045】
(実施例11)
化合物20に示すポリアリルアミン(分子量約5000)を用いて、溶液のpHが9となるように調整し、実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.18molであった。炭酸ガス吸収後、ポリアリルアミン水溶液は2相に分離した。20分間90℃に加熱したところ、放出は飽和し、約0.15molの炭酸ガスが回収された。
【0046】
(実施例12)
化合物20に示すポリアリルアミン(分子量約5000)を用いて、溶液のpHが14となるように調整し、実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.21molであった。炭酸ガス吸収後、ポリアリルアミン水溶液は2相に分離した。20分間90℃に加熱したところ、放出は飽和し、約0.18molの炭酸ガスが回収された。
【0047】
(実施例13)
化合物20に示すポリアリルアミン(分子量約5000)20重量部を水80重量部に溶解させ、10Lの水溶液を調整した。水溶液のpHは11であった。得られた水溶液を用いて、10%炭酸ガスを流量10L/min、40℃の条件で充填材を充填した充填塔を用いて吸収させた。約30分間で21molの炭酸ガスを吸収した。炭酸ガス吸収後のポリアリルアミン水溶液は2相に分離した。これを比重差を利用して分離し、ポリアリルアミンを含む疎水性相を回収した。回収したポリアリルアミン含有疎水性相を約30分間90℃に加熱した。放出は飽和し、約17molの炭酸ガスが回収された。
【0048】
(実施例14)
化合物20に示すポリアリルアミン(分子量約5000)20重量部を水80重量部に溶解させ、10Lの水溶液を調整した。水溶液のpHは11であった。得られた水溶液を用いて、10%炭酸ガスを流量10L/min、40℃の条件でスプレー塔を用いて吸収させた。約30分間で21molの炭酸ガスを吸収した。炭酸ガス吸収後のポリアリルアミン水溶液は2相に分離した。これを比重差を利用して分離し、ポリアリルアミンを含む疎水性相を回収した。回収したポリアリルアミン含有疎水性相を約30分間90℃に加熱した。放出は飽和し、約16.5molの炭酸ガスが回収された。
【0049】
(比較例1)
化合物31に示す3級ポリアルカノールアミン(分子量約5000)を用いて、実施例1と同様の実験を行ったところ、約30分で吸収は飽和し、吸収量は約0.1molであった。しかし、炭酸ガス吸収後も2相分離は観察されなかった。吸収液全量を90℃に加熱し、炭酸ガスの放出を行った。放出の飽和に45分要し、約0.07molの炭酸ガスが回収された。
【化31】

【0050】
(比較例2)
化合物32に示すポリエチレンオキサイド誘導ポリアミン(分子量約5000)を用いて、実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.16molであった。しかし、炭酸ガス吸収後も2相分離は観察されなかった。吸収液全量を90℃に加熱し、炭酸ガスの放出を行った。放出の飽和に40分要し、約0.12molの炭酸ガスが回収された。
【化32】

【0051】
(比較例3)
モノエタノールアミン20重量部に対して水80重量部添加し、実施例1と同様の実験を行ったところ、約20分で吸収は飽和し、吸収量は約0.2molであった。しかし、炭酸ガス吸収後も2相分離は観察されなかった。吸収液全量を90℃に加熱し、炭酸ガスの放出を行った。放出の飽和に40分要し、約0.11molの炭酸ガスが回収された。
【0052】
(比較例4)
化合物33に示す、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(分子量500000)を用いて実施例1と同様の実験を行った。水溶液のpHは5であった。その結果、炭酸ガスの吸収は観察されなかった。
【化33】

【0053】
以上、実施例から明らかなように、本発明に従った実施例においては、90℃に加熱して炭酸ガスを放出する際に、20分程度から30分程度の加熱時間で足りるのに対し、本発明と異なる比較例では、90℃に加熱して炭酸ガスを放出する際に40分程度の加熱時間を要することが判明した。したがって、実施例における炭酸ガスの放出に要するエネルギーは比較例における炭酸ガスの放出に要するエネルギーよりも十分に小さいことが分かる。すなわち、炭酸ガスの放出に伴うエネルギー消費を十分に低減できることが分かる。
【0054】
また、比較例4に示すような化合物を炭酸ガス吸収剤として使用した場合は、炭酸ガス自体が吸収されないことが判明した。
【0055】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記態様に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変更や変形が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式に記載の含窒素化合物を繰り返し単位として有する、水溶性高分子化合物を含有する炭酸ガス吸収剤
【化1】

R1:−CsHt− (1≦s≦10、t=2s−1)(直鎖、分岐含む)
R2:−H, −CsHtOuNv (1≦s≦5、2s≦t≦2s+2、0≦u≦3、0≦v≦3) (直鎖、分岐含む)。
【請求項2】
前記水溶性高分子化合物の1重量部から80重量部に対して、水を20重量部から99重量部含有し、水溶性高分子含有水溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項3】
前記水溶性高分子化合物の分子量が、500から100,000であることを特徴とする、請求項1に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項4】
前記水溶性高分子化合物の分子量が、500から100,000であることを特徴とする、請求項2に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項5】
前記水溶性高分子含有水溶液のpHが、7以上14以下であることを特徴とする、請求項2又は4に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項6】
前記水溶性高分子化合物は、ポリアリルアミン、ポリアリールアミン、ポリビニルアミン、及びポリアルカノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項7】
前記ポリビニルアミンは、ポリビニルピペリジンであることを特徴とする、請求項6に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項8】
(1)式に記載の含窒素化合物を繰り返し単位として有する、水溶性高分子化合物を含有する炭酸ガス吸収剤
【化2】

R1:−CsHt− (1≦s≦10、t=2s−1)(直鎖、分岐含む)
R2:−H, −CsHtOuNv (1≦s≦5、2s≦t≦2s+2、0≦u≦3、0≦v≦3) (直鎖、分岐含む)と、水とを混合して、水溶性高分子含有水溶液を調整するステップと、
前記水溶性高分子含有水溶液に対して炭酸ガスを含有する気体を接触させ、前記炭酸ガスを吸収させるステップと、
前記水溶性高分子含有水溶液を、疎水性の第1相と親水性の第2相とに分離するステップと、
前記水溶性高分子含有水溶液の、前記第1相から前記炭酸ガスを放出するステップと、
を具えることを特徴とする、炭酸ガス回収方法。
【請求項9】
前記炭酸ガスの放出は、前記水溶性高分子含有水溶液に対して加熱処理を施すことによって実施することを特徴とする、請求項8に記載の炭酸ガス回収方法。
【請求項10】
前記水溶性高分子化合物の1重量部から80重量部に対して、前記水を20重量部から99重量部添加して、前記水溶性高分子含有水溶液を調整することを特徴とする、請求項8又は9に記載の炭酸ガス回収方法。
【請求項11】
前記水溶性高分子化合物の分子量が、500から100,000であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一に記載の炭酸ガス回収方法。
【請求項12】
前記水溶性高分子含有水溶液のpHが、7以上14以下であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一に記載の炭酸ガス回収方法。
【請求項13】
前記水溶性高分子化合物は、ポリアリルアミン、ポリアリールアミン、ポリビニルアミン、及びポリアルカノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか一に記載の炭酸ガス回収方法。
【請求項14】
前記ポリビニルアミンは、ポリビニルピペリジンであることを特徴とする、請求項13に記載の炭酸ガス回収方法。

【公開番号】特開2010−194378(P2010−194378A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38606(P2009−38606)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】