説明

炭酸泉用ガス溶解液製造装置

【課題】効率良く高濃度の炭酸泉ガス溶解液製造装置を提供する。
【解決手段】炭酸泉ガス溶解液製造装置は、炭酸ガス供給口と、該炭酸ガス供給口と連通する炭酸ガス溶解器と、水槽と、該水槽中の水を炭酸ガス溶解器内に送水するポンプと、炭酸ガスの供給速度を炭酸ガス溶解中に変更させる炭酸ガス供給制御手段(5) と、炭酸ガスの供給路に複数かつ並列に配され、炭酸ガスの供給速度を異なるように設定できる電磁弁(4')とを備えている。炭酸ガス供給速度制御手段が該電磁弁(4')を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常時一定の炭酸濃度を効率良く得るための高濃度の炭酸泉用ガス溶解液製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを溶解した溶解液は、各種用途に使用されている。例えば、ガスとして炭酸ガスを例に採ってみても、炭酸ガスの濃度が低い微炭酸水や、高圧力下で炭酸ガス濃度を高めた炭酸飲料水、温水に炭酸ガスを溶解した人工炭酸泉、工業用に使用される炭酸ガス溶解液など幅広く使用されている。
【0003】
炭酸泉等の炭酸ガスを含んだ温水に入浴した場合の血管拡張効果や、湯冷めしにくい等の温浴効果は一般によく知られ、古くから温泉を利用する浴場等で用いられている。炭酸泉の保温作用は、基本的に、含有炭酸ガスの末梢血管拡張作用により身体環境が改善されるためと考えられる。また、炭酸ガスの経皮進入によって、毛細血管床の増加及び拡張が起こり、皮膚の血行を改善する。このため退行性病変及び末梢循環障害の治療に効果があるとされている。また近年数100mg/lから1000mg/l程度の高濃度での治療効果も証明されつつある。そのような理由から、浴用炭酸水を簡便に得ることができる薬剤や装置が市販されている。
【0004】
このような炭酸泉を人工的に得るために、炭酸塩と酸とを反応させる化学的方法やボイラーの燃焼ガスを利用する方法、或いは例えば特開平5−238928号公報(特許文献1)に記載されていうような絞りを有する配管中に炭酸ガスを直接吹き込む装置や、特公平7−114790号公報(特許文献2)、特公平7−114791号公報(特許文献3)等に記載されているような炭酸ガス溶解器としてスタティックミキサーを用いる方法等がある。
【0005】
また最近では、膜を用いて炭酸泉を製造する方法も多く提案されている。例えば、特許第2810694号公報(特許文献4)では両端の開口した多孔質の中空糸膜を複数本収納してなる中空糸膜モジュールを用い、或いは特許第3048499号公報(特許文献5)、特許第3048501号公報(特許文献6)、特開2001−293344号公報(特許文献7)等のように、中空糸膜として非多孔質の中空糸膜を用いる方法が提案されている。
【0006】
膜を用いて炭酸泉を製造する方法には、膜モジュールを備えた炭酸ガス溶解器に原水を一回通過させることにより炭酸泉を製造する、いわゆるワンパス型と、循環用ポンプにより浴槽中の温水を炭酸ガス溶解器を介して循環させる、いわゆる循環型とがある。
【0007】
ところで、多孔質の中空糸膜を用いる方法の場合、長期間の使用により膜が親水化し、水がガス側に漏れ出して膜表面を塞いでしまい、初期の炭酸ガス添加性能を得ることが出来なくなる懸念があった。これに対し、非多孔質の中空糸膜を用いた場合、ガス側と液側の間に非多孔質の膜が存在するため、長期間の使用にも水がガス側に漏れ出すことはないが、水分子である水蒸気は透過してしまうため、透過した水蒸気がガス側で凝縮し、やはり凝縮水(ドレイン)が膜表面を塞いでしまうという懸念があった。
【0008】
そこで、特開平7−313855号公報(特許文献8)及び特開平7−328403号公報(特許文献9)では、ガス側にドレイン抜き用の弁を配置し、定期的に弁を開閉してドレインをガス側から排出するようにしている。しかしながら、この方法は透過水蒸気の多い膜では頻繁にドレイン抜きを実施しなければならず、そのたびにガス側に充満した炭酸ガスを大気中に放出させるため、炭酸ガスの消費量が多くなりがちであった。
【0009】
一方、上述のように膜を用いた方法で炭酸泉を製造すると、最も効率良く高濃度の炭酸泉が得られる利点はあるものの、毎回同一の炭酸濃度が得られないという欠点があり、特に同一日に連続して何度も炭酸泉を製造する場合、炭酸ガスの通気初期に炭酸濃度が低下する現象が起きていた。
【0010】
上述の方法では実施例の多くにも示されているように、炭酸ガス制御に流量と圧力とが表示されているが、ボンベに直接接続して用いる圧力制御バルブ等を用いて圧力制御によって流量を制御しているだけであって、炭酸ガスの通気初期と安定時とでは膜を透過する炭酸ガス流量が異なっていた。炭酸ガス流量が変化する原因としては、初期には膜が温水より冷えていることや、膜中の炭酸ガス密度が低いことなどから、同一圧力にあっても炭酸ガスが膜中を透過しにくくなっているためと考えている。しかし当時としては、ある程度の濃度の炭酸泉を製造しさえすれば充分であり、精度をあまり問題視していなかった。
【0011】
ところが近年、特に治療効果において1200mg/l前後の40℃での炭酸ガス飽和濃度付近の炭酸泉になると、更に顕著な効果が期待できることが明らかにされつつあり、それまでのように、適当な濃度の炭酸泉を製造すればよいという考えを変えざるを得なくなってきた。そのため、炭酸泉を高濃度でかつ再現良く製造する必要性が出てきた。一方、上述の炭酸ガス溶解器は改良が重ねられ、徐々に炭酸ガスの溶解効率の改善も試みられているが、溶解効率を更に改善することが求められている。特に炭酸ガスを大量に使用する全身浴用装置においては、溶解効率の改善は重要である。
【0012】
圧力制御を用いる方法でも余裕を持たせた運転方法、例えば圧力を多めにしておくとか、循環式の場合だと運転時間を増やすとかの方法を採れば、高濃度の炭酸泉を製造することができる。しかしこれらの方法を用いると、無駄な炭酸ガスを消費することになるため好ましくなかった。
【0013】
また特に病院用途において多くの患者をケアするためには、なるべく短時間で高濃度炭酸泉を製造する方法が求められているが、循環型の場合は初期に流量が流れない分、高濃度炭酸泉の製造時間が長くなる欠点があった。
【0014】
一方、ワンパス型を採用して再現良く炭酸泉を製造する方法については、特開平10−277121号公報(特許文献10)に記載されている。これは、製造した炭酸泉中の炭酸ガス濃度を測定し、その濃度をフィードバックさせて供給する炭酸ガス量を制御していくものであるが、それゆえ目的の炭酸ガス濃度を達成するには時間を必要とした。また、この方法の濃度測定法では、原水のアルカリ度が変化すると再現良く制御ができない欠点があった。
【0015】
溶解液中のガス濃度を測定する方法としては、イオン電極式のガス濃度計を用いてガス濃度を測定する方法、あらかじめ測定したアルカリ度を事前にプログラム入力しpH測定によりガス濃度を測定する方法、溶解液に薬品を添加して溶解液のpH値を調整し、電気化学的にガス濃度を測定する方法、溶解液に薬品を添加して、溶解しているガスを放出させ、放出されたガスの熱伝導率からガス濃度を測定する方法、溶解液における赤外線吸収率からガス濃度を測定する方法、溶解液に超音波を照射して溶解しているガスを放出させ、放出されたガスの圧力を検出することでガス濃度を測定する方法(特開平5−296904号公報:特許文献11)等が知られている。
【0016】
しかし、上記のようなガスの測定方法では、操作が非常に複雑であり、使用に際しては多大の時間と労力を必要とし、溶解器から連続的に製造される溶解液のガス濃度をオンタイムで測定することはできなかった。
【0017】
以下、溶解液として人工炭酸泉を例に採って説明する。人工炭酸泉は一般に、温水に所望濃度の炭酸ガスを溶解して人工炭酸泉として製造されている。人工炭酸泉は、既述したとおり、その強力な血管拡張作用により末梢血液循環不全に優れた効果を発揮すると考えられていることから、広く治療や湯治に使用されている。これまでは天然より湧出した炭酸泉が使用されていたが、優れた人工炭酸泉製造方法の開発により現在では広く内科治療の一つとして人工炭酸泉治療が使用されるに至っているものである。
【0018】
人工炭酸泉治療における臨床研究成果から、治療に使用し得る炭酸ガスの有効濃度は1000mg/l以上1400mg/l近傍で最大になることが明らかになってきている。また、疾患の重傷度や治療の継続期間により炭酸ガス濃度に対する応答性が異なることも示されてきており、実際の人工炭酸泉治療においては、患者に応じた炭酸ガスの適応濃度を設定することが必要となっている。
【0019】
このため、人工炭酸泉を治療用に使用する場合には、溶解液中の炭酸ガス濃度が重要な要因となっているが、溶解器によって連続的に製造した所望濃度の人工炭酸泉は、貯留槽に貯蔵したらすぐに入浴する必要がある。人工炭酸泉中のガス濃度の測定に時間を要すると貯留槽中の炭酸ガスが大気中に放出して、人工炭酸泉中のガス濃度が低下してしまうことになる。このよう状態で入浴が行われると、所望の炭酸ガス濃度での入浴を行えなくなり、人工炭酸泉浴による治療効果が期待できないものとなってしまう。また、ガス濃度の測定を繰返し何回も行う必要があるときには、温水の温度自体が低下してしまう事態も発生する。
【0020】
特に、イオン電極式の方法で炭酸ガス濃度を測定すると、測定結果を得るまでに数分を要し、測定毎に常に数分の時間が必要なため短時間で測定結果を得ることが出来なかった。また、アルカリ度を事前にプログラム入力してpH測定により炭酸ガス濃度を測定する方法では、水質毎に異なるアルカリ度を事前にその都度測定する必要があった。更に、他のイオンや塩類が混入した場合には再度アルカリ度を測定し直す必要があり、またpH測定における応答結果を得るにも一定の時間を要することから人工炭酸泉製造と同時にインラインで瞬時の炭酸ガス濃度を測定することは困難であった。
【0021】
一方、人工炭酸泉の製造方法としては、薬剤反応により生じた炭酸ガスの気泡を温水中に溶解させる方法(特開平2−270158号公報:特許文献12)、圧力タンク内において温水に炭酸ガスを高圧で封入する方法、温水を導管の途中に設けた分散器内においてスタティックミキサーと呼ばれる攪拌器で強制的に炭酸ガスと温水とを混合させる方法(特開昭63−242257号公報:特許文献13)、多層複合中空糸膜溶解器を使用する方法(三菱レイヨン・エンジニアリング社製「炭酸水製造装置MRE−SPA」)等がある。
【0022】
スタティックミキサー、多層複合中空糸膜溶解器を使用する方法は連続的に大量の人工炭酸泉を製造するのに適しており、また温水を循環経路によって炭酸ガス溶解器中を繰り返し通過させることにより所定の濃度まで炭酸ガス濃度を徐々に上昇させることも可能である。
【0023】
連続的に人工炭酸泉を製造する場合、これら炭酸ガス濃度の測定手段と人工炭酸泉の製造方法を組み合わせることにより、所定の炭酸ガス濃度の人工炭酸泉を製造することができるが、インライン上で連続的に人工炭酸泉を製造する場合は、炭酸ガス濃度の測定方法における応答速度が問題となる。水中の炭酸ガス濃度を測定する方法としては、イオン電極方式による測定が一般的であるが応答速度が遅く、特に人工炭酸泉で必要とされる1000〜1400mg/lの炭酸ガス濃度の溶液ではイオン電極が平衡状態になるのに長時間を要することやガス気泡がイオン電極に付着して正確な測定ができないため、インライン上で、しかもオンタイムでの測定は実施困難である。
【0024】
さらに、使用する毎に徐々に膜に汚れが生じると、炭酸ガスが流れにくくなり、当初作成した炭酸ガス圧力と流量の関係にずれが生じ、正しい流量制御ができなかった。使用する毎に圧力と流量の関係を調べれば正しい制御が可能かも知れないが、それでは操作が甚だ面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開平5−238928号公報
【特許文献2】特公平7−114790号公報
【特許文献3】特公平7−114791号公報
【特許文献4】特許第2810694号公報
【特許文献5】特許第3048499号公報
【特許文献6】特許第3048501号公報
【特許文献7】特開2001−293344号公報
【特許文献8】特開平7−313855号公報
【特許文献9】特開平7−328403号公報
【特許文献10】特開平10−277121号公報
【特許文献11】特開平5−296904号公報
【特許文献12】特開平2−270158号公報
【特許文献13】特開昭63−242257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、以上の課題を解決することを主な目的としており、具体的には効率良く高濃度の炭酸泉ガス溶解液製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の最も基本的な構成は、炭酸ガス供給口と、該炭酸ガス供給口と連通する炭酸ガス溶解器と、水槽と、該水槽中の水を炭酸ガス溶解器内に送水し、水槽内に戻すための循環用ポンプと、炭酸ガスの供給速度を炭酸ガス溶解中に変更させる炭酸ガス供給制御手段と、炭酸ガスの供給路に複数かつ並列に配され、炭酸ガスの供給速度を異なるように設定できる炭酸ガス供給速度制御手段とを備え、炭酸ガス供給速度制御手段が該炭酸ガス供給速度のガス速度切替手段を備えてなることを特徴とする炭酸泉用ガス溶解液製造装置にある。
【0028】
本発明の製造装置により炭酸泉用ガス溶解液を効率的に製造するには、循環用ポンプにより水槽中の水を、炭酸ガス溶解器を介して循環させ、該炭酸ガス溶解器内に炭酸ガスを供給して、該水槽中の水に炭酸ガスを溶解させ、徐々に該水槽中の水の炭酸ガス濃度を上昇させるに際して、炭酸ガスの供給速度を、炭酸ガス溶解時間前半に比べ後半で遅くするとよい。この製造方法において、炭酸ガス溶解終了後の水槽中の水の炭酸ガス濃度が1000mg/l以上にすることが好ましく、このような炭酸ガス濃度を高濃度にすることによって、含有炭酸ガスの末梢血管拡張作用、炭酸ガスの経皮進入による毛細血管床の増加及び拡張によって、皮膚の血行を改善しやすくなる。
【0029】
ここで膜を通して、炭酸ガスを温水に溶解させて炭酸泉を製造する場合、炭酸ガス供給制御手段によって炭酸ガス流量を一定に制御することが好ましい。さらに、炭酸ガス供給制御手段にとして流量制御バルブを用いることが好ましく、この流量制御バルブとして質量流量式流量制御バルブを使い、膜として中空糸膜、特に、薄膜状の非多孔質ガス透過層の両側を多孔質層で挟み込んだ三層構造の複合中空糸膜を用いることが好ましい。さらに、炭酸ガス溶解時間の後半を、炭酸ガス溶解時間の前半より長くすること、また、炭酸ガス溶解終了直前の炭酸ガス供給速度を、炭酸ガス溶解開始時の供給速度の50%以下にすることが望ましく、これにより効率良く高濃度の炭酸泉を製造することができる。
【0030】
炭酸ガスの供給速度を制御するために、炭酸ガス供給速度制御手段を複数且つ並列に設けてもよく、この場合、該炭酸ガス供給速度制御手段をそれぞれ供給速度が異なるように設定し、該炭酸ガス供給速度の設定が速いものから順に切り替えを行うことができる。前記炭酸ガス供給速度の切り替えには電磁弁を用いて、電子制御により順次切り替えることが望ましい。
前記流量制御バルブは、既述したように質量流量式流量制御バルブであること、また、前記流量制御バルブと前記炭酸ガスを供給する手段の間に、流量計を備えたものであること、さらに、前記炭酸ガスを供給する手段と前記流量制御バルブの間に、ガス圧を一定に保つ圧力制御バルブを備えたものであることが好ましく、かかる構成を採用することで炭酸ガスの流量をさらに精度良く調整することができる。
【0031】
一般に流量制御バルブには、通常のオリフィスやニードルバルブのような二次圧(出口側圧力)に影響するものと、二次圧に影響しない質量流量制御バルブとがある。二次圧に影響するものは、二次側の圧力が高くなるほど、つまり一次圧との差が小さくなるほど流量が下がる。このときのバルブの開度(CV値)と圧力とは、一般に次の関係にある。
【0032】
1 :一次側絶対圧力(MPa)、P2 :二次側絶対圧力(MPa)、Q:流量(m3 /h)、ρ:比重(Air を1とする)とすると、
2 >(P1 /2)のとき、
CV=Q/4170×(ρ(273+t)/(P1 −P2 )P2 1/2
2 ≦(P1 /2)のときは二次圧に影響しない。
一方、質量流量制御バルブは二次圧に影響しない。
【0033】
例えば、特開昭58−139730号公報では、圧力が一定のところに炭酸ガスを流す、つまり、二次圧が一定なため、質量流量制御バルブは不要となる。
【0034】
これに対し、本発明では状況の変化により二次圧が変化する膜モジュールを用いるため、質量流量制御バルブを採用することが好ましい。質量流量制御バルブとして知られているものには電子式とニードルバルブ型がある。本発明ではニードルバルブ型の質量流量制御バルブが好ましく用いられるが、電子式であっても構わない。
【0035】
ニードルバルブ型の質量流量制御バルブは、ニードルバルブで流量を調整し、その後部に同一質量流量で開度が一定になり、バルブ出口の圧力が一定になるような圧力調整弁のようなものが付属されており、二次圧(出口圧)を常に一定に保つようにしている。一次圧(入口圧)を一定としたとき、二次圧も一定になるため、定差圧調整バルブとも言われる。通常のニードルバルブでは、二次圧に影響するが、この質量流量制御バルブであれば、二次側(出口側)の負荷圧力が変動しても、質量流量を一定にすることができる。
【0036】
一方、電子式の質量流量制御バルブでは、センサー部である毛細管に、抵抗温度係数が大きい抵抗体を上流側と下流側にそれぞれ巻きつけ、これに電流を流すことにより、2つの抵抗体を発熱させる。このとき、毛細管の内部に流体が流れない状態にあると、上流、下流ともに同じ温度でバランスする。この状態で流体が流れ始めると、温度分布が変化し、上流側では流体により熱を奪われ、逆に下流側には上流側から奪われた熱が与えられることになる。つまり、上流と下流の間に温度差が生じる。
【0037】
この温度差が流体の質量流量に対して所定の関数関係にあることに着目し、各々の抵抗値の変化を電気信号として取り出し、増幅、補正することにより、ある条件下で質量流量を計測できる熱式質量流量計として機能する。これが電子式の質量流量計(マスフローメーター)である。
【0038】
質量流量制御バルブ(マスフローコントローラー)では、さらにセンサー部から出力された質量流量の信号を基に、外部からの流量設定信号との比較制御で高速、高分解能のピエゾ、もしくはソレノイドアクチュエーターによりバルブの開度をコントロールすることにより、温度、圧力等の諸条件が変化してもほとんど影響を受けない、安定した質量流量制御を行うことができる。
【0039】
炭酸ガスの好適なガス透過膜としては、25℃における炭酸ガス透過量が1×10-3〜1m3 /m2 ・hr・0.1MPaであり、且つ25℃における水蒸気透過量が1×103 g/m2 ・hr・0.1MPa以下であるガス透過膜であることが好ましく、さらにこれらのガス透過膜を用いた膜モジュールであることが望ましい。前記ガス透過膜がクヌッセン流れを有さない非多孔質膜であると、膜が濡れてガス供給側に水が透過することが無いため好ましい。前記膜モジュールの膜密度は2000〜7000m2 /m3 の範囲であると、炭酸ガスの溶解を効率的に行えるため好ましい。
【0040】
さらに、前記ガス透過膜が中空糸膜であると、容積あたりの膜面積を高めることができるため好ましい。この中空糸としては、単なる多孔質膜から構成された中空糸膜により構成されていてもよいが、同中空糸膜が薄膜状の非多孔質膜の両側を多孔質膜で挟み込んだ三層構造の複合中空糸膜であるときは、炭酸ガスを効率よく温水に溶解することができるため好ましい。前記非多孔質膜の膜厚が0.1〜500μmであると、炭酸ガス透過性能、水蒸気透過性能を満足しつつ、適度な強度を有するため好ましい。前記炭酸ガス添加用膜モジュールを用いて炭酸ガスを溶解させるには、水を予め30℃〜50℃に加熱した後に溶解させることが好ましい。また、前記炭酸ガス溶解器としてはスタティックミキサーであることが好ましい。
【0041】
さらに、上述のような1000mg/l以上の高濃度の炭酸泉又は炭酸水を製造するには、以下の本発明の他の要旨とする溶解液中のガス濃度測定方法が採用できる。これは、本発明の発明者によって開発されたガス濃度測定方法であって、ガス溶解器を通過する溶液の流量と同ガス溶解器に供給されたガスの供給流量とを一定に保った場合に、ガス溶解器からの導出管に存在する溶解しなかったガスの気泡の量とガス溶解器から導出された溶解液中のガス濃度との間には一定の相関関係があることを応用するものであり、連続製造される溶解液中のガス濃度をインライン上で、しかもオンタイムで測定することが可能である。なお、本発明のガス濃度測定方法は、単に炭酸ガス溶液のガス濃度の測定に限定されず、多様な種類の溶液性ガスのガス濃度測定にも当然に適用可能である。
【0042】
その基本的な構成は、ガス溶解器にそれぞれ一定流量の溶液及びガスを導入し、前記ガス溶解器からの導出管中に存在する気泡の量を測定し、前記気泡の量から前記導出管より排出される溶解液のガス濃度を測定することを特徴とする溶解液中のガス濃度測定方法にある。
【0043】
ガス溶解器に一定流量の溶液を導入すると共に一定流量のガスを導入することで、前記ガス溶解器内において溶液にガスが溶解した溶解液と溶液に溶解しなかったガス、即ち気泡の状態で溶解液に混入したもの、とをガス溶解器からの導出管により排出し、前記導出管中に存在する溶解しなかったガスの気泡の量を連続的にインライン上でしかもオンタイムにて測定することにより、前記ガス溶解器から導出される溶解液中のガス濃度を連続的に測定することができる。ガス溶解器に導入するガスの流量としては、溶液の導入流量における飽和溶解量以上の量をガス溶解器に導入することが望ましい。
【0044】
また、任意の濃度の溶解液に対して更にガスを添加することを多段階で行うことによって、目的とするガス濃度の溶解液を得る場合においては、始めの溶解液のガス濃度が高いほど次段階で添加し得るガスの量は減少する。しかも、ガス溶解器を通過する溶液の流量と同ガス溶解器に供給されたガスの供給流量とを一定に保つことによって、ガス溶解器からの導出管に存在する溶解しなかったガスの気泡の量とガス溶解器から導出した溶解液中のガス濃度には一定の相関関係がある。このことを利用して、予めガス溶解器の溶解能力、溶液の導入流量、及びガスの導入流量の各条件下で、導出管に存在する溶解液中の気泡の量と同溶解液のガス濃度との関係式を実測により求めておき、同関係式を用いて導出管における溶解液中の気泡の量を測定することで、連続的な溶解液の製造中にオンタイムで同溶解液中のガス濃度を測定することができる。
【0045】
特に、溶解液を人工炭酸泉としたときには、ガス溶解器で製造された人工炭酸泉のガス濃度を導出管における気泡の量から効率的に、しかも人工炭酸泉の製造中にインライン上でしかもオンタイムにて連続的に測定することができるようになる。
【0046】
上記構成に加えて、気泡の量を、導出管を挟んで配した超音波発信子及び超音波受信子を用いて、前記導出管中を透過させた超音波の減衰率から算出することが好ましい。溶解液中におけるガスの気泡量の測定は、導出管に配した超音波発信子から発した超音波信号を導出管中の溶解液に透過させた後、同導出管に配した超音波受信子によって受信し、受信した超音波信号の強度の減衰率(=(超音波受信子によって受信した超音波信号の強さ)/(超音波発信子から発した超音波信号の強さ):%)から気泡量を算出する。
【0047】
溶解液中におけるガスの気泡量と溶解液が混在した導出管に超音波信号を通過させることによって、前記気泡量を測定することができる。即ち、溶解液中にガス気泡が存在しない状態(即ち、ガスの供給量が0又は、溶液の流速に対するガス供給速度が小さくて、ガス溶解器に導入したガスが100%溶液に溶解している場合)では、超音波発信子から発した超音波信号は溶液中のみを通過するため超音波受信子において測定される超音波信号の減衰は最小(減衰率としては最大値)となる。
【0048】
溶液と気泡では超音波の伝導率が異なるため、溶解液中に気泡が混入するに従って超音波信号の減衰は増大し、使用するガス溶解器における溶解率が0になった時点で超音波受信子において観測される超音波信号の減衰は最大(減衰率としては最小値)となる。超音波信号の減衰率の変化は、ガス溶解器によって固有のものとなるので、予め使用するガス溶解器に対して、超音波信号の減衰率と溶液中のガス濃度の実測値を測定しておくことにより関係式を求めておくことができる。
【0049】
特に、溶解液を人工炭酸泉としたときには、減衰率が人工炭酸泉の炭酸ガスの飽和濃度から急激に減少する傾向を示しているので、人工炭酸泉として有効な炭酸ガス濃度である1000〜1400mg/l近傍では減衰率の変化が大きくなり、気泡の量から同有効炭酸ガス濃度範囲における炭酸ガス濃度を測定することが容易となる。
【0050】
本発明にあっては、さらにガス濃度の特定を溶液流量及びガス流量をそれぞれ一定とした条件下で予め測定して求めておいた気泡量とガス濃度との関係式を用いて、測定した気泡量により特定することが望ましい。ここで、ガス溶解器を通過する溶液の流量と同ガス溶解器に供給されたガスの供給流量とを一定に保つことによって、ガス溶解器からの導出管に存在する溶解しなかったガスの気泡の量とガス溶解器から導出又はガス溶解器に導入された溶解液中のガス濃度との間には一定の相関関係があることは、本発明者により初めて認識されたものであり、これを応用している。
【0051】
すなわち、予め使用するガス溶解器に対して、同ガス溶解器に導入する溶液の状態及びガスの状態毎に、超音波信号の減衰率とガス濃度の実測値を測定しておくことにより関係式を求めておくことで行うことができる。溶液の状態及びガスの状態としては、それぞれの物理的な条件(例えば、導入する流量、圧力、温度、粘度等の条件)によってその状態を設定することができる。ただ、溶液及びガスの物理的な条件によって、超音波信号の減衰率とガス濃度の実測値とによる関係式が異なるので、通常溶解作業を行う条件下で上記の関係式を求めておくことが望ましい。
【0052】
また、ガス溶解器の溶解能力、溶解時における温度、圧力等によっても上記関係式が変わるので、これらの条件を実際に溶解液を製造する製造条件に応じて設定し、同条件に基づいて上記関係式を求めておくことが必要である。
【0053】
特に、溶解液を人工炭酸泉としたときには、人工炭酸泉の温水の温度として入浴に適した温度において、ガス溶解器に導入する人工炭酸泉又は温水の導入流量及び炭酸ガスの導入流量を所望の流量とした上で、上記関係式を求めておくことが望ましい。本発明のガス濃度測定方法は、前記ガス溶解液が人工炭酸泉である場合に好結果が得られる。ガスとして炭酸ガスを用いた、例えば人工炭酸泉の製造において、同製造中の人工炭酸泉におけるガス濃度を、ガス溶解器から排出される導出管における炭酸ガスの気泡の量から測定する。
【0054】
このため、ガス溶解器で製造された人工炭酸泉のガス濃度を導出管における気泡の量から効率的に、しかも人工炭酸泉の製造中にオンタイムで連続的に測定することができるようになる。また、超音波信号の減衰率が人工炭酸泉の炭酸ガスの飽和濃度付近から急激に減少する傾向を有効に利用して、人工炭酸泉として有効な炭酸ガス濃度である1000〜1400mg/l近傍での炭酸ガス濃度を検知又は測定することが容易となる。
【0055】
さらに、人工炭酸泉の入浴に適した温度において、ガス溶解器に導入する人工炭酸泉又は温水の導入流量及び炭酸ガスの導入流量を所望の一定流量とした上で、ガス溶解器から導出された人工炭酸泉中における炭酸ガスの気泡の量との人工炭酸泉のガス濃度との関係式を予め求めておくことによって、人工炭酸泉の製造中にインライン上でオンタイムに人工炭酸泉の炭酸ガス濃度を求めることができる。
【0056】
前記ガス濃度測定方法は、例えばガス流量調整手段を備えたガス供給源と、前記ガス供給源からのガス及び溶液が導入されるガス溶解器と、前記ガス溶解器に導入する前記溶液の流量を一定に制御する溶液流量調整手段と、前記ガス溶解器から溶解液を導出する導出管とを備えたガス溶解液製造装置にあっては、前記導出管に存在するガスの気泡の量を測定する測定装置と、前記溶液流量及びガス流量をそれぞれ一定とした条件下で予め測定して求めておいた気泡の量とガス濃度との関係式と前記測定装置からの測定値とに基づいて、前記溶解液のガス濃度を演算し、同演算結果に基づいて前記ガス流量調整手段及び/又は前記溶液流量調整手段を制御する制御装置とを備えることにより、確実に且つ正確に実施される。
【0057】
この場合、予め測定して求めておいた気泡の量とガス濃度との関係式を用いて、測定した導出管に存在するガスの気泡の量から溶解液のガス濃度を演算し、同演算した溶解液のガス濃度からガス流量調整手段及び/又は溶液流量調整手段を制御することによって、所望のガス濃度とした溶解液を製造することができる。
【0058】
ガス流量調整手段及び/又は溶液流量調整手段の制御としては、前記制御装置にて演算した溶解液のガス濃度が所望のガス濃度となったときに、ガス流量調整手段及び溶液流量調整手段からのガス溶解器への導入を停止する制御を行うことができる。また、ガス流量と溶液の流量を変更して同変更した流量における前記関係式を用いて、溶解液中のガス濃度を制御することもできる。
【0059】
この場合には、予め変更することができるガス流量と溶液の流量に対応した前記関係式を予め多数用意しておき、溶解液中の気泡の量から演算したガス濃度から、所望のガス濃度にするために最適なガス流量と溶液の流量を演算し、同演算結果に最も近い予め測定しておいた前記関係式を用いて、同関係式を測定したときのガス流量と溶液の流量となるように、ガス流量調整手段及び溶液流量調整手段を制御することで行うこともできる。
【0060】
前記測定装置が導出管を挟んで配した超音波発信子及び超音波受信子から構成されることが望ましい。このような構成を備えたガス溶解液製造装置を用いることによって、既述したとおりの作用効果を奏するようになることができる。
【0061】
さらに、上記ガス溶解器がスタティックミキサーから構成されていることが望ましい。スタティックミキサーは、その構造上、連続的に一定量の溶液および溶解ガスを導入することが容易なガス溶解器であり、比較的溶解効率も高いことから、これを溶解器として採用することは有利である。特に、人工炭酸泉の製造においてスタティックミキサーは、連続的に一定量の温水および炭酸ガスを導入することが容易なガス溶解器であり、しかも炭酸ガスの溶解効率も高いことから人工炭酸泉を製造するガス溶解器として有利である。
【0062】
また、前記ガス溶解器として、既述したような中空糸膜式の溶解器であることが好ましい。中空糸膜式溶解器は、溶液に溶解されるガス流量を安定的に供給することが容易なものであり、しかも溶解効率が高く、より広い濃度領域においてガスを溶液に溶解させることが可能となる。
【0063】
中空糸膜式の溶解器は、中空糸膜表面の接触部と中空糸膜の中空内の一方に溶液を他方にガスを流通させ、中空糸膜におけるガス交換膜としての作用を利用して溶液にガスを溶解させる。また、そのガス溶解時には、ガス圧及び溶液圧をそれぞれ中空糸膜式溶解器と接続したガス圧調整器及び溶液圧調整器を調整することによって飽和ガス濃度以上の溶解液が得られる圧力に調整することができるようにすることが好ましい。
【0064】
特に、人工炭酸泉を製造する上において、人工炭酸泉として必要な1000mg/l以上の濃度領域においても比較的溶解効率が高く、気泡量と炭酸ガス濃度の関係式が良好に保持されており、人工炭酸泉として有効な炭酸ガス濃度領域での炭酸ガス濃度の検出を精度良く行うことが可能となっている。
【0065】
上記導出管から排出される溶解液を貯留する貯留槽を更に備え、前記貯留槽中の液を溶液として前記溶液流量調整手段を介してガス溶解器に循環させることが好ましい。貯留槽中の溶解液を溶液流量調整手段を介して循環させながら溶解液にガス溶解器から所望量のガスを溶解させることができる。このため、貯留槽中における溶解液は、送液ポンプ等により貯留槽からガス溶解器に導入されガス溶解器において徐々にガスが添加されることによってそのガス濃度を上昇することになる。
【0066】
このとき、ガス溶解器を通過した溶解液中のガス濃度を測定することにより、貯留槽内における溶解液のガス濃度を目標のガス濃度となるまでガスの添加を継続することができ、所望ガス濃度の溶解液を製造することが可能となる。この時、予め使用するガス溶解器に対して、超音波信号の減衰率と前記溶解器から導出する溶液のガス濃度の代わりに溶解器に導入される溶液のガス濃度との関係式を求めておくことにより、貯留槽内の溶液のガス濃度を検出することが可能である。
【0067】
貯留槽に新たに溶液を追加した場合においても同様にガス溶解器に溶解液を循環させることで所望のガス濃度の溶解液を製造することができるので、常に貯留槽内に一定量でしかも所望ガス濃度の溶解液を保持することが可能となる。
【0068】
一方、蛇口等の供給口より直接溶液を貯留槽内に導入し、ガス溶解器を通過する溶液としての溶解液中のガス濃度を測定することで、ガス溶解器に導入する溶液の流量とガス供給流量の比率を変化させることにより目的とするガス濃度とした溶解液を連続的に製造することも可能である。
【0069】
特に、人工炭酸泉を製造する上において、人工炭酸泉をガス溶解器に循環させることで所望の炭酸ガス濃度とした人工炭酸泉を容易に、しかも所望量を連続的に炭酸ガス濃度を測定しながら製造することができる。
【発明の効果】
【0070】
本発明の炭酸泉製造装置は、炭酸ガス溶解器と、循環用ポンプとを備え、該循環用ポンプにより水槽中の水を、該炭酸ガス溶解器を介して循環させ、該炭酸ガス溶解器内に炭酸ガスを供給して、該水中に炭酸ガスを溶解させ、徐々に該水中の炭酸ガス濃度を上昇させることにより高濃度炭酸泉を製造する装置であり、本発明の装置を用いて、該炭酸ガスの供給速度を、製造時間前半に比べ後半で遅くすることにより、効率良く高濃度炭酸泉を得ることができる。
【0071】
また、本発明による炭酸泉の製造法によれば、炭酸ガスボンベから供給される炭酸ガスのガス流量を制御し、溶解器の中に流し、温水に溶解して製造することにより、常時一定の炭酸濃度を得る炭酸泉の製造法を提供することができる。
【0072】
本発明の炭酸ガス添加用の膜モジュールによれば、所定温度下での炭酸ガス透過量と水蒸気透過量とが所定の範囲に設定されているため、高温水を通したときにも好適に炭酸ガスを水中に添加することができる。特に膜を透過する水蒸気が少なく、ガス側でのドレインが溜まりにくいため、ドレイン抜きの回数及びドレイン抜き時に大気中に開放される炭酸ガスのことを少なくすることができ、長期間、高効率で炭酸ガス添加水を得ることができるため、低温から常温更には高温の水に炭酸ガスを添加する用途に広く展開することができる。
【0073】
更に膜モジュールの膜密度を2000〜7000m2 /m3 の範囲としているため、炭酸ガスの溶解効率を高く保ちながら、滞りなくドレインを排出することができる。また、水を予め30℃〜50℃に加熱した後、炭酸ガスを溶解させるときは、炭酸ガスをより効率的に溶解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に使用するのに好適な循環式装置の概略的な全体構成図である。
【図2】本発明に使用するのに好適な他の循環式装置の概略的な全体構成図である。
【図3】本発明に使用するのに好適なワンパス式装置の概略的な全体構成図である。
【図4】本発明の炭酸ガス添加用膜モジュールの一例を示す模式的断面図である。
【図5】本発明に使用する中空糸膜の一例を示す模式図である。
【図6】本発明における一実施例の人工炭酸泉製造装置の構成図である。
【図7】減衰率とガス濃度との関係図である。
【図8】信号処理のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、図面に基づいて本発明の好適な形態を具体的に説明する。
図1は本発明の好適な装置を概略的に示す全体構成図の一例で、循環型炭酸泉製造装置である。1は炭酸ガスボンベ、2は圧力ゲージ、3は圧力制御バルブ、4は流量計、5は流量制御バルブ、6は炭酸ガスの導入口、7は炭酸ガス溶解器、8は温水導入口、9は循環用吸引ポンプ、10は炭酸泉排出口、11は浴槽、12は温水である。
【0076】
図2は本発明の好適な他の装置例を概略的に示す全体構成図である。1は炭酸ガスボンベ、2は圧力ゲージ、3は圧力制御バルブ、4' は電磁弁、5は流量制御バルブ、6は炭酸ガスの導入口、7は炭酸ガス溶解器、8は温水導入口、9は循環用吸引ポンプ、10は炭酸泉排出口、11は浴槽、12は温水である。
【0077】
循環用吸引ポンプ9により浴槽11中の水を、炭酸ガス溶解器7を介して循環させ、炭酸ガス溶解器内に炭酸ガスを供給し、水(温水)中に炭酸ガスを溶解させ、徐々に水中の炭酸ガス濃度を上昇させることにより、常時一定濃度の高濃度な炭酸泉を製造する。
【0078】
図3は本発明の好適な更に他の装置例を概略的に示す全体構成図であり、ワンパス型炭酸泉製造装置である。1は炭酸ガスボンベ、2は圧力ゲージ、3は圧力制御バルブ、4は流量計、5は流量制御バルブ、6は炭酸ガスの導入口、7は炭酸ガス溶解器、8は温水導入口、10は炭酸泉排出口である。
【0079】
炭酸ガスは、炭酸ガスボンベ1から圧力制御バルブ3で一定圧に減圧され、流量制御バルブ5で、流量の制御が行われる。その後、温水の流れている炭酸ガス溶解器7に流され、温水に溶解される。
【0080】
これらの装置において、圧力制御バルブ3はなくてもよいが、安全性やその後に設ける流量制御バルブ5の制御のためには設ける方が好ましい。圧力制御バルブ3は特に限定するものでないが、ボンベに直接取り付ける一般的な減圧弁で構わない。
【0081】
膜にかかる炭酸ガスの圧力制御は不要であり、重要なのは膜に流れる炭酸ガス流量の制御である。炭酸ガス流量を一定にすると通気初期は膜にかかる圧力が高く、その後徐々に低下する。また使用する毎に膜が汚れて徐々に圧力が高くなるが、膜にかかる炭酸ガス圧力は、精度良く炭酸泉を製造することに影響しない。
【0082】
したがって、膜に流す炭酸ガスの流量制御が非常に重要となる。流量制御バルブ3としては、種々のニードルバルブ、電子式に使われているピエゾもしくはソレノイドアクチュエーターなどが挙げられ、特に限定するものではないが、ニードルバルブは安価で好ましい。また、絞りを有するオリフィスを用いることもできる。本発明においては、この流量制御バルブ5の機能が重要であり、特に、圧力や温度が変動しても、常時、流量を一定にする機能を有する質量流量式が好ましい。炭酸ガス溶解器に炭酸ガスを流すと圧力がかかるが、通気初期と安定時で圧力が異なるため、この機能を有するものの方が安定した流量制御を行うことができる。
【0083】
流量制御バルブ5は、つまみを固定しておけば、常に流量を一定に制御することができるが、流量計は目視できるし、何らかのトラブル時にも瞬時に判断できるので流量計を設ける方が好ましい。流量計は、フロート式などの体積流量計、電流温度差検出方式などの質量流量計などが挙げられ、特に限定するものではないが、質量流量計の方が圧力や温度に影響しにくい。
【0084】
炭酸ガス流量については、循環型の場合、循環ポンプの流量と炭酸ガスの流量比を2〜20、好ましくは、3〜10の範囲内にするとよい。この範囲内であると、溶解効率が高くなる。その範囲よりも小さいと、溶解効率が著しく低下し、逆に大きいと、溶解効率は良好であるが、循環ポンプの流量が多くなるか、炭酸ガスの流量が少なくなるため、消費電力が無駄に消費されるか、製造時間が長くなり、好ましくない。ワンパス型の場合は、単位膜面積当たりの炭酸ガス流量が一定の範囲となるように設定する。
【0085】
炭酸ガス溶解器として、膜モジュールを用いることができる。
炭酸ガス溶解器の膜形態としては、平膜、チューブラー膜、中空糸膜、スパイラル膜などが挙げられるが、装置のコンパクト化、取り扱い易さから考えると中空糸膜が最も好ましい。
【0086】
膜はガス透過性に優れるものであれば各種のものが用いられ、多孔質中空糸膜でも非多孔質中空糸膜でも良い。多孔質中空糸膜を用いる場合には、その表面の開口孔径が0.01から10μmのものが好ましい。最も好ましい中空糸膜は、薄膜状の非多孔質ガス透過層の両側を多孔質層で挟み込んだ三層構造の複合中空糸膜であり、その具体例として例えば、三菱レイヨン(株)製の三層複合中空糸膜(MHF−200TL、商品名)が挙げられる。
【0087】
ここで非多孔質ガス透過層(膜)とは、気体が膜基質への溶解・拡散機構により透過する膜であり、分子がクヌッセン流れのように気体がガス状で透過できる孔を実質的に含まないものであればいかなるものでも良い。非多孔質を用いることにより、任意の炭酸ガス流量でガスが炭酸泉中に気泡として放出されることなくガスを供給、溶解でき、効率良い溶解ができると共に任意の濃度に制御性に優れ、簡便に溶解できる。また、多孔質膜の場合には、温水が細孔を経てガス供給側に逆流するようなことが稀に生じるが、非多孔質膜ではこうした逆流、すなわち温水が細孔を経てガス供給側に逆流するようなこともない。三層構造の複合中空糸膜は、非多孔質層がガス透過性に優れたごく薄膜状のものとして形成され、これが多孔質により保護されて損傷を受け難く形成されているので好ましい。
【0088】
ガス透過性膜は、長期間の使用により膜が親水化し、水漏れが発生してしまう懸念のない、クヌッセン流れを有さない非多孔質膜であることが好ましい。
【0089】
非多孔質膜の膜厚は、既述したとおり、0.1μmから500μmの範囲であることが好ましい。膜厚が0.1μmより薄くなると、膜の製造や膜の取り扱いが困難となり、また膜厚が500μmより厚くなると、水蒸気透過量は低下するが炭酸ガス透過量も低下し、必要な性能を得るために非常に多くの膜面積が必要となるため好ましくない。
【0090】
さらに中空糸膜としての膜厚は10から150μmであることが好ましい。10μm未満では膜の強度が不十分となりやすく、また150μmを超えると炭酸ガスの透過速度が低下し溶解効率が低下しやすい。三層構造の複合中空糸膜の場合には、非多孔質膜の厚みは0.3から20μmが好ましい。0.3μm未満では、膜の劣化が生じやすく、膜が劣化するとリークが発生しやすくなる。また、20μmを超えると炭酸ガスの透過速度が下がるため、好ましくない。
【0091】
中空糸膜の膜素材としては、シリコーン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスルフォン系、セルロース系、ポリウレタン系等が好ましいものとして挙げられる。三層構造複合中空糸膜における非多孔質膜の材質としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリジメチルシロキサン、ポリエチルセルロース、ポリフェニレンオキサイド等が好ましいものとして挙げられ、特にポリウレタンは製膜性が良好で、溶出物が少ない。
【0092】
炭酸ガス溶解器に中空糸膜を使用する場合、炭酸ガスを中空糸膜の中空内側に供給し、外表面側に温水を供給して炭酸ガスを溶解させる方法と、中空糸膜の外表面側に炭酸ガスを供給して中空内側に温水を供給して炭酸ガスを溶解させる方法とがある。中空糸膜の外表面側に炭酸ガスを供給して中空内側に温水を供給して炭酸ガスを溶解させると、膜モジュールの形態にかかわらず温水中に炭酸ガスを高濃度で溶解させることができる。
【0093】
中空糸膜の内径は50から1000μmが好ましい。50μm未満では中空糸膜内を流れる炭酸ガスまたは温水の流路抵抗が大きくなり、炭酸ガスまたは温水の供給が困難になる。また、1000μmを超えると、溶解器のサイズが大きくなり、コンパクトにならない。
【0094】
本発明の方法で用いる炭酸ガス溶解器には、多孔質体からなる散気部が炭酸ガス溶解器内の底部に設置された散気手段を有するものでも良い。散気部に配される多孔質体の材質や形状はどのようなものであっても構わないが、その空孔率、すなわち多孔質体自体に存在する空隙の多孔質体全体に対する体積割合が5から70vol%であるものが好ましい。炭酸ガスの溶解効率をより高めるためには空孔率の低いほうが適しており、5から40vol%であることが好ましい。空孔率が70vol%を超える場合には、炭酸ガスの流量を制御することが困難になり、多孔質体から散気される炭酸ガスの気泡が巨大化し、溶解効率が低下しやすい。また、空孔率が5vol%未満であると炭酸ガスの供給量が低下し、炭酸ガスの溶解に長時間を要する傾向にある。
【0095】
図4は本発明の中空糸膜モジュールの一例を示す断面図であり、ハウジング20の内部に中空糸膜21が、その両端部の開口状態を保持したまま固定部材23により固定され、固定部材23で水が流れる側と炭酸ガスが供給される側とが液密に封止されている。
【0096】
ハウジング20には、中空糸膜21の中空部に連通する入口24及び出口25が設けられ、さらに中空糸膜21の外表面に連通する入口26及び出口27が設けられている。
【0097】
本発明に使用するガス透過性膜としては、25℃における炭酸ガス透過量が1×10-3〜1m3 /m2 ・hr・0.1MPaであるものを使用する。炭酸ガス透過量が1×10-33 /m2 ・hr・0.1MPaより低いと、炭酸ガスを水中に効率よく溶解させることができず、1m3 /m2 ・hr・0.1MPaよりも高いと、炭酸ガスが低圧で多く透過することから、小さな圧力変動でも透過量が大きく変化してしまうため好ましくない。
【0098】
更に、使用するガス透過性膜は、25℃における水蒸気透過量が1×103 g/m2 ・hr・0.1MPa以下である膜を使用する。水蒸気透過量が1×103 g/m2 ・hr・0.1MPaより高いと、頻繁にドレインを膜モジュール外に排出する必要が生じるため好ましくない。
【0099】
また、炭酸ガス透過量が1×10-2〜1×10-13 /m2 ・hr・0.1MPa、水蒸気透過量として1×102 g/m2 ・hr・0.1MPa以下とすると、さらに好ましい。
【0100】
ここで、水蒸気透過量及び炭酸ガス透過量とは、25℃の雰囲気温度中で、膜間に0.1MPaの分圧差圧をかけたときに、単位面積、単位時間当たりに膜を透過する水蒸気の重量及び炭酸ガスの体積を言う。
【0101】
従来、炭酸ガスを水に溶解させるために使用されていた膜は、炭酸ガス透過量が高いものは、同時に水蒸気透過量も高いものであり、このため、頻繁にドレインを膜モジュール外に排出しないと、炭酸ガスの溶解効率が維持できず、特に温水の場合はこの問題が顕著であった。
【0102】
膜の形状は特に制限は無く、必要に応じて、中空糸膜形状、平膜形状、その他の所望形状に成形することも可能であるが、モジュールに加工する際にモジュールの容積当たりの膜面積を大きくすることができる中空糸膜形状が好ましい。
【0103】
ガス透過性膜の素材の強度や剛性、膜厚により、非多孔質膜単独とすることも可能であるが、膜厚が薄い場合や膜表面の保護のために、例えば平膜形状であった場合には補強用の多孔体などをスペーサーとして使用することも可能であるし、例えば中空糸膜形状であった場合には内表面及び/或いは外表面に中空糸膜を支持する支持層を設け、多層構造の膜とすることも可能であり、適宜選択することができる。
【0104】
図5は本発明に使用する膜の好ましい形状の一例であり、非多孔質層21aの両面に多孔質層21bが配された三層構造を有する複合中空糸膜21である。このような複合中空糸膜21を用いると、ガス透過性非多孔質膜21aの両面が多孔質層21bにより保護されているため、加工時や使用時等の取り扱い時に直接非多孔質層に接触することがなく、膜の破損や汚染を防ぐことができ、更に機械的強度にも優れる中空糸膜とすることができる。
【0105】
ガス透過性非多孔質膜の素材の例としては、セグメント化ポリウレタンや、スチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィンとのポリマーブレンドからなる非多孔質膜を挙げることができる。更に具体的には、スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン重合体(S)とブタジエン重合体を水素添加した重合体(EB)からなる(S)-(EB)-(S) トリブロック共重合体、もしくは、スチレン重合体(S)とブタジエン重合体(BU)からなる(S)-(BU)-(S) トリブロック共重合体である非多孔質膜、或いはスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン単量体とブタジエン単量体からなるランダム共重合体を水素添加した重合体、もしくは、スチレン単量体とブタジエン単量体とのランダム共重合体等を挙げることができる。
【0106】
スチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィンの組成比は、両成分の合計100質量部を基準に、スチレン系熱可塑性エラストマー20〜95質量部、ポリオレフィン80〜5質量部であることが好ましく、スチレン系熱可塑性エラストマー40〜90質量部、ポリオレフィン60〜10質量部であることがより好ましい。
【0107】
複合中空糸膜を用いる場合、多孔質層を構成するポリマー素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(3−メチルブテン−1)、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー、ポリスチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等のポリマーを用いることができる。
【0108】
製膜方法は、その素材の成形性、賦形性等により適宜公知の製膜方法を取ることができる。例えば中空糸膜形状とする場合の一例をあげるならば、炭酸ガス添加膜の素材を中空口金から溶融状態で押し出し、冷却後巻き取るなど、従来より知られている方法に従い成形すればよい。
【0109】
炭酸ガスを水に溶解させるには、ガス透過性膜の一方の膜面に水を送液し、他方の膜面に炭酸ガスを加圧する。ここで、中空糸膜を使用する場合、中空糸膜の中空部に水を通し、中空糸膜の外側を炭酸ガスで加圧する方式(以下、内部灌流方式という)でもよいし、中空糸膜の外側に液体を通し、中空部を炭酸ガスで加圧する方式(以下、外部灌流方式という)でも、どちらとも採用できる。
【0110】
図4に示す構造の中空糸膜モジュール20を用いた場合、内部灌流方式では、入口24から中空糸膜21の中空部に水を供給し、さらに入口26から中空糸膜21の外部に、炭酸ガスを適度な圧力をかけて供給することにより、出口25から炭酸ガスの溶解した水を得ることができる。このとき、出口27は通常は閉鎖しておき、ドレイン排出口として適宜開放して、水蒸気として透過した水を排出する。
【0111】
外部灌流方式では、入口24から中空糸膜21の中空部に炭酸ガスを供給し、さらに入口26から中空糸膜21の外部に水を供給して、出口27から炭酸ガスの溶解した水を得る。このとき、出口25は通常は閉鎖しておき、ドレイン排出口として適宜開放して、水蒸気として透過した水を排出する。
【0112】
ドレイン排出口の位置は、中空糸膜モジュールの炭酸ガス側の空間に溜まったドレインを滞りなく排出できる配置であることが好ましく、モジュールを設置した際に下部となる位置に設けることが好ましい。
【0113】
ドレイン排出口には、炭酸ガス添加時には閉じることができる開閉弁を配置し、必要に応じ手動で開閉を行う他、電磁弁を設けて一定時間ごとに開閉を自動的に行ったり、ガス側の空間に水位センサー等を取り付け、一定量のドレインが溜まると自動で開くように制御することも可能である。
【0114】
ドレインの排出は、炭酸ガス供給を止めた後に、膜モジュールに残存する炭酸ガスの残圧を利用して水を排出させることができる。この際、あまり頻繁にドレイン排出を行うと、ドレインと共にモジュール外に排出され、水に溶解されること無く消費される炭酸ガスが多くなることから、水蒸気透過量の少ない膜を用い、極力ドレイン排出を行わないようにすることが経済的に重要である。
【0115】
特に外部灌流方式の場合には、中空糸膜内部にドレインが溜まり、内部灌流方式に比べドレインの溜まる体積が少ないため、透過水蒸気量が少なく、ドレインの発生が少ない膜を使用することは非常に効果的である。
【0116】
炭酸ガス添加用膜モジュール内の膜密度は、膜表面に効率的に炭酸ガス又は水を接触させ、かつ通水圧力損失を適正な範囲とするために、2000〜7000m2 /m3 の範囲に設定することが好ましい。
【0117】
また、内部灌流方式の場合は、膜密度をこの範囲とすることにより、炭酸ガスを効率的に溶解できることに加えて、ドレインを自重により滞りなくモジュール下部へ移動させ、短時間で排出させることができるという効果を有する。
膜密度は4000〜6000m2 /m3 の範囲とすることがより好ましい。
【0118】
ここで、膜モジュールの膜密度とは、膜モジュールの膜面積を膜モジュールの体積で割った値をいう。なお、膜モジュールの膜面積とは膜表面の合計面積であって、液体に接する側又はガス供給側のうち広い方をいう。なお、前述の非多孔質層の両面に多孔質層が配された三層構造を有する複合中空糸膜の場合は、多孔質層の外表面積の合計をいう。
【0119】
また膜モジュールの体積とは、図4のような、ハウジング20と一体化された形態の膜モジュールの場合は、吸引あるいは通液のための接続部を除いた中空糸膜21が配されてなる空間の体積をいい、一般的な10インチカートリッジのように、複数のスリットを有する円筒形のハウジング20に収めて使用する形態のものは、円筒形のハウジング内の中空糸膜21が配されてなる空間の体積をいう。
【0120】
炭酸ガス濃度は、「The effects of external CO2 application on human skin microcirculation investigated bylaser Doppler flowmetry. Int J Microcirc:Clin Exp 4:343- 350(1985) 」に、炭酸ガス濃度が300mg/l程度以上から血流量増加効果があることが記載されているように、300mg/l以上にすることが好ましい。
【0121】
一方、40℃における炭酸ガスの飽和溶解度は1300mg/l程度であり、この濃度以上に炭酸ガスを添加しようとしても溶解効率が低下し、未溶解のガスが水と共に出口から噴出するため好ましくない。
【0122】
炭酸ガス濃度の調整方法としては、炭酸ガスの供給圧力をレギュレーター等圧力調整装置で調節して変化させることにより容易に実施することができる。
【0123】
ガスを添加した後、水温を上昇させると、一旦溶解したガスが再気泡化し水中のガス濃度が低下するため好ましくない。このため水流路に流される水の温度は予め30℃から50℃に温度調節されてなることが好ましい。
【0124】
水温は30℃以上であれば、一般に全身浴、足浴或いはシャワー浴等皮膚に触れる際不快感を催すことがなく、また炭酸ガス添加後すぐに使用しない場合には50℃程度の温度で炭酸ガスを添加し使用時に冷めて適温になるよう適宜調節することも可能である。より好適な温度範囲は体温前後の35℃から40℃の範囲である。
【0125】
水蒸気透過量は、温度の上昇と共に増大することから、本発明の炭酸ガス添加用モジュールは、温水へ炭酸ガスを溶解させる際に、特に好適に用いることができる。
【0126】
また、多孔質体の表面における開口孔径は、散気する炭酸ガスの流量制御、ならびに微細な気泡を形成するために、0.01から10μmであることが好ましい。孔径が10μmを超えると、水中を上昇する気泡が大きくなりすぎ、炭酸ガスの溶解効率が低下しやすい。また、0.01μm未満の場合には、水中への散気量が低下するため、高濃度の炭酸泉を得にくくなる傾向にある。
【0127】
散気手段の散気部に配される多孔質体はその表面積が大きいほど気泡を多数発生させることができ、炭酸ガスと温水との接触が効率良く進み、また気泡が生成する前の溶解も生じるので溶解効率が高くなる。したがって、多孔質体の形状にはこだわらないが、表面積が大きいほど好ましい。表面積を大きくする手段としては、多孔質体を筒状にするとか、平板のような形状にして、その表面に凹凸をつけるなど種々の方法があるが、多孔質中空糸膜を用いることが好ましく、特に多孔質中空糸膜を多数本束ねたようなものを利用することが有効である。
【0128】
多孔質体の材質は、金属、セラミック、プラスチックなど様々なものが挙げられる。ただし、親水性の材質のものは、炭酸ガスの供給停止時に温水が表面の細孔から散気手段内へ浸入するので好ましくない。
【0129】
使用する温水の水温は特に限定しないが、好ましくは30から45℃で、35から40℃で用いると最も保温効果が上がるのでより好ましい。
【0130】
水中に溶解した炭酸ガスの濃度を測定する装置としては、幾つかのものが知られている。流通型の炭酸ガス濃度計は、炭酸ガス電極と炭酸ガス濃度指示計で構成されているが、電極の隔膜と内部液の交換が1から3ヶ月毎に必要となり、そのメンテナンスに手間がかかると共にやや高価であり、また、高濃度の測定には不利であるため、炭酸泉の製造装置に用いる測定装置としては実用性に欠ける。
【0131】
また、炭酸飲料の製造装置で使用されているような熱伝導度検出型の炭酸ガス濃度計は極めて高価であり、炭酸泉の濃度測定には不向きである。安価な方法としては、炭酸泉に使用する原水のアルカリ度とpHから算出する方法がある。炭酸泉中の炭酸ガス濃度と炭酸泉のpHは、一定の関係を有するが、原水のアルカリ度によって炭酸ガス濃度と炭酸泉のpHの関係は大きく変化する。このため、炭酸濃度をpHから求めるには、原水のアルカリ度を測定しなければならない。しかし、これを求めておけば、pHから容易に炭酸ガス濃度を測定することができる。一般にアルカリ度、pH、炭酸ガス濃度の関係は以下に示すティルマンの式で関係づけられる。
炭酸ガス濃度(mg/l)=10log[アルカリ度(CaCO3mg/1)]+6.31−PH
【0132】
原水のアルカリ度は、原水が水道水等の一定の水源から得られる水であれば、一般的には経時的にそれほど変動する値ではない。したがって、炭酸泉の製造装置を設置してこれを稼動させる前に、一度原水のアルカリ度を測定しておけば、以降その値を使用することができる。もちろん、炭酸泉製造装置の使用の都度、原水のアルカリ度を求めても良い。なお、ここでいうアルカリ度は、原水に含まれるOH- 、CO3 2-、HCO3 - 等の酸を消費する成分の含有量を表示する方法の一つであり、pH4.8アルカリ度(Mアルカリ度)の採用が好ましい。この方法では、pHを精度良く分析する必要があり、誤差を±0.05以内、より好ましくは±0.01以内に抑える必要がある。したがって、定期的に、好ましくは、使用する日ごとに校正するのが好ましい。
【0133】
炭酸ガス溶解器の別の様式としては、スタティックミキサーが挙げられる。スタティックミキサーは、流体を機械的に分離して炭酸ガスを分散させるもので、構造上、流体中に異物が混入している場合においても目詰まりすることもなく、長時間に使用することができる。スタティックミキサーの詳細については、例えば、萩原新吾監修、静止型混合器 基礎と応用、日刊工業新聞社発行(昭和56年9月30日初版第1刷発行)の第1章に詳しく説明されている。
【0134】
炭酸ガスの溶解効率は溶解器の性能によって異なるが、循環式の場合、各溶解器において、炭酸ガス溶解器に供給する水の供給速度、すなわち循環用ポンプの流量と、溶解器に供給する炭酸ガスの供給速度の比で決定され、炭酸ガス供給速度/水供給速度比が低いほど、溶解効率は向上する。水供給速度が一定の場合、炭酸ガス供給速度/水供給速度比を下げるには、炭酸ガス供給速度を下げる必要があるが、その場合、製造時間が長くなるという欠点がある。ただし、炭酸ガス供給速度/水供給速度比と溶解効率の関係は、溶解器に循環させる水中の炭酸ガス濃度により異なり、低濃度ほど、炭酸ガス供給速度/水供給速度比が低くても溶解効率は良好で、高濃度ほど、炭酸ガス供給速度/水供給速度比を上げないと溶解効率が低下する。従来の技術では、このようなことを考慮に入れず、製造開始時から終了時まで、全て炭酸ガスを同じ供給速度で行っているが、途中で炭酸ガス供給速度を変えることにより、良好な溶解効率で炭酸泉を製造することができるようになる。
【0135】
例えば、製造開始時の炭酸ガス供給速度を増やし、製造時間の10〜50%程度の時間が経過したら、炭酸ガスの供給速度を1/2〜1/10程度に低下させる。このような操作を行うことで、製造時間を延ばすことなく、溶解効率を向上させ、消費する炭酸ガス量を減少させることが可能となる。この方法は一例で、さらに多段で炭酸ガス供給速度を変えることもできる。
【0136】
このように、途中で炭酸ガス供給速度を変えるため、図2に示すごとく、炭酸ガス供給速度手段を複数かつ並列に設け、製造時間前半には、炭酸ガスの供給速度を速める目的で、流量制御バルブ5で炭酸ガス供給速度を速く設定してある方の電磁弁4' を開け、もう一方を閉じる。そして製造時間後半には、炭酸ガスの供給速度を遅くする目的で、逆に炭酸ガス供給速度を遅く設定してある方の電磁弁4' を開け、もう一方を閉じる。ここでは2個の流量制御バルブ5を用いたが、3個以上の流量制御バルブ5で制御することもできる。
【0137】
図示例では循環型で炭酸泉を製造するため、循環用ポンプ9が必要である。ポンプとしては自吸性能を有する容積式定量ポンプが好ましい。これを用いることで安定した循環と常時一定した循環水量を実現することができる。また、炭酸泉が高濃度になると気泡が発生しやすくなり、気泡リッチな状態になるが、このような場合でも、初期の運転時に呼び水をしなくても起動できる自吸性能を有するポンプを使用すれば、安定して送水することが可能である。
【0138】
連続的に人工炭酸泉を製造する場合、これら炭酸ガス濃度の測定手段と人工炭酸泉の製造方法を組み合わせることにより、所定の炭酸ガス濃度の人工炭酸泉を製造することができる。水中の炭酸ガス濃度を測定する方法としては、イオン電極方式による測定が一般的であるが応答速度が遅く、特に人工炭酸泉で必要とされる高濃度の溶液ではイオン電極が平衡状態になるのに長時間を要することやガス気泡がイオン電極に付着して正確な測定ができないため、インライン上で、しかもオンタイムでの測定は実施が困難であった。
【0139】
以下、本発明の代表的な実施形態である炭酸ガス濃度の測定装置をインラインに装備した炭酸泉の連続製造装置について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、この実施形態では、人工炭酸泉を例に挙げて説明するが、本発明のガス濃度測定方法及びガス溶解液製造装置としては、人工炭酸泉に限定されず、例えば、ガスの種類に関わらず、ガスを溶解して得られるあらゆる溶解液のガス濃度測定に対して適用できるものである。
【0140】
図6は、本発明における人工炭酸泉製造装置の構成図である。
同図に示すように、人工炭酸泉の貯留槽としての浴槽11内に注入した温水12(炭酸ガスが溶解した後には、人工炭酸泉となる。)を循環させるための導入管A及び戻し管Bとが浴槽内に連通している。戻し管Bの一部は、炭酸ガス溶解器7からの導出管15として構成されている。浴槽11内の温水12を吸引ポンプ9により導入管Aを通して汲み上げ、溶液流量調整手段14を介して所定流量の温水12をガス溶解器としての炭酸ガス溶解器7に導入する。
【0141】
炭酸ガスボンベ1から供給される炭酸ガスは、圧力制御バルブ3によりその圧力を調整され、圧力制御バルブ3から排出された炭酸ガスは、流量制御バルブ5により流量を所定流量に調整されて炭酸ガス溶解器7に導入される。圧力制御バルブ3の前後に設けた圧力計2によって検出した検出値は、制御装置16に入力され、同制御装置16からの制御信号により圧力制御バルブ3を制御して炭酸ガスの圧力を調整することができる。
【0142】
炭酸ガス溶解器7からの導出管15を通って排出される気泡を含んだ人工炭酸泉は、測定装置13により導出管15における炭酸ガスの気泡の量を測定され、人工炭酸泉排出口10から浴槽11内に戻される。
【0143】
測定装置13としては、導出管15を挟んで配した超音波発信子と超音波受信子を備えており、超音波発信子から発した超音波を超音波受信子により受信し、受信した超音波の強さを測定している。測定装置13により測定された測定値は、制御装置16に入力される。
【0144】
制御装置16では、炭酸ガス溶解器7に導入する温水12の流量及び炭酸ガスの導入流量に対応して、予め測定しておいた炭酸ガスの気泡の量(超音波受信子で受信した超音波の減衰率=(超音波受信子によって受信した超音波信号の強さ)/(超音波発信子から発した超音波信号の強さ):%として測定)と炭酸ガス溶解器7から排出した人工炭酸泉の炭酸ガス濃度の実測値との関係式に基づいて、測定装置13からの測定値によって、導出管15中に排出されている人工炭酸泉の炭酸ガス濃度を演算する。
【0145】
制御装置16による人工炭酸泉の炭酸ガス濃度に応じて、溶液流量調整手段14、循環用吸引ポンプ9、流量制御ブル部5及び圧力制御バルブ3が制御され、炭酸ガス溶解器7から排出される人工炭酸泉の炭酸ガス濃度を調整する。同人工炭酸泉の炭酸ガス濃度が所望の炭酸ガス濃度となったときには、循環用吸引ポンプ9及び圧力制御バルブ3を制御して炭酸ガス溶解器7への温水12及び炭酸ガスの導入を終了する。
【0146】
炭酸ガスボンベ1を用いる代わりに、燃焼装置の燃焼で得られた燃焼ガス中の炭酸ガスを濃縮し、濃縮した炭酸ガスを使用することもできる。この場合、濃縮した炭酸ガスの濃度を一定にしておくことが必要である。
【0147】
また、圧力制御バルブ3としては、圧力制御弁等を使用することができる。流量制御バルブ5及び溶液流量調整手段14としては、流量調整弁等を使用することができる。また、炭酸ガス溶解器7としては、公知のガス溶解器を使用することができるが、スタティックミキサーや中空糸膜式溶解器を用いることによって、溶解器の溶解効率を高めることができる。導入管Aの循環用吸引ポンプ9の下流側に圧力制御弁等の圧力制御バルブ及び同圧力制御バルブの前後に圧力計を設け、同圧力計からの検出値に基づいて制御装置16により前記圧力制御バルブを制御することもできる。
【0148】
浴槽11に対しては、別途図示せぬ蛇口等を設けて温水を新たに注入できるようにすることもでき、更には、温水に対する燃焼装置を設けて同燃焼装置にて温水を温めることもできる。図6では、温水12を炭酸ガス溶解器7に循環させる構成を示しているが、図示せぬ温水供給源から温水を炭酸ガス溶解器7に供給して人工炭酸泉を製造することもできる。このとき炭酸ガス溶解器を多段に直列に配置して人工炭酸泉を製造することもできる。これらの場合、炭酸ガス溶解器からの導出管に測定装置を配することで、それぞれの炭酸ガス溶解器から排出された人工炭酸泉の炭酸ガス濃度を測定することができる。
【0149】
図7は、測定装置13に内蔵された超音波受発信子によって受信した超音波信号の減衰率と導入管Aを流れる人工炭酸泉の炭酸ガス濃度の実測値との関係式を示した図である。同関係式は、炭酸ガス溶解器7に導入される炭酸ガスの流量及び温水の流量をそれぞれ一定とした条件下で求めたものである。なお、炭酸ガス溶解器7に導入する炭酸ガスのガス圧、温水の圧力、炭酸ガス溶解器の溶解能力及び炭酸ガス溶解器7内における溶解時の温度、圧力等によって溶解条件が変化するので予め炭酸ガス溶解器7で人工炭酸泉を製造する条件を設定しておいて、その設定した条件下で上記関係式を求めておくことが望ましい。
【0150】
なお、本発明は、人工炭酸泉の製造以外にも適用できるものであり、その場合には、溶解液を製造する製造条件に応じて、予め同製造条件下で測定することで気泡の量とガス濃度との関係式を求めておくことが必要である。
【0151】
図7から、炭酸ガス溶解器へ導入される人工炭酸泉の炭酸ガス濃度が上昇する(溶解器における溶解条件は一定であるから炭酸ガス溶解器から導出される人工炭酸泉の炭酸ガス濃度も連動して上昇する)のに伴い、同人工炭酸泉中の未溶解ガスの混入量(即ち、気泡の量)が増加し、超音波発信子から発された超音波信号が減衰して超音波受信子で受信されていることが分かる。ここで改めて再度説明するが、人工炭酸泉中に未溶解ガスを混入させるためには、炭酸ガス溶解器7に導入する炭酸ガスの流量が、炭酸ガス溶解器7で最大溶解量以上導入することが必要である。
【0152】
測定装置13に内蔵された超音波受発信子による受信信号は、図8に示す信号処理がなされる。即ち、超音波受信子で受信した信号を増幅し、平滑化した後所定時間の信号値を積分した後、積分して求めた値(電圧値として扱っている)と予め設定された電圧値と比較する。この比較結果によって、超音波信号の減衰率が設定値以下になったこと、つまり人工炭酸泉の炭酸ガス濃度が所望の炭酸ガス濃度以上になったことを検出することができる。
【0153】
このようにして、温水中の炭酸ガス濃度は循環時間の経過とともに上昇するが、循環用吸引ポンプ9の運転を測定装置13からの検出信号によってON−OFF制御することによって、常に所望の炭酸ガス濃度とした人工炭酸泉を得ることができる。また、蛇口等の供給装置より直接温水を浴槽内に注入し、測定装置13の検出信号によって人工炭酸泉の温水量と炭酸ガス供給量の比率を変化させることにより所望とする炭酸ガス濃度の人工炭酸泉を製造することも可能である。
【実施例】
【0154】
以下、上述のごとき多様な態様を備えた本発明を実施例により更に具体的に説明する。 先ず、本発明装置に適用される炭酸ガス添加用膜モジュールの実施例について具体的に説明する。
【0155】
(実験NO.1)
スチレン系熱可塑性エラストマーとポリプロピレンからなるポリマーブレンド(大日本プラスチック(株)製、商品名MK樹脂MK−2F(Tg=−35℃、組成比=スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン重合体(S)とブタジエン重合体を水素添加した重合体(EB)からなる(S)-(EB)-(S) トリブロック共重合体50質量部、ポリオレフィンとしてアタクティックポリプロピレン50質量部))を非多孔質層の素材とし、ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ニポロンハード5110)を多孔質層の素材として、外径300μm、内径180μm、非多孔質層の厚みが2μmの、図5に示す三層構造の複合中空糸膜を製造した。
【0156】
この複合中空糸膜の炭酸ガス透過量は3.3×10-23 /m2 ・hr・0.1MPaで、水蒸気透過量は22g/m2 ・hr・0.1MPaであった。
【0157】
得られた複合中空糸膜を用いて、図4に示す炭酸ガス添加用中空糸膜モジュールを、中空糸膜面積が0.71m2 、体積が1.6×10-43 、膜密度が4438m2 /m3 となるように作製し、中空糸膜の外表面に、炭酸ガス流量が1.25l/minになるように0.36MPaで加圧供給しながら、中空糸膜の中空部に40℃の水を5l/minの流量で3分間供給し、その後炭酸ガス、水の供給を57分間停止する1サイクル1時間の間欠運転を、1000時間連続して行った。
【0158】
この間、中空糸膜の有効糸長の20%が水没した時に、57分間の停止時間の最初の1分間ドレイン排出口を開放し、残存する炭酸ガス圧を利用してドレインの排出を行った。なお、1分間の開放時間内にモジュール内のすべてのドレインを排出することができた。
このとき炭酸ガス供給側に透過したドレインの時間あたりの発生量、ドレイン抜きの回数及び炭酸ガスの使用量を表1に示す。
【0159】
(実験NO.2)
熱可塑性セグメント化ポリウレタン(ThermedicsInc. 製、商品名Tecoflex EG80A)を非多孔質層の素材とし、ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ニポロンハード5110)を多孔質層の素材として、外径300μm、内径180μm、非多孔質層の厚みが15μmの、図5に示す三層構造の複合中空糸膜を製造した。
【0160】
得られた複合中空糸膜の炭酸ガス透過量は1.6×10-23 /m2 ・hr・0.1MPaで、水蒸気透過量は4.23×102 g/m2 ・hr・0.1MPaであった。
【0161】
この膜を用いて、実験NO.1と同様の炭酸ガス添加用中空糸膜モジュールを作成し、実験NO.1と同じ運転を行った。
このとき炭酸ガス供給側に透過したドレインの時間あたりの発生量、ドレイン抜きの回数及び炭酸ガスの使用量を表1に示す。
【0162】
(実験NO.3)
非多孔質層の厚みを1μmとした以外は、実験NO.2と同様に三層構造の複合中空糸膜を製造した。
得られた複合中空糸膜の炭酸ガス透過量は2.6×10-13 /m2 ・hr・0.1MPaで、水蒸気透過量は6.8×103 g/m2 ・hr・0.1MPaであった。
【0163】
この膜を用いて、実験NO.1と同様の炭酸ガス添加用中空糸膜モジュールを作成し、実験NO.1と同じ運転を行った。
このとき炭酸ガス供給側に透過したドレインの時間あたりの発生量、ドレイン抜きの回数及び炭酸ガスの使用量を表1に示す。
【0164】
【表1】

【0165】
表1に示すように、本発明の炭酸ガス添加用の膜モジュールを用いることにより、炭酸ガスの消費量を少なくすることができた。
本発明による炭酸ガス添加用の膜モジュールによれば、25℃における炭酸ガス透過量が1×10-3〜1m3 /m2 ・hr・0.1MPaであり、且つ25℃における水蒸気透過量が1×103 g/m2 ・hr・0.1MPa以下である膜を使用するため、高温の水を通水した時でも好適に炭酸ガスを水中に添加することができる。且つ膜を透過する水蒸気が少なく、ガス側でのドレインが溜まりにくいため、ドレイン抜きの回数及びドレイン抜き時に大気中に開放される炭酸ガスの量を少なくすることができ、長期間、高効率で炭酸ガス添加水を得ることができるため、低温から常温更には高温の水に炭酸ガスを添加する用途に広く展開することができる。
【0166】
更に炭酸ガス添加モジュールの膜密度を2000〜7000m2 /m3 の範囲としているため、炭酸ガスの溶解効率を高く保ちながら、滞りなくドレインを排出することができる。
【0167】
また、水を予め30℃〜50℃に加熱した後、炭酸ガスを溶解させることにより、炭酸ガスを効率的に溶解させることができる。
次に、本発明による炭酸泉製造装置の代表的な実施例について具体的に説明する。ここで、炭酸泉中の炭酸濃度は、アルカリ度、pHを測定し、ティルマンの式より求めた。
【0168】
(実験NO.4)
図1に示した循環式装置で炭酸泉を製造した。圧力制御バルブにより炭酸ガス圧力を0.4MPaに制御した。流量計には山武ハネウエル(株)製電子式質量流量計(CMS0020)、流量制御バルブにはコフロック(株)(KOFLOK)製質量流量制御バルブ(MODEL 2203)を用い、炭酸ガス流量を1.0l/min(20℃換算)に制御した。溶解器には膜面積が0.6m2 である三菱レイヨン(株)製三層複合中空糸膜で作られた中空糸モジュール未使用品を用いた。水槽に水温40℃の温水を10l入れ、吸引ポンプで毎分5lの温水を水槽に戻した。
【0169】
循環10分後の結果を表2に示す。なお、表中の1回目とは、実験当日最初に採取した結果、2回目とは1回目の後に採取した結果である。いずれも同じ炭酸ガス濃度であった。
【0170】
(実験NO.5)
実験NO.4の流量制御バルブを抜き、圧力で炭酸ガス供給量を制御した。圧力は0.15MPaに制御した。表2に結果を示す。炭酸ガス濃度は1回目で低く、2回目で高かった。
【0171】
【表2】

【0172】
(実験NO.6)
循環用ポンプの流量を毎分1l、すなわち、循環用ポンプの流量と炭酸ガスの流量の比を1にした以外は、実験NO.4と同様な方法で行った。1回目の炭酸ガス濃度は700mg/lと低下し、溶解効率が著しく低下した。
【0173】
(実験NO.7)
図3に示したワンパス式装置で炭酸泉を製造した。圧力制御バルブにより炭酸ガス圧力を0.4MPaに制御した。流量計には山武ハネウエル(株)製電子式マスフローメーターCMS0020、流量制御バルブにはコフロック(株)製フローコントローラーMODEL 2203を用い、炭酸ガス流量を5.0l/min(25℃換算)に制御した。
【0174】
溶解器には膜面積が2.4m2 である三菱レイヨン(株) 製三層複合中空糸膜で作られた中空糸モジュールを用いた。水温は40℃で、溶解器に5l/minで流した。表3に結果を示す。通水後2分位から炭酸ガス濃度が安定した。
【0175】
(実験NO.8)
実験NO.7の流量制御バルブを抜き、圧力で炭酸ガス供給量を制御した。圧力は0.28MPaに制御した。表3に結果を示す。実施例4に比べ通水初期の炭酸ガス濃度は不安定で、通水後10分経過しても炭酸ガス濃度が安定しなかった。
【0176】
【表3】

【0177】
(実験NO.9)
500時間使用したモジュールで実験NO.4と同様な操作を行い、未使用品を使用した実験NO.4の結果と比較した。結果を表4に示す。未使用品と同等の性能が得られた。
【0178】
(実験NO.10)
500時間使用したモジュールで実験NO.5と同様な操作を行い、未使用品を使用した実験NO.5の結果と比較した。結果を表4に示す。未使用品より炭酸ガス濃度が低下した。
【0179】
【表4】

【0180】
次に、炭酸ガスの溶解効率に関する実施例を挙げて具体的に説明する。ここでも、炭酸泉中の炭酸濃度は、アルカリ度とpHを測定し、ティルマンの式より求めた。結果をまとめて表5に示した。なお、表中の溶解効率は、「溶解効率(%)=炭酸泉中の炭酸ガス溶解量/使用した炭酸ガス量×100」より求めた。
【0181】
(実験NO.11)
図2に示した循環式装置で炭酸泉を製造した。圧力制御バルブにより炭酸ガス圧力を0.4MPaに制御した。流量制御バルブにはコフロック(株)製質量流量制御バルブ(MODEL 2203)を2個用い、一方の炭酸ガス流量を2.0l/min(20℃換算)、もう一方を0.5l/min(20℃換算)流れるように調整したものを準備した。溶解器には、膜面積が0.6m2 である上述の三菱レイヨン(株)製三層複合中空糸膜で作られた中空糸モジュールを用いた。水槽に水温40℃の温水を10l入れ、循環用ポンプで毎分5lの温水を水槽に戻した。
【0182】
製造開始時には2.0l/min流れるように調整した流量制御バルブに炭酸ガスが流れるように電磁弁を開にし、もう一方を閉にした。2分後から10分後の終了時までは、逆に0.5l/min流れるように調整した流量制御バルブに炭酸ガスが流れるように電磁弁を開にし、もう一方を閉にした。結果を表5に示す。
【0183】
(実験NO.12)
炭酸ガス流量を、製造中1.0l/min(20℃換算)一定に流したにした以外は実験NO.11と同様な方法で行った。結果を表5に示す。実験No.11に比べ溶解効率が低かった。
【0184】
(実験NO.13)
炭酸ガス流量を、製造中0.5l/min(20℃換算)一定に流した以外は実験NO.11と同様な方法で行った。結果を表5に示す。溶解効率は高いが、実験NO.11に比べて炭酸ガス濃度が低くなった。
【0185】
(実験NO.14)
炭酸ガス流量を、製造中2.0l/min(20℃換算)一定に流した以外は実験NO.11と同様な方法で行った。結果を表5に示す。短時間で高濃度炭酸泉を得ることはできるが、溶解効率が著しく悪化した。
【0186】
【表5】

【0187】
最後に、図6に示した人口炭酸泉の製造装置を用いた実施例について具体的に説明する。
【0188】
(実験NO.15)
40℃の温水10lおよび20lをそれぞれ浴槽に入れ、循環ポンプ(5l/min)、膜面積が0.6m2 である上述の三菱レイヨン(株)製三層複合中空糸膜で作られた中空糸モジュールおよび炭酸ガスボンベ、炭酸ガス流量制御バルブ、超音波による気泡を検出する測定装置を図6に示す順序にて連結し、炭酸ガスの流量を1.5l/min、測定装置による受信信号の最大値(水循環時)を4.8mV、検出信号発信の閾値を3.1mV(図7より、1100mg/lとなる減衰率65%から算出)に設定し、循環ポンプを運転した。検出信号発信時点で運転を停止して、作製された人工炭酸泉の炭酸ガス濃度をイオン電極式炭酸ガス測定装置(東亜電波社製:IM40)により測定した。
結果は、表6に示す通り目標とする炭酸ガス濃度1100mg/lの人工炭酸泉が得られている。
【0189】
【表6】

【符号の説明】
【0190】
1 炭酸ガスボンベ
2 圧力ゲージ
3 圧力制御バルブ
4 流量計
4' 電磁弁
5 流量制御バルブ
6 炭酸ガスの導入口
7 炭酸ガス溶解器
8 温水導入口
9 循環用吸引ポンプ
10 炭酸泉排出口
11 浴槽
12 温水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガス供給口と、
該炭酸ガス供給口と連通する炭酸ガス溶解器と、
水槽と、
該水槽中の水を炭酸ガス溶解器内に送水するポンプと、
炭酸ガスの供給速度を炭酸ガス溶解中に変更させる炭酸ガス供給制御手段と、
炭酸ガスの供給路に複数かつ並列に配され、炭酸ガスの供給速度を異なるように設定できる炭酸ガス供給速度制御手段とを備え、
炭酸ガス供給速度制御手段が該炭酸ガス供給速度のガス速度切替手段を備えてなる、
ことを特徴とする炭酸泉用ガス溶解液製造装置。
【請求項2】
前記炭酸ガス溶解器がスタティックミキサーである請求項1記載の炭酸泉用ガス溶解液製造装置。
【請求項3】
前記ガス速度切替手段が電磁弁である請求項1記載のガス溶解液製造装置。
【請求項4】
前記炭酸ガスの供給制御手段が、流量制御バルブを含んでなる請求項1〜3のいずれかに記載の炭酸泉用ガス溶解液製造装置。
【請求項5】
前記流量制御バルブが質量流量式流量制御バルブである請求項4記載の炭酸泉用ガス溶解液製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−285651(P2009−285651A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125731(P2009−125731)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【分割の表示】特願2003−524707(P2003−524707)の分割
【原出願日】平成14年8月27日(2002.8.27)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】