説明

点字ラベル作成装置

【課題】サーマルヘッドを介して感熱性粘着ラベルシートの感熱性粘着剤層上に点字記号に対応して粘着力発現領域を選択的に形成するとともに、粘着力発現領域に粒状物を圧着するだけの簡単な構成で点字ラベルを作成することができ、全体にコストの低い点字ラベル作成装置を提供する。
【解決手段】点字記号データに基づきサーマルヘッド9における各発熱素子10を選択的に発熱駆動することにより感熱性粘着ラベルシート1の感熱性粘着剤層6に対して点字記号に対応する粘着力発現領域21が形成され、押圧ローラ15及び圧着ローラ18、18を介して粘着力発現領域21に対して点字ピース12が付着・圧着埋設された後、カッタ20により感熱性ラベルシート1を所望の長さでカットするように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドを介して感熱性粘着ラベルシートの感熱性粘着剤層上に点字記号に対応して粘着力発現領域を選択的に形成するとともに、粘着力発現領域に粒状物を圧着することにより点字ラベルを作成する点字ラベル作成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の点字シート作成装置が提案されており、例えば、特開平10−138639号公報には、熱転写シートに形成された熱発泡剤と樹脂バインダーからなる熱発砲層をサーマルヘッドにより加熱して被転写シートに転写し、被転写シートに転写された熱発砲層をヒートロールにより発砲させることにより点字シートを作成する盛り上げ画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−138639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の点字シート作成装置では、被転写シートに転写された熱発砲層を発砲させるためにヒートロールを使用しており、かかるヒートロールにより100℃以上に加熱する必要がある。これより、被転写シートには耐熱性が要求され、かかる耐熱性を有する被転写シートは高価なものである。また、ヒートロール自体も高価である。このように、従来の点字シート作成装置に使用される被転写シート、ヒートロール等が高価であることから、点字シート作成装置のコストアップを招来する。
【0005】
本発明は前記課題を解消するためになされたものであり、サーマルヘッドを介して感熱性粘着ラベルシートの感熱性粘着剤層上に点字記号に対応して粘着力発現領域を選択的に形成するとともに、粘着力発現領域に粒状物を圧着するだけの簡単な構成で点字ラベルを作成することができ、全体にコストの低い点字ラベル作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため請求項1に係る点字ラベル作成装置は、基材シートの一面に、非加熱状態では粘着力を発現せず、加熱状態で粘着力を発現する感熱性粘着剤層が形成された長尺状の感熱性粘着ラベルシートと、前記感熱性粘着ラベルシートを搬送する搬送部材と、前記搬送部材に対向配置されるとともに搬送部材に対して選択的に接離可能な複数の発熱素子を有し、点字記号データに基づき各発熱素子を選択的に発熱駆動することにより前記感熱性粘着ラベルシートの感熱性粘着剤層に対して点字記号に対応する粘着力発現領域を形成するサーマルヘッドと、前記感熱性粘着ラベルシートの粘着力発現領域に対して、その粘着力により粒状物を付着させる付着手段と、前記付着手段を介して粘着力発現領域に付着された粒状物を圧着して感熱性粘着剤層の内方へ埋設する圧着手段と、前記圧着手段を経て搬送される感熱性ラベルシートを所望の長さでカットするカット手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る点字ラベル作成装置は、請求項1の点字ラベル作成装置において、前記付着手段と圧着手段の間に配設され、前記粘着力発現領域以外で感熱性粘着剤層に付着された粒状物を除去する除去手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る点字ラベル作成装置は、請求項1又は2の点字ラベル作成装置において、前記基材と感熱性粘着剤層との間に形成された粘着剤層を有し、前記粒状物は、前記圧着手段を介して感熱性粘着剤層から前記粘着剤層の内方に埋設されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る点字ラベル作成装置は、前記粒状物は球状に形成されるとともに、粒状物の粒径は1.3mm乃至1.7mmの範囲にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る点字ラベル作成装置では、点字記号データに基づきサーマルヘッドにおける各発熱素子を選択的に発熱駆動することにより感熱性粘着ラベルシートの感熱性粘着剤層に対して点字記号に対応する粘着力発現領域が形成され、付着手段及び圧着手段を介して粘着力発現領域に対して粒状物が付着・圧着埋設された後、カット手段により感熱性ラベルシートを所望の長さでカットするように構成されているので、サーマルヘッドを介して多種多様の粘着力発現領域をオンデマンドで形成することが可能であるとともに、高価な加熱手段を必要とすることなく構成を簡単化してコストの低減を図ることが可能となる。
【0011】
請求項2に係る点字ラベル作成装置では、付着手段と圧着手段の間に除去手段が配設され、かかる除去手段を介して粘着力発現領域以外で感熱性粘着剤層に付着された粒状物を除去するように構成されているので、感熱性粘着ラベルシートの感熱性粘着剤層に形成され点字記号に対応する粘着力発現領域のみに粒状物を付着・圧着埋設することが可能となり、明確な触感を得られる点字記号を有する点字ラベルを作成することが可能となる。
【0012】
請求項3に係る点字ラベル作成装置では、基材と感熱性粘着剤層との間に粘着層剤が形成されており、粒状物は、圧着手段を介して感熱性粘着剤層から粘着剤層の内方に埋設されるので、粘着力発現領域に対して付着・圧着埋設された粒状物は、点字ラベル上で強固に保持されることとなり、これより粒状物が点字ラベルから剥離することなく長期に渡って点字記号の明確な触感を維持することが可能となる。
【0013】
尚、粒状物は、請求項4に記載されているように、球状に形成されるとともに、粒状物の粒径は1.3mm乃至1.7mmの範囲にあることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】感熱性粘着シートをその長尺方向と直角方向に切断して模式的に示す感熱性粘着シートの説明図である。
【図2】点字ラベル作成装置を模式的に示す説明図である。
【図3】樹脂粒状物が感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層及び第2粘着剤層の内方に圧着・埋設されていく状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る点字ラベル作成装置について本発明を具体化した実施形態に基づき詳細に説明する。
先ず、本実施形態の点字ラベル作成装置に使用する長尺状の感熱性粘着ラベルシートの構成について図1に基づき説明する。
図1において、感熱性粘着ラベルシート1は、基材シート2の一面(図1中上面)に塗布形成された第1粘着剤層3、第1粘着剤層3を介して貼付された剥離紙4を有しており、また、基材シート2の他面(図1中下面)に塗布形成された第2粘着剤層5、第2粘着剤層5に塗布形成された感熱性粘着剤層6を有している。
【0016】
ここに、基材シート2としては、樹脂フィルム、紙シート等が使用される。また、第1粘着剤層3は、後述するように、感熱性粘着ラベルシート1より形成される点字ラベルから剥離紙4を剥がして各種の対象物に貼付するためのものであり、一般に汎用されている粘着剤を使用することができる。
また、第2粘着剤層5は、後述するように、樹脂粒状物を点字ラベルに強固に保持するための粘着剤層であり、比較的粘着力の大きい粘着剤が使用される。例えば、溶剤型アクリル系粘着剤、溶剤型ウレタン系粘着剤、エマルジョン型酢酸ビニル系粘着剤等の粘着剤を使用することができる。
更に、感熱性粘着剤層6は、非加熱状態では粘着力を発現せず、加熱状態で粘着力を発現する特性を有する熱活性型の粘着剤層であり、かかる感熱性粘着剤層6の形成は、特許第3431768号等に記載されている感熱粘着剤を基材シート2の第2粘着剤層5上に塗布形成して行われる。加熱された際に感熱性粘着剤層6に発現する粘着力としては、少なくとも3N/25mmあればよい。
【0017】
前記構成を有する感熱性粘着ラベルシート1は、その剥離紙4側を内側にしてロール状に巻回されており、後述するように、かかるロールから連続的に点字ラベル作成装置に供給される。
【0018】
次に、感熱性粘着ラベルシート1を使用して点字ラベルを作成する点字ラベル作成装置について図2に基づき説明する。
図2において、点字ラベル作成装置7は、感熱性粘着ラベルシート1を搬送するプラテンローラ8及びサーマルヘッド9を備えている。サーマルヘッド9は、プラテンローラ8に対向配置されるとともにプラテンローラ8に対して選択的に接離可能であり、複数の発熱素子10を有している。サーマルヘッド9は、点字ラベル作成装置1の制御装置(CPU)(図示せず)から送信される点字記号データに基づき各発熱素子10を選択的に発熱駆動することにより感熱性粘着ラベルシート1の感熱性粘着剤層6に対して点字記号に対応する粘着力発現領域(後述する)を形成する。
【0019】
プラテンローラ8の下流側には、一対の搬送ローラ11、11が配設され、かかる搬送ローラ11、11はプラテンローラ8から搬送される感熱性粘着ラベルシート1を更に下流側に搬送する。
搬送ローラ11、11に隣接して、樹脂粒状物からなる点字ピース12を収納する点字ピース収納ボックス13が配設されている。点字ピース収納ボックス13の上方には、バネ14を介して下方に弾性的に付勢された押圧ローラ15が配置されている。かかる押圧ローラ15は、剥離紙4側から感熱性粘着ラベルシート1を押下し、サーマルヘッド9の発熱素子10を介して感熱性粘着ラベルシート1の感熱性粘着剤層6に形成された粘着力発現領域を点字ピース12に対して押圧して、粘着力発現領域にて発現した粘着力により点字ピース12を付着させるものである。
尚、点字ピース12は、球状に形成されており、その粒径は1.3mm乃至1.7mmの範囲にある。粒径が1.3mmよりも小さい場合には明確な触感を有する点字を形成することは困難となり、また、粒径が1.7mmよりも大きい場合には粘着力発現領域に残存する点字ピース12の数が少なくなってラフな触感の点字しか形成することができなくなる。
【0020】
点字ピース収納ボックス13の下流側上方位置には、断面が四角形状のカム部材16が配設されている。このカム部材16は、剥離紙4側から感熱性粘着ラベルシート1に当接し、時計方向に回転することにより感熱性粘着ラベルシート1に振動を付加して粘着力発現領域以外で感熱性粘着剤層6に付着している点字ピース12を篩い落とすものである。これにより、粘着力発現領域以外で感熱性粘着剤層に付着された点字ピース12が除去され、感熱性粘着ラベルシート1の感熱性粘着剤層6に形成され点字記号に対応する粘着力発現領域のみに点字ピース12を付着させることが可能となる。
尚、カム部材16を介して篩い落とされた点字ピース12は、点字ピース収納ボックス13に付設された点字ピース回収ボックス17に回収される。
【0021】
カム部材16の下流側には、一対の圧着ローラ18、18が配設されており、この圧着ローラ18、18は、前記のように粘着力発現領域に付着された点字ピース12を上下で圧着し、点字ピース12を感熱性粘着剤層6から更に第2粘着剤層5の内方に埋設する。
【0022】
一対の圧着ローラ18、18の下流側には、一対の切断刃19、19を有するカッタ20が配設されている。かかるカッタ20は、前記のように搬送されてくる感熱性粘着ラベルシート1を所望の長さでカットする。これにより、所望の点字ラベルが作成されるものである。
【0023】
続いて、前記のように構成された点字ラベル作成装置7により印字ラベルを作成していく際に、感熱性粘着ラベルシート1に対して点字ピース12が埋設されていく様子について図2及び図3に基づき説明する。
【0024】
感熱性粘着ラベルシート1がサーマルヘッド9に到達されるまでは、感熱性粘着ラベルシート1は、図1に示す構成を有している。そして、サーマルヘッド9に到達して各発熱素子10が選択的に発熱駆動されると、感熱性粘着ラベルシート1の感熱性粘着剤層6には、点字記号データに基づき、点字記号に対応して粘着力発現領域21が形成される。この状態が図3の左側に示されている。
【0025】
感熱性粘着ラベルシート1がプラテンローラ8、一対の搬送ローラ11、11を介して下流側に搬送され、点字ピース収納ボックス13内で押圧ローラ15により剥離紙4側から押圧されると、感熱性粘着剤層6に形成された粘着力発現領域21が点字ピース12に接触押圧される。これにより、粘着力発現領域21に点字ピース12が付着される。この状態が図3の中央に示されている。この状態では、点字ピース12は感熱性粘着剤層6の範囲内に存在している。
【0026】
そして、カム部材16を介して余分な点字ピース12が感熱性粘着剤層6から篩い落とされた後、感熱性粘着ラベルシート1が一対の圧着ローラ18、18を通過すると、粘着力発現領域21に付着されている点字ピース12は第2粘着剤層5の内方に埋設される。この状態が図3の右側に示されている。これにより、点字ピース12は、感熱性粘着剤層6及び第2粘着剤層5により強固に保持されることとなる。
【0027】
以上説明した通り本実施形態に係る点字ラベル作成装置7では、点字記号データに基づきサーマルヘッド9における各発熱素子10を選択的に発熱駆動することにより感熱性粘着ラベルシート1の感熱性粘着剤層6に対して点字記号に対応する粘着力発現領域21が形成され、押圧ローラ15及び圧着ローラ18、18を介して粘着力発現領域21に対して点字ピース12が付着・圧着埋設された後、カッタ20により感熱性ラベルシート1を所望の長さでカットするように構成されているので、サーマルヘッド9を介して多種多様の粘着力発現領域21をオンデマンドで形成することが可能であるとともに、高価な加熱手段を必要とすることなく構成を簡単化してコストの低減を図ることが可能となる。
【0028】
また、押圧ローラ15と圧着ローラ18、18の間にカム部材16が配設され、かかるカム部材16を介して粘着力発現領域21以外で感熱性粘着剤層6に付着された点字ピース12を除去するように構成されているので、感熱性粘着ラベルシート1の感熱性粘着剤層6に形成され点字記号に対応する粘着力発現領域21のみに点字ピース12を付着・圧着埋設することが可能となり、明確な触感を得られる点字記号を有する点字ラベルを作成することが可能となる。
【0029】
更に、基材シート2と感熱性粘着剤層6との間に第2粘着剤層5が形成されており、点字ピース12は、押圧ローラ15を介して感熱性粘着剤層6から第2粘着剤層5の内方に埋設されるので、粘着力発現領域21に対して付着・圧着埋設された点字ピース12は、点字ラベル上で強固に保持されることとなり、これより点字ピース12が点字ラベルから剥離することなく長期に渡って点字記号の明確な触感を維持することが可能となる。
【0030】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であること勿論である。
例えば、前記実施形態では、点字ピース12として樹脂粒状物が使用されているが、樹脂粒状物以外、例えば、金属粒状物、その他上記条件を満たす各種の粒状物を使用することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 感熱性粘着ラベルシート
2 基材シート
3 第1粘着剤層
4 剥離紙
5 第2粘着剤層
6 感熱性粘着剤層
7 点字ラベル作成装置
8 プラテンローラ
9 サーマルヘッド
10 発熱素子
12 点字ピース
13 点字ピース収納ボックス
15 押圧ローラ
16 カム部材
18 圧着ローラ
20 カッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一面に、非加熱状態では粘着力を発現せず、加熱状態で粘着力を発現する感熱性粘着剤層が形成された長尺状の感熱性粘着ラベルシートと、
前記感熱性粘着ラベルシートを搬送する搬送部材と、
前記搬送部材に対向配置されるとともに搬送部材に対して選択的に接離可能な複数の発熱素子を有し、点字記号データに基づき各発熱素子を選択的に発熱駆動することにより前記感熱性粘着ラベルシートの感熱性粘着剤層に対して点字記号に対応する粘着力発現領域を形成するサーマルヘッドと、
前記感熱性粘着ラベルシートの粘着力発現領域に対して、その粘着力により粒状物を付着させる付着手段と、
前記付着手段を介して粘着力発現領域に付着された粒状物を圧着して感熱性粘着剤層の内方へ埋設する圧着手段と、
前記圧着手段を経て搬送される感熱性ラベルシートを所望の長さでカットするカット手段とを備えたことを特徴とする点字ラベル作成装置。
【請求項2】
前記付着手段と圧着手段の間に配設され、前記粘着力発現領域以外で感熱性粘着剤層に付着された粒状物を除去する除去手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の点字ラベル作成装置。
【請求項3】
前記基材と感熱性粘着剤層との間に形成された粘着剤層を有し、
前記粒状物は、前記圧着手段を介して感熱性粘着剤層から前記粘着剤層の内方に埋設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の点字ラベル作成装置。
【請求項4】
前記粒状物は球状に形成されるとともに、粒状物の粒径は1.3mm乃至1.7mmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の点字ラベル作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−228333(P2010−228333A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79355(P2009−79355)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】