説明

点火装置

【課題】本発明は、小型で高効率の点火装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による点火装置は、内燃機関の燃焼室9内に直流放電および電磁波放射を行う点火プラグ8と、点火プラグ8を一端に配置し、かつ、点火プラグ8を含む一部が内燃機関のプラグホール17内に収容可能な絶縁性筐体16と、絶縁性筐体16内に配置されるトランス11とを備え、トランス11は、点火プラグ8の中心電極8aの軸方向と一致する鉄心20と、鉄心20の外周部に巻きつけられた一次側巻き線21と、一次側巻き線21の外周部に配置され、円筒形に形成された絶縁性ケース22と、絶縁性ケース22の外周部に巻きつけられた二次側巻き線23とを有し、鉄心20の中心を、点火プラグ8に電磁波を供給する電磁波伝送路7が貫通し、電磁波伝送路7と鉄心20との間隙は絶縁性固定部材19が充填されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火装置に関し、特に、可燃性混合物を点火する段階において点火パルスによる直流放電と電磁波照射とを燃焼室にて一緒に行うことができる点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可燃性混合物を点火する手段では、内燃機関の燃焼室における空気と燃料混合物の燃焼効率を改善するために、燃焼室内のスパークプラグチップ(点火プラグの中心電極および接地電極)に対して、直流放電を発生させるDC電圧(点火パルス)と電磁エネルギーを放射するrfエネルギー(電磁波)とを、可燃性混合物の点火段階において一緒に供給している。このように、同一のスパークプラグチップにDC電圧とrfエネルギーとを一緒に供給する場合において、DC電圧を発生する電圧源とrfエネルギーを発生するrf発生源とが、スパークプラグチップを介して電気的につながることに起因して誤作動や故障が発生することがあり得る。
【0003】
上記の問題の対策として、従来の可燃性混合物を点火する手段では、DC電圧およびrfエネルギーを燃焼室に導く同軸導体(中心電極)とrf発生源との間にDC阻止手段(ハイパスフィルタ)を設けることによって、rfエネルギーを通過させると同時にDC電圧を遮蔽してrf発生源を保護するとともに、同軸導体とDC電源との間にrfフィルタ(ローパスフィルタ)を設けることによって、DC電圧を通過させると同時にrfエネルギーを遮蔽してDC電源を保護するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、電磁波を電磁波発生源から点火栓(点火プラグ)に伝達する手段としては、例えば、同軸ケーブルや導波管が用いられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭51−77719号公報
【特許文献2】特開2008−82286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内燃機関では、スパークプラグ(点火プラグ)の周辺に内燃機関の他の装置が密集するため、点火プラグ装置(点火プラグとそのキャップ等の実質的に一体化した装置)を配置できる空間が制限されてしまう。
【0007】
従来の可燃性混合物を点火する手段では、上記のDC阻止手段およびrfフィルタを点火プラグ装置に組み込んで制限された空間内に配置することが困難であり、制限された空間の外に配置して点火プラグ装置から引き出した配線に接続する必要があった。従って、点火装置が大型化するという問題があった。また、点火装置の大型化に伴う配線数の増加によって、燃焼室に向けて射出されるべきrfエネルギーの伝達損失が大きくなるという問題もあった。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、小型で高効率の点火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明による点火装置は、内燃機関の燃焼室内に直流放電および電磁波放射を行う点火プラグと、点火プラグを一端に配置し、かつ、点火プラグを含む一部が内燃機関のプラグホール内に収容可能な絶縁性筐体と、絶縁性筐体内に配置されるトランスとを備え、トランスは、点火プラグの中心電極の軸方向と一致する鉄心と、鉄心の外周部に巻きつけられた一次側巻き線と、一次側巻き線の外周部に配置され、円筒形に形成された絶縁性ケースと、絶縁性ケースの外周部に巻きつけられた二次側巻き線とを有し、鉄心の中心を、点火プラグに電磁波を供給する電磁波伝送路が貫通し、電磁波伝送路と鉄心との間隙は絶縁性固定部材が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、鉄心の中心を、点火プラグに電磁波を供給する電磁波伝送路が貫通し、電磁波伝送路と鉄心との間隙は絶縁性固定部材が充填されているため、小型で高効率の点火装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1による点火装置および内燃機関の一部の断面図である。
【図2】本発明の実施形態1による図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態1による図1のB−B断面図である。
【図4】本発明の実施形態1による点火パルスを発生する構成の各部品の接続状態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1によるブロッキングコンデンサの接続状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1によるインダクタのコアの材質を決定するためのインピーダンスの周波数依存性を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2による点火装置および内燃機関の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0013】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1による点火装置および内燃機関の一部の断面図であり、点火装置、プラグホール17、および燃焼室9の一部の断面図を示している。図1に示すように、本実施形態1による点火装置は、信号発生装置1、電磁波発生装置2、直流電源3、電磁波遮蔽ケース18(金属製ケース)内に設けられた点火プラグ装置4、およびこれらを電気的に接続する配線などを備えている。
【0014】
点火プラグ装置4は、内燃機関の燃焼室9内に直流放電および電磁波放射を行い、図1中の破線で囲まれた構成要素、すなわち、電磁波増幅装置5、ブロッキングコンデンサ6、点火プラグ8、電磁波発生装置2から電磁波増幅装置5およびブロッキングコンデンサ6を介して点火プラグ8までを電気的に接続する電磁波伝送路7、コイルドライバ10、トランス11、インダクタ12、コイルドライバ10とトランス11とを電気的に接続する配線13、トランス11とインダクタ12とを電気的に接続する配線14、インダクタ12と点火プラグ8とを電気的に接続する配線15とを備えている。また、点火プラグ装置4および点火プラグ8の一部は、周辺機器に対して絶縁するために絶縁性筐体16内に備えられている。なお、絶縁性筐体16は、例えばエポキシ樹脂製などであってもよく、熱伝導性の良い材料を使用することが望ましい。
【0015】
絶縁性筐体16内の上部(絶縁性筐体16内であってプラグホール17の外に対応する位置)に備えられた電磁波増幅装置5およびコイルドライバ10以外は、内燃機関の燃焼室9上部に設けられたプラグホール17内に配置されている。すなわち、点火プラグ8を一端に配置し、かつ、点火プラグ8を含む一部が内燃機関のプラグホール17内に収容可能となっている。内燃機関の燃焼室9は、燃焼室壁9aとピストン(図示せず)とに囲まれた空間を示している。絶縁性筐体16内のうちの電磁波増幅装置5およびコイルドライバ10を含む上部(電磁波増幅装置5およびコイルドライバ10の収容位置)は電磁波遮蔽ケース18によって覆われており、当該電磁波遮蔽ケース18はプラグホール17を構成する金属壁とは間隙なく電気的に接続されている。また、電磁波遮蔽ケース18の側面には、電磁波発生装置2の出力部と接続している電磁波伝送路7を通せる程度の空間が形成されている。なお、電磁波遮蔽ケース18を構成する材料としては、例えば、板金、金属メッシュ、発泡金属などを使用することができる。
【0016】
電磁波を燃焼室9に供給する構成について説明する。図1に示すように、電磁波発生装置2の出力部と電磁波増幅装置5とは電磁波伝送路7を介して接続されている。また、電磁波増幅装置5の出力部は、ハイパスフィルタとして機能するブロッキングコンデンサ6の一端に電磁波伝送路7を介して接続されており、ブロッキングコンデンサ6の他端はトランス11の円筒形の鉄心20の空洞部を貫通した電磁波伝送路7を介して点火プラグ8の中心電極8aに接続されている。なお、ブロッキングコンデンサ6は、トランス11の上部であって電磁波増幅装置5の近傍に配置されている。
【0017】
点火パルスを燃焼室5に供給する構成について説明する。図1に示すように、直流電源3の出力部とコイルドライバ10とは電気的配線によって接続されており、コイルドライバ10の出力部とトランス11の一次側巻き線21(図2参照)とが電気的配線によって接続されている。トランス11の二次側巻き線23(図2参照)は、ローパスフィルタとして機能するインダクタ12を介して点火プラグ8の中心電極8aに電気的配線によって接続されている。点火プラグ8は、中心電極8a、誘電体8b、ネジ部8c、および接地電極8dを備えており、ネジ部8cによって燃焼室壁9aに固定されている。また、中心電極8aは、誘電体8bによって接地電極8dと電気的に絶縁されている。直流放電を発生させる点火プラグ8のスパークギャップは、燃焼室9内側に露出した中心電極8aの端部と接地電極8dとで構成される。
【0018】
図2は、本発明の実施形態1による図1のA−A断面図であり、トランス11を含んだ断面図を示している。図2に示すように、トランス11の鉄心20は、その中心を電磁波伝送路7が貫通するように中心軸が空洞である円筒形となっており、点火プラグ8の中心電極8aの軸方向と一致している。電磁波伝送路7は、円筒形の鉄心20の中心を貫通して点火プラグ8の中心電極8aに接続されている。電磁波伝送路7と鉄心20との間隙は、互いに電気的に接触しないように絶縁性固定部材19(例えば、エポキシ樹脂など)で充填されている。なお、絶縁性固定部材19の材料特性としては、熱伝導性の良い材料を使用することが望ましい。鉄心20の外周部には一次側巻き線21が巻きつけられている。また、一次側巻き線21の外周部には、当該一次側巻き線21が内側となるような円筒形に形成された樹脂製の絶縁性ケース22が配置されている。さらに、絶縁性ケース22の外周部には、二次側巻き線23が巻きつけられている。上記の図2に示す構成部は絶縁性筐体16内に備えられており、プラグホール17内に配置されている。なお、走行中の路面形状や内燃機関の燃焼に起因する振動などにより、絶縁性筐体16内の構成部が振動すると、電気配線が断線してしまうなどの故障に至る恐れがある。よって、二次側巻き線23と絶縁性筐体16との間隙は可能な限り小さくすることが望ましく、絶縁性筐体16を構成する材料で間隙を充填し、一体化してもよい。
【0019】
図3は、本発明の実施形態1による図1のB−B断面図であり、インダクタ12を含んだ断面図を示している。図3に示すように、インダクタ12は、トロイダル形状のフェライトコア26に巻き線25が同軸状かつ放射状に巻きつけられている。インダクタ12は絶縁性筐体16内に備えられており、プラグホール17内に配置されている。また、電磁波伝送路7は、フェライトコア26の中心を貫通して点火プラグ8の中心電極8aに接続されている。電磁波伝送路7と巻き線25との間隙は、互いに電気的に接触しないように絶縁性固定部材24(例えば、エポキシ樹脂など)で充填されている。
【0020】
上記のような構成にすることによって、従来では個別に設置する必要があった電磁波伝送路と点火パルスを発生させる装置とを、一体構造としてプラグホール17内に備えることができる。従って、従来の点火装置よりも小型化が可能となる。また、小型化により電気配線を短くすることができるため伝送損失が低減できて、従来の点火装置よりも高効率化が可能となる。
【0021】
図4は、本発明の実施形態1による点火パルスを発生する構成の各部品の接続状態を示す図である。直流電源3は、例えばバッテリであり、他の電装品に使用されるバッテリと併用されていてもよい。直流電源3の出力部は、トランス11の一次側巻き線21および二次側巻き線23の両方に電気的に接続されている。また、信号発生装置1にて形成されたパルス信号は、コイルドライバ10を介してトランス11の一次側巻き線21に入力される。そして、入力されたパルス信号に基づいて、点火パルスがトランス11からインダクタ12を介して点火プラグ8の中心電極8aに供給される。
【0022】
上記のように構成された点火装置を用いて、可燃性混合物を点火する段階において、燃焼室9内に点火パルスおよび電磁波を一緒に供給する場合について説明する。
【0023】
まず、電磁波の発生、伝送、および点火プラグ8からの電磁波の放射について説明する。電磁波発生装置2は、例えば半導体素子を用いた電圧制御発信器などで構成することができ、ISM(Industry Science Medical)バンド(5.725GHz〜5.875GHz)と呼ばれる周波数帯域に含まれる電磁波を発生させて点火プラグ8に供給する。ISMバンドは他の周波数に比べて空間に放出される電磁波規制の上限値が高く制定されている。また、ISMバンドの5.80GHzはETC(Electronic Toll Collection)で使用されているため、このような周波数との干渉を避けるために5.80GHzを避けた周波数、例えば5.73GHzを使用することが好ましい。また、電磁波発生装置2の出力は、例えば出力電圧1W以下の低出力電力のものを使用することが好ましく、燃焼室9内に放射する電磁波の出力は、電磁波増幅装置5のゲインを調整することによって制御する。従って、万が一、電磁波発生装置2と電磁波増幅装置5との接続が外れた場合であっても、外部への不要な電磁波の放射を低減することができる。また、電磁波増幅装置5から放射される不要な電磁波の放射は、電磁波遮蔽ケース18によって遮蔽することができる。
【0024】
電磁波発生装置2から出力された電磁波は、電磁波伝送路7を介して電磁波増幅装置5に入力される。なお、電磁波伝送路7は、例えばセミリジットケーブルのようなシールド付きの同軸ケーブルを用いることができ、電磁波増幅装置5は、例えばGaAs FETなどを用いた高周波半導体増幅器を用いることができる。電磁波増幅装置5では、電磁波発生装置2から入力された電磁波に対して、所定のゲインによって所定の出力の電磁波となるように増幅して出力される。電磁波増幅装置5にて増幅された電磁波は、ハイパスフィルタの機能を有するブロッキングコンデンサ6および電磁波伝送路7を介して点火プラグ8の中心電極8aに伝送される。ブロッキングコンデンサ6は、電磁波増幅装置5から出力された電磁波を減衰させることなく点火プラグ8に伝送するとともに、トランス11から出力された高電圧の点火パルスのみを遮蔽することによって高電圧の点火パルスによる電磁波増幅装置5よりも前段の装置の破壊を防いでいる。これは、トランス11にて発生する高電圧の点火パルスの立ち上がり時間は1μs程度であって、単純に周波数変換すると1MHz程度となり、一方で電磁波の周波数はGHz帯であるため、ブロッキングコンデンサ6によって直流成分(低周波数成分)とマイクロ波などの高周波成分とを分離しているためである。ブロッキングコンデンサ6は、例えば直流成分とマイクロ波などの高周波成分とを分離する高周波機器であるDSブロックなどを用いることができる。
【0025】
図5は、本発明の実施形態1によるブロッキングコンデンサ6の接続状態を示す図である。図5に示すように、電磁波伝送路7は、中心導体7a、誘電体7b、および外部導体7cを備えている。ブロッキングコンデンサ6は電磁波伝送路7の途中に設けられており、中心電極7aを絶縁体6aによって絶縁し、外部導体7cを絶縁体6bによって絶縁し、それぞれ容量結合している。なお、絶縁体6a,6bの材料としては、絶縁耐力が大きくて誘電損失が小さい、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)や窒化ホウ素などを使用することができる。
【0026】
次に、点火パルスの発生、伝送、および点火プラグ8での直流放電の発生について説明する。直流電源3の出力端子は、トランス11の一次側巻き線21および二次側巻き線23の一端に接続されている。信号発生装置1は、ECU(Engine Control Unit)からの制御信号に基づいて、点火パルスを発生させるためのパルス信号をコイルドライバ10に出力する。コイルドライバ10は、信号発生装置1から出力されたパルス信号に基づいて、コイルドライバ10内の半導体スイッチをオン・オフさせることにより、トランス11の二次側巻き線23に高電圧の点火パルスを発生させる。この点火パルスの立ち上がりは1μs程度であり、インダクタ12に入力される。インダクタ12は、ローパスフィルタとしての機能を有する。インダクタ12に用いられるフェライトコア26の材質としては、立ち上がりが1μsである点火パルスを減衰させることなく、ISMバンドの電磁波を遮蔽できる磁気特性を有することが望ましい。具体的には、周波数が1MHzでインピーダンスが1Ω以下と低く、周波数が高くなるほどインピーダンスが高くなる材料、例えば、図6(出展、TDK社カタログ2007年版「EMC対策用フェライトコア コモンモードフィルタ用」から抜粋)に示すGT7などが望ましい。
【0027】
フェライトコア26を上記のような材質にすることによって、所定の周波数領域よりも低い周波数成分である点火パルスがインダクタ12で減衰することなく通過するとともに、所定の周波数よりも圧倒的に周波数が高いGHz帯の電磁波のみを効率的に遮蔽することができる。
【0028】
インダクタ12から出力された点火パルスは、配線15を介して中心電極8aに伝送される。そして、伝送された点火パルスによって、燃焼室9内に露出した中心電極8aの端部と接地電極8dとの間のスパークギャップにて直流放電を発生させる。
【0029】
なお、図6では500MHz以上のインピーダンス特性が示されておらず、500MHz以上でインダクタンス成分が低下する可能性がある。しかし、抵抗成分が増加するため、500MHz以上でもインピーダンスは極端に低下しない。
【0030】
また、インダクタ12は、絶縁性筐体16内に収納可能な大きさとし、トロイダル状のフェライトコア26の中央部を電磁波伝送路7が貫通して中心電極8aに接続されている。このこうな構成とすることによって、点火装置を大型化することなく、インダクタ12と電磁波伝送路7をプラグホール17内の絶縁性筐体16内に備えることができる。
【0031】
また、インダクタ12と中心電極8aとの配線15の長さを短くすることができるため、中心電極8aからインダクタ12までの配線15に電磁波が流入することなく、電磁波を高効率で中心電極8aに伝送することができる。
【0032】
また、電磁波増幅装置5にて増幅された電磁波が通る電磁波伝送路7は、金属壁に囲まれたプラグホール17内に設置されているため、外部への不要な電磁波の放射を低減することができる。
【0033】
上記の伝送経路によって、電磁波増幅装置5にて発生した電磁波と、直流電源3をエネルギー源とする点火パルスとが点火プラグ8に伝送されるため、可燃性混合物を点火する段階において、電磁波と点火パルスとを一緒に発生させると、点火プラグ8の中心電極8aにて高周波の電磁波と点火パルスとが重畳される。重畳された電磁波および点火パルスは、燃焼室5内に露出した中心電極8aから燃焼室9内に照射される。
【0034】
信号発生装置1の機能について説明する。信号発生装置1はECU(Engine Control Unit)によって把握される様々なエンジン内の燃焼状況、例えばエンジン回転数、可燃性混合物の空燃比、エンジンの吸排気のタイミングなどの情報に基づいて、最適なタイミングで直流放電もしくは電磁波照射を開始・終了するように電磁波発生装置2およびコイルドライバ10の各々に対して送信する信号を制御している。このように制御することによって、直流放電のみでは点火が困難であった希薄燃焼領域であっても最適な点火が可能となり、低NOxの燃焼を高効率で実現できる。
【0035】
以上のことから、本発明による点火装置では、電磁波伝送路7をトランス11およびインダクタ12の中心を貫通して配置し、点火プラグ8の中心電極8aにて電磁波と直流放射とを一緒に燃焼室9内に照射する構造としたため、点火装置が小型化するとともに高効率に電磁波および直流放電の照射を行うことができる。
【0036】
〈実施形態2〉
図7は、本発明の実施形態2による点火装置および内燃機関の一部の断面図である。本実施形態2による点火装置は、図7に示すように、実施形態1(図1参照)において絶縁性筐体16内に備えていた電磁波増幅装置5を取り除いた構成となっている。その他の構成および動作は、実施形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0037】
自動車のエンジンルーム内では、特にエンジン本体とエンジンルームの蓋との空間が狭く、設置できる点火装置の高さ方向の寸法が制限される場合がある。また、点火装置が設置されるエンジン本体の周辺には、吸気用バルブ、排気用バルブ、およびその駆動機構(例えば、カム機構など)が設置されているため、設置できる点火装置の前後左右方向の寸法も制限される場合がある。本実施形態2はこのような場合を想定しており、実施形態1と同様の効果を省空間にて達成することを意図している。
【0038】
図7に示す点火装置では、絶縁性筐体16内から電磁波増幅装置5を取り除いており、エンジンルーム内の空スペースに設置された電磁波発生装置2において、実施形態1による電磁波増幅装置5(図1参照)の出力に相当する電磁波を発生させている。なお、電磁波発生装置2としては、例えば、固体素子、マグネトロン、または進行波増幅管などによって構成することができる。
【0039】
以上のことから、本実施形態2による点火装置は、実施形態1の点火装置よりも小型化することができ、制限された空間においても配置することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 信号発生装置、2 電磁波発生装置、3 直流電源、4 点火プラグ装置、5 電磁波増幅装置、6 ブロッキングコンデンサ、6a,6b 絶縁体、7 電磁波伝送路、7a 中心導体、7b 誘電体、7c 外部導体、8 点火プラグ、8a 中心電極、8b 誘電体、8c ネジ部、8d 接地電極、9 燃焼室、9a 燃焼室壁、10 コイルドライバ、11 トランス、12 インダクタ、13,14,15 配線、16 絶縁性筐体、17 プラグホール、18 電磁波遮蔽ケース、19 絶縁性固定部材、20 鉄心、21 一次側巻き線、22 絶縁性ケース、23 二次側巻き線、24 絶縁性固定部材、25 巻き線、26 フェライトコア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室内に直流放電および電磁波放射を行う点火プラグと、
前記点火プラグを一端に配置し、かつ、前記点火プラグを含む一部が前記内燃機関のプラグホール内に収容可能な絶縁性筐体と、
前記絶縁性筐体内に配置されるトランスと、
を備え、
前記トランスは、
前記点火プラグの中心電極の軸方向と一致する円筒形の鉄心と、
前記鉄心の外周部に巻きつけられた一次側巻き線と、
前記一次側巻き線の外周部に配置され、円筒形に形成された絶縁性ケースと、
前記絶縁性ケースの外周部に巻きつけられた二次側巻き線と、
を有し、
前記鉄心の空洞を、前記点火プラグに前記電磁波を供給する電磁波伝送路が貫通し、
前記電磁波伝送路と前記鉄心との間隙は絶縁性固定部材が充填されていることを特徴とする、点火装置。
【請求項2】
前記点火プラグに供給する前記電磁波を発生させる電磁波発生装置と、
前記絶縁性筐体内であって前記プラグホールの外に対応する位置に収容され、前記電磁波発生装置の出力を増幅する電磁波増幅装置と、
前記絶縁性筐体の前記電磁波増幅装置を覆うように配置された金属製ケースと、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の点火装置。
【請求項3】
前記点火プラグに接続され、トロイダル形状のフェライトコアに巻き線を巻いて形成されたインダクタをさらに備え、
前記電磁波伝送路は、前記フェライトコアの中心を貫通し、
前記電磁波伝送路と前記フェライトコアとの間隙は、絶縁性固定部材が充填され、前記インダクタが、前記絶縁性筐体内に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の点火装置。
【請求項4】
前記インダクタは、前記トランスと前記点火プラグとの間に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の点火装置。
【請求項5】
前記電磁波伝送路の途中にブロッキングコンデンサをさらに備えることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の点火装置。
【請求項6】
前記電磁波伝送路は、シールド付き同軸ケーブルであることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−132897(P2011−132897A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293682(P2009−293682)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】