説明

点灯装置およびそれを備えた照明器具

【課題】電源回路にかかるストレスや雑音を低減することができる点灯装置およびそれを備えた照明器具を提供する。
【解決手段】サージ低減回路6は、第1の発光部25の発光素子21,22に直列接続された第1のインダクタ61と、第2の発光部26の発光素子23,24に直列接続された第2のインダクタ62とを有している。第1のインダクタ61と第2のインダクタ62とではインダクタンスが異なる。第1の発光部25と第2の発光部26とでは、電流の立ち上がりや立ち下がり時における変化率が異なるため、両発光部25,26において電流がピークに達するタイミングにばらつきが生じる。直流電源回路3の電流波形は、ピークのタイミングがずれた波形同士を重ね合わせた波形となり、サージ電流の成分が時間軸方向に分散されることとなり、直流電源回路3に流れる電流のピーク値が小さく抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を点灯させる点灯装置およびそれを備えた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機EL(ElectroLuminescence)やLED(Light EmittingDiode)などの発光素子に直流電圧を印加して発光素子を点灯させる点灯装置が提供されている。この種の点灯装置には、所望の直流電圧を出力する電源回路(直流電源手段)と、電源回路と発光素子(有機EL素子)との間に挿入されたスイッチング素子とを有した点灯装置がある(たとえば特許文献1参照)。特許文献1に記載の点灯装置は、スイッチング素子のデューティ比を可変的に制御することで発光素子の光出力を変化させることができるように構成されている。
【0003】
ただし、たとえば有機ELからなる発光素子を点灯させる点灯装置においては、有機ELは容量性の素子であるため、電源回路の出力がオンまたはオフする際、発光素子の容量成分によりサージ電流が流れることがある。これに対して、直流電源とEL素子部との間にコイルや抵抗を挿入することによって、EL素子部の電流の立ち上がりや立ち下がりを緩和することが考えられている(たとえば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−265805号公報
【特許文献2】特許第4359959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したような構成であっても、サージ電流の成分が幾分か残っていると、複数の発光素子を同時に点灯させるような場合に、サージ電流が問題になる可能性がある。すなわち、発光素子が点灯装置に複数並列接続されている場合、これら複数の発光素子に対して電源回路の出力が一斉にオンまたはオフすると、これら複数の発光素子でサージ電流が一斉に発生し、電源回路にかかるストレスや雑音が大きくなる。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、電源回路にかかるストレスや雑音を低減することができる点灯装置およびそれを備えた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の点灯装置は、それぞれ発光素子を有し並列に接続された複数の発光部に電圧を印加する電源回路と、前記電源回路と前記複数の前記発光部との間に挿入されるインピーダンス素子を前記発光部ごとに有し、前記インピーダンス素子と前記発光部との直列回路の時定数を前記インピーダンス素子のインピーダンス値によって決めるサージ低減回路とを備え、前記サージ低減回路は、インピーダンス値が異なる少なくとも2種類の前記インピーダンス素子を有することを特徴とする。
【0008】
この点灯装置において、前記インピーダンス素子はインダクタであることが望ましい。
【0009】
この点灯装置において、前記電源回路と前記発光部との間に挿入され前記発光部への前記電源回路の出力を制御するスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子のスイッチングにより前記発光素子の光出力を変化させる調光制御部を備えることがより望ましい。
【0010】
この点灯装置において、前記発光素子は有機EL素子であることがより望ましい。
【0011】
この点灯装置において、前記発光部に印加される前記電源回路の出力を制御する出力制御部を備え、前記出力制御部は、前記電源回路の出力を変化させるタイミングを前記複数の前記発光部で揃えることがより望ましい。
【0012】
この点灯装置において、前記発光部に印加される前記電源回路の出力を制御する出力制御部を備え、前記出力制御部は、前記電源回路の出力を前記発光部ごとに個別に変化させることがより望ましい。
【0013】
この点灯装置において、前記電源回路と前記発光部との間に挿入され前記発光部への前記電源回路の出力を制御するスイッチング素子を前記発光部ごとに個別に有し、前記出力制御部は、複数の前記スイッチング素子を前記発光部ごとに異なる周期でスイッチングすることがより望ましい。
【0014】
本発明の照明器具は、上記いずれかの点灯装置と、前記発光素子が設けられた器具本体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、サージ低減回路が、インピーダンス値が異なる少なくとも2種類のインピーダンス素子を有するので、電源回路にかかるストレスや雑音を低減することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る点灯装置の構成を示す概略回路図である。
【図2】実施形態1に係る照明器具の構成を示す分解斜視図である。
【図3】比較例の動作を示す説明図である。
【図4】実施形態1に係る点灯装置の動作を示す説明図である。
【図5】実施形態1に係る点灯装置の他の構成を示す概略回路図である。
【図6】実施形態1に係る点灯装置のさらに他の構成を示す概略回路図である。
【図7】実施形態2に係る点灯装置の構成を示す概略回路図である。
【図8】実施形態3に係る点灯装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
本実施形態の照明器具10は、図2に示すように、複数の発光部25,26(図1参照)が設けられたパネル型の器具本体100と、発光部25,26に電圧を印加して発光部25,26を点灯させる点灯装置1とを備えている。この照明器具10では、発光部25,26は面状光源であり縦横に2枚ずつ並ぶように配置された4枚の発光素子21〜24(以下、各々を特に区別しないときには「発光素子20」という)からなり、点灯装置1は全ての発光素子20に対して電気的に接続される。このように、面状光源からなる発光素子20を用いれば、照明器具10の薄型化を図ることができ、たとえば屋内照明として好適な照明器具10を実現できる。
【0018】
以下、点灯装置1の詳しい構成について、図1を参照して説明する。
【0019】
点灯装置1は、所望の直流電圧を出力する直流電源回路3と、直流電源回路3と発光部25,26との間に挿入され発光部25,26への直流電源回路3の出力を制御するスイッチング素子4と、スイッチング素子4を制御する制御部5とを有している。さらに、点灯装置1は、直流電源回路3の正極側の出力端と発光部25,26との間に挿入されたサージ低減回路6を有している。サージ低減回路6については後述する。なお、制御部5はたとえばマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成として構成される。
【0020】
発光部25,26を構成する各発光素子20は、それぞれ面状光源である有機EL(ElectroLuminescence)パネルからなり、直流電源回路3から出力される直流電圧が印加されることにより発光する。本実施形態では、各発光素子21〜24はいずれも同種で同サイズの有機ELパネルからなる。
【0021】
ここで、発光素子21と発光素子22とが直列接続されて第1の発光部25を構成するとともに、発光素子23と発光素子24とが直列接続されて第2の発光部26を構成しており、両発光部25,26は直流電源回路3の出力端間に互いに並列に接続されている。
【0022】
直流電源回路3は、ダイオードブリッジからなる整流回路31とコンバータ32とから構成されており、交流電源30からの交流電圧を整流回路31で全波整流し、整流された脈流電圧をコンバータ32にて所望の大きさの直流電圧に降圧する。コンバータ32は、MOSFET(Metal-Oxide-SemiconductorField-Effect Transistor)からなるスイッチ要素33と、インダクタ34と、コンデンサ35との直列回路を、整流回路31の出力端間に有している。さらに、コンバータ32は、インダクタ34およびコンデンサ35の直列回路の両端間に接続されたダイオード36と、スイッチ要素33をスイッチングする駆動回路37とを具備している。
【0023】
このコンバータ32は、スイッチ要素33を駆動回路37で制御して、スイッチ要素33のデューティ比を変更するPWM(Pulse WidthModulation)制御を行うことにより、所望の大きさの直流電圧を出力端となるコンデンサ35の両端から出力する。本実施形態では、駆動回路37は発光素子20を点灯させるのに必要な大きさの電圧がコンバータ32から出力されるようにPWM制御を行う。
【0024】
なお、コンバータ32は、上述したような降圧回路に限らず、たとえば昇圧回路や昇降圧チョッパ回路などで構成されていてもよく、PFC(Power FactorCorrection)回路としての機能を有していてもよい。また、コンバータ32に代えて平滑コンデンサのみが設けられていてもよい。チョッパ回路の場合、スイッチ要素33は数十kHz〜数百kHzでスイッチングされる。
【0025】
スイッチング素子4は、MOSFETからなり、直流電源回路3の負極側の出力端と発光部25,26との間に挿入されている。制御部5は、スイッチング素子4に制御信号を与えることによりスイッチング素子4のオン・オフを交互に切り替え、直流電源回路3の出力電圧が発光部25,26に間欠的に印加されるようにスイッチング素子4を制御する。スイッチング素子4および制御部5は、発光部25,26に印加される直流電源回路3の出力を制御する出力制御部7を構成する。本実施形態では、出力制御部7は第1および第2の両発光部25,26に共通のスイッチング素子4を有するので、直流電源回路3の出力を変化させるタイミングは、第1および第2の両発光部25,26で揃うことになる。
【0026】
ここで、本実施形態の点灯装置1は、スイッチング素子4のスイッチングを行うことにより発光素子20の光出力を変化させる調光点灯モードを含む複数の点灯モードでの動作が可能である。この場合、スイッチング素子4および制御部5は調光制御部を構成する。調光点灯モードでは、制御部5はスイッチング素子4に矩形波状のPWM信号を与えてスイッチング素子4を駆動し、スイッチング素子4のデューティ比を変更するPWM制御を行うことにより発光素子20の光出力を変化させる。本実施形態では、点灯装置1は少なくとも、このようにスイッチング素子4を断続的にオンさせる調光点灯モードと、スイッチング素子4を連続的にオンさせる全点灯モード(DC点灯モード)とを切替可能である。これらの点灯モードは、図示しないリモコン装置などからの操作信号に応じて制御部5が切り替える。
【0027】
また、制御部5は、スイッチング素子4のPWM制御の代わりに、コンバータ32の出力電圧(スイッチング素子4のオン時に発光部25,26に印加される電圧)の大きさを調光率に応じて変化させてもよい。あるいは、制御部5は、スイッチング素子4のPWM制御に加え、コンバータ32の出力電圧の大きさを調光率に応じて変化させてもよい。つまり、制御部5は、調光が深く(調光率が低く)なる程コンバータ32の出力電圧を小さくするようにコンバータ32を制御してもよい。この場合、制御部5およびコンバータ32が、発光部25,26に印加される直流電源回路3の出力を制御する出力制御部7を構成する。
【0028】
図1において、サージ低減回路6は、第1の発光部25の発光素子21,22と直列に接続された第1のインダクタ61、および第2の発光部26の発光素子23,24と直列に接続された第2のインダクタ62を有している。第1および第2の各インダクタ61,62は、サージ電流を低減させるインピーダンス素子として機能する。これにより、第1のインダクタ61および第1の発光部25の直列回路の時定数は、第1のインダクタ61のインダクタンス(インピーダンス値)によって決定されることになる。同様に、第2のインダクタ62および第2の発光部26の直列回路の時定数は、第2のインダクタ62のインダクタンス(インピーダンス値)によって決定される。
【0029】
ところで、直流電源回路3の出力が変化する際、つまりスイッチング素子4により直流電源回路3の出力がオンまたはオフする際あるいはコンバータ32の出力電圧の大きさが変化する際、発光素子20の容量成分に起因してサージ電流が流れることがある。このサージ電流は、サージ低減回路6のインピーダンス素子である第1および第2のインダクタ61,62が、発光素子20に流れる電流の立ち上がりや立ち下がりを緩和することにより、ある程度低減される。
【0030】
ここにおいて、サージ電流を低減させるためのインピーダンス素子はインダクタ61,62であるので、サージ低減回路6のインダクタンス(インピーダンス値)が大きくなるほど、サージ電流成分は減少する。ただし、サージ低減回路6のインダクタンスが大きくなると、インダクタ61,62の誘導成分(L成分)と、容量性の素子である発光素子(有機EL)20の容量成分(C成分)とが共振し、電流波形が大きく歪んだり振動したりする。したがって、サージ低減回路6のインダクタンスの最適値は、これらの歪みや振動が影響しない範囲において、サージ電流を最も小さく抑えられる値である。
【0031】
ただし、サージ電流の成分は、サージ低減回路6である程度低減されるものの、図3に示すように完全にはなくならないので、従来の構成では、複数の発光素子20を同時に点灯させるような場合に、サージ電流が問題になる可能性がある。図3では、(a)が第1の発光部25の電流波形、(b)が第2の発光部26の電流波形、(c)が直流電源回路3の電流波形を表している。すなわち、第1および第2の発光部25,26に対する直流電源回路3の出力が一斉に変化すると、両発光部25,26でサージ電流が一斉に発生する。
【0032】
ここで、直流電源回路3に流れる電流I0は、第1の発光部25を流れる電流I1と、第2の発光部26を流れる電流I2との和であるから、両発光部25,26のサージ電流により、直流電源回路3には、図3(c)のように過度の電流I0が流れることがある。これにより、直流電源回路3にかかるストレスが大きくなる。また、直流電源回路3の出力が変化する際に複数の発光素子20においてサージ電流が一斉に発生するので、直流電源回路3の出力が一定の周波数で変化する場合、当該周波数で発生する雑音も大きくなる。なお、サージ低減回路6のインピーダンス値を大きくすればサージ電流の成分はさらに低減されるが、この場合、電流波形の歪み増大や始動時間の遅れ、あるいはインピーダンス素子の大型化といった別の問題が生じる。
【0033】
そこで、本実施形態の点灯装置1は、電流波形の歪み増大や始動時間の遅れ、あるいはインピーダンス素子の大型化といった問題を生じることなく、直流電源回路3にかかるストレスや雑音を低減するために、以下の構成を採用している。
【0034】
すなわち、本実施形態においては、サージ低減回路6は、インピーダンス値が異なる少なくとも2種類のインピーダンス素子(インダクタ)を有している。具体的には、並列接続された発光部25,26ごとに設けられたサージ低減回路6のインピーダンス素子として、互いにインダクタンス(インピーダンス値)が異なるインダクタ61,62を用いている。要するに、第1の発光部25の発光素子21,22に直列接続された第1のインダクタ61と、第2の発光部26の発光素子23,24に直列接続された第2のインダクタ62とではインダクタンスが異なる。ここでは、第1のインダクタ61よりも第2のインダクタ62の方がインダクタンスは大きい。
【0035】
これにより、第1のインダクタ61および第1の発光部25の直列回路と、第2のインダクタ62および第2の発光部26の直列回路とでは、時定数が異なる。そのため、第1の発光部25と第2の発光部26とでは、図4に示すように電流I1,I2の立ち上がりや立ち下がり時における変化率が異なる。図4では、(a)が第1の発光部25の電流波形、(b)が第2の発光部26の電流波形、(c)が直流電源回路3の電流波形を表している。
【0036】
つまり、第1のインダクタ61よりも第2のインダクタ62の方がインダクタンスは大きいので、第1の発光部25よりも、第2の発光部26の方が、スイッチング素子4のオン・オフに伴う電流の変化は緩やかになる。言い換えれば、第2の発光部26においては、第1の発光部25に比べてスイッチング素子4のオン・オフ時における電流のターンオン時間およびターンオフ時間が長くなる。そのため、スイッチング素子4がオン・オフしてからオーバーシュートあるいはアンダーシュートが発生するまでの時間は第1の発光部25より第2の発光部26で長くなり、両発光部25,26において電流I1,I2がピークに達するタイミングにばらつきが生じる。
【0037】
これにより、直流電源回路3の電流波形は、図4(c)に示すようにピークのタイミングがずれた波形同士を重ね合わせた波形となり、サージ電流の成分が時間軸方向に分散されることとなり、直流電源回路3に流れる電流I0のピーク値が小さく抑えられる。したがって、直流電源回路3にかかるストレスが低減される。また、各発光素子20のサージ電流の発生期間も時間軸方向に分散されるので、雑音が発生する周波数帯も分散され、雑音が低減される。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の点灯装置1によれば、サージ低減回路6が、発光部25,26ごとにインピーダンス値(インダクタンス)の異なるインダクタ61,62を有することによって、直流電源回路3にかかるストレスや雑音を低減することができる。要するに、直流電源回路3と発光部25,26との間のインピーダンス値が発光部25,26ごとに異なることによって、第1のインダクタ61および第1の発光部25の直列回路と、第2のインダクタ62および第2の発光部26の直列回路とでは時定数が異なる。そのため、サージ電流の成分は自動的に時間軸方向に分散されることになる。
【0039】
その結果、電流波形の歪み増大や始動時間の遅れ、あるいはインピーダンス素子の大型化といった問題を生じることなく、直流電源回路3にかかるストレスや雑音を低減することができる、という効果がある。このような点灯装置1を照明器具10に備えることにより、信頼性の高い照明器具10を提供することが可能になる。
【0040】
しかも、本実施形態の点灯装置1では、直流電源回路3の出力を変化させるタイミングは両発光部25,26で揃えながらも、サージ電流の成分が時間軸方向に分散されるので、出力制御部7の構成が簡単になる。つまり、直流電源回路3の出力の変化のタイミングを両発光部25,26でずらす構成に比べて、本実施形態では、スイッチング素子を発光部25,26ごとに設けたり、制御部5で複雑な制御を行ったりする必要がない分だけ、出力制御部7の構成が簡単になる。さらに、本実施形態では出力制御部7は両発光部25,26への直流電源回路3の出力を同時に制御できるので、発光部25,26の点灯開始や消灯、光出力変化に要する時間を短縮することができる。
【0041】
また、サージ低減回路6のインピーダンス素子はインダクタであるので、インピーダンス素子が抵抗である場合に比べて、サージ低減回路6で生じる損失を小さく抑えることができる。
【0042】
ここで、制御部5は、調光点灯モードにおいてはスイッチング素子4のスイッチングにより発光素子20の光出力を変化させるので、調光点灯モードにおいては発光素子20または直流電源回路3の電圧波形が立ち上がり・立ち下がり時に急峻に変化する。そのため、調光点灯モードにおいては大きなサージ電流が生じやすく、サージ低減回路6によって直流電源回路3にかかるストレスや雑音が低減されるという効果が顕著になる。また、発光素子20は面状光源である有機ELからなるので、容量成分が比較的大きく、大きなサージ電流が生じやすいので、サージ低減回路6によって直流電源回路3にかかるストレスや雑音が低減されるという効果が顕著になる。
【0043】
ところで、サージ低減回路6のインピーダンス素子としては、インダクタの代わりに抵抗が用いられてもよい。この場合、サージ低減回路6の抵抗値(インピーダンス)が大きくなるほど、サージ電流成分は減少する。ただし、サージ低減回路6の抵抗値が大きくなると、抵抗での損失が増大する。したがって、サージ低減回路6の抵抗値の最適値は、この損失が影響しない範囲において、サージ電流を最も小さく抑えられる値である。
【0044】
また、本実施形態の点灯装置1の具体的な回路構成は、図1に示す回路構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、図5に示すように、発光素子20が第1〜第3の発光部25〜27に分類され、第1〜第3の発光部25〜27が直流電源回路3の出力端間に互いに並列に接続されていてもよい。図5の例では、サージ低減回路6は、第1の発光部25に直列接続された第1のインダクタ61と、第2の発光部26に直列接続された第2のインダクタ62と、第3の発光部27に直列接続された第3のインダクタ63とを有している。これら第1〜第3のインダクタ61〜63は、全てインダクタンス(インピーダンス値)が異なっている。なお、図5では、出力制御部の図示を省略している。
【0045】
これにより、直流電源回路3と発光部25〜27との間のインピーダンス値が発光部25〜27ごとに異なるため、第1〜第3の発光部25〜27において、サージ電流の成分は自動的に時間軸方向に分散されることになる。ここにおいて、サージ低減回路6は、インピーダンス値が異なる少なくとも2種類のインピーダンス素子(インダクタ)を含んでいればよく、全てのインダクタ61〜63のインダクタンスが異なることは必須ではない。たとえば、第1および第2のインダクタ61,62のインダクタンスが同一で、第3のインダクタ63のみインダクタが異なる場合には、第1および第2の両発光部25,26と、第3の発光部27との間でサージ電流の成分が時間軸方向に分散されることになる。
【0046】
さらに、サージ低減回路6は、第1〜第3のインダクタ61〜63のいずれかが省略(短絡)されていてもよい。この場合、直流電源回路3と発光部25〜27のいずれかとの間のインピーダンス値が略ゼロになるので、サージ低減回路6での損失を低減することができる。
【0047】
なお、図5の例では、第1〜第3の各発光部25〜27の発光素子20はそれぞれ1個の発光素子21〜23からなるが、これに限らず、複数個の発光素子20の直列回路あるいは並列回路が各発光部を構成していてもよい。また、直流電源回路3の出力電圧はどのような波形であってもよく、出力電圧が一定の直流波形であってもよいし、矩形波、正弦波、台形波、三角波等であってもよい。
【0048】
さらにまた、サージ低減回路6は、図6に示すように、第1〜第3のインダクタ61〜63が直列に接続された構成であってもよい。図6の例では、直流電源回路3と第1の発光部25との間に第1のインダクタ61が挿入され、第1の発光部25と第2の発光部26との間に第2のインダクタ62が挿入され、第2の発光部26と第3の発光部27との間に第3のインダクタ63が挿入されている。
【0049】
この構成においては、直流電源回路3と第1の発光部25との間には第1のインダクタ61が介在し、直流電源回路3と第2の発光部26との間には第1および第2の両インダクタ61,62の直列回路が介在する。直流電源回路3と第3の発光部27との間には第1〜第3の全インダクタ61〜63の直列回路が介在する。すなわち、第1〜第3の発光部25〜27に共通する基本の誘導成分は第1のインダクタ61で形成され、第1の発光部25と第2の発光部26と第3の発光部27との間の差分が第2および第3のインダクタ62,63で形成されることになる。
【0050】
したがって、図6の構成では、第2および第3のインダクタ62,63は、第1〜第3の発光部25〜27間におけるインダクタンスの差分のみを賄えば足りるので、インダクタンスが比較的小さな小型のインダクタをインダクタ62,63に用いることができる。
【0051】
(実施形態2)
本実施形態の点灯装置は、出力制御部は直流電源回路の出力を発光部ごとに個別に変化させる点が実施形態1の点灯装置と相違する。
【0052】
本実施形態では、発光素子20(図1参照)は、図7に示すように第1〜第4の発光部25〜28に分類されている。これらの発光素子20は、発光部25〜28ごとに個別にスイッチング素子41〜44(以下、各々を特に区別しないときには「スイッチング素子4」という)を介して直流電源回路3の出力端間に接続されている。各スイッチング素子41〜44は制御部5と共に出力制御部7を構成し、制御部5によって個別にオン・オフ制御される。
【0053】
ここでは、第1〜第4の各発光部25〜28はそれぞれ1個の発光素子20からなるが、これに限らず、複数個の発光素子20の直列回路あるいは並列回路が各発光部25〜28を構成していてもよい。なお、発光素子20は図7ではリーク抵抗201、直列等価抵抗202、等価容量203を並列に接続した等価回路で表されている。
【0054】
また、サージ低減回路6は、第1の発光部25に直列接続された第1のインダクタ61と、第2の発光部26に直列接続された第2のインダクタ62とを有している。さらに、サージ低減回路6は、第3の発光部27に直列接続された第3のインダクタ63と、第4の発光部28に直列接続された第4のインダクタ64とを有している。第1〜第4の各インダクタ61〜64は、サージ電流を低減させるインピーダンス素子として機能する。これら第1〜第4のインダクタ61〜64は、全てインダクタンス(インピーダンス値)が異なっている。ただし、サージ低減回路6は、インピーダンス値が異なる少なくとも2種類のインピーダンス素子(インダクタ)を含んでいればよく、全てのインダクタ61〜64のインダクタンスが異なることは必須ではない。
【0055】
以上説明した本実施形態の点灯装置1によれば、制御部5が各スイッチング素子41〜44を個別にオン・オフ制御することにより、出力制御部7は直流電源回路3の出力を発光部25〜28ごとに個別に変化させることができる。ここにおいて、点灯装置1は、直流電源回路3と発光部25〜28との間のインピーダンス値が発光部25〜28ごとに異なることによって、サージ電流の成分は自動的に時間軸方向に分散されることになる。そのため、複数のスイッチング素子41〜44でオン・オフのタイミングが重なったとしても、サージ電流の成分は時間軸方向に分散されるので、直流電源回路3にかかるストレスや雑音を低減することができる。したがって、出力制御部7は、複数のスイッチング素子41〜44でオン・オフのタイミングが重ならないようにするなどの制限をかけることなく、各スイッチング素子41〜44のオン・オフのタイミングを個別に制御することができる。
【0056】
また、制御部5は、スイッチング素子41〜44のスイッチングにより発光素子20の光出力を変化させる調光点灯モードにおいて、これらスイッチング素子41〜44を発光部25〜28ごとに異なる周期でスイッチングしてもよい。これにより、第1〜第4のスイッチング素子41〜44のスイッチングのタイミングがずれることとなり、スイッチング周波数が分散されて雑音が低減されるという利点がある。この場合でも、複数のスイッチング素子41〜44でオン・オフのタイミングが重なったとしても、サージ電流の成分は時間軸方向に分散されるので、直流電源回路3にかかるストレスや雑音を低減することができる。
【0057】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0058】
(実施形態3)
本実施形態の点灯装置1は、図8に示すように、器具本体100(図2参照)の前面において縦に4枚ずつ、横に2列に並ぶように発光素子211〜214,221〜224が設けられた照明器具10(図2参照)に用いられる点が実施形態1の点灯装置1と相違する。
【0059】
本実施形態では、発光素子211〜214が直列接続されて第1の発光部25を構成するとともに、発光素子221〜224が直列接続されて第2の発光部26を構成しており、両発光部25,26は直流電源回路3の出力端間に互いに並列に接続されている。サージ低減回路6は、第1の発光部25の発光素子211〜214と直列に接続された第1のインダクタ61、および第2の発光部26の発光素子221〜224と直列に接続された第2のインダクタ62を有している。第1のインダクタ61と第2のインダクタ62とではインダクタンスが異なる。
【0060】
ここで、第1の発光部25の発光素子211と、第2の発光部26の発光素子222と、第1の発光部25の発光素子213と、第2の発光部26の発光素子224とは、この順番で縦方向(図8の上下方向)に並んでいる。また、第2の発光部26の発光素子221と、第1の発光部25の発光素子212と、第2の発光部26の発光素子223と、第1の発光部25の発光素子214とは、この順番で縦方向に並んでいる。つまり、第1の発光部25の発光素子20と第2の発光部26の発光素子20とは、図8における左側の列と右側の列とに交互に分散して配置されている。
【0061】
ここで、同一の発光部25,26を構成する発光素子20は、直列接続されているため同じ大きさの電流が流れる。有機ELからなる発光素子20は、流れる電流の大きさによって明るさ(光出力)が決まるので、同一の発光部25,26を構成する発光素子20は同じ明るさで点灯することになる。一方、並列接続された発光素子20同士では、内部抵抗の初期ばらつきや経時変化によるばらつきなどに起因して、流れる電流の大きさが異なるので、明るさにばらつきが生じやすい。特に、第1のインダクタ61と第2のインダクタ62とではインダクタンスが異なることから、異なる発光部25,26の発光素子20は明るさにばらつきが生じやすい。
【0062】
本実施形態では、上述のように第1の発光部25の発光素子20と第2の発光部26の発光素子20とは、空間的に分散して配置されているので、器具本体100の前面において明るさの偏りを低減することができる。すなわち、複数の発光素子20全体で1つの面状光源を構成するような場合に、発光面の明るさの偏りを低減することができる。また、点灯時に発光素子20で発生する熱についても、空間的に分散することができるので、一箇所に偏った局所的な発熱を防止でき、照明器具10の寿命を延ばすことができる。さらに、直流電源回路3の出力が変化する際に複数の発光素子20において発生する雑音に関しても、空間的に分散させることができるので、より雑音が低減されるという効果もある。
【0063】
また、1個の発光素子20がオープン故障した場合、この発光素子20と直列接続されている発光素子20は全て消灯することになるが、この場合にも、消灯する発光素子20を空間的に分散させることができる。したがって、点灯装置1は、発光素子20のオープン故障時にも、器具本体100の前面において広範囲を発光させることができ、明るさの偏りを低減することができる。
【0064】
なお、図8の例では、各列において、同一の発光部25,26に属する発光素子20が1個単位で交互に配置されているが、この構成に限らず、同一の発光部25,26に属する発光素子20が複数個単位で交互に配置されていてもよい。たとえば、同一の発光部25,26に属する発光素子211〜214,221〜224は2個単位で交互に配置されていてもよい。このように、発光素子20の数が多い場合には、各列において、同一の発光部25,26に属する発光素子20が複数個隣接してもよいが、隣接する個数は少ない方が、光出力を空間的に細かく分散でき、上述したような本実施形態の効果が顕著である。
【0065】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0066】
また、実施形態2の構成と実施形態3の構成とは適宜組み合わせ可能である。
【0067】
上記各実施形態では、発光素子20は有機ELからなる例を示したが、発光素子20は、有機ELに限らずたとえばLED(Light EmittingDiode)であってもよい。発光素子20は、有機ELとLEDとの組み合わせ、または、他の面状光源である無機ELパネルや、LEDとLEDの出射光を導光して面発光する導光板との組み合わせや、冷陰極蛍光灯を有する直下式またはエッジライト式面光源ユニット等であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 点灯装置
3 (直流)電源回路
4,41〜44 スイッチング素子
6 サージ低減回路
7 出力制御部
10 照明器具
20〜24,211〜214,221〜224 発光素子
25〜28 発光部
61〜64 インダクタ(インピーダンス素子)
100 器具本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ発光素子を有し並列に接続された複数の発光部に電圧を印加する電源回路と、前記電源回路と前記複数の前記発光部との間に挿入されるインピーダンス素子を前記発光部ごとに有し、前記インピーダンス素子と前記発光部との直列回路の時定数を前記インピーダンス素子のインピーダンス値によって決めるサージ低減回路とを備え、前記サージ低減回路は、インピーダンス値が異なる少なくとも2種類の前記インピーダンス素子を有することを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
前記インピーダンス素子はインダクタであることを特徴とする請求項1に記載の点灯装置。
【請求項3】
前記電源回路と前記発光部との間に挿入され前記発光部への前記電源回路の出力を制御するスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子のスイッチングにより前記発光素子の光出力を変化させる調光制御部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の点灯装置。
【請求項4】
前記発光素子は有機EL素子であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項5】
前記発光部に印加される前記電源回路の出力を制御する出力制御部を備え、前記出力制御部は、前記電源回路の出力を変化させるタイミングを前記複数の前記発光部で揃えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項6】
前記発光部に印加される前記電源回路の出力を制御する出力制御部を備え、前記出力制御部は、前記電源回路の出力を前記発光部ごとに個別に変化させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項7】
前記電源回路と前記発光部との間に挿入され前記発光部への前記電源回路の出力を制御するスイッチング素子を前記発光部ごとに個別に有し、前記出力制御部は、複数の前記スイッチング素子を前記発光部ごとに異なる周期でスイッチングすることを特徴とする請求項6に記載の点灯装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の点灯装置と、前記発光素子が設けられた器具本体とを備えることを特徴とする照明器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−169126(P2012−169126A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28646(P2011−28646)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】