説明

無人搬送車

【課題】無人搬送車による被牽引台車の走行を安定させる。
【解決手段】無人搬送車101のベース111は、被牽引台車201をその幅方向Bに挟み込む形状をなしている。ベース111には、旋回自在の自在輪121と一対の固定輪122とが設けられる。無人搬送車101と被牽引台車201とが連結されると、無人搬送車101の一対の固定輪122は、被牽引台車201の固定キャスタ206を幅方向Bに挟み込む。 無人搬送車101の検知部116が製造現場等に布設されたガイド線GTを検知すると、無人搬送車101は、検知部116の検知結果に応じて進行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被牽引台車を牽引する無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造現場等には、無人搬送車が使用されている。無人搬送車は、予め定められたルートに沿って自動走行する。そして、無人搬送車に被牽引台車(例えば、カート)を牽引させることも行われている。
【0003】
特許文献1には、「非常にシンプルな構造で、慣性力を有効に且つ確実に利用して制動でき、常に安定した制動力を発揮でき、とりわけ無人搬送車への適用性に優れた被牽引台車」の発明が開示されている。詳細には、特許文献1に記載の被牽引台車1は、「牽引車10に牽引される被牽引台車1の荷物を積載するベースプレート2に、牽引方向の前後へ移動可能なスライドプレート3が設置され、該スライドプレート3の前部に、牽引車10と連結する牽引プレート7が設けられている」もので、「前記スライドプレート3の下面に、前記ベースプレート2の後部下面に設置された後輪6の直前位置に制御用車輪9が設置されており、牽引車10の制動時には後輪6が制動用車輪9と接触して制動力を発生する構成とされている」。ここで、前輪5、5は、旋回可能で自由に進行方向を変えられる自由車輪である。また、後輪6、6は、旋回しない固定車輪である。また、制御用車輪9は、旋回せずに前後左右に移動可能なオムニホイールである。そして、特許文献1の図5Aには、「搬送物Gを積載した被牽引台車1が牽引プレート7を介して無人搬送車(AGV)10に牽引されて、走行中の状況」が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−254070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明は、被牽引台車1に適用されるものである。しかしながら、製造現場等に導入される被牽引台車は、多数にわたる。このため、個々の被牽引台車に改造を加えることは、実際には難しい。
【0006】
また、特許文献1の図5Aに記載されているように、無人搬送車(AGV)10の後方に被牽引台車1を連結してこの被牽引台車1を牽引すると、無人搬送車(AGV)10の旋回中心点と被牽引台車1の旋回中心点とが大きく離れてしまい、走行も不安定になり、小回りも利かない。
【0007】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、無人搬送車による被牽引台車の走行を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無人搬送車は、自在キャスタと台車進行方向に交差する幅方向に並ぶ固定キャスタ対とを有する被牽引台車を牽引する無人搬送車であって、前記被牽引台車を前記幅方向に挟み込む形状をなすベースと、前記ベースと前記被牽引台車とを連結する連結部と、前記ベースに設けられ、旋回自在の自在輪と、前記ベースにおいて前記固定キャスタを前記幅方向に挟み込む箇所に設けられる一対の固定輪と、布設されたガイド線を検知する検知部と、前記検知部の検知結果に応じて、前記自在輪と前記固定輪との少なくともいずれかを回転駆動する駆動制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無人搬送車に被牽引台車が取り付けられた状態で無人搬送車が左折進行、右折進行、その場での旋回等の動きをする際、無人搬送車に設けられた一対の固定輪と、被牽引台車に設けられた一対の固定キャスタとが一直線上に並んでいるため、無人搬送車の旋回中心点と被牽引台車の旋回中心点とが近づき、無人搬送車による被牽引台車の走行が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】無人搬送車を正面側から見た斜視図である。
【図2】無人搬送車を背面側から見た斜視図である。
【図3】被牽引台車が連結された無人搬送車の右側面図である。
【図4】被牽引台車が連結された無人搬送車の底面図である。
【図5】無人搬送車の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の一形態を、図1ないし図5に基づいて説明する。図1は、無人搬送車101を正面側から見た斜視図である。図2は、無人搬送車101を背面側から見た斜視図である。製造現場の床面Fには、ガイド線GTが敷設されている。このガイド線GTは、無人搬送車101が走行すべく予め設定された走行経路に沿って設けられている。ガイド線GTは、無人搬送車101に備わる検知部116(後述)に検知されるものであって、無人搬送車101は、検知部116によるガイド線GTの検知結果に応じて走行したり停止したりする。例えば、無人搬送車101に磁気誘導式AGV(Automated Guided Vehicle)を採用した場合、ガイド線GTは磁気テープであって、検知部116として磁気センサを採用し、無人搬送車101は磁気テープに記録された磁気情報に基づいて走行したり停止したりする。無人搬送車101とガイド線GTとは、無人搬送システム100を構成する。
【0012】
図3は、被牽引台車201が連結された無人搬送車101の右側面図である。図4は、被牽引台車201が連結された無人搬送車101の底面図である。無人搬送車101には、被牽引台車201が連結される。被牽引台車201は、略長方形状の底板202の両短辺のそれぞれから一対の側板203が立設して構成され、底板202の長手方向を台車進行方向Aとするものである。底板202には、載置物204が載置される。底板202の下面の四隅には、自在キャスタ205が取り付けられている。底板202の下面には、一対の固定キャスタ206も設けられる。固定キャスタ206は、台車進行方向Aに並ぶ一対の自在キャスタ205の略中間にそれぞれ位置し、底板202の短手方向(被牽引台車201の幅方向B)に並んでいる。
【0013】
無人搬送車101は、このような被牽引台車201を牽引するものである。無人搬送車101は、ベース111を基本とし、このベース111に各部を備えて構成される。ベース111は、被牽引台車201を台車進行方向Aの前方側から挟み込む平面視略U字形状をなしている。ベース111は、無人搬送車101の正面側に位置するフロント部111Aと、フロント部111Aの両端部のそれぞれから無人搬送車101の背面側に延びるサイド部111Bとから構成される。一対のサイド部111Bの間の空間は、被牽引台車201が配置される台車配置空間111Cとして機能する。
【0014】
フロント部111Aは、サイド部111Bよりも上方に突出している。フロント部111Aの正面側中央には、障害物センサ112が配置されている。フロント部111Aの正面側の両側部には、ランプ113が配置される。ランプ113は、サイド部111Bの背面側の端部にも設けられる。フロント部111Aには、バンパ114も設けられている。バンパ114は、フロント部111Aの正面側において幅方向Bに延び、その両端部からさらに背面側に向けて延びている。
【0015】
ベース111には、被牽引台車201を連結するための連結部115が設けられる。一例として、連結部115は、図3に示されているような、被牽引台車201の前方側の側板203に回動自在に設けられたフック207を受けるフック受けであり、ベース111のフロント部111Aに設けられ、台車配置空間111Cに配置されサイド部111Bに挟まれた被牽引台車201のフック207に係合される。
【0016】
検知部116は、ベース111のフロント部111Aの底面側で、障害物センサ112よりも無人搬送車101の背面側に配置される。
【0017】
ベース111の底面側には、旋回自在の自在輪121と、旋回不能な固定輪122とが設けられる。自在輪121は、フロント部111Aの幅方向Bの両端部に設けられる。固定輪122は、個々のサイド部111Bにおける背面側の端部に設けられ、幅方向Bに並んでいる。被牽引台車201が台車配置空間111Cに配置されて無人搬送車101に連結されると、一対の固定輪122は、被牽引台車201の固定キャスタ206を幅方向Bに挟み込む位置に位置付けられる。
【0018】
固定輪122には、駆動モータ123が取り付けられている。駆動モータ123の駆動軸(図示せず)は、固定輪122の回転軸に繋がっており、駆動モータ123が駆動すると固定輪122が回転する。駆動モータ123の駆動軸の回転速度は、所望に変更できるようになっている。駆動モータ123の駆動軸の回転速度の調整には、例えば、PWM制御が用いられる。
【0019】
サイド部111Bは、上面開口の空間が形成されており、そこにはバッテリ124が収納される。バッテリ124は、駆動モータ123やランプ113、バンパスイッチ回路133(図5に基づいて後述)、検知部116、制御回路125(後述)、無線通信回路126(後述)等に給電する。また、サイド部111Bにおける台車配置空間111C側の外側面には、ベース111の背面側から被牽引台車201を台車配置空間111Cに導入する際に被牽引台車201をガイドするガイド部材127が取り付けられている。
【0020】
フロント部111Aの内部には、制御回路125及び無線通信回路126が設けられている。制御回路125は、一例として、フロント部111Aの正面側の内壁面で、正面側から見て障害物センサ112の左上位置に位置する。無線通信回路126は、制御回路125の近傍に配置される。
【0021】
図5は、無人搬送車101の電気的構成を示すブロック図である。制御回路125は、無線通信回路126に電気的に接続している。また、制御回路125は、配線PL及び入出力回路(I/O)131を介して障害物センサ112に、配線PL及びランプ制御回路132を介して個々のランプ113に、配線PL及びバンパスイッチ回路133を介してバンパ114に、配線PL及び入出力回路(I/O)134を介して検知部116に、配線PL及びモータ制御回路135を介して個々の駆動モータ123に、それぞれ電気的に接続されている。
【0022】
無線通信回路126は、製造現場に導入された無線通信設備(図示せず)との近距離無線通信を行い、無線通信設備からの指示信号に応じた制御信号を制御回路125に出力する。
【0023】
障害物センサ112は、発光部及び受光部(いずれも図示せず)を有する。発光部から発せられ無人搬送車101の前方にある障害物に当たり反射した検知光を受光部が受光すると、検知信号を発する。発せられた検知信号が、入出力回路131を経て制御回路125に伝達されると、制御回路125は、モータ制御回路135を制御して駆動モータ123を停止させ、無人搬送車101の進行を止める。
【0024】
ランプ113は、制御回路125からの制御信号を受けたランプ制御回路132の制御に応じて点灯及び消灯する。一例として、無人搬送車101が左方向に曲がるように制御回路125がモータ制御回路135を制御するとき、制御回路125は、無人搬送車101の左前方にあるランプ113及び左後方にあるランプ113の両方を点滅させる。ランプ113は、このような方向指示のためだけでなく、無人搬送車101における所定の状態(正常運行、異常発生等)を示す際にも点灯される。
【0025】
バンパ114に対して無人搬送車101の前方にある障害物が接触しバンパ114が振動すると、バンパスイッチ回路133が制御回路125に検知信号を発する。発せられた検知信号が、入出力回路131を経て制御回路125に伝達されると、制御回路125は、モータ制御回路135を制御して駆動モータ123を停止させ、無人搬送車101の進行を止める。
【0026】
検知部116は、ガイド線GTの検知を行うと、検知結果に応じた検知信号を発する。発せられた検知信号は、入出力回路134を経て制御回路125に伝達される。制御回路125は、検知部116からの検知信号に応じた制御を行って、所望のランプ113を点滅させたり、所望の駆動モータ123を駆動又は停止させたり、無線通信回路126に無線通信を行わせたりする。制御回路125による、所望のランプ113を点滅させたり、所望の駆動モータ123を駆動又は停止させたりする制御は、無線通信回路126から入力された制御信号に基づいても行われる。このような制御信号に基づく制御回路125の各部の制御は、既存の技術であるので、説明を省略する。
【0027】
モータ制御回路135及び駆動モータ123は、個々の固定輪122に対してそれぞれに設けられている。そして、制御回路125は、個々のモータ制御回路135に別個独立に制御信号を発し、個々の駆動モータ123を別個独立に駆動する。これより、無人搬送車101では、一対の固定輪122が別個独立に回転駆動する。ここに、制御回路125とモータ制御回路135と駆動モータ123とは、駆動制御部136を構成する。
【0028】
図1から図5を参照する。本実施の形態の無人搬送車101では、無線通信設備からの指示信号を無線通信回路126が受信したり、無人搬送車101に設けられた所定のスイッチ(図示せず)が操作されたりすると、制御回路125がモータ制御回路135を制御して固定輪122が回転し、無人搬送車101が台車進行方向Aに進行する。進行中、検知部116によりガイド線GTが検知されると、制御回路125は、検知部116から入力された制御信号に従って個々のモータ制御回路135を制御し、無人搬送車101をガイド線GTに沿って進行させる。ここで、個々の固定輪122は、別々の駆動モータ123により別個独立に駆動し、無人搬送車101に、左折進行、右折進行、直進、停止、その場での旋回、後退等の各種の動きを行わせることができる。無人搬送車101での左折進行、右折進行、その場での旋回等の動きは、左右一対の固定輪122の回転速度を違えることにより実現される。
【0029】
無人搬送車101のベース111に被牽引台車201が取り付けられた状態で無人搬送車101が左折進行、右折進行、その場での旋回等の動きをする際、無人搬送車101に設けられた一対の固定輪122と、被牽引台車201に設けられた一対の固定キャスタ206とが一直線上に並んでいるため、無人搬送車101の旋回中心点と被牽引台車201の旋回中心点とが近づく。これにより、無人搬送車101の走行が安定し、小回りも利くようになる。また、本実施の形態では、無人搬送車101と被牽引台車201とが前後に並ぶのではなく、無人搬送車101に形成された台車配置空間111C内に被牽引台車201が配置されるので、牽引時の全長が短くなり、回転半径も小さくなって、走行の安定化と小回りとにおいて有利である。
【0030】
なお、別の実施の形態として、駆動モータ123の駆動軸を自在輪121に接続し、自在輪121を駆動輪として機能させても良い。また、無人搬送車101を被牽引台車201の台車進行方向Aの後方側から連結し、無人搬送車101によって被牽引台車201を押すようにして搬送させてもよい。
【符号の説明】
【0031】
101 無人搬送車
111 ベース
115 連結部
116 検知部
121 自在輪
122 固定輪
136 駆動制御部
201 被牽引台車
205 自在キャスタ
206 固定キャスタ
A 台車進行方向
B 幅方向
GT ガイド線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自在キャスタと台車進行方向に交差する幅方向に並ぶ固定キャスタ対とを有する被牽引台車を牽引する無人搬送車であって、
前記被牽引台車を前記幅方向に挟み込む形状をなすベースと、
前記ベースと前記被牽引台車とを連結する連結部と、
前記ベースに設けられ、旋回自在の自在輪と、
前記ベースにおいて前記固定キャスタを前記幅方向に挟み込む箇所に設けられる一対の固定輪と、
布設されたガイド線を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に応じて、前記自在輪と前記固定輪との少なくともいずれかを回転駆動する駆動制御部と、
を備える無人搬送車。
【請求項2】
前記ベースは、前記被牽引台車を台車進行方向前方側から挟み込む平面視略U字形状をなす、
請求項1記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記一対の固定輪を別個独立に回転駆動する、
請求項1又は2記載の無人搬送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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