説明

無害化処理システムおよび無害化処理方法

【課題】有害物を含む被処理物を低コストで無害化処理できる無害化処理システムを提供する。
【解決手段】無害化処理システム1に、熱処理ユニット3と、筒状部材4と、衝突処理ユニット5とを設ける。筒状部材4の一端を熱処理容器部33の内部に設け、その他端をノズル口のそれぞれの噴出側に対して設ける。加圧気体供給部51で加圧された気体がノズル口から噴射されることによる吸引力で、筒状部材4の内部を通して熱処理された被処理物質を輸送する。これにより、熱処理ユニット3および衝突処理ユニット5にて被処理物質中の有害物質を完全に分解して無害化することができると共に、筒状部材4で簡易に被処理物質を輸送できるので製造コストやランニングコストを大幅に下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質を含む被処理物質を無害化する無害化処理システムおよび無害化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の環境問題として、例えば、ゴミの焼却により発生したダイオキシン含有じん灰および重金属含有じん灰などによる土壌汚染、廃酸または廃アルカリなどによる河川や湖沼の水質汚染、工場廃液に含まれるトリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物系溶剤による地下水汚染、あるいは、水銀、カドミウム、鉛、亜鉛、シアン、砒素、クロム、銅、フッ化物、有機塩素化合物による土壌汚染などが挙げられる。そして、現況では、このような環境有害物質を無害化するために、例えば、廃酸または廃アルカリなどによる汚染水には中和処理が施され、汚染土壌に対しては焼却処理や埋め立て処理が施されている。
【0003】
しかし、汚染土壌に対して埋め立て処理する場合、有害物質が土中に漏出するなど、新たな二次汚染を引き起こすため好ましくない。また、汚染土壌に対する焼却処理の1つとして、汚染土壌を長時間かけて溶融させクラック(ガラス)状にする方法が挙げられるが、処理時間が長くかつ処理コストが高いため好ましくない。
【0004】
また、このような有害物質を含んだ被処理物質を無害化する方法として、被処理物質を加熱処理して溶融等した後、当該被処理物質を互いに対向する噴射ノズルから圧縮気体と共に噴射して正面衝突させ、ミクロレベルで分解する無害化処理方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1に記載の構成において、加熱処理工程では、被処理物質を流下させる3つの雨樋状の流路を、それぞれ互い違いに傾けた状態で上下に並設し、各流路において被処理物質の上方および側面側からバーナーの熱を加える。これにより、被処理物質の底面付近を除いた部分を高温にして、さらに被処理物質を3つの流路により反転させることで、被処理物質の全体を満遍なく均一に加熱処理する。
【0006】
そして、加熱処理工程から衝突処理工程へ被処理物質を輸送する工程では、加熱処理後の被処理物質はスクリュー圧送機によって衝突処理装置へと輸送される。このスクリュー圧送機の内部には、スクリューが設けられており、当該スクリューが回転することで加熱処理後の高温の被処理物質が輸送される。
【0007】
衝突処理工程では、コンプレッサーから圧縮気体通路を通して圧縮気体が噴射装置に対して等しい分量で供給される。この圧縮気体に対して、スクリュー圧送機から供給された被処理物質が加わり、ノズル部材の先端のノズル口から噴射される。各ノズル部材の先端部分にはそれぞれ外側へ拡大するスカート部が取り付けられており、各スカート部の先端開口が対向している。
従って、各ノズルのノズル口から噴射された被処理物質は、各スカート部によって規制されながら噴射され、衝突領域において烈しく衝突する。この衝突によって被処理物質中に含まれる有害物質をミクロレベルで分解できるので、汚染土壌や廃液など有害物質を含む殆ど全ての被処理物質をほぼ完全に無害化することができる。
【0008】
【特許文献1】特許第3378572号公報(第3頁右欄−第5頁左欄、図1、図4ないし図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成では、加熱処理工程から衝突処理工程への輸送工程にて、加熱処理後の高温の被処理物質をスクリュー圧送機にて輸送するため、スクリュー圧送機内部のスクリューが高温下に曝される。このため、当該スクリューを高温環境で機能させるためにも、複雑な冷却機構を設けたり、当該スクリューを高価な材料で形成するなど、無害化処理に当るコストが大幅に増大してしまうおそれがある、という問題が一例として挙げられる。
【0010】
本発明は、上述したような問題点を解消すべく、有害物質を含む被処理物質を低コストで無害化処理できる無害化処理システムおよび無害化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、有害物質を含む被処理物質を無害化する無害化処理システムであって、前記被処理物質を熱処理する熱処理部、および、内部が密閉され前記熱処理部にて熱処理された前記被処理物質を貯留する熱処理容器部を備え、前記有害物質を熱処理にて無害化する熱処理ユニットと、内部が密閉された衝突処理容器部、この衝突処理容器部の内部空間にて互いに対向する一対の噴射ノズルユニット、および、気体を加圧して当該加圧気体を前記一対の噴射ノズルユニットのそれぞれに供給する加圧気体供給部を備え、前記加圧気体供給部から供給された前記加圧気体を前記一対の噴射ノズルユニットから噴射することにより、前記熱処理ユニットにて前記熱処理された被処理物質同士を前記内部空間中で衝突させ、前記有害物質を無害化する衝突処理ユニットと、一端が前記熱処理容器部の内部に設けられ、かつ、他端が前記一対の噴射ノズルユニットから噴射される前記加圧気体のそれぞれの流路内に開口する状態で設けられ、前記一対の噴射ノズルユニットから前記加圧気体が噴射されることによる吸引力で、前記熱処理容器部から前記加圧気体のそれぞれの流路へと前記熱処理された被処理物質を内部を通して輸送する筒状部材と、を具備したことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、例えば、被処理物質に有害有機物が含まれる場合、熱処理ユニットにて当該有害有機物を酸化させて90%ほど無害化でき、衝突処理ユニットにて残りの10%を漏れなく無害化できる。
そして、熱処理ユニットから衝突処理ユニットへと熱処理後の被処理物質を輸送する工程において、噴射ノズルユニットからの噴射による吸引力を利用することで、筒状部材を介して熱処理後の高温の被処理物質を輸送できる。また、熱処理容器部の内部は密閉されているので、熱処理部にて熱処理された高温状態の被処理物質を貯留することにより加圧状態になり、当該内部加圧により熱処理容器部の底部に貯留する熱処理後の被処理物質に対して押出力が作用する。このため、熱処理ユニットから衝突処理ユニットへと熱処理後の被処理物質を更にスムーズに輸送することができる。これにより、従来のスクリュー圧送機を用いずとも、熱処理ユニットから衝突処理ユニットへと熱処理後の被処理物質を輸送できるので、製造コストやランニングコストを大幅に下げることができる。
また、筒状部材は、従来のようにスクリューが設けられず内部が空洞となっているので、被処理物質が筒状部材内部で詰まってしまうこともなく、無害化処理システム全体を滞りなく連続運転させることができる。このため、筒状部材内部に詰まった被処理物質を取り除くなどのメンテナンスも不要であり、無害化処理システムを低コストで維持できる。
したがって、低コストで有害物質を含む被処理物質を無害化処理できる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無害化処理システムにおいて、前記熱処理部は、筒部材を円弧状に屈曲した形状で、当該筒部材の内部を前記被処理物質が流動する流動部と、この流動部の内部を流動する前記被処理物質に対して燃焼ガスを噴射する複数のバーナー部と、を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、流動部を筒部材で形成したことで内部が密閉され、これによりバーナー部による熱が内部で閉じ込められ、被処理物質を短時間で加熱することができる。また、流動部を円弧状に屈曲した形状としたことにより、流動部内部を流動する被処理物質が流動部の内周面に沿って旋回するので、わざわざ反転させる必要もなく、被処理物質に対して均一に加熱処理することができる。また、万一、流動部への被処理物質の供給側に向けて熱処理された被処理物質が逆流するような場合も、流動部を円弧状とすることで熱処理された被処理物質を流動部の内周面に衝突させて勢いを減退させ、供給側に熱処理された被処理物質が到達することを防ぐことができ、供給側の各装置の破損を防ぐことができる。この際、円弧状の流動部は水平面に対して平行に設置することが好ましい。これにより、バーナー部の噴射力で充分に熱処理しながら被処理物質を熱処理容器部へと輸送することができる。
さらに、熱処理容器部に連通する流動部の内部が密閉されて各バーナー部で高温の燃焼ガスを噴出することから、燃焼ガスの噴射圧力と高熱により流動部内部が加圧状態となり、流動部に連通する熱処理容器部の内部圧力を高めることができる。これにより、筒状部材を介して熱処理ユニットから衝突処理ユニットへとより一層スムーズに被処理物質を輸送することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の無害化処理システムにおいて、前記複数のバーナー部は、前記流動部の周面に螺旋状に配設されていることを特徴とする。
この発明によれば、被処理物質が流動部の内部を流動する間に、流動部の周面に螺旋状に配設された各バーナー部にて加熱されることにより流動部の内部で旋回流が生じ、被処理物質に対して万遍なく均一に加熱処理することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の無害化処理システムにおいて、前記複数のバーナー部のそれぞれは、前記燃焼ガスを噴射する噴出口を複数備えていることを特徴とする。
この発明によれば、各バーナー部に複数の噴出口が設けられているので、流動部の内部を流動する被処理物質を瞬間的に高温状態にすることができ、この加熱処理によって、被処理物質における有害物質のうちの大部分、例えば90%以上を高速に分解することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の無害化処理システムにおいて、前記加圧気体供給部は、気体を加圧する気体加圧手段と、前記気体加圧手段からの前記加圧気体を前記噴射ノズルのそれぞれに供給するパイプ部と、前記パイプ部における前記気体加圧手段と前記各噴射ノズルユニットとの間にそれぞれ設けられ、前記パイプ部よりも径大となった内部空間を有したエアストッカーと、を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、気体加圧手段により気体を加圧して、パイプ部および一対のエアストッカーを介して一対の噴射ノズルユニットに加圧気体を供給する。この際、一対のエアストッカーを介することにより加圧気体を噴射ノズルユニットにムラなく安定して供給できると共に、一対のエアストッカーにて更に加圧気体を圧縮し、高度に圧縮された加圧気体を一対の噴射ノズルユニットに供給することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の無害化処理システムにおいて、前記一対の噴射ノズルユニットのそれぞれは、前記加圧気体を噴出するノズル口を有した噴射ノズル本体を備え、この噴射ノズル本体は、前記ノズル口となる開口端へ向けて徐々に径小となる第1の截頭円錐部、および、一端側がこの第1の截頭円錐部の基端側に同一軸上で一体的に設けられた第1の円筒部を有した外側部材と、この外側部材の内部において前記外側部材と同一軸上に設けられ、前記ノズル口に対向する開口端へ向けて徐々に径小となる第2の截頭円錐部、および、一端側がこの第2の截頭円錐部の基端側に同一軸上で一体的に設けられ、他端側が前記パイプ部材に連通した第2の円筒部を有した内側部材と、を備え、前記第1の円筒部の他端側と前記第2の円筒部の他端側とがシールされた状態を維持すると共に、前記外側部材および前記内側部材の少なくともいずれか一方が前記軸方向に移動可能とされていることを特徴とする。
この発明によれば、外側部材および内側部材の少なくともいずれか一方を軸方向に移動することにより、外側部材における第1の截頭円錐部の内周面と、内側部材における第2の截頭円錐部の外周面との間隔が変化する。このため、加圧気体が内側部材に供給されてノズル口より噴射される際、当該間隔を変化させることにより気体の噴出量を変化させることができる。したがって、筒状部材から供給される被処理物質の粘性や温度などに合わせて、加圧気体の噴出量を適宜調整し、最適な条件で衝突処理を行うことができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の無害化処理システムにおいて、前記第1の截頭円錐部の内周面における前記ノズル口側には、前記第1の截頭円錐部の軸方向に対して傾斜し、かつ、内方へ向けて突出した突出部が形成されていることを特徴とする。
この発明によれば、加圧気体は、ノズル口から噴射される際に、突出部に沿って旋回する。そして、噴射された加圧気体の流路内に被処理物質が吸引・導入されて、噴射された加圧気体および被処理物質はスカート部の内部にて螺旋状の旋回流となる。この結果、噴射された加圧気体および被処理物質がスカート部の内部空間にて凝縮されると共に、スカート部の開口する他端側から対向する他方のスカート部へと向けて延びた略円柱状の空間に被処理物質を均一に分散することができる。つまり、衝突の際に利用可能なエネルギーは、スカート部を設けることで限られた領域に閉じ込められて集中し、ロケット噴射口の場合と同程度のエネルギーレベルになる。これにより、正面衝突する被処理物質の衝突エネルギーを著しく高めることができ、高効率で無害化処理を行うことができる。
この際、一対の噴射ノズルユニットにおける各突出部は、一方のノズル口から噴射される加圧気体の螺旋状旋回流の回転方向が、他方のノズル口から噴射される加圧気体の当該回転方向に対して逆になるように、それぞれ突出形成されることが好ましい。これにより、噴射された加圧気体および被処理物質を激しく正面衝突させることができるので、より効率的に無害化できる。また、スカート部の内周面の開き角度は45度であることが好ましい。これにより、衝突の際に利用可能なエネルギーを最も効率良く集中でき、スカート部が設けられない場合と比較して約8倍衝突エネルギーを凝縮することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の無害化処理システムにおいて、前記被処理物質には水分が含まれており、この水分を前記衝突処理ユニットの前記内部空間中で正面衝突させることにより超臨界状態とし、この超臨界状態の水分により前記有害物質を無害化することを特徴とする。
この発明によれば、水分を含んだ被処理物質同士を正面衝突させた際に、当該水分が超臨界状態と略同様の状態となる。このため、例えばPCB(Poly Chlorinated Biphenyl)などの高度に安定した有機有害物質を分解するために、従来の超臨界水酸化法などの高コストの処理法を用いずとも、超臨界水の持つ強い反応溶媒特性を利用して被処理物質に含まれる有害物質を高効率で分解することができる。
【0020】
請求項9に記載の発明は、有害物質を含む被処理物質を無害化する無害化処理方法であって、熱処理部にて前記被処理物質を熱処理することにより前記有害物質を無害化する加熱工程と、この加熱工程において熱処理された前記被処理物質を、内部が密閉された熱処理容器部に貯留する高温体貯留工程と、内部が密閉された衝突処理容器部の内部空間にて互いに対向する位置に設けられた一対の噴射ノズルユニットのそれぞれに、加圧気体を供給する加圧気体供給工程と、この加圧気体供給工程にて供給された前記加圧気体を前記一対の噴射ノズルユニットから噴射することにより、前記熱処理ユニットにて前記熱処理された被処理物質同士を前記内部空間中で衝突させ、前記有害物質を無害化する衝突工程と、一端が前記熱処理容器部の内部に設けられ、かつ、他端が前記一対の噴射ノズルユニットから噴射される前記加圧気体のそれぞれの流路内に開口する状態で設けられた筒状部材の内部を通して、前記一対の噴射ノズルユニットから前記加圧気体が噴射されることによる吸引力で、前記熱処理容器部から前記加圧気体のそれぞれの流路へと前記熱処理された被処理物質を輸送する輸送処理工程と、を具備したことを特徴とする。
この発明によれば、前述の無害化処理システムと同様に、低コストで有害物質を含む被処理物質を無害化処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(1)無害化処理システム1の全体構成
まず、無害化処理システム1の全体構成について図1に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る無害化処理システムを示す模式図である。
図1において、無害化処理システム1は、図中左側中央部に示すA1およびA2で前処理を行う前処理ユニット2と、その右下方に位置するB1〜B3で熱処理を行う熱処理ユニット3と、その上方に延びるCで輸送処理を行う筒状部材4と、図中中央に位置するD1およびD2で衝突処理を行う衝突処理ユニット5と、その右上方のE1,E2で無害化処理後の気体に後処理を施す気体処理ユニット6と、その下方のF1,F2で無害化処理後の固体および液体(スラッジ)について後処理を施すスラッジ処理ユニット7と、を備えている。
【0023】
(2)前処理ユニット2
前処理ユニット2は、導入された被処理物質に対して酸化還元処理を施す酸化還元装置21と、この酸化還元装置21と連通し当該酸化還元処理された被処理物質を内部に貯留する貯留ホッパー22とを備えている。
具体的には、酸化還元装置21は、容器211と、この容器211の内部に設けられ容器211内部の被処理物質等を均一に攪拌するプロペラなどの攪拌手段212とを備えている。容器211には、被処理物質が液体物、粉体の場合はそのままの状態で、被処理物質が固形物の場合は図示しないクラッシャーにて適宜微細化された状態、あるいは、図示しない篩い網にて大きな被処理物質を取り除いた状態で投入される。これと共に、これら被処理物質を後工程で好適に処理するための水が適宜投入され、更にこれら被処理物質を中和するための水酸化ナトリウムや過酸化水素などが投入される。そして、この容器211の底部には図示しない排出孔が設けられており、この排出孔から貯留ホッパー22へと酸化還元処理が施された被処理物質が供給される。
【0024】
なお、本発明の無害化処理システムにて処理可能な被処理物質としては、例えば、汚染土壌、工場廃液、タイヤ、プラスチック、医療廃棄物、シュレッダーダスト、建築廃材、重金属含有灰などが挙げられ、環境問題となる有害物質を含むいずれも適用できる。
また、被処理物質に含まれる有害物質としては、有害有機化合物、有害無機化合物、有害微生物(病原体)などが挙げられるが、これに限定されない。有害有機化合物としては、例えば、有機溶媒(特に塩素系有機溶媒)、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ダイオキシン等の有機塩素化合物、有機臭素化合物などがある。有害微生物としては、特にバイオハザードIII、IVレベルの病原体が挙げられる。
【0025】
(3)熱処理ユニット3
次に熱処理ユニット3について図面に基づいて説明する。図2は、熱処理部の一部を示す外観図である。図3は、熱処理部の要部を示す断面図である。図4は、バーナー部の噴出口を示す正面図である。
【0026】
熱処理ユニット3は、前処理ユニット2にて前処理された被処理物質を高温加熱して、被処理物質に含まれる有害物質を無害化する。この熱処理ユニット3は、図1に示すように、スクリュウコンベアなどで構成され貯留ホッパー22に貯留された被処理物質を輸送する被処理物質輸送部31と、この被処理物質輸送部31から供給された被処理物質に対して熱処理を施す熱処理部32と、この熱処理部32で熱処理された被処理物質を貯留する熱処理容器部33とを備えている。
【0027】
具体的には、熱処理部32は、図2に示すように、円筒部材を円弧状に屈曲した形状の流動部321と、この流動部321の周面に配設された複数のバーナー部322とを備えて構成されている。
【0028】
流動部321の内周面は、例えば2000℃に耐え得る耐熱材にて形成されており、被処理物質が流動する流路を形成する。また、流動部321の外周には、図示しない保温手段や水冷式の冷却手段が必要に応じて設けられている。そして、流動部321の一端は、被処理物質輸送部31の一端に連結されており、被処理物質輸送部31から流動部321の内部へと被処理物質が供給される。また、流動部321の他端側は、熱処理容器部33の内部へと挿入されている。
【0029】
なお、円弧状の流動部321は水平面に対して平行に設置されることが好ましい。仮に、流動部321を熱処理容器部33へ向けて下がる状態に傾けて設置した場合、流動部321内部を流動する被処理物質が重力作用により熱処理容器部33へ向けて所定の速度以上の速度で流動し、被処理物質に対して充分に熱処理することができなくなる。また、仮に、流動部321を熱処理容器部33へ向けて上がる状態に傾けて設置した場合、被処理物質輸送部31に熱処理した被処理物質が逆流してしまう。したがって、円弧状の流動部321を水平面に対して平行に設置したことで、バーナー部322の噴射力で充分に熱処理しながら被処理物質を熱処理容器部33へと輸送することが可能となる。
【0030】
複数のバーナー部322は、流動部321の内部を流動する被処理物質に対して燃焼ガスを噴射し、被処理物質を例えば1500〜2000℃で加熱する。これらバーナー部322は、図2に示すように、全体として流動部321の周面に螺旋状に配設されている。すなわち、複数のバーナー部322のそれぞれは、流動部321の周面において、流動部321の円筒軸方向に沿って所定の間隔を置いて配設され、かつ、円筒軸方向から見て円周に沿って所定の間隔を置いて配設されている。
そして、各バーナー部322は、図3および図4に示すように、流動部321の周面の一部に設けられて一端が開口するハウジング322Aと、このハウジング322Aの開口部を閉塞する略円盤状で、その外面部に図示しない燃焼ガス供給ラインが接続されて燃焼ガスが供給される燃料供給部322Bと、この燃料供給部322Bの内面部に配設されて燃焼ガスを噴射する複数の噴出口322Cとを備えている。
【0031】
より具体的には、ハウジング322Aは、図3に示すように、円筒部材を軸方向に傾斜して切断した形状を有しており、流動部321の周面の一部が径方向の外側に突出する状態で設けられている。このハウジング322Aの開口部が設けられた一端側は、流動部321の上流側、図中右側に設けられており、ハウジング322Aの軸方向Xと流動部321内部を流動する被処理物質の流れ方向Yとのなす角αは鋭角となっている。これにより、噴出口322Cから燃焼ガスが噴射された際に、被処理物質が流動部321の下流側、図中左側へと流動する推進力が働くことになる。さらに、ハウジング322Aの軸方向Xは、流動部321の周面に螺旋状に設けられた複数のバーナー部322を結んだ際の仮想線に略沿っている。これにより、噴出口322Cから燃焼ガスが噴射されると、流動部321の内部において流動する被処理物質が螺旋状の旋回流を描くことになる。
【0032】
また、複数の噴出口322Cは、図4に示すように、燃料供給部322Bの内側の面部に同心円上かつ等角度で、複数、例えば5つ設けられている。この複数の噴出口322Cは、燃料供給部322Bより供給された燃焼ガスを流動部321内の被処理物質に対して噴出し、当該燃焼ガスの噴出方向はハウジング322Aの軸方向に略平行している。
ここで、燃焼ガスとしては、プロパンガス(1300−1500℃)やアセチレンガス(1500−2000℃)等に酸素ガスを混合したものが挙げられる。
【0033】
熱処理容器部33は、内部が耐熱性および耐圧性に優れた材料にて形成され、高度に密閉された容器である。この熱処理容器部33の外周には、図示しない保温手段や水冷式の冷却手段が必要に応じて適宜設けられている。そして、熱処理容器部33の側面の一部からは、流動部321の下端側が内部に挿入されており、この流動部321の下端側は、熱処理容器部33内部における底部近傍に設けられ、かつ、水平面に対して略平行して設けられている。これにより、流動部321から熱処理容器部33の内部に流出した被処理物質が渦状に旋回し、熱処理容器部33の底部に貯留された被処理物質が攪拌されることになる。
また、熱処理容器部33の上面の一部からは、筒状部材4の一端側、図1中下端側が挿入されている。
【0034】
(4)筒状部材4
筒状部材4は、耐熱性および耐圧性に優れた材料にて形成された内径寸法が例えば40mmのパイプ部材であり、複数、例えば図1に示すように2本設けられている。これら筒状部材4の下端側は熱処理容器部33の上面の一部から挿入され、この筒状部材4の下端部は熱処理容器部33の底部から所定の間隔を空けた位置に配設されている。また、筒状部材4の他端側(図1中上端側)は、噴射ノズル本体52から噴射される加圧気体のそれぞれの流路内に開口する状態で設けられている。これにより、噴射された加圧気体により吸引力が働いて、熱処理容器部33の底部に貯留された熱処理後の被処理物質が吸い上げられることになる。
【0035】
そして、筒状部材4には、ノズル口52Aの噴出側あるいは内部のいずれかの位置に、流体の逆流を防ぐための図示しない安全弁が設けられていることが好ましい。この場合、不慮の事故で無害化処理システム1全体の動作が停止したとしても、衝突処理ユニット5からの高温の気体や、高温の被処理物質などが、筒状部材4から熱処理ユニット3や前処理ユニット2に戻ることがなく安全性を確保できる。
【0036】
(5)衝突処理ユニット5
衝突処理ユニット5について図面に基づいて説明する。図5は、エアストッカーおよび噴射ノズル本体の外観を示した斜視図である。図6は、噴射ノズル本体を示す側断面図である。図7は、衝突処理ユニットの要部を示す一部断面図である。図8は、衝突処理容器部および減圧手段を示す模式図である。図9は、減圧手段の要部を示す模式図であり、(A)は縦断面を示すものであり、(B)は横断面を示すものである。
【0037】
衝突処理ユニット5は、互いに対向する一対の噴射ノズルユニットから圧縮気体を噴射することにより、熱処理ユニット3にて熱処理された被処理物質同士を衝突・分解させ、有害物質を無害化する。この衝突処理ユニット5は、図1に示すように、加圧気体供給部51と、一対の噴射ノズル本体52と、一対のスカート部53と、衝突処理容器部54と、減圧手段55(図8参照)とを備えている。
なお、この噴射ノズル本体52とスカート部53とで本発明における一対の噴射ノズルユニットを構成する。
【0038】
加圧気体供給部51は、気体を加圧してこの加圧した気体を一対の噴射ノズル本体52に供給するものである。
具体的には、この加圧気体供給部51は、図1および図5に示すように、気体を例えば55気圧(5.56MPa)に加圧するエアコンプレッサーなどの気体加圧手段511と、この気体加圧手段511で加圧された気体を貯留する高圧タンク512と、一端がこの高圧タンク512に連通して気体加圧手段511にて加圧された気体を噴射ノズル本体52のそれぞれに供給するパイプ部513と、このパイプ部513の2つに分岐した他端側に連通し一対の噴射ノズル本体52のそれぞれに対して設けられたエアストッカー514とを備えている。
【0039】
具体的には、一対のエアストッカー514は、図5に示すように、パイプ部513よりも径大となった内部空間を有した気体貯留タンクである。これらエアストッカー514の一端側(図5中右端側)は、前述のようにパイプ部513の分岐した他端側に連通し、エアストッカー514の他端側(図5中左端側)は、噴射ノズル本体52の後述する内側部材522に連結されている。また、図6に示すように、エアストッカー514の内部空間の内径寸法は、噴射ノズル本体52における内側部材522の内径寸法よりも大幅に大きく設定されている。このため、気体加圧手段511により供給された加圧気体がエアストッカー514にて更に凝縮されようになっている。
【0040】
噴射ノズル本体52は、図1に示すように、加圧気体供給部51側、すなわち、エアストッカー514に直に接続されて、加圧気体供給部51から供給された加圧気体を噴射するものである。これら一対の噴射ノズル本体52の対向間距離は、例えば920mmに設定されている。そして、各噴射ノズル本体52は、図6に示すように、加圧気体を噴出するノズル口52Aを有した外側部材521と、この外側部材521の内部に設けられ外周面に雄ねじ522Cが形成された内側部材522と、この内側部材522の雄ねじ522Cが螺合され外側部材521と一体となった被螺合部材523と、内側部材522の雄ねじ522Cが螺合され外側部材521と別体で設けられたロック部材524とを備えている。
【0041】
具体的には、外側部材521は、第1の截頭円錐部521Aおよび第1の円筒部521Bを有している。第1の截頭円錐部521Aは、ノズル口52Aとなる噴射側の開口端(図6中左端)へ向けて徐々に径小となる截頭円錐形状の部材である。なお、ノズル口52Aは、その内径寸法が例えば7mmに設定され、噴射された加圧気体による好適な流路を形成するためにもノズル口52Aの先端部から筒状部材4の上端部までの間に20mmの間隔を空けている。この第1の截頭円錐部521Aの内周面におけるノズル口52A側には、第1の截頭円錐部521Aの軸方向に対して傾斜し、かつ、内方へ向けて突出した突出部525が形成されている。この突出部525は、例えば図6に示す螺旋状のものや、直線状のもの、あるいは複数の螺旋状のものなどが採用される。そして、突出部525は、一対の噴射ノズル本体52において、一方のノズル口52Aから噴射される加圧気体の螺旋状旋回流の回転方向が、他方のノズル口52Aから噴射される加圧気体の当該回転方向に対して逆になるように、それぞれ突出形成されていることが好ましい。これにより、後述する衝突工程D2にて一対の噴射ノズル本体52から噴射された加圧気体がスカート部53の内側で旋回流を形成し、噴射された加圧気体および被処理物質が激しく正面衝突することになる。第1の円筒部521Bは、その一端側(図6中左端側)が第1の截頭円錐部521Aの基端側(図6中右端側)に、同一軸上で一体的に設けられた円筒部材である。
【0042】
内側部材522は、外側部材521の内部において外側部材521と同一軸上に設けられており、第2の截頭円錐部522Aおよび第2の円筒部522Bを有している。第2の截頭円錐部522Aは、ノズル口52Aに対向する開口端(図6中左端)へ向けて徐々に径小となる截頭円錐状の部材である。第2の円筒部522Bは、その一端側(図6中左端側)が第2の截頭円錐部522Aの基端側(図6中右端側)に、同一軸上で一体的に設けられた部材である。また、第2の円筒部522Bの他端側(図6中右端側)は、前述のように、エアストッカー514の他端部(図6中左端)に接続されており、これにより一対の噴射ノズル本体52とパイプ部513とが連通した状態となっている。また、雄ねじ522Cは、第2の円筒部522Bの外周面における略中央に形成されている。
【0043】
被螺合部材523は、外側部材521における第1の円筒部521Bの右端側を閉塞する円盤状に形成され、その中央には内側部材522の雄ねじ522Cが螺合する雌ねじ523Cが形成されている。
ロック部材524は、例えばナット部材であり、その中央部には内側部材522の雄ねじ522Cが螺合する雌ねじ524Aが形成されている。このロック部材524と被螺合部材523との間には、図示しないOリングなどのシール手段が必要に応じて設けられており、第1の円筒部521Bの右端側と第2の円筒部522Bの右端側とが完全にシールされた状態となっている。
ここにおいて、この被螺合部材523およびロック部材524はいわゆるダブルナットを構成し、ロック部材524を締め付けることにより、外側部材521の内側部材522に対する位置がロックされるようになっている。
【0044】
スカート部53は、一対の噴射ノズル本体52のそれぞれに対して設けられ、衝突処理容器部54の内部空間において互いに対向している。これらスカート部53は、それぞれ一端側(図7中左端側)が一対の噴射ノズル本体52のノズル口52Aに連通し、他端側(図7中右端側)が対向する他方へ向けて拡径しながら開口した略円錐状に形成されている。例えば、このスカート部53の軸方向長さ寸法は300mmに、その右端側の内径寸法は約250mmに設定されている。そして、スカート部53の左端側と一対の噴射ノズル本体52のノズル口52Aとの間には、筒状部材4の上端側が位置している。これにより、ノズル口52Aから噴射された加圧気体の流路内に、筒状部材4の開口する上端側が位置することになる。
なお、スカート部53の内周面の開き角度βは45度に設定されることが好ましい。これにより、後述する衝突工程D2にて、衝突の際に利用可能なエネルギーを最も効率良く集中でき、スカート部53が設けられない場合と比較して約8倍衝突エネルギーを凝縮することができる。
【0045】
衝突処理容器部54は、耐熱性および耐圧性に優れた材料にて形成された容器であり、内部が高度に密閉されている。この衝突処理容器部54の内部空間には、図8に示すように、一対のスカート部53の間に、後述する衝突工程D2にて加圧気体および被処理物質が正面衝突する衝突空間Sが形成されることになる。そして、衝突処理容器部54の上方には、衝突後の被処理物質の気体成分が排気される気体排出孔541が設けられている。また、衝突処理容器部54の下方側は、下方へ向けて径小となる漏斗状に形成されており、その下端部は衝突後の被処理物質のスラッジ成分が排出されるスラッジ排出孔542となっている。
【0046】
減圧手段55は、衝突直後の加圧気体および被処理物質を、衝突処理容器部54内部にて減圧する装置である。この減圧手段55は、図8に示すように、一対のスカート部53および衝突空間Sの外側を囲む円筒状の羽根支持体551と、この羽根支持体551の内周面に設けられた複数の羽根部材552と、羽根支持体551を回転する回転機構553とを備えて構成されている。
【0047】
羽根支持体551は、その軸方向が一対のスカート部53の軸方向と同一であり、図9(A)に示すように、羽根支持体551の外周面における軸方向両端側には、それぞれ歯車551Aが形成されている。また、羽根支持体551の周面部には複数の貫通孔551Bが形成されており、この貫通孔551Bを介して、衝突直後の加圧気体および被処理物質が羽根支持体551の外側へと放出可能になっている。
【0048】
羽根部材552は、図9(A)に示すように、それぞれ、略長尺矩形状の板材を長手方向中央部を湾曲させた状態に形成されており、羽根支持体551の軸方向に沿って並列して設けられている。これら羽根部材552は、羽根支持体551の内周面とのなす角が45度となる状態に取り付けられており、これにより、衝突直後の加圧気体および被処理物質が羽根部材552に衝突した際に、その運動エネルギーが効率良く減衰されることになる。
【0049】
回転機構553は、羽根支持体551の歯車551Aに噛合する複数の歯車であり、衝突処理容器部54における一対のスカート部53が設けられている側の内周面に設けられている。これら回転機構553には図示しない回転駆動手段にて駆動力が与えられる。そして回転機構553は、衝突直後の加圧気体および被処理物質が羽根部材552に衝突した際に、羽根支持体551が当該衝突により回転しないように羽根支持体551を強固に規制しながら、羽根支持体551を所定の回転速度で回転させるようになっている。
なお、回転機構553により羽根支持体551を回転させる際は、羽根支持体551の回転速度が一対のノズル口52Aより噴射された加圧気体などの螺旋状旋回流の回転速度よりも小さく設定されることが好ましく、特に1/4回転とされることが好ましい。これにより、羽根部材552が噴射された加圧気体などにより破損することなく、最も効率的に衝突直後の加圧気体の運動エネルギーを減衰することが可能となる。また、回転機構553の各部に衝突直後のスラッジが侵入しないように、回転機構553の外側を図示しない防塵ラバーなどにて覆う構成としてもよい。
【0050】
(6)気体処理ユニット6
気体処理ユニット6は、無害化処理後の気体について後処理を行う装置で、図1に示すように、減圧装置61と、冷却装置62とを備えている。
減圧装置61は、衝突処理容器部54の上方における気体排出孔541と連通しており、気体排出孔541から排気された無害化処理後の気体成分を、図示しない減圧ドームなどにて常圧レベル(例えば1.01×10−1MPa)まで減圧する。
冷却装置62は、減圧装置61と連続して設けられており、減圧装置61にて減圧された後の気体を常温レベル(例えば23℃)まで降温する。この冷却装置62は排気口621を備え、この排気口621を介して冷却した気体が大気中に放出される。なお、この無害化処理後の気体は、大気中に放出しても問題ないレベルまで無害化されているが、冷却装置62の後に更に図示しないアルカリ水槽や活性炭槽を設け、より無害化を充実されても構わない。
【0051】
(7)スラッジ処理ユニット7
スラッジ処理ユニット7は、無害化処理後のスラッジについて後処理を行う装置で、図1に示すように、スラッジ輸送部71と、スラッジ貯留部72とを備えている。
スラッジ輸送部71は、例えばスクリュウコンベアなどであり、その一端側が衝突処理容器部54のスラッジ排出孔542に連通し、その他端側がスラッジ貯留部72に繋がっており、無害化処理後のスラッジを衝突処理容器部54からスラッジ貯留部72へと輸送する。
スラッジ貯留部72は、スラッジ輸送部71から輸送された無害化処理後のスラッジを内部に貯留するタンクである。このスラッジ貯留部72に貯留された状態において、重金属等の有害物質はガラス状の固化物の中に閉じ込められた状態となるので、無害化処理後のスラッジをそのまま埋め立て処理しても環境に悪影響を及ぼすことはないが、スラッジ貯留部72の後に当該スラッジから重金属成分のみを抽出除去する従来からある装置を設けても構わない。
【0052】
(8)無害化処理システム1による無害化処理
次に、上記のような構成の無害化処理システム1による無害化処理について説明する。
まず、前処理工程として、液体物、粉体、または固形物からなる被処理物質を、酸化還元装置21に導入する(図1A1)。この際、固形物からなる被処理物質を導入する場合は、予めクラッシャーにて細粒化した状態あるいは篩い網にて大きな被処理物質を取り除いた状態で酸化還元装置21に導入する。また、液体物や粉体などの被処理物質を導入する場合は、溶媒などにて有害物質の濃度を薄めた状態で酸化還元装置21に導入する。
【0053】
さらに、酸化還元装置21に水、水酸化ナトリウム、過酸化水素などを導入し、酸化還元装置21にて被処理物質に対して酸化還元処理を施す(図1A2)。これにより、廃酸または廃アルカリによる汚染水などの被処理物質が中和される。そして、酸化還元装置21から貯留ホッパー22へと酸化還元後の被処理物質を導入し、熱処理ユニット3へ向けて輸送されるまで貯留ホッパー22内に貯留する。
【0054】
この後、被処理物質輸送部31にて貯留ホッパー22に貯留された被処理物質を熱処理部32に供給する(図1B1)。
被処理物質が熱処理部32に供給されると、熱処理部32は、当該被処理物質に対して高温加熱処理を施す(図1B2:加熱工程)。すなわち、被処理物質輸送部31の一端に連結された流動部321の上端から流動部321の内部へと供給された被処理物質を、バーナー部322により例えば1500〜2000℃で高温加熱処理する。
【0055】
この際、被処理物質は、バーナー部322による噴射圧力で、流動部321の内部にて加熱されながら流動する。
このとき、流動部321が円筒材で形成されているので内部が密閉されており、バーナー部322による熱が内部で閉じ込められることにより、被処理物質は短時間で加熱される。また、流動部321が円弧状に屈曲した形状であるので、流動部321内部を流動する被処理物質が流動部321の内周面に沿って旋回するのでわざわざ反転させる必要もなく、被処理物質に対して均一に熱処理が施される。また、万一、被処理物質輸送部31に向けて熱処理された被処理物質が逆流するような場合も、流動部321を円弧状としているので、熱処理された被処理物質が流動部321の内周面に衝突して勢いが減退し、熱処理された被処理物質が高速で逆流して被処理物質輸送部31に到達することがない。
さらに、被処理物質は、流動部321内部を流動する間に、流動部321の周面に螺旋状に配設された各バーナー部322にて加熱されかつ推進力を与えられることにより、流動部321内部で流動する被処理物質が旋回し、万遍なく均一に加熱処理される。また、各バーナー部322に複数の噴出口322Cが設けられているので、流動部321の内部を流動する被処理物質が瞬間的に高温状態となる。
このような加熱処理により、被処理物質における有害物質のうちの大部分、例えば90%以上が高速で分解される。なお、例えば、有害物質のPCBは1850−2000℃で分解可能であり、ダイオキシンなどの有機有害物質の多くは1350−1500℃で分解可能であり、これら有害物質は熱処理ユニット3にて充分に分解される。
【0056】
さらに、熱処理後の被処理物質は、流動部321の他端側から熱処理容器部33の内部へと流出し、熱処理容器部33内部に貯留される(図1B3:高温体貯留工程)。
この際、被処理物質は液体または気体状となっており、流動部321の他端側から熱処理容器部33の内部へと流出した被処理物質は、熱処理容器部33の内部にて渦状に旋回し、これにより、熱処理容器部33の底部に貯留された被処理物質が均一に攪拌され、熱処理容器部33の底部に熱処理後の被処理物質が固着することがない。
【0057】
そして、熱処理された被処理物質は、筒状部材4を介して熱処理容器部33から衝突処理ユニット5へと輸送される(図1C:輸送処理工程)。
すなわち、複数のバーナー部322にて高温の燃焼ガスが噴出されることにより、必然的に熱処理容器部33の内部圧力が高まり、熱処理容器部33の底部に貯留された被処理物質に対して、それぞれの筒状部材4の内部へ向かう状態に押出力が作用する。これと共に、後述する衝突処理工程において、加圧気体供給部51で加圧された気体がノズル口52Aから噴射されることで、筒状部材4の上端側が負圧状態となり、熱処理容器部33の底部に貯留された被処理物質に対して、筒状部材4の上端側へ向かう状態に吸引力が作用する。この際、筒状部材4は、従来のようにスクリューが設けられず内部が空洞となっているので、被処理物質が筒状部材4の内部で詰まってしまうことがない。
これにより、熱処理容器部33からから衝突処理ユニット5へと、熱処理された被処理物質が輸送される。なお、この輸送処理工程Cにおいて、熱処理工程にて1800℃から2000℃に加熱された被処理物質は、筒状部材4を通過する間に元の温度の約30%まで降温する。
【0058】
一方、衝突処理ユニット5では、気体加圧手段511にて例えば55気圧(5.56MPa)に気体が加圧され、高圧タンク512、パイプ部513、一対のエアストッカー514を介して一対の噴射ノズル本体52に加圧気体が供給される(図1D1:加圧気体供給工程)。
【0059】
この際、一対のエアストッカー514を介して一対の噴射ノズル本体52に気体加圧手段511からの加圧気体を供給するので、噴射ノズル本体52に供給される加圧気体の供給状態が安定する。さらに、一対の噴射ノズル本体52への加圧気体の供給量がバランス良く維持され、噴射ノズル本体52からの安定した噴射状態が得られる。
また、エアストッカー514における内部空間の内径寸法は、噴射ノズル本体52における内側部材522の内径寸法よりも大幅に大きく設定されているので、エアストッカー514から噴射ノズル本体52に向かって急激に内径が小さくなる。これにより、気体加圧手段511により供給された加圧気体がエアストッカー514にて更に凝縮され、噴射ノズル本体52には高度に圧縮された加圧気体が供給される。
【0060】
また、噴射ノズル本体52にて加圧気体の噴出量を調整する場合、外側部材521を軸方向を中心に回転させると、被螺合部材523を介して外側部材521が内側部材522に対して軸方向に相対移動する。これにより、外側部材521における第1の截頭円錐部521Aの内周面と、内側部材522における第2の截頭円錐部522Aの外周面との間隔が変化する。そして、外側部材521を所望の位置に配置して、ロック部材524を締め付けることにより外側部材521を固定する。このようにして、当該間隔を変化させることにより噴射ノズル本体52からの加圧気体の噴出量を調整する。なお、各ノズル口52Aからの当該噴出量は、実質的に等しく設定することが好ましい。
【0061】
そして、加圧気体供給工程D1の後、衝突処理ユニット5は、加圧気体供給工程D1において供給された加圧気体を一対の噴射ノズル本体52から噴射し、熱処理ユニット3にて熱処理された被処理物質同士を衝突処理容器部54内部で衝突・分解させる(図1D2:衝突工程)。
【0062】
すなわち、加圧気体供給工程D1にて加圧した気体が一対の噴射ノズル本体52から噴出されると、前述のように、熱処理容器部33の底部に貯留された被処理物質などに対して筒状部材4の上端側へ向かう状態に吸引力が作用する。そして、加圧気体と被処理物質とが入り混じった状態でスカート部53の内部へ向かって噴射される。
【0063】
より具体的には、加圧気体供給工程D1にて加圧した気体が一対の噴射ノズル本体52から噴出されると、加圧気体は突出部525に沿って旋回する。そして、噴射された加圧気体によって螺旋状に旋回した状態のガス流路が形成されると共に、筒状部材4の上端側が負圧状態となり、熱処理容器部33の底部に貯留された被処理物質などに対して筒状部材4の上端側へ向かう状態に吸引力が作用する。さらに、噴射された加圧気体の流路内に被処理物質が吸引・導入されて、噴射された加圧気体および被処理物質は螺旋状の旋回流を形成しながら入り混じった状態でスカート部53の内部に噴射される。
この結果、噴射された加圧気体および被処理物質がスカート部53の内部空間にて凝縮されると共に、スカート部53の開口する他端側から対向する他方のスカート部53へと向けて延びた略円柱状の空間に被処理物質が均一に分散する。つまり、衝突の際に利用可能なエネルギーは、スカート部53を設けることで限られた領域に閉じ込められて集中し、ロケット噴射口の場合と同程度のエネルギーレベルになる。これにより、正面衝突する被処理物質の衝突エネルギーが著しく高められる。
【0064】
そして、スカート部53の開口する他端側から噴射された被処理物質同士が、衝突空間Sにおいて烈しく衝突し、被処理物質中に加熱処理後も残留する有害物質が分解される。
この際、被処理物質は例えば高温の溶融状態あるいはガス状態となって、55気圧(5.56MPa)の高圧の加圧気体と共に噴射されるので、実質的に被処理物質は250気圧(25.3MPa)以上に到達し、被処理物質中に加熱処理後も残留する有害物質が完全に分解される。例えば、加熱および加圧のみによる従来の手法でダイオキシンを分解するためには、650℃において300気圧(30.3MPa)以上もの高圧が必要であるが、本実施形態では、これよりはるかに低い圧力にてダイオキシンが分解される。
【0065】
また、重金属等の有害物質を含む被処理物質を互いに衝突処理させることによって、被処理物質を固化させてスラグないしガラス状固化物を生成させ、この固化物の中に有害物質が閉じ込められる。
なお、被処理物質に水分が含まれている場合、一対の噴射ノズル本体52からの加圧気体の噴射により被処理物質同士が正面衝突した際に、当該水分が超臨界状態と略同様の状態となり、超臨界水の持つ強い反応溶媒特性により被処理物質に含まれる有害物質が高効率で分解される。
【0066】
衝突直後の加圧気体および被処理物質は、衝突処理容器部54内部において、減圧手段55により減圧される。すなわち、回転機構553にて羽根支持体551が回転され、衝突直後の加圧気体および被処理物質が羽根部材552に衝突して、その運動エネルギーが減衰される、すなわち、減圧される。この後、減圧された衝突直後の加圧気体および被処理物質は、貫通孔551Bを介して羽根支持体551の外側へと放出される。
【0067】
そして、被処理物質のうち、衝突処理ユニット5により衝突処理が施された後の気体成分については、衝突処理容器部54の気体排出孔541から排気され、減圧装置61にて減圧される(図1E1)。この後、さらに冷却装置62にて温度が下げられて(図1E2)、常温常圧となった無害化処理後の気体は排気口621から大気中に放出される。
また、無害化処理後のスラッジについては、衝突処理容器部54のスラッジ排出孔542から排出されて、スラッジ輸送部71によりスラッジ貯留部72へと輸送され(図1F1)、スラッジ貯留部72に貯留される(図1F2)。
【0068】
以上にて、無害化処理システム1による無害化処理が終了する。なお、上記の構成の無害化処理システム1は、12トントラック2台に積載可能であり、その無害化処理能力は、固体が24トン/日、液体では36トン/日に達する。このレベルで、有害有機化合物は99.9999%分解可能である。
【0069】
(9)実施形態の効果
上記のような構成の無害化処理システム1および無害化処理方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0070】
熱処理ユニット3において、流動部321を円筒材で形成したので、流動部321の内部が密閉されてバーナー部322による熱が内部に閉じ込められ、被処理物質を短時間で加熱することができる。
また、流動部321を円弧状に屈曲した形状としたので、流動部321内部を流動する被処理物質が流動部321の内周面に沿って旋回し、被処理物質に対して万遍なく加熱処理することができる。
そして、複数のバーナー部322を、流動部321の周面に螺旋状に配設しているので、被処理物質が流動部321の内部を流動する間に、流動部321の周面に螺旋状に配設された各バーナー部322にて加熱されることにより流動部321の内部で旋回流が生じ、被処理物質に対してより万遍なく均一に加熱処理することができる。
さらに、複数のバーナー部322のそれぞれに、流動部321の内部にて燃焼ガスを噴射する複数の噴出口322Cを設けているので、複数の噴出口322Cで燃焼ガスを一斉に噴射し、流動部321の内部を流動する被処理物質を瞬間的に高温状態にすることができ、この加熱処理によって、被処理物質における有害物質のうちの大部分、例えば90%以上を分解することができる。
したがって、熱処理ユニット3にて被処理物質中の有害物質の90%程度を高速で無害化することができる。
【0071】
筒状部材4において、筒状部材4の下端を熱処理容器部33の内部に設け、筒状部材4の上端をノズル口52Aから噴出される加圧気体の流路内に配設している。これにより、加圧気体供給部51で加圧された気体がノズル口52Aから噴射されることにより吸引力が働き、筒状部材4の内部を通して熱処理容器部33から衝突処理ユニット5における加圧気体の流路内へと熱処理された被処理物質を輸送できる。
また、各バーナー部322で高温(例えば1500〜2000℃)の燃焼ガスを噴出することから、バーナー部322が熱処理容器部33の内部を加圧して、流動部321に連通する熱処理容器部33内部を高温高圧環境とすることができる。これにより、熱処理容器部33の底部に貯留された被処理物質が内部圧力により押し出され、筒状部材4を介して熱処理容器部33から衝突処理ユニット5へと被処理物質をより好適に輸送することができる。
したがって、加圧気体の噴射による吸引力と、熱処理容器部33の内部圧力とを利用することで、従来のスクリュー圧送機を用いずに、熱処理ユニット3から衝突処理ユニット5へと筒状部材4を介して熱処理後の高温の被処理物質を輸送できる。これにより、製造コストやランニングコストを大幅に下げることができ、被処理物に対して低コストで無害化処理できる。
【0072】
衝突処理ユニット5において、加圧気体供給部51で加圧した気体を一対の噴射ノズル本体52から噴射して、熱処理ユニット3にて熱処理された被処理物質同士を衝突空間Sで衝突させるので、被処理物質中において熱処理後も残留する有害物質を完全に分解して無害化することができる。
そして、一対のエアストッカー514を介して、気体加圧手段511にて加圧した気体を一対の噴射ノズル本体52に供給しているので、加圧気体を噴射ノズル本体52にムラなく安定して供給できると共に、一対のエアストッカー514にて更に加圧気体を圧縮させて、高度に圧縮された加圧気体を一対の噴射ノズル本体52に供給することができる。したがって、高度の噴射力でもって被処理物質同士を衝突空間Sで衝突させることができるので、より好適に無害化処理を行うことができる。
また、第1の截頭円錐部521Aの内周面におけるノズル口52A側には突出部525を形成しているので、噴射された加圧気体および被処理物質はスカート部53の内側で旋回流を形成し、噴射された加圧気体および被処理物質を激しく正面衝突させることができる。これにより、高効率で無害化処理を行うことができる。
さらに、外側部材521を内側部材522に対して軸方向に相対移動させることにより、加圧気体の噴出量を調整可能としているので、筒状部材4から供給される被処理物質の粘性や温度などに合わせて、加圧気体の噴出量を適宜調整し、最適な条件で衝突処理を行うことができる。
したがって、例えば、ダイオキシンを分解するために、加熱・加圧のみによる従来の手法で650℃において300気圧(30.3MPa)以上もの高圧を必要としていたものを、本実施形態では、これよりはるかに低い圧力で完全にダイオキシンを分解することができる。
【0073】
また、被処理物質に予め水分が含まれている場合、一対の噴射ノズル本体52から噴射された当該水分が正面衝突により超臨界状態となり、この超臨界状態の水分にて被処理物質を分解することができる。このため、例えばPCBなどの高度に安定した有機有害物質を分解するために、従来の超臨界水酸化法などの高コストの処理法を用いずとも、超臨界水の持つ強い反応溶媒特性を利用して被処理物質に含まれる有害物質を高効率で分解することができる。
【0074】
(10)実施形態の変形
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0075】
前記実施形態では、無害化処理システム1により処理可能な被処理物として、液体物、粉体、または固形物からなるものを例示したがこれに限らない。すなわち、被処理物質は汚染大気や毒ガス(イペリット、サリン、タブン、VX、ホスゲン等)などの気体状であってもよい。この場合、例えば被処理物質輸送部31に、内部を高度に密封する密封手段を設け、前処理工程を経ずに直接的に気体状の被処理物質を被処理物質輸送部31に導入すれば、前記実施形態と同様に無害化処理することが可能である。
【0076】
前記実施形態では、2本の筒状部材4のそれぞれの下端側は、熱処理容器部33の上面の一部から熱処理容器部33の底部近傍まで挿入されるとしたが、これに限らない。すなわち、2本の筒状部材4のそれぞれの下端側は、熱処理容器部33の側面から熱処理容器部33の底部近傍に挿入されている構成としてもよい。また、図1に示すように、熱処理ユニット3が下で衝突処理ユニット5が上という位置関係に限られず、熱処理ユニット3および衝突処理ユニット5は同一水平位置に設けられる、あるいは、熱処理ユニット3が上で衝突処理ユニット5が下に位置する構成としてもよい。
【0077】
前記実施形態では、図1にて、無害化処理システム1に2本の筒状部材4を設ける構成を例示したが、これに限らない。すなわち、例えば、熱処理容器部33に10本の筒状部材の一端側を挿入し、当該10本の筒状部材の他端部をまとめて2本とし、これらをノズル口52Aの噴出側に設ける構成などとしてもよい。このようにすれば、より効率的に輸送処理が行える。
【0078】
前記実施形態では、図1にて流動部321の形状を円弧状のものとして例示したが、これに限らず、例えば流動部321の形状を所定ピッチ数の螺旋状としてもよい。
【0079】
前記実施形態では、複数のバーナー部322は、図2に示すように、全体として流動部321の周面に螺旋状に配設されているとしたがこれに限らず、無害化処理を好適に行うことができる配置であればいずれでもよい。例えば、複数のバーナー部を流動部321の周面における鉛直方向下側に所定の間隔を置いて配設して、バーナー部により被処理物質に対して下から燃焼ガスを吹き上げて加熱処理を行う構成としてもよい。このような構成の場合、被処理物質を下から加熱することで被処理物質が激しく攪拌され、無害化処理を好適に行うことができる。
また、図1では熱処理容器部33内部に挿通された流動部321の他端側にはバーナー部322は設けられていないが、熱処理容器部33内部に設けられる構成としてもよい。そして、バーナー部322の数も図1および図2に示したものに限定されない。
【0080】
前記実施形態では、噴出口322Cは、図4に示すように燃料供給部322Bに対して5つ設けられる構成を例示したが、これに限らず、噴出口322Cの数は1つ以上であればいずれでもよく、噴出口322Cの数が多い程より効果的に加熱処理を行うことができる。
【0081】
前記実施形態において、貯留ホッパー22と被処理物質輸送部31との間を開放・閉塞可能な開閉手段を設け、この開閉手段にて貯留ホッパー22と被処理物質輸送部31との間を適宜閉塞し、被処理物質輸送部31の内部を適宜密閉する構成としてもよい。このようにすれば、熱処理容器部33内部をより高圧状態とすることができ、さらに、不慮の事故により被処理物質輸送部31から貯留ホッパー22へと高温の被処理物質が逆流してしまうことを防ぐことができる。
【0082】
前記実施形態では、減圧手段55において、羽根支持体551を衝突空間Sの外側を囲む円筒状とし、また、複数の羽根部材552を羽根支持体551の内周面に設ける構成としたが、これに限らない。すなわち、例えば、羽根支持体を一対の環状体として、これら一対の環状体に架設する状態で複数の羽根部材552の両端を固定する構成としてもよい。このような構成の場合、羽根支持体551の周面に貫通孔551Bを形成せずとも、衝突直後の加圧気体および被処理物質を減圧した状態で、羽根部材552で囲まれた空間の外側へと排出することができる。
また、羽根部材552は、略長尺矩形状の板材を長手方向中央部を湾曲させた形状に形成する構成に限らず、略長尺矩形状の板材を直線状のまま、あるいは、S字カーブ形状など様々な形状のものを採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、排ガス、汚染水および汚染土壌等の有害物質を無害化処理する無害化処理システムおよび無害化処理方法として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施形態に係る無害化処理システムを示す模式図である。
【図2】前記実施の形態における熱処理部の一部を示す外観図である。
【図3】前記実施の形態における熱処理部の要部を示す断面図である。
【図4】前記実施の形態におけるバーナー部の噴出口を示す正面図である。
【図5】前記実施の形態におけるエアストッカーおよび噴射ノズルの外観を示した斜視図である。
【図6】前記実施の形態における噴射ノズルを示す側断面図である。
【図7】前記実施の形態における衝突処理ユニットの要部を示す一部断面図である。
【図8】前記実施の形態における衝突処理容器部および減圧手段を示す模式図である。
【図9】前記実施の形態における減圧手段の要部を示す模式図であり、(A)は縦断面を示すものであり、(B)は横断面を示すものである。
【符号の説明】
【0085】
1 無害化処理システム
3 熱処理ユニット
32 熱処理部
321 流動部
322 バーナー部
322C 噴出口
33 熱処理容器部
4 筒状部材
5 衝突処理ユニット
51 加圧気体供給部
511 気体加圧手段
513 パイプ部材
514 エアストッカー
52 噴射ノズル本体
521A 第1の截頭円錐部
521B 第1の円筒部
522 内側部材
522A 第2の截頭円錐部
522B 第2の円筒部
525 突出部
53 衝突処理容器部
54 スカート部
B2 加熱工程
B3 高温体貯留工程
C 輸送処理工程
D1 加圧気体供給工程
D2 衝突工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質を含む被処理物質を無害化する無害化処理システムであって、
前記被処理物質を熱処理する熱処理部、および、内部が密閉され前記熱処理部にて熱処理された前記被処理物質を貯留する熱処理容器部を備え、前記有害物質を熱処理にて無害化する熱処理ユニットと、
内部が密閉された衝突処理容器部、この衝突処理容器部の内部空間にて互いに対向する一対の噴射ノズルユニット、および、気体を加圧して当該加圧気体を前記一対の噴射ノズルユニットのそれぞれに供給する加圧気体供給部を備え、前記加圧気体供給部から供給された前記加圧気体を前記一対の噴射ノズルユニットから噴射することにより、前記熱処理ユニットにて前記熱処理された被処理物質同士を前記内部空間中で衝突させ、前記有害物質を無害化する衝突処理ユニットと、
一端が前記熱処理容器部の内部に設けられ、かつ、他端が前記一対の噴射ノズルユニットから噴射される前記加圧気体のそれぞれの流路内に開口する状態で設けられ、前記一対の噴射ノズルユニットから前記加圧気体が噴射されることによる吸引力で、前記熱処理容器部から前記加圧気体のそれぞれの流路へと前記熱処理された被処理物質を内部を通して輸送する筒状部材と、を具備した
ことを特徴とする無害化処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無害化処理システムにおいて、
前記熱処理部は、
筒部材を円弧状に屈曲した形状で、当該筒部材の内部を前記被処理物質が流動する流動部と、
この流動部の内部を流動する前記被処理物質に対して燃焼ガスを噴射する複数のバーナー部と、を備えている
ことを特徴とする無害化処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無害化処理システムにおいて、
前記複数のバーナー部は、前記流動部の周面に螺旋状に配設されている
ことを特徴とする無害化処理システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の無害化処理システムにおいて、
前記複数のバーナー部のそれぞれは、前記燃焼ガスを噴射する噴出口を複数備えている
ことを特徴とする無害化処理システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の無害化処理システムにおいて、
前記加圧気体供給部は、
気体を加圧する気体加圧手段と、
前記気体加圧手段からの前記加圧気体を前記噴射ノズルのそれぞれに供給するパイプ部と、
前記パイプ部における前記気体加圧手段と前記各噴射ノズルユニットとの間にそれぞれ設けられ、前記パイプ部よりも径大となった内部空間を有したエアストッカーと、を備えている
ことを特徴とする無害化処理システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の無害化処理システムにおいて、
前記一対の噴射ノズルユニットのそれぞれは、前記加圧気体を噴出するノズル口を有した噴射ノズル本体を備え、
この噴射ノズル本体は、
前記ノズル口となる開口端へ向けて徐々に径小となる第1の截頭円錐部、および、一端側がこの第1の截頭円錐部の基端側に同一軸上で一体的に設けられた第1の円筒部を有した外側部材と、
この外側部材の内部において前記外側部材と同一軸上に設けられ、前記ノズル口に対向する開口端へ向けて徐々に径小となる第2の截頭円錐部、および、一端側がこの第2の截頭円錐部の基端側に同一軸上で一体的に設けられ、他端側が前記パイプ部材に連通した第2の円筒部を有した内側部材と、を備え、
前記第1の円筒部の他端側と前記第2の円筒部の他端側とがシールされた状態を維持すると共に、前記外側部材および前記内側部材の少なくともいずれか一方が前記軸方向に移動可能とされている
ことを特徴とする無害化処理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の無害化処理システムにおいて、
前記第1の截頭円錐部の内周面における前記ノズル口側には、前記第1の截頭円錐部の軸方向に対して傾斜し、かつ、内方へ向けて突出した突出部が形成されている
ことを特徴とする無害化処理システム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の無害化処理システムにおいて、
前記被処理物質には水分が含まれており、この水分を前記衝突処理ユニットの前記内部空間中で正面衝突させることにより超臨界状態とし、この超臨界状態の水分により前記有害物質を無害化する
ことを特徴とする無害化処理システム。
【請求項9】
有害物質を含む被処理物質を無害化する無害化処理方法であって、
熱処理部にて前記被処理物質を熱処理することにより前記有害物質を無害化する加熱工程と、
この加熱工程において熱処理された前記被処理物質を、内部が密閉された熱処理容器部に貯留する高温体貯留工程と、
内部が密閉された衝突処理容器部の内部空間にて互いに対向する位置に設けられた一対の噴射ノズルユニットのそれぞれに、加圧気体を供給する加圧気体供給工程と、
この加圧気体供給工程にて供給された前記加圧気体を前記一対の噴射ノズルユニットから噴射することにより、前記熱処理ユニットにて前記熱処理された被処理物質同士を前記内部空間中で衝突させ、前記有害物質を無害化する衝突工程と、
一端が前記熱処理容器部の内部に設けられ、かつ、他端が前記一対の噴射ノズルユニットから噴射される前記加圧気体のそれぞれの流路内に開口する状態で設けられた筒状部材の内部を通して、前記一対の噴射ノズルユニットから前記加圧気体が噴射されることによる吸引力で、前記熱処理容器部から前記加圧気体のそれぞれの流路へと前記熱処理された被処理物質を輸送する輸送処理工程と、
を具備したことを特徴とする無害化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−105548(P2007−105548A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230729(P2005−230729)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(505300782)株式会社三育 (1)
【出願人】(505300793)株式会社国際環境保全 (1)
【出願人】(505300818)
【Fターム(参考)】