説明

無機ナノ粒子を含有するマウンティングマット並びにその作製方法

本発明は、汚染防止装置を触媒コンバータに実装するためのマウンティングマットに関するものであり、このマウンティングマットは、1nm〜100nmの平均直径を有する無機粒子が内部に分布された無機繊維の不織マットを含むマウンティングマットであり、このマウンティングマットは有機結合剤を含まないか、又はこのマウンティングマットの総重量に基づき5重量%以下の量の有機結合剤を含有する。本発明は、更に、このマウンティングマットを含む汚染防止装置及びこのマウンティングマットを作製する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染防止装置に汚染防止要素を実装するために好適なマウンティングマットに関する。具体的には、本発明は、無機ナノ粒子粉末を含有するマウンティングマットに関する。本発明は、更に、そのようなマウンティングマットの作製方法に関する。本発明は、更にまた、このマウンティングマットを含む汚染防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染防止装置は、大気汚染を抑制するために自動車に使用されている。そのようなデバイスは、公害防止要素を含む。汚染防止装置の代表例としては、触媒コンバータ及びディーゼルパティキュレートフィルター又はトラップが挙げられる。触媒コンバータは、通常、触媒を支持する壁を有するセラミックモノリシック構造を含有する。触媒は、通常、大気汚染を抑制するために、エンジン排出ガス中の一酸化炭素及び炭化水素を酸化させ、窒素酸化物を還元する。モノリシック構造は、また、金属製の場合もある。ディーゼルパティキュレートフィルター又はトラップは、通常、ウォールフロータイプフィルターを含み、これは、例えば多孔質セラミック材料から作られるハニカム状モノリシック構造であることが多い。これらのフィルタは、通常、エンジン排ガスからの煤煙及び他の排ガス微粒子を取り除く。これらの装置はそれぞれ、汚染防止要素を保持するハウジング(通常、ステンレススチールのような金属製)を有する。モノリシック汚染防止要素は、しばしば、その壁厚及び1平方インチ当たりの隙間すなわちセルの数(cpsi)によって表される。1970年代早期に一般的であったのは、304マイクロメータ(12ミル)の壁厚及び47セル/cm(300cpsi)のセル密度を有するセラミックモノリシック汚染防止要素である(「300/12モノリス」)。
【0003】
排ガス規制法が厳しくなるにつれて、モノリスの立体表面積を増加し、熱容量を減少し、圧力降下を減少するために、壁厚が低減された。900/2モノリスが標準になった。セラミックモノリシック構造は薄い壁を有するので脆く、振動又は衝撃による損傷を受けやすく、破壊されやすい。損傷を起こす力は、汚染防止装置の組立て中の手荒な取り扱い若しくは落下、エンジンの振動、あるいは粗い道路を走行することによって生じ得る。セラミックモノリスは、また、ロードスプレーとの接触によるような高い熱衝撃による損傷にも曝される。
【0004】
セラミックモノリスは、概して、それらを含有する金属製ハウジングより一桁低い熱膨張係数を有する。例えば、金属製ハウジングの周囲の壁とモノリスとの間の間隙は、約4mmでスタートし、エンジンが触媒コンバータのモノリシック要素を25℃から最高動作温度である約900℃まで上げるにつれて合計約0.33mm増加し得る。それと同時に、金属製ハウジングの温度は約25℃から約530℃に上昇する。金属製ハウジングがより小さい温度変化を経るにもかかわらず、金属製ハウジングの熱膨張係数がより高いことによって、ハウジングはモノリシック要素の膨張よりも速く、より大きい周辺サイズに膨張する。
【0005】
そのような熱サイクルは、通常、車両の寿命期間中に数百回又は数千回生じる。道路衝撃及び振動によるセラミックモノリスへの損傷を避け、熱膨張の差を補い、モノリスと金属製ハウジングとの間を排ガスが通過する(それにより触媒をバイパスする)のを防止するために、セラミックモノリスと金属ハウジングとの間にマウンティングマットが配置される。ハウジング内にモノリスを置くプロセスは、また、キャニングとも呼ばれ、モノリスの周囲をマット材料シートで包む工程と、この包まれたモノリスをハウジング内に挿入する工程と、ハウジングを圧して閉じる工程と、ハウジングの横エッジに沿ってフランジを溶接する工程と、を含む。
【0006】
典型的に、マウンティングマット材料は、無機繊維、所望により膨張材料、有機結合剤、充填剤、及び他の補助剤を含む。ハウジングにモノリスを実装するために使用される既知のマット材料は、例えば、米国特許第3,916,057号(ハッチ(Hatch)ら)、同第4,305,992号、(ランジャー(Langer)ら)、同第4,385,135号(ランジャーら)、同第5,254,410号(ランジャーら)、同第5,242,871号(ハシモトら)、同第3,001,571号(ハッチ)、同第5,385,873号(マクネイル(MacNeil))、及び同第5,207,989号(マクネイル)、並びに1978年8月23日付けの英国公開特許第1,522,646号(ウッド(Wood))、並びに1983年1月26日付けの日本国公開特許昭58−13683号(出願特許平2−43786号及び同昭56−112413号)及び1981年7月10日付けの日本国公開特許昭56−85012号(昭54−168541号)に記述されている。マウンティングマット材料は、長期間の使用にかけてのあらゆる動作温度範囲で非常に弾力的に保たれるべきである。
【0007】
広範な動作温度及び多くの熱サイクル数にかけて十分に弾力的で、モノリスと金属ハウジングとの間で変化する隙間を受容するために圧縮可能であるマウンティングシステムの必要性が存在する。現況技術のマウンティング材料はそれら独自の実用性及び利点を有するが、汚染防止装置における用途のためにマウンティング材料を改良する必要性が現在もなお残っている。加えて、マウンティングマットの成形に関わる主たる懸念の1つは、材料のコストと性能属性との間のバランスを取ることである。そのような高品質のマウンティングシステムを可能な最低コストで提供することが望まれる。
【0008】
マウンティングマットを含有する汚染防止装置が、曝露され得る使用時温度及び動作温度での、保持圧力の改善をもたらすマウンティングマット又はシステムを提供する特定の必要性が存在する。更に、膨張性マット及び非膨張性マットにおける保持圧力を改善するための方法を発見することが特に望まれる。更に、マウンティングマットが有機結合剤を含まないとき若しくはその有機結合剤含有量が低いときでさえも使用可能なソリューションを発見することが望ましいであろう。大量の有機結合剤をマウンティングマットに使用することはマウンティングマットの性能を下げる可能性がある、及び/又は、環境上不利益である(通常、汚染防止装置の最初の使用時に結合剤を燃焼する必要があるため)ので、大量の有機結合剤をマウンティングマットに使用することは望ましくなく、したがって、そのようなソリューションを発見することが特に望ましい。汚染防止装置へのマットの実装の際に膨張性マウンティングマットはひび割れを起こしやすいため、結合剤含有量が低くかつ改良された保持圧力を有するマウンティングマットを、これらのマットで開発することが特に困難であることは、これまでに実証されてきた。
【0009】
米国特許第2006/008395号(テンアイク(Ten Eyck)ら)は、無機繊維、特に溶脱ガラス繊維の表面処理をして非膨張性マットの性能の維持の改良を達成することを開示している。しかし、コーティングされた繊維を得るためのこの開示された製造方法は、繊維を処理するためにコロイド材料スラリーを使用するため、面倒で費用がかかる。繊維の処理は熱処理を更に含み、これは製造エネルギーコストの増加を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、改善された性能のマウンティングマットをより低コストで容易かつ便利に製造できる作製方法を発見することがいっそう望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の観点において、本発明は、触媒コンバータに汚染防止装置を実装するためのマウンティングマットを提供するものであって、このマウンティングマットは、内部に分布された1ナノメートル(nm)〜100nmの平均直径を有する無機粒子が中に分布された無機繊維の不織マットを備え、このマウンティングマットは有機結合剤を含まないか、又はこのマウンティングマットの総重量に基づき5重量%以下の量の有機結合剤を含有する。
【0012】
第2の観点において、本発明は、汚染防止装置であって、ハウジングと、ハウジング内に配置された汚染防止要素と、汚染防止要素及びハウジングの間に配置されて汚染防止要素の位置を定め、並びに機械的衝撃及び熱衝撃を吸収するマウンティングマットとを有し、マウンティングマットが上述のようなマウンティングマットを含む。
【0013】
第3の観点において、本発明は、上述のマウンティングマットの作製方法を提供するものであって、この方法は、
(i)成形ワイヤの上に置かれる、開かれた底を有する成形ボックスの入口を通して無機繊維を供給し、成形ワイヤの上に繊維のマットを成形する工程であって、この成形ボックスが、この入口とハウジング底との間のハウジングに少なくとも1列に備えられた、繊維の凝集を解きほぐすための複数の繊維分離ローラーと、エンドレスベルトスクリーンと、を有するものである、工程と、
(ii)繊維分離ローラーの下及び成形ワイヤの上のエンドレスベルトの下位走行部上の繊維の凝集を捉える工程と、
(iii)捉えられた凝集がこのエンドレスベルトから解放され、ローラーに接触してローラーによって解きほぐされ得るように、繊維分離ローラーの上のこのエンドレスベルト上に捉えられた繊維の凝集を搬送する工程と、
(iv)繊維のマットを、成形ワイヤによって成形ボックスから出して移動する工程と、
(v)この繊維のマットを圧縮し、この繊維のマットをその圧縮された状態に拘束し、それにより触媒コンバータのハウジングに汚染防止要素を実装するために好適な望ましい厚さを有するマウンティングマットを得る工程と、を含み、
1nm〜100nmの平均直径を有する無機粒子がこのマウンティングマットに提供される、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】成形ボックスの概略的透視図を図示。
【図2】成形ボックスの概略的側面図を図示。
【図3】図2に図示された成形ボックスの詳細な図。
【図4】汚染防止装置の概略図を図示。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるマウンティングマットは、コスト効果に優れた容易な方法で製造することが可能であり、汚染防止装置に汚染防止要素を実装するために使用されたときに、例えば周囲条件及び動作条件下での保持性能など、概して改良された性能を有する。更に、特定の実施形態における無機ナノ粒子(1nm〜100nmの平均直径を有する粒子)の使用は、有機結合剤含有量が低い(有機結合剤が5重量%以下、例えば有機結合剤が3重量%以下、又は有機結合剤が2重量%以下)か、又は有機結合剤を含まないマウンティングマットを得る可能性を提供する。具体的には、改良された性能の、有機結合剤含有量が低い又は有機結合剤を含まない膨張性マウンティングマットを得ることができる。
【0016】
このマウンティングマットは無機ナノ粒子を含む。無機ナノ粒子は、1nm〜100nmの平均直径、例えば2nm〜80nm、例えば3nm〜60nm又は3nm〜50nmの平均直径を有する。特定の実施形態において、平均直径は8nm〜45nmである。無機ナノ粒子は、任意の形状を有することができるが、概して球形又は円盤のような形である。微粒子が球形でない限り、「直径」という用語は、微粒子の最大直径の測定値を意味するものと理解されるべきである。また、本発明との関係において、平均直径は、通常、重量平均直径である。
【0017】
無機ナノ粒子は、その化学組成において大きく異なる場合があるが、通常、例えばシリカ、アルミナ、チタニウム、及び/又はジルコニアである酸化物のような酸化物を含む。雲母、粘土、ゼオライトなど、Mg、Ca、Al、Zr、Fe、Na、K及び/又はLiを含有するケイ酸塩が、無機ナノ粒子として更に挙げられる。使用可能な市販のナノ粒子としては、ナルコケミカル社(Nalco Chemical Inc)(オランダ、レイデン所在)の「ナルコ(NALCO)」(商品名)、エボニックインダストリーズ社(Evonik Industries)(ドイツ、フランクフルト所在)の「エアロシル(AEROSIL)」(商品名)、ロックウッドアディティブス社(Rockwood Additives)(英国ワイドネス(Widnes)所在)の「ラポナイト(LAPONITE)」(商品名)、エルケム社(Elkem ASA)(ノルウェー、Voogsbygd所在)の「ミクロライト(MICROLITE)」(商品名)、ベトイトパフォーマンスミネラルズ社(Performance Minerals LLC)(米国テキサス州ヒューストン所在)の「ベントナイト(BENTONITE)」(商品名)、及びエカケミカルス社(Eka Chemicals AB)(スウェーデン、ゴセンバーグ所在)の「ビンドジル(BINDZIL)」(商品名)が挙げられる。
【0018】
無機ナノ粒子は、通常、マットの総重量に基づき少なくとも0.5重量%の量でマウンティングマットに含まれる。代表的な範囲は、0.5〜10%であり、例えば0.6重量%〜8重量%、又は0.8重量%〜7重量%である。
【0019】
無機ナノ粒子は、様々な方法でマウンティングマットに提供され得る。例えば、一実施形態では、繊維を不織ウェブに織り込んでマウンティングマットを形成する前に、溶液又は分散液(例えば分散水溶液)として繊維に無機ナノ粒子を散布する。別の実施形態では、ナノ粒子の分散液を用いて、成形された不織ウェブ若しくはマウンティングマットを含浸するか、又はこの分散液をそこに散布することができる。更に別の実施形態において、ナノ粒子を乾燥粉末として繊維と共にドライエアレイドプロセスによって添加することができ、具体的には、下記に説明される、例えば図1〜3に図示するような成形機を用いるドライエアレイドプロセスである。
【0020】
マウンティングマットに使用される繊維は、概して、これらのマットが曝露される可能性のある排気ガスの温度に耐えることができる繊維である。通常、使用される繊維は、高融点セラミック繊維、ガラス繊維、及び多結晶無機繊維を含む無機繊維である。無機繊維材料の例としては、アルミナ、シリカ、ムライトなどアルミナ−シリカ、ガラス、セラミック、炭素、シリコンカーバイド、ホウ素、アルミノホウケイ酸塩(aluminoborosilicate)、ジルコニア、チタニアなどが挙げられる。これらの無機材料は単独で使用されてもよく、これらの少なくとも2つが混合され、組み合わせで使用されてもよい。例えば、この無機繊維材料はアルミナのみを含むものでもよく、別の無機繊維材料をシリカなどアルミナと組み合わせて更に使用することができる。アルミナ−シリカ繊維材料は、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化ホウ素などの金属酸化物を更に含有してもよい。無機繊維は、単独又は2種類以上の組み合わせで使用することができる。これらの無機繊維のうち、アルミナ繊維、シリカ繊維、及びアルミナ−シリカ繊維のようなセラミック繊維を1つの特定の実施形態に使用し、アルミナ繊維及びアルミナ−シリカ繊維を別の実施形態に使用し、多結晶アルミナ−シリカ繊維を更に別の実施形態に使用することができる。
【0021】
特定の実施形態において、マットの無機繊維は、ゾルゲルプロセスによって得られるセラミック繊維を含む。「ゾルゲル」プロセスという用語は、溶液又は分散液の紡績又は押し出し、又は繊維若しくはその前駆体の構成成分の粘稠な濃縮物によって繊維が形成されることを意味する。したがって、ゾルゲルプロセスは、繊維の構成成分の溶解物の押し出しによって繊維が成形される溶融成形のプロセスと対照的である。好適なゾルゲルプロセスは、例えば、米国特許第3,760,049号(ボアラー(Borer)ら)に開示されているものであり、オリフィスを通して金属化合物の溶液又は分散液を押出し成形して連続した生の(未焼成の)繊維を形成し、それを焼成してセラミック繊維を得ることによってセラミック繊維を形成することが教示されている。これらの金属化合物は、通常、金属酸化物にか焼可能な金属化合物である。ゾルゲル形成された繊維は、しばしば、結晶質又は半結晶質であり、当該技術分野で多結晶質繊維として知られている。
【0022】
このゾルゲルプロセスによって繊維を形成するための金属化合物の溶液又は分散液の例としては、米国特許第3,709,706号(ソーマン(Sowman))に開示されているような、コロイド状シリカを含有する、ジルコニウムジアセテートのような酸素含有ジルコニウムの水溶液が挙げられる。追加的な例としては、塩基性酢酸アルミニウム水溶液のような水溶性又は分散性のアルミニウム化合物及びホウ素化合物の水溶液、又は、シリカのコロイダル分散液と水溶性又は分散性のアルミニウム化合物及びホウ素化合物との混合水溶液を含む2相システムが挙げられる。ゾルゲルプロセスによって作製できるその他の代表的な高融点金属酸化物繊維としては、高融点金属、耐熱金属としては、ジルコニア、ジルコン、ジルコニア−カルシア、アルミナ、アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。そのような繊維は、追加的に、酸化鉄、クロミア、及び酸化コバルトのような多様な金属酸化物を含有することができる。
【0023】
このマウンティングマットに有用なセラミック繊維としては、ムライト、アルミナ、高アルミナアルミノケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、ジルコニア、チタニア、酸化クロムのような多結晶酸化セラミック繊維が挙げられる。好ましい繊維は、通常、高アルミナの結晶質繊維であり、約60〜約98重量%の範囲の酸化アルミニウムと、約40〜約2重量%の範囲の酸化ケイ素を含む。これらの繊維は、例えば、3M社(ミネソタ州セントポール所在)の「ネクステル(NEXTEL)550」(商品名)、ダイソングループPLC(英国シェフィールド所在)の「サフィル(SAFFIL)」(商品名)、三菱化成(東京都所在)の「マフテック(MAFTEC)」(商品名)、ユニフラックス社(ニューヨーク州ナイアガラフォールズ所在)の「ファイバーマックス(FIBERMAX)」(商品名)、及びラス社(Rath GmbH)(ドイツ)の「アルトラ(ALTRA)」(商品名)として市販されている。
【0024】
好適な多結晶酸化物セラミック繊維としては、更に、アルミノホウケイ酸塩繊維が挙げられ、このアルミノホウケイ酸塩繊維は、好ましくは、約55〜約75重量%の範囲の酸化アルミニウムと、0以上約45重量%未満(好ましくは0以上44重量%未満)の範囲の酸化ケイ素と、0以上約25重量%未満(好ましくは約1〜約5重量%)の範囲の酸化ホウ素とを含む(理論的な酸化物基準で、それぞれAl、SiO、及びBとして計算される)。
【0025】
これらのアルミノホウケイ酸塩繊維は、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、及び最も好ましくは約100重量%が結晶性(すなわち結晶質繊維)である。アルミノホウケイ酸塩繊維は、例えば3M社から「ネクステル(NEXTEL)(登録商標)」312及び「ネクステル(NEXTEL)(商標)」440として市販されている。ゾルゲルプロセスによって得ることができるセラミック繊維は、通常、ショットがないか、又はショットがごく少量であり、通常、セラミック繊維の総重量に基づき1重量%未満のショットを含有する。また、セラミック繊維は、通常、1マイクロメートル〜16マイクロメートルの平均直径を有することになる。好ましい実施形態において、セラミック繊維は、5マイクロメートル以上の平均直径を有し、好ましくはこのセラミック繊維は3マイクロメートル未満の直径を有する繊維を本質的に含まず、より好ましくはこのセラミック繊維の層は4マイクロメートル未満の直径を有する繊維を含まないか又は本質的に含まない。ここで言う「本質的に含まない」とは、そのような小径の繊維の量が、繊維の総重量の1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下であることを意味する。
【0026】
更なる実施形態において、使用される無機繊維は、焼きなましセラミック繊維とも呼ばれる熱処理されたセラミック繊維を含む場合がある。焼きなましセラミック繊維としては、1999年9月16日付の米国公開特許第5,250,269号(ランジャー(Langer))若しくは国際公開特許第99/46028号に開示されているようなものを入手することができる。これらの文献の教示によれば、焼きなましセラミック繊維は、溶融成形された高融点セラミック繊維を最低700℃の温度で焼きなましすることによって得られる。セラミック繊維を焼きなましすることによって、より高い弾力性を有する繊維が得られる。米国特許第5,250,269号(ランジャー)に開示された試験条件下で、通常、少なくとも10kPaの弾力値が得られる。焼きなましに好適な溶融成形された高融点セラミック繊維は、多様な金属酸化物からメルトブロー又はメルトスパンすることができ、好ましくは30〜70重量%のアルミナと約70〜30重量%のシリカを有する、好ましくはAlとSiOとがほぼ等しい重量部の混合物である。この混合物は、他の酸化物、例えばB、P、及びZrOを含むことができる。好適な溶融成形された高融点セラミック繊維は多数の商業ソースから市販されており、カーボランダム社(Carborundum Co.)(ニューヨーク州ナイアガラフォールズ所在)の「ファイファーフラックス(FIBERFRAX)」(商品名)、サーマルセラミクス社(Thermal Ceramics Co.)(ジョージア州オーガスタ所在)の「セラファイバー(CERAFIBER)」及び「カオウール(KAOWOOL)(商品名)、プレミアリフラクトリーズ社(Premier Refractories Co.)(テネシー州アーウィン所在)の「サーウール(CER-WOOL)」(商品名)、新日鐵化学(東京都所在)の「SNSC」(商品名)が挙げられる。「サーウール(CER-WOOL)」(商品名)として知られるセラミック繊維の製造業者によれば、これらの繊維は48重量%のシリカと52重量%のアルミナとの混合物をメルトスパンしたものであり、3〜4マイクロメートルの平均繊維径を有する。「セラファイバー(CERAFIBER)」(商品名)として知られるセラミック繊維の製造業者によれば、これらの繊維は54重量%のシリカと46重量%のアルミナとの混合物をメルトスパンしたものであり、2.5〜3.5マイクロメートルの平均繊維径を有する。「SNSC 1260−D1」セラミック繊維の製造業者によれば、これらの繊維は54重量%のシリカと46重量%のアルミナとの混合物をメルト成形したものであり、約2マイクロメートルの平均繊維径を有する。
【0027】
特定の実施形態において使用した繊維はガラス繊維を含み、特に、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩ガラス繊維を含む。使用できるマグネシウムアルミニウムケイ酸塩ガラス繊維としては、10〜30重量%の酸化アルミニウムと、52〜70重量%の酸化シリコンと、1〜12重量%の酸化マグネシウムとを有するガラス繊維が含まれる。これらの酸化物の重量百分率は、Al、SiO、及びMgOの理論上の量に基づく。更に、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩ガラス繊維は、追加的な酸化物を含有する場合があると理解される。例えば、存在してもよい追加の酸化物としては、酸化ナトリウム又は酸化カリウム、酸化ホウ素及び酸化カルシウムが挙げられる。マグネシウムアルミニウムケイ酸塩ガラス繊維の具体的な例としては、典型的に約55%のSiOと、15%のAlと、7%のBと、19%のCaOと、3%のMgOと、1%の酸化物との組成物であるEガラス繊維、典型的に約65%のSiOと、25%のAlと、10%のMgOとの組成物であるSガラス及びS2ガラス繊維、及び典型的に60%のSiOと、25%のAlと、9%のCaOと、6%のMgOとの組成物であるRガラス繊維が挙げられる。Eガラス、Sガラス、及びS2ガラスは、例えば、アドバンスドグラスファイバーヤーンズ社(Advanced Glassfiber Yarns LLC)から入手可能であり、Rガラスは、サンゴバンベトロテックス社(Saint-Gobain Vetrotex)から入手可能である。これらのガラス繊維は、通常、チョップされたマグネシウムアルミニウムケイ酸塩ガラス繊維であって、ショットがない、又はショットが本質的にない、すなわちショットを5重量%未満有する。
【0028】
特定の実施形態では、熱処理されたガラス繊維を使用する場合がある。熱処理されたガラス繊維がガラス繊維の熱抵抗性を改良し得ることが発見された。ガラス繊維は、そのガラスの軟化点すなわち融点より約50℃〜100℃低い温度以下で熱処理され得る。概して、ガラスの熱処理の最低温度は約400℃であるが、より低い温度、例えば少なくとも300℃の低温も考慮され得る。しかしながら、より低い温度は、通常、ガラス繊維の熱抵抗性及び弾力性の望ましい増加を達成するためにガラス繊維をより長く熱に暴露することを要求する。300℃から、ガラスの軟化点すなわち融点より約50℃低い温度までの間の温度では、熱処理にかかる時間は、通常、約2分〜約1時間、例えば5〜30分であろう。
【0029】
本発明と関係する特定の実施形態において、マウンティングマットの無機繊維は生体溶解性繊維を含む場合がある。本明細書で使用する時、「生体溶解性繊維」は、生理学的媒質又はシミュレートした生理学的媒質内で分解性の繊維を指す。生理学的媒質は、例えば動物又は人間の肺等の気道内に典型的に見出される体液を含むが、これに限定されない。本明細書で使用する時、「耐久性」とは、生体溶解性でない繊維のことを指す。
【0030】
生体溶解性は、実験動物における繊維の直接着床の影響を観察することによって、又は繊維に曝露された動物若しくは人の検査によって、予測することができる。生体溶解性は、また、食塩水又は緩衝食塩水などのようなシミュレートした生理学的媒質における時間関数として繊維の溶解度を測定することによっても予測することができる。溶解度を決定するそのような方法の1つは、米国特許第5,874,375号(ゾイタス(Zoitas)ら)に記述されている。通常、生体溶解性繊維は、生理学的媒質において約1年以内に可溶であるか、又は実質的に可溶である。本明細書で使用される「実質的に可溶」という用語は、少なくとも約75重量%が溶解される繊維を指す。一部の実施形態では、繊維の少なくとも約50%が生理学的媒質において約6ヶ月以内に可溶である。他の実施形態では、繊維の少なくとも約50%が生理学的流体において約3ヶ月以内に可溶である。更に他の実施形態では、生体溶解性繊維の少なくとも約50%が生理学的流体において少なくとも約40日以内に可溶である。例えば、これらの繊維は、気道内注入後のラットにおける高温断熱繊維の生体内持続性試験に合格するものとして、フラウンホーファー研究所(Fraunhofer Institut)による認定を受けることができる(すなわち、これらの繊維は40日未満の半減期である)ものである。
【0031】
繊維の生体溶解性を予測するための更に別のアプローチは、繊維の組成に基づく。例えば、ドイツは、発癌性指数(KI値)に基づく分類を提案した。KI値は、アルカリ性及びアルカリ土類酸化物の重量百分率の総和と、無機酸化物繊維内のアルミニウム酸化物の重量百分率の2倍の減算によって計算される。生体溶解性の無機繊維は、通常、約40以上のKI値を有する。
【0032】
本発明での使用に好適な生体溶解性無機繊維としては、典型的に、例えばNaO、KO、CaO、MgO、P、LiO、BaO、又はこれらとシリカの組み合わせのような無機酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。他の金属酸化物又は他のセラミック構成要素は、所望の溶解度特性がそれ自体に欠如していても、十分に低い量で存在していて、したがって全体として繊維が生理学的媒質内でなお分解性であるような繊維であれば、生体溶解性無機繊維に含まれてよい。そのような金属酸化物としては、例えばAl、TiO、ZrO、B、及び酸化鉄が挙げられる。生体溶解性無機繊維は、また、金属構成成分も含むことができ、その量は、繊維が生理学的媒質又はシミュレートした生理学的媒質内で分解可能である量である。
【0033】
1つの実施形態において、生体溶解性無機繊維は、シリカ、マグネシウム、及びカルシウムの酸化物を含む。これらのタイプの繊維は、典型的に、ケイ酸カルシウムマグネシウム繊維と呼ばれる。ケイ酸カルシウムマグネシウム繊維は、通常、約10重量%未満の酸化アルミニウムを含有する。一部の実施形態において、繊維は、約45〜約90重量%のSiOと、最高約45重量%のCaOと、最高約35重量%のMgOと、10重量%未満のAlとを含む。例えば、これらの繊維は、約55〜約75重量%のSiOと、約25〜約45重量%のCaOと、約1〜約10重量%のMgOと、5重量%未満のAlとを含むことができる。
【0034】
追加的実施形態において、生体溶解性無機繊維は、シリカの酸化物及びマグネシアの酸化物を含む。これらのタイプの繊維は、典型的に、ケイ酸カルシウムマグネシウム繊維と呼ばれる。ケイ酸マグネシウム繊維は、通常、約60〜約90重量%のSiOと、最高約35重量%のMgO(通常、約15〜約30重量%)と、5重量%未満のAlとを含む。例えば、これらの繊維は、約70〜約80重量%のSiOと、約18〜約27重量%のMgOと、約4重量%未満の他の微量成分とを含む場合がある。好適な生体溶解性無機酸化物繊維は、米国特許第5,332,699号(オールズ(Olds)ら)、同第5,585,312号(テンアイク(Ten Eyck)ら)、同第5,714,421号(オールズ(Olds)ら)、同第5,874,375号(ゾイタス(Zoitas)ら)、及び欧州特許出願第02078103.5号(2002年7月31日付け出願)に記述されている。ゾルゲル形成、結晶成長法、及び紡糸又はブローイング等の溶融形成技術が挙げられるがこれらに限定されない種々の方法が生体溶解性無機繊維を形成するために使用されてよい。
【0035】
生体溶解性繊維は、「イソフラックス(ISOFRAX)」(商品名)及び「インサルフラックス(INSULFRAX)」(商品名)としてユニフラックス社(Unifrax Corporation)(ニューヨーク州ナイアガラフォールズ(Niagara Falls)所在)から市販されている。他の生体溶解性繊維は、サーマルセラミックス(Thermal Ceramics)(ジョージア州オーガスタ所在)によって商標名スーパーウール(SUPERWOOL)(登録商標)として販売されている。例えば、「スーパーウール(SUPERWOOL)607」繊維は、60〜70重量%のSiOと、25〜35重量%のCaOと、4〜7重量%のMgOと、微量のA1とを含有する。「スーパーウール607マックス(SUPERWOOL 607 MAX)繊維は、やや高い温度で使用でき、60〜70重量%のSiOと、16〜22重量%のCaOと、12〜19重量%のMgOと、微量のA1とを含有する。
【0036】
本発明と関係する特定の実施形態において、上述の生体溶解性繊維は、熱処理されたガラス繊維を含む無機繊維との組み合わせにおいて使用される。1つ以上の他の無機繊維(すなわち非生体溶解性繊維)と組み合わせて使用されるとき、生体溶解性繊維は、無機繊維の総重量に基づき97%〜10%の量で使用することができる。特定の実施形態において、生体溶解性繊維の量は、無機繊維の総重量に基づき95%〜30%又は85%〜25%である。
【0037】
本発明の方法と共に使用される無機繊維は、通常、約1マイクロメートル〜50マイクロメートル、より好ましくは約2マイクロメートル〜14マイクロメートル、最も好ましくは約4マイクロメートル〜8マイクロメートルの平均直径を有する。無機繊維が約4マイクロメートル未満の平均直径を有すると、呼吸により吸入され得る潜在的に有害な繊維の部分が有意になる場合がある。特定の実施形態において、異なる平均直径を有する繊維を組み合わせてマウンティングマットを作製することができる。本発明の方法は、異なる平均直径を有する繊維を含むマウンティングマットを、容易かつコスト効果の優れた方法で生産することを可能にする。
【0038】
更に、平均直径と同様に、無機繊維の長さにおいて明確な制限はない。しかし、無機繊維は、通常、約0.01mm〜1000mmの平均の長さ、最も好ましくは約0.5mm〜300mmの平均の長さを有する。特定の実施形態において、異なる平均の長さを有する繊維を組み合わせてマウンティングマットを作製してもよい。例えば、短繊維と長繊維との混合物を有するマウンティングマットを容易に製造することができる。特定の実施形態において、製造されるマウンティングマットは、15mm以下の長さを有する短繊維及び少なくとも20mmの長さを有する長繊維を含むことができ、短繊維の量は、長繊維と短繊維との混合物の総重量に基づき少なくとも3重量%である。長繊維と短繊維との混合物を含むマウンティングマットは、具体的に、上で説明した組成の長繊維と短繊維との混合物を有するものを含む。短繊維と長繊維との混合物を含むマウンティングマットは、特定の利点を有することができ、具体的には、低温保持力を改善することができ、熱振動試験で優れた結果を達成することができる。本発明の方法は、これらのマットを、信頼できる再現可能な方法で、低コストかつ当該技術で開示されてきたものと同等以上の性能レベルで製造する方法を提供する。
【0039】
本発明は、多様な組成の非膨張性マウンティングマット及び膨張性マウンティングマットを含む。膨張性マットは、膨張性材料を含有するマットである。本明細書で使用される「膨張性材料」とは、十分な量の熱エネルギーに曝されたときに拡張、発泡、又は膨張する材料を意味する。本明細書で使用される「非膨張性マット」とは、膨張性材料を含有しないマット、又はマウンティングマットが与える保持圧力に有意に寄与する膨張性材料を少なくとも十分な量で含有しないマットを意味する。
【0040】
膨張性マットを作製するために有用な膨張性材料としては、未膨張のバーミキュライト鉱石、処理された未膨張のバーミキュライト鉱石、特に脱水されたバーミキュライト鉱石、膨張性グラファイト、膨張可能なグラファイトと処理済み又は未処理の未膨張バーミキュライト鉱石との混合物、加工された膨張性ケイ酸ナトリウム、例えば3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール所在)が「エクスパントロール(EXPANTROL)」(商品名)として市販するもの(不溶性ケイ酸ナトリウム)、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の目的上、膨張性材料として上に記載したそれぞれの例は、互いに異なりかつ区別され得るものと考慮される。望ましい膨張性材料としては、未膨張のバーミキュライト鉱石、処理された未膨張のバーミキュライト鉱石、膨張可能なグラファイト、及びこれらの混合物が挙げられる。望ましい市販の膨張可能なグラファイト材料の例は、オハイオ州クリーブランド(Cleveland)のUCARカーボン社(UCAR Carbon Co.)から商品名「グラフォイル(GRAFOIL)(登録商標)」グレード338〜50膨張可能グラファイトフレークとして入手可能なものである。
【0041】
本発明によるマウンティングマットは、当該技術分野で既知のマウンティングマット製造方法で製造できる。好ましい実施形態において、マットは、上述の本発明の第3の観点に従って容易に、コスト効果の優れた方法で製造される。このマウンティングマット作製方法は、通常、以下の利点の1つ以上を提供する。通常、この方法は、コスト効果に優れた便利な方法で広く多様な組成のマウンティングマットを製造することを可能にする。具体的には、この方法は、ナノ粒子を含み、有機結合剤を含まない又はその含有量が低いマウンティングマットの容易な製造を可能にする。具体的には、この方法は、膨張性マット及び非膨張性マットを含むナノ粒子含有マットを、容易かつ便利でコスト効果に優れた信頼できる方法によって製造し、一貫した品質及び性能をもたらすことを可能にする。
【0042】
本発明の第3の観点の方法によれば、繊維は成形ボックスの繊維入口を通して成形ボックスに供給される。本発明と共に用いるのに好適な成形ボックスは、公開特許第2005/044529号(2005年5月19日付)に開示されている。この成形ボックスは、繊維の凝集を解きほぐす、1列に配列された、複数の繊維分離ローラーを含む。通常、これらの繊維分離ローラーはスパイクローラーである。成形ボックス内に配列されたエンドレスベルトスクリーンは、1列のスパイクローラーのすぐ下及び/又は上、すなわち例えば2列のスパイクローラーと成形ボックスの下位部にある下位走行部との間を走行する上位走行部を有する。結果的に、繊維の塊すなわちオーバーサイズの繊維は、成形ワイヤボックスに乗らないように防止され、成形ボックス内でベルトスクリーン上に保持され、成形ボックスの下位部分から運び出され、スパイクローラーに戻されて、更に離解される。一実施形態において、成形ボックス及び成形ワイヤの下の真空によって、オーバーサイズの繊維はエンドレスベルトスクリーンの下位走行部の上側に保持され、エンドレスベルトスクリーンの上位走行部の下側に放出されるので、エンドレスベルトスクリーンは、自浄作用するふるい又は繊維スクリーンを提供する。
【0043】
一実施形態において、スパイクローラーの2つの列は、ベルトスクリーンの上位走行部のそれぞれの側部に提供される。これによって、供給された繊維は、ベルトスクリーンによるスクリーニングの前に初期離解され、この初期のスクリーニングの後に、追加的に離解され得る。追加的な実施形態において、ベルトスクリーンの上位走行部のすぐ下の列にあるスパイクローラーは、ベルトスクリーンの上位走行部の移動方向に回転軸とベルトスクリーンとの間の距離が減少していくように位置づけられる。これによって、ベルトスクリーンの下位走行部上に保持された繊維の塊又はクラスタは、これらの保持された繊維が再プロセスのためにベルトスクリーンの上位部に戻されるにつれて、徐々に再び離解される。戻された繊維の「粗い」プロセスからスタートして、ベルトスクリーンと個々のスパイクローラーとの間の隙間のサイズを徐々に低減することによって、戻された繊維の塊が圧縮されて2つの隣接するスパイクローラーの間の隙間を通過することなく確実に離解されるようにすることができる。これによって、よりよい離解を達成することができる。繊維の追加的な離解と、それにより均一な分配を達成するために、スパイクローラーの2つの追加的な列を、ベルトスクリーンの下位走行部のそれぞれの側に提供することができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、スパイクローラーは、ベルトスクリーンの縦の走行部の少なくとも1つに沿って提供される。これによって、ベルトスクリーンに沿って引かれる繊維を、帰路を通る間に再プロセスすることができ、及び/又は、ベルトスクリーンを、ベルトスクリーンの縦の道に沿って提供されるスパイクローラーによって洗浄することができる。本発明の一実施形態において、ベルトスクリーンは、成形ワイヤの移動方向に対して下流方向のハウジングを超えて延在する。あるいは、ベルトスクリーンはハウジングの中に提供される。
【0045】
ベルトスクリーンは、下部の成形ワイヤと同じ方向か、又は下位走行部の移動と反対方向に駆動され得る。更に、ベルトスクリーンは、例えば一定速度で連続的に駆動されるか、又は断続的に駆動されるかのどちらかでよい。一実施形態において、スパイクローラーの2つの追加的な列は、ベルトスクリーンの下位走行部のそれぞれの側に提供される。好ましくは、既定パターンのグリッド穴がベルトスクリーンに提供される。
【0046】
一実施形態において、ベルトスクリーンは、既定のメッシュ穴を有するワイヤーメッシュである場合がある。別の実施形態において、ベルトスクリーンは、グリッド部材の間に穴を有する、横向きに配向されたグリッド部材を有する。本発明の一実施形態において、成形ワイヤ上にエアレイドされる繊維形成の上側とベルトスクリーンが接触するように、ベルトスクリーンの下位走行部は成形ワイヤのすぐ上にある。これによって、成形ボックスの底の開口のいくつかのエリアで真空がスクリーンされ、レイドされる製品の既定の表面構造が達成される。これらの真空スクリーンされるエリアは、ベルトスクリーンのスクリーンパターンによって決定される。
【0047】
以下、マウンティングマットを作製する好ましい方法において使用する成形ボックスの一実施形態について、図1〜3を参照して更に詳述する。
【0048】
図1及び図2に、本発明の方法と共に使用する成形ボックスを図示する。この成形ボックスはハウジング1を含み、このハウジング1の入口2から繊維3が供給される。この成形ボックスは、成形ワイヤの上に位置づけられており、この成形ワイヤ上に、乾燥形成プロセスによって繊維ボードを形成するために、成形ワイヤの下の真空ボックスによって繊維がエアレイドされる。図1において、成形ボックスは、ハウジング内に見える内部要素と共に図示されている。しかし、ハウジングの壁は、透明材料から作製されても、不透明材料から作製されてもよい。
【0049】
繊維3は、入口2から成形ボックスのハウジング1の中に吹き込まれる。成形ボックスの中には多数のスパイクローラー7が1つ以上の列、例えば、図1及び2に図示するような15の4列のスパイクローラー71、72、73、74を成して提供される。ハウジング内には、エンドレスベルトスクリーン8もまた提供される。図3が示すように、このエンドレスベルトスクリーン8には、上位走行部85を含むコンベア道と、ベルトスクリーン8が下方に移動する縦セクション88と、ベルトスクリーン8が下部成形ワイヤ5とほぼ平行に移動する下位走行部86と、上方に配向された20走行部87とが提供される。
【0050】
ベルトスクリーン8の上位走行部85に隣接して、少なくとも1列に備えられたスパイクローラー71が提供される。図の実施形態において、ハウジング1の異なるレベルに、2列の上位スパイクローラー71、72と、2列の下位スパイクローラー73、74が提供される。ベルトスクリーンは、2列の上位スパイクローラー71、72の間の上位走行道85と、2列の下位スパイクローラー73、74の間の下位走行道85とによって構成される。ハウジング1に繊維3を塊として供給することができる。次に、スパイクローラー7は、成形ワイヤ5上に形成される製品6における繊維3の均等な分布を確保するために、繊維3の塊を離解するか又は裂く。繊維が成形ボックスの中に下方に吸引されるにつれて、繊維は、第1の列のスパイクローラー71を通過し、次にベルトスクリーン8、次に第2の列のスパイクローラー72を通過する。ベルトスクリーン8の下方走行部86において、オーバーサイズの繊維はベルトスクリーン8上に保持され、成形ボックスの上位セクションに戻されて、更に離解される。保持された繊維はベルトスクリーン8の下位走行部86の上面に捉えられ、この上面は次に上位走行部85の下面となり、繊維はベルトスクリーン8から吸引されて取り除かれ、繊維の塊は再びスパイクローラーによって裂かれる。
【0051】
図3に図示するように、ベルトスクリーン8の上位走行部85のすぐ下のスパイクローラー72の列には傾斜が付けられる。この列72は、下の保持から戻されて来る、保持された「オーバーサイズ」の繊維を受け取る。この列72において繊維3が確実に効率的に裂かれるようにするために、列72の第1のスパイクローラー72’、72’’、72’’’、72’’’’には、個々のスパイクローラー72’、72’’、72’’’、72’’’’の回転軸とベルトスクリーン8の上位走行部85との間の異なる距離が提供される。戻されたオーバーサイズの繊維の塊内の繊維がやさしく「剥離」されるように、第1のスパイクローラー72’が最大距離で位置づけられ、それに続くスパイクローラー72’’、72’’’、72’’’’が徐々に近づく距離で位置づけられることにより、塊がベルトスクリーンから2つの隣接するスパイクローラーの間に吸引され引きずり込まれずに確実に裂かれ、離解されるようにする。
【0052】
エンドレスベルトスクリーン8は、既定のパターンで提供された閉鎖部分81と穴82とを含む。あるいは、ベルトスクリーン8はワイヤーメッシュであってもよい。ベルトスクリーン8の穴82と閉鎖部分81の特定のパターンによって、乾燥成形プロセスによって形成された繊維ボード6上の既定の表面パターンは、ベルトスクリーン8の下位走行部86が成形ワイヤ4上に置かれた繊維の上面と接触するようにそれを構成することによって、達成され得る。
【0053】
縦方向の道の行程87、88において、1つ以上のスパイクローラー(図示せず)は、ベルトスクリーン8上の繊維を放つために、ベルトスクリーン8と隣接して提供される。スパイクローラーの構成は、成形ボックスによってエアレイドされることになる繊維の種類に基づいて選択され得る。
【0054】
成形ボックスの底にはふるい11(図示せず)が提供され、それに従って、保持された繊維を取り外すためのブラシ手段(図示せず)をベルトスクリーン8に提供することができる。これによって、底のふるいを洗浄するために追加的にベルトを使用することができる。このブラシ手段は、ベルトスクリーンの下位走行道の上側から繊維を掃き落とすために提供される部材である場合がある。あるいは、又はそれと組み合わせて、ふるい上に保持された繊維を攪拌する乱気流を生成するための手段をベルトスクリーンに提供してもよい。この方法によって、底ふるいを有する成形ボックスに、底ふるいの洗浄設備を提供することができ、ふるいの詰まりを防止するためにベルトを追加的に使用することができる。
【0055】
上で例示した実施形態において、入口は、ベルトスクリーン及びスパイクローラーの上に位置づけて示されている。しかし、(例えば、異なるタイプの繊維を成形ボックスに供給するために)入口をベルトスクリーンの上位走行部の下に位置づけること、及び/又は、複数の入口を提供することができる。次に、これらのスパイクローラーと、実際にこのベルトスクリーンとが、成形ボックスの中の繊維の混合を支援する。
【0056】
ナノ粒子含有マウンティングマットを作製するための好ましい方法に基づき、成形ワイヤ上に形成される繊維のマットは、成形ボックスから外に搬送され、次に、触媒コンバータのハウジング内にマウンティングマットを実装するために好適な所望の厚さに圧縮される。追加的な取り扱い、処理(例えば所望の形及びサイズへの切断)及び触媒コンバータへのマットの実装の際にマウンティングマットの圧縮された状態が維持されるように、マットは拘束されるべきである。触媒コンバータ又は汚染防止装置の製造において、マウンティングマットは、汚染防止装置のハウジング又はケーシングと、モノリスとも呼ばれる汚染防止要素との間の隙間に配置される。通常、ハウジングと汚染防止要素との間の隙間は2mm〜10mm、例えば3mm〜8mmで変動する。隙間のサイズは、汚染防止装置に特定の設計に依存して、汚染防止要素の円周に沿って一定であるか、又は変動する場合がある。
【0057】
本発明によれば、成形ボックスの入口を通して無機繊維を供給することに加えて、更に、マウンティングマットの組成に使用する望ましい補助剤もまた、この入口から供給することができる。具体的には、そのナノ粒子を成形ボックスの入口から供給することができる。更に、特定の実施形態において、膨張性材料は、無機繊維を成形ボックスに供給するのと同様の方法で、成形ボックスの入口を通して膨張性材料を供給することによって、繊維マットに含めること及び送達することができる。したがって、本発明の方法は、たとえ結合剤含有量が低くても、再現可能な一貫した性能を有する低コストの膨張性マットを作製することを可能にする。したがって、本発明の方法は、有機結合剤を含有しない(例えばニードルパンチされたもの)か、又は有機結合剤含有量がマウンティングマットの重量に基づき5重量%以下である、膨張性マウンティングマットを作製することを可能にする。
【0058】
無機ナノ粒子は、また、マットの成形前又は成形中に、水又はアルコールのような好適な液体中に無機ナノ粒子を分散した分散液を繊維に散布することによって、マウンティングマットに含めることができる。更にまた、これらのナノ粒子は、マットの成形後に、マットを圧縮する前又は後に散布してもよい。
【0059】
図4は、汚染防止装置の実施形態を図示する。汚染防止装置10は、典型的に金属材料で作製される、概して円錐台形状(フラストコニカル)の入口端及び出口端12及び13を有するケーシング11を備える。ケーシング11内には、汚染防止要素すなわちモノリス20が配置される。汚染防止モノリスの周囲を、本発明に基づき製造されたマウンティングマットが囲み、ケーシング内のモノリス要素をしっかりと、しかし弾力的に支持する役割を果たす。マウンティングマット30は、ケーシング内の定位置に汚染防止モノリス20を保持し、汚染防止モノリス20とケーシング11との間の隙間をシールし、よって排気ガスが汚染防止モノリス20をバイパスするのを防止するか、又は最小限にする。図4に図示されるように、ケーシング11の外側は大気に曝露される。言い換えれば、装置10は、ケーシング11を収納するもう1つのハウジングを含まない。しかし、別の実施形態では、トラック用触媒コンバータで可能な例の場合のように、汚染防止モノリスをケーシング内に保持し、次にその1つ以上を、追加的ケーシング内に収納することができる。汚染防止装置のケーシングは、ステンレススチールなどを含む、そのような用途のために当該技術分野で既知の材料で作製することができる。
【0060】
このマウンティングマットを実装することができる汚染防止要素としては、ガソリン汚染防止モノリス及びディーゼル汚染防止モノリスが挙げられる。汚染防止モノリスは、触媒コンバータか、又はパティキュレートフィルタ若しくはトラップなどでよい。触媒コンバータは、金属製ハウジング内に実装されるモノリシック構造体に通常はコーティングされる触媒を含有する。この触媒は、通常、温度要件で動作し、有効であるように適応される。例えば、ガソリンエンジンで使用される場合、触媒コンバータは400℃〜950℃の温度で有効であるべきであるが、ディーゼルエンジンでは典型的には350℃以下の、より低い温度が一般的である。金属モノリスも使用されてきているが、モノリシック構造体は典型的にはセラミックである。触媒は、大気汚染を抑制するために、排出ガス中の一酸化炭素及び炭化水素を酸化させ、窒素酸化物を還元する。ガソリンエンジンでは、これら3つの汚染物質が全て、いわゆる「三元触媒コンバータ」にて同時に反応することができるが、ほとんどのディーゼルエンジンには、ディーゼル酸化触媒コンバータのみが装備されている。窒素酸化物を還元するための触媒コンバータは、今日のディーゼルトラックにしばしば使用され、概して、分離した触媒コンバータを含有する。
【0061】
ガソリンエンジンと共に使用する汚染防止モノリスの例としては、コーニング社(Coming Inc.)(ニューヨーク州コーニング所在)若しくは日本碍子株式会社(愛知県名古屋市所在)から市販されているコーディエライトで作製されているもの、又はエミテック(Emitec)(ドイツ、ルーメル所在)から市販されている金属モノリスが挙げられる。触媒モノリスに関する追加的詳細については、例えば、「高度セラミック基材:高立体表面積・低熱容量による触媒性能改善(Advanced Ceramic Substrate: Catalytic Performance Improvement by High Geometric Surface Area and Low Heat Capacity)(梅原ら著、アメリカ自動車技術会専門紙文献番号971029、1997年)、「自動車用触媒コンバータのパッケージング設計のシステムアプローチ(Systems Approach to Packaging Design for Automotive Catalytic Converters)(10ストゥルーム(Stroom)ら著、アメリカ自動車技術会専門紙文献番号900500、1990年)、「モノリシック触媒支持体としての薄壁セラミック(Thin Wall Ceramics as Monolithic Catalyst Supports)」(ホウィット(Howitt)ら著、アメリカ自動車技術会専門紙文献番号800082、1980年)、及び「モノリシックハニカム状自動車用触媒コンバータにおけるフロー効果(Flow Effects in Monolithic Honeycomb Automotive Catalytic Converters)」(ホウィット(Howitt)ら著、アメリカ自動車技術会専門紙文献番号740244、1974年)を参照のこと。
【0062】
ディーゼル微粒子フィルタ又はトラップは典型的にウォールフロー型(wall flow)フィルタであり、典型的に多孔性結晶構造のセラミック材料から作製されるハニカム状のモノリシック構造を有する。ハニカム状構造の交互セルは、通常、排気ガスが1つのセルに入り、1つのセルの多孔質壁を強制的に通過させられ、隣接するセルを通って構造体から出て行くように埋め込まれる。この方法で、ディーゼル排気ガスに存在する小さなすす粒子が回収される。コーディエライトで作製された好適なディーゼル微粒子フィルタが、コーニング社(Corning Inc.)(ニューヨーク州コーニング所在)並びに日本碍子株式会社(愛知県名古屋市所在)から市販されている。シリコンカーバイドで作製されたディーゼル微粒子フィルタは、イビデン株式会社(日本)から市販されているもので、例えば、日本国公開特許第2002047070A号(2002年2月12日付)に記述されている。
【0063】
マウンティングマットは、いわゆる薄壁の又は長薄壁の汚染防止モノリスを実装するために使用され得る。具体的には、マウンティングマットは、400cpsi(62セル/平方センチメートル(cpscm)〜1200cpsi(186cpscm))を有しかつ0.127mm(0.005インチ)以下の壁厚を有する汚染防止モノリスを実装するために使用できる。このマウンティングマットを実装できる汚染防止モノリスの例としては、薄壁モノリス(102マイクロメートル/1平方センチメートル当たり62セル(cpscm)(4ミル/400cpsi)及び102マイクロメートル/148cpscm(4ミル/1600cpsi)、並びに超薄壁モノリス76マイクロメートル/93cpscm(3ミル/600cpsi)、51マイクロメートル/140cpscm(2ミル/900cpsi)及び51マイクロメートル/186cpscm(2ミル/1200cpsi)が挙げられる。
【0064】
繊維マットを圧縮し、ニードリング、ステッチボンド、樹脂接着、圧力印加及び/又はこれらの組み合わせを含む多くの異なる方法で拘束することができる。好ましくは圧縮及び拘束された繊維マットは、約800g/m〜約3000g/mの範囲の単位面積当たりの重量を有し、別の観点においては、約0.5cm〜約3cmの範囲の厚さを有する。5kPAの負荷での典型的なかさ密度は、0.1g/cm〜0.2g/cmである。膨張性材料を含有するマットは、約2000〜8000g/mの範囲の面積当たりの重量、及び/又は5kPa負荷の下で0.3g/cm〜0.7g/mのかさ密度を有することができる。
【0065】
一実施形態において、繊維マットは圧縮され、ニードルパンチによって拘束される。ニードルパンチしたマットは、マットを複数回、完全又は部分的(好ましくは完全)に、例えば有刺針によって貫通させることによってもたらされる物理的な繊維のもつれがあるマットを指す。繊維マットを、従来のニードルパンチ装置(例えば、有刺針(例えば、「ディロ(DILO)」という商品名でドイツのディロ(Dilo)より市販されているニードルパンチャーで、有刺針を備えているもの(例えば、ベッケルト(Beckert)(ドイツ、アルブシュタット所在)から市販されているもの)を用いてニードルパンチすることによって、ニードルパンチされた繊維マットを提供することができる。ニードルパンチングは繊維のもつれを提供し、通常は、マットを圧縮後、マットに有刺針を刺したり抜いたりすることを含む。マットの単位面積あたりの最適なニードルパンチ数は、特定用途により異なる。通常、繊維マットは約1〜約60ニードルパンチ/cmにニードルパンチされる。好ましくは、マットは、約5〜約20ニードルパンチ/cmにニードルパンチされる。
【0066】
繊維マットは、従来の技術(例えば、米国特許第4,181,514号(レフコウィッツ(Lefkowitz)ら)を参照。前記開示は、ステッチボンド不織布マットの製法の教示の参照により本書に組み込まれる)を用いてステッチボンドすることができる。典型的には、マットは、有機糸を用いてステッチボンドされる。有機又は無機シート材料の薄い層は、糸がマットを貫通して切断するのを防止又は最小限にするために、ステッチボンド時、マットの一方又は両側に定置されてよい。縫製糸が使用中に分解しないことが望ましい場合、例えばセラミック又は金属(例えばステンレススチール)など無機糸を使用できる。縫製の間隔は、繊維がマットの全領域にわたって均一に圧縮されるように、通常、3mm〜約30mmである。
【0067】
別の実施形態において、マットを圧縮し、樹脂接着によって拘束することができる。通常、樹脂接着では、この方法がほぼその圧縮された厚さで維持されるように、マットを有機結合剤溶液で含浸又は飽和し、圧力を印加して圧縮し、この結合剤溶液の溶剤を取り除く。その結合剤が圧縮されたマットの圧縮された厚さを通常の温度で維持できる結合剤であり、かつその熱分解がマットの元の厚さの回復を許す限りは、この有機結合剤と同様に、特に制限せずに、有機化合物を含む任意の結合剤を本発明の方法に使用することができる。好ましくは、この有機結合剤は、触媒コンバータの使用が意図される温度で容易に熱分解され、マットから消散される(破壊される)。更に、このマウンティングは、300℃以上の温度、あるいは高温用途では900℃〜1000℃の温度に曝露されるので、この有機結合剤は短時間で熱分解されて、その結合剤としての機能を約500℃以下の温度で失うものであるのが好ましい。より好ましくは、この有機結合剤は、熱分解の際にマットから、この温度範囲で消散される。
【0068】
有機結合剤としては、多様なゴム、水溶性高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂などが例として挙げられる。ゴムの例としては、天然ゴム、エチルアクリレートとクロロエチルビニルエーテルのコポリマー及びn−ブチルアクリレートとアクリロニトリルのコポリマーなどのようなアクリルゴム、ブタジエンとアクリロニトリルのコポリマーなどのようなニトリルゴム、ブタジエンゴムなどが挙げられる。水溶性高分子化合物の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルなどのホモポリマー又はコポリマー、アクリロニトリル・スチレンコポリマー、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマーなどの形態のアクリル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の例としては、ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂、ノボラックタイプのエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0069】
前述の有機結合剤は、有機溶剤を使用した水溶液、水分散した乳状液、ラテックス又は溶液の形状で使用できる。以下、これらの有機結合剤を総じて、「結合液」と呼ぶ。
【0070】
樹脂接着は、また、例えば粉末又は繊維の形態の高分子材料をマットに含め、圧力を与えてこのマットを圧縮し、この圧縮されたマットを熱処理して、高分子材料の溶融又はソフトニングを引き起こし、それによりマット内の繊維を接着し、それを冷却してマットを拘束することで達成することもできる。
【0071】
マットに含めることができる好適な高分子材料としては熱可塑性ポリマーが挙げられ、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸ビニルエチレンコポリマー及びビニルエステルエチレンコポリマーが含まれる。あるいは、熱可塑性高分子繊維をマットに含めることができる。好適な熱可塑性高分子繊維の例としては、ポリエチレン又はポリプロピレンのようなポリオレフィン繊維類、ポリスチレン繊維類、ポリエーテル繊維類、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル繊維類、ポリ塩化ビニル及びポリフッ化ビニリデンなどのビニルポリマー繊維類、ポリカプロラクタムなどのポリアミド類、ポリウレタン類、ナイロン繊維類、及びポリアラミド繊維類が挙げられる。この繊維マットの熱接着に特に有用な繊維としては、また、異なる組成又は異なる物性のポリマーを通常含むものであるいわゆるバイコンポーネント繊維も挙げられる。通常、これらの繊維はコア/シース繊維であって、例えばコアの高分子構成要素が構造を提供し、シースが溶融可能又は熱可塑性であるために繊維の接着が可能である。例えば、一実施形態において、バイコンポーネント繊維は、コア/シースがポリエステル/ポリオレフィンの繊維である場合がある。使用できるバイコンポーネント繊維としては、「トレビラ(TREVIRA)255」(商品名)(トレビラ社(Trevira GmbH)、ドイツ、ボビンゲン所在)及び「ファイバービジョンクリエイトWL(FIBERVISION CREATE WL)」(商品名)(ファイバービジョン社(FiberVisions)、デンマーク、バルデ所在)として入手可能なものが挙げられる。
【0072】
特定の実施形態において、2層若しくはそれ以上の繊維マット層(うち1層又は両方の層がナノ粒子を含有する)を互いに上下に重ねて成形することができる。例えば、そのような共成形の一実施形態における方法は、上述の方法の工程(i)〜(iv)を実行することによって第1の繊維マットを成形する工程と、工程(i)〜(iv)を繰り返すことによって第1の繊維マット上に少なくとも1つの第2の繊維マットを成形し、第1のマットを成形ワイヤ上に提供し、方法の工程(v)(すなわち圧縮及び拘束)を実行して第1及び第2の繊維マットを有するマウンティングを得る工程と、を含む。代替実施形態において、第1の繊維マットは、その上に第2のマット層が形成される前にまず圧縮及び拘束される。
【0073】
マウンティングマットの特定の処方又は組成では、マウンティングマットを安定化することが望ましい場合がある。そのようにすることは、有機結合剤を低含有量有する若しくは全く有さないマウンティングマットか、又は繊維マットに分布された未結合の粒子材料を有するマウンティングマットの場合に、特に望ましい。例えば、一実施形態では、マウンティングマットの片面又は両面に有機結合剤溶液を散布することによって被覆又は含浸してマウンティングマットを安定化することが望ましい場合がある。別の実施形態では、繊維マットを、有機結合剤を含有しない又はほとんど含有しないマウンティングマットの、及び/又は中に分布された粒子材料を含有するマウンティングマットの、片側又は両側に共成形することができる。そのようなマットの片側又は両側に共成形される繊維マットは、粉末又は繊維の形態の熱可塑性高分子材料を比較的大きな割合で含有することができる。加熱の後、この高分子材料は融解されるので、片側又は両側に繊維マットを形成して、マウンティングマットの取り扱い中の繊維の除去又は粒子材料の損失から保護することができる。
【0074】
本発明と関係する特定の実施形態において、マウンティングマットは1層以上の追加的な層を含む場合がある。具体的には、このマウンティングマットは、スクリム及び網目からなる群から選択される1層以上の層を含有することができる。このスクリム又は網目は、通常、10g/m〜150g/m、例えば15g/m〜100g/m又は20g/m〜50g/mの間の面積重量を有する薄層である。概して、マウンティングマットのスクリム又は網目の重量は、マウンティングマットの全体重量に比べて小さい。概して、マウンティングマットの網目又はスクリムの重量百分率は、1〜10重量%、例えば2〜6重量%である。本発明と共に使用される網目は、通常、規則的な方法で配列された高分子繊維及び/又は無機繊維を含む。例えば、一実施形態では、繊維は互いに平行である。別の実施形態では、2つの直行方向に平行に配列されるので、互いに交差して、それらの間に正方形又は矩形の空間を画定する。本発明と共に使用されるスクリムは、通常、ランダムな配向の繊維を有する不織である。スクリムの繊維は、上に開示した無機繊維、並びに任意のタイプの高分子繊維、特に上に開示した熱可塑性高分子繊維のどれを含有してもよい。
【0075】
一実施形態では、マウンティングマットを強化する目的のために、スクリム又は網目の層を、マウンティングマットの本体内に含めることができる。
【0076】
更に追加的な実施形態では、スクリム層又は網目をマウンティングマットの片側又は両側に提供することができる。便利なことに、上で説明した成形機の成形ワイヤにスクリム又は網目を供給することによって、これを達成することができる。必要又は所望により、成形された繊維マットに追加的なスクリム又は網目を提供してから、マットとスクリム又は網目をニードルパンチ又はステッチ結合することができる。追加的な一実施形態では、1つ若しくはそれ以上のスクリム又は網目を有機結合剤材料で被覆することができるか、又は、スクリム/網目自体が熱可塑性高分子繊維を含むことができる。したがって、後の熱処理の後に、有機結合剤又は熱可塑性繊維は、フィルムを形成すること又は繊維マットの繊維と結合することができる。
【0077】
特定の実施形態において、マットの片側又は両側に有機結合剤が適用されて、繊維の抜けを低減する又は最少にする。そのような有機結合剤は、適切な液体媒質の溶液又は分散液として、マットの対抗する主表面の片面又は両面にパウダーコート又は散布することができる。更に、上で説明したように、マットの摩擦特性を調整するためにも、そのようにして適用される被覆を選択することができる。
【0078】
本発明の特定の実施形態において、マウンティングマットを含浸することができる。一実施形態において、繊維マットの繊維には、シロキサン化合物、好ましくはシルセスキオキサン類、これらの化合物の加水分解物及び縮合体、好ましくは自己縮合体並びにこれらの組み合わせから選択された有機ケイ素化合物1つ以上が含浸されている。例えば前述のシロキサン水溶液中で、特に前述の水溶液がすぐにではなく何時間か後に適用された場合、加水分解産物及び/又は縮合体、とりわけシロキサン化合物の自己縮合体が時に形成される場合がある。乾燥後、シロキサン化合物はとても薄い連続的又は非連続的なコーティングを繊維上に形成する。本発明において、繊維に浸透させるのに使用できるシロキサン化合物の例は、シルセスキオキサン類などのオルガノシロキサン類、それらのコポリマー(共縮合体)及びそれらの加水分解物、ポリジオルガノシロキサン類などのポリオルガノシロキサン類、これらの加水分解物及びこれらの組み合わせである。特定の実施形態において、オルガノシロキサン(例えばシルセスキオキサン又はポリオルガノシロキサン)は、ヒドロキシ基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基及び自己凝縮反応で既知の官能基など、所望の浸透条件下で自己縮合反応が可能である1つ以上の官能基を含む。かかる基は好ましくはオルガノシロキサンの末端に配置されているが、側鎖上に、好ましくはそれらの末端で位置されてもよい。特に望ましいのは、以下に記載されているようにシルセスキオキサン類であり、上述されているように、好ましくは主鎖又は側鎖の末端で、自己凝縮反応のための1つ以上の官能基を有している。
【0079】
本明細書で使用されているとおり、用語「シルセスキオキサン類」(シラセスキオキサン類ともいわれる)は、シルセスキオキサン類、並びにシルセスキオキサンコポリマー(共縮合体)を含む。シルセスキオキサン類は、それ自体が、ケイ素と酸素(silicon-oxygen)の化合物であり、それぞれのSi原子が、以下の一般式(I)を有しながら、平均3/2(セスキ)O原子及び1つの炭化水素基に結合している。
【0080】
2nSi2n3n (I)
式中、
Rは水素、又は好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜12個の炭素原子を有する有機残基であり、
nは、1〜20、好ましくは2〜15、より好ましくは3〜12、そして更により好ましくは4〜12の整数である。好ましくは、繊維ブランケットに含浸させるために使用されるシルセスキオキサンは、室温(23℃±2℃)では固体である。更に、シルセスキオキサンは、以下に示されるように、所望の浸透条件下で、自己架橋することができるヒドロキシ又はアルコキシ基などの官能基を好ましくは末端で含む。それらは、原理上は、例えば三官能性(例えばトリアルコキシ−官能性)シラン類(例えば、R−Si(OR))の加水分解重縮合によって得られる。
【0081】
上記の式(I)において、Rは、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜12個、更により好ましくは1〜8個の炭素原子、並びに所望により、窒素、酸素、イオウ、好ましくは窒素及び酸素から選択される1つ以上の、好ましくは1〜5個のヘテロ原子を含有する有機基又は置換された有機基である。シルセスキオキサンのRは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルカリル又はアラルキル基及び、所望により窒素又は酸素などの1〜5個のヘテロ原子を含有することができるこれらの基であってもよい。これらの基は所望により、アミノ、メルカプト、ヒドロキシル、アルコキシ、エポキシ、アクリラト(acrylato)、シアノ及びカルボキシ基などの1つ以上の置換基を含有することができ、好ましい置換基はアミノ、メルカプト、エポキシ又はC〜C−アルコキシ基である。
【0082】
Rの具体的な例示の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及びヘプチルなどのC〜C−のアルキル;ビニル、アリル、ブテニル及びヘキセニルなどのC〜C−のアルケニル;エチニル及びプロピニルなどのC〜C−のアルキニル;シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルなどのC〜C−のシクロアルキル;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ及びヘキソキシ(hexocy)などのC〜C−のアルコキシ;エチレノキシ、プロピレノキシ及びブチレノキシなどのC〜C−アルケノキシ;プロパルギル;所望により、フェニル、トリル、ベンジル及びナフチルなどの6〜12個の炭素原子を有する置換されたアリール;R−(O−R−又はR−(NR−R−であり、式中R〜Rは、独立して所望により炭素原子8までを有する置換された、飽和又不飽和炭化水素基であり、好ましくは上記に記載の基から選択され、Rは水素又はC〜Cアルキル並びにnは1〜10であり、上に言及された基は全て1つ以上のアミノ、ヒドロキシル、メルカプト、エポキシ又はC〜C−アルコキシ基である。上述の基のうち特に好ましいのは、所望により置換されたC−C−アルキルと、6〜12の炭素原子を有する、所望により置換されたアリールと、R−(O−R−又はR−(NR−R−とであり、式中R〜Rは、独立して、8個までの炭素原子を有する、所望により置換された、飽和又は不飽和炭化水素基であり、好ましくは上述の群から選択され、Rは、水素又はC−Cのアルキルであり、nは1〜10であり、任意の置換基は、アミノ、 ヒドロキシル、メルカプト、エポキシ又はC−C−アルコキシ基である。
【0083】
Rの更なる例示としての例は、3,3,3−トリフルオロプロピル、ジクロロフェニル、アミノプロピル、アミノブチル、HNCHCHNH(CH−、
NCHCHNHCHCH(CH)CH−、メルカプトプロピル、メルカプトエチル、ヒドロキシプロピル、
【0084】
【化1】

【0085】
シアノプロピル、シアノエチル、カルボキシエチル及びカルボキシフェニル基である。勿論、炭化水素残基上の置換基は、水と反応性であってはならない。単一シルセスキオキサンが使用されるとき、メチル、エチル、プロピル、アミノメチル、アミノエチル及びアミノプロピル並びにメルカプトエチル及びメルカプトプロピル基が好ましい。Rがメチル又はメルカプトプロピル以外であるとき、シルセスキオキサンを、5〜30:70〜95の重量比、すなわち5〜30重量%のRSiO3/2単位及び70〜95重量%のCHSiO3/2単位で、メチルシルセスキオキサンと共重合することが好ましい。
【0086】
本発明に使用できるシルセスキオキサンは、低い平均分子量(Mw)を有し、Mwは、好ましくは、ポリスチレン基準を用いたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による測定値が最高10,000であり、好ましくは200〜6000であり、より好ましくは250〜5000及び300〜4000の範囲である。GPC試験法は、実用ゲル透過クロマトグラフィー「現代のサイズ排除液体クロマトグラフィー」(ジョンワイリーアンドサンズ、1979年出版)に詳細に説明されている。有用なシルセスキオキサンは、米国特許第3,493,424号(モーアロック(Mohrlok)ら)、同第4,351,736号(スタインバーガー(Steinberger)ら)、及び同第4,781,844号(コートマン(Kortmann)ら)に記述されており、参照により本明細書にそれぞれ組み込まれる。
【0087】
シルセスキオキサンコポリマー(共縮合体)は、式R11SiO3/2又はR11−Si(OR12のシルセスキオキサンポリマーと、式R11Si(OR12のジオルガノオキシシラン類(diorganooxysilanes)(又はこれらの加水分解物)及び/又は式Si(OR12のテトラオルガノオキシシラン類(tetraorganooxysilanes)(又はこれらの加水分解物)とのコポリマー又は共縮合体を含み、R11は、R基のために上記に定義されたとおりであり、好ましくはそれぞれのR11は、1〜12個の、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する置換されていない又は置換された炭化水素ラジカルを表し、その置換基はアミノ、メルカプト及びエポキシ基であってもよく、R12は、独立して1〜8の好ましくは1〜4の炭素原子のアルキル基である。シルセスキオキサンは所望により、R11SiOR12のシラン類の共縮合体を更に含んでもよい。好ましいシルセスキオキサンポリマーは、中性又はアニオン性である。有用なシルセスキオキサンは、米国特許第3,493,424号(モーアロックら)、同第4,351,736号(スタインバーガーら)、同第5,073,442号(ノールトン(Knowlton)ら)、及び同第4,781,844号(コートマンら)に記述されている技術によって作製することができる。
【0088】
また、シルセスキオキサン混合物及びシルセスキオキサンコポリマー混合物も、所望により使用することができる。シルセスキオキサンは、通常、固体であるべきであり、すなわち常温(23℃±2℃)で気体でも液体でもない。シルセスキオキサンは、コロイド懸濁液として使用できる。シルセスキオキサン類は、水、緩衝剤、界面活性剤、及び所望により有機溶媒の混合物を酸性又は塩基性状態下で攪拌しながらシラン類を添加することによって調製することができる。シルセスキオキサンの調製で使用される界面活性剤は、アニオン性又はカチオン性であるべきである。最良の結果は、概して、カチオン性懸濁液によって得られる。狭い粒径を達成するために、分量のシランを均一にかつゆっくりと添加することが好ましい。コロイド懸濁液中のシルセスキオキサン類の平均粒径は、1nm〜100nm(10オングストローム〜1000オングストローム)の範囲であるべきであり、好ましくは1nm〜50nm(10オングストローム〜500オングストローム)又は1nm〜40nm(10オングストローム〜400オングストローム)の範囲であり、より好ましくは20nm〜50nm(200オングストローム〜500オングストローム)の範囲であるべきである。添加できるシランの正確な量は、置換基R、及びアニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤が使用されるかどうかによって決まる。
【0089】
単位がブロックまたランダム分布で存在し得るシルセスキオキサンコポリマーは、シラン類の同時加水分解によって形成される。式Si(ORのシラン類の好ましい量は、それらの(例えば、式Si(OH)の)分解物(hydrosylates)を含みながら、使用されるシラン類の重量に対して、2〜50重量%、好ましくは3〜20重量%が添加される。テトラオルガノシラン類の量は、得られる組成物中に存在するテトラアルコキシシラン類及びこれらの分解物(例えば式Si(OH))を含みながら、シルセスキオキサンの重量に対して好ましくは10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。
【0090】
以下のシラン類、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、2−エチルブチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン及び2−エチルブトキシトリエトキシシランは、本発明のシルセスキオキサン類の調製に有用である。
【0091】
好ましくは、ヒドロキシ数は、1グラム当たり約1000〜6000、より好ましくは約1500〜2500である。ヒドロキシ数は、例えば滴定よって測定することができ、あるいは分子量は29Si NMRによって見積もることができる。
【0092】
残留物のテトラアルキオキシシラン(又はSi(OH)など、これらの分解物)を本質的に含有しない有用なシルセスキオキサンは、ダウコーニング(Dow Corning)(ミシガン州ミッドランド)から入手可能なSR2400樹脂(SR 2400 RESIN)(商品名)である。シルセスキオキサンの特に好ましい例は、ダウコーニング(Dow Corning)からのドライシル(DRI-SIL)55(商品名)であり、これはメタノール中、末端にメトキシを有する98重量%の(3−(2−アミノエチル)アミノプロピル)メチルセスキオキサンである。
【0093】
本発明の更なる実施形態において、シロキサン化合物は、ポリオルガノシロキサン、好ましくはポリジオルガノシロキサンである。好ましくは、繊維ブランケットに含浸させるために使用されるポリオルガノシロキサンは、室温(23℃±2℃)では固体である。更に、ポリオルガノシロキサンは好ましくは、ヒドロキシ又はアルコキシなどの官能基を末端で含み、以下に示されているように所望の浸透条件下で自己架橋することができる。本発明に使用できるポリオルガノシロキサンは、低い平均分子量(Mw)を有し、Mwは、好ましくは、ポリスチレン基準を用いたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による測定値が最高10,000であり、好ましくは200〜6000であり、より好ましくは250〜5000及び300〜4000の範囲である。例えば、ポリオルガノシロキサン、好ましくはポリジオルガノシロキサンは、ケイ素結合した全置換基の少なくとも約50%がメチル基であり、任意の残りの置換基は、高級アルキル基などの(例えば、4〜20の炭素原子を有する)他の一価の炭化水素基、例えば、テトラデシル及びオクタデシル、フェニル基、ビニル基及びアリル基並びに一価のヒドロカルボノキシ及び置換基された炭化水素基、例えばアルコキシ基、アルコキシ−アルコキシ基、フルオロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基及びポリアミノ(アルキル)基、メルカプトアルキル基及びカルボキシアルキル基である。かかるヒドロカルボノキシ基及び置換された炭化水素基の具体例は、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、メトキシエトキシ、3,3−トリフルオロ−プロピル、ヒドロキシメチル、アミノプロピル、β−アミノエチル−γ−メルカプトプロピル及びカルボキシブチルである。上記の有機置換基に加えて、オルガノシロキサンは、ケイ素結合した(通常は末端シラノール基に存在する)ヒドロキシル基、又は例えばポリ(メチルハイドロジェン)シロキサン類及びメチルハイドロジェンシロキサン単位及び/又はジメチルハイドロジェンシロキサン単位を備えるジメチルシロキサン単位のコポリマーにおけるような、ケイ素結合した水素原子を有してもよい。
【0094】
いくつかの場合において、ポリジオルガノシロキサンなどのポリオルガノシロキサンは、2つ以上の異なるタイプのシロキサン類を含んでもよく、他の有機ケイ素化合物と共に使用してもよい。例えば、ポリオルガノシロキサンは、シラノール末端ポリジメチルシロキサン及び架橋剤の両方を、したがって、ポリ(メチルハイドロジェン)シロキサン、アルコキシシラン、例えばCHSi(OCH及び/又はNHCHCHNH(CHSi(OC又はかかるシランの部分的な加水分解物及び縮合体を含んでもよい。このように、広範なオルガノシロキサン類のいずれかを、特性によってポリオルガノシロキサンとして使用してもよい。一般に、ポリオルガノシロキサン類、例えばポリジオルガノシロキサン類として好ましいのは、単独又は他のオルガノシロキサン化合物との組み合わせで使用されてもよい、末端ケイ素結合反応性基を有するポリオルガノシロキサン類、例えばヒドロキシル基及びアルコキシ基である。上記のポリオルガノシロキサン、例えばポリジオルガノシロキサンはまた、一般式(II)のオルガノシランとの組み合わせで使用されてもよい。
【0095】
【化2】

【0096】
式中、それぞれのYは炭化水素基、アルコキシ基及びアルコキシアルコキシ基から選択された、6個未満の炭素原子を有する一価の基を表し、少なくとも1つのYはアルコキシ又はアルコキシアルコキシであり、Rは3〜10個の炭素原子を有する二価の基を表し、前述の基はエーテル結合及び/又はヒドロキシル基の形態で存在する炭素、水素、及び所望により酸素からなり、R’は1〜15個の炭素原子又は基(−OQ)OZを有する一価の炭化水素基を表し、ここでQは、2又は3個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、aは、1〜20の値を有し、Zは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表し、それぞれのR’’はメチル又はエチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【0097】
上に指定された一般式(II)において、二価の基Rは、炭素及び水素又は炭素、水素及び酸素、エーテル結合及び/又はヒドロキシル基の形態で存在する任意の酸素からなる。基Rは、したがって例えば、メチレン、エチレン、ヘキシレン、セニレン(xenylene)、−CHCHOCHCH−及び−(CHOCHCH(OH)CH−、である。好ましくはRは基−(CH−、−(CH−又は−CHCH(CH)CH−を表す。R’基は、1〜15個の炭素原子を有する任意の一価の炭化水素基、例えばアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル又はテトラデシル、アルケニル基、例えばビニル、又はアリール、アルカリル又はアラルキル基、例えばフェニル、ナフチル、トリル、2−エチルフェニル、ベンジル及び2−フェニルプロピルであってよい。R’基は、本明細書の上記に定義されたとおり、基−(OQ)OZであってもよく、かかる基の例は、−(OCHCH)OH、−(OCHCHOH、−(OCHCH(OCHCHCHOC及び−(OCHCHOCである。Y置換基として、メチル、エチル、プロピル及びビニル並びにアルコキシ及びアルコキシアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ及びメトキシエトキシなどの一価の炭化水素基が存在してもよい。少なくとも1つのYは、アルコキシ又はアルコキシアルコキシでなくてはならず、好ましいシラン類はY置換基がメチル基及びアルコキシ基又は4個未満の炭素原子を有するアルコキシアルコキシ基から選択されるものである。好ましくは、Xはクロリン又は臭素を表す。上記のオルガノシラン類は、既知の物質であり、例えば三級アミン、例えばC1531N(CHとハロアルキルシラン、例えばクロロプロピルトリメトキシシランとの反応によって、又は不飽和アミンのヒドロシリコン化合物への添加、続いてその生成物とヒドロカルビルハロゲン化物又は水素ハロゲン化物の反応によって、調製することができる。
【0098】
本発明の更なる実施形態において、繊維は、アルコキシ基含有のシラン、好ましくは、所望により置換されたアルキル−又はアリール−アルコキシシラン、より好ましくは式RSi(OR’)の所望により置換されたアルキル−又はアリール−トリアルコキシシラン、これらの加水分解物及び縮合体並びにこれらの組み合わせから選択された有機ケイ素化合物を浸透させることができる。Rがアリールである場合、アリール基は好ましくはフェニルである。アルコキシ基OR’は、好ましくは1〜12個の、より好ましくは1〜8個の、更により好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、メチルエチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及びシクロヘキシルである。好ましいアルコキシ基は、メトキシ及びエトキシであり、また、2−メトキシエトキシ及びイソプロポキシも有用である。アルコキシ基は互いに独立に選択される。好ましいアルコキシ基は、メトキシ及びエトキシであり、また、2−メトキシエトキシ及びイソプロポキシも有用である。アルコキシ基は互いに独立に選択される。任意の置換基は、所望により更に、例えばC〜C−アルキルと又はアミノ−C〜C−アルキルと、追加的に置換されたアミノ;エポキシ、3−グリシジルオキシ、3−(メタ)アクリロキシ、メルカプト及びC〜C−アルコキシ基から、好ましくは、選択される。好ましい実施形態では、ルキル基のみが置換される。特に前述の水溶液がすぐにではなく、数時間後に適用される場合は、加水分解物及び/又は縮合体、特にアルコキシ基含有のシラン化合物などの自己縮合体は、例えば前述のシランの水溶液中で形成され得る。
【0099】
トリアルコキシシラン類の例は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、2−エチルブチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、2−エチルブトキシトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、メタクリロキシトリメトキシシラン(methacryloxytrimethoxysilane)、グリシドキシトリメトキシシラン(glycidoxytrimethoxysilane)及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランである。アルキル−又はフェニル−トリアルコキシシランの例は、デグサ(Degussa)から商品名「ダイナシラン(DYNASYLAN)」で市販されており、その例はダイナシランPTMO(DYNASYLAN PTMO)であり、これはプロピルトリメトキシシランである。
【0100】
含浸材料は、式Si(OR)又はSi(OR)OR’又はSi(OR)(OR’)のテトラアルコキシシラン類と共に上記に言及されたように、トリアルコキシシラン類のブレンドを含んでもよく、式中、R及びR’は所望により、好ましくは、1〜20個、より好ましくは1〜16個、更により好ましくは1〜10個又は1〜8個の炭素原子を含有する置換されたアルキル基である。任意の置換基は、所望により、例えばC〜C−アルキルと、又はアミノ−C〜C−アルキルと、追加的に置換されたアミノ;エポキシ、3−グリシジルオキシ、3−(メタ)アクリロキシ、メルカプト及びC〜C−アルコキシ基から、好ましくは選択される。
【0101】
このマットは、繊維マットの圧縮及び抑制の前又は後に、任意の上の材料で含浸することができる。更に、また、成形ボックスに供給される前に繊維を含浸することも可能である。
【0102】
本発明の更なる実施形態において、高摩擦コーティング材料の薄い連続的又は非連続的なコーティングが、内側表面(即ち汚染防止要素と接触するマウンティングマットの表面)並びに所望により外側表面(即ちハウジングと接触するマウンティングマットの表面)上に形成される。高摩擦コーティングは、高摩擦コーティング材料が本質的にマウンティングマットに入り込まないように適用される。更に、繊維マットの内側表面及び所望により外側表面は、繊維マットの、所望によりコーティングされた外側表面とハウジングとの間の摩擦係数が、繊維マットのコーティングされた内側表面と触媒要素との間の摩擦係数よりも低くなるように、高摩擦コーティングでコーティングされる。高摩擦コーティングの有機部分は、触媒要素の通常の動作条件下で、部分的又は完全に分解又は消散する。外側表面の高摩擦コーティングは、マウンティングマットの内側表面の高摩擦コーティングと同じであってもよいし、異なっていてもよい。所望の実装特性を得るために、同じコーティング材料が両方の表面上で使用される場合、繊維マットの外側表面の側と内側表面の側との間で異なる含浸量となるよう、注意しなければならない。したがって、同じ高摩擦コーティングで含浸する場合は、内側表面の側を含浸するコーティング材料の固体構成要素含有量が、外側表面の側を含浸するコーティング材料の固体構成要素含有量よりも大きくなければならない。両方の側の間で摩擦差が最大化されたとき、優れた詰め結果が達成できるということが示されている。マウンティングマット上の高摩擦コーティングの含有量の差に特別の制限はないが、マウンティングマットの内側表面の側上の高摩擦コーティングの固体構成要素含有量は、好ましくは約5〜100g/m、より好ましくは約20〜50g/mである。一方、繊維マットの外側表面上の高摩擦コーティングの固体構成要素含有量は、好ましくは、約0.5〜10g/mである。
【0103】
通常、高摩擦コーティングは、一般に使用されているキャニング方法(例えば触媒の詰め)に際しての動き(behaviour)を改善する役割を果たす。キャニング中にマットの滑りを防止するために、高摩擦コーティングが選択され、滑り止め特性を構成要素の表面上にもたらす。コーティングは、天然又は合成ポリマー材料、アクリル酸エステルコポリマー、ニトリル樹脂若しくはゴム、酢酸ビニルコポリマー、ポリスチレン樹脂、アクリレート−スチレンコポリマー、スチレン−ブタジエン樹脂、SISブロックコポリマー、EPDM、ABS、PE又はPPフィルムなどのような、好ましくは、アクリル樹脂又はゴムなどの樹脂又はゴム材料、及びこれらの組み合わせから選択することができる。これらの有機ポリマー材料の多くは、優れた滑り止め特性をもたらす。これらの有機ポリマーのいくつかは、上昇した温度で柔らかくなる場合があり、これは、有機ポリマー材料が悪化又は消失する前に、一定の温度/時間ウィンドウにおいて、低減された保持特性につながる場合がある。シリカ−、アルミナ−及び粘土ゲル又は粒子スラリーなどの無機コーティングが使用できるが、無機コーティングは時々、有機ポリマー材料と比較して低いスリップ防止特性を有する場合がある。無機コーティングの利点は、高温で分解せず、そのため、マット保持性能の増加につながる永続的な摩擦上昇をもたらす。保持性能の更なる最適化は、無機高摩擦コーティングをマットのハウジング側上に付けることによって達成することができ、これは詰め特性を著しく変えずに、摩擦の増加及びマット保持性能の増加につながる。
【0104】
特定の実施形態において、高摩擦コーティング構成要素は、触媒コンバータの動作中に高温条件下で発生する任意反応で分解及び消散され得るラテックスからなる。本明細書で使用可能なラテックスは、天然又は合成ポリマー材料、好ましくは樹脂材料、アクリル酸エステルコポリマー、酢酸ビニルコポリマー、ポリスチレン樹脂、アクリレート−スチレンコポリマー、スチレン−ブタジエン樹脂及びこれらの組み合わせを水性媒質、他の媒質又はポリビニルアルコールなどの有機材料の中に分散することによって得られるコロイド状の分散液を含む。所望により、ラテックスは、シリカ粒子、アルミナ粒子又は粘土粒子の1つ以上の、ラテックスへの混合を更に含む。アクリル樹脂が使用されるアクリルラテックスは、特に有利に使用することができる。好ましいラテックスは、エアプロダクツポリマーズ(Air Products Polymers)(米国ペンシルベニア州アレンタウン所在)から「エアフレックスEAF67(AIRFLEX EAF67)」(商品名)として入手可能な酢酸ビニル−エチレンポリマー分散液、並びに、バスフ(BASF)(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン所在)から「アクロナルA 420 S(ACRONAL A 420 S)」及び「アクロナルLA 471 S(ACRONAL LA 471 S)」(商品名)として入手可能な、熱により架橋可能なアクリル酸とエステルのコポリマーの、可塑剤を含まない分散水溶液である。
【0105】
更なる実施形態において、繊維マットをコーティングする高摩擦コーティングは、上記の有機ポリマー材料及び1つ以上のタイプの研磨粒子も含むことができる。有用な有機ポリマー材料及び有用な研磨粒子に特に関する更なる詳細は、2006年2月23日付の国際公開第2006/020058(A)号に見出すことができる。例えば、有機ポリマー材料中に研磨粒子の微粉粒子を分散することによって調製されたスラリーが、繊維マットの表面に適用される。このように、繊維マットの少なくとも内側表面及び所望により外側表面上に研磨材料の微粉粒子が選択的に固定されたコーティングを有する繊維マットが得られる。研磨材料の微粉粒子は、触媒要素を備える繊維マットの少なくとも接触面上に配列されているため、触媒要素との摩擦係数が増加され、触媒要素の保持信頼性は更に改善され得る。更に、触媒要素及び触媒要素の周囲に巻かれている繊維マットは缶詰され、触媒要素と巻かれた繊維マットとの間の動きが、阻止されることができ、あるいは、組み立てられる触媒コンバータの性能に悪影響を与えることなく、少なくとも有意に低減することができる。
【0106】
上述のように、高摩擦コーティングによるマウンティングマットのコーティングは、有利なことに、スプレー、ブラッシング、積層、印刷(例えばスクリーン印刷)などのような既知の従来の技術によって実行され得る。1つの好ましい方法は、(例えば、エアブラシのようなラッカスプレーシステムなど)スプレーコーティングであり、これは、例えば、上述のような例えばアクリルラテックスなどのラテックスのスプレー溶液又は分散液を調製し、繊維マットの片面又は両面に、この溶液又は分散液を連続に又は同時にスプレーするだけで、十分に実行される。作業は、したがって簡単で経済的である。スプレー後の溶液又は分散液は、自然乾燥させても、好適な温度(例えば110℃)に加熱して乾燥させてもよい。繊維マットの内側表面上の高摩擦コーティングの固体構成要素含有量は、好ましくは約5〜100g/m、より好ましくは約10〜50g/mであり、マウンティングマットの外側表面上の高摩擦コーティングの固体構成要素含有量は、好ましくは約0.5〜10g/mである。
【0107】
好ましくは、高摩擦コーティング材料の薄い連続的又は非連続的なコーティングは、マウンティングマットの内側及び所望により外側表面上に形成される。使用されたコーティング方法は、高摩擦コーティング材料が本質的にマウンティングマットを浸潤しないよう、いずれのマウンティングマットの毛管作用も最小化されるように、適応される。即ち、高摩擦コーティングは、マウンティングマットの表面上のみに実質的に存在すべきであり、本質的にマットを浸潤すべきではない。これは、例えば、高い固体密度を有する溶液又は分散液を使用することによって、乳化剤、揺変性剤又は同様の効果を有する同様の添加剤を溶液若しくは分散液に添加することによって、圧縮状況下で繊維マットをコーティングすることによって、使用された溶剤が急速に蒸発する又は同様となるコーティング条件によって、あるいは本質的に溶剤が入っていない高摩擦コーティングの積層によって、達成することができる。高摩擦コーティングが、マウンティングマットの厚さの10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは3%未満、最も好ましくは1%未満を浸潤することが好ましい。
【実施例】
【0108】
以下の実施例は、本発明を更に例証するが、本発明を制限することを意図しない。
【0109】
【表1】

【0110】
試験方法
サイクル圧縮試験
サイクル圧縮試験の試験装置は以下の要素を含有する。
【0111】
a.)引張試験機ズウィック/ローエル(Zwick/Roell)モデルZ010(ドイツ、ウルム(Ulm)所在のズウィック社(Zwick GmbH & CoKG)より入手)。最高10kNまで測定可能なロードセルを有する下位固定部分と、下位部分から離れる縦方向に「クロスヘッド速度」として定義される速度で移動可能な上位部分とを備えるもの。
【0112】
b.)底面積が6cm×8cmの2つのステンレススチールブロックを含む試験備品であり、それぞれのブロックが、少なくとも900℃まで互いに独立にブロックを熱することができる加熱要素を含む。ブロックの底面積が互いの上に縦に位置づけられるように、下位ステンレススチールブロックはロードセルに固定装着され、上位スチールブロックは引張試験機の上位可動部分(クロスヘッド)に固定装着される。それぞれのステンレススチールブロックは、ブロックの中央に位置づけられたサーマルカップルを装備する。
【0113】
c)ステンレススチールブロック間の開距離を測定する、フィードラーオプトエレクトロニク(Fiedler Optoelektronik)(ドイツ、ルーツェン(Lutzen)所在)より入手したレーザー伸縮計(extensiometer)。
【0114】
約51mm(2インチ)の直径を有する被検体マウンティングマット試料を、下位ステンレススチールブロック上に直接位置づけた。
【0115】
次に、開ギャップとも呼ばれる既定の圧縮密度に圧縮するために、マウンティングマットを圧縮してギャップを閉じた。この開ギャップの位置で1分間弛緩させた後、マウンティングマットが与える圧力を記録した。この後、両方のステンレススチールブロックを、30℃/分のレートで、既定の試験温度に達するまで加熱した。この間、ステンレススチールブロック間のギャップは一定に保たれた(すなわち、レーザー伸縮計によって、金属膨張は継続的に補正された)。加熱中の最低圧力を記録した。
【0116】
加熱後、閉ギャップとも呼ばれる第2の既定のマット密度にギャップを閉じることによって、サイクルを開始した。次に、ギャップを再び開いて開ギャップ位置にした。このサイクルを500回繰り返した。サイクル中のクロスヘッド速度は、毎分2.5メートルであった。最終サイクルの開ギャップ圧力及び閉ギャップ圧力を記録した。
【0117】
実条件備品試験(RCFT(Real Condition Fixture Testの略))
RCFTの試験装置は以下のものを含む。
【0118】
a.)引張試験機(米国ミネソタ州エデンプレイリー所在のマテリアルテストシステムズ社(Material Test Systems)から入手)のMTSモデルアライアンス(Alliance)RT/5(商品名)。下位固定部分と、「クロスヘッド速度」として定義された速度で下位部分から離れるように縦方向に移動可能な上位部分とを含み、最高5kNまでの力を測定可能なロードセルを有する。
【0119】
b.)底面積が6cm×8cmの2つのステンレススチールブロックを含む試験備品であり、それぞれのブロックが、少なくとも900℃まで互いに独立にブロックを熱することができる加熱要素を含む。ブロックの底面積が互いの上に縦に位置づけられるように、下位ステンレススチールブロックは下位固定部分に固定装着され、上位スチールブロックは引張試験機の上位可動部分(クロスヘッド)のロードセルに固定装着される。それぞれのステンレススチールブロックは、ブロックの中央に位置づけられたサーマルカップルを装備する。
【0120】
c)ステンレススチールブロック間の開距離(ギャップ)を測定する、フィードラーオプトエレクトロニク(Fiedler Optoelektronik)(ドイツ、ルーツェン(Lutzen)所在)より入手したレーザー伸縮計(extensiometer)。
【0121】
44.5mm×44.5mmの寸法を有するマウンティングマット試料をステンレススチールブロック間に配置した。1.0m/分のクロスヘッド速度で、ギャップを既定のマウンティングマット密度に閉じた。この後、それぞれのステンレススチールブロックを、異なる温度プロファイルに漸増式に加熱して、排気ガス処理装置内の金属ハウジング及びセラミック基材の温度をシミュレートした。加熱中、ステンレススチールブロック間のギャップは、典型的な排気ガス処理装置ハウジング及びセラミック基材の温度及び熱膨張係数から算出した値の分だけ増加した。
【0122】
ここでは、RCFTを、2つの異なる温度プロファイルで実行した。第1のプロファイルは、セラミック基材の最高温度500℃及び金属缶の最高温度200℃をシミュレートする。第2のプロファイルは、セラミック基材の最高温度700℃及び金属缶の最高温度400℃をシミュレートする。
【0123】
最高温度に熱した後、ステンレススチールブロックを漸増式に冷却し、ギャップを、温度と熱膨張係数から算出した値の分だけ減少した。加熱及び冷却サイクル中にマウンティングマットが与えた圧力を記録した。マウンティングマット試料及びスチールブロックを35℃に冷却し、このサイクルを更に2回繰り返しながら、マウンティングマットが与える圧力を記録した。マウンティングマットでは、3回のサイクルのそれぞれで少なくとも50kPaの最低圧力であることが通常は望ましいと考えられる。
【0124】
実施例1A、1B及びC1
比較実施例C1では、下記の組成の膨張性マウンティングマットを調製した。
【0125】
比較実施例C1の組成(重量部)
46.2%繊維(「スーパーウール(SUPERWOOL)607HT」)
11.5%Rガラス短繊維(チョップ)、長さ6mm、700度で1時間熱処理したもの。
【0126】
38.5%未膨張バーミキュライト
3.8%−P1粉末(「ベスタメルト(VESTAMELT)4680」)
比較実施例C1の膨張性マウンティングマットは、310mm幅の不織機(デンマーク所在のフォームファイバー(Formfiber)から入手したもの)を上述の方法に従って動作して作製した。この機械の成形ボックスは、図2に図示した概略図に本質的に相当するものであって、この成形ボックスは、その上位部に互いに対向して配置された3つのスパイクロール2列及びこの成形ボックスの底の近くで互いに対向して配置された3つのスパイクロール2列を有する。図2に図示するように、これら上位及び下位スパイク列の間をエンドレスベルトスクリーンが走る。成形ワイヤを成形ボックスの底の下に配置した。
【0127】
無機繊維及び高分子粉末を、搬送ベルトによって機械内に供給した。まず、繊維は、2つの回転するスパイクロールを有する予め開かれたセクションを通って通過する。この後、繊維は成形チャンバの上部に吹き込まれる。次に、第2の搬送ベルトによってバーミキュライトを成形セクションの上部に直接供給した。繊維及び微粒子は、約1m/分の速度で移動する成形ベルト上に回収される。面積当たりの重量が約18g/mの薄手印画紙不織スクリムを、成形チャンバの下方部に供給して、搬送中のマットを支持する。この成形セクションの後、マットを熱風炉に通過させた。炉温を140℃として加熱し、高分子粉末を活性化した。炉から出た直後に、マットをローラーで圧縮して、約25mmの元の成形厚から約8mmに厚さを減少した。
【0128】
次に、これらのマウンティングマット(実施例)のサイクル圧縮試験及び実条件備品試験(RCFT)を行った。
【0129】
(実施例1A)
実施例1Aの膨張性マウンティングマットは、ドイツ、フランクフルト所在のエボニックインダストリーズ社(Evonik Industries AG)の「エアロディスプ(AERODISP)W630」である入手した分散液1.0%(マット組成全体に対して)を搬送ベルト上の繊維に手動ポンプ噴霧器で均等に散布してから未開セクションにそれらの繊維を供給したことを除き、上述の方法と同じように調製された。
【0130】
(実施例1B)
実施例1Bの膨張性マウンティングマットは、ドイツ、フランクフルト所在のエボニックインダストリーズ社の「VPディスパージョン(VP DISPERSION)W2650X」である入手した分散液3.0%(マット組成全体に対して)を搬送ベルト上の繊維に手動ポンプ噴霧器で均等に散布してから未開セクションにそれらの繊維を供給したことを除き、上述の方法と同じように調製された。
【0131】
【表2】

【0132】
【表3】

【0133】
サイクル圧縮試験及びRCFTの結果は、ナノ粒子を含有する両方の膨張性マット試料(「エアロディスプ(AERODISP)W630」及び「VPディスパージョン(DISPERSION)W2650X」(いずれも商品名))の保持圧力性能が、比較実施例C1に比べて改良されていることを実証している。
【0134】
実施例2A、2B及びC2
比較例C2
比較実施例C2では、下記の組成を有するマウンティングマットを作製した。
【0135】
比較実施例C2の組成
32.4%繊維(スーパーウール(SUPERWOOL)607HT)
32.4%Rガラス短繊維(チョップド)、長さ36mm、700度で1時間熱処理したもの。
【0136】
32.4%短繊維(チョップド)(ベルドテックス(BELDOTEX)225)、長さ6mm、800℃で1時間熱処理したもの。
【0137】
2.9%バイコンポーネント繊維(トレビラ(TREVIRA))
比較実施例C2のマウンティングマットは、比較実施例C1で説明した上述の構造の310mm幅不織機で作製された。
【0138】
搬送ベルトを介して、無機繊維及びバインダー繊維を機械に供給した。まず、繊維は、2つの回転するスパイクロールを有する予め開かれたセクションを通って通過する。この後、繊維は成形チャンバの上部に吹き込まれる。繊維は、次に、約1m/分の速度で移動する成形ベルト上に回収される。面積当たりの重量が約18g/mの薄手印画紙不織スクリムを、成形チャンバの下方部に供給して、搬送中のマットを支持する。この成形セクションの後、マットを熱風炉に通過させた。140℃の炉温で、バインダー繊維を加熱して活性化した。炉から出た直後に、マットをローラーで圧縮して、約25mmの元の成形厚から約8mmに厚さを減少した。
【0139】
実施例2Aの組成
実施例2Aのマウンティングマットは、(マット組成全体に対して)10%のナノ粒子分散液(スウェーデンのエカケミカルス社(Eka Chemicals)の「ビンドジル(BINDZIL)CAT220」(商品名)を入手)を5%固体に希釈し、搬送ベルト上で手動ポンプ噴霧器を用いて均等に散布して繊維に供給してから未開セクションにそれらの繊維を供給したことを除き、上述の比較実施例C2と同じ方法で調製した。
【0140】
実施例2Bの組成物
実施例2Bのマウンティングマットは、(マット組成全体に対して)2.8%のナノ粒子(ドイツのエボニックインダストリーズ社(Evonik Industries)の「エアロシル(AEROSIL)200」(商品名)を入手)を搬送ベルト上の繊維上に手動で加えてから未開セクションにそれらの繊維を供給したことを除き、上述の比較実施例C2と同じ方法で調製した。
【0141】
【表4】

【0142】
サイクル圧縮試験結果は、ナノ粒子(ビンドジル(BINDZIL)CAT 220及びエアロシル(AEROSIL)200を使った両方の実施例で良好な圧力増加を示している。
【0143】
【表5】

【0144】
RCFTの結果は、両方の実施例での両方のRCFT試験で良好な圧力の増加を示している。特に、サイクル1及び3でのシミュレートされた使用での最低圧力の改善が顕著である(>100%)。
【0145】
実施例C3及び3A
下記の組成を有する比較実施例C3及び実施例3Aを、実施例C2、2A及び2Bのマウンティングマットの作製で上述したプロセスに従って製造した。成形セクションの後のバインダー繊維の熱接合プロセスに加えて、ニードルタッカー(ドイツ、エベルバッハのディロ(DILO)から入手したもの)を使用して1平方センチメートル当たり24のニードルパンチをした。
【0146】
比較実施例C3の組成
31.8%繊維(「イソフラックス(ISOFRAX)」)
31.8%繊維(「サッフィル(SAFFIL)3D+」)
31.8%シリカ繊維(チョップド)、長さ65mm(Steklovoloknoより「シリカヤーン(SILICA YARN)K11C」(商品名)を入手)。繊維は800℃のキルンで1時間熱処理した。
【0147】
4.6%バイコンポーネント繊維(トレビラ(TREVIRA))
実施例3Aの組成物
比較実施例3のマウンティングマットと同じ組成の試料は、マットを懸濁液中に含浸させてから120℃の炉で50分間乾燥させることにより、水中0.5%ナノ粒子(ラポナイト(LAPONITE)RD)懸濁液に含浸させた。
【0148】
【表6】

【0149】
比較実施例C3に比べ、ナノ粒子(ラポナイトRD)含有マウンティングマットでは有意な圧力の上昇(>100%)があったが、ナノ粒子の組み込みは見られなかった。
【0150】
本発明の範囲及び趣旨から外れることなく、本発明の予測可能な修正及び変更が当業者にとって自明であろう。本発明は、例証目的のために本明細書に記載されている実施形態に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒コンバータに汚染防止装置を実装するためのマウンティングマットであって、前記マウンティングマットが、1nm〜100nmの平均直径を有する無機粒子が中に分布された無機繊維の不織マットを含み、前記マウンティングマットが、有機結合剤を含まないか、又は前記マウンティングマットの総重量に基づき5重量%以下の有機結合剤を含有するものである、マウンティングマット。
【請求項2】
少なくとも0.5重量%の前記無機粒子の粉末が前記マットに含有されている、請求項1に記載のマウンティングマット。
【請求項3】
前記マウンティングマットが膨張性材料を更に含有する、請求項1か2のいずれか1項に記載のマウンティングマット。
【請求項4】
前記無機繊維が、焼きなまし溶融成形セラミック繊維を含む溶融成形セラミック繊維、ゾルゲル成形セラミック繊維、多結晶繊維、熱処理されたガラス繊維を含むガラス繊維、アルミナ−シリカ繊維、生体溶解性繊維、及びこれらの組み合わせから選択されるものである、請求項1から3のいずれか1項に記載のマウンティングマット。
【請求項5】
前記マウンティングマットが、ニードルパンチ又はステッチ結合される、請求項1から4のいずれか1項に記載のマウンティングマット。
【請求項6】
スクリム及び網目から選択される1層以上の層を更に含む請求項1から5のいずれか1項に記載のマウンティングマット。
【請求項7】
前記マットの対向する主要面の片面又は両面が、スクリム又は網目を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のマウンティングマット。
【請求項8】
前記スクリム又は網目が、無機繊維を含む、請求項6又は7に記載のマウンティングマット。
【請求項9】
前記無機粒子粉末が、シリカ、アルミナ、若しくはジルコニアである酸化物、チタニア、又はケイ酸塩を含有する、請求項1から8のいずれか1項に記載のマウンティングマット。
【請求項10】
汚染防止装置であって、ハウジングと、前記ハウジング内に配置された汚染防止要素と、前記汚染防止要素及び前記ハウジングの間に配置されて前記汚染防止要素の位置を定め、並びに機械的衝撃及び熱衝撃を吸収するマウンティングマットとを有し、前記マウンティングマットが請求項1〜9のいずれか一項に記載のマウンティングマットを含む汚染防止装置。
【請求項11】
請求項1に記載のマウンティングマットを作製する方法であって、
(i)成形ワイヤの上に置かれる、開かれた底を有する成形ボックスの入口を通して無機繊維を供給し、前記成形ワイヤの上に繊維のマットを成形する工程であって、前記成形ボックスが、前記入口とハウジング底との間のハウジングに少なくとも1列に備えられた、繊維の凝集を解きほぐすための複数の繊維分離ローラーと、エンドレスベルトスクリーンと、を有するものである、工程と、
(ii)繊維分離ローラーの下であり前記成形ワイヤの上にある前記エンドレスベルトの下位走行部上の繊維の凝集を捉える工程と、
(iii)捉えられた凝集が前記エンドレスベルトから解放され、前記ローラーに接触して解きほぐされることができるように、繊維分離ローラーの上にある前記エンドレスベルト上に捉えられた繊維の凝集を搬送する工程と、
(iv)前記繊維のマットを、前記成形ワイヤによって前記成形ボックスから出して移動する工程と、
(v)前記繊維のマットを圧縮し、前記繊維のマットをその圧縮された状態に拘束し、それにより触媒コンバータのハウジングに汚染防止要素を実装するために好適な望ましい厚さを有する、マウンティングマットを得る工程と、を含み、
前記マウンティングマットに、1nm〜100nmの平均直径を有する無機粒子が提供される、方法。
【請求項12】
無機粒子の粉末を前記成形ボックスに供給することによって、前記マウンティングマットに前記無機粒子が提供される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記無機繊維を前記成形ボックスに提供する前に、前記無機粒子の分散液を前記無機繊維に散布することによって、又は前記繊維のマットの圧縮の前又は後に前記繊維のマットに前記分散液を散布することによって、前記マウンティングマットに前記無機粒子が提供される、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−501016(P2011−501016A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528970(P2010−528970)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/079027
【国際公開番号】WO2009/048857
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】