説明

無機中空体組成物の施工方法

【課題】 無機中空体を主材とする組成物の流動性及び硬化性を用いて、これまでにない新規な施工方法を提供することにある。
【解決手段】 送り込み(吹き込み)作業は、吹き込み機に湿潤状態で流動性の無機中空体組成物を投入する。吹き込み機はブロア(200V)を備えており、投入された無機中空体組成物は流動状態であるためにこのブロアによって圧送される。圧送された無機中空体組成物は配管を通り、施工対象個所へ送り込まれる。送り込まれた無機中空体組成物は施工対象個所において乾燥硬化して無機質層を形成することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、無機中空体組成物を用いた施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、配合当初には流動性を有し、その後乾燥硬化する建築材料としては、キャスタブル(不定形耐火物)が知られている。例えば、特許文献1には、骨材を主材とし、これにアルミナセメントを結合材として配合してなる水硬性不定形耐火組成物が開示されている。
【特許文献1】特開昭58−176181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このキャスタブルは、水不溶性の高吸水性樹脂を配合し、焼成によってこの高吸水性樹脂を揮散させて微細な気孔を有する軽量化されたキャスタブル成形体を得るものである。 従って、このキャスタブルの施工方法には、乾燥以外にも焼成工程(作業)が必要となっている(明細書第4頁右下欄)。
【0004】
一方、本願発明は、無機中空体を主材とする組成物の流動性及び硬化性を用いて、これまでにない新規な施工方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1の発明は、無機中空体と無機バインダーからなる無機中空体組成物を、湿潤状態で流動性を保持したまま施工対象個所へ送り込み、送り込み後に乾燥硬化させて無機質層を形成することを特徴とする無機中空体組成物の施工方法である。
ここで、「湿潤状態(である無機中空体組成物)」とは、例えば、無機中空体組成物の水分の割合が約25重量%で、その範囲が15%〜40%である状態をいう。
第2の発明は、無機中空体組成物が無機中空体と無機バインダーと吸熱性化合物からなることを特徴とする同無機中空体組成物の施工方法である。
第3の発明は、無機中空体組成物の施工対象個所への送り込みは、吹き込み機(ブロア)を用いて圧送するものであることを特徴とする同無機中空体組成物の施工方法である。
第4の発明は、無機中空体組成物を施工対象個所である耐火間仕切壁の中空部に充填し、当該中空部に無機質層を形成したことを特徴とする同無機中空体組成物の施工方法である。
第5の発明は、無機中空体組成物を施工対象個所である軒裏天井の天井板部に敷設し、当該天井板部に無機質層を形成したことを特徴とする同無機中空体組成物の施工方法である。
【発明の効果】
【0006】
本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)無機中空体と無機バインダーからなる無機中空体組成物を、湿潤状態で流動性を保持したまま施工対象個所へ送り込み、送り込み後に乾燥硬化させることで、耐火性のある無機質層を形成することができる。
(2)無機中空体組成物が無機中空体と無機バインダーの他に吸熱性化合物を配合することで、より耐火性の向上した無機質層を形成することができる。
(3)無機中空体組成物は無機中空体を主材とするために軽量(かつ球状)で、吹き込み機(ブロア)を用いた施工対象個所への圧送を可能とする。
(4)無機質層を耐火間仕切壁の中空部に形成することで、当該耐火間仕切壁の耐火性能が向上する。なお、この場合の耐火間仕切壁は新設のもの及び既設のもの両方に対応することができる。
(5)無機質層を軒裏天井の天井板部に形成することで、当該軒裏天井の耐火性能が向上する。この場合の軒裏天井は新設のもの及び既設のものに両方に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本願発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係る無機中空体組成物の施工方法の工程図である。
(1)機器・資材・無機中空体組成物の搬入
施工作業に必要な機器・資材・無機中空体組成物等を作業現場に搬入する工程で ある。なお、無機中空体組成物は、湿潤状態で流動性を保持する必要があるため、 密閉状態で搬入される。
(2)養生及び足場等の設置
作業現場の環境維持のために作業現場を養生し、作業のための足場等を設置する 工程である。
【0008】
(3)使用機器設置
無機中空体組成物の施工対象個所への送り込みに吹き込み機(ブロア)を用いる 場合には「吹き込み機(ブロア)」を設置、自然落下法を用いる場合には「自然落 下装置」を設置する工程である。
例えば、「吹き込み機(ブロア)」を設置する場合、次のような設置を行う。
<配管径の範囲>
・施工対象個所を65mm及び100mm幅の壁を想定した場合、範囲としては 内径30mm〜90mm程度が妥当である。好ましくは、内径50mm〜75 mm程度である。
<風量の範囲>
・ホース吐出口での測定で、15m/s〜40m/sが妥当である。風量が強い と無機中空体組成物の粒(無機中空体)が壊れ易くなり、風量が弱いと無機中 空体組成物が送り難くなる為である。好ましくは、約20〜30m/sで吹き 込むと安定する。
<ブロアの種類>
・リングブロワ(200V 3相)を使用する。上記風量の範囲が保証できるか らである(100Vのブロワだと風量が弱い)。なお、前記ブロワより強力な ものでも使用可能である。
(4)送り込み(吹き込み)作業
上記(3)で設置した「吹き込み機(ブロア)」や「自然落下装置」を使用して 無機中空体組成物の送り込み(吹き込み)を行う工程である。
【0009】
(5)養生撤去・足場解体等
上記(2)の工程に行った養生の撤去、足場の解体等の工程である。
(6)機材搬出・清掃・産業廃棄物処理
上記(1)で搬入した機器の搬出、その他作業現場の清掃・排出した産業廃棄物 処理である。
【0010】
図2は、図1の(4)送り込み(吹き込み)作業を図示した説明図である。
送り込み(吹き込み)作業は、吹き込み機に流動状態の無機中空体組成物を投入する。吹き込み機はブロア(200V)を備えており、投入された無機中空体組成物は流動状態であるためにこのブロアによって圧送される。圧送された無機中空体組成物は配管を通り、施工対象個所へ送り込まれる。送り込まれた無機中空体組成物は施工対象個所において乾燥硬化して無機質層を形成することになる。
また、吹き込み機のホッパー下のハーフメガブロック内壁面と出口配管内壁面をフッ素ライニングするとスケールが付着しなくなり風量及び吹き込み量の性能が維持される。フッ素ライニングする理由は、湿潤状態の粉体は、圧送の際、金属面に付着しようとし短時間稼動中にスケールとして成長し、配管の目詰まり、ハーフメガブロック内壁面に付着し圧送障害を起す。これに対して、フッ素樹脂ライニングにすると、乾燥粉体は、静電気で付着しようとするが、湿潤状態の粉体は静電気的に中性であるため付着せず長時間の稼動を可能にする。
【0011】
ここで、ブロアによる圧送を可能にするのは、無機中空体組成物が軽量な無機中空体を主材として、無機中空体どうしが流動化した無結合又は弱結合状態だからである。無機中空体が球状であればより好ましい。このような無機中空体組成物を用いることで、配管中に止まることなく、ブロアによる施工対象個所への圧送を可能にするのである。
【0012】
図3は、耐火間仕切壁の中空部を施工対象個所とした施工状態を示す説明図である。
図3(A)に示す耐火間仕切壁構造は、水平方向に設けられた略コ字形をした上部ランナー11及び下部ランナー12をつなぐように垂直方向等間隔に取り付けられた間柱(スタッド)20,20,…と、その間柱20に向かい合うようにして取り付けられる一対の間仕切壁30とを備えている。そして、この一対の間仕切壁30,30の間に中空部15が形成されている。なお、間仕切壁30は、下張材31と上張材32からなっている。
【0013】
無機中空体組成物は、充填材としてこの中空部15に充填される。無機中空体組成物は流動性があるために、中空部15の間に隙間無く配置(充填)される。そして、充填後に無機中空体組成物は乾燥硬化し、図3(B)に示すような無機質層40を形成する。この無機質層40は、自立性のある耐火層であり、間仕切壁30の耐火性を向上させるものである。なお、無機質層40の上部には、壁面開口部に充填できない部分に、ロックウール板等の無機繊維充填材41を充填している。
【0014】
図4は、軒裏天井の天井板部を施工対象個所とした施工状態を示す説明図である。
図4(A)に示す軒裏天井構造は、外装板51に設けられた軒天通気見切り金物52に支持されるようにして、軒先から垂下する破風板53と外装板51との間に天井板50が取り付けられているものである。
【0015】
無機中空体組成物は、敷設材としてこの天井板50の上側(天井板部)に敷設される。無機中空体組成物は流動性があるために、天井板部に隙間無く配置(敷設)される。そして、敷設後に無機中空体組成物は乾燥硬化し、図3(B)に示すような無機質層60を形成する。この無機質層60は、自立性のある耐火層であり、天井板50の耐火性を向上させるものである。
【0016】
ここで、図3に示す無機質層40及び図4に示す無機質層60の形成を可能にするのは、無機中空体組成物が軽量な無機中空体を主材として、無機中空体どうしが流動化した無結合又は弱結合状態だからである。無機中空体が球状であればより好ましい。このような無機中空体組成物を用いることで、施工対象個所に隙間無く無機質層を形成できる。
また、無機中空体組成物が無機バインダーを備えることで、施工対象個所に配置(充填・敷設)後に、無機バインダーの乾燥によって無機中空体どうしが完全結合状態に固化(硬化)する自硬性を有する。これによって、自立性のある無機質層を形成できる。なお、無機中空体組成物が重力のみによって成形した時に、乾燥前後で体積変化しないものが好ましい。また、無機中空体組成物に吸熱性化合物を配合することで、無機質層の耐火性能をより向上させることができるので、好ましい。
【0017】
以上のような「無機中空体組成物」としては、無機中空体がパーライト、泡ガラス、バーミキュライト、シャモット、軽石、から選ばれる1種以上、無機バインダーが水ガラス、コロイダルシリカ、燐酸アルミニウム、アルミナゾル、セメント、から選ばれる1種以上であって、例えば、無機中空体としてパーライト100重量%に対して、無機バインダーとして水ガラス(=ケイ酸ソーダ)を10〜200重量%配合したものが考えられる。
また、「吸熱性化合物を混合した無機中空体組成物」としては、吸熱性化合物が水酸化アルミニウム、石膏、シリカゲル、ゼオライト、水酸化銅、硫酸マグネシウム水和物、硫酸アルミニウム水和物、燐酸マグネシウム水和物、燐酸鉄水和物、フッ化鉄水和物、フッ化アルミニウム水和物、から選ばれる1種以上であって、無機中空体としてパーライト、無機バインダーとして水ガラス(=ケイ酸ソーダ)、吸熱性化合物として水酸化アルミニウムを、配合比各25重量%〜40重量%の範囲、好ましくは30重量%〜35重量%の範囲、より好ましくは33重量%〜34重量%で配合したものが考えられる。
なお、無機中空体組成物の配合には、重力式ミキサー(例:ポットミキサー等)を使用するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本願発明は、無機中空体組成物を用いた次のような工法に広く利用できるものである。
(1)充填工法
(2)敷設工法
(3)その他
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明に係る無機中空体組成物の施工方法の工程図。
【図2】図1の(4)送り込み(吹き込み)作業を図示した説明図。
【図3】耐火間仕切壁の中空部を施工対象個所とした施工状態を示す説明図。
【図4】軒裏天井の天井板部を施工対象個所とした施工状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0020】
11 上部ランナー 12 下部ランナー 15 中空部 20 間柱
30 間仕切壁 31 下張材 32 上張材
40 無機質層 41 無機繊維充填材
50 天井板 51外装板 52 軒天通気見切り金物 53 風板
60 無機質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機中空体と無機バインダーからなる無機中空体組成物を、湿潤状態で流動性を保持したまま施工対象個所へ送り込み、送り込み後に乾燥硬化させて無機質層を形成することを特徴とする無機中空体組成物の施工方法。
【請求項2】
無機中空体組成物が無機中空体と無機バインダーと吸熱性化合物からなることを特徴とする請求項1記載の無機中空体組成物の施工方法。
【請求項3】
無機中空体組成物の施工対象個所への送り込みは、吹き込み機(ブロア)を用いて圧送するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の無機中空体組成物の施工方法。
【請求項4】
無機中空体組成物を施工対象個所である耐火間仕切壁の中空部に充填し、当該中空部に無機質層を形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の無機中空体組成物の施工方法。
【請求項5】
無機中空体組成物を施工対象個所である軒裏天井の天井板部に敷設し、当該天井板部に無機質層を形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の無機中空体組成物の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−126961(P2010−126961A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301877(P2008−301877)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】