説明

無機微粒子分散ペースト、積層体の製造方法及び積層体

【課題】シートアタックやデラミネーション等の不具合が発生しにくく、塗工、乾燥後の表面平滑性に優れるともに、機械的強度の高い成型体を作製することが可能な無機微粒子分散ペーストを提供する。また、該無機微粒子分散ペーストを用いた積層体の製造方法及び該積層体の製造方法を用いて得られる積層体を提供する。
【解決手段】水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントを有する(メタ)アクリル樹脂と、エポキシ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤と、有機溶剤と、有機過酸化物と、無機微粒子とを含有する無機微粒子分散ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートアタックやデラミネーション等の不具合が発生しにくく、塗工、乾燥後の表面平滑性に優れるともに、機械的強度の高い成型体を作製することが可能な無機微粒子分散ペーストに関する。また、該無機微粒子分散ペーストを用いた積層体の製造方法及び該積層体の製造方法を用いて得られる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セラミック微粒子、導電性微粒子、ガラス粒子等の無機微粒子をバインダー樹脂に分散させた無機微粒子分散ペースト組成物が、様々な形状の焼成体を得るために用いられている。例えば、セラミック微粒子やガラス粒子を分散させたセラミックペーストやガラスペーストは、積層セラミックコンデンサの製造やプラズマディスプレイパネルの誘電体層の製造等に用いられ、導電性微粒子として金属微粒子を分散させたペースト組成物は、回路形成やコンデンサーの製造等に用いられている。
【0003】
なかでも、積層セラミックコンデンサ等の積層型の電子部品は、例えば、特許文献1に開示されているように、一般に次のような工程を経て製造される。
まず、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック微粒子を加える。次いで、ボールミル等により均一に混合し脱泡を行って一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。得られたセラミックスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はステンレス鋼プレート等の支持体面で流延成形する。次いで、加熱等により有機溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
【0004】
得られたセラミックグリーンシート上に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗工したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を製造する。この積層体中に含まれるバインダー樹脂成分等を熱分解させて除去する処理(いわゆる「脱脂処理」)を行った後、焼成して得られたセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結によって形成させる工程を経て、積層セラミックコンデンサが得られる。
【0005】
近年では、積層セラミックコンデンサに更なる高容量化が求められており、より一層の多層化、薄膜化が検討されている。しかしながら、このような多層化に伴って、セラミックグリーンシートの表面に形成した導電ペースト層と、導電ペースト層が形成されていない領域との密着性が不足し、デラミネーションと呼ばれる層間剥離が発生することがあった。
【0006】
これに対して、変性させたポリビニルアセタール樹脂をセラミックスラリー組成物や導電ペーストのバインダー樹脂として用いることで、密着性を向上させる方法が開示されている。しかしながら、塗工、乾燥後に得られるセラミックグリーンシートや導電ペースト層の表面に凹凸が生じ、いわゆるレベリング性に劣るという問題があった。
【0007】
また、バインダー樹脂として、アクリル樹脂を用いる方法が検討されており、例えば、特許文献2には、セラミックグリーンシートの材料に反応性アクリル樹脂を用いて樹脂を架橋させる方法が開示されている。しかしながら、アクリル樹脂は密着性が悪く、デラミネーションの発生を防止することはできなかった。また、得られるセラミックグリーンシートが脆くなるため、薄膜化した際に取扱性が悪化するという問題があった。
【0008】
更に、近年は、導電ペーストの有機溶剤がセラミックグリーンシートを溶解する、いわゆるシートアタック現象が新たに大きな課題となっている。特許文献3には、導電ペースト用の有機溶剤として、シートアタックが発生しにくいものを用いる方法が開示されている。しかしながら、特許文献3で使用されている有機溶剤は非常に沸点が高く乾燥させにくかったり、粘度が極端に低くなったりする等の問題があった。
【特許文献1】特公平3−35762号公報
【特許文献2】特開2007−22828号公報
【特許文献3】特開2004−228319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、シートアタックやデラミネーション等の不具合が発生しにくく、塗工、乾燥後の表面平滑性に優れるともに、機械的強度の高い成型体を作製することが可能な無機微粒子分散ペーストを提供することを目的とする。また、該無機微粒子分散ペーストを用いた積層体の製造方法及び該積層体の製造方法を用いて得られる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントを有する(メタ)アクリル樹脂と、エポキシ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤と、有機溶剤と、有機過酸化物と、無機微粒子とを含有する無機微粒子分散ペーストである。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントを有する(メタ)アクリル樹脂に、所定の架橋剤と有機溶剤と有機過酸化物と無機微粒子とを添加した無機微粒子分散ペーストを用いた場合、シートアタック及びデラミネーションの発生を効果的に防止できること、及び、塗工、乾燥後に高い表面平滑性を実現できるとともに、機械的強度の高い成型体が得られ、薄膜化が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、バインダー樹脂として、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントを有する(メタ)アクリル樹脂を含有する。
上記(メタ)アクリル樹脂は、水酸基を多く含むことから、無機微粒子の分散性に優れ、本発明の無機微粒子分散ペーストを塗工した後に得られる被膜は、表面の凹凸が少なく表面平滑性の高いものとなる。加えて、後述のようにシートアタックが発生しにくい有機溶剤を使用する場合でも高い相溶性を有しており、保管時等において相分離が発生することがない。更に、上記(メタ)アクリル樹脂を含有することで印刷性を向上させることができる。
上記(メタ)アクリル樹脂は脱脂工程において解重合性を示し、熱によりモノマー成分へ分解する。その結果、エチルセルロース等の燃焼性材料とは異なり、分解ガスが少なく、また、燃焼による発熱がほとんど無い。その結果、積層セラミクスコンデンサーの製造工程におけるデラミネーションを効果的に防ぐことが可能である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0013】
上記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーに由来するセグメントを有することによって無機微粒子との親和性を高めることができる。
【0014】
上記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート及びグリセロールモノメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0015】
上記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの水酸基含有量の好ましい下限は、モノマー全体の重量に対して30重量%、好ましい上限は80重量%である。上記水酸基含有量が30重量%未満であると、架橋剤と相溶しないことがあり、上記水酸基含有量が80重量%を超えると、有機溶剤の選択幅が狭くなることがある。
【0016】
上記(メタ)アクリル樹脂は、上記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー1種類からなる単重合体であってもよく、2種類以上のモノマーからなる共重合体であってもよい。これらのなかでは、共重合体が好ましい。
【0017】
上記(メタ)アクリル樹脂が共重合体である場合、上記(メタ)アクリル樹脂としては、アルコール置換基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来するセグメント、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメント及びポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートモノマーに由来するセグメントを有する共重合体が好ましい。
【0018】
上記アルコール置換基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、イソブチルメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーに由来するセグメントを有することによって熱分解性の起点となって分解残渣を低減することができる。アルコール置換基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマーのなかでも、メチルメタクリレート及びイソブチルメタクリレートが特に好ましい。
【0019】
上記ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートモノマーとしては特に限定されず、例えば、ポリメチレングリコール、ポリアセタール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられ、更に、ポリプロピレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルや、ポリエチレングリコールのエチレンオキサイドの繰り返し数が30以上の(メタ)アクリル酸エステルが、特に好適に用いられる。
【0020】
上記(メタ)アクリル樹脂は、アルコール置換基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来するセグメント、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメント、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートモノマーに由来するセグメント以外にも共重合可能な(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントを有していてもよい。
上記共重合可能な(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、グリシジルメタアクリレートやグリシジルアクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
上記(メタ)アクリル樹脂のポリスチレン換算による重量平均分子量としては特に限定されないが、好ましい下限は5000、好ましい上限は5万である。上記重量平均分子量が5000未満であると、充分な粘度が得られないことがあり、上記重量平均分子量が5万を超えると相溶性が悪くなることがある。
なお、ポリスチレン換算による重量平均分子量は、カラムとして、例えば、SHOKO社製カラムLF−804を用いてGPC測定を行うことで得ることができる。以下同様である。
【0022】
上記(メタ)アクリル樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量=Mw/Mn)としては特に限定されないが、好ましい上限は3である。上記分子量分布が3を超えると、重合溶液中のオリゴマー等の低分子量成分が可塑剤となり、充分な粘度が得られなかったり、また、高分子量成分が糸曳性を悪化させたりする場合がある。分子量分布のより好ましい上限は2.5である。
【0023】
本発明の無機微粒子分散ペーストにおける上記(メタ)アクリル樹脂の含有量は、用いる無機微粒子の種類、比重によって決まるため特に限定されないが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記(メタ)アクリル樹脂の含有量が1重量%未満であっても、20重量%を超えても無機微粒子分散ペーストを用いて印刷することが困難になることがある。
【0024】
上記(メタ)アクリル樹脂の重合方法としては特に限定されず、通常の(メタ)アクリレートモノマーの重合に用いられる方法が挙げられ、例えば、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル樹脂の重合に重合開始剤を用いる場合、重合開始剤としては特に限定されない。上記重合開始剤は、上記(メタ)アクリル樹脂の重合時に全量を一度に添加されてもよいし、数回に分割して添加されてもよい。上記重合開始剤を数回に分割して添加した場合、残留オリゴマー等の低分子量成分を含まない上記(メタ)アクリル樹脂を得ることができる。
なお、本発明の無機微粒子分散ペーストに用いるバインダー樹脂として(メタ)アクリル樹脂重合反応の後の反応溶液をそのまま用いる場合には、重合後の重合溶液には、モノマーやオリゴマー等の低分子量成分が実質的に含まれていないことが好ましい。
【0025】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、エポキシ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤を含有する。
上記(メタ)アクリル樹脂に、このような架橋剤と、後述する有機過酸化物とを添加することで、本発明の無機微粒子分散ペーストを塗布した後、溶剤乾燥工程において加熱した場合に、架橋反応が起こり機械的強度の高い被膜を得ることができる。
これらの架橋剤は、後に記載する有機過酸化物の加熱により生じるラジカルによって重合し、無機微粒子を含んだ架橋体を形成する。従って、例えば、積層セラミックコンデンサの製造に用いた場合、有機溶剤の乾燥工程において誘電体層を架橋させることが可能となる。これにより、導電ペーストに含まれる有機溶剤によって誘電体層が破壊されることを防止することができ、耐シートアタック性に優れる誘電体層が得られる。
なお、上記エポキシ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートは、オリゴマーの両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、アクリルモノマーの重合体である上記(メタ)アクリル樹脂とは異なる。
【0026】
上記エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂の末端に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビフェニル型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族多価アルコールのエポキシ(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、特にビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート又はクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。これらは通常は、多官能(メタ)アクリル酸エステルである。また、上記エポキシ(メタ)アクリレートは単独又は混合して用いることができる。
【0027】
上記不飽和ポリエステルとしては、例えば、不飽和酸と2価以上のアルコールとを重合させることにより得られるポリエステル等が挙げられる。また、上記不飽和酸に加えて、飽和酸を併用してもよい。
【0028】
上記不飽和酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
上記飽和酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸等が挙げられる。
上記2価以上のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0029】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン骨格を有し、末端に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。例えば、イソシアネート基を2個以上有する化合物と活性水素を有する(メタ)アクリルモノマーとの反応等により得られ、具体的には、2個以上のイソシアネート基を有する化合物1当量に対して活性水素を有する(メタ)アクリルモノマー2当量を触媒としてスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0030】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネートとしては特に限定されず、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイオシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,10−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
また、上記イソシアネートとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、(ポリ)プロピレングリコール、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネートとの反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も用いることができる。
【0032】
上記エポキシ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤の含有量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は40重量%である。上記架橋剤の含有量が無機微粒子分散ペースト中で20重量%未満であると、架橋反応が充分に起こらないことがあり、上記架橋剤の含有量が40重量%を超えると、焼結性が悪化し、得られるセラミックグリーンシート中に炭素分解残渣が多く残留することがある。
【0033】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、有機過酸化物を含有する。
上記有機過酸化物は、ラジカル重合開始剤として作用する。
【0034】
上記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0035】
本発明の無機微粒子分散ペースト中の上記有機過酸化物の含有量の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は0.3重量%である。上記有機過酸化物の含有量が0.01重量%未満であると、反応性が充分に得られないことがあり、上記有機過酸化物の含有量が0.3重量%を超えると、有機過酸化物が無機微粒子分散ペースト中で相分離することがある。
【0036】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、水酸基やカルボニル基と架橋反応する架橋助剤を含有することが好ましい。上記架橋剤及び有機過酸化物を含有するのみでは、架橋反応が不充分な場合、上記架橋助剤を添加することで架橋反応を補完することが可能となる。
【0037】
上記架橋助剤としては、例えば、グリシジル化合物、アミノ化合物、チオール化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、バナジウム化合物、第4級アンモニウム塩、金属系架橋剤、ネフテン酸コバルト、β−ジケトン等が挙げられる。なかでも、グリシジル化合物、アミノ化合物、チオール化合物、イソシアネート化合物及びアジリジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の架橋助剤が好ましい。
【0038】
上記グリシジル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物等が挙げられる。また、これらのアルキル置換体、ハロゲン化物又は水素添加物等を用いてもよい。
【0039】
上記アミン化合物としては特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等の鎖状脂肪族アミン及びその誘導体、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の環状脂肪族アミン及びその誘導体、m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族アミン及びその誘導体等が挙げられる。
【0040】
上記チオール化合物としては特に限定されず、例えば、n−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸オクチル、β−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、チオグリコール酸ブチル、プロパンチオール類、ブタンチオール類、チオホスファイト類等が挙げられる。
【0041】
上記イソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソソアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、リジンイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート等が挙げられる。また、イソシアネート基の活性を一時的にマスクするためのブロッキング剤を反応させたブロックイソシアネートも好適に用いられる。
【0042】
上記アジリジン化合物としては、例えば、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフォンオキサイド、N,N’−ジフェニルエタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0043】
上記金属系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、カルシウム等を含有する架橋助剤が挙げられる。
【0044】
上記架橋助剤の含有量の好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は10重量%である、上記架橋助剤の含有量が0.5重量%未満であると、架橋反応が進行しない場合があり、上記架橋助剤の含有量が10重量%を超えると、無機微粒子分散ペーストの保存安定性が低下することがある。
【0045】
本発明では、上記架橋助剤に加えて、硬化速度の調整剤としてキノン系の重合禁止剤や、ジメチルアニリン、アセチルアセトン等を併用してもよい。
【0046】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤としては、用いる塗工方法にもよるが、沸点が150℃以上300℃未満の有機溶剤を含有することが望ましい。沸点が150℃未満であると、揮発によって粘度が変わり安定した塗工ができないことがあり、沸点が300℃以上であると、乾燥工程において多大な時間や熱エネルギーが必要となることがある。沸点の好ましい上限は280℃である。
【0047】
上記沸点が150℃以上300℃未満の有機溶剤としては、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、テキサノール、フェニルグリコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール等が挙げられる。なかでも、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、無機微粒子を含有する。
上記無機微粒子の材質としては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、金属錯体、セラミック微粒子、ガラス微粒子、導電微粒子、蛍光体等が挙げられる。
【0049】
上記ガラス微粒子としては、例えば、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO−Al−SiO系無機ガラス、MgO−Al−SiO系無機ガラス、LiO−Al−SiO系無機ガラス等が挙げられる。
【0050】
上記蛍光体としては、例えば、YS:Eu、(SrCaBaMg)(POCl:Eu、LaPO:Ce,Tb、Y:Eu、Ca10(POFCl:Sb,Mn、BaMgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y,Gd)BO:Eu、CaWO、GdS:Tb、(Y,Sr)TaO:Nb等の蛍光体等が挙げられる。
【0051】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、無機微粒子としてガラス微粒子を用いた場合、ガラスペーストとして好適に使用することができる。また、無機微粒子としてセラミック微粒子を用いた場合はセラミックペースト、無機微粒子として蛍光体子を用いた場合は蛍光体ペースト、無機微粒子として導電性微粒子を用いた場合は導電ペーストとして好適に使用することができる。
【0052】
本発明の無機微粒子分散ペーストにおける上記無機微粒子の含有量は、用いる無機微粒子の種類や比重、印刷プロセス等によって決定されるため、特に限定されないが、好ましい下限が30重量%、好ましい上限が80重量%である。上記無機微粒子の含有量が30重量%未満であると、充分な粘度が得られず印刷性が低下したり、有機成分が多いために残留有機分が多くなったりする等の不具合が発生することがある。上記無機微粒子の含有量が80重量%を超えると、無機微粒子を分散させることが困難となることがある。
【0053】
また、本発明の無機微粒子分散ペーストは、界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。上記界面活性剤としては特に限定されず、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0054】
本発明の無機微粒子分散ペーストの粘度としては特に限定されないが、20℃においてB型粘度計を用いプローブ回転数を5rpmに設定して測定したときの粘度の好ましい下限が0.1Pa・s、好ましい上限が100Pa・sである。上記粘度が0.1Pa・s未満であると、ダイコート法等により塗工した後に無機微粒子分散ペーストが所定の形状を維持することが困難となることがあり、上記粘度が100Pa・sを超えると、塗布又は塗工等の印刷性に劣ることがある。
【0055】
本発明の無機微粒子分散ペーストの塗工方法としては特に限定されず、例えば、スクリーン印刷、ダイコート印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
【0056】
本発明の無機微粒子分散ペーストの製造方法としては特に限定されず、(メタ)アクリル樹脂、架橋剤、有機溶剤、有機過酸化物、無機微粒子、及び、各種添加剤を従来公知の攪拌方法、具体的には例えば、3本ロール等で混練を行えばよい。
【0057】
本発明の無機微粒子分散ペーストの用途としては特に限定されないが、例えば、本発明の無機微粒子分散ペーストを塗工する工程、上記無機微粒子分散ペーストを加熱して、架橋させることで、セラミックグリーンシートを作製する工程、上記セラミックグリーンシートに導電ペーストを塗工する工程、及び、上記導電ペーストを塗工したセラミックグリーンシートを積層する工程を有する方法を用いることにより積層体を製造することができる。このような積層体の製造方法、及び、積層体の製造方法を用いて得られる積層体もまた本発明の1つである。
【0058】
本発明の積層体の製造方法では、本発明の無機微粒子分散ペーストを用いることで、シートアタック及びデラミネーションの発生を効果的に防止できる。また、無機微粒子分散ペーストを塗工、加熱した後に高い表面平滑性を有するセラミックグリーンシートを得ることができる。更に、得られるセラミックグリーンシート及び積層体は、機械的強度が高く、薄膜化が可能となる。
なお、積層体の製造方法の具体的方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0059】
本発明の積層体の具体例としては、例えば、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、キャパシタ、積層圧電アクチュエーター、積層バリスタ、積層サーミスタ等が挙げられる。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、シートアタックやデラミネーション等の不具合が発生しにくく、塗工、乾燥後の表面平滑性に優れるともに、機械的強度の高い成型体を作製することが可能な無機微粒子分散ペーストを提供することができる。また、該無機微粒子分散ペーストを用いた積層体の製造方法及び該積層体の製造方法を用いて得られる積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0062】
(実施例1)
((メタ)アクリル樹脂の作製)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴、及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、イソブチルメタクリレート(日油社製、ブレンマーIBMA)40重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(日油社製、ブレンマーE)45重量部、ポリプロピレングリコールを側鎖に持つメタアクリルモノマー(日油社製、ブレンマーPP1000)5重量部、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸(共栄社化学社製、ライトエステルHOMS)10重量部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン(和光純薬社製)、有機溶剤としてエタノール(和光純薬社製)10重量部とを混合し、モノマー混合液を得た。
なお、表1にモノマー組成を示した。表1では、イソブチルメタクリレートをIBMA、2−ヒドロキシエチルメタクリレートをHEMA、ポリプロピレングリコールを側鎖に持つメタクリレートをPPGMA、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸をHOMSと表記した。
【0063】
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながら湯浴が沸騰するまで昇温した。また、重合開始剤を酢酸エチルで希釈した溶液を添加し、重合中にも重合開始剤を数回添加した。
【0064】
重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、(メタ)アクリル樹脂の酢酸エチル溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂の酢酸エチル溶液に乳酸エチルを100重量部加え、エバポレーターを用いて減圧乾燥することで溶剤置換を行った。
【0065】
(不飽和ポリエステルの作製)
撹拌機、分溜コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、イソフタル酸695重量部、ネオペンチルグリコール946重量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール325重量部、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量400)865重量部、及び、亜燐酸0.35重量部を添加した。次いで、窒素気流下で加熱撹拌しながら190℃まで昇温し、更に220℃まで昇温してエステル化反応を進行させた後、酸価が6.3mgKOH/gとなった時点で冷却した。その後、120℃となった時点で無水マレイン酸1004重量部を添加し、加熱しながら150〜210℃でエステル化反応を行った後、酸価が13.8mgKOH/gとなった時点で冷却し、不飽和ポリエステルを得た。
【0066】
(導電ペーストの作製)
エチルセルロース(ダウ社製、STD100)を樹脂固形分が12重量%になるようα−テルピネオールに溶解させた。得られたエチルセルロース溶液とニッケル粉(JFEミネラル社製、NFP201)とを混合し、三本ロールに数回通過させて導電ペーストを作製した。なお、導電ペースト中の組成比は、ニッケル粉50重量%、エチルセルロース6重量%となるように調整した。
【0067】
(セラミックグリーンシートの作製)
得られた(メタ)アクリル樹脂2重量部に、架橋剤として不飽和ポリエステル4.6重量部と、有機過酸化物としてパーブチルE(日油社製)0.02重量部とを加え、攪拌溶解した。こうして得られた樹脂組成物に、セラミック微粒子としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製、BT−02(平均粒径0.2μm))10重量部、有機溶剤として乳酸エチル3.38重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。
このセラミックスラリー組成物を、離型処理したポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約1μmになるように塗布し、常温で1時間風乾し、続いて120℃で2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
【0068】
(導電ペーストの印刷)
得られたセラミックグリーンシートの片面に、調製した導電ペーストを乾燥後の厚みが約2μmになるように、スクリーン印刷法により印刷し、乾燥させて導電層を形成した。
【0069】
(積層体の作製)
印刷後のセラミックグリーンシートを5cm角に切断し、100枚積重ねて、温度70℃、圧力150kg/cm、10分間熱圧着させてセラミックグリーンシート積層体を得た。
得られたセラミックグリーンシート積層体を窒素雰囲気下で400℃まで昇温速度3℃/分の速度で昇温して5時間保持後、再び5℃/分の速度で1350℃まで昇温して10時間保持することで焼結し積層体を得た。
【0070】
(実施例2)
(エポキシ(メタ)アクリレートの合成)
撹拌機、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた5つ口フラスコに、エポキシ樹脂(油化シェル社製、エピコート1007)1000重量部、メタクリル酸460重量部、ハイドロキノン0.3重量部、触媒としてイミダゾール2.9重量部を添加し、窒素ガスを導入しながら、150℃で1時間反応させ、エポキシ(メタ)アクリレートを得た。
【0071】
(セラミックグリーンシート、積層体の作製)
実施例1で得られた(メタ)アクリル樹脂2重量部に、架橋剤としてエポキシ(メタ)アクリレート4.1重量部と、有機過酸化物としてパーブチルE(日油社製)0.02重量部と、架橋助剤として変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(新日本理化社製、リカレジンBEO−60E)0.5重量部と、有機溶剤として乳酸エチル3.38重量部とを加え、攪拌溶解した。こうして得られた樹脂組成物に、セラミック微粒子としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製、BT−02(平均粒径0.2μm))10重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。
このセラミックスラリー組成物を、離型処理したポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約1μmになるように塗布し、常温で1時間風乾し、続いて120℃で2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートを用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0072】
(実施例3)
(ウレタン(メタ)アクリレートの合成)
攪拌機、温度計、冷却器、滴下漏斗及びガス導入管を備えた5つ口フラスコに、予め乾燥空気を流入させて系内を乾燥させた後、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン447重量部を添加した。次いで、ジブチル錫ジラウレート1重量部、ハイドロキノン2重量部を添加し、乾燥空気気流下で、発熱に注意しながら、ヒドロキシエチルアクリレート550重量部を40〜70℃で1時間かけて徐々に滴下し、ウレタン化反応を行った。その後、90℃で3時間の熟成を行い、ウレタン(メタ)アクリレートを得た。
【0073】
(セラミックグリーンシート、積層体の作製)
実施例1で得られた(メタ)アクリル樹脂2重量部に、架橋剤としてウレタン(メタ)アクリレート4.1重量部と、有機過酸化物としてパーブチルE(日油社製)0.02重量部、架橋助剤としてブロックイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ社製、デュラネート17B−60PX)0.5重量部、有機溶剤として乳酸エチル3.38重量部とを加え、攪拌溶解した。こうして得られた樹脂組成物に、セラミック微粒子としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製、BT−02(平均粒径0.2μm))10重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。
このセラミックスラリー組成物を、離型処理したポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約1μmになるように塗布し、常温で1時間風乾し、続いて120℃で2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートを用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0074】
(実施例4)
実施例2の(セラミックグリーンシート、積層体の作製)において、エポキシ(メタ)アクリレートの添加量を4.3重量部とし、変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(新日本理化社製、リカレジンBEO−60E)0.5重量部に代えて、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート0.3重量部を添加した以外は実施例2と同様にしてセラミックグリーンシート及び積層体を得た。
【0075】
(実施例5)
実施例3の(セラミックグリーンシート、積層体の作製)において、ウレタン(メタ)アクリレートの添加量を4.5重量部とし、ブロックイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ社製、デュラネート17B−60PX)0.5重量部に代えて、ヘキサメチレンジアミン0.1重量部を添加した以外は実施例3と同様にしてセラミックグリーンシート及び積層体を得た。
【0076】
(実施例6)
実施例2の(セラミックグリーンシート、積層体の作製)において、エポキシ(メタ)アクリレート4.1重量部に代えて、実施例1で得られた不飽和ポリエステル4.55重量部を添加し、変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(新日本理化社製、リカレジンBEO−60E)0.5重量部に代えて、酸化亜鉛0.05重量部を添加した以外は実施例2と同様にしてセラミックグリーンシート及び積層体を得た。
【0077】
(実施例7)
実施例2の(セラミックグリーンシート、積層体の作製)において、変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(新日本理化社製、リカレジンBEO−60E)0.5重量部に代えて、3官能アジリジン化合物(日本触媒社製、ケミタイトPZ−33)0.5重量部を添加した以外は実施例2と同様にしてセラミックグリーンシート及び積層体を得た。
【0078】
(比較例1)
(セラミックグリーンシート、積層体の作製)
エチルセルロース(ダウケミカル社製、STD100)2重量部に、セラミック微粒子としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製、BT−02(平均粒径0.2μm))10重量部、有機溶剤として乳酸エチル8重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。
このセラミックスラリー組成物を、離型処理したポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約1μmになるように塗布し、常温で1時間風乾し、続いて120℃で2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートを用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0079】
(比較例2)
実施例2の(セラミックグリーンシート、積層体の作製)において、エポキシ(メタ)アクリレート4.1重量部を添加しなかった以外は実施例2と同様にしてセラミックグリーンシート及び積層体を得た。
【0080】
(比較例3)
実施例2の(セラミックグリーンシート、積層体の作製)において、変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(新日本理化社製、リカレジンBEO−60E)0.5重量部、及び、パーブチルE(日油社製)0.02重量部を添加しなかった以外は実施例2と同様にしてセラミックグリーンシート及び積層体を得た。
【0081】
(比較例4)
実施例2の(セラミックグリーンシート、積層体の作製)において、実施例1で得られた(メタ)アクリル樹脂2重量部、及び、パーブチルE(日油社製)0.02重量部を添加せず、エポキシ(メタ)アクリレートの添加量を6.2重量部とした以外は実施例2と同様にしてセラミックグリーンシート及び積層体を得た。
【0082】
(評価)
実施例及び比較例で得られたセラミックグリーンシート及び積層体について、以下の評価を行った。なお、結果を表2に示した。
【0083】
(シートアタック性)
導電ペーストを印刷した後のセラミックグリーンシートの表面(印刷面)及び裏面(ポリエステルフィルム面)を目視及び拡大顕微鏡で観察した。
皺やクラックが認められなかった場合を○、皺やクラックが認められた場合を×とした。
【0084】
(セラミックグリーンシートの取扱性)
得られたセラミックグリーンシートを5cm角に切断し、高さ20cmから机上に落下させ、セラミックグリーンシートの破壊状況を確認した。セラミックグリーンシートに欠けや割れが発生しなかった場合を○、セラミックグリーンシートに欠けや割れが発生した場合を×とした。
【0085】
(表面平滑性の評価)
得られたグリーンシートを表面粗さ計(ACCRETECH社製SUEFCOM1400D)にて任意の5点の表面粗さRa(μm)を評価した。表面粗さの平均値が0.7未満を○とした。
(接着性の評価(デラミネーションの発生確認))
実施例及び比較例で得られた積層体を常温まで冷却し、中央部を積層面に対し垂直方向に切断して、50層目付近のシート状態を電子顕微鏡で観察することにより、セラミック層と導電層とのデラミネーションの有無を観察した。
デラミネーションが確認できない場合を○、デラミネーションが確認できた場合を×とした。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、シートアタックやデラミネーション等の不具合が発生しにくく、塗工、乾燥後の表面平滑性に優れるともに、機械的強度の高い成型体を作製することが可能な無機微粒子分散ペーストを提供することができる。また、該無機微粒子分散ペーストを用いた積層体の製造方法及び該積層体の製造方法を用いて得られる積層体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントを有する(メタ)アクリル樹脂と、エポキシ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤と、有機溶剤と、有機過酸化物と、無機微粒子とを含有する
ことを特徴とする無機微粒子分散ペースト。
【請求項2】
無機微粒子は、アルミナ、チタン酸バリウム又はガラス微粒子であることを特徴とする請求項1記載の無機微粒子分散ペースト。
【請求項3】
更に、グリシジル化合物、アミノ化合物、チオール化合物、イソシアネート化合物及びアジリジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の架橋助剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の無機微粒子分散ペースト。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の無機微粒子分散ペーストを塗工する工程、
前記無機微粒子分散ペーストを加熱して、架橋させることで、セラミックグリーンシートを作製する工程、
前記セラミックグリーンシートに導電ペーストを塗工する工程、及び、
前記導電ペーストを塗工したセラミックグリーンシートを積層する工程を有する
ことを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の積層体の製造方法を用いて得られることを特徴とする積層体。



【公開番号】特開2009−263188(P2009−263188A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117516(P2008−117516)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】